(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138394
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】パーキンソン病治療薬の安定化方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/522 20060101AFI20241001BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241001BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241001BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20241001BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241001BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241001BHJP
C07D 473/06 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K31/522
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/26
A61K9/28
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/34
A61P25/16
C07D473/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024110418
(22)【出願日】2024-07-09
(62)【分割の表示】P 2020024725の分割
【原出願日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019025498
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019025523
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019090226
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019090227
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100217098
【弁理士】
【氏名又は名称】清 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124822
【弁理士】
【氏名又は名称】千草 新一
(72)【発明者】
【氏名】長本 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】横江 翼
(72)【発明者】
【氏名】柳本 剛
(72)【発明者】
【氏名】林 正弘
(72)【発明者】
【氏名】牧野 良太
(72)【発明者】
【氏名】芦原 悠太
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 健太
(57)【要約】
【課題】イストラデフィリンを含む医薬組成物であって、医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解が抑制された医薬組成物を提供する。また、イストラデフィリンの安定化方法を提供する。
【解決手段】イストラデフィリンと、着色剤と、打錠圧力緩和物質と、の混合物を含む、打錠された固形製剤であって、イストラデフィリンに対する前記着色剤の含有量が、10~30質量%である、固形製剤を提供する。着色剤は、好ましくは黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄のいずれか一方又は両方を含み、より好ましくは黄色三二酸化鉄を含む、
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イストラデフィリンと、着色剤と、マンニトール及び無水リン酸水素カルシウムから選ばれる打錠圧力緩和物質と、の混合物を含む、打錠された固形製剤であって、
イストラデフィリンに対する前記着色剤の含有量が、1~50質量%である、固形製剤。
【請求項2】
イストラデフィリンと、着色剤と、マンニトールと、の混合物を含む、打錠された固形製剤であって、
イストラデフィリンに対する前記着色剤の含有量が、1~50質量%である、固形製剤。
【請求項3】
前記着色剤が、黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄のいずれか一方又は両方を含む、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
前記着色剤が、黄色三二酸化鉄を含む、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項5】
イストラデフィリンに対する前記着色剤の含有量が、5~30質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項6】
イストラデフィリンに対する前記着色剤の含有量が、10~30質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項7】
結晶セルロースを含有しない、請求項1~6のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項8】
前記固形製剤は、滑沢剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項9】
前記混合物は、造粒物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項10】
前記固形製剤は、錠剤又は口腔内崩壊錠である、請求項1~9のいずれか一項に記載の固形製剤。
【請求項11】
前記固形製剤は、ヒドロキシプロピルセルロースをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イストラデフィリンを含む医薬組成物、イストラデフィリンの安定化方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
イストラデフィリンは、アデノシンA2受容体拮抗作用を示し、パーキンソン病の治療等に有用である。
【0003】
イストラデフィリン等のジアリールビニレン化合物については、製剤特性(例えば、硬度、崩壊性、溶出性、安定性等)に優れた固形製剤の製剤化が容易ではないことが知られており、特開平6-211856号(特許文献1)に記載されているような一般的な組成を有する固形製剤では、(a)硬度が不十分である、(b)崩壊時間が長い、(c)溶出が遅延する傾向にある、(d)安定性が悪い等の課題が存在することが報告されている(特許文献2及び特許文献3)。
これらの課題の中で、光安定性については、i)固形製剤中に結晶セルロースを含ませること(特許文献2)、又は、ii)固形製剤を、酸化鉄を含むコーティング組成物によりコーティングすることで、イストラデフィリンの光による分解物の発生が抑制できることが報告されている(特許文献3)。しかしながら、ii)については、コーティングを実施することにより工程が増え、これに時間及び労力を要することからコストが高くなる。また、分割を必要とする錠剤ではコーティングによって割線が埋まる等のトラブルが発生しやすく、分割後には分割面が剥き出しになる為光安定化効果が期待できない等の不利益がある(特許文献4)。
【0004】
一方、パーキンソン病患者は高齢者の割合が高く、嚥下障害を伴うことが多い。嚥下障害により錠剤の誤嚥を防ぐために、錠剤を服薬ゼリーに混ぜて内服する、錠剤を粉砕して食事等に混ぜて服薬する等が行われている。また、嚥下障害を伴う高齢者には、口腔内崩壊錠(OD錠)が有用である。
これら事情を考慮した、パーキンソン病患者の服薬アドヒアランスの向上や医療従事者の処方簡便化に役立つイストラデフィリン製剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-211856号公報
【特許文献2】特許第4673745号公報
【特許文献3】特許第4413866号公報
【特許文献4】特許第4214128号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題の一つは、イストラデフィリンを含む医薬組成物であって、医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解が抑制された医薬組成物を提供することである。本発明の課題の一つは、イストラデフィリンの安定化方法を提供することである。
本発明者らは、イストラデフィリンの光分解を抑制する医薬組成物を検討した結果、イストラデフィリンと着色剤を混合することにより医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解を抑制できることを見出した。また、イストラデフィリンが打錠圧力を受けると光分解が促進されることを見出した。これら知見に基づき、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、一つの側面において、イストラデフィリンと着色剤の混合物を含む、医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明は、一つの側面において、イストラデフィリンと打錠圧力緩和物質の混合物を含む、医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明は、一つの側面において、イストラデフィリンと着色剤の混合物を調製する工程を含む、イストラデフィリンの安定化方法を提供する。
【0010】
本発明は、一つの側面において、イストラデフィリンと打錠圧力緩和物質の混合物を調製する工程を含む、イストラデフィリンの安定化方法を提供する。
【0011】
本発明は、一つの側面において、イストラデフィリンを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、一つの側面において、20μmを超える平均粒径を有するイストラデフィリンを含み、結晶セルロースを含まない医薬組成物を提供する。
本発明は、一つの側面において、イストラデフィリンと滑沢剤の混合物を含む、医薬組成物を提供する。
本発明は、一つの側面において、イストラデフィリンと滑沢剤の混合物を調製する工程を含む、イストラデフィリンの安定化方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1~7の錠剤の処方、その安定性試験結果を示す。また、実施例4及び実施例7の錠剤について、硬度と口腔内崩壊時間を示す。なお、各成分の含有量の単位はmgである。実施例1及び実施例2の安定性試験は、4000luxを2週間光照射し、実施例3~実施例7の安定性試験は、1200000lux・hr光照射することにより実施した。HPC-L:ヒドロキシプロピルセルロース、日本曹達株式会社製PVA/PEGグラフトコポリマー:ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、コリコートIR、BASFジャパン株式会社PEG6000P:ポリエチレングリコール6000P、三洋化成工業株式会社FC部:フィルムコーティング部
【
図2】
図2は、実施例4及び実施例7の錠剤の処方、安定性試験結果、硬度、崩壊時間を示す。特許4673745号公報の実施例1及び比較例1~3の錠剤関する処方、安定性試験結果、硬度、崩壊時間を併せて記載した。なお、実施例4及び実施例7の崩壊時間は、ヒト口腔内での崩壊時間を表し、特許4673745号公報の実施例1及び比較例1~2の崩壊時間は、第14局改正日本薬局方第一部の崩壊試験に記載の方法での崩壊時間を表す。
【
図3】
図3は、実施例3~実施例7の錠剤の処方及び安定性試験結果を示す。安定性試験は、未粉砕の場合と、実施例4~7の錠剤に関しては粉砕後についても実施し、
図3にその結果を記載した。また、実施例4及び実施例7については、打錠前の顆粒(整粒末)についても安定性試験を実施し、
図3にその結果を記載した。
【
図4】
図4は、ステアリン酸マグネシウムによるイストラデフィリンの光分解物生成抑制効果を示す。賦形剤として乳糖水和物を使用して製造したイストラデフィリン含有錠剤に光照射し、錠剤中の光分解物(二量体)の量を評価した。
【
図5】
図5は、ステアリン酸マグネシウムによるイストラデフィリンの光分解物生成抑制効果を示す。賦形剤としてD-マンニトールを使用して製造したイストラデフィリン含有錠剤に光照射し、錠剤中の光分解物(二量体)の量を評価した。
【
図6】
図6は、ステアリン酸カルシウムによるイストラデフィリンの光分解物生成抑制効果を示す。賦形剤として乳糖水和物を使用して製造したイストラデフィリン含有錠剤に光照射し、錠剤中の光分解物(二量体)の量を評価した。
【
図7】
図7は、ステアリン酸カルシウムによるイストラデフィリンの光分解物生成制効果を示す。賦形剤としてD-マンニトールを使用して製造したイストラデフィリン含有錠剤に光照射し、錠剤中の光分解物(二量体)の量を評価した。
【
図8】
図8は、フマル酸ステアリルナトリウムによるイストラデフィリンの光分解物生成制効果を示す。賦形剤としてD-マンニトールを使用して製造したイストラデフィリン含有錠剤に光照射し、錠剤中の光分解物(二量体)の量を評価した。
