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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138434
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】エクオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 17/06 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
C12P17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111381
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2023567011の分割
【原出願日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2022066081
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】村田 英城
(57)【要約】      (修正有)
【課題】微生物を利用したエクオールの製造において、従来よりも安全な低水素濃度で、効果的にエクオールを製造できる方法を提供する。
【解決手段】ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物により、水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で発酵させる工程;を有してエクオールを産生するエクオールの製造方法であって、該発酵工程において、培養液量100L以上の発酵槽を用い、i)該発酵槽で攪拌動力0.1kW/kL以上、好ましくは0.2kW/kL以上、より好ましくは0.4kW/kL以上で攪拌を行うか、及び/又はii)前記気体を孔径2mm以下、好ましくは孔径1mm以下、より好ましくは孔径0.5mm以下のスパージャーを用いることにより導入することを特徴とする、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する微生物により、水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で発酵させる工程;を有してエクオールを産生するエクオールの製造方法であって、
前記発酵工程において、培養液量100L以上の発酵槽を用い、
i)該発酵槽で攪拌動力0.1kW/kL以上で攪拌を行うか、及び/又は
ii)前記気体を孔径2mm以下のスパージャーを用いることにより導入する
ことを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記攪拌動力が0.2kW/kL以上である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記攪拌動力が0.4kW/kL以上である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スパージャーの孔径が1mm以下である請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記スパージャーの孔径が0.5mm以下である請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記気体の水素濃度が30%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記気体の水素濃度が10%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記気体の水素濃度が4%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記気体の水素濃度が30%以下である請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記気体の水素濃度が10%以下である請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記気体の水素濃度が4%以下である請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記気体の水素濃度が30%以下である請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記気体の水素濃度が10%以下である請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記気体の水素濃度が4%以下である請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクオール産生能を有する微生物によるエクオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆、葛などのマメ科の植物に多く含まれているイソフラボン類はポリフェノールの分類のひとつであり、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。近年の調査により、イソフラボン類は女性ホルモン作用(エストロゲン)や抗酸化作用を有し、イソフラボン類を摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害などに対して予防効果があることが明らかとなっている。
イソフラボン類は、たとえば大豆内では、糖と共有結合した配糖体の形、ダイジン(daidzin)、グリシチン(glycitin)、ゲニスチン(genistin)として存在しており、アグリコンの形ではごく少量存在しているのみである。これら配糖体はさらにマロニル化、アセチル化されているものも存在している。これらの配糖体は、ヒトや動物の体内に入ると消化酵素又は腸内細菌の産生する酵素であるβグルコシダーゼ等の働きにより、それぞれダイゼイン(daidzein)、グリシテイン(glycitein)、ゲニステイン(genistein)となる。さらに、ダイゼインは腸内細菌の働きにより、ジヒドロダイゼイン(dihydrodaidzein)を経て、O-デスメチルアンゴレンシン(O-desmethylangolensin:O-DMA)又はエクオール(equol)へと酵素的に変換されることが知られている。
【0003】
エクオールは、これらの代謝産物の中で最もエストロゲン活性が高いことが知られている。しかしながら、人間の場合、イソフラボンの代謝には個人差があり、上記のようにダイゼインを発酵させてエクオールを産生する能力を有する腸内細菌を保有する人は少なく、その保有率は日本人で約5割、欧米人で約3割程度であることが明らかとなっている。そのため、エクオール産生菌を保有しない人は、大豆等のマメ科食物を摂取してもエクオールを体内で産生することができないという問題点が存在していた。
