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特開2024-138388絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用
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  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図1
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図1a
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図2
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図2a
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図2b
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図2c
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図3
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図4
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図5
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図6
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図7
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図8
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図9
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図10
  • 特開-絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138388
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/062 20060101AFI20241001BHJP
   C03C 10/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C03C3/062
C03C10/04
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024110162
(22)【出願日】2024-07-09
(62)【分割の表示】P 2021524247の分割
【原出願日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】102018127748.2
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019102525.7
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】19181866.5
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イーナ ミトラ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ミクス
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン ラムドーア
(72)【発明者】
【氏名】ハートムート ハートル
(72)【発明者】
【氏名】マーク シュトロンチェク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】900℃またはそれ以上もの耐温度性などの高い耐熱性を有し、溶融時に接合すべき材料および/または部材を濡らし、高い熱膨張係数を有する、結晶化可能なガラスを提供する。
【解決手段】La0.3mol%超~5mol%未満、Nb0mol%~9mol%、Ta0mol%~7mol%、Σ(A)0.2mol%超~9mol%[式中、Aは、酸化物において通常酸化数V+を有する元素であり、かつ特にNb、Ta、またはP、および/またはそれらの混合物を含む]を含む、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁部材(53)および少なくとも2つの接合相手(51,52)を含む接合結合体(5)であって、
前記接合相手(51,52)のうちの少なくとも一方が、前記電気絶縁部材(53)によって、前記接合相手(51,52)のうちの少なくとも他方から電気的に絶縁された状態に保たれており、
前記接合相手間に延在する前記電気絶縁部材(53)の表面が、構造体(S)、特に隆起または窪みを形成しており、
前記構造体(S)によって、特に、表面に沿った、少なくとも一方の接合相手から少なくとも他方の接合相手への直接経路が、この構造体(S)を有しない表面に比べて延長されており、
前記構造体(S)が、好ましくは、少なくとも1つの接合相手を完全に取り囲んでおり、
前記絶縁部材(53)または前記構造体(S)が、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスを含むか、またはこれから成る、
接合結合体(5)。
【請求項2】
前記構造体(S)が、前記接合相手(51,52)間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、前記絶縁部材(53)の一部分(54)と一体かつ同材料であり、好ましくは、前記絶縁部材(53)の材料が、少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む、請求項1記載の接合結合体。
【請求項3】
前記接合相手の表面と前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面との間の移行領域において、好ましくは1cmあたり10個未満の細孔を含み、かつ/または好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有する、少なくとも大部分がアモルファスのガラス層が配置されている、請求項1または2記載の接合結合体。
【請求項4】
前記構造体(S)が、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスを含み、前記構造体(S)の表面に、少なくとも大部分がアモルファスの境界層が、特に、実質的に開孔を有しない、特に細孔10個/cm未満を含む、5μm以下、好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有するガラス層として形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項5】
前記構造体(S)が、前記接合相手(51,52)間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、前記絶縁部材(53)の一部分(54)と同材料ではない、請求項1記載の接合結合体。
【請求項6】
前記構造体(S)が、前記接合相手(51,52)間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、前記絶縁部材(53)の前記一部分(54)と同材料ではなく、高温安定性セラミック材料、例えば、フォルステライト、酸化アルミニウム系セラミック、または酸化ジルコニウム系セラミック、例えば、Y安定化酸化ジルコニウムを含むセラミックを含む、請求項5記載の接合結合体。
【請求項7】
前記構造体(S)が、前記接合相手(51,52)間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、前記絶縁部材(53)の前記一部分(54)と同材料ではなく、
前記構造体(S)が、前記絶縁部材(53)の前記一部分(54)において半径方向でほぼ中央に、好ましくは少なくとも部分的にその内部に凹んで配置されている、
請求項5または6記載の接合結合体。
【請求項8】
前記構造体(S)が、補強材(56)を含み、前記補強材(56)が、金属箔、金属シート、または金属を含むスクリム、メッシュもしくは編物を含み、前記金属が、好ましくはフェライト鋼からなるか、または鋼を含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項9】
前記構造体(S)が、10分の1ミリメートル未満、好ましくは20分の1ミリメートル未満、かつ10μm超の曲率半径Rvを有する端部を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項10】
少なくとも部分的に結晶化したガラスおよび接合相手を含む、特に請求項1から9までのいずれか1項記載の接合結合体、特に、高温安定性のおよび/または機械的に高強度の接合結合体であって
前記少なくとも部分的に結晶化したガラスが、体積を基準として、10%未満、好ましくは5%未満の割合の残留ガラスを含み、
前記少なくとも部分的に結晶化したガラスが、結晶凝集体を含み、
前記結晶凝集体が、多数の結晶子から形成されており、
前記結晶子が、好ましくは針状および/または小板状に形成されており、
前記結晶子が、特に好ましくは、前記少なくとも部分的に結晶化したガラス全体に分布して、放射状に、例えば、球晶状および/または扇状および/または棒状および/または小板状に配置されており、特に1つのまたは前記絶縁部材(53)を含む、
接合結合体。
【請求項11】
少なくとも部分的に結晶化したガラスおよび接合相手を含む、特に請求項1から10までのいずれか1項記載の接合結合体、特に、高温安定性のおよび/または機械的高負荷に耐えることが可能な接合結合体、
特に、特に請求項1から10までのいずれか1項記載の接合結合体であって、
前記ガラスが、
La 0.3mol%超~5mol%未満、好ましくは4.5mol%以下、特に好ましくは4mol%以下、
Nb 0mol%~9mol%、
Ta 0mol%~7mol%、
ここで
Σ(A) 0.2mol%超~9mol%、
[式中、Aは、酸化物において通常酸化数V+を有する元素であり、かつNb、および/またはTa、またはP、および/またはそれらの混合物を含み得る]
を含む、接合結合体。
【請求項12】
前記結晶子が、少なくとも部分的に粒界に結晶化核を含み、かつ/または
前記結晶子の粒界に、ランタンを含む、特にランタン化合物を含む蓄積物が少なくとも部分的に配置されている、
請求項10または11記載の接合結合体。
【請求項13】
接合相手および少なくとも部分的に結晶化したガラスの熱膨張係数の差の値が、510-6/K以下、好ましくは310-6/K以下、特に好ましくは1×10-6/K以下である、請求項1から12までのいずれか1項記載の、特に請求項10から12までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項14】
少なくとも1000℃の動作温度に耐え、特に、ISO16750-3に準拠して測定して耐振とう性および耐振動性である、請求項1から13までのいずれか1項記載の、特に請求項10から13までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項15】
前記動作状態で、前記結晶凝集体が、前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの体積要素が互いに変位することを抑制する、請求項1から14までのいずれか1項記載の、特に請求項10から14までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項16】
前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面にメニスカスがない、請求項1から15までのいずれか1項記載の、特に請求項10から15までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項17】
前記接合相手の表面と前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面との間の移行領域において、好ましくは1cmあたり10個未満の細孔を含む、および/または好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有する、少なくとも大部分がアモルファスのガラス層が配置されている、請求項1から16までのいずれか1項記載の、特に請求項10から16までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項18】
前記接合相手が、金属、特に、鋼、例えば、普通鋼、ステンレス鋼、不錆鋼、およびThermax、例えば、Thermax 4016、Thermax 4742もしくはThermax 4762という商標名、またはCrofer22 APUもしくはCrofer22 Hという商標名でも知られている高温安定性フェライト鋼、あるいはNiFe系材料、例えば、NiFe45、NiFe47もしくはニッケルメッキピン、あるいはInconel、例えば、Inconel 718もしくはX-750という商標名で知られているNiFe系材料、あるいは例えば、CF25、Alloy 600、Alloy 625、Alloy 690、SUS310S、SUS430、SUH446もしくはSUS316という名称で知られている鋼、あるいは1.4828もしくは1.4841のようなオーステナイト鋼のグループからの金属、あるいは高温安定性セラミック化合物、例えば、酸化アルミニウム系セラミックもしくは酸化ジルコニウム系セラミック、例えば、Y安定化酸化ジルコニウムを含むセラミックを含む、請求項1から17までのいずれか1項記載の、特に請求項10から17までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項19】
