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2024-1384361-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138436
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20241001BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K47/38
A61K47/26
A61K9/20
A61K9/14
A61P43/00 111
A61P37/06
A61P29/00
A61P11/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】43
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111432
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2024513824の分割
【原出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022123712
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明広
(72)【発明者】
【氏名】徳田 卓之
(72)【発明者】
【氏名】上原 朋之
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸(化合物A)を有効成分とする医薬組成物を製造する際、流動層造粒時のトラブルや打錠時のスティッキング発生などの課題を克服し、収率がよくおよび/または不良品率を低減させた製剤化技術を提供する。
【解決手段】化合物Aの含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上である医薬組成物であり、好ましくは、流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程を含む製造方法によって得られる医薬組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としての1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸(化合物A)もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含有する医薬組成物であって、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上である、医薬組成物。
【請求項2】
さらに、崩壊剤、結合剤、および賦形剤から選択される1種以上を含有する、請求項1に
記載の医薬組成物。
【請求項3】
崩壊剤の含有量が医薬組成物の全重量を基準として0.1重量%~30重量%である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
崩壊剤がカルメロースカルシウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項2または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
結合剤の含有量が医薬組成物の全重量を基準として1重量%~15重量%である、請求項2~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
結合剤が水溶性高分子である、請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
水溶性高分子がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
賦形剤の含有量が医薬組成物の全重量を基準として10重量%~50重量%である、請求項2~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
賦形剤が乳糖水和物である、請求項2~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
さらに滑沢剤を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
滑沢剤の含有量が医薬組成物の全重量を基準として0.1重量%~5重量%である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上である、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の造粒物、当該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記造粒物が、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含む粉体を流動層造粒により造粒することで得られた造粒物である、請求項14に記載の固形製剤医薬組成物。
【請求項16】
前記造粒物が、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含むが実質的に結合剤を含まない部分と化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶および結合剤を含む部分とで構成された造粒物である、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記造粒物が、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含んでいてもよい粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して得た造粒物である、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記造粒物が、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して得た造粒物である、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が70:30~0:100である、請求項17または請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記造粒物の粒子径の中央値が90μm~400μmである、請求項14~19のいずれか一
項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記造粒物の安息角が50度以下である、請求項14~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記造粒物を打錠して得られる錠剤である、請求項14~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記錠剤の硬度が30N以上である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記錠剤6.5 gを日本薬局方の錠剤の摩損度試験法記載のドラムを用いてドラム回転数25rpmにて4分間試験し、吸湿水分補正した後の摩損度が1%以下である、請求項22または23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記錠剤は、温度40℃及び相対湿度75%の条件下で6箇月の安定性試験の個々の分解生成
物量が1%以下を示す、請求項22~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶が、化合物Aのリン酸共結晶である請求項1~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法であって、流動層造粒によって造粒物を得る造粒工程、を含む方法。
【請求項28】
請求項1~26のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法であって、
流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含んでいてもよい粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程、を含む方法。
【請求項29】
有効成分としての1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フ
ェニル}ピペリジン-4-カルボン酸(化合物A)もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含有する医薬組成物の製造方法であって、流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程、を含む方法。
【請求項30】
請求項1~26のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法であって、
流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程、を含む方法。
【請求項31】
造粒工程の前に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を賦形剤および/または崩壊剤と混合して混合物を得る第1の混合工程、または賦形剤および崩壊剤のみを混合して混合物を得る第1の混合工程を含む、請求項27~30のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項32】