【
図9】
図9は、イストラデフィリンの光分解物生成に対する錠剤を打錠する際の打錠圧の影響を示す。D-マンニトール及びステアリン酸マグネシウムを含む錠剤では、10kN以下の打錠圧とすることにより、二量体の生成を0.5重量%未満に抑えることができることが示された。
【
図10】
図10は、イストラデフィリンの光分解物生成に対する錠剤を打錠する際の打錠圧の影響を示す。D-マンニトール及び黄色三二酸化鉄を含む錠剤では、30kNの打錠圧でも、二量体の生成を0.5重量%未満に抑えることができることが示された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が提供する医薬組成物は、イストラデフィリンを含む。
イストラデフィリンは下記構造を有する。
【化1】
本発明が提供する医薬組成物におけるイストラデフィリンの含有量は、医薬組成物に対し1~30重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは10~20重量%であり得る。本発明が提供する医薬組成物が固形製剤(例えば、フィルムコーティング錠又は口腔内崩壊錠)の場合、1錠あたり、20mgのイストラデフィリンを含んでもよい。
本発明が提供する医薬組成物に使用するイストラデフィリンの粒径は、当業者が適宜設定できるが、例えば、平均粒径が0.1μm以上200μm未満、好ましくは0.1μm以上80μm未満のイストラデフィリンを本発明が提供する医薬組成物に使用してもよい。更に好ましくは、本発明が提供する医薬組成物に使用できるイストラデフィリンの平均粒径は、20μmを超えてもよく、20μmを超えて200μm以下、20μmを超えて100μm以下、20μmを超えて80μm以下、20μmを超えて60以下、20μmを超えて50μm以下、20μmを超えて40μm以下、25μm以上200μm以下、25μm以上100μm以下、25μm以上80μm以下、25μm以上40μm以下、50μm以上200μm以下、50μm以上100μm以下又は50μm以上80μm以下であってもよい。平均粒径は、例えばレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、SALD-2200;島津製作所製、MASTERSIZER 2000 Ver.2.00J;MALVERN社製等)や画像解析装置(例えば、LUZEX登録商標 AP;株式会社ニレコ社製等)等を用いて測定され、粒度分布から求められる平均値として算出してもよい。なお、本願に記載の粒子径、平均粒径の値はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定した値である。
【0015】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる着色剤は、特に限定されないが、例えば、酸化鉄、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、ベンガラ、黒酸化鉄、カルミン-P、リボフラビン、カーボンブラッグ、薬用炭等を挙げる事ができ、好ましくは、酸化鉄、黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄である。2種以上の着色剤を本発明が提供する医薬組成物に使用してもよい。着色剤は、医薬組成物に対して0.001~10.0重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは0.005~5.0重量%の範囲で含有され、さらにより好ましくは0.01~5.0重量%の範囲で含有され得る。
一つの実施態様において、着色剤はイストラデフィリンと混合されて本発明が提供する医薬組成物(例えば、固形製剤(例えば、錠剤))に含まれる。例えば、本発明が提供する医薬組成物は、イストラデフィリンと着色剤を含む混合物を含む錠剤であり、イストラデフィリンと着色剤を含む混合物は造粒物であり得る。イストラデフィリンと着色剤を含む混合物(例えば、造粒物)は、錠剤中の素錠部分に含まれ得る。混合物中におけるイストラデフィリンと着色剤の重量比は、当業者が適宜設定でき、例えば、着色剤の重量は、イストラデフィリンの重量の0.001~1、好ましくは、0.05~0.5であり得る。造粒物の調製は、本分野で一般的に用いられる方法によって行われることができ、例えば、湿式造粒法、乾式造粒法等により行われてもよい。
一つの実施態様において、着色剤を含む組成物は、イストラデフィリンの光分解抑制剤として使用できる。
【0016】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる打錠圧力緩和物質の例には、低融点油状物質、滑沢性物質、空隙率が高く圧力変形の自由度が高い物質等が挙げられる。本発明が提供する医薬組成物に使用することができる打錠圧力緩和物質のより具体的な例には、乳糖水和物、マンニトール、部分アルファー化デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、無水リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ヒマシ油及びポリエチレングリコールが挙げられる。特定の理論に縛られる意図はないが、低融点油状物質は、打錠時の圧力の軟化により、滑沢性物質は、打錠時に粒子間の摩擦の低減により、空隙率が高く圧力変形の自由度が高い物質は、打錠時に、粒子間の空隙を埋めるように変形することにより、原薬等の結晶への打錠によるダメージをそれぞれの特徴で回避し得る。
本明細書において、低融点油状物質とは、油脂状を呈し、通常その融点が20~90℃程度のものであり、例えば、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの高級アルコールエーテル、アルキレンオキサイドの重合体もしくは共重合体等が挙げられ、より具体的な例としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ヒマシ油及びポリエチレングリコール等が挙げられる。
本明細書において、滑沢性物質とは、製剤分野で滑沢剤として使用される物質であり得、例えば、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、硬化油、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
空隙率が高く圧力変形の自由度が高い物質の例には、造粒やスプレードライ等により嵩高く製造された添加剤(例えば、乳糖水和物、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム等)が挙げられる。
2種以上の打錠圧力緩和物質を本発明が提供する医薬組成物に使用してもよい。打錠圧力緩和物質は、医薬組成物に対して0.1~98重量%の範囲で含有され得る。例えば、0.1~70重量%、10~70重量%、30~60重量%、、0.1~5重量%、0.1~2重量%、0.3~5重量%、0.3~2重量%、0.5~5重量%、0.5~2重量%で含有され得る。
一つの実施態様において、打錠圧力緩和物質はイストラデフィリンと混合されて本発明が提供する医薬組成物(例えば、固形製剤(例えば、錠剤))に含まれる。例えば、本発明が提供する医薬組成物は、イストラデフィリンと打錠圧力緩和物質を含む混合物を含む錠剤であり、イストラデフィリンと打錠圧力緩和物質を含む混合物は造粒物であり得る。イストラデフィリンと打錠圧力緩和物質を含む混合物(例えば、造粒物)は、錠剤中の素錠部分に含まれ得る。混合物中におけるイストラデフィリンと打錠圧力緩和物質の重量比は、当業者が適宜設定でき、例えば、打錠圧力緩和物質の重量は、イストラデフィリンの重量の0.001~10、好ましくは、1~5であり得る。造粒物の調製は、本分野で一般的に用いられる方法によって行われることができ、例えば、湿式造粒法、乾式造粒法等により行われてもよい。
一つの実施態様において、打錠圧力緩和物質を含む組成物は、イストラデフィリンの光分解抑制剤として使用できる。
【0017】
本発明が提供する医薬組成物は、固形製剤であり得、例えば、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤である。好ましくは、錠剤(例えば、フィルムコーティング錠、素錠)であり、より好ましくは、口腔内崩壊錠(例えば、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠)である。
本発明が提供する医薬組成物が口腔内崩壊錠である場合、好ましい崩壊時間は180秒以内(例えば、10以上180秒以内)であり、より好ましくは60秒以内(例えば、10以上60秒以内)であり、更により好ましくは30秒以内(例えば、10以上30秒以内)である。崩壊時間の測定方法は特に限定されないが、例えば、第十七改正日本薬局方に定められた崩壊試験法に従い、崩壊試験器を用いて測定することができる。
本発明が提供する医薬組成物が錠剤(例えば、口腔内崩壊錠)である場合、その硬度は20N以上であり得、例えば、20N以上150N以下、20N以上100N以下、20N以上50N以下、25N以上150N以下、25N以上100N以下、25N以上50N以下、50N以上150N以下、50N以上100N以下、60N以上(例えば60~100N)、65N以上(例えば65~100N)、70N以上(例えば70~100N)であり得る。
本発明が提供する医薬組成物は、パーキンソン病の治療に用いられ得る。
【0018】
本発明が提供する医薬組成物は、製剤技術分野において慣用の添加剤を含んでもよい。このような添加剤の例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、甘味剤、滑沢剤、pH調整剤、界面活性剤及び香料が挙げられる。
【0019】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる賦形剤の例には、乳糖(例えば、乳糖水和物、無水乳糖)、グルコース、ショ糖、果糖、マルトース等の糖類、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、D-マンニトール等の糖アルコール類、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、部分アルファー化デンプン)、結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、乳酸カルシウム及びエチルセルロースが挙げられる。本発明が提供する医薬組成物に使用される好ましい賦形剤の例には、D-マンニトール、無水リン酸水素カルシウム及びその組み合わせが挙げられる。
本発明が提供する医薬組成物における賦形剤の含量は、医薬組成物に対し20~95重量%、好ましくは30~90重量%であってもよく、より好ましくは30~85重量%であってもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物に使用される賦形剤はD-マンニトールであり、日本、欧州および米国の薬局方に適合するものを通常に用いることができる。D-マンニトールの結晶形、粒子径および比表面積は特に限定されないが、結晶形はα型、β型、δ型、非晶質のいずれでも良く、粒子径は10μm以上250μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以上150μm以下であり、比表面積は0.1m2/g以上5m2/g以下が好ましく、より好ましくは0.1m2/g以上4m2/g以下で、更により好ましくは2m2/g以上3.5m2/g以下であってもよい。
また、本発明が提供する医薬組成物に使用可能なD-マンニトールの融点は、166~169℃の間であり、乾燥減量(105℃、4時間)は、0.5%以下である。さらに、20gを100mlに溶解させた場合の25℃での導電率は、20μS・cm-1であり得る。
結晶形、粒子径および比表面積は周知の方法で測定することができ、例えば、X線回折法、レーザー回折式粒度測定法、BET式比表面積測定法(多点法)によりそれぞれ測定することができる。
粒子径等の性状が異なる2種以上のD-マンニトールを本発明が提供する医薬組成物に使用してもよい。造粒やスプレードライ加工されたD-マンニトールを本発明が提供する医薬組成物に使用してもよい。D-マンニトールは、医薬組成物に対して1~98重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは10~70重量%の範囲で含有され、さらにより好ましくは25~60重量%の範囲で含有され得る。
D-マンニトールはイストラデフィリンと混合されて本発明が提供する医薬組成物(例えば、固形製剤(例えば、錠剤))に含まれてもよい。一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、イストラデフィリンとD-マンニトールを含む混合物を含む錠剤であり、イストラデフィリンとD-マンニトールを含む混合物は造粒物であり得る。イストラデフィリンとD-マンニトールを含む混合物(例えば、造粒物)は、錠剤中の素錠部分に含まれ得る。混合物中におけるイストラデフィリンとD-マンニトールの重量比は、当業者が適宜設定でき、例えば、D-マンニトールの重量は、イストラデフィリンの重量の1~10、好ましくは、1~5であり得る。造粒物の調製は、本分野で一般的に用いられる方法によって行われることができ、例えば、湿式造粒法、乾式造粒法等により行われてもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物に使用される賦形剤は無水リン酸水素カルシウムであり、日本、欧州および米国の薬局方に適合するものを通常に用いることができる。無水リン酸水素カルシウムは市販のものを用いることができる。その比表面積は特に限定されないが、0.1m2/g以上30m2/g以下が好ましく、より好ましくは0.5m2/g以上20m2/g以下で、更により好ましくは0.5m2/g以上3m2/g以下であってもよい。さらに、強熱減量(1g,800~825℃)が6.6~8.5%の間であってもよい。