10-8mbarl/s未満のヘリウム漏れ速度を有し、かつ/または
80GPa~200GPaの弾性率、好ましくは100GPa~125GPaの弾性率を有する少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む、
請求項1から18までのいずれか1項記載の、特に請求項10から18までのいずれか1項記載の接合結合体。
【請求項20】
La 0.3mol%超~5mol%未満、好ましくは4.5mol%以下、特に好ましくは4mol%以下、
Nb 0mol%~9mol%、
Ta 0mol%~7mol%、
ここで
Σ(A) 0.2mol%超~9mol%、
[式中、Aは、酸化物において通常酸化数V+を有する元素であり、かつ特にNb、Ta、またはP、および/またはそれらの混合物を含む]
を含む、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項21】
酸化物ROを含み、かつ
Σ(RO) ≦55mol%
[式中、Rは、酸化物において通常酸化数II+を有する元素であり、かつ特に、Ca、Mg、またはZn、および/またはそれらの混合物を含む]
が成り立つ、請求項20記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項22】
SiO 30mol%~40mol%、
Al 3mol%~12mol%、
CaO 32mol%~46mol%、
MgO 5mol%~15mol%、
ZnO 0mol%~10mol%、
ならびに任意選択的に、
ZrO 0mol%~4mol%、好ましくは最大3mol%、および/または
TiO 0mol%~4mol%、好ましくは最大3mol%、および/または
MnO 0mol%~5mol%
を含む、請求項20または21記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項23】
- 前記結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスのCaO含有量が、少なくとも35mol%~最大46mol%、好ましくは少なくとも35mol%~43.5mol%未満であり、かつ/または
- 前記結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスのMgO含有量が、5mol%~13mol%未満である、
請求項20から22までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項24】
前記ガラスが、結晶化可能なガラスとして存在しており、720℃超の変態温度Tを有する、請求項20から23までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項25】
前記結晶化可能なガラスの線熱膨張係数が、20℃~300℃の温度範囲において810-6/K超であり、好ましくは、20℃~700℃の温度範囲において910-6/K超である、請求項20から24までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項26】
前記ガラスが、少なくとも部分的に結晶化したガラスとして存在しており、
20℃~700℃の温度範囲において、910-6/K超、好ましくは1010-6/K超の線熱膨張係数を有し、
特に好ましくは、前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの線熱膨張係数が、20℃~1000℃の温度範囲において、910-6/K超、好ましくは9.510-6/K超である、
請求項20から25までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項27】
前記結晶化可能なガラスの温度が、10Ωcmの比電気抵抗では、好ましくはDIN52326に準拠して測定して、500℃以上のt100である、請求項20から26までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項28】
前記少なくとも部分的に結晶化したガラスが、カルシウム-マグネシウムケイ酸塩、好ましくは、CaOに富むカルシウム-マグネシウムケイ酸塩、特に、CaOに富むカルシウム-マグネシウム島状ケイ酸塩および/またはソロケイ酸塩の結晶子、例えば、メルウィナイトおよび/またはメルウィナイト構造を有する混晶、ならびに代替的または追加的に、オケルマナイトCaMgSiおよび/またはゲーレナイトCaAl[AlSiO]のようなメリライト構造を有する結晶相および/またはそれらの混晶、ならびに/またはオージャイト構造を有する結晶相を含む、請求項20から27までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項29】
少なくとも部分的に結晶化したガラスおよび接合相手を含み、
前記ガラスが、請求項20から28までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化したガラスであるか、または請求項20から28までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化可能なガラスから製造されたもしくは製造可能である、
接合結合体。
【請求項30】
請求項20から28までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む、製造物、特に、保持要素および/または絶縁要素および/または付加構造体。
【請求項31】
請求項20から28までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化可能なガラスを含む焼結体から製造可能な請求項30記載の製造物であって、前記焼結体が、好ましくはガラス粉末としての結晶化可能なガラスを含み、特に好ましくは、前記ガラス粉末が、粒子表面を有する粉末粒子を含む、製造物。
【請求項32】
排気ガスセンサ、圧力センサ、例えば煤粒子センサなどの粒子センサ、および/もしくは温度センサ、および/もしくはNOセンサ、および/もしくは酸素センサなどのセンサにおける、ならびに/またはコンプレッサおよび/もしくは電動コンプレッサ用のフィードスルーにおける、ならびに/または排気ガス要素および/もしくは燃料電池における電流フィードスルーとして、ならびに/または化学反応器用のフィードスルーにおける、請求項1から19までのいずれか1項記載の接合結合体または請求項30もしくは31記載の製造物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁部材を含む、特に少なくとも部分的に結晶化したガラスを有する接合結合体、その使用、結晶化可能なガラスおよび少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用に関する。
【0002】
接合結合体については、耐温度性、機械的安定性、およびそれらの抵抗のどれもが重要になり得る様々な用途がある。
【0003】
そのような接合結合体が、例えば電気信号または電子信号を送るために、内燃機関の排気ガス設備の一部分にある場合、例えば、排気ガス洗浄が制御されている自動車の場合、周囲条件が頻繁に大きく変化する。例えばコールドスタート動作において、特に比較的寒い地域において、または空気の湿度が高い場合、そのような接合結合体は、凝縮した大気成分からの水膜で被覆される可能性がある。この凝縮は、液滴の形成として、または接合結合体の全面の被覆としてさえ現れる可能性がある。それによって、接合相手間の電気抵抗が不所望に変化する可能性があり、排気ガス洗浄の対応する制御がその制御挙動について損なわれる可能性がある。
【0004】
結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスについて以下でさらにより詳細に例示的に説明されるように、非常に抵抗の高い絶縁材料を使用することができるものの、制御挙動が損なわれないようにすることに関して、この絶縁材料は、そのような環境では、多くの場合、上記の損失に対して十分信頼できるものではない。
【0005】
独国特許出願公開第102008045816号明細書の文書では、沿面距離を延長するために、導体を取り囲むエラストマー材料が提案されており、本開示の文脈において、この沿面距離とは、接合相手間の沿面電流が発生し得る距離である。この解決策の欠点は、エラストマー材料が、多くの場合、排気ガス設備の高温領域に必要な熱安定性および長期動作耐久性(Dauerbetriebsfestigkeit)を有しないことである。
【0006】
本発明の一態様は、本明細書に開示されている絶縁材料、特に本明細書に開示されている結晶化可能なガラスまたは部分的に結晶化したガラスの電気的または電子的な特性、特に高抵抗特性を環境の影響からより良好に保護することに取り組む。
【0007】
本発明の課題のこの態様は、電気絶縁部材および少なくとも2つの接合相手を含む接合結合体であって、接合相手51,52のうちの少なくとも一方が、接合相手51,52のうちの少なくとも他方から、電気絶縁部材53によって電気的に絶縁された状態に保たれており、接合相手間に延在する電気絶縁部材53の表面が、構造体S、特に隆起または窪みを形成しており、この構造体Sによって、特に、表面に沿った、少なくとも一方の接合相手から少なくとも他方の接合相手への直接経路が、この構造体Sを有しない表面に比べて延長されており、構造体が、好ましくは少なくとも一方の接合相手を完全に取り囲んでおり、絶縁部材または構造体が、結晶可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスを含むか、またはこれから成る、接合結合体、ならびにその使用によって解決される。
【0008】
本開示の文脈において、「電気的に絶縁された状態に保たれている」とは、直流抵抗が、この抵抗を損なわせ得る堆積物が載っていない本明細書に記載の接合結合体の乾燥雰囲気にある接合相手間で、100MΩ超であることを表し、この電気抵抗値は、100V未満の電圧で測定されたものである。
【0009】
先に言及された構造体Sは、絶縁部材の一部分と一体かつ同材料で形成され得て、この一部分は、接合相手間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在しており、好ましくは、絶縁部材の材料は、少なくとも部分的に結晶化したガラスおよびその使用を含む。
【0010】
本開示の接合結合体の場合、接合相手の表面と少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面との間の移行領域において、好ましくは1cmあたり10個未満の細孔を含み、かつ/または好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有する、少なくとも大部分がアモルファスのガラス層が配置され得る。
【0011】
本明細書に記載の接合結合体の場合、構造体Sは、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスを含み得て、構造体Sの表面に、少なくとも大部分がアモルファスのガラス層が、特に、実質的に開孔を有しない、特に細孔10個/cm未満を含む、5μm以下、好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有するガラス層として形成され得る。
【0012】
以下には、構造体Sが、接合相手間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、絶縁部材の一部分と同材料ではない、接合結合体の実施形態も開示されている。
【0013】
そのような接合結合体の場合、構造体Sは、接合相手間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、絶縁部材の一部分と同材料ではなく、高温安定性セラミック材料、例えば、フォルステライト、酸化アルミニウム系セラミック、または酸化ジルコニウム系セラミック、例えば、Y安定化酸化ジルコニウムを含むセラミックを含む。
【0014】
構造体Sが、接合相手間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、絶縁部材の一部分と同材料ではない接合結合体の場合、構造体Sは、絶縁部材のこの一部分において半径方向でほぼ中央に、好ましくは少なくとも部分的にその内部に凹んで配置され得る。
【0015】
構造体Sが補強材を含む有利な接合結合体の場合、補強材は、金属シート、金属箔、または金属を含むスクリム、メッシュもしくは編物を含み、好ましくは、金属は、鋼を含むか、またはこれから成る。
【0016】
本開示の実施形態では、構造体Sは、10分の1ミリメートル未満、好ましくは20分の1ミリメートル未満、かつ10μm超の曲率半径Rvを有する端部を有し得る。
【0017】
本明細書に記載の実施形態に対応する結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスを用いると、本明細書に記載の構造体Sによって、互いに分離すべき接合相手間に配置されている絶縁材料の表面を拡大し、そのようにして絶縁部材の表面にわたる沿面距離を延長することが可能である。
【0018】
本明細書に記載の実施形態による結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスによって、高温安定性のかつ/または機械的に高強度の接合結合体を形成することが可能になる。先に説明したように、記載の実施形態による結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスを用いると、少なくとも部分的に結晶化したガラス中に特に安定した組織、特に、1000℃までまたはそれ以上もの高温でも機械的に安定して形成されている組織を形成することが可能である。