【0004】
これらの課題を克服するために、乳酸菌等の嫌気性微生物を用いて体外的にエクオールを産生させる試みがなされている(特許文献1~4)。しかしながら、どのような発酵条件・発酵方法により、より効果的・実用的にエクオールが製造できるかについては、明らかとなっていなかった。たとえば、4種類の嫌気性微生物を水素気相下で混合培養し、エクオールの製造を試みた例(非特許文献1)が存在していたが、混合培養では実用的生産(工業化)には適さないものであった。
【0005】
嫌気性微生物の培養であるので、通常は、静置培養を行う(特許文献5)。一方、発酵条件・発酵方法により、より効果的・実用的にエクオールが製造できる方法について、発酵が行われる気相において水素ガスの質量パーセント濃度が40~100%である場合(特に100%である場合)に、エクオールの製造効率が飛躍的に高まるという報告がある(特許文献6)。しかしながら、水素は、酸素共存下で、着火した場合、激しい爆発が生じる。空気との混合では、爆発が生じる水素濃度範囲は、水素濃度下限4.1パーセント、上限74.2パーセントである。つまり、エクオールの製造効率が飛躍的に高まる水素濃度範囲では、製造設備から水素を含む気体が漏洩した場合、激しい爆発が生じる可能性を有する水素濃度である為、工業化時には、爆発防止対策を充分に施した非常に高価な生産設備が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-204296号公報。
【特許文献2】特表2006-504409号公報。
【特許文献3】特開2008-61584号公報。
【特許文献4】特開2010-104241号公報。
【特許文献5】WO2007/066655。
【特許文献6】WO2012/033150。
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Decroos, K. et al., Arch Microbiol., 183, 45-55 (2005)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、微生物を利用したエクオールの製造において、従来よりも安全な低水素濃度で、効果的にエクオールを製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物により、水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で発酵させる工程において、培養液量100L以上の発酵槽を用い、一定以上の攪拌動力、及び/又は一定スパージャーによる一定以上のガス供給速度条件を用いることにより、菌種に制限は無く、従来と比較して低い気相水素濃度で、効果的にエクオールが生成することを見出した。具体的には以下の発明を見出した。
【0010】
<1> ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物により、水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で発酵させる工程;を有してエクオールを産生するエクオールの製造方法であって、
前記発酵工程において、培養液量100L以上の発酵槽を用いたときに、
i)該発酵槽で攪拌動力0.1kW/kL以上、好ましくは0.2kW/kL以上、より好ましくは0.4kW/kL以上で攪拌を行うか、及び/又は
ii)前記気体を孔径2mm以下、好ましくは孔径1mm以下、より好ましくは孔径0.5mm以下のスパージャーを用いることにより導入する
ことを特徴とする、上記方法。
<2> 上記<1>において、前記気体の水素濃度が、30%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは4%以下であるのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、微生物を利用したエクオールの製造において、従来よりも安全な低水素濃度で、効果的にエクオールを製造できる方法を提供することができる。
特に、本発明により、工業化スケールでも安全な低水素濃度で、微生物、特に嫌気性微生物発酵を利用した、ダイゼインを原料とするエクオールの効率的な製造方法が実現でき、エクオールの大量製造技術を提供することができる。
【0012】
本発明の方法により、安価かつ大量にエクオールを製造することが可能となり、より多くの人々に、エクオールを供給することができるようになる。エクオールは、飲食品又は医薬品等としてそのまま摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害等を予防できるものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を、該エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物により、水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で発酵させる工程;を有してエクオールを産生するエクオールの製造方法であって、
前記発酵工程において、培養液量100L以上の発酵槽を用い、
i)該発酵槽で攪拌動力0.1kW/kL以上、好ましくは0.2kW/kL以上、より好ましくは0.4kW/kL以上で攪拌を行うか、及び/又は
ii)前記気体を孔径2mm以下、好ましくは孔径1mm以下、より好ましくは孔径0.5mm以下のスパージャーを用いることにより導入する
ことを特徴とする、上記方法を提供する。
微生物、特に嫌気性微生物の代謝によってエクオールが製造されることは、学術的にはかねてより知られていたものの、工業スケールでも安全な低水素濃度で、エクオールを製造する嫌気性微生物の培養条件については、確立されていなかったため、本発明の方法は有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
<発酵工程>
本発明は、上記発酵工程を有するエクオールの製造方法を提供する。
本発明の方法は、該発酵工程以外の工程を有してもよい。例えば、エクオール原料を調製する工程、得られたエクオールを回収する工程などを挙げることができるがこれらに限定されない。
上記発酵工程以外の工程として、具体的には、発酵に使用した微生物を殺菌する殺菌工程を挙げることができるが、これに限定されない。
【0015】
<<エクオール原料>>
本発明の方法において、特に本発明の方法の発酵工程において、原料として、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種のエクオール原料を用いる。
該エクオール原料は、文字通り、エクオールの原料として用いられるものであれば、その形態は問わない。