比表面積は周知の方法で測定することができ、例えば、BET式比表面積測定法(多点法)によりそれぞれ測定することができる。
比表面積等の性状が異なる2種以上の無水リン酸水素カルシウムを本発明が提供する医薬組成物に使用してもよい。造粒やスプレードライ加工された無水リン酸水素カルシウムを本発明が提供する医薬組成物に使用してもよい。無水リン酸水素カルシウムは、医薬組成物に対して1~98重量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは3~30重量%の範囲で含有され、さらにより好ましくは5~15重量%の範囲で含有され得る。
無水リン酸水素カルシウムはイストラデフィリンと混合されて本発明が提供する医薬組成物(例えば、固形製剤(例えば、錠剤))に含まれてもよい。一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、イストラデフィリンと無水リン酸水素カルシウムを含む混合物を含む錠剤であり、イストラデフィリンと無水リン酸水素カルシウムを含む混合物は造粒物であり得る。イストラデフィリンと無水リン酸水素カルシウムを含む混合物(例えば、造粒物)は、錠剤中の素錠部分に含まれ得る。混合物中におけるイストラデフィリンと無水リン酸水素カルシウムの重量比は、当業者が適宜設定でき、例えば、無水リン酸水素カルシウムの重量は、イストラデフィリンの重量の0.03~3、好ましくは、0.1~1であり得る。造粒物の調製は、本分野で一般的に用いられる方法によって行われることができ、例えば、湿式造粒法、乾式造粒法等により行われてもよい。
【0020】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる結合剤の例には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストリン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール、α化デンプン、寒天及びゼラチンが挙げられる。本発明が提供する医薬組成物に使用される好ましい結合剤の例には、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
本発明が提供する医薬組成物における結合剤の含量は、医薬組成物に対し0.1~30重量%、好ましくは0.3~10重量%であってもよく、より好ましくは1~5重量%であってもよい。
【0021】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる崩壊剤の例には、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン及びカルメロースが挙げられる。本発明が提供する医薬組成物に使用される好ましい崩壊剤の例には、クロスポビドンが挙げられる。
本発明が提供する医薬組成物における崩壊剤の含量は、医薬組成物に対し0.3~20重量%、好ましくは1~10重量%であってもよく、より好ましくは3~5重量%であってもよい。
【0022】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる流動化剤の例には、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、重質無水ケイ酸、水酸化アルミナマグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びタルクが挙げられる。本発明が提供する医薬組成物に使用される好ましい流動化剤の例には、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。
本発明が提供する医薬組成物における流動化剤の含量は、医薬組成物に対し0.03~3重量%、好ましくは0.1~3重量%であってもよく、より好ましくは0.3~3重量%であってもよい。
【0023】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる甘味剤の例には、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム(登録商標)、ステビア、ソーマチン及びスクラロースが挙げられる。本発明が提供する医薬組成物に使用される好ましい甘味剤の例には、アスパルテーム(登録商標)、ステビア、スクラロースが挙げられる。
本発明が提供する医薬組成物における甘味剤の含量は、医薬組成物に対し0.03~3重量%、好ましくは0.1~3重量%であってもよく、より好ましくは0.3~3重量%であってもよい。
【0024】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル及びフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられる。本発明が提供する医薬組成物に使用される好ましい滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
本発明が提供する医薬組成物における滑沢剤の含量は、医薬組成物に対し5重量%以下であり得、例えば、1重量%以下、0.01~5重量%、0.1~5重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.3~5重量%、0.3~3重量%、0.3~2重量%、0.3~1重量%、0.5~5重量%、0.5~3重量%、0.5~2重量%又は0.5~1重量%であってもよい。
【0025】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができるpH調整剤の例には、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩及びアミノ酸塩が挙げられる。
本発明が提供する医薬組成物におけるpH調整剤の含量は、医薬組成物に対し0.1~30重量%、好ましくは0.3~10重量%であってもよく、より好ましくは1~5重量%であってもよい。
【0026】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる界面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル及びポロクサマーが挙げられる。
本発明が提供する医薬組成物における界面活性剤の含量は、医薬組成物に対し0.01~3重量%、好ましくは0.03~1重量%であってもよく、より好ましくは0.03~0.5重量%であってもよい。
【0027】
本発明が提供する医薬組成物に使用することができる香料の例には、レモン、オレンジ、グレープフルーツ等の柑橘系香料、ペパーミント、スペアミント及びメントールが挙げられる。
【0028】
本発明が提供する医薬組成物は、さらに、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物を含むことができる。このような無機物の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、タルク、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。本発明が提供する医薬組成物に使用される好ましい無機物の例には、酸化チタン、タルクが挙げられる。 本発明が提供する医薬組成物における無機物の含量は、当業者が適宜設定でき、例えば、医薬組成物に対し0.01~10重量%、好ましくは0.05~3重量%であってもよく、より好ましくは0.1~1重量%であってもよい。
【0029】
本発明が提供する医薬組成物において、イストラデフィリン、イストラデフィリンを含む造粒物、素錠は、それぞれコーティングを施してもよい。コーティング層の含量は、当業者が適宜設定できるが、例えば、医薬組成物に対して、0.01~10重量%であってもよい。コーティング層には、コーティング基剤の他、可塑剤、着色剤、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物、光沢化剤等を適宜含めることができる。
コーティング基剤の例には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー等が挙げられ、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーが好ましい。本発明が提供する医薬組成物におけるコーティング基剤の含量は、医薬組成物に対し0.01~10重量%、好ましくは0.3~3重量%であってもよい。
コーティングに使用できる可塑剤の例には、クエン酸トリエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール6000)が挙げられ、特にポリエチレングリコールが好ましい。コーティングに使用する可塑剤の含量は、医薬組成物に対し0.01~1重量%、好ましくは0.03~3重量%であってもよい。
コーティングに使用できる着色剤としては、前述の本発明が提供する医薬組成物に使用することができる着色剤を適宜使用することができる。コーティングに使用することができる好ましい着色剤の例には、酸化鉄、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄が挙げられる。コーティングに使用する着色剤の含量は、医薬組成物に対し0.001~1重量%、好ましくは0.01~0.1重量%であってもよい。
コーティングに使用することができる光沢化剤の例には、カルナウバロウが挙げられる。コーティングに使用する光沢化剤の含量は、医薬組成物に対し0.0001~0.1重量%、好ましくは0.001~0.01重量%であってもよい。
コーティングに使用することができるイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物としては、前述のイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物を適宜使用することができる。コーティングに使用することができる好ましいイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物の例には、酸化チタン、タルクが挙げられる。コーティングに使用するイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物の含量は、医薬組成物に対し0.01~10重量%、好ましくは0.05~1重量%であってもよい。
【0030】
本発明が提供する医薬組成物は、製薬分野において公知の方法により製造することができる。例えば、錠剤とする場合、製造方法には、イストラデフィリンと、着色剤、打錠圧力緩和物質、更に任意にその他添加物を混合する混合工程、造粒工程、打錠工程及び/又はコーティング工程を含み得る。
混合工程は、製薬分野において公知の方法により行うことができ、例えば、V型混合機、W型混合機、コンテナミキサー、タンブラー混合機、撹拌混合機等を用いて行うことができる。
造粒工程は、製薬分野において公知の造粒方法により行うことができる。造粒方法の例には、乾式造粒法、湿式造粒法、流動層造粒法が挙げられる。イストラデフィリンを含む造粒物を調製した後、打錠前に造粒物に添加剤(例えば、D-マンニトール等の賦形剤、クロスポビドン等の崩壊剤、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の流動化剤及び/又はステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤)を添加し混合してもよい。
一つの実施態様として、混合工程で得られた混合物や造粒工程で得られた造粒物は、適宜粉砕及び/又は篩分けすることにより、所望の粒子径を有する混合物や造粒物とされ得る。粉砕は、例えば、ボールミル、ジェットミル、ハンマーミル等の製薬分野において公知の粉砕機で行うことができる。篩分けは、16mesh篩(目開き1000μm)~32mesh篩(目開き500μm)等を用いて行うことができる、
打錠工程は、製薬分野において公知の打錠方法により行うことができる。打錠方法の例には、直接打錠法、乾式打錠法、湿式打錠法、外部滑沢打錠法が挙げられる。例えば、単発式打錠機やロータリー式打錠機等の製薬分野において公知の打錠機を用いて、上記の工程で得られた混合物や造粒物を打錠することができる。単発式打錠機、ロータリー式打錠機等を用いる場合は、1kN~30kN、好ましくは1~10kN、より好ましくは1~5kNの打錠圧を採用することができる。
一つの実施態様において、イストラデフィリンと着色剤(例えば、酸化鉄、黄色三二酸化鉄)を含む混合物(例えば、顆粒)を打錠し、錠剤(例えば、直径約7mmの錠剤)を製造する場合、打錠圧の上限は30kNであることが好ましく、打錠圧の下限は、20Nの錠剤硬度が達成できる打錠圧であることが好ましい。例えば、イストラデフィリンと着色剤(例えば、酸化鉄、黄色三二酸化鉄)を含む混合物(例えば、顆粒)を、1kN~30kN、1kN~25kN、1kN~20kN、1kN~10kN、1kN~5kN、5kN~30kN、5kN~25kN、5kN~20kN、10kN~30kN、10kN~25kN又は10kN~20kNで打錠してもよい。