【0019】
したがって、さらなる態様は、結晶化可能なガラス、および少なくとも部分的に結晶化されて存在する、特にはんだガラスの分野で使用されるガラスに関する。はんだガラス(ガラスはんだまたは英語で「シーリングガラス」とも称される)は、接合すべき部材間の密な結合を生成するために使用される。これらの結合体は、接合複合体または接合結合体とも称される。
【0020】
動作時に非常に高い温度、例えば900℃以上の温度、例えば1000℃前後もの温度に曝される安定した接合結合体を製造するには、一方ではこれらの高温に耐え、他方ではその膨張挙動について接合すべき材料に適合されているはんだガラスが常に必要である。接合すべき材料は、例えば、耐高温性の金属および/もしくは金属合金、またはイットリウム安定化ZrOなどの耐高温性の非金属材料である。
【0021】
さらに、接合結合体は、気密でなければならず、特にセンサ技術および/または燃料電池などの電気部材で使用される場合、電気絶縁効果がなくてはならず、すなわち、非常に低い導電率しか有してはならない。
【0022】
しかしながら、熱膨張の大きい市販のガラスはんだは、一般に溶融温度が低いので、その熱安定性が限られており、よって、これらのガラスはんだは、高温において使用することはできない。反対に、ガラスはんだは、高温範囲の場合、耐高温性の接合相手の熱膨張係数をはるかに下回る熱膨張係数を有する。
【0023】
従来技術では、接合結合体を作製するための様々なガラスはんだが提案されている。
【0024】
ドイツの特許出願である独国特許出願公開第10016416号明細書には、使用される出発ガラスが、38重量%~48重量%のSiO、15重量%~19重量%のAlIO、4.5重量%~11重量%のTiO、0重量%~1.5重量%のNaO、0重量%~1.5重量%のKO、および23重量%~30重量%のCaOから成り、最大1.5重量%までのLiOも添加され得る、ガラスセラミック溶融封止材が記載されている。これらの組成によって、100℃~500℃の温度範囲で最大8.810-6/Kの熱膨張係数を達成することができる。
【0025】
ドイツの特許である独国特許発明第102012206266号明細書には、バリウムおよびストロンチウム不含のガラス質またはガラスセラミック質の接合材料およびその使用が記載されている。結合すべき部材を十分に濡らすために、接合材料はBを含む。
【0026】
ドイツの公開特許公報である独国特許出願公開第102014218983号明細書には、過酷な動作条件のためのフィードスルー要素が記載されている。ここでも、接合材料はBを含む。
【0027】
公開特許公報である独国特許出願公開第102010035251号明細書には、高温ガラスはんだおよびその使用が記載されている。このガラスはんだは、少なくとも10重量%のBaOを含む。しかしながら、BaOは、バリウムが、高耐熱性、すなわち耐高温性の鋼に含有されているCrと反応するので、不利である。
【0028】
公開特許公報である独国特許出願公開第102015207285号明細書には、ガラス質の溶融封止材料または少なくとも部分的に結晶化した溶融封止材料が記載されている。これは、少なくとも5mol%のBを含有している。
【0029】
独国特許出願公開第102011080352号明細書には、高温ガラスはんだおよびその使用が記載されている。記載の高温ガラスはんだは、13重量%~50重量%のAlを含み、SiOは、任意選択的にガラスはんだに含まれるだけである。
【0030】
アメリカ合衆国の特許出願である米国特許出願公開第2007/0238599号明細書には、シクロケイ酸塩を含む高結晶質の焼結ガラスセラミックが記載されている。一実施形態によると、米国特許出願公開第2007/0238599号明細書のガラスセラミックは、必要な構成要素として、30重量%~55重量%のSiO、5重量%~40重量%のCaO、および0.1重量%~10重量%のAlを含み、ガラスセラミックに含まれる酸化物BaO、CaO、およびSrOの合計は、40重量%~65重量%である。言い換えるなら、米国特許出願公開第2007/0238599号明細書のガラスセラミックは、CaOのみならず、常にBaOおよび/またはSrOをさらに含む。
【0031】
アメリカ合衆国の特許出願である米国特許出願公開第2010/0129726号明細書には、B含有量の少ない鉛不含ガラスであって、ガラスにおける酸化物SiO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、およびAlの含有量が少なくとも97mol%である、鉛不含ガラスが記載されている。
【0032】
封止材用のガラスセラミック組成物は、米国特許出願公開第2013/0108946号明細書にさらに記載されている。これらの組成物は、SiO、Al、およびCaOから、またはSiO、Al、CaO、およびSrOから、またはSiO、Al、およびLaから、また他の選択されるさらなる成分からのいずれかから成る。
【0033】
Reddy等は、RSC Advances, 2012, 2, 10955-10967において、封止材などの機能用途向けのメリライト系のガラスおよびガラスセラミックについて記載している。特にBiが結晶化剤として作用している。
【0034】
国際特許出願である国際公開第2017/220700号には、少なくとも部分的に結晶化したガラスを用いて作製された結合体およびそのような結合体を作製する方法が記載されており、少なくとも部分的に結晶化したガラスは、少なくとも1つの結晶相と、少なくとも部分的に結晶化したガラス中に構造化して分布するように配置された細孔とを有する。
【0035】
最後に、国際特許出願である国際公開第2018/066635号には、接合または結合するためのガラス組成物が記載されている。この組成物は、43mol%~53mol%のSiO、12mol%~33mol%のCaO、12mol%~33mol%のMgO、および1mol%~7mol%のLa、ならびに0mol%~4.5mol%のZnOを含有している。
【0036】
従来技術の前述の材料のすべてに欠点がある。
【0037】
例えば、独国特許発明第102012206266号明細書、独国特許出願公開第102014218983号明細書、および独国特許出願公開第102015207285号明細書による組成物は、必然的にBを含む。国際特許出願である国際公開第2017/220700号に記載のガラスもまた、好ましくはBを含む。しかしながら、Bは、すでに比較的低い温度で溶融する材料であるので、すでに先に記載したように、多くの場合、溶融において接合すべき部材を十分に濡らすために使用される。しかしながら、この手法では、接合結合体の高い耐熱性を実現することはできない。
【0038】
接合材料がBaOおよび/またはSrOを含有している場合、一般にCrを含む耐高温性の鋼との邪魔な接触反応が起こる。
【0039】
シクロケイ酸塩が結晶相として生成される場合、これらは、約810-6/Kの低過ぎる熱膨張係数を有する。
【0040】
さらに、高含有量の核形成材料、例えばTiOは不都合であり、これは、結晶化可能なガラスの制御されていない制御不能な結晶化をもたらす可能性がある。さらに、ここで検討される用途にとって最も都合の悪い場合には、TiOによって、低膨張性の結晶相が形成される可能性さえある。
【0041】
例えば、米国特許出願公開第2010/0129726号明細書に記載されているように、結晶相に組み込まれる成分の含有量が非常に多い場合、接合すべき材料の濡れ、したがって接合材料としてのその適合性には、疑問の余地がある。
【0042】
したがって、好ましくは900℃またはそれ以上もの耐温度性などの高い耐熱性を有し、溶融時に接合すべき材料および/または部材を濡らし、好ましくは高い熱膨張係数を有する結晶化可能なガラスが必要とされている。
【0043】
したがって、本発明の課題のさらなる態様はまた、従来技術の前述の弱点を克服するか、または少なくとも軽減する結晶化可能なガラスを提供することである。
【0044】
本発明の課題のこのさらなる態様は、独立請求項の主題によって解決される。さらなる形態および特別な実施形態は、従属請求項ならびに図および明細書に見られる。
【0045】
本発明のこのさらなる態様に関する開示は、少なくとも部分的に結晶化したガラスおよび接合相手を含む、接合結合体、特に、高温安定性のおよび/または機械的高負荷に耐えることが可能な接合結合体であって、少なくとも部分的に結晶化したガラスが、体積を基準として、10%未満、好ましくは5%未満の割合の残留ガラスを含む、接合結合体に関する。ここで、少なくとも部分的に結晶化したガラスは、結晶凝集体を含む。結晶凝集体は、多数の結晶子から形成されている。好ましくは、結晶子は、針状および/または小板状に形成されている。好ましくは、結晶子は、少なくとも部分的に結晶化したガラス全体に分布して、放射状に、例えば、球晶状(sphaerolithisch)および/または扇状および/または棒状および/または小板状に配置され得る。
【0046】
接合結合体をそのように構成することには、多くの利点がある。
【0047】
特に、10体積%未満、好ましくは5体積%未満でさえある低割合の残留ガラスによって、接合結合体の高い寸法安定性が達成される。
【0048】
さらに有利には、接合結合体の高い寸法安定性は、結晶化されたガラスに含まれる結晶子が凝集することよって確実になる。ここで、結晶子が針状および/または小板状に形成されることが特に有利である。本発明者等は、結晶凝集体において結晶子が針状および/または小板状に形成されることによって、少なくとも部分的に結晶化したガラスが機械的に安定して形成されることを見出した。これは、好ましくは針状および/または小板状に形成されている結晶子が、少なくとも部分的に結晶化したガラス全体に分布して、例えば、球晶状および/または扇状および/または棒状または小板状に配置されている場合、特に当てはまる。本発明者等は、少なくとも部分的に結晶化したガラス全体に分布して、結晶子が好ましくは針状および/または小板状に形成されていることによって、また例えば球晶状または放射状またはランダムで棒状にそれらが配置されることによって、結晶子が連動し、それによって、少なくとも部分的に結晶化したガラスの機械的安定性が、例えば、せん断力、圧縮力、または引張力に対して有利に向上すると考えている。この連動は、一種の「カードハウス構造」の形態でも起こり得る。
【0049】
結晶子は、小板状でも形成可能であり、すなわち、結晶化したガラスに小さな小板として分布し得る。断面図では、そのような形成は棒にも見えるので、それぞれについて区別することは困難である。本開示の文脈において、小板とは、デカルト座標系の1つの空間方向の横寸法(厚さ)が、第1の方向に垂直な他の2つの方向における横寸法(長さ、幅)よりも1桁小さく形成されている幾何学的形状であると理解される。
【0050】
本開示はさらに、少なくとも部分的に結晶化したガラスおよび接合相手を含む、接合結合体、特に、高温安定性のおよび/または機械的高負荷に耐えることが可能な接合結合体であって、ガラスが、
La 0.3mol%超~5mol%未満、好ましくは4.5mol%以下、特に好ましくは4mol%以下、
Nb 0mol%~9mol%、
Ta 0mol%~7mol%、
ここで
Σ(A) 0.2mol%超~9mol%、
[式中、Aは、酸化物において通常酸化数V+を有する元素であり、かつ例えば、Nb、および/またはTa、またはP、および/またはそれらの混合物を含むか、またはこれらを含み得る]
を含む、接合結合体に関する。
【0051】
強固な接合結合体、例えば、高温安定性のおよび/または機械的高負荷に耐えることが可能な接合結合体は、酸化物La、Ta、および/またはNb、ならびに場合によって組成Aのさらなる酸化物を、十分に、すなわち上記の範囲で添加することによって得ることが可能であると示された。
【0052】
ここで、Aは、酸化物において通常酸化数V+を有する元素を表す。よって、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスに含まれる原子「A」のすべてが同じ酸化状態にあるわけではない場合がある。
【0053】
ここで、本開示の文脈において、酸化物La、Nb、およびTa、ならびに場合によってガラスに含まれるさらなる酸化物Aは、「ガラスマトリックス形成酸化物」とも称され、本開示の文脈において、この用語は、結晶化可能なガラスを熱処理した後に、すなわち、ガラスが少なくとも部分的に結晶化したガラスとして存在する場合に、そのような酸化物が最初にガラスマトリックス中に残ることを意味する。したがって、「ガラスマトリックス形成酸化物」という用語は、より一般的な用語である「ガラス形成酸化物」とは異なる。特に、本開示の文脈において、例えば、CaOが、従来のガラス、例えばソーダライムガラスの一般的な構成要素であっても、酸化物MgOおよびCaOは、ガラスマトリックス形成酸化物ではない。本開示の実施形態によるガラスにおいて、CaOおよびMgOなどの酸化物は、結晶相に組み込まれ、すなわち、ガラスマトリックス中には残らず、したがって、ガラスマトリックス形成酸化物でもない。
【0054】
しかしながら、ガラスマトリックス形成酸化物の少なくとも一部、例えばLaが、セラミック化のさらなる過程において少なくとも部分的に結晶相に組み込まれ得ることは全くあり得ることである。しかしながら、通常、特にガラスマトリックス形成酸化物によって形成されるガラス質相の残留含有量が、少量ではあるが残っている。
【0055】
上記の範囲の酸化物La、およびNb、および/またはTa、および場合によってさらなる酸化物Aを有する本開示による接合結合体の形成は、少なくとも部分的に結晶化したガラスがこのようにして特に有利に構成されて、結合体を作製するための温度処理の間にガラス溶着が起こるようになっているので、有利である。すなわち、特に有利には、このようにして、強固な結合が接合結合体の個々の部分間に生成され、特に、接合相手に対する少なくとも部分的に結晶化したガラスの強固な結合が可能になる。しかしながら、ガラスマトリックス形成酸化物を前述の範囲に限定することによって、有利には、接合複合体の高い温度安定性および/または高い機械的強度が同時に生じることが確実になる。