エクオール原料は、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン及びジヒドロダイゼインからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいればよく、その形態は問わない。例えば、ダイゼイン配糖体そのもの、ダイゼインそのもの、又はジヒドロダイゼインそのものであっても、それらを含有するもの、例えば大豆、大豆加工物、大豆胚軸、大豆胚軸加工物、例えば大豆抽出物、大豆胚軸抽出物、大豆胚軸抽出物精製物が挙げられ、具体的には市販イソフラボンであってもよい。
【0016】
<<微生物>>
本発明の方法は、特に本発明の方法における発酵工程は、エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いる。なお、「エクオール原料を資化してエクオールを産生する能力」を、本明細書において、単に「エクオール産生能」という場合がある。
本発明の方法において用いるエクオール資化する微生物は、上記エクオール原料からエクオールを産生する能力を有する微生物であれば、特に限定されない。
微生物として、嫌気性微生物を挙げることができる。該嫌気性微生物は、例えば、37℃付近(例えば30~42℃)の温度でエクオールを産生することができる。
【0017】
なお、エクオール産生能は、培養物中のダイゼイン、ジヒドロダイゼイン、エクオール等を定量することにより確認することができる。これらの定量は、当業者であれば、例えばWO2012/033150、特開2012-135217、特開2012-135218、特開2012-135219等の記載に基づき行うことができる。これらの定量方法の一例を以下に示す。
【0018】
例えば、培養液に酢酸エチルを加えて、激しく攪拌した後遠心し、酢酸エチル層を取り出す。必要に応じて同培養液に同様の操作を数回行い、それら酢酸エチル層を合わせてエクオール抽出液を得ることができる。この抽出液をエバポレーターで減圧下に濃縮、乾固し、メタノールに溶解させる。これをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜等の膜を使用して濾過し、不溶物を除去したものを高速液体クロマトグラフィー測定サンプルとすることができる。高速液体クロマトグラフィーの条件は例えば以下のものを例示することができるがこれに限定されない。
【0019】
[高速液体クロマトグラフィー条件]
カラム:Phenomenox Luna 5uC18、2.0mm×150mm(島津ジーエルシー)
移動相:水/メタノール[55:45,v/v]
流速:0.2mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV280nm
保持時間:ジヒドロダイゼインが13.8分、ダイゼインが19.6分、グリシテインが22.5分、エクオールが25.6分、ゲニステインが35.0分
【0020】
エクオール産生する能力を有する微生物として、以下の属に分類される微生物を挙げることができるがこれらに限定されない。
アドレクラウチア(Adlercreutzia)属
バクテロイデス(Bacteroides)属
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属
クロストリジウム(Clostridium)属
エガセラ(Eggerthella)属
エンテロコッカス(Enterococcus)属
エンテロハブダス(Enterorhabdus)属
ユーバクテリウム(Eubacterium)属
フィネゴルディア(Finegoldia)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属
ラクトコッカス(Lactococcus)属
パラエガセラ(Paraeggerthella)属
ペディオコッカス(Pediococcus)属
プロテウス(Proteus)属
シャーペア(Sharpea)属
スラキア(Slackia)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ベイロネラ(Veillonella)属
【0021】
エクオールを産生する能力を有する微生物として、具体的には、以下の微生物を挙げることができるがこれらに限定されない。
アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)
アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. equolifaciens)
バクテロイデス・オバツス(Bacteroides ovatus)
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)
ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)
クロストリジウム・エスピー(Clostridium sp.)
エガセラ・エスピー(Eggerthella sp. )
エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
エンテロハブダス・ムコシコラ(Enterorhabdus mucosicola)
ユーバクテリウム・エスピー(Eubacterium sp.)
フィネゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)
ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)
ラクトバチルス・ムコサエ(Lactobacillus mucosae)
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)
ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)
ラクトバチルス・エスピー(Lactobacillus sp.)
ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)
ラクトコッカス・エスピー(Lactococcus sp.)
パラエガセラ・エスピー(Paraeggerthella sp.)
ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)
プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)
シャーペア・アザブエンシス(Sharpea azabuensis)
スラキア・エクオリファシエンス(Slackia equolifaciens)
スラキア・イソフラボニコンバーテンス(Slackia isoflavoniconvertens)
スラキア・エスピー(Slackia sp.)