造粒工程の前に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を賦形剤および/または崩壊剤と混合して混合物を得る第1の混合工程、を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
造粒工程で得られた造粒物にさらに崩壊剤および/または滑沢剤を混合する第2の混合工程、を含む、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記造粒工程において使用される、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が70:30~0:100である、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記造粒工程において使用される、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が65:35~0:100である、請求項27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記造粒工程において使用される、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が50:50~30:70である、請求項27~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記造粒工程において、得られる固形製剤医薬組成物に含まれる化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記造粒工程において、得られる医薬組成物に含まれる化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として50重量%であり、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が50:50である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記造粒工程において、得られる医薬組成物に含まれる化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として50
重量%であり、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が30:70である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
さらに、前記造粒物を乾燥させる乾燥工程を含む、請求項27~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
さらに、前記第2の混合工程で得られた造粒物を打錠する打錠工程を含む、請求項27~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
さらに、打錠工程で得られた錠剤をコートするコート工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
有効成分としての1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸(化合物A)もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含有する医薬組成物であって、流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程を含む方法で製造されたことを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸(以下、化合物Aと称する)もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶(以下、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を化合物A等と称する)を有効成分とする新規医薬組成物及びその製法に関する。
【0002】
特許文献1では、化合物Aを含む複数のピロリジン化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩、又はそれらの共結晶等が、優れたメラノコルチン受容体(MCR)活性化作用を有することが開示されている。また、特許文献2には、化合物Aの共結晶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2015/182723
【特許文献2】WO2020/138481
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、化合物A等は優れたMCR活性化作用を示すことから、医薬の有効成分として期待されているが、当該化合物の粉体は付着性および撥水性が高いという化学的性質を有し、その製剤化において、改善の余地があった。
具体的には、本発明者らの検討により、化合物A等の製剤化に際し、造粒時の粉体流動性の不良や缶体への付着のために造粒が困難であることや、錠剤化する際に打錠時のスティッキングが発生することなどの問題が判明した。加えて、小型化するために1錠中の化合物A等の含有率を上げるとこれらの問題の解決がより重要になることもわかった。
したがって、本発明は、有効成分である化合物A等の新規医薬組成物を提供すること、特に、当該医薬組成物を製造するにあたり、流動層造粒における製造時のトラブルや錠剤とする場合は、打錠時のスティッキングの発生などの課題をそれぞれ克服し、収率がよくおよび/または不良品率を低減させた製剤化技術を提供すること、加えて製造時の課題を克服した化合物A等の高含有率医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、流動層造粒機中、流動層内に粉体として仕込む化合物A等の量を減らすことで粉体流動性を改善できることがわかった。また、流動層内の粉体に化合物A等および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒を行うことで、得られた造粒物を打錠して錠剤化する際にもスティッキングが低減され、不良品率が低減することを見出し、本発明を完成させるに至った。さらに、特に化合物A等を高含有量で含む製剤を製造する際には、化合物A等を含む粉体に化合物A等および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒することで、上記2つの課題を解決した上でさらに缶体への付着などの課題も全て解決し、化合物A等の高含有率化にも成功した。
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]有効成分としての1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸(化合物A)もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含有する医薬組成物であって、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上である、医薬組成物。
[2]さらに、崩壊剤、結合剤、および賦形剤から選択される1種以上を含有する、[1
]に記載の医薬組成物。
[3]崩壊剤の含有量が医薬組成物の全重量を基準として0.1重量%~30重量%である、[2]に記載の医薬組成物。
[4]崩壊剤がカルメロースカルシウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである、[2]または[3]に記載の医薬組成物。
[5]結合剤の含有量が医薬組成物の全重量を基準として1重量%~15重量%である、[2]~[4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]結合剤が水溶性高分子である、[2]~[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7]水溶性高分子がヒドロキシプロピルセルロースである、[6]に記載の医薬組成物。
[8]賦形剤の含有量が医薬組成物の全重量を基準として10重量%~50重量%である、[2]~[7]のいずれかに記載の医薬組成物。
[9]賦形剤が乳糖水和物である、[2]~[8]のいずれかに記載の医薬組成物。
[10]さらに滑沢剤を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の医薬組成物。
[11]滑沢剤の含有量が医薬組成物の全重量を基準として0.1重量%~5重量%である、[10]に記載の医薬組成物。
[12]滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、[10]または[11]に記載の医薬組成物。
[13]化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上である、[1]から[12]のいずれかに記載の医薬組成物。
[14]化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の造粒物、当該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤である、[1]~[13]のいずれかに記載の医薬組成物。
[15]前記造粒物が、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含む粉体を流動層造粒により造粒することで得られた造粒物である、[14]に記載の固形製剤医薬組成物。