【0056】
本開示の文脈において、以下の定義が適用される:
本開示の文脈において、結晶化可能なガラスとは、結晶化、特に、制御されたまたは少なくとも制御可能な結晶化が可能なガラスであると理解される。ここで、制御された結晶化とは、狙いを定めた温度処理によって、結晶化可能なガラスを、ガラスが少なくとも部分的に結晶化して存在している状態であって、少なくとも部分的に結晶化したガラスおよび/またはその組織の結晶学的組成、すなわち、少なくとも部分的に結晶化したガラスに含まれる結晶および/または結晶子の空間配置および/またはサイズが好ましくは狙いを定めて調整される状態にすることができることと理解される。好ましくは、結晶化を制御することによって、例えば、結晶子が例えば1桁のマイクロメートル範囲にある実質的に均一なサイズを有する組織、すなわち、例えばすべての結晶子が約1μm~3μmの等価直径を有する組織を得ることができる。
【0057】
当然のことながら、より大きな結晶子またはより小さな結晶子を有する他の組織も可能である。
【0058】
少なくとも部分的に結晶化したガラスが複数の異なる結晶相を含む場合、結晶相内の平均結晶サイズまたは平均結晶子サイズが比較的類似しているが、結晶子サイズに関して個々の結晶相間に大きな差異がある場合もある。
【0059】
好ましく制御されたまたは制御可能な結晶化とは対照的に、ガラスの自発的な結晶化が見られ、この場合、予期しない結晶相、多くの場合、不所望な結晶相、特に完全な失透も生じ得る。
【0060】
本開示の文脈において、結晶凝集体または結晶会合体(Kristallvergesellschaftung)とは、少なくとも2つの結晶または結晶子の連晶であると理解される。ここで、結晶または結晶子は、特にランダムに相互成長している場合がある。これは、凝集体の個々の結晶子または結晶が、優先方向または特定の結晶面に沿って相互成長していなくてもよいことを意味する。
【0061】
「結晶または結晶子を針状に形成する」とは、結晶または結晶子が、その寸法が他の2つの空間方向における寸法よりも少なくとも1桁大きい方向を有することと理解される。言い換えるなら、針状に形成されている結晶または結晶子は、針状もしくは棒状に、または角柱状に形成され得て、角柱状の基本形状の横寸法は、結晶または結晶子の長さより少なくとも1桁小さい。そのような結晶または結晶子は、「角柱状に形成されている」とも称される。
【0062】
結晶子は、小板状でも形成可能であり、すなわち、結晶化したガラスに小さな小板として分布し得る。断面図では、そのような形成は棒にも見えるので、それぞれについて区別することは困難である。本開示の文脈において、小板とは、デカルト座標系の1つの空間方向の横寸法(厚さ)が、第1の方向に垂直な他の2つの方向における横寸法(長さ、幅)よりも1桁小さく形成されている幾何学的形状であると理解される。
【0063】
本開示の文脈において、「結晶または結晶子を放射状に配置する」とは、針状または小板状に形成された結晶、例えば、針状または角柱状の結晶または結晶子が、中心の周りに配置されており、一方の端部がこの点の方向に向いており、かつもう一方の各端部が放射状に外側へと異なる空間方向に向いていることと理解される。例えば、中心の方向に向いた端部は、中心点に接する場合がある。しかしながら、これは必須ではない。中心から放射状に外側へと向いたそのように形成された結晶凝集体は、例えば、球晶状に形成された結晶凝集体の形態で存在する。そのように球晶状に形成されたものは、ほぼ球形または楕円形の構成の結晶凝集体であり、2次元表現では、ほぼ円形を示し得る。しかしながら、実際には、組織において結晶および結晶凝集体が相互成長することに基づいて、多くの場合、理想的に球形または円形に形成された球晶からは異なるものになる。特に、球晶を形成する結晶または結晶子は、異なる長さおよび/または厚さを有し得る。
【0064】
放射状配置のさらなる構成は、2次元断面での扇状の形成である。例えば、結晶または結晶子を組織における特定の空間方向で形成することが不可能である場合がある。ここでも、結晶子または結晶は、中心から外側へと、ただし特定の立体角内でのみ延びる。
【0065】
「棒状または小板状に分布した配置」とは、個々の結晶または結晶子が、共通の中心から異なる空間方向へと外側に向かって延びているのではなく、ランダムに、例えば特定の優先方向なしで配置されていることと理解される。特に、結晶子または結晶は、互いに連動して配置され得る。そのような構造は、例えば、(カードハウスのカードなどの)個々の小板が互いに配置されて安定した構造を形成する「カードハウス」の構造にも例えることができる。
【0066】
本開示の文脈において、結晶化核とは、結晶化の開始点であると理解される。結晶化核は、原子の蓄積を促進して、結晶格子を、例えば熱力学的または速度論的に構築する。特に、結晶化核は、格子欠陥および/または原子の集合体であり得る。多くの場合、境界面は、結晶化の開始点であり得るか、または境界面は、結晶化のそのような開始点を含み得る。
【0067】
接合結合体の一実施形態によると、結晶子は、少なくとも部分的に粒界に結晶化核を含み、かつ/または結晶子の粒界に、ランタンを含む、特にランタン化合物を含む蓄積物が少なくとも部分的に配置されている。
【0068】
接合結合体をそのように構成することは、少なくとも部分的に結晶化したガラスと接合相手との間に特に強固な結合を形成することを可能にするのに有利である。結晶子が少なくとも部分的に粒界に結晶化核を含む場合、それによって、例えばカードハウスのように例えば放射状または棒状または小板状に分布して配置された結晶凝集体を含む少なくとも部分的に結晶化したガラスの組織の形成が促進される。
【0069】
これは、ランタンを含む、特にランタン化合物を含む蓄積物が、結晶子の粒界に少なくとも部分的に配置されている場合にも当てはまる。本発明者等は、ランタン、例えばランタン化合物の蓄積物が、効果的な結晶化核として作用し得ると考えている。
【0070】
接合結合体のさらなる実施形態によると、接合相手および少なくとも部分的に結晶化したガラスの熱膨張係数の差の値は、510-6/K以下、好ましくは310-6/K以下、特に好ましくは1×10-6/K以下である。接合結合体をそのように構成すること、特にガラスおよび接合相手の熱膨張係数を適合させることには、このようにして、そのように得られた接合結合体の耐熱性および/または機械的耐久性をさらに改善することができるという有利な効果がある。
【0071】
この接合結合体は、高い動作温度に曝すことが可能である。特に、1000℃以上の動作温度が可能である。結晶凝集体の存在および記載の構造によって、例えば、結晶凝集体が互いにかみ合って、いわば互いに連動することで、材料が機械的に安定化されると考えられている。残留ガラス相が含まれる場合、残留ガラス相が温度の影響によっていわば軟化するはずであっても、結晶凝集体および/またはそれらの構造によって、残留ガラス相を安定化させることもできる。
【0072】
同様に有利なことに、接合結合体は、特に振動負荷に対して機械的に安定している。これらはまた、ISO 16750-3(2007-08-01版)に準拠した振とう試験および振動試験において、温度を関数として測定される。結晶凝集体が材料における初期亀裂の伝播を抑制し、局所的に損傷が生じた場合でも、接合結合体を有する部材の破損が回避されると考えられている。
【0073】
本開示の一実施形態によると、接合結合体は、少なくとも1000℃の動作温度に耐え、好ましくは、接合結合体は、ISO16750-3に準拠して測定して、耐振とう性および耐振動性である。
【0074】
言い換えるなら、結晶凝集体は、動作状態において、少なくとも部分的に結晶化したガラスの体積要素の変位を互いに抑制するように思われる。これは、結晶凝集体を含む任意の2つの隣接する体積要素を考慮することと想定することができる。機械的負荷のある動作状態では、体積要素を互いに変位させる傾向のある力、例えばせん断力が体積要素に作用し得る。結晶凝集体が、適切な構造、特に挙げられた構造を有する場合、これらは、互いにかみ合って、そのようにして、体積要素が互いに変位することをすでに純粋に機械的に抑制することができる。
【0075】
すなわち、接合結合体のさらなる別の実施形態によると、結晶凝集体は、動作状態において、少なくとも部分的に結晶化したガラスの体積要素が互いに変位することを抑制する。
【0076】
ここで、挙げられた手段はまた、特に有利には、組み合わせ可能であり得る。
【0077】
有利には、接合結合体は、少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面に、メニスカスがないか、または中立メニスカス(neutralen Meniskus)があるように構成されている。
【0078】
ここで、「メニスカスのない表面を形成する」とは、表面が湾曲状に形成されていないことと理解される。少なくとも部分的に結晶化したガラスの湾曲状に形成された表面は、例えば、ガラスが、接合結合体の作製のために加熱され、その際に少なくとも部分的に溶融(いわゆるガラス溶着)され、その際に接合相手が特に良好に濡らして、その結果、接合相手に対する境界面における毛管力によってガラスが上昇する場合に生じ得る。この場合、メニスカスは凹面状に形成されている。それとは反対に、濡れが僅かしかない場合、例えば、非常に高い粘度のガラスが存在する場合、凸面状のメニスカスが形成され得る。しかしながら、最適には、接合結合体は、少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面が、メニスカスなしで、すなわち、上方または下方への湾曲なしで形成されるように構成されている。この場合、中立メニスカスとも称される。
【0079】
接合結合体のさらなる実施形態によると、接合相手の表面と少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面との間の移行領域において、好ましくは1cmあたり10個未満の細孔を含む、および/または好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有する、少なくとも大部分がアモルファスのガラス層が配置されている。
【0080】
このようにして特に強力な結合が達成可能であるので、そのような構成の接合結合体が有利である。特に、少なくとも部分的に結晶化したガラスと接合相手との間の境界面における多孔性が低いことによって、有利には、結合体の機械的耐久性および/または耐熱性がさらに向上する。すなわち、境界面におけるまたは境界面付近の細孔は、特に接合結合体が高温に曝されている場合、機械的破損の開始点になり得る。
【0081】
また、境界面におけるアモルファスガラス層の厚さが薄いだけで、例えば熱的および/または機械的に高負荷に耐えることが可能な接合結合体の形成が有利に補助される。「ガラス層を形成する」とは、接合相手とガラスとの間に化学結合があることを意味する。しかしながら、本開示によると、少なくとも部分的に結晶化したガラスが、10体積%未満、好ましくは5体積%未満の割合の残留ガラスを有する場合、特に有利である。言い換えるなら、少なくとも部分的に結晶化したガラスは、僅かな割合の残留ガラスしか有しないはずである。これは、接合結合体の熱的安定性および/または機械的安定性が、特に1つの結晶相または複数の結晶相が形成されることによって生じるためである。したがって、有利には特に、アモルファスガラス層が、最大5μm以下、好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下の薄い厚さを有する場合、高い耐熱性および/または機械的耐久性が確実になる。
【0082】
接合結合体の一実施形態によると、接合相手は、金属、特に、鋼、例えば、普通鋼、ステンレス鋼、不錆鋼、およびThermax、例えば、Thermax 4016、Thermax 4742もしくはThermax 4762という商標名、またはCrofer22 APUもしくはCrofer22 Hという商標名でも知られている高温安定性フェライト鋼、あるいはNiFe系材料、例えば、NiFe45、NiFe47もしくはニッケルメッキピン、あるいはInconel、例えば、Inconel 718もしくはX-750という商標名で知られているNiFe系材料、あるいは例えば、CF25、Alloy 600、Alloy 601、Alloy 625、Alloy 690、SUS310S、SUS430、SUH446もしくはSUS316という名称で知られている鋼、あるいは1.4762、1.4828もしくは1.4841のようなオーステナイト鋼、カンタル電熱線のグループからの金属、あるいは高温安定性セラミック化合物、例えば、フォルステライト、酸化アルミニウム系セラミックもしくは酸化ジルコニウム系セラミック、例えば、Y安定化酸化ジルコニウムを含むセラミックを含む。
【0083】
一実施形態によると、接合結合体は、10-8mbarl/s未満のヘリウム漏れ速度を示し、および/または一実施形態によると、80GPa~200GPaの弾性率を有する、好ましくは100GPa~125GPaの弾性率を有する少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む。このようにして十分な機械的剛性が達成されるが、それでいて、そのような結合体は、例えば従来のセラミックと比較してより弾性であるので、そのような構成が有利である。これは、温度変化の負荷がある場合に有利であり、したがって、有利には、特に温度安定性のある接合結合体がもたらされる。
【0084】
本開示はさらに、
La 0.3mol%超~5mol%未満、好ましくは4.5mol%以下、特に好ましくは4mol%以下、
Nb 0mol%~9mol%、
Ta 0mol%~7mol%、
ここで
Σ(A) 0.2mol%超~9mol%、
[式中、Aは、酸化物において通常酸化数V+を有する元素であり、かつ例えば、Nb、および/またはTa、またはP、および/またはそれらの混合物を含み得る]
を含む、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスに関する。
【0085】