ストレプトコッカス・コンステラタス(Streptococcus constellatus)
ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)
ベイロネア・エスピー(Veillonella sp.)
【0022】
上記記載の微生物のうち、例えばエガセラ(Eggerthellaceae)科に分類される微生物、ビフィドバクテリアセアエ(Bifidobacteriaceae)科に分類される微生物、クロストリジアセアエ(Clostridiaceae)科に分類される微生物、コーリオバクテリアセアエ(Coriobacteriaceae)科に分類される微生物、エンテロコッカセアエ(Enterococcaceae)科に分類される微生物、ユーバクテリアセアエ(Eubacteriaceae)科に分類される微生物、モルガネラセアエ(Morganellaceae)科に分類される微生物、ペプトニフィラセアエ(Peptoniphilaceae)科に分類される微生物、ラクトバチラセアエ(Lactobacillaceae)科に分類される微生物、ストレプトコッカセアエ(Streptococcaceae)科に分類される微生物、ベイロネラセアエ(Veillonellaceae)科に分類される微生物、又はこれらの類縁微生物が挙げられる。好ましくは、アドレクラウチア(Adlercreutzia)属、バクテロイデス属、ビフィドバクテリウム属、クロストリジウム属、コリオバクテリウム属、エガセラ属、エンテロコッカス属、ユーバクテリウム属、フィネゴルディア属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、パラエガセラ属、ペディオコッカス属、プロテウス属、シャーペア属、スラキア属、ストレプトコッカス属、ベイロネア属、又はこれらの類縁微生物に分類される微生物であるのがよい。さらに好ましくは、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス、バクテロイデス・オバツス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロングム、クロストリジウム・エスピー、エガセラ・エスピー、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロハブダス・ムコシコラ、ユーバクテリウム・エスピー、フィネゴルディア・マグナ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・インテスティナリス、ラクトバチルス・ムコサエ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・エスピー、ラクトコッカス・ガルビエ、ラクトコッカス・エスピー、パラエガセラ・エスピー、ペディオコッカス・ペントサセウス、プロテウス・ミラビリス、シャーペア・アザブエンシス、スラキア・エクオリファシエンス、スラキア・イソフラボニコンバーテンス、スラキア・エスピー、ストレプトコッカス・コンステラタス、ストレプトコッカス・インターメディウス、ベイロネア・エスピーであるのがよい。
【0023】
上記記載の微生物のうち、特に以下に記載する微生物のいずれか又はこれらの菌と同様の種としての性質を有する類縁の菌をより好ましい嫌気性微生物として挙げることができる。
アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)DSM 18785株
アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. equolifaciens)DSM 19450株
バクテロイデス・オバツス(Bacteroides ovatus)E-23-15株
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidibacterium breve)ATCC 15700株
ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)BB536株
クロストリジウム・エスピー(Clostridium sp.)HGH136株
エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)Julong 732株
エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)YY7918株
エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)D1株
エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)INIA P333株
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)EPI1株
エンテロハブダス・ムコシコラ(Enterohabdus mucosicola)Mt1B8株
ユーバクテリウム・エスピー(Eubacterium sp.)D2株
フィネゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)EPI3株
ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)DPPMA114株
ラクトバチルス・インテスティナリス(Lactobacillus intestinalis)KTCT13676BP株
ラクトバチルス・ムコサエ(Lactobacillus mucosae)EPI2株
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)JS1株
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)DPPMA24W株