[16]前記造粒物が、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含むが実質的に結合剤を含まない部分と化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶および結合剤を含む部分とで構成された造粒物である、[1]~[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[17]前記造粒物が、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含んでいてもよい粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して得た造粒物である、[1]~[16]のいずれかに記載の医薬組成物。
[18]前記造粒物が、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して得た造粒物である、[1]~[17]のいずれかに記載の医薬組成物。
[19]前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が70:30~0:100である、[17]または[18]のいずれかに記載の医薬
組成物。
[20]前記造粒物の粒子径の中央値が90μm~400μmである、[14]~[19]の
いずれかに記載の医薬組成物。
[21]前記造粒物の安息角が50度以下である、[14]~[20]のいずれかに記載の医薬組成物。
[22]前記造粒物を打錠して得られる錠剤である、[14]~[21]のいずれかに記載の医薬組成物。
[23]前記錠剤の硬度が30N以上である、[22]に記載の医薬組成物。
[24]前記錠剤6.5 gを日本薬局方の錠剤の摩損度試験法記載のドラムを用いてドラム
回転数25rpmにて4分間試験し、吸湿水分補正した後の摩損度が1%以下である、[22]
または[23]に記載の医薬組成物。
[25]前記錠剤は、温度40℃及び相対湿度75%の条件下で6箇月の安定性試験の個々の
分解生成物量が1%以下を示す、[22]~[24]のいずれかに記載の医薬組成物。
[26]化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶が、化合物Aのリン酸共結晶である[1]~[25]のいずれかに記載の医薬組成物。
[27][1]~[26]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、流動層造粒によって造粒物を得る造粒工程、を含む方法。
[28][1]~[26]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、
流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含んでいてもよい粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程、を含む方法。
[29]有効成分としての1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸(化合物A)もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含有する医薬組成物の製造方法であって、流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程、を含む方法。
[30][1]~[26]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、
流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程、を含む方法。
[31]造粒工程の前に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を賦形剤および/または崩壊剤と混合して混合物を得る第1の混合工程、または賦形剤および崩壊剤のみを混合して混合物を得る第1の混合工程を含む、[27]~[30]のいずれ
かに記載の方法。
[32]造粒工程の前に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を賦形剤および/または崩壊剤と混合して混合物を得る第1の混合工程、を含む、[31]に記載の方法。
[33]造粒工程で得られた造粒物にさらに崩壊剤および/または滑沢剤を混合する第2の混合工程、を含む、[27]~[32]のいずれかに記載の方法。
[34]前記造粒工程において使用される、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が70:30~0:100である、[27]~[33]のいずれかに記載の方法。
[35]前記造粒工程において使用される、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が65:35~0:100である、[27]~[34]のいずれかに記載の方法。
[36]前記造粒工程において使用される、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が50:50~30:70である、[27]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37]前記造粒工程において、得られる固形製剤医薬組成物に含まれる化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上である、[36]に記載の方法。
[38]前記造粒工程において、得られる医薬組成物に含まれる化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として50重量%であり、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が50:50である、[37]に記載の方法。
[39]前記造粒工程において、得られる医薬組成物に含まれる化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶の含有量が化合物A換算で該医薬組成物の全重量を基準として50重量%であり、前記粉体中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量と、前記結合液中の化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の総重量、の比が30:70である、[37]に記載の方法。
[40]さらに、前記造粒物を乾燥させる乾燥工程を含む、[27]~[39]のいずれかに記載の方法。
[41]さらに、前記第2の混合工程で得られた造粒物を打錠する打錠工程を含む、[27]~[40]のいずれかに記載の方法。
[42]さらに、打錠工程で得られた錠剤をコートするコート工程を含む、[41]に記載の方法。
[43]有効成分としての1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸(化合物A)もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶を含有する医薬組成物であって、流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶を含む粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程を含む方法で製造されたことを特徴とする医薬組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の医薬組成物は、化合物A等を含む造粒物および該造粒物を含む錠剤を製造時のトラブルなく効率よく得ることができるという利点を有する。また、本発明の医薬組成物は化合物A等を高い比率で含有し得るため、適切な薬物の放出性を有し、期待される薬効を示す医薬組成物をより小型化して提供できるという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例2において、流動層造粒機に粉体として投入した化合物A等と結合液に加えた化合物A等の重量比を変化させて流動層造粒を行い、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る工程における色差計によって測定した杵の色差(ΔE)の継時変化を示すグラフ。それぞれ、7117-190201-J(0%)は条件2-1を、7117-190202-J(30%)は条件2-2を、7117-190203-J(50%)は条件2-3を、7117-181001-M2(70%)は条件2-4を示す。
図2】実施例6において、流動層造粒機に粉体として投入した化合物A等と結合液に加えた化合物A等の重量比を7:3として流動層造粒を行い、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る工程における色差計によって測定した杵の色差(ΔE)の継時変化を示すグラフ。条件6-1を示す。
図3】実施例7において、流動層造粒機に粉体として投入した化合物A等と結合液に加えた化合物A等の重量比を3:7として流動層造粒を行い、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る工程における色差計によって測定した杵の色差(ΔE)の継時変化を示すグラフ。条件7-1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<医薬組成物>