一つの実施態様において、イストラデフィリンと滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム)を含む混合物(例えば、顆粒)を打錠し、錠剤(例えば、直径約7mmの錠剤)を製造する場合、打錠圧の上限は10kNであることが好ましく、打錠圧の下限は、20Nの錠剤硬度が達成できる打錠圧であることが好ましい。例えば、イストラデフィリンと滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム)を含む混合物(例えば、顆粒)を、1kN~10kN、1kN~5kN又は5kN~10kNで打錠してもよい。
一つの実施態様において、イストラデフィリンと滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム)を含み、着色剤(例えば、酸化鉄、黄色三二酸化鉄)を含まない混合物(例えば、顆粒)を打錠し、錠剤(例えば、直径約7mmの錠剤)を製造する場合、打錠圧の上限は10kNであることが好ましく、打錠圧の下限は、20Nの錠剤硬度が達成できる打錠圧であることが好ましい。例えば、イストラデフィリンと滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム)を含み、着色剤(例えば、酸化鉄、黄色三二酸化鉄)を含まない混合物(例えば、顆粒)を、1kN~10kN、1kN~5kN又は5kN~10kNで打錠してもよい。
一つの実施態様において、イストラデフィリン、滑沢剤及び着色剤(例えば、酸化鉄、黄色三二酸化鉄)を含む混合物(例えば、顆粒)を打錠し、錠剤(例えば、直径約7mmの錠剤)を製造する場合、打錠圧の上限は30kNであることが好ましく、打錠圧の下限は、20Nの錠剤硬度が達成できる打錠圧であることが好ましい。例えば、イストラデフィリンと着色剤(例えば、酸化鉄、黄色三二酸化鉄)を含む混合物(例えば、顆粒)を、1kN~30kN、1kN~25kN、1kN~20kN、1kN~10kN、1kN~5kN、5kN~30kN、5kN~25kN、5kN~20kN、10kN~30kN、10kN~25kN又は10kN~20kNで打錠してもよい。
コーティング工程は、製薬分野において公知の方法により行うことができる。例えば、コーティング基剤と、可塑剤、着色剤や光沢化剤等を適宜含めたコーティング液をイストラデフィリン原薬、造粒物又は素錠の外側にスプレーコーティングすることにより行うことができる。
【0031】
本発明が提供する医薬組成物は、湿式造粒法によりイストラデフィリンを含む造粒物を調製することにより、医薬組成物からのイストラデフィリンの溶出を向上させ得る。よって、本発明が提供する医薬組成物の製造方法は、湿式造粒法によりイストラデフィリンを含む造粒物を調製する工程を含んでもよい。
また、本発明が提供する医薬組成物は、素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を含ませることにより、i)イストラデフィリン原薬、ii)イストラデフィリンを含む造粒物、及びiii)イストラデフィリンを含む素錠のコーティングを不要としてもよい。よって、本発明が提供する医薬組成物の製造方法は、イストラデフィリン原薬、イストラデフィリンを含む造粒物又はイストラデフィリンを含む素錠をコーティングする工程を含んでも含まなくてもよい。
また、本発明が提供する医薬組成物は、素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を含ませることにより、i)イストラデフィリン原薬、ii)イストラデフィリンを含む造粒物、及びiii)イストラデフィリンを含む素錠がコーティングされ、そのコーティング層にイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)のいずれも不含としてもよい。よって、本発明が提供する医薬組成物の製造方法は、i)イストラデフィリン原薬、ii)イストラデフィリンを含む造粒物、又はiii)イストラデフィリンを含む素錠を、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び/又は着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)を含むコーティング層でコーティングする工程を含んでも含まなくてもよい。
【0032】
よって、上記工程を含む方法により製造される本発明が提供する医薬組成物の例としては、
i)イストラデフィリンを含む素錠であって、イストラデフィリン原薬及びイストラデフィリンを含む造粒物のいずれもがコーティングされていない素錠;
ii)イストラデフィリンを含む錠剤であって、錠剤中のイストラデフィリン原薬、イストラデフィリンを含む造粒物及び/又はイストラデフィリンを含む素錠が、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)を含むコーティング層でコーティングされた錠剤;
iii)イストラデフィリンを含む錠剤であって、錠剤中のイストラデフィリン原薬、イストラデフィリンを含む造粒物及び/又はイストラデフィリンを含む素錠が、着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)を含むコーティング層でコーティングされた錠剤;
iv)イストラデフィリンを含む錠剤であって、錠剤中のイストラデフィリン原薬、イストラデフィリンを含む造粒物及び/又はイストラデフィリンを含む素錠が、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)を含まないコーティング層でコーティングされた錠剤;
v)イストラデフィリンを含む錠剤であって、錠剤中のイストラデフィリン原薬、イストラデフィリンを含む造粒物及び/又はイストラデフィリンを含む素錠が、着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)を含まないコーティング層でコーティングされた錠剤;
vi)素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を含み、素錠中のイストラデフィリン原薬及びイストラデフィリンを含む造粒物がコーティングされていない素錠;及び
vii)素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を含み、イストラデフィリン原薬、イストラデフィリンを含む造粒物及びイストラデフィリンを含む素錠がコーティングされているものの、そのコーティング層にイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)のいずれも含まれない錠剤、が挙げられる。
【0033】
本発明が提供する医薬組成物が、素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を含む場合、イストラデフィリンの光分解を抑制できるので、イストラデフィリンの光分解の抑制の為に、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)のいずれも医薬組成物中に含ませなくてもよい。この場合、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物及び着色剤を使用しないことにより、製剤の重量を低減でき、小型化できるという利点がある。
本発明が提供する医薬組成物が、素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を含む場合、イストラデフィリンの光分解を抑制できるので、イストラデフィリンの光分解の抑制の為に、コーティングを施さなくてもよい。この場合、コーティングを施さないことにより、製剤の重量を低減でき、小型化できるという利点がある。
本発明が提供する医薬組成物が、素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を、イストラデフィリンに対し着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)を1~50重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~30重量%含む場合、イストラデフィリンの光分解を抑制できるので、イストラデフィリンの光分解の抑制の為に、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)のいずれも医薬組成物中に含ませなくてもよい。この場合、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物及び着色剤を使用しないことにより、製剤の重量を低減でき、小型化できるという利点がある。
本発明が提供する医薬組成物が、素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を、イストラデフィリンに対し着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)を1~50重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~30重量%含む場合、イストラデフィリンの光分解を抑制できるので、イストラデフィリンの光分解の抑制の為に、コーティングを施さなくてもよい。この場合、コーティングを施さないことにより、製剤の重量を低減でき、小型化できるという利点がある。
本発明が提供する医薬組成物が、素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を含む錠剤(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠又はフィルムコーティング錠)である場合、粉砕された錠剤においてイストラデフィリンの光分解を粉砕していない錠剤と同様に抑制する。この場合、錠剤を粉砕して嚥下障害を伴う患者に投与できるという利点がある。
本発明が提供する医薬組成物が、素錠中にイストラデフィリンと着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を、イストラデフィリンに対し着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)を1~50重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~30重量%含む錠剤(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠又はフィルムコーティング錠)である場合、粉砕された錠剤においてイストラデフィリンの光分解を粉砕していない錠剤と同様に抑制する。この場合、錠剤を粉砕して嚥下障害を伴う患者に投与できるという利点がある。
【0034】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊、フィルムコーティング錠)は、結晶セルロースを含まない。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊、フィルムコーティング錠)に含まれるイストラデフィリンは、20μmを超える平均粒径(例えば、20μmを超えて70μm以下、20μmを超えて50μm未満、25μm以上40μm以下)を有する。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊、フィルムコーティング錠)に含まれるイストラデフィリンは、20μmを超える平均粒径(例えば、20μmを超えて70μm以下、20μmを超えて50μm未満、25μm以上40μm以下)を有し、当該医薬組成物は、結晶セルロースを含まない。
一つの実施態様において、本発明が提供する口腔内崩壊錠は、20N以上、より好ましくは30N以上(例えば、50N以上、65N以上、70N以上、20N以上60N以下、20N以上100N以下、30N以上100N以下、70N以上100N以下、70N以上150N以下)の硬度を有し、口腔内において60秒以内(例えば、10秒以上60秒以内)で崩壊する。
一つの実施態様において、本発明が提供する口腔内崩壊錠は、20N以上、より好ましくは30N以上(例えば、50N以上、65N以上、70N以上、20N以上60N以下、20N以上100N以下、30N以上100N以下、70N以上100N以下、70N以上150N以下)の硬度を有し、口腔内において60秒以内(例えば、10秒以上60秒以内)で崩壊し、そして、イストラデフィリンの光分解を抑制する。
一つの実施態様において、本発明が提供する口腔内崩壊錠は、苦みやえぐみがなく、良好な味を示す。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊、フィルムコーティング錠)は、D-マンニトール、乳糖水和物又は無水リン酸水素カルシウムを含む。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊、フィルムコーティング錠)は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はフマル酸ステアリルナトリウムを含む。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊、フィルムコーティング錠)は、D-マンニトール及び滑沢剤を含み、滑沢剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はフマル酸ステアリルナトリウムである。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物(例えば、素錠、素錠である口腔内崩壊錠、フィルムコーティングされた口腔内崩壊、フィルムコーティング錠)は、D-マンニトール及び滑沢剤を含み、滑沢剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はフマル酸ステアリルナトリウムであり、滑沢剤の含量が5重量%以下(例えば、2重量%以下、0.1~1重量%)である。