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)DPPMASL33株
ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)DPPMAAZ1株
ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)INIA P540株
ラクトバチルス・エスピー(Lactobacillus sp.)Niu-O16株
ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)20-92株
パラエガセラ・エスピー(Paraeggerthella sp.)SNR40-432株
ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)CS1株
プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)LH-52株
シャーペア・アザブエンシス(Sharpea azabuensis)ST18株
スラキア・エクオリファシエンス(Slackia equolifaciens)DSM 24851株
スラキア・イソフラボニコンバーテンス(Slackia isoflavoniconvertens)DSM 22006株
スラキア・エスピー(Slackia sp.)FJK1株
スラキア・エスピー(Slackia sp.)NATTS株
スラキア・エスピー(Slackia sp.)YIT11861株
スラキア・エスピー(Slackia sp.)TM-30株
ストレプトコッカス・コンステラタス(Streptococcus constellatus)E-23-17株
ストレプトコッカス・インターメディウス(Streptococcus intermedius)A6G-225株
ベイロネア・エスピー(Veillonella sp.)EP株。
【0024】
なお、上記嫌気性微生物は、その寄託番号に示された寄託機関から入手することができる。各受託番号は、当該嫌気性微生物が、それぞれ次の寄託機関に寄託されていることを示す。
FERM 特許生物寄託センター;International Patent Organism Depositary (IPOD)
http://unit.aist.go.jp/pod/ci/index.html
DSM German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (DSMZ)
http://www.dsmz.de/
KCCM Korean Culture Center of Microorganisms
【0025】
本発明においては、エクオールの産生能を有する嫌気性微生物は、エクオールの生産に適した条件で培養される。本発明におけるエクオールの生産に適した条件とは、エクオールの生成活性を持つ嫌気性微生物の生存と活動が維持される条件をいう。より具体的には、嫌気性微生物の生存が可能な気相条件(嫌気性条件)が維持され、当該嫌気性微生物の活性と増殖を支持するための栄養素が与えられることを言う。嫌気性微生物の生存に適した種々の培地組成が公知である。したがって、先に示したエクオールの産生能を有する嫌気性微生物について、当業者は、適切な培地組成を選択することができる。たとえば、Difco社製のBHI培地や、実施例において用いた培地等を使用することができるがこれらに限定されない。
【0026】
本発明で用いられる培地には、水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
ソルボース、フラクトース、グルコース等の糖類;
メタノール等のアルコール類;
吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸等有機酸類、またはこれらの塩。
【0027】
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、効率的に培地中の嫌気性微生物を発育させるために適宜調節することができる。
【0028】
培地には、窒素源を加えることができる。本発明において、窒素源としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。好ましい無機窒素源は、アンモニウム塩、及び硝酸塩である。より好ましい無機窒素源は、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダである。一方、好ましい有機窒素源はアミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類、肉エキス、肝臓エキス、消化血清末等である。より好ましい有機窒素源はアルギニン、システイン、シスチン、シトルリン、リジン、酵母エキス、ペプトン類である。
【0029】
さらに、炭素源や窒素源に加えて、エクオールの製造に適した他の有機物あるいは無機物を培地に加えることもできる。たとえば、ビタミン等の補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、嫌気性微生物の増殖や活性を増強できる場合もある。たとえば無機化合物、ビタミン類、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
【0030】
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオオクト酸
モリブデン酸ソーダ p-アミノ安息香酸
塩化カリウム
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
【0031】
これらの無機化合物やビタミン類、あるいは増殖補助因子を添加して培養液を製造する方法として、従来公知の手法を用いることができる。培地は、液体、半固体、あるいは固体とすることができる。本発明において、好ましい培地の形態は、液体培地である。