本発明の一つの特徴としては、医薬組成物は、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上であることを特徴とする。好ましくは、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上90重量%以下であり、より好ましくは30重量%から80重量%、さらに好ましくは30重量%から70重量%、特に好ましくは30重量%から60重量%が挙げられる。ほかの態様として、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%から40重量%が挙げられる。また、他の好ましい態様として、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として40重量%以上が挙げられ、好ましくは40重量%以上90重量%以下、より好ましくは40重量%から80重量%、さらに好ましくは40重量%から70重量%、特に好ましくは40重量%から60重量%が挙げられる。他に好ましくは、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上である例が挙げられ、50重量%以上90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは50重量%から80重量%、さらに好ましくは50重量%から70重量%、特に好ましくは50重量%から60重量%が挙げられる。有効成分としての化合物A等を高い比率で含有する医薬組成物としては、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上である例が挙げられ、50重量%である医薬組成物が特に好ましい。
本明細書において化合物A換算とは、化合物Aそのもの、すなわち、化合物Aのフリー体で換算すること、例えば化合物Aそのものの量で換算することを指す。
【0010】
本発明の医薬組成物の他の一態様は流動層造粒によって得られる造粒物を含む医薬組成物であり、造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が70:30から0:100の間であることが好ましく、65:35から0:100の間であることがより好ましい。特に好ましくは、造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が50:50から0:100の間である例が挙げられる。
【0011】
さらに、有効成分としての化合物A等を高い比率で含有する医薬組成物としては、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が
(1)65:35から0:100の間、
(2)60:40から0:100の間、
(3)50:50から0:100の間、
(4)65:35から30:70の間、
(5)60:40から30:70の間、又は
(6)50:50から30:70の間であることを特徴とする。
他に好ましくは、
化合物Aのフリー体換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上90重量%以下であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が
(1)65:35から0:100の間、
(2)60:40から0:100の間、
(3)50:50から0:100の間、
(4)65:35から30:70の間、
(5)60:40から30:70の間、又は
(6)50:50から30:70の間であるか;
化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上80重量%以下であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が
(1)65:35から0:100の間、
(2)60:40から0:100の間、
(3)50:50から0:100の間、
(4)65:35から30:70の間、
(5)60:40から30:70の間、又は
(6)50:50から30:70の間であるか;
化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上70重量%以下であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が
(1)65:35から0:100の間、
(2)60:40から0:100の間、
(3)50:50から0:100の間、
(4)65:35から30:70の間、
(5)60:40から30:70の間、又は
(6)50:50から30:70の間であるか;
化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上60重量%以下であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が
(1)65:35から0:100の間、
(2)60:40から0:100の間、
(3)50:50から0:100の間、
(4)65:35から30:70の間、
(5)60:40から30:70の間、又は
(6)50:50から30:70の間であるか、
化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上50重量%以下であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が
(1)65:35から0:100の間、
(2)60:40から0:100の間、
(3)50:50から0:100の間、
(4)65:35から30:70の間、
(5)60:40から30:70の間、又は
(6)50:50から30:70の間であるか、
化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上40重量%以下であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が(1)70:30から0:100の間、
(2)65:35から0:100の間、
(3)60:40から0:100の間、
(4)50:50から0:100の間、
(5)70:30から30:70の間、
(6)65:35から30:70の間、
(7)60:40から30:70の間、又は
(8)50:50から30:70の間であることを特徴とする医薬組成物が挙げられる。
特に好ましくは、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上60重量%以下であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が50:50から30:70の間である例、又は化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上50重量%以下であり、かつ造粒
時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が50:50から30:70の間である例等が挙げられる。上記いずれかの医薬組成物が、流動層造粒により得られる造粒物を含む顆粒剤、または該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤である例も好ましい。
【0012】
他に好ましくは、有効成分としての化合物A等を高い比率で含有する医薬組成物として、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が50:50から30:70の間である例が挙げられる。化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が50:50である例がとりわけ好ましい。加えて、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として50重量%以上であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が30:70である例もとりわけ好ましい。上記いずれかの医薬組成物が、流動層造粒により得られる造粒物を含む顆粒剤、または該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤である例も好ましく、また該医薬組成物に対して、さらに表面をコート処理してもよい。
【0013】
さらに好ましくは、有効成分としての化合物A等を高い比率で含有する医薬組成物として、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として50重量%であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が50:50から30:70の間である例が挙げられる。化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として50重量%であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が50:50である例がとりわけ好ましい。加えて、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として50重量%であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等の重量比が30:70である例もとりわけ好ましい。上記いずれかの医薬組成物が、流動層造粒により得られる造粒物を含む顆粒剤、または該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤である例も好ましく、また該医薬組成物に対し、さらに表面をコート処理してもよい。
【0014】