ガラスと接合相手との強固な結合体は、酸化物La、Ta、および/またはNb、ならびに場合によって組成Aのさらなる酸化物を、十分に、すなわち上記の範囲で添加することによって得ることが可能であると示された。
【0086】
ここで、Aは、酸化物において通常酸化数V+を有する元素を表す。よって、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスに含まれる原子「A」のすべてが同じ酸化状態にあるわけではない場合がある。
【0087】
ここで、本開示の文脈において、酸化物La、Nb、およびTa、ならびに場合によってガラスに含まれるさらなる酸化物Aは、「ガラスマトリックス形成酸化物」とも称され、本開示の文脈において、この用語は、結晶化可能なガラスを熱処理した後に、すなわち、ガラスが少なくとも部分的に結晶化したガラスとして存在する場合に、そのような酸化物が最初にガラスマトリックス中に残ることを意味する。したがって、「ガラスマトリックス形成酸化物」という用語は、より一般的な用語である「ガラス形成酸化物」とは異なる。特に、本開示の文脈において、例えば、CaOが、従来のガラス、例えばソーダライムガラスの一般的な構成要素であっても、酸化物MgOおよびCaOは、ガラスマトリックス形成酸化物ではない。本開示の実施形態によるガラスにおいて、CaOおよびMgOなどの酸化物は、結晶相に組み込まれ、すなわち、ガラスマトリックス中には残らず、したがって、ガラスマトリックス形成酸化物でもない。
【0088】
しかしながら、1つ以上のガラスマトリックス形成酸化物、例えばLaなどが、セラミック化の後の過程において少なくとも部分的に結晶相に組み込まれることは全くあり得ることである。しかしながら、基本的には、いわゆるガラスマトリックス形成酸化物によって形成される残留ガラス割合が残る。
【0089】
成分La、Ta、および/またはNb、ならびに場合によってさらなる酸化物Aの添加は、まず出発材料の高いガラス安定性に寄与する。先に説明したように、これらの酸化物は、熱処理の後に、すなわち、結晶化可能なガラスを少なくとも部分的に結晶化したガラスにすることが可能な熱処理の後に、少なくとも最初は、結晶子および/または結晶を囲むガラスマトリックス中に残り続ける酸化物である。
【0090】
本発明者等は、これらの成分が、仮にそうなったとしても、熱処理の後の過程で初めて、結晶組織構成要素に変換され、かつ/またこれらに組み込まれると想定している。特に、少なくとも成分Laは、少なくとも部分的に結晶相に組み込まれ得る。
【0091】
ここで、驚くべきことに、特に、La、Ta、および/またはNb、ならびに場合によってさらなる酸化物Aなどの上記の酸化物を含み得るこのガラス質の組織成分によってまさに、接合相手、すなわち接合すべき材料および/または部材との強固な結合が確実になり、それにもかかわらず、900℃の温度または950℃もしくは1000℃以上もの温度などの高温の場合に、得られる結合体の高い寸法安定性が抑制されないことが示された。
【0092】
本開示の文脈において、材料および/または部材は、これが、900℃以上、好ましくは950℃以上、特に好ましくは1000℃以上の温度で使用可能である場合、特に、これが、900℃以上、好ましくは950℃以上、特に好ましくは1000℃以上の温度で、100時間以上、好ましくは500時間以上、特に好ましくは1000時間にわたって使用可能である場合、耐高温性または高温安定性であると称される。特に、材料および/または部材は、挙げられた期間にわたってこれらの温度で変形に対して安定であるように形成され得る。
【0093】
この高い寸法安定性はまた、結晶化が比較的早期に開始することによるものである。しかしながら、ガラスマトリックスを理由に、これは、接合相手の強固な結合を抑制することはない。これは特に驚くべきことである。というのも、これまでは、結晶化が焼結の完了後に初めて生じて、強固で密な結合を得ることができると想定されていたからである(例えば、Tulyaganov等, Journal of Power Sources 242 (2013), 486-502を参照)。
【0094】
ガラスに含まれ得て、かつ熱処理後にガラスマトリックス中に少なくとも部分的に残るさらなる成分は、Biおよび/またはPである。しかしながら、これらの成分は、ここで取り上げるガラスの高温安定性およびこのガラスを用いて作製される接合結合体の観点からは不利である。したがって、一実施形態によると、有利には、ガラスは、不可避の痕跡量を除いて、Biおよび/またはPの酸化物を含まない。
【0095】
本開示の文脈において、500ppm以下の含有量のこの成分が、不可避の痕跡量の成分と称される。ここで、単位「ppm」は、重量を基準とする。
【0096】
さらなる別の実施形態によると、ガラスは、不可避の痕跡量を除いて、アルカリ金属および/またはホウ素の酸化物を含まない。特に、これは、本発明の特に好ましい実施形態によると、ガラスが最大500ppmのBを含むことを意味する。アルカリ金属酸化物および/またはBからのこれらの実施形態によるガラスがないことが有利である。というのも、前述の成分は、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスの耐温度性を低下させるからである。さらに、これらの成分、例えば、特定のアルカリ金属は、ここで取り上げる用途には望ましくない低膨張性の結晶相を形成する可能性がある。さらに、アルカリ金属含有量は、電気抵抗を低下させるので不利である。
【0097】
一実施形態によると、ガラスは、酸化物ROを含み、かつ
Σ(RO) ≦55mol%
[式中、Rは、酸化物において通常酸化数II+を有する元素であり、かつ特に、Ca、Mg、またはZn、および/またはそれらの混合物を含む]
が成り立つ。
【0098】
言い換えるなら、ROは、アルカリ土類金属酸化物およびZnOを含む。本開示の好ましい実施形態によると、ガラスは、ガラスと、クロム含有接合材料、例えばクロム含有鋼などとの邪魔な接触反応を回避するために、不可避の痕跡量を除いて、アルカリ土類金属酸化物BaOおよび/またはSrOを含まない。
【0099】
さらなる実施形態によると、ガラスは、
SiO 30mol%~40mol%、
Al 3mol%~12mol%、
CaO 32mol%~46mol%、
MgO 5mol%~15mol%、
ZnO 0mol%~10mol%、
ならびに任意選択的に、
ZrO 0mol%~4mol%、好ましくは最大3mol%、および/または
TiO 0mol%~4mol%、好ましくは最大3mol%、および/または
MnO 0mol%~5mol%
を含む。
【0100】
一実施形態によると、TiO、ZrO、および/またはMnOは、任意選択的にガラスに含まれ得る。しかしながら、ガラス中のこれらの成分の含有量は限定されている。特に、結晶化可能なガラスにおいて、公知の核形成剤であるTiOおよびZrOは、核形成剤としては必要ない。さらに、これが存在すると邪魔になる可能性がある。というのも、本願にとって最も不都合な場合には、低膨張性の不所望な結晶相が生じ得るからである。
【0101】
さらなる実施形態によると、ガラスのCaO含有量は、少なくとも35mol%~最大46mol%、好ましくは少なくとも35mol%~43.5mol%未満であり、かつ/またはガラスのMgO含有量は、5mol%~13mol%未満である。
【0102】
一実施形態に従って限定されているガラスのCaOおよび/またはMgO含有量は、このようにして、自発的結晶化に対する結晶化可能なガラスの安定性がさらに向上することに起因する。CaOおよびMgOはそれぞれ、結晶化可能なガラスを熱処理することによって生成される結晶相に組み込まれる成分である。先に説明したように、ここでは、高い熱膨張係数を有する結晶相が得られることは、取り上げる用途にとって特に重要である。したがって、高い熱膨張係数を有する所望の結晶相が主に得られるように、好ましくは、ガラスのCaOおよびMgO含有量は、先に説明したようにさらに限定される。この限定は、特に、ウォラストナイト、エンスタタイト、ディオプサイド、またはこれらの結晶相の混晶の形成を、少なくとも可能な限り防止するか、または完全にさえ防止する役割を果たす。
【0103】
さらなる実施形態によると、ガラスは、結晶化可能なガラスとして存在しており、720℃超の変態温度を有する。
【0104】
ガラスの変態温度は、このガラスの加工特性およびその耐熱性の両方を反映する重要な特性パラメータである。特に、ガラスの高い変態温度には、ガラスの高い寸法安定性も伴う。
【0105】
したがって、好ましくは、一実施形態によると、結晶化可能なガラスは、特に高い寸法安定性を有し、このことは、720℃以上の記載の高い変態温度またはガラス転移温度Tに反映されている。
【0106】
さらなる実施形態によると、結晶化可能なガラスの線熱膨張係数は、20℃~300℃の温度範囲において8×10-6/K超であり、好ましくは、20℃~700℃の温度範囲において9×10-6/K超である。このようにして、有利には、結晶化可能なガラスを用いて、好ましくは気密の結合体を作製するための熱処理の終了前にすでに、ガラス質の材料を、接合すべき材料、例えば、Y安定化ZrOおよび/または合金のような高耐火性材料の線熱膨張係数に良好に適合させることが可能である。
【0107】
変態温度Tは、5K/分の加熱速度で測定した場合、膨張曲線の2つの分岐における接線の交点によって特定される。これは、ISO7884-8またはDIN52324に準拠した測定に対応する。
【0108】
「Ew」とも略されるガラスの軟化温度は、当該温度の範囲において、ガラスの粘度が107.6dPasの値にある温度を表す。
【0109】
本開示の文脈において、膨張係数としては、線熱膨張係数が記載される。結晶化可能なガラスの線熱膨張係数が記載されている場合、これは、(プッシュロッド膨張計を用いて)静的測定で特定される、ISO7991に準拠した公称平均線熱膨張係数である。少なくとも部分的に結晶化したガラスの線熱膨張係数は、膨張測定によって特定される。
【0110】
本開示の文脈において、線熱膨張係数は、αとも称される。例えば、α(20-700)またはα20-700は、20℃~700℃の温度範囲における線熱膨張係数を表す。
【0111】
本開示のさらなる別の実施形態によると、ガラスは、少なくとも部分的に結晶化したガラスとして存在しており、20℃~700℃の温度範囲において、910-6/K超、好ましくは10×10-6/K超の線熱膨張係数を有し、特に好ましくは、少なくとも部分的に結晶化したガラスの線熱膨張係数は、20℃~1000℃の温度範囲において、910-6/K超、好ましくは9.510-6/K超である。
【0112】
本開示の実施形態によると、ガラスは、好ましくは気密のおよび/または電気を絶縁する結合体が作製可能であるように形成されているだけではない。特に、実施形態によると、高温でも十分な電気絶縁を確実にし続ける、好ましくは気密のおよび/または電気を絶縁する結合体も作製することができる。
【0113】
この結合体が封止されている場合、すなわち、この場合では、流体媒体の流出または通過に対して封止されており、かつ好ましくは実質的に完全に(気密)封止されている場合、そのような結合体、例えば金属・ガラス結合体は、流密であると称される。ここで、封止性は、通常、ヘリウムリークテスターを用いて漏れ試験によって特定することができる。室温で110-8mbarl/s未満のヘリウム漏れ速度は、実質的に完全に気密の封止が生じていることを示す。この測定は、好ましくは、1barの圧力を加えて行われ得る。
【0114】
これらの実施形態によると、ガラスは、結晶化可能なガラスとして存在しており、結晶化可能なガラスの温度は、10Ωcmの比電気抵抗では、好ましくはDIN52326に準拠して測定して、500℃以上のt100である。
【0115】
一実施形態によると、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスは、特に、SiO、およびCaO、およびMgO、およびAl、ならびに任意選択的にZnOを含む。
【0116】
SiO-Al-CaO-MgO系では、高い熱膨張係数を有する結晶相を実現することができる。これには、例えばオケルマナイトおよび/またはメルウィナイトなどのCaOに富むカルシウム-マグネシウムケイ酸塩族からの混晶が該当し、これらは、例えば、Alとの混晶として、ゲーレナイトおよび/またはオーゴットも形成する。ガラスがZnOも含む場合、ハーディストナイトも混晶としてさらに形成され得る。
【0117】
一実施形態によると、ガラスは、少なくとも部分的に結晶化したガラスとして存在しており、好ましくは、CaOに富むカルシウム-マグネシウムケイ酸塩、特に、CaOに富むカルシウム-マグネシウム島状ケイ酸塩(Inselsilikaten)および/またはソロケイ酸塩(Gruppensilikaten)の結晶子を含む。ここで、島状ケイ酸塩とは、ケイ酸塩に含まれるSiO四面体が個別に存在する、すなわち互いに結合していない、ケイ酸塩である。ソロケイ酸塩においては、2つのSiO四面体が共通の架橋酸素を介して互いに結合されていることでSi集合体がケイ酸塩構造単位として存在する、ケイ酸塩が存在する。好ましくは、少なくとも部分的に結晶化したガラスは、マーウィナイトCaMg(SiO、および/またはマーウィナイト構造を有する混晶を島状ケイ酸塩として含み得る。さらに、少なくとも部分的に結晶化したガラスは、代替的または追加的に、オケルマナイトCaMgSiまたはゲーレナイトCaAl[AlSiO]またはそれらの混晶などのメリライト構造を有する結晶相をソロケイ酸塩として含み得る。さらに、少なくとも部分的に結晶化したガラスは、一実施形態によると、オージャイト構造を有する結晶相も含み得る。
【0118】
本開示の文脈において混晶について言及される場合、これは、化学量論的化合物に対応しない結晶である。例えば、「オケルマナイト混晶」について言及される場合、これは、化学量論的組成CaMgSiを有しない結晶であると理解される。例えば、混晶が化学量論的組成よりも多くのCaを含むこと、またはCaの代わりにZnも組み込まれたことも可能である。しかしながら、混晶は、オケルマナイトの結晶構造に、ほぼ、すなわち、例えば格子定数に関する小さな偏差を除いて対応する結晶構造で結晶化する。