【0032】
本発明の培地は、デキストリン類を含むことができる。デキストリン類を含む培地で嫌気性微生物を培養すれば、培養後に改めて培養物にデキストリン類を接触させることなく、エクオールおよびデキストリン類を含む液を調製することができる。
デキストリン類の培地への添加は、微生物の培養前および培養中に行うことができる。
【0033】
本発明の培地に、消泡剤 好ましくは大豆油、より好ましくはビタミンE入り大豆油を含むことができる。
【0034】
本願の方法において、微生物、特に嫌気性微生物は、公知の微生物の培養方法にしたがって培養することができる。工業的な製造には、培地や基質ガスを連続的に供給することができ、かつ培養物を回収するための機構を備えた連続培養システム (continuous fermentation system)を使用することもできる。
【0035】
本願の方法において、嫌気性微生物を用いる場合には、発酵槽内への酸素の混入を防ぐのがよい。発酵槽は、通常用いられる発酵槽がそのまま利用できる。発酵槽内に混入する酸素を、窒素等の不活性気体で置換することにより、嫌気的な雰囲気を作ることができる。
【0036】
<<発酵工程での気相>>
本発明の方法、特に本発明の方法の発酵工程は、水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で行われる。気相を構成する気体は、水素を含む1種類以上の気体からなれば特に限定されないが、水素及び水素以外の1種以上の気体を有するのがよい。水素以外の気体として、二酸化炭素、窒素、一酸化炭素等を挙げることができるが、特に限定されない。
水素は、前記気体の水素濃度が、30%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは4%以下であるのがよい。
【0037】
<<発酵槽、撹拌動力、スパージャーの孔径>>
発酵槽の大きさは、培養液100L以上であれば、特に制限されるものではない。
発酵槽が、通気攪拌槽の場合、攪拌機の動力が、0.1kW/kL以上であれば、特に制限されるものではない。また、スパージャーを用いて前記気体を供給する場合、該スパージャーの孔径は、特に制限されるものではない。
【0038】
発酵槽が、通気攪拌槽の場合、攪拌機の動力が、0.1kW/kL未満であるならば、前記気体を供給するスパージャーの孔径は、2mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下であるのがよい。
【0039】
発酵槽が、攪拌機が無い気泡搭の場合、前記気体を供給するスパージャーの孔径は、2mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下であるのがよい。また、必要に応じて、ドラフトチューブを設置することもできる。
【0040】
また、効率よくエクオールを回収するためには、気相を構成する混合気体の発酵槽への通気量は0.001~2.0V/V/Mガス量/液量/分であることが好ましい。
【0041】
本発明では、発酵槽の温度は特に制限されるものではないが、上記微生物がエクオール産生能を発揮できる温度であるのがよく、例えば30℃~40℃、好ましくは33℃~38℃であるのがよい。
【0042】
本発明において、微生物を培養する際は常圧で行うこともできるが、加圧する場合、加圧条件は、当該微生物が生育できる条件であれば特に限定されるものではない。好ましい加圧条件としては、0.2MPa以下の範囲を挙げることができるがこれに限定されない。
【0043】
発酵時間は、エクオールの生成量に応じて、また、イソフラボン類の残存量等に応じても適宜設定できる。例えば8~120時間、好ましくは12~72時間、特に好ましくは16~60時間を例示することができるがこれらに限定されない。
【0044】
本発明の培養方法により得られた発酵培養物は、必要に応じて加熱乾燥処理あるいは噴霧乾燥処理、凍結乾燥処理により固形状にして使用することができる。加熱乾燥処理は、例えば回転ドラム乾燥機を、噴霧乾燥処理は、例えばスプレー乾燥機を、凍結乾燥処理は凍結乾燥機を使用して行うことができる。乾燥方法は、液体を乾燥できる乾燥機ならば、どのような乾燥機でも良い。乾燥処理された発酵培養物は、必要に応じて粉砕化処理に供してもよい。
【実施例0045】
本発明を以下、実施例に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(前培養1)
表1に示した組成で、pH6.9に調整した培地を、10mL嫌気性微生物培養用18mm試験管(三紳工業製)に分注し、気相を窒素に置換しながらブチルゴム栓とプラスチックキャップをはめて121℃、15分間滅菌した。この培地に、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)DSM 18785株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後、37℃、200spmで18時間振盪培養を行い、前培養液1を調製した。
【0046】
【表1】
【0047】
(前培養2)
表1に示した組成で、pH6.9に調整した培地15Lを容量30Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液1を植菌し、水素/窒素混合ガスでガス置換し、37℃、18時間培養を行い、前培養液2を調製した。
【0048】
(本培養)
表1に示した組成にダイゼイン1g/L、及びL-アルギニン3g/Lを添加し、pH6.9に調整した培地100Lを容量200Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液2を植菌し、それぞれの水素/窒素比の混合ガスでガス置換し、それぞれの孔径のスパージャーにて混合ガスを通気ながら、それぞれの動力で攪拌を行った。37℃、18時間培養を行い、本培養液中のエクオール濃度をHPLC法にて分析した。