また、有効成分としての化合物A等を高い比率で含有する医薬組成物としては、化合物A換算時の含有量が該医薬組成物の全重量を基準として30重量%以上、好ましくは50重量%以上であり、かつ造粒時の粉体中の化合物A等の重量と結合液中の化合物A等との重量比が、該医薬組成物の全重量を基準として化合物A等の化合物A換算時の含有量をX重量%とした場合に、(100-(1.23X-15.79))未満:1.23X-15.79以上である例が挙げられる。上記いずれかの医薬組成物が、流動層造粒により得られる造粒物を含む顆粒剤、または該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤である例も好ましく、また該医薬組成物に対し、さらに表面をコート処理してもよい。
【0015】
本発明の医薬組成物の有効成分である、化合物A、すなわち、1-{2-[(3S,4R)-1-{[(3R,4R)-1-シクロペンチル-3-フルオロ-4-(4-メトキシフェニル)ピロリジン-3-イル]カルボニル}-4-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン-4-カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶については特許文献1及び2に記載されており、これらの文献に記載の方法等で製造することができる。
【0016】
本発明において化合物Aは医薬的に許容し得る塩または共結晶の形態をとり得る。好ましい態様としては化合物Aの共結晶が挙げられ、リン酸、特に1当量のリン酸との共結晶が好ましい。化合物Aとリン酸の共結晶は、常法により取得できるが、例えば、特許文献2に記載の方法によって得ることができる。
【0017】
本発明において化合物Aのリン酸共結晶は接触角48~57°、好ましくは50~55°を有する化合物ということもできる。接触角は後述の実施例に記載の方法により得られる値である。
【0018】
本発明の医薬組成物は、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶(以下、化合物A等と呼ぶことがある)以外の他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、製剤的に許容される添加剤が挙げられる。
「製剤的に許容される添加剤」としては、所望の医薬組成物の剤型に応じて当該分野において一般的に使用される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、また必要に応じて、コーティング剤、コーティング助剤、着色剤、隠蔽剤、可塑剤、安定化剤、甘味料、矯味剤、抗酸化剤、光沢化剤、着香剤、香料、消泡剤、咀嚼剤、清涼化剤、糖衣剤、発泡剤、崩壊補助剤、流動化剤等が挙げられる。
【0019】
崩壊剤としては医薬に添加される一般的な崩壊剤を使用することができ、その種類は特に制限されないが、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプンなどが挙げられ、これらの1種類以上を使用することができるが、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムが好ましく、カルメロースカルシウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
また、崩壊剤としては吸水量が4 mL/g以上であることが好ましく、より好ましくは6 mL/g以上である。具体的にはカルメロースカルシウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが好ましい。
崩壊剤の含有量は剤型等によって適宜変更できるが、医薬組成物の全重量を基準として0.1重量%~30重量%であることが好ましい。より好ましくは、1重量%から15重量%、3
重量%から15重量%であり、特に好ましくは、5重量%から10重量%である例が挙げられ
る。
【0020】
賦形剤としては医薬に添加される一般的な賦形剤を使用することができ、その種類は特に制限されないが、例えば、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、ぶどう糖、白糖、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、デキストリン、α-デキストリン、β-デキストリン、カルボキシビニルポリマー、軽質無水ケイ酸、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどがあげられ、これらの1種類以上を使用することができるが、乳糖(水和物または無水物)、D-マンニトール、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプンが好ましく、乳糖がより好ましく、乳糖水和物がさらに好ましい。
賦形剤の含有量は剤型によって適宜変更できるが、医薬組成物の全重量を基準として10重量%~50重量%であることが好ましい。より好ましくは、20重量%から50重量%、20重量%から40重量%であり、特に好ましくは、20重量%から30重量%である例が挙げられる。
【0021】
結合剤としては医薬に添加される一般的な結合剤を使用することができ、その種類は特に制限されないが、水溶性高分子を好ましく用いることができ、例えば、カルメロース、
カルメロースナトリウム、コポリビドン、α化デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、プルラン、ポリビニルピロリドン(ポピドン)、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アラビアゴム、寒天、タラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられ、これらの1種類以上を使用することができるが、HPC、ヒプロメロース、ポビドン、ポリビニルアルコールを用いることが好ましく、HPCを用いることがより好ましい。
結合剤の含有量は剤型によって適宜変更できるが、医薬組成物の全重量を基準として1
重量%~15重量%であることが好ましい。より好ましくは、1重量%から10重量%、2重量%から10重量%であり、特に好ましくは、2重量%から5重量%である例が挙げられる。
【0022】
滑沢剤としては医薬に添加される一般的な滑沢剤を使用することができ、その種類は特に制限されないが、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリルフマル酸ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、セタノール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ベヘン酸グリセリン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ジメチルポリシロキサン、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、サラシミツロウなどがあげられ、これらの1種類以上を使用することができるが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素が好ましく、ステアリン酸マグネシウムがより好ましい。
滑沢剤の含有量は剤型によって適宜変更できるが、医薬組成物の全重量を基準として0.1重量%~5重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5重量%から4重量%、1重
量%から4重量%であり、特に好ましくは、1重量%から3重量%である例が挙げられる。
【0023】
本発明の医薬組成物の剤型は固形製剤が好ましく、固形製剤であれば特に制限されず、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、トローチ剤等が例示されるが、顆粒剤、カプセル剤、錠剤が好ましく、化合物A等を含む造粒物を含む顆粒剤、当該造粒物を含むカプセル剤、または当該造粒物を打錠して得られる錠剤であることが好ましい。なかでも錠剤が好ましく、流動層造粒により得られる造粒物を打錠して得られる錠剤がとりわけ好ましい。
【0024】
化合物A等を含有する医薬組成物は、化合物A等を含むが実質的に結合剤を含まない部分と化合物A等および結合剤を含む部分とで構成された造粒物、当該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤であることがより好ましい。さらに、化合物A等を含有する医薬組成物は、化合物A等を含むが実質的に結合剤を含まない部分と化合物A等および結合剤を含む部分とで構成された造粒物、当該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤であり、化合物A等を高含有率で含む医薬組成物であることがより好ましい。
【0025】
他に、結合剤によって化合物A等の有する付着性や撥水性などの化学的性質が実質的にマスクされた造粒物、当該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤である化合物A等を含有する医薬組成物も好ましい。さらに、化合物A等を含有する医薬組成物が、結合剤によって化合物A等の有する付着性や撥水性などの化学的性質が実質的にマスクされた造粒物、当該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤であり、化合物A等を高含有率で含む医薬組成物がより好ましい。
【0026】