【0119】
一実施形態によると、ガラスは、少なくとも部分的に結晶化したガラスとして存在しており、好ましくは、CaOに富むカルシウム-マグネシウムケイ酸塩、特に、CaOに富むカルシウム-マグネシウム島状ケイ酸塩および/またはソロケイ酸塩の結晶子、例えば、メルウィナイトおよび/またはメルウィナイト構造を有する混晶、ならびに代替的または追加的に、オケルマナイトCaMgSiおよび/またはゲーレナイトCaAl[AlSiO]のようなメリライト構造を有する結晶相および/またはそれらの混晶、ならびに/またはオージャイト構造を有する結晶相を含む。
【0120】
本開示はまた、少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む接合結合体であって、ガラスが、本開示の実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスであるか、または本開示の実施形態による結晶化可能なガラスから製造されたもしくは製造可能である、接合結合体に関する。
【0121】
本開示の意味合いにおいて、接合相手とは、多くの場合に他の材料もしくは部材と一緒に組み立てもしくは接合されて、好ましくは気密に組み立てられた部材にされる、またはそうなるべき材料もしくは部材であると理解される。結合すべき接合相手が複数存在する場合、これらは、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
【0122】
本開示の文脈において、結合体は、接合複合体または接合結合体とも称される。
【0123】
本開示はまた、製造物にも関する。製造物とは、特に、本開示の実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む、保持要素および/または絶縁要素および/または付加構造体である。
【0124】
好ましくは、製造物は、本開示の実施形態による結晶化可能なガラスを含む焼結体から製造可能である。ここで好ましくは、焼結体は、ガラス粉末としての結晶化可能なガラスを含む。極めて特に好ましくは、ガラス粉末は、粒子表面を有する粉末粒子を含む。
【0125】
さらに、本開示は、本開示の実施形態による接合結合体の使用に関する。特に、結合体は、自動車の排気ガス設備などにおける排気ガスセンサ、圧力センサ、例えば煤粒子センサなどの粒子センサ、および/もしくは温度センサ、および/もしくはNOセンサ、および/もしくは酸素センサなどのセンサにおいて、ならびに/またはコンプレッサおよび/もしくは電動コンプレッサ用のフィードスルーにおいて、ならびに/または排気ガス要素および/もしくは燃料電池における電流フィードスルーとして、ならびに/または化学反応器用のフィードスルーにおいて、使用することができる。
【0126】
実施例
本明細書に開示されている、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス、ならびにその使用について、実施例に基づいて以下により詳細に説明する。
【0127】
以下の表は、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスの組成を例示的に示す。これらの組成は、いずれの場合もmol%で記載されている。特性温度は、灰の溶融挙動を表すために通常使用される温度、例えば、軟化温度(略称:軟化)、焼結温度(略称:焼結)、球温度(略称:球)、半球温度(略称:半球)、および流動温度であり、これらは、高温顕微鏡(略称:HSM)を用いて特定される。これらの温度は、DIN51730に準拠して、またはこれに基づいて特定する。熱膨張係数αは、いずれの場合も10-6/Kの単位で示されている。
【0128】
【表1-1】
【0129】
【表1-2】
【0130】
【表2-1】
【0131】
【表2-2】
【0132】
【表3-1】
【0133】
【表3-2】
【0134】
以下の表2には、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスの比較例が記載されている。
【0135】
【表4-1】
【0136】
【表4-2】
【0137】
比較例1、5、および6では、ガラスは、具体的には、1128℃(比較例1)、1166℃(比較例5)、および1147℃(比較例6)の流動温度で流動し始めた。
【0138】
比較例2、3、および4では、もはやガラスを得ることはできなかった。むしろ、これらの組成物は、溶融後、冷却時に制御されずに結晶化した。
【0139】
本開示の実施形態によるガラスは、溶融プロセスからガラス状で得られる。鋳造時に速い冷却速度は必要ない。特に、少なくとも30cm、すなわち100g超の重量を有する鋳造物を作製した。このことは、専門文献に、ガラス状の凝固がリボンの場合に小規模にしか可能ではないと記載されているので、さらに驚くべきことである。
【0140】
本開示による結晶化したガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスは、特に有利な寸法安定性を有する。このことは、例えば、本開示の実施形態による結晶化可能なガラスを含む焼結体と、この焼結体から温度処理して結晶化されることによって得られる少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む成形体との間の形状偏差が、非常に僅かでしかないこと、すなわち、例えば以下の表に記載の測定データに示されるように、長さの偏差が、1桁のパーセント範囲でしか得られないことによって示される。これらのデータを特定するために、約10~12mmの平均横方向寸法(ここでは平均直径)を有する圧縮物を作製した。焼結を行った後に、そのようにして得られた焼結成形体を、マッフル炉内で4K/分の加熱速度で1200℃に加熱した。1200℃の温度を10分間にわたって一定に保った。続いて、冷却を行った。冷却を行った後に、平均横方向寸法(ここでは平均直径)を再び特定した。続いて、1200℃での熱処理前後の平均横方向寸法の相対偏差を特定した。
【0141】
【表5】
【0142】
結晶化可能なガラスを最初に含んでおり、それから温度処理において少なくとも部分的に結晶化したガラスを少なくとも部分的に含む成形体にされる、圧縮物または焼結体などの成形体の寸法安定性が記載のように高いことによって、今では、例えば、フィードスルーにおける高い信頼性の沿面距離の延長も特に有利に実施することが可能になる。特に、成形体は、温度処理時に丸くならない。特にSCR触媒向けの特定のAdBlueで使用されるような濃度の尿素およびそれから生じる物質に対する耐久性が非常に優れているので、それによって、排気ガス洗浄システムを有する排気ガス設備における、本明細書に記載の接合結合体の長期動作耐久使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
以下で、本開示の実施形態を図に基づいてさらに説明する。
図1】本明細書に開示されている接合結合体の第1の実施形態の断面図であり、断面は、図1aからの平面AAに沿って、接合結合体のほぼ中心を通っている。
図1a図1に断面図で図示される第1の実施形態の平面図である。
図2】本明細書に開示されている接合結合体の第2の実施形態の断面図であり、断面は、図1および1aに図示されるように、この接合結合体のほぼ中心を通っている。
図2a】開示されている第1の実施形態の沿面距離延長部の平面図であり、この沿面距離延長部の上には、グラファイトペンまたは鉛筆の跡が認識できる。
図2b】開示されている第1の実施形態の沿面距離延長部の平面図であり、この沿面距離延長部の上には、横方向の拭き取る動きによってセルロース布で少なくとも部分的に除去された後のグラファイトペンまたは鉛筆の跡が認識できる。
図2c】開示されている第1の実施形態の沿面距離延長部の平面図であり、この沿面距離延長部の上には、横方向の拭き取る動きによってセルロース布で少なくとも部分的に除去された後のグラファイトペンまたは鉛筆の跡が認識できる。
図3】本明細書に開示されている接合結合体の第3の実施形態の断面図であり、断面は、図1および1aに図示されるように、この接合結合体のほぼ中心を通っている。
図4】本明細書に開示されている接合結合体の第4の実施形態の断面図であり、断面は、図1および1aに図示されるように、接合結合体のほぼ中心を通っている。
図5】本明細書に開示されている接合結合体の第5の実施形態の断面図であり、断面は、図1および1aに図示されるように、接合結合体のほぼ中心を通っている。
図6】本明細書に開示されている接合結合体の第6の実施形態の断面図であり、断面は、接合結合体のほぼ中心を通っている。
図7】本開示の実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスの走査型顕微鏡写真である。
図8】本開示の実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスの走査型顕微鏡写真である。
図9】本開示の実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスの走査型顕微鏡写真である。
図10】本開示の実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスの走査型顕微鏡写真である。
図11】本開示の一実施形態による接合結合体の走査型顕微鏡写真である。
【0144】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書に開示されている実施形態の以下の詳細な説明において、それらの構成要素は、より理解し易くするために、縮尺通りには描かれておらず、同じ参照記号は、各実施形態の同じまたは機能的に対応する構成要素を表す。
【0145】
図1は、本明細書に開示されている接合結合体5の第1の実施形態の断面図であり、断面は、図1aからの平面AAに沿って、接合結合体5のほぼ中心を通っており、中心線Mを含む。
【0146】
この接合結合体5は、電気絶縁部材53および少なくとも2つの接合相手51,52を含む。本明細書に開示されている実施形態では、接合相手51は、一般性を制限することなく、中空円筒形に形成されており、以下の箇所でさらにより詳細に説明されるような金属またはセラミック材料を含む。接合相手52も同様に、以下でさらにより詳細に記載されるような金属からなり得て、例えば、電気または電子フィードスルーの一部となり得て、したがって、その意図された使用において、電気的または電子的な結合体の一部となり得る。
【0147】
接合相手51,52のうちの少なくとも一方は、電気絶縁部材53によって、接合相手51,52のうちの少なくとも他方から電気的に絶縁された状態に保たれている。
【0148】
この部材53は、本明細書に開示されている結晶化可能なガラスまたは部分的に結晶化したガラスを含み得るか、またはこれから成り得る。
【0149】
絶縁部材53は、接合相手51,52間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している一部分54を有する。ここで、本開示の文脈において、「ガラス溶着されている」とは、本明細書に開示されている結晶化可能なガラスまたは部分的に結晶化したガラスが、それらの熱処理時に、それらの表面に、各接合相手の材料にいわば溶融付着し得るアモルファス層またはガラス質層を形成することを意味し、この溶融付着した状態において、「ガラス溶着されている」と称される。
【0150】
図1において、絶縁要素の上側表面Oは、点線Lで一部分54から区切って図示されており、これによって、構造体Sを有しない、したがって沿面距離延長部を有しない上側表面Oのプロファイルが、構造体Sを有する、したがって沿面距離延長部を有する接合結合体と比較して単に概略的に図示される。構造体Sがないと、上側表面は平面状の表面を形成し、その上に、場合によって、各接合相手に対してメニスカスが形成されている可能性がある。
【0151】
しかしながら、本明細書に開示されている実施形態では、接合相手間に延在する電気絶縁部材53の一部分54のこの表面上に、構造体S、特にこの場合は一部分55によって形成される隆起が配置されている。
【0152】
構造体Sを形成するこの一部分55によって、内側の接合相手52から外側の接合相手51までの絶縁部材53の表面上における距離を延長することができ、したがって、構造体Sがあると、沿面距離延長部を最大7倍またはそれ以上長くすることができる。
【0153】
それによって、各表面上の低抵抗の堆積物は、接合相手51と52との間の電気抵抗の低減に対して、非常により少ない程度でしか寄与し得ない。
【0154】
液滴および/または表面フィルムを形成する堆積物の場合、構造体Sが、10分の1ミリメートル未満、好ましくは20分の1ミリメートル未満、かつ10μm超の曲率半径Rvを有する端部を有すると、非常に有利であり得る。この場合、基本的に、多くの場合、重力の影響下でも、液滴による表面フィルムまたは被覆が、曲率半径Rvを有するこの端部にわたって延在することはなく、それによって、閉じた表面被覆が生じ得なくなる。
【0155】
本実施形態に図示される隆起の代わりに、構造体Sはまた、絶縁部材53内に凹んだ窪みを形成していてもよい。しかしながら、いずれの場合も、特に、表面に沿った、少なくとも一方の接合相手から少なくとも他方の接合相手への直接経路は、この構造体Sを有しない表面に比べて延長される。ここで、直接経路とは、一方では構造体Sを有しない、他方では本発明により構造体Sを有する表面に沿った、一方の接合相手から他方の接合相手への最短経路であると理解される。
【0156】
好ましくは、構造体Sは、少なくとも一方の接合相手、ここでは、例示的に図1aからも良好に認識できるように、環状構造体としての接合相手52を完全に取り囲む。本開示の意味合いにおいて、「完全に取り囲まれている」という表現は、基本的に該当し得るものの、ここで完全に3次元的に取り囲まれていなければならないことを意味するものではない。本開示の文脈において、特にこの取り囲みによってすでに完全な封止をもたらすことが可能であるように完全な環状の取り囲みが実現されればすでに、完全な取り囲みは成立している。