【0035】
上述した本発明が提供する医薬組成物は、イストラデフィリンの光による分解を抑制し、イストラデフィリンを安定化するので、本発明は、上述した医薬組成物(例えば、固形製剤)を製造することによる、イストラデフィリンの光分解抑制方法又はイストラデフィリンの安定化方法(光に対する安定化方法)を提供する。よって、一つの実施態様において、本発明は、上述した医薬組成物(例えば、固形製剤)を製造する為の工程(例えば、混合工程、造粒工程、コーティング工程及び/又は打錠工程)を含む、イストラデフィリンの光分解抑制方法又はイストラデフィリンの安定化方法(光に対する安定化方法)を提供する。イストラデフィリンの光分解抑制効果又はイストラデフィリンの光に対する安定化効果は、特許第4673745号を参考にして、ICHにおける新原薬及び新製剤の光安定性試験ガイドライン(1996年11月6日)に従って、本発明が提供する医薬組成物を光源としてキセノンランプを用いて、1200000Lux・hr以上の総照度で曝光し、その後、サンプリングを行い、HPLC分析によってイストラデフィリンの分解物の総量を求めることにより評価することができる。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、1200000Lux・hr以上の総照度の曝光によるイストラデフィリンの光分解が、曝光前のイストラデフィリン量の1%以下(例えば、0.4%以下又は0.1%以下)である。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、1200000Lux・hr以上の総照度の曝光により生成されるイストラデフィリンの光分解物(例えば二量体)は、曝光前のイストラデフィリン量の0.5%以下(例えば、0.4%以下又は0.1%以下)である。
イストラデフィリンの光分解物の例には、二量体が挙げられる。よって、一つの実施態様において、本発明が提供する、イストラデフィリンの光分解抑制方法又はイストラデフィリンの安定化方法(光に対する安定化方法)は、イストラデフィリンの二量体生成抑制方法であり得る。
【0036】
本発明が提供するイストラデフィリンの光分解抑制方法又はイストラデフィリンの安定化方法(光に対する安定化方法)は、イストラデフィリン及び着色剤の混合物(例えば、造粒物)を調製する工程;イストラデフィリン及び打錠圧力緩和物質の混合物(例えば、造粒物)を調製する工程;又は、イストラデフィリン、着色剤及び打錠圧力緩和物質の混合物(例えば、造粒物)を調製する工程を含んでもよい。
本発明が提供するイストラデフィリンの光分解抑制方法又はイストラデフィリンの安定化方法(光に対する安定化方法)は、
着色剤及び打錠圧力緩和物質の少なくとも1つとイストラデフィリンを混合し、得られた混合物を造粒する工程;
イストラデフィリン原薬、造粒物及び素錠の少なくとも1つをコーティングする工程(例えば、イストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の少なくとも1つを含むコーティング層でコーティングする工程、又はイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の少なくとも1つを含まないコーティング層でコーティングする工程);及び
打錠工程(打錠圧は、例えば、30kN以下、20kN以下、10kN以下、1kN以上30kN以下又は1kN以上10kN以下であり得る)
の少なくとも1つの工程を含んでもよい。
【0037】
本発明が提供する他の実施態様の例としては、以下の(1)~(1-17)及び(A1)~(A1-27)が挙げられる。
(1)イストラデフィリン及び着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を含む医薬組成物(例えば、固形製剤);
(2)イストラデフィリン及び打錠圧力緩和物質の混合物を含む医薬組成物(例えば、固形製剤);
(3)イストラデフィリン、着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)及び打錠圧力緩和物質の混合物を含む医薬組成物(例えば、固形製剤);
(4)打錠圧力緩和物質が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムからなる群から少なくとも1つ選択される滑沢剤である、(2)又は(3)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(5)医薬組成物が錠剤であり、混合物が造粒物である、(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(6)医薬組成物が錠剤であり、混合物が造粒物であり、イストラデフィリン原薬、造粒物及び素錠のいずれもがイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び/又は着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)を含むコーティング層でコーティングされていない、(1)~(5)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(7)医薬組成物が素錠である、(1)~(6)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(8)医薬組成物が口腔内崩壊錠である、(1)~(7)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(9)クロスポビドンを含む、(1)~(8)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(10)イストラデフィリンの光分解が抑制された、(1)~(9)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(11)1200000Lux・hr以上の総照度の曝光により生成されるイストラデフィリンの光分解物(例えば、二量体)が、曝光前のイストラデフィリン量の0.5%以下(例えば、0.4%以下又は0.1%以下)である、(1)~(10)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(12)医薬組成物が錠剤であり、硬度が20N以上(例えば、60N以上)である、(1)~(11)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(13)医薬組成物が口腔内崩壊錠であり、第17改正日本薬局方の崩壊試験により、口腔内崩壊錠が60秒以内に崩壊する、(1)~(12)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(14)イストラデフィリンが、20μmを超えて200μm以下(例えば、20μmを超えて70μm以下、50μm以上100μm以下)の平均粒径を有するイストラデフィリンである、(1)~(13)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(15)結晶セルロースを含まない、(1)~(14)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(16)賦形剤として、D-マンニトール、乳糖水和物又は無水リン酸水素カルシウムを含む、(1)~(15)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(1-1)イストラデフィリン及び着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)の混合物を調製する工程を含む、イストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(1-2)イストラデフィリン及び打錠圧力緩和物質の混合物を調製する工程を含む、イストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(1-3)イストラデフィリン、着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)及び打錠圧力緩和物質の混合物を調製する工程を含む、イストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(1-4)打錠圧力緩和物質が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムからなる群から少なくとも1つ選択される滑沢剤である、(1-2)又は(1-3)に記載の方法;
(1-5)医薬組成物が錠剤であり、混合物が造粒物である、(1-1)~(1-4)のいずれかに記載の方法;
(1-6)医薬組成物が錠剤であり、混合物が造粒物であり、イストラデフィリン原薬、造粒物及び素錠のいずれもがイストラデフィリンの安定化効果が期待される無機物(例えば、タルク、酸化チタン及びその組み合わせ)及び/又は着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)を含むコーティング層でコーティングされていない、(1-1)~(1-7)のいずれかに記載の方法;
(1-7)医薬組成物が素錠である、(1-1)~(1-6)のいずれかに記載の方法;
(1-8)医薬組成物が口腔内崩壊錠である、(1-1)~(1-7)のいずれかに記載の方法;
(1-9)医薬組成物がクロスポビドンを含む、(1-1)~(1-8)のいずれかに記載の方法;
(1-10)混合物を造粒する工程を含み、造粒が湿式造粒により行われる、(1-1)~(1-9)のいずれかに記載の方法;
(1-11)医薬組成物に対し1200000Lux・hr以上の総照度の曝光を行った結果生成される、医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解物(例えば、二量体)が曝光前のイストラデフィリン量の0.5%以下(例えば、0.4%以下又は0.1%以下)である、(1-1)~(1-10)のいずれかに記載の方法;
(1-12)医薬組成物が錠剤であり、硬度が20N以上(例えば、60N以上)である、(1-1)~(1-11)のいずれかに方法;及び
(1-13)医薬組成物が口腔内崩壊錠であり、第17改正日本薬局方の崩壊試験により、口腔内崩壊錠が60秒以内に崩壊する、(1-1)~(1-12)のいずれかに記載の方法;
(1-14)イストラデフィリンが、20μmを超えて200μm以下(例えば、20μmを超えて70μm以下)の平均粒径を有するイストラデフィリンである、(1-1)~(1-13)のいずれかに記載の方法;
(1-15)医薬組成物が結晶セルロースを含まない、(1-1)~(1-14)のいずれかに記載の方法;
(1-16)医薬組成物が、賦形剤として、D-マンニトール、乳糖水和物又は無水リン酸水素カルシウムを含む、(1-1)~(1-15)のいずれかに記載の方法;
(1-17)医薬組成物が、錠剤であり、錠剤が、30kN以下又は10kN以下の打錠圧で打錠される、(1-1)~(1-16)のいずれかに記載の方法;
(A1)
D-マンニトール及び無水リン酸水素カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの物質、及びイストラデフィリンを含む、医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A2)
D-マンニトール及びイストラデフィリンを含む、(A1)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A3)
無水リン酸水素カルシウム及びイストラデフィリンを含む、(A1)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A4)
さらに滑沢剤を含む、(A1)~(A3)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A5)
イストラデフィリン及び滑沢剤を含む、医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A6)
滑沢剤の含量が、5重量%以下である、(A4)又は(A5)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A7)
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムからなる群から少なくとも1つ選択される、(A4)~(A6)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A8)
医薬組成物(例えば、固形製剤)に着色剤を含む、(A1)~(A7)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A9)