また他にも、化合物A等が造粒物の表面に粉体として露出していない打錠に適した造粒物、当該造粒物を含むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤である化合物A等を含有する医薬組成物も好ましい。さらに、化合物A等を含有する固形製剤が、化合物A等が造粒物の表面に粉体として露出していない打錠に適した造粒物、当該造粒物を含
むカプセル剤または当該造粒物を打錠して得られる錠剤であり、化合物A等を高含有率で含む医薬組成物であることがより好ましい。
【0027】
本発明の医薬組成物が化合物A等を含む造粒物を含む医薬製剤組成物である場合、当該造粒物の形状や性質は特に制限されないが、以下のような形状や性質を有することが好ましい。
【0028】
化合物A等を含む造粒物の粒子径は特に限定されないが、粒子径の中央値(D50)として1000μm以下であるのが好ましく、90μm~500μmの範囲内であることがより好まし
く90μm~400μmの範囲内であるのが特に好ましい。なお、造粒物の粒子径は、例えば
、以下に示す篩い分け法にて測定できる。
各ふるい(目開き710 μm,500 μm,355 μm,250 μm,180 μm,150 μm,106 μm,75 μm及び底皿)の風袋質量を0.1 gまで量る。目開きの小さなふるいの上により粗い目開きのふるいを順次積み重ね、最上段のふるいの上に質量5gを正確に量った試料を置き、蓋をする。ふるいを5分間振とうする。試料の損失がないように組ふるいから各段のふるい
を注意深く外す。各ふるいの質量を再度量り、ふるい上の試料質量を測定する。試料全量と各ふるい上の質量から、各ふるいの上にある試料の割合を算出する。
【0029】
化合物A等を含む造粒物は、安息角が50度以下であるであるものが好ましい。
「安息角」とは、薬物顆粒を水平な面に静かに落下させた時に生ずる円錐体の母線と水平面のなす角度である。例えば、以下の手順で測定することができる。
粉体層を保持するための保持縁を持つ固定された円板上に安息角を形成させる。円板は振動しないようにする。対称性のある円すいを注意深く形成させるために,円すいの高さに応じて漏斗の高さを変えるのがよい。この場合、漏斗が動くので、振動しないように注意する。円すいの先端部に落下する粉体の衝撃を最小限にするために、漏斗脚部下端の高さは堆積体の頂点から約2~4cmの位置に保つ。円すいの高さを測定することによって、次式から安息角αを求める。
tan α = 高さ/(0.5 × 円板の直径)
【0030】
化合物A等を含む造粒物は、最小オリフィス径が3.15~8 mmの流動性を有することが好ましく、3.15~4 mmの流動性を有することがより好ましい。
【0031】
かさ密度とはタップしない(緩み)状態での粉体試料の質量と粒子間空隙容積の因子を含んだ粉体の体積との比である。
また、タップ密度は粉体試料を入れた容器を機械的にタップした後に得られる、増大したかさ密度である。
【0032】
化合物A等を含む造粒物において、Hausner比が1.00~1.45であることが好ましい。Hausner比は粉体の圧縮性、流動性の尺度であり、Hausner比が1.00~1.11、1.12~1.18、1.19~1.25、1.26~1.34、1.35~1.45、1.46~1.59、1.60以上であるとき、それぞれ流動精度の程度は、極めて良好、良好、やや良好、普通、やや不良、不良、極めて不良である。
Hausner比は、化合物A等を含む造粒物のかさ密度(V0)またはタップ密度(Vf)を測定し、式Hausner比=V0/Vfにより算出することができる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、コーティング剤で造粒物をコーティングして得られるコーティング顆粒を含む医薬組成物とすることもできる。造粒物のコーティングに使用されるコーティング剤としては医薬において使用される一般的なコーティング剤を使用することができ、その種類は特に制限されないが、例えば、水溶性セルロース誘導体、水溶性ビニル誘導体、水溶性アクリル酸誘導体、水不溶性セルロース誘導体、水不溶性ビニル誘導体、水
不溶性アクリル酸系ポリマー、胃溶性ビニル誘導体、胃溶性アクリル酸系ポリマー、腸溶性セルロース誘導体、腸溶性ビニル誘導体、腸溶性アクリル酸系ポリマー、トウモロコシタンパク質、セラックおよびワックス等の1種類以上が使用できる。
【0034】
本発明の医薬組成物は、上記造粒物をカプセルに包含させたカプセル剤であってもよい。
カプセルとしては、医薬のカプセル化に使用される一般的な材料を使用することができるが、例えば、ゼラチン、ヒプロメロース、プルラン等の材料からなるカプセルを使用することができる。1つのカプセル剤中の化合物A等の量は、疾患の種類等に応じて適宜調整できるが、例えば、化合物A換算で10mg~500mgとすることができる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、上記造粒物を打錠して得られる錠剤であってもよい。
錠剤化は公知の方法で行うことができる。錠剤1錠中の化合物A等の量は、疾患の種類等に応じて適宜調整できるが、例えば、化合物Aとして0.1~1000mgの範囲、好ましくは0.1~500mgの範囲が挙げられる。より好ましくは50mg~300mgの範囲、とりわけ、50mg、100mg、200mg又は300mgが好ましい。
【0036】
また、本発明の医薬組成物が錠剤である場合、当該錠剤は安定性や溶解性に優れており、以下の1つ以上の性質を有することが好ましい。
1)錠剤の硬度は30N以上である。
2)錠剤6.5gを日本薬局方の錠剤の摩損度試験法記載のドラムを用いドラム回転数25rpm
にて4分間試験し吸湿水分補正した後の摩損度が1%以下である。
3)温度40℃及び相対湿度75%の条件下で6箇月間の安定性試験の個々の分解生成物量が1%以下を示す。
【0037】
なお、得られた錠剤に対して表面をコート処理してもよい。
コーティング剤としては、医薬において一般的に使用されるコーティング剤を使用することができ、速溶性、徐放性、腸溶性、胃溶性等、目的に応じて適宜選択できる。例えば、水溶性セルロース誘導体、水溶性ビニル誘導体、水溶性アクリル酸誘導体、水不溶性セルロース誘導体、水不溶性ビニル誘導体、水不溶性アクリル酸系ポリマー、胃溶性ビニル誘導体、胃溶性アクリル酸系ポリマー、腸溶性セルロース誘導体、腸溶性ビニル誘導体、腸溶性アクリル酸系ポリマー、トウモロコシタンパク質、セラックおよびワックス等から選択される1種類以上を使用することができる。
【0038】
コーティング液には、コーティング剤に加えて、種々の添加剤を配合してもよく、このような添加剤としてはコーティング助剤、着色剤、隠蔽剤、可塑剤、滑沢剤等が挙げられる。コーティング助剤としては、例えば硬化油、ステアリン酸及びその塩、モノステアリン酸グリセリン、タルク、カオリン、ショ糖脂肪酸エステル、セタノール等の高級アルコール等が挙げられる。着色剤としては、食用色素、レーキ色素等のほか医薬に使用可能なすべての有色物質が挙げられる。隠蔽剤としては、二酸化チタン、沈降炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。可塑剤としては、ジエチルフタレート等のフタル酸誘導体のほか、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、シリコン油等が挙げられる。
【0039】
具体的なコーティング液の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、プルラン等の基材とポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル等の可塑剤を組み合わせたものに、
必要に応じて、二酸化チタン、タルク、酸化鉄、沈降炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等の添加剤を加え調製されるものが挙げられる。
【0040】
本発明の医薬組成物の用途としては、化合物A等が有効成分として治療又は予防効果を発揮しうる疾患であれば特に制限されないが、特許文献1に記載されたようなMCR特にMC1R活性化を介して治療又は予防が可能な疾患、具体的には、自己免疫疾患や炎症に関する疾患、線維化に関する疾患が挙げられる。
このような疾患としては、例えば、関節リウマチ、痛風性関節炎、変形性関節症、炎症性腸疾患、全身性強皮症、乾癬、線維症、プロトポルフィリン症(例えば、赤芽球性プロトポルフィリン症など)、全身性エリテマトーデス、黒色腫、皮膚癌、白斑症、脱毛、疼痛、虚血/再かん流傷害、脳の炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、腎炎、移植、HIV疾患の増悪、血管炎、ブドウ膜炎、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、微生物感染、セリアック病、ネフローゼ症候群、メラノーマ浸潤などが挙げられる。
【0041】
また、本発明の医薬組成物は、光線性皮膚疾患(光線過敏症とも呼ばれる)や低色素性疾患や光線療法の副作用などを治療又は予防するためにも有用である。
光線性皮膚疾患としては、光アレルギー性皮膚炎、種痘様水疱症、DNA修復異常症、お
よびポルフィリン症が挙げられる。
光アレルギー性皮膚炎としては、日光蕁麻疹、多形日光疹、慢性光線性皮膚炎、光アレルギー性接触皮膚炎、光アレルギー性光線過敏症型薬疹などが挙げられる。
DNA修復異常症としては、色素性乾皮症、ブルーム症候群、ウェルナー症候群、ロスム
ンド・トムスン症候群、硫黄欠乏性毛髪発育異常症、紫外線高感受性症候群などが挙げられる。
ポルフィリン症としては、先天性骨髄性ポルフィリン症、異型ポルフィリン症、急性間欠性ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、遺伝性コプロポルフィリン症などが挙げられる。