【0157】
構造体Sは、接合相手51,52間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、絶縁部材53の一部分54と一体かつ同材料で形成され得る。
【0158】
ここで好ましくは、絶縁部材53の材料は、本開示の文脈において他の箇所でさらにより詳細に記載されているような少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む。
【0159】
この場合、絶縁部品53を構造体Sと一緒に単一の熱処理工程でまとめて形成することができ、特に、それらの結晶化度を調整することができる。
【0160】
有利には、本明細書に開示されている結晶化可能なガラスによって、熱処理中に、特に、接合相手の表面と少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面との間の移行領域におけるガラス溶着中に、この箇所で後に長期動作耐久性となるように配置された、好ましくは1cmあたり10個未満の細孔を含む、および/または好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有する、少なくとも大部分がアモルファスのガラス層が形成される。それによって、接合相手51,52と絶縁部材53との間に気密な結合がもたらされる。
【0161】
好ましい実施形態では、この構造は、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスを含み、構造体の表面に、少なくとも大部分がアモルファスの境界層、特に、実質的に開孔を有しない、特に細孔10個/cm未満を含む、5μm以下、好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有するガラス層が形成されている。
【0162】
実施形態に応じて、5μm以下、好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有する、この少なくとも大部分がアモルファスの境界層において、それぞれ重量パーセントで測定されたアモルファス相またはガラス質相の割合は、同様に重量パーセントで測定された、すべての各結晶相全体の割合よりも高い。
【0163】
しかしながら、ガラスマトリックス形成酸化物の少なくとも一部、例えばLaが、セラミック化のさらなる過程において少なくとも部分的に結晶相に組み込まれ得ることは全くあり得ることである。しかしながら、通常、特にガラスマトリックス形成酸化物によって形成され、かつ先に言及されたアモルファス境界層を形成するガラス質相の残留含有量が、少量ではあるが残っている。
【0164】
本明細書に開示されている実施形態があるかどうかを確かめるために、本発明者等はある試験を開発した。
【0165】
構造体Sの表面または表面Oに、ペンを用いて、例えば硬度HBのグラファイトペンを用いて、これを、構造体Sの表面に対して垂直に約100mNで押し付けて、図2a~図2cに図示されるように、例えば線Stを描く場合、この線Stは、図2aに図示されるように得られる。
【0166】
グラファイトペンまたは鉛筆のグラファイトは、他の箇所は滑らかな表面の細孔内に保持することができないので、構造体Sの表面または表面Oに平行に、例えばZewaという商標のセルロース布を用いて同様に約100mNの接触圧力で拭くと、結晶化可能なガラスまたは部分的に結晶化したガラスを含む本明細書に開示されている部材の場合、非常に多い除去量が生じる。ここで一般に、線Stと構造体Sの表面または表面Oとの間のコントラストは、例えば、50%未満の値またはコントラストの表記に応じて0.5未満の値に大幅に低下する。
【0167】
しかしながら、グラファイトペンまたは鉛筆のグラファイトは、セラミックの表面の細孔内に保持することができるので、構造体Sの表面または表面Oに平行に、例えばZewaという商標のセルロース布を用いて同様に約100mNの接触圧力で拭くと、例えば酸化ジルコニウムから成る部材の場合、僅かな除去量しか生じない。ここで一般に、線Stと構造体Sの表面または表面Oとの間のコントラストは、例えば、50%超の値またはコントラストの表記に応じて0.5超の値に僅かしか低下しない。
【0168】
さらなる実施形態では、単に例示的に図3および図4に示されているように、構造体は、接合相手51,52間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、絶縁部材53の一部分54と同材料ではない。ここで、この構造体Sは、高温安定性セラミック材料、例えば、フォルステライト、酸化アルミニウム系セラミック、または酸化ジルコニウム系セラミック、例えば、Y安定化酸化ジルコニウムを含むセラミックを含み得るか、またはこれから成り得る。構造体Sが本発明による材料から形成されていない場合、鉛筆試験も積極的に実施することができない。
【0169】
図2は、本明細書に開示されている接合結合体の第2の実施形態の断面図を示し、断面は、図1および図1aに図示されるように、この接合結合体のほぼ中心を通っている。
【0170】
この実施形態では、構造体Sは、金属箔、金属シート、または金属を含むスクリム、メッシュもしくは編物を含むか、またはこれからなる補強材56を含み、金属は、好ましくは、鋼からなるか、または鋼を含む。この実質的に環状の補強材56は、焼結体として形成されて補強材56を収容することができる、熱処理後にこれにガラス溶着することが可能なさらなる絶縁部材57,58,59内に保持されていることが好ましい。ここで、実質的に環状の部材57、58、および59の材料は、本開示の結晶化可能なガラスから成り得る。
【0171】
図3は、本明細書に開示されている接合結合体の第3の実施形態の断面図を示し、断面は、図1および図1aに図示されるように、この接合結合体のほぼ中心を通っている。
【0172】
この実施形態では、構造体Sは、接合相手51,52間で、これとそれぞれ結合されて、好ましくはこれらにそれぞれガラス溶着されて延在している、絶縁部材53の一部分54と同材料ではない。構造体Sは、高温安定性セラミック材料、例えば、フォルステライト、酸化アルミニウム系セラミック、または酸化ジルコニウム系セラミック、例えば、Y安定化酸化ジルコニウムを含むセラミックを含むか、またはこれから成る。
【0173】
図3からよく分かるように、構造体Sは、絶縁部材53内に凹んでおり、熱処理中に好ましくは構造体Sの凹んだ領域においてガラス溶着が生じるように絶縁部材53によって取り囲まれている。ここで、構造体Sは、絶縁部材53の一部分54において半径方向でほぼ中央に、好ましくは少なくとも部分的にその内部に凹んで配置されている。この半径方向は、図3の矢印Rによって図示される。
【0174】
図4は、本明細書に開示されている接合結合体の第4の実施形態の断面図を示し、断面は、図1および図1aに図示されるように、接合結合体のほぼ中心を通っている。
【0175】
接合結合体5の概略的な縮尺通りではないこのさらなる図は、沿面距離延長部55を形成する構造体Sが構成されている点で、図1図8に図示される接合結合体5とは異なる。これは、一部分54の材料のみならず、第2の材料も含む。この第2の材料も同様に絶縁材料であるが、一部分54の材料とは異なる。この実施形態では、一部分54の材料は、後の箇所でさらにより詳細に記載されるように、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスとして形成されており、第2の材料は、異なる化学組成および/または結晶学的組成を有する。すなわち、第2の材料は、これが異なる化学組成を有する点、および/またはこれが異なる結晶含有量を有する点で、一部分54の材料とは異なる。特に、第2の材料は、ZrOから形成され得るか、またはZrOを含み得る。第2の材料として、5重量%~25重量%の第2の材料、好ましくはZrOが添加される場合、特に寸法安定性かつ温度安定性の構造体Sが沿面距離延長部として可能であることが示された。10~15重量%の含有量が特に好ましい。
【0176】
図5は、第5の実施形態による接合結合体5の構成を非常に概略的に示す。ここで、一部分55の外側側壁552は、僅かに湾曲した形状または曲がった形状を有するので、完全に平面状に形成されてはいない。それとは対照的に、一部分55の内側側壁553は、ここでは平面状に形成されている。図5から分かるように、側壁552の平坦度は、側壁553の平坦度とは異なる。ここでは、側壁552は、いくらか歪めて図示される。というのも、実際には、平面状に形成された側壁からそのように大きくは偏差していないからである。
【0177】
図6は、内側側壁552および外側側壁553の両方がそれぞれ完全には平坦または平面状ではない、第6のさらなる実施形態による接合結合体5の場合を示す。しかしながら、ここでは、平坦度は、側壁552および553の両方についてほぼ同じに形成されている。ここでも、完全には平坦ではない側壁の効果を示すことができるように、再び強く歪みを生じさせた。基本的に、平坦な側壁からの偏差は、かなりより小さくなる。
【0178】
図7は、本開示の一実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスの第1の走査型顕微鏡写真を示す。少なくとも部分的に結晶化したガラスは、多数の結晶子から形成された結晶凝集体1を含み、これらの結晶子は、好ましくは針状に形成されている。ここで図1では、結晶凝集体1を例示的にそれとして示した。さらに、結晶子21が粒界で認識可能であり、これらを例示的に示した。針状に形成されている結晶子22も同様である。
【0179】
図8は、本開示のさらなる実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスの第2の走査型顕微鏡写真を示す。ここでも、少なくとも部分的に結晶化したガラスは、好ましくは針状に形成されている多数の結晶子から形成された結晶凝集体を含む。さらに、個々の結晶子の間には部分的に細孔が配置されており、少なくとも部分的に結晶化したガラスはさらに、結晶子の間に配置された残留ガラス相をなおも含む。ここで例示的には、ここで星形に形成された結晶凝集体を形成する結晶子2が示される。走査型顕微鏡による表示において灰色である残留ガラス相3、および例示的に示される細孔4(黒色)も同様に認識することができる。
【0180】
図9は、本開示のさらなる別の実施形態による少なくとも部分的に結晶化したガラスの第3の走査型顕微鏡写真である。ここでも、結晶凝集体を認識することができる。ここでは、結晶子は、非常に微細に形成されているので、これらは、選択された解像度ではそれ自体ほとんど認識することができない。このようにして、非常に密で微細な構造体が得られる。ここでは、例示的に、示されている非常に微細な結晶22を参照することができる。
【0181】
図10は、本開示の一実施形態によるさらなる別の少なくとも部分的に結晶化したガラスのさらなる別の走査型顕微鏡写真である。図9に示される少なくとも部分的に結晶化したガラスの結晶子とは対照的に、少なくとも部分的に結晶化したガラスの結晶凝集体に含まれる結晶子23は、それほど微細には形成されておらず、むしろ、それらの棒状またはおそらく小板状の形態が認識可能である。ここで、結晶子23は、「カードハウス構造」と同様に、互いに連動して配置されている。
【0182】
図11は、本開示の一実施形態による接合結合体の走査型顕微鏡写真を示す。写真左側に配置されている接合相手と少なくとも部分的に結晶化したガラスとの間の境界面に、細孔10個/cm未満を含む非常に薄い境界層が形成されている。これは、5μm以下、好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有する少なくとも大部分がアモルファスのガラス層である。
【0183】
以下の記述は、先に開示されているすべての実施形態について当てはまる。
【0184】
上記の実施形態は、2つの接合相手に関してのみ記載した。しかしながら、本明細書に開示されているのと同様に、3つ以上の接合相手でも絶縁部材によって接合結合体において互いに保持可能であることが、本開示の範囲内にある。
【0185】
本開示の接合結合体によって、沿面距離の何倍もの延長が可能であり、ここでは、7倍超の延長が実現された。
【0186】
電気腐食を受けやすい環境における耐水性と、本明細書に開示されている接合結合体の高い寸法安定性との組み合わせも有利である。
【0187】
電気抵抗が十分に高いことによって、(一般に)水の凝縮下でも、または冷却剤の凝縮下でさえも、沿面距離延長部としての結晶化可能なガラスの(例えば、電動コンプレッサにおけるフィードスルーとしての)使用が可能になる。
【0188】
セラミックに比べた利点は、構造体S、すなわち、突き出た材料の細孔が閉じていることである。
【0189】
ここで、長期動作耐久性用途は、(主に、例えば加熱可能な触媒要素において使用するための)発熱体用の、排ガスシステム内のセンサ用の電気供給または電力供給のフィードスルー、また一般に、主に自動車用途の電動コンプレッサ用のフィードスルーを含む。
【0190】
先に開示されている実施形態では、結晶子は、少なくとも部分的に粒界に結晶化核を含み得て、かつ/または結晶子の粒界に、ランタンを含む、特にランタン化合物を含む蓄積物が少なくとも部分的に配置されている。
【0191】
動作状態では、本明細書に開示されている結晶化可能なガラスまたは部分的に結晶化したガラスの結晶凝集体は、少なくとも部分的に結晶化したガラスの体積要素が互いに変位することを抑制する。
【0192】
本開示の接合結合体の場合、少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面にはメニスカスがない。
【0193】