【0049】
結果を表2に示す。実施例1より、気相水素濃度が、30%以下では、攪拌動力0.1kW/kL以上にすることにて、エクオールの濃度が顕著に向上していることを確認した。また、攪拌動力を与えない場合では、スパージャー孔径を2mm以下にすることにて、エクオール濃度が向上することを確認した。
【0050】
【表2】
【0051】
〔実施例2〕
(前培養1)
表1に示した組成で、pH6.9に調整した培地を、10mL嫌気性微生物培養用18mm試験管(三紳工業製)に分注し、気相を窒素に置換しながらブチルゴム栓とプラスチックキャップをはめて121℃、15分間滅菌した。この培地に、アドレクラウチア・エクオリファシエンス・サブスピーシズ・セラツス(Adlercreutzia equolifaciens subsp. celatus)DSM 18785株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後、37℃、200spmで18時間振盪培養を行い、前培養液1を調製した。
【0052】
(前培養2)
表1に示した組成で、pH6.9に調整した培地15Lを容量30Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液1を植菌し、水素/窒素混合ガスでガス置換し、37℃、18時間培養を行い、前培養液2を調製した。
【0053】
(前培養3)
表1に示した組成で、pH6.9に調整した培地100Lを容量200Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液2を植菌し、水素/窒素混合ガスでガス置換し、37℃、18時間培養を行い、前培養液3を調製した。
【0054】
(本培養)
表1に示した組成にダイゼイン1g/L、及びL-アルギニン3g/Lを添加し、pH6.9に調整した培地2000Lを容量4000Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液3を植菌し、水素濃度4%の窒素混合ガスでガス置換し、孔径3mmのスパージャーにて混合ガスを通気ながら、それぞれの動力で攪拌を行った。37℃、18時間培養を行い、本培養液中のエクオール濃度をHPLC法にて分析した。
【0055】
結果を表3に示す。実施例2より、発酵槽の大きさを大きくしても、攪拌動力0.1kW/kL以上にすることにて、エクオールの濃度が顕著に向上していることを確認した。
【0056】
【表3】
【0057】
〔実施例3〕
(前培養1)
表1に示した組成で、pH6.9に調整した培地を、10mL嫌気性微生物培養用18mm試験管(三紳工業製)に分注し、気相を窒素に置換しながらブチルゴム栓とプラスチックキャップをはめて121℃、15分間滅菌した。この培地に、エガセラ・エスピー(Eggerthella sp.)DC 3215株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後、37℃、200spmで36時間振盪培養を行い、前培養液1を調製した。
【0058】
(前培養2)
表1に示した組成で、pH6.9に調整した培地15Lを容量30Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液1を植菌し、水素/窒素混合ガスでガス置換し、37℃、36時間培養を行い、前培養液2を調製した。
【0059】
(本培養)
表1に示した組成にダイゼイン0.5g/L、及びL-アルギニン3g/Lを添加し、pH6.9に調整した培地100Lを容量200Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液2を植菌し、水素濃度4%の窒素混合ガスでガス置換し、孔径3mmのスパージャーにて混合ガスを通気ながら、それぞれの動力で攪拌を行った。37℃、72時間培養を行い、本培養液中のエクオール濃度をHPLC法にて分析した。
【0060】
結果を表4に示す。実施例3より、攪拌動力0.1kW/kL以上にすることにて、エクオールが生産されていることを確認した。
【0061】
【表4】
【0062】
〔実施例4〕
(前培養1)
表1に示した組成で、pH6.5に調整した培地を、10mL嫌気性微生物培養用18mm試験管(三紳工業製)に分注し、気相を窒素に置換しながらブチルゴム栓とプラスチックキャップをはめて121℃、15分間滅菌した。この培地に、ラクトコッカス・エスピー(Lactococcus sp.)DCL株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後、37℃、200spmで24時間振盪培養を行い、前培養液1を調製した。
【0063】
(前培養2)
表1に示した組成で、pH6.5に調整した培地15Lを容量30Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液1を植菌し、水素/窒素混合ガスでガス置換し、37℃、24時間培養を行い、前培養液2を調製した。
【0064】
(本培養)
粉末状大豆胚軸50g/L、及びL-アルギニン3g/L、ビタミンE入り大豆油2g/Lを添加し、pH6.5に調整した培地100Lを容量200Lの発酵槽に入れ、121℃、15分間加熱し高圧蒸気滅菌した。この培地に、上記前培養液2を植菌し、水素濃度4%の窒素混合ガスでガス置換し、孔径3mmのスパージャーにて混合ガスを通気ながら、それぞれの動力で攪拌を行った。37℃、96時間培養を行い、本培養液中のエクオール濃度をHPLC法にて分析した。
【0065】
結果を表5に示す。実施例4より、攪拌動力0.1kW/kL以上にすることにて、エクオールが生産されていることを確認した。
【0066】
【表5】