【0042】
低色素性疾患としては、眼皮膚白皮症、まだら症、脱色素性母斑、低色素症(伊藤白斑)、フェニルケトン尿症、結節性硬化症、遺伝性対側性色素異常症、ワールデンブルグ症候群、ヘルマンスキー・プドラック症候群、チェディアックー東症候群、グリセリ症候群、ティーツ症候群などの先天性低色素性疾患、およびサットン白斑、フォークト-小柳-原田病、老人性白斑、海水浴後白斑、梅毒性白斑などの後天性低色素性疾患が挙げられる。
【0043】
一方、光線療法は炎症性の皮膚疾患や白斑や円形脱毛症などの治療目的で使用され、ナローバンドUVB療法、エキシマライト療法、PUVA療法などが知られているが、副作用とし
て、短期的なものとしては照射した部分の赤みや日焼け、ほてりなどの光過敏症状や光毒性症状が挙げられ、長期的なものとしては、皮膚がん等のがんやシミ・シワの光老化などが挙げられる。このような光線療法の副作用に対しても、化合物A等は皮膚を保護して予
防効果や治療効果を発揮することができる。
【0044】
また、本発明の医薬組成物は、間質性肺疾患や、強皮症に伴う疾患や症状を治療又は予防するためにも有用である。特に、強皮症患者における間質性肺疾患、皮膚や内臓組織の線維化、血管機能障害などの治療又は予防に有用である。
【0045】
間質性肺疾患としては、間質性肺炎が挙げられ、間質性肺炎としては、特発性間質性肺炎が挙げられ、特発性肺線維症を伴う特発性間質性肺炎が挙げられる。また、間質性肺疾患としては、膠原病に伴う間質性肺疾患や強皮症に伴う間質性肺疾患も挙げられる。ここで、強皮症は、全身性強皮症が好ましく、全身性強皮症には、限局皮膚硬化型全身性強皮症やびまん皮膚硬化型全身性強皮症が含まれる。
【0046】
強皮症に伴う疾患や症状としては、皮膚線維症、屈曲拘縮、胃食道逆流症、嚥下障害、レイノー現象、指尖潰瘍、肺高血圧症及び腎クリーゼから選択される疾患や症状が挙げられる。
ここで、屈曲拘縮は強皮症における皮膚線維化によって生じる症状であり、皮膚線維化の抑制により改善することができる。胃食道逆流症や嚥下障害は強皮症における食道線維化によって生じる症状であり、食道線維化の抑制により改善することができる。レイノー現象、指尖潰瘍、肺高血圧症及び腎クリーゼは強皮症における血管機能障害によって生じる症状であり、血管障害障害の抑制により改善することができる。肺高血圧症としては、特に制限されないが、例えば、肺動脈性肺高血圧症が挙げられる。
【0047】
本発明で得られた医薬組成物は、特に経口剤として有用である。投与量は、患者の症状、年齢、性別、目的とする持続時間等によって異なるが、一回の投与量は具体的には、化合物A換算で0.1~1000mgの範囲、好ましくは0.1~500mgの範囲が挙げられる。より好ましくは10mg~300mgの範囲、または100mg~300mgの範囲が挙げられる。例えば、具体的には、50mg、100mg、200mg又は300mgなどが好ましい。
【0048】
<製造方法>
以下、本発明の一つの特徴として、化合物A等を含む医薬組成物、好ましくは上記本発明の医薬組成物の製造方法について説明する。ただし、本発明の医薬組成物は以下の製造方法で製造されたものには限定されない。
【0049】
本発明の製造方法は以下の造粒工程を含む。
流動層造粒機中、結合剤を実質的に含まない粉体に、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶(化合物A等)および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程。
結合剤を実質的に含まない粉体には化合物A等が含まれていてもよい。
【0050】
本発明の製造方法の一態様は以下の造粒工程を含む。
流動層造粒機中、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶(化合物A等)を含み、結合剤を実質的に含まない粉体に、化合物A等および結合剤を含む結合液を噴霧して造粒物を得る造粒工程。
【0051】
この態様にかかる本発明の製造方法は流動層造粒に使用する粉体と結合液の両方に化合物A等を包含させる点に特徴を有するが、
(1)前記粉体中の化合物A等の総重量と、
(2)前記結合液中の化合物A等の総重量と、の比が70:30から0:100の間であることが好ましく、65:35から0:100の間であることがより好ましく、50:50から30:70の間であることが特に好ましい。この重量比の好ましい範囲は上記の本発明の医薬組成物の項で記載されたいずれかの範囲とすることができる。
上記の範囲に調整することで、造粒及び打錠時に発生するトラブルを回避し、化合物A等を高含有する医薬組成物に適した造粒物を得ることができる。
【0052】
なお、造粒時に発生するトラブルを回避するため、化合物A等に、賦形剤および/または崩壊剤を混合し、または賦形剤と崩壊剤のみを混合し、得られた混合物を造粒する粉体として用いるか、または賦形剤または崩壊剤を単独で粉体として用いることが好ましい。特に、化合物A等に、賦形剤および/または崩壊剤を混合し、得られた混合物を造粒する粉体として用いることが好ましい。
したがって、本発明の製造方法は、造粒工程の前に、以下の混合工程(第1の混合工程
)を含むことが好ましい。
化合物A等を賦形剤および/または崩壊剤と混合して混合物を得る混合工程。
なお、賦形剤および/または崩壊剤以外の成分をさらに混合してもよい。より好ましい例としては、造粒する粉体には化合物A等と賦形剤および/または崩壊剤を含み、実質的に結合剤を含まない例が挙げられる。
【0053】
また、本発明の製造方法では、造粒工程の後に、造粒物を乾燥させる乾燥工程を含むことが好ましい。
【0054】
得られた造粒物はそのまま、またはコートされて顆粒剤として使用することができる。
また、得られた造粒物はそのまま、またはコートされ、カプセルに包含させることにより、カプセル剤として使用することもできる。
【0055】
一方、本発明の製造方法では、錠剤を得るために、得られた造粒物を打錠して錠剤化する打錠工程を含んでもよい。
【0056】
ここで、打錠に際して、崩壊剤および滑沢剤を混合して用いる場合には、造粒物にさらに崩壊剤および滑沢剤を混合する混合工程(第2の混合工程)を含んでもよい。このように、造粒工程で得られた造粒物に、例えば打錠に必要な添加剤等を加えて混合し、取得される顆粒を本明細書では混合顆粒と称することがある。本明細書において、混合顆粒は造粒物と処方成分の違いがわずかであるため、上記造粒物の粒子径の中央値、安息角、最小オリフィス径、Hausner比等の指標の好ましい範囲は混合顆粒の場合にも当てはまる。
【0057】
本発明の製造方法においては、さらに、打錠工程で得られた錠剤をコートする工程を含んでもよい。
【0058】
以下、化合物A等含有していてもよい粉体に化合物A等含有する結合液を散布しながら薬物顆粒を造粒し、この造粒物を打錠して錠剤とし、さらにこの錠剤にコーティングを施す場合の製法を詳述する。
【0059】
<第1の混合工程>
まず、化合物A等を賦形剤および/または崩壊剤と混合し、または賦形剤と崩壊剤のみを混合して造粒用の粉体を用意するか、または賦形剤または崩壊剤を単独で用いて造粒用の粉体を用意する。好ましくは、化合物A等を賦形剤および/または崩壊剤と混合して造粒用の粉体を用意する。なお、賦形剤および/または崩壊剤以外の他の成分を混合してもよい。但し、賦形剤および/または崩壊剤以外の他の成分として結合剤は実質的に含まない。
この造粒に用いる化合物A等は、その形状に特に制限はなく種々の形状のものを用いることができるが、結晶が好ましい。結晶は共結晶を含む。結晶は単結晶であってもよく、多結晶であってもよい。使用する化合物A等の粉末の大きさについても、造粒可能な大きさであれば特に限定はないが、例えば、顕微鏡観察による実測、電気的または光学的粒子径測定装置を用いる方法等で測定された粒子径の中央値が、0.1μm~100μmであることが好ましく、1μm~10μmであることがより好ましい。
【0060】
使用する賦形剤および崩壊剤の種類は特に制限されず、上述した賦形剤および/または崩壊剤を適宜選択して使用することができる。第1の混合工程において化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶と賦形剤を混合して用いる場合には、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶と賦形剤を0:100~50:50の重量比で混合する。より好ましくは、第1の混合工程においては、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶と賦形剤を25:75~50:50の重量比で混合する。また、第1の混合
工程において化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶と崩壊剤を混合して用いる場合は、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶と崩壊剤を0
:100~50:50の重量比で混合する。より好ましくは、第1の混合工程においては、化合
物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶と崩壊剤を25:75~50:50の重量比で混合する。第1の混合工程において、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩また