着色剤が、酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黄酸化鉄、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、ベンガラ、三二酸化鉄、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、黒酸化鉄、カルミン-P、リボフラビン、黄色5号、カーボンブラック及び薬用炭からなる群から少なくとも1つ選択される、(A8)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A10)
着色剤が、酸化鉄である、(A8)又は(A9)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A11)
着色剤が、黄色三二酸化鉄である、(A8)又は(A9)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A12)
D-マンニトール、滑沢剤、着色剤及びイストラデフィリンを含む、医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A13)
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムからなる群から少なくとも1つ選択される、(A12)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A14)
着色剤が、酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黄酸化鉄、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、ベンガラ、三二酸化鉄、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、黒酸化鉄、カルミン-P、リボフラビン、黄色5号、カーボンブラック及び薬用炭からなる群から少なくとも1つ選択される、(A12)又は(A13)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A15)
D-マンニトール、ステアリン酸カルシウム、黄色三二酸化鉄及びイストラデフィリンを含む、医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A16)
D-マンニトール及び無水リン酸水素カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの物質及びイストラデフィリンを含む混合物;又は、
滑沢剤及びイストラデフィリンを含む混合物、
を含む、(A1)~(A15)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A17)
混合物が造粒物である、(A16)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A18)
混合物中に着色剤を含む、(A16)又は(A17)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A19)
混合物が造粒物であり、造粒物が、酸化チタン及び/またはタルクを含むコーティング層または酸化チタン及び/またはタルクを含まないコーティング層でコーティングされている、(A16)~(A18)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A20)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはドライシロップ剤である、(A1)~(A19)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A21)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が、口腔内崩壊錠である、(A1)~(A20)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A22)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が、結晶セルロースを含まない、(A1)~(A20)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A23)
D-マンニトール及び無水リン酸水素カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの物質及びイストラデフィリンを素錠中に含む錠剤、又は、滑沢剤及びイストラデフィリンを素錠中に含む錠剤である、(A1)~(A22)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A24)
素錠が酸化チタン及び/またはタルクを含む被覆層または酸化チタン及び/またはタルクを含まない被覆層で被覆されている、(A23)に記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A25)
1200000Lux・hr以上の総照度の曝光による医薬組成物(例えば、固形製剤)中のイストラデフィリンの光分解が1%以下である、(A1)~(A24)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A26)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が錠剤であり、硬度が20N以上である、(A1)~(A25)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A27)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が口腔内崩壊錠であり、第17改正日本薬局方の崩壊試験により、口腔内崩壊錠が60秒以内に崩壊する、(A1)~(A26)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A28)
イストラデフィリンが、20μmを超えて200μm以下の平均粒径を有するイストラデフィリンである、(A1)~(A27)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A29)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が崩壊剤をさらに含む、(A1)~(A28)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A30)
崩壊剤が、クロスポビドンである、(A1)~(A29)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤);
(A1-1)
D-マンニトール及び無水リン酸水素カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの物質、及びイストラデフィリンを含む混合物を調製する工程を含む、イストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-2)
D-マンニトール及びイストラデフィリンを含む混合物を調製する工程を含む、(A1-1)に記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-3)
無水リン酸水素カルシウム及びイストラデフィリンを含む混合物を調製する工程含む、(A1-1)に記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-4)
混合物が、さらに滑沢剤を含む、(A1-1)~(A1-3)のいずれかに記載の医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-5)
イストラデフィリン及び滑沢剤を含む混合物を調製する工程を含む、イストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-6)
滑沢剤の含量が、5重量%以下である、(A1-4)又は(A1-5)に記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-7)
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムからなる群から少なくとも1つ選択される、(A1-4)~(A1-6)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-8)
イストラデフィリン及び滑沢剤を含む混合物を打錠する工程をさらに含み、打錠圧力が10kN以下である、(A1-4)~(A1-7)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-9)
医薬組成物(例えば、固形製剤)中に着色剤を含む(例えば、混合物中に含む)、(A1-1)~(A1-8)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-10)
着色剤が、酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黄酸化鉄、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、ベンガラ、三二酸化鉄、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、黒酸化鉄、カルミン-P、リボフラビン、黄色5号、カーボンブラック及び薬用炭からなる群から少なくとも1つ選択される、(A1-9)に記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-11)
着色剤が、酸化鉄である、(A1-9)又は(A1-10)に記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-12)
着色剤が、黄色三二酸化鉄である、(A1-9)又は(A1-10)に記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-13)
イストラデフィリン及び着色剤を含む混合物を打錠する工程をさらに含み、打錠圧力が30kN以下である、(A1-9)~(A1-12)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-14)
混合物を調製する工程が、造粒物を調製する工程を含む、(A1-1)~(A1-13)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-15)
混合物を調製する工程が、造粒物を調製する工程、及び得られた造粒物を、酸化チタン及び/またはタルクを含む被覆層または酸化チタン及び/またはタルクを含まないコーティング層でコーティングする工程を含む、(A1-1)~(A1-14)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-16)
造粒物が湿式造粒法で調製される、(A1-14)又は(A1-15)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-17)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはドライシロップ剤である、(A1-1)~(A1-16)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-18)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が、D-マンニトール及び無水リン酸水素カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの物質及びイストラデフィリンを素錠中に含む錠剤、又は、滑沢剤及びイストラデフィリンを素錠中に含む錠剤である、(A1-1)~(A1-17)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-19)
素錠が酸化チタン及び/またはタルクを含む被覆層または酸化チタン及び/またはタルクを含まない被覆層で被覆されている、(A1-18)に記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-20)
1200000Lux・hr以上の総照度の曝光による医薬組成物(例えば、固形製剤)中のイストラデフィリンの光分解が1%以下である、(A1-1)~(A1-19)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-21)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が錠剤であり、硬度が20N以上である、(A1-1)~(A1-20)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-22)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が口腔内崩壊錠であり、第17改正日本薬局方の崩壊試験により、口腔内崩壊錠が60秒以内に崩壊する、(A1-1)~(A1-21)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-23)
イストラデフィリンが、20μmを超えて200μm以下の平均粒径を有するイストラデフィリンである、(A1-1)~(A1-22)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-24)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が崩壊剤をさらに含む、(A1-1)~(A1-23)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-25)