本開示の接合結合体の場合、接合相手は、金属、特に、鋼、例えば、普通鋼、ステンレス鋼、不錆鋼、およびThermax、例えば、Thermax 4016、Thermax 4742もしくはThermax 4762という商標名、またはCrofer22 APUもしくはCrofer22 Hという商標名でも知られている高温安定性フェライト鋼、あるいはNiFe系材料、例えば、NiFe45、NiFe47もしくはニッケルメッキピン、あるいはInconel、例えば、Inconel 718もしくはX-750という商標名で知られているNiFe系材料、あるいは例えば、CF25、Alloy 600、Alloy 601、Alloy 625、Alloy 690、SUS310S、SUS430、SUH446もしくはSUS316という名称で知られている鋼、あるいは1.4762、1.4828もしくは1.4841のようなオーステナイト鋼、カンタル電熱線のグループからの金属、あるいは高温安定性セラミック化合物、例えば、フォルステライト、酸化アルミニウム系セラミックもしくは酸化ジルコニウム系セラミック、例えば、Y安定化酸化ジルコニウムを含むセラミックを含み得る。
【0194】
本開示の接合結合体は、10-8mbarl/s未満のヘリウム漏れ速度を有し、および/または80GPa~200GPaの弾性率、好ましくは100GPa~125GPaの弾性率を有する少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む。
【0195】
本開示の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスの場合、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスのCaO含有量は、少なくとも35mol%~最大46mol%、好ましくは少なくとも35mol%~43.5mol%未満であり得て、および/または結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスのMgO含有量は、5mol%~13mol%未満であり得る。
【0196】
本開示の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスの場合、ガラスは、少なくとも部分的に結晶化したガラスとして存在し得て、20℃~700℃の温度範囲において、910-6/K超、好ましくは1010-6/K超の線熱膨張係数を有し得て、特に好ましくは、少なくとも部分的に結晶化したガラスの線熱膨張係数は、20℃~1000℃の温度範囲において、910-6/K超、好ましくは9.510-6/超である。
【0197】
本開示の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスの場合、ガラスは、結晶化可能なガラスとして存在して、720℃超の変態温度Tを有し得る。
【0198】
本開示の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスの場合、結晶化可能なガラスの温度は、10Ωcmの比電気抵抗では、好ましくはDIN52326に準拠して測定して、500℃以上のt100である。
【0199】
本開示の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスの場合、少なくとも部分的に結晶化したガラスは、カルシウム-マグネシウムケイ酸塩、好ましくは、CaOに富むカルシウム-マグネシウムケイ酸塩、特に、CaOに富むカルシウム-マグネシウム島状ケイ酸塩および/またはソロケイ酸塩の結晶子、例えば、メルウィナイトおよび/またはメルウィナイト構造を有する混晶、ならびに代替的または追加的に、オケルマナイトCaMgSiおよび/またはゲーレナイトCaAl[AlSiO]のようなメリライト構造を有する結晶相および/またはそれらの混晶、ならびに/またはオージャイト構造を有する結晶相を含む。
【符号の説明】
【0200】
1 結晶凝集体
2 結晶子
21 粒界における結晶子
22 針状に形成されている結晶子
23 棒状または小板状に形成されている結晶子
3 残留ガラス
4 細孔
5 接合結合体
51 第1の接合相手
511 第1の接合相手の上端
52 第2の接合相手
521 第2の接合相手の上端
53 絶縁部材
54 接合相手間に配置された、絶縁部品の一部分
55 接合相手51から突出した、絶縁部材の一部分、すなわち、沿面距離延長部
56 補強材
57 実質的に環状の部材
58 実質的に環状の部材
59 実質的に環状の部材
M 中心線
S 沿面距離延長部を形成する構造体
O 絶縁部材53の上側表面
Rv 端部の曲率半径
St 構造体Sの表面または表面Oにペンで描かれた線
R 半径方向
図1
図1a
図2
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
La 0.3mol%超~5mol%未満、好ましくは4.5mol%以下、特に好ましくは4mol%以下、
Nb 0mol%~9mol%、
Ta 0mol%~7mol%、
ここで
Σ(A) 0.2mol%超~9mol%、
[式中、Aは、酸化物において通常酸化数V+を有する元素であり、かつ特にNb、Ta、またはP、および/またはそれらの混合物を含む]
を含む、結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項2】
酸化物ROを含み、かつ
Σ(RO) ≦55mol%
[式中、Rは、酸化物において通常酸化数II+を有する元素であり、かつ特に、Ca、Mg、またはZn、および/またはそれらの混合物を含む]
が成り立つ、請求項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項3】
SiO 30mol%~40mol%、
Al 3mol%~12mol%、
CaO 32mol%~46mol%、
MgO 5mol%~15mol%、
ZnO 0mol%~10mol%、
ならびに任意選択的に、
ZrO 0mol%~4mol%、好ましくは最大3mol%、および/または
TiO 0mol%~4mol%、好ましくは最大3mol%、および/または
MnO 0mol%~5mol%
を含む、請求項1または2記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項4】
- 前記結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスのCaO含有量が、少なくとも35mol%~最大46mol%、好ましくは少なくとも35mol%~43.5mol%未満であり、かつ/または
- 前記結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラスのMgO含有量が、5mol%~13mol%未満である、
請求項1から3までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項5】
前記ガラスが、結晶化可能なガラスとして存在しており、720℃超の変態温度Tを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項6】
前記結晶化可能なガラスの線熱膨張係数が、20℃~300℃の温度範囲において810-6/K超であり、好ましくは、20℃~700℃の温度範囲において910-6/K超である、請求項1から5までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項7】
前記ガラスが、少なくとも部分的に結晶化したガラスとして存在しており、
20℃~700℃の温度範囲において、910-6/K超、好ましくは1010-6/K超の線熱膨張係数を有し、
特に好ましくは、前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの線熱膨張係数が、20℃~1000℃の温度範囲において、910-6/K超、好ましくは9.510-6/K超である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項8】
前記結晶化可能なガラスの温度が、10Ωcmの比電気抵抗では、好ましくはDIN52326に準拠して測定して、500℃以上のt100である、請求項1から7までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項9】
前記少なくとも部分的に結晶化したガラスが、カルシウム-マグネシウムケイ酸塩、好ましくは、CaOに富むカルシウム-マグネシウムケイ酸塩、特に、CaOに富むカルシウム-マグネシウム島状ケイ酸塩および/またはソロケイ酸塩の結晶子、例えば、メルウィナイトおよび/またはメルウィナイト構造を有する混晶、ならびに代替的または追加的に、オケルマナイトCaMgSiおよび/またはゲーレナイトCaAl[AlSiO]のようなメリライト構造を有する結晶相および/またはそれらの混晶、ならびに/またはオージャイト構造を有する結晶相を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の結晶化可能なガラスまたは少なくとも部分的に結晶化したガラス。
【請求項10】
少なくとも部分的に結晶化したガラスおよび接合相手を含み、
前記ガラスが、請求項1~9までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化したガラスであるか、または請求項1~9までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化可能なガラスから製造されたもしくは製造可能である、
接合結合体。
【請求項11】
請求項1~9までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む、製造物、特に、保持要素および/または絶縁要素および/または付加構造体。
【請求項12】
請求項1~9までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化可能なガラスを含む焼結体から製造可能な請求項11記載の製造物であって、前記焼結体が、好ましくはガラス粉末としての結晶化可能なガラスを含み、特に好ましくは、前記ガラス粉末が、粒子表面を有する粉末粒子を含む、製造物。
【請求項13】
製造物であって、製造物が接合結合体であり、請求項1~9までのいずれか1項記載の少なくとも部分的に結晶化したガラスおよび接合相手を含む、接合結合体、特に、高温安定性のおよび/または機械的高負荷に耐えることが可能な接合結合体である、製造物。
【請求項14】
前記少なくとも部分的に結晶化したガラスが、体積を基準として、10%未満、好ましくは5%未満の割合の残留ガラスを含み、
前記少なくとも部分的に結晶化したガラスが、結晶凝集体を含み、
前記結晶凝集体が、多数の結晶子から形成されており、
前記結晶子が、好ましくは針状および/または小板状に形成されており、
前記結晶子が、特に好ましくは、前記少なくとも部分的に結晶化したガラス全体に分布して、放射状に、例えば、球晶状および/または扇状および/または棒状および/または小板状に配置されており、特に1つのまたは前記絶縁部材(53)を含む、請求項13に記載の製造物。
【請求項15】
前記結晶子が、少なくとも部分的に粒界に結晶化核を含み、かつ/または
前記結晶子の粒界に、ランタンを含む、特にランタン化合物を含む蓄積物が少なくとも部分的に配置されている、
請求項13または14に記載の製造物。
【請求項16】
接合相手および少なくとも部分的に結晶化したガラスの熱膨張係数の差の値が、510-6/K以下、好ましくは310-6/K以下、特に好ましくは1×10-6/K以下である、請求項13から15までのいずれか1項記載の製造物。
【請求項17】
少なくとも1000℃の動作温度に耐え、特に、ISO16750-3に準拠して測定して耐振とう性および耐振動性である、請求項13から16までのいずれか1項記載の製造物。
【請求項18】
前記動作状態で、前記結晶凝集体が、前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの体積要素が互いに変位することを抑制する、請求項13から17までのいずれか1項記載の製造物。
【請求項19】
前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面にメニスカスがない、請求項13から18までのいずれか1項記載の製造物。
【請求項20】
前記接合相手の表面と前記少なくとも部分的に結晶化したガラスの表面との間の移行領域において、好ましくは1cmあたり10個未満の細孔を含む、および/または好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下、極めて特に好ましくは1μm以下の厚さを有する、少なくとも大部分がアモルファスのガラス層が配置されている、請求項13から19までのいずれか1項記載の製造物。
【請求項21】
前記接合相手が、金属、特に、鋼、例えば、普通鋼、ステンレス鋼、不錆鋼、およびThermax、例えば、Thermax 4016、Thermax 4742もしくはThermax 4762という商標名、またはCrofer22 APUもしくはCrofer22 Hという商標名でも知られている高温安定性フェライト鋼、あるいはNiFe系材料、例えば、NiFe45、NiFe47もしくはニッケルメッキピン、あるいはInconel、例えば、Inconel 718もしくはX-750という商標名で知られているNiFe系材料、あるいは例えば、CF25、Alloy 600、Alloy 625、Alloy 690、SUS310S、SUS430、SUH446もしくはSUS316という名称で知られている鋼、あるいは1.4828もしくは1.4841のようなオーステナイト鋼のグループからの金属、あるいは高温安定性セラミック化合物、例えば、酸化アルミニウム系セラミックもしくは酸化ジルコニウム系セラミック、例えば、Y安定化酸化ジルコニウムを含むセラミックを含む、請求項13から20までのいずれか1項記載の製造物。
【請求項22】
10-8mbarl/s未満のヘリウム漏れ速度を有し、かつ/または
80GPa~200GPaの弾性率、好ましくは100GPa~125GPaの弾性率を有する少なくとも部分的に結晶化したガラスを含む、
請求項13から20までのいずれか1項記載の製造物。
【外国語明細書】