崩壊剤が、クロスポビドンである、(A1-24)に記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-26)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が、結晶セルロースを含まない、(A1-1)~(A1-25)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法;
(A1-27)
医薬組成物(例えば、固形製剤)が錠剤であり、硬度が20N以上である、(A1-1)~(A1-26)のいずれかに記載のイストラデフィリンを含む医薬組成物(例えば、固形製剤)の製造方法又は医薬組成物中のイストラデフィリンの光分解抑制方法。
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0039】
以下のように錠剤を調製した。
実施例1:フィルムコーティング錠
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン(10g;平均粒径53.0μm(島津製作所製SALD-2200を使用して測定した))、D-マントール(26g、マンニットC、三菱商事ライフサイエンス(株)製)、無水リン酸水素カルシウム(12.5g、フジカリン、富士化学工業(株)製)およびヒドロキシプロピルセルロース(2g、HPC-L、日本曹達(株)製)を混合し、混合物に精製水8gを添加して造粒した。造粒後、乾燥機を用い50℃で乾燥した。乾燥後、30号の篩を通し、整粒顆粒とした。得られた整粒顆粒をビニールに入れ、整粒顆粒100重量部に対して、D-マンニトール(ParteckM200、メルク(株))を29.7重量部、クロスポビトン(コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製)を5.9重量部、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン、富士化学工業(株)製)を2.0重量部入れ、混合する。これにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を1.0重量部入れ混合することにより、打錠用顆粒を得た。打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:140mg、錠剤の形状:円形錠(φ7.0mm))を得た。
次に、
図1に記載の処方に従って、PVA/PEGクラフトコポリマー(コリコートIR、BASFジャパン(株)製)、酸化チタン(和光純薬工業(株))およびタルク(クラウンタルク、松村産業(株))を精製水に溶解および分散し、固形分濃度8重量%のコーティング液を調製した。ハイコーター(HCT-MINI、フロイント産業(株))を用いて、上記で得られた素錠に素錠100重量部に対して、剤皮が乾燥状態で2.1重量部となるようにコーティングを行うことにより、フィルムコーティング錠を得た。
実施例2:フィルムコーティング錠
ビニールに、イストラデフィリン(10g;平均粒径53.0μm(島津製作所製SALD-2200を使用して測定した))、D-マントール(41g、ParteckM200、メルク(株))、無水リン酸水素カルシウム(12.5g、フジカリン、富士化学工業(株)製)、ヒドロキシプロピルセルロース(2g、HPC-L、日本曹達(株)製)、クロスポビトン(3g、コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製)およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(1g、ノイシリン、富士化学工業(株)製)を入れ、混合する。これにステアリン酸マグネシウム(0.5g、太平化学産業(株)製)を入れ混合することにより、打錠用顆粒を得た。打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:140mg、錠剤の形状:円形錠(φ7.0mm))を得た。
次に、
図1に記載の処方に従って、PVA/PEGクラフトコポリマー(コリコートIR、BASFジャパン(株)製)、酸化チタン(酸化チタン、和光純薬工業(株))およびタルク(クラウンタルク、松村産業(株))を精製水に溶解および分散し、固形分濃度8重量%のコーティング液を調製した。ハイコーター(HCT-MINI、フロイント産業(株))を用いて、上記で得られた素錠に素錠100重量部に対して、剤皮が乾燥状態で2.1重量部となるようにコーティングを行うことにより、フィルムコーティング錠を得た。
実施例3:フィルムコーティング錠
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン(20g;平均粒径53.0μm(島津製作所製SALD-2200を使用して測定した))、D-マントール(45g、マンニットC、三菱商事ライフサイエンス(株)製)、無水リン酸水素カルシウム(15g、フジカリン、富士化学工業(株)製)およびヒドロキシプロピルセルロース(2g、HPC-L、日本曹達(株)製)を混合し、混合物に精製水14gを添加して造粒した。造粒後、乾燥機を用い50℃で乾燥した。乾燥後、30号の篩を通し、整粒顆粒とした。得られた整粒顆粒をビニールに入れ、整粒顆粒100重量部に対して、D-マンニトール(ParteckM200、メルク(株))を57.3重量部、クロスポビトン(コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製)を9.8重量部、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン、富士化学工業(株)製)を2.4重量部入れ、混合する。これにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を1.2重量部入れ混合することにより、打錠用顆粒を得た。打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:140mg、錠剤の形状:円形錠(φ7.0mm))を得た。
次に、
図1に記載の処方に従って、PVA/PEGクラフトコポリマー(コリコートIR、BASFジャパン(株)製)、ポリエチレングリコール(PEG6000P、三洋化成工業(株))、酸化チタン(和光純薬工業(株))およびタルク(クラウンタルク、松村産業(株))を精製水に溶解および分散し、固形分濃度8重量%のコーティング液を調製した。ハイコーター(HCT-MINI、フロイント産業(株))を用いて、上記で得られた素錠に素錠100重量部に対して、剤皮が乾燥状態で2.9重量部となるようにコーティングを行うことにより、フィルムコーティング錠を得た。
実施例4:素錠
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン(20g;平均粒径53.0μm(島津製作所製SALD-2200を使用して測定した))、D-マントール(45g、マンニットC、三菱商事ライフサイエンス(株)製)、無水リン酸水素カルシウム(15g、フジカリン、富士化学工業(株)製)およびヒドロキシプロピルセルロース(2g、HPC-L、日本曹達(株)製)を混合し、混合物に精製水14gを添加して造粒した。造粒後、乾燥機を用い50℃で乾燥した。乾燥後、30号の篩を通し、整粒顆粒とした。得られた整粒顆粒をビニールに入れ、整粒顆粒100重量部に対して、D-マンニトール(ParteckM200、メルク(株))を57.3重量部、クロスポビトン(コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製)を9.8重量部、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン、富士化学工業(株)製)を2.4重量部入れ、混合する。これにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を1.2重量部入れ混合することにより、打錠用顆粒を得た。打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:140mg、錠剤の形状:円形錠(φ7.0mm))を得た。
実施例5:フィルムコーティング錠
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン(20g;平均粒径53.0μm(島津製作所製SALD-2200を使用して測定した))、D-マントール(45g、マンニットC、三菱商事ライフサイエンス(株)製)、無水リン酸水素カルシウム(15g、フジカリン、富士化学工業(株)製)およびヒドロキシプロピルセルロース(2g、HPC-L、日本曹達(株)製)を混合し、混合物に精製水14gを添加して造粒した。造粒後、乾燥機を用い50℃で乾燥した。乾燥後、30号の篩を通し、整粒顆粒とした。得られた整粒顆粒をビニールに入れ、整粒顆粒100重量部に対して、D-マンニトール(ParteckM200、メルク(株))を57.3重量部、クロスポビトン(コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製)を9.8重量部、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン、富士化学工業(株)製)を2.4重量部入れ、混合する。これにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を1.2重量部入れ混合することにより、打錠用顆粒を得た。打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:140mg、錠剤の形状:円形錠(φ7.0mm))を得た。
次に、
図1に記載の処方に従って、PVA/PEGクラフトコポリマー(コリコートIR、BASFジャパン(株)製)、ポリエチレングリコール(PEG6000P、三洋化成工業(株))、酸化チタン(和光純薬工業(株))、タルク(クラウンタルク、松村産業(株))および黄色三二酸化鉄(癸巳化成(株))を精製水に溶解および分散し、固形分濃度8.5重量%のコーティング液を調製した。ハイコーター(HCT-MINI、フロイント産業(株))を用いて、上記で得られた素錠に素錠100重量部に対して、剤皮が乾燥状態で2.1重量部となるようにコーティングを行うことにより、フィルムコーティング錠を得た。
実施例6:フィルムコーティング錠
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン(10g;平均粒径53.0μm(島津製作所製SALD-2200を使用して測定した))、D-マントール(20g、マンニットC、三菱商事ライフサイエンス(株)製)、無水リン酸水素カルシウム(7.5g、フジカリン、富士化学工業(株)製)、黄色三二酸化鉄(2.5g、癸巳化成(株))およびヒドロキシプロピルセルロース(1g、HPC-L、日本曹達(株)製)を混合し、混合物に精製水16gを添加して造粒した。造粒後、乾燥機を用い50℃で乾燥した。乾燥後、30号の篩を通し、整粒顆粒とした。得られた整粒顆粒をビニールに入れ、整粒顆粒100重量部に対して、D-マンニトール(ParteckM200、メルク(株))を57.3重量部、クロスポビトン(コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製)を9.8重量部、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン、富士化学工業(株)製)を2.4重量部入れ、混合する。これにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を1.2重量部入れ混合することにより、打錠用顆粒を得た。打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:140mg、錠剤の形状:円形錠(φ7.0mm))を得た。
次に、
図1に記載の処方に従って、PVA/PEGクラフトコポリマー(コリコートIR、BASFジャパン(株)製)、ポリエチレングリコール(PEG6000P、三洋化成工業(株))、酸化チタン(和光純薬工業(株))およびタルク(クラウンタルク、松村産業(株))を精製水に溶解および分散し、固形分濃度8重量%のコーティング液を調製した。ハイコーター(HCT-MINI、フロイント産業(株))を用いて、上記で得られた素錠に素錠100重量部に対して、剤皮が乾燥状態で2.1重量部となるようにコーティングを行うことにより、フィルムコーティング錠を得た。
実施例7:素錠
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン(10g;平均粒径53.0μm(島津製作所製SALD-2200を使用して測定した))、D-マントール(20g、マンニットC、三菱商事ライフサイエンス(株)製)、無水リン酸水素カルシウム(7.5g、フジカリン、富士化学工業(株)製)、黄色三二酸化鉄(2.5g、癸巳化成(株))およびヒドロキシプロピルセルロース(1g、HPC-L、日本曹達(株)製)を混合し、混合物に精製水16gを添加して造粒した。造粒後、乾燥機を用い50℃で乾燥した。乾燥後、30号の篩を通し、整粒顆粒とした。得られた整粒顆粒をビニールに入れ、整粒顆粒100重量部に対して、D-マンニトール(ParteckM200、メルク(株))を57.3重量部、クロスポビトン(コリドンCL-F、BASFジャパン(株)製)を9.8重量部、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン、富士化学工業(株)製)を2.4重量部入れ、混合する。これにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)を1.2重量部入れ混合することにより、打錠用顆粒を得た。打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:140mg、錠剤の形状:円形錠(φ7.0mm))を得た。
【0040】
調製した錠剤を以下のように試験した。
試験例1:実施例1及び実施例2のフィルムコーティング錠の安定性試験
(方法)
日米EU三極医薬品承認審査調和国際会議(ICH)における新原薬及び新製剤の光定性試験ガイドライン(1997年5月28日)に従って、実施例1で得られた錠剤及び実施例2で得られた錠剤2に関し、それぞれ安定性試験を行った。光源としてD65蛍光ランプを用いて、約1440000Lux・hrの総照度でそれぞれの錠剤を曝光した。曝光した後、サンプリングを行い、HPLC分析によって各製剤中における光分解過程で生じる光分解物の総量を求めた。HPLC分析条件は以下の通りである。
<HPLC分析条件>
検出器:紫外吸光光度計
移動相A:薄めたリン酸(1→1000)
移動相B:アセトニトリル
装置等:高速液体クロマトグラフ装置(日本ウォーターズ)、紫外吸光光度計(日本ウォーターズ)(結果)
実施例1の錠剤と実施例2の錠剤で、光分解物の量は実質的に変わらなかった(
図1参照)。このことから、造粒工程を行うか否かで光分解物の量が実質的に変わらないことが示された。また、D-マンニトールのグレードによっても、光分解物の量が実質的に変わらないことが示された。
【0041】
試験例2:実施例1及び実施例2のフィルムコーティング錠の溶出試験
(方法)
第17局改正日本薬局方の溶出試験法に記載の第2法(パドル法)に従って、実施例1で得られた錠剤及び実施例2で得られた錠剤2に関し、それぞれ溶出試験を行った。試験液として1.0重量%ポリソルベート80(純正化学(株)製)の溶出試験第2液溶液900mLを用い、パドルの回転数は毎分50回転で試験を行った。溶出試験を開始してから、経時的に試験液をサンプリングし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によってそれぞれの錠剤からのイストラデフィリンの溶出量を求めた。HPLC分析条件は以下の通りである。
<HPLC分析条件>
検出器:紫外吸光光度計
移動相:アセトニトリル/薄めたリン酸(1→1000)混液(3:2)
装置等:高速液体クロマトグラフ装置(日立ハイテクサイエンス)、紫外吸光光度計(日立ハイテクサイエンス)
(結果)
試験開始10分後から240分後までの全ての時点において、実施例2の錠剤に比較し、実施例1の錠剤の方がイストラデフィリンの溶出率が高かった。直打に比較し、湿式造粒法で製造した錠剤の方がイストラデフィリンの溶出が高いことが示された。
【0042】
試験例3:実施例3~実施例7の錠剤の安定性試験
(方法)
日米EU三極医薬品承認審査調和国際会議(ICH)における新原薬及び新製剤の光定性試験ガイドライン(1997年5月28日)に従って、実施例3~実施例で得られた錠剤及びそれらの錠剤の粉砕物並びに打錠前の顆粒(整粒末)に関し、それぞれ安定性試験を行った。光源としてD65蛍光ランプを用いて、約1200000Lux・hrの総照度でそれぞれの試料を曝光した。曝光した後、サンプリングを行い、HPLC分析によって各試料中における光分解過程で生じる光分解物の総量を求めた。HPLC分析条件は試験例1で示した条件と同じである。
(結果)
D-マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを素錠中に含む錠剤のイストラデフィリンの光安定性は、酸化チタンやタルクを含むフィルムコーティング層の有無によっては実質的に変化が見られなかった(
図1、実施例3及び実施例4参照)。
また、素錠中に黄色三二酸化鉄のような着色剤を含む錠剤が、優れたイストラデフィリンの光分解抑制効果を示し、素錠中に黄色三二酸化鉄を含めば、酸化チタン、タルク、黄色三二酸化鉄を含むフィルムコーティングを施しても、更なるイストラデフィリンの光分解抑制効果は見られないことが示された(
図1、実施例5~実施例7参照)。
そして、素錠中に黄色三二酸化鉄を含む錠剤は、粉砕しても粉砕前と変わらぬイストラデフィリンの光分解抑制効果を示した(
図3、実施例6~実施例7参照)。粉砕によって、イストラデフィリンが粉砕片の表面に表れて光に直接暴露される可能性が高まるにもかかわらず、粉砕前後で変わらぬイストラデフィリンの光分解抑制効果を示したことは予想外であった(
図3、実施例5~実施例7参照)。
特許第4673745号において、イストラデフィリンを含む素錠について、本試験例と同様の安定性試験を実施していたので、特許第4673745号に記載の安定性試験結果と、実施例4と実施例7の素錠についての安定性試験の結果を比較した。特許第4673745号に記載の錠剤でイストラデフィリンの光分解抑制効果を示した結晶セルロースに代えて、D-マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを添加した錠剤(実施例4と7の素錠)は、優れたイストラデフィリンの光分解抑制効果を示した(
図2参照)。
なお、実施例4及び実施例7の素錠で用いた、打錠前の顆粒(整粒末)を試験したところ、打錠後の素錠に比較し、光分解物の量が少ないことが示された(
図3参照)。このことは、打錠工程がイストラデフィリンの光分解を促進させることを示している。よって、打錠圧力緩和物質が錠剤におけるイストラデフィリンの光分解抑制効果を発揮すると理解できる。
【0043】
試験例4:実施例4及び実施例7の錠剤の硬度測定試験
(方法)
硬度は、ロードセル式錠剤硬度計PC-30(岡田精工株式会社製)を用いて測定した。
(結果)
実施例4の錠剤、実施例7の錠剤の硬度は、それぞれ、82N、70Nとなった。一包化に耐え得る十分な硬度が得られた(
図1及び
図3参照)。
【0044】
試験例5:実施例4及び実施例7の錠剤の崩壊試験
(方法)
各錠剤が口腔内で崩壊するまでの崩壊時間を測定した。
(結果)
実施例4の錠剤、実施例7の錠剤の口腔内崩壊時間は、それぞれ、29秒、36秒となった。口腔内崩壊錠として十分早い崩壊性が認められた(
図1及び
図3参照)。
【0045】
試験例6:イストラデフィリンの光分解に対する滑沢剤の影響
(方法)
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン、賦形剤及び滑沢剤を表1記載の割合で混合し、打錠用顆粒を得た。簡易錠剤成形機(HANDTAB-200、市橋精機(株))を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:100mg、錠剤の形状:円形錠(φ6.5mm))を得た。
【0046】
【表1】
乳糖水和物(Pharmatose 200M、DFE Pharma製)
D-マンニトール(マンニットC、三菱商事フードテック製)
ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)
ステアリン酸カルシウム(太平化学産業(株)製)
フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV、JRS Pharma製)
【0047】
製造した錠剤を、日米EU三極医薬品承認審査調和国際会議(ICH)における新原薬及び新製剤の光定性試験ガイドライン(1997年5月28日)に従って、それぞれ安定性試験を行った。光源としてD65蛍光ランプを用いて、約1200000Lux・hrの総照度でそれぞれの試料を曝光した。曝光した後、サンプリングを行い、HPLC分析によって各試料中における光分解過程で生じる光分解物の総量を求めた。HPLC分析条件は試験例1で示した条件と同じである。
(結果)
滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、賦形剤として乳糖水和物を使用した場合、その含量に比例して、光照射によって生ずるイストラデフィリンの二量体の量が減少した(
図4参照)。
同様に、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、賦形剤としてD-マンニトールを使用した場合、その含量に比例して、光照射によって生ずるイストラデフィリンの二量体の量が減少した(
図5参照)。
滑沢剤としてステアリン酸カルシウム、賦形剤として乳糖水和物を使用した場合、ステアリン酸カルシウム1重量%及び5重量%の含量で、光照射によって生ずるイストラデフィリンの二量体の量が減少した(
図6参照)。
同様に、滑沢剤としてステアリン酸カルシウム、賦形剤としてD-マンニトールを使用した場合、ステアリン酸カルシウム1重量%及び5重量%の含量で、光照射によって生ずるイストラデフィリンの二量体の量が減少した(
図7参照)。
滑沢剤としてフマル酸ステアリルナトリウム、賦形剤としてD-マンニトールを使用した場合、フマル酸ステアリルナトリウム5重量%の含量で、光照射によって生ずるイストラデフィリンの二量体の量が減少した(
図8参照)。
上記結果より、滑沢剤が、イストラデフィリンの光照射による分解(例えば、二量体の生成)を抑制することが示された。後述するように、打錠圧を高くしてイストラデフィリンを含む錠剤を製造すると、イストラデフィリンの光照射による分解物(例えば、二量体)の生成量が多くなることから、特定の理論に縛られる意図はないが、滑沢剤が打錠圧力を緩和し、錠剤におけるイストラデフィリンの光分解抑制効果を発揮したと考えられた。
【0048】
試験例7:イストラデフィリンの光分解に対する打錠圧の影響
(方法)
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン20重量%、D-マンニトール(マンニットC、三菱商事フードテック製)79重量%及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)1重量%の割合で混合し、打錠用顆粒を得た。簡易錠剤成形機(HANDTAB-200、市橋精機(株))を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:100mg、錠剤の形状:円形錠(φ6.5mm))を得た。打錠圧を6、10、15、20、25又は30kNとした。
また、乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン20重量%、D-マンニトール(マンニットC、三菱商事フードテック製)79重量%及び黄色三二酸化鉄(癸巳化成(株)製)1重量%の割合で混合し、打錠用顆粒を得た。簡易錠剤成形機(HANDTAB-200、市橋精機(株))を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:100mg、錠剤の形状:円形錠(φ6.5mm))を得た。打錠圧を10、15、25又は30kNとした。
製造した錠剤を、試験例6と同様に光定性試験を実施した。
(結果)
イストラデフィリン、D-マンニトール及びステアリン酸マグネシウムの混合物を打錠すると、打錠圧に依存して、光照射によって生ずるイストラデフィリンの二量体の量が増加した(
図9参照)。
10kN以下の打錠圧を使用することにより、イストラデフィリンの光分解物である二量体の生成が、イストラデフィリン20mg含有錠剤に関する安全性の確認が必要とされる製剤中の分解生成物の閾値(0.5%)未満に抑えられることが確認された(
図9参照)。
また、イストラデフィリン、D-マンニトール及び黄色三二酸化鉄の混合物を打錠すると、錠圧に依存して、光照射によって生ずるイストラデフィリンの二量体の量が増加した(
図10参照)。イストラデフィリンに光安定化作用のある着色剤を混合して打錠することにより、30kNの打錠圧を使用しても、イストラデフィリンの光分解物である二量体の生成が、イストラデフィリン20mg含有錠剤に関する安全性の確認が必要とされる製剤中の分解生成物の閾値(0.5%)未満に抑えられることが確認された(
図10参照)。
【0049】
試験例8:イストラデフィリンの光分解に対する賦形剤の効果
(方法)
乳鉢乳棒を用いて、イストラデフィリン20重量%、賦形剤(D-マンニトール、結晶セルロース又は無水リン酸水素カルシウム)79重量%及びステアリン酸マグネシウム1重量%の割合で混合し、打錠用顆粒を得た。簡易錠剤成形機(HANDTAB-200、市橋精機(株))を用いて、得られた打錠用顆粒を製錠することにより、素錠(錠剤質量:100mg、錠剤の形状:円形錠(φ6.5mm))を得た。打錠圧は10kNとした。
製造した錠剤を、試験例6と同様に光定性試験を実施した。
なお、D-マンニトールは、マンニットC(三菱商事フードテック製)を、結晶セルロースは、PH-301(旭化成(株)製)を、無水リン酸水素カルシウムは、フジカリン(富士化学工業(株)製)を使用した。
(結果)
イストラデフィリンと各種賦形剤の混合物を打錠した結果、D-マンニトール及び無水リン酸水素カルシウムは、特許第4673745号でイストラデフィリンの光分解物抑制効果が報告されている結晶セルロースに比較して、イストラデフィリンの光分解物(二量体)の生成は、ほぼ同等であった(表2)。
本結果より、イストラデフィリン含有錠剤の賦形剤として、D-マンニトール及び無水リン酸水素カルシウムが使用できることが示された。
【0050】