は共結晶と賦形剤と崩壊剤を混合して用いる場合には、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の重量と、賦形剤及び崩壊剤の総和の重量の比を0:100~50:50で混合する。より好ましくは、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶の重量と、賦形剤及び崩壊剤の総和の重量の比を25:75~50:50で混合する。賦形剤と崩壊剤を共に用いる場合がより好ましい。特に好ましくは、化合物Aもしくはその医薬的に許容し得る塩または共結晶と賦形剤と崩壊剤を47:45:8あるいは35:55:10の重量比で混合する。
【0061】
混合装置としては、例えば、容器回転型混合機を用いて混合することができる。容器回転型混合機としては、タンブラーブレンダー(Tumble blender)、V型混合機(V blender)、ダブルコーン(Double cone)、ビンタンブラー(Bin tumble)などが挙げられる。
【0062】
<造粒工程>
造粒工程に際しては、まず、造粒用の結合液を用意する。
結合液用の溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒およびこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも好ましい溶媒としては水、特には精製水が挙げられる。
【0063】
このような溶媒に、結合剤を溶解して溶液を調製し、その中に化合物A等を分散させることによって化合物A等を含む結合液を得ることができる。
【0064】
結合剤としては上述したような水溶性高分子等の物質を適宜選択して使用できる。結合液中の結合剤の濃度は、例えば、1~10重量%とすることが好ましい。
【0065】
結合液(噴霧液)中の化合物A等の濃度としては、特に限定されないが、化合物A等の重量として5重量%以上であるのが好ましく、10重量%~60重量%であるのがより好ましく、30重量%~50重量%であるのが特に好ましい。なお、分散させる化合物A等は、製剤中に薬物を均一に分散させるために、乾式あるいは湿式粉砕により微細に粉砕したものが好ましく用いられる。
【0066】
造粒工程において、噴霧する結合液の総重量は、造粒に使用する粉体の総量に対して等量以上であるのが好ましく、1倍量~3倍量であるのがより好ましく、1倍量~2倍量であ
るのがさらに好ましい。造粒に使用する粉体中の化合物A等の量と、噴霧する結合液中の化合物A等の量が重量比で、70:30から0:100の間となるように調整することが好ましく、65:35から0:100の間となるように調整することがより好ましく、特に化合物A等の高含有医薬組成物においては造粒に使用する粉体中の化合物A等の量と、噴霧する結合液中の化合物A等の量が重量比で65:35から30:70、より好ましくは50:50から30:70の間となるように調整することが特に好ましい。また、このような方法で製造された医薬組成物も好ましい。
【0067】
造粒は、一般的な流動層造粒の手順に従って行うことができる。
用いる造粒装置としては、流動層造粒装置であれば特に制限されない。スプレー方式は、トップスプレー型、底部スプレー型、接線スプレー型のいずれを使用してもよい。
【0068】
流動層造粒装置は、通常、流動層本体、整流板、送風機、吸気フィルター、熱交換機、
スプレー装置、集塵装置、排風機等から構成されている。送風ファンから供給される空気は吸気フィルターで清浄化され、熱交換機で加温されて整流板を通じて装置本体に送入されるが、この熱風は、装置に仕込まれた化合物A等と賦形剤および/または崩壊剤の混合物を流動状態に保ち、結合剤溶液に化合物A等を縣濁した液を結合液として噴霧することにより、ミストは粉体の表面に付着し、この結合剤ミストを介して粉体微粒子は付着・凝集を繰り返し次第に粒子成長(造粒・コーティング)が進行する。
【0069】
造粒時の給気温度は、例えば、50℃~90℃の範囲から選択され、好ましくは60℃~80℃の範囲から選択される。造粒時の液速は、用いる造粒装置のスケールや化合物Aと賦形剤および/または崩壊剤の混合物の仕込み量、所望する造粒物の粒子径にもよるが、例えば、10 kg仕込みの場合、溶液の量が、100g/min~300g/minの範囲から選択される。造粒時の風量は、用いる造粒装置のスケールや化合物Aと賦形剤および/または崩壊剤の混合物の仕込み量、所望する造粒物の粒子径にもよるが、例えば、10kg仕込みの場
合は1m3/min~10m3/minの範囲から選択される。造粒時のスプレーエアー量は、用
いる造粒装置のスケール、液速、スプレーノズル位置にもよるが、例えば、10kg仕込み
で、100L/min~500L/minの範囲から選択される。造粒時のスプレーノズル径は、用いる造粒装置のスケールにもよるが、例えば、10kg仕込みで流速200g/minの場合、0.5mm~2.0mmの範囲から選択される。
【0070】
<第1の乾燥工程>
次に、造粒工程で得られた造粒物を乾燥する。乾燥は、赤外線水分計にて測定される乾燥減量値が、例えば、3重量%以下になるように、減圧下または常圧下で行うことができる。乾燥は、造粒装置内で行うことができるが、造粒装置から顆粒を取り出してから乾燥操作を行ってもよい。
【0071】
<第2の混合工程>
次に、打錠に供するべく、乾燥工程で得られた造粒物に崩壊剤、滑沢剤等を混合する。混合装置としては、例えば、容器回転型混合機を用いて混合することができる。容器回転型混合機としては、タンブラーブレンダー(Tumble blender)、V型混合機(V blender
)、ダブルコーン(Double cone)、ビンタンブラー(Bin tumble)などが挙げられる。
【0072】
崩壊剤の配合比率としては、造粒物の総重量に対し、例えば、0.1重量%~10重量%の
範囲内とすることができる。滑沢剤の配合比率としては、造粒物の総重量に対し、例えば、0.1重量%~10重量%の範囲内とすることができる。
【0073】
<打錠工程>
本工程では、第2の混合工程で得られた混合物を打錠装置にて打錠し、錠剤化する。打錠硬度としては、例えば20~100Nの範囲から選択される。打錠装置としては、ロータリー式打錠機(Rotary tableting machine)に分類される打錠機を使用することができる。ここで得られる錠剤を本明細書中では素錠と呼び、「医薬組成物の全重量」などといった場合にはこの素錠の重量を指す。すなわち、1錠中の化合物A等の重量の比率は素錠の重量を基準とする。
【0074】
<コーティング工程>
本工程では、打錠工程で得られた錠剤に、目的に応じて適宜のコーティングを施す。コーティング装置としては、例えば、コーティングパンに分類される装置を使用することができ、例えば、通気式コーティングシステム(Perforated Coating System)で分類され
る装置を使用することができる。
【0075】
コーティング剤としては、上述したようなコーティング剤を使用することができ、速溶
性、徐放性、腸溶性、胃溶性等、目的に応じて適宜選択して使用できる。
コーティング剤の錠剤に対する量は、錠剤の表面をコートするに足りる量であればよく、所望とする放出性に応じて変化させることができる。
【0076】
<第2の乾燥工程>
乾燥は、赤外線水分計にて測定される乾燥減量値が、例えば、3重量%以下になるように、減圧下または常圧下で行うことができる。該乾燥は、コーティング装置内で行ってもよいし、コーティング装置からコート錠を取り出してから別途行ってもよい。
【実施例0077】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の態様には限定されない。
【0078】
以下、実施例および比較例の各種試験項目は以下のように測定した。
【0079】
<粒度分布>
使用する篩は9種類:目開き710 μm,500 μm,355 μm,250 μm,180 μm,150 μm,106 μm,75 μm及び底皿
方法:
各ふるいの風袋質量を0.1 gまで量り、目開きの小さなふるいの上により粗い目開きのふ
るいを順次積み重ねた。最上段のふるいの上に質量5gを正確に量った試料を置き、蓋をし、ふるいを5分間振とうした。試料の損失がないように組ふるいから各段のふるいを注意
深く外し、各ふるいの質量を再度量り、ふるい上の試料質量を測定した。試料全量と各ふるい上の質量から、各ふるいの上にある試料の割合を算出した。
【0080】
<かさ密度>
ステンレス製の100mLの円筒形容器に試料をあふれるまで、ろうとを用いて自由に流入
させた。その後、容器の上面から過剰の粉体を注意深くすり落とした。あらかじめ測定しておいた空の測定用容器の質量を差し引くことによって、粉体の質量(m0)を測定する。式m0/100によってかさ密度(g/mL)を計算した。
【0081】
<タップ密度>
かさ密度を測定したステンレス製の100mLの円筒形容器に補助円筒を装着し、試料をあ
ふれるまで、ろうとを用いて自由に流入させた。その後、補助円筒付きの測定用容器を50~60回/分で計200回タップした。タップ操作後に補助円筒を取り外し、測定用容器の上面から過剰の粉体を注意深くすり落とした。式mf/100 (mfはタップしすり落とした後の測
定用容器中の粉体質量)を用いてタップ密度(g/mL)を計算した。
【0082】
<Hausner比>
Hausner比は次の式より算出した。Hausner比=ρt/ρ0(ρt:タップ密度,ρ0:かさ密度)
【0083】
<最小オリフィス径>
測定可能なオリフィス径:3.15 mm, 4 mm, 5 mm, 6.3 mm, 8 mm, 10 mm, 12.5 mm, 16 mm, 20 mm, 25 mm
ろうとを用いて、試料を静かにオリフィス径測定用の円筒容器に入れ、試料が自由落下する最小のオリフィス径を、最小オリフィス径として測定した。
【実施例0084】
化合物Aのリン酸共結晶を、以下の条件で用いて流動層造粒を行い、錠剤を得た。
条件1-1:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として3:7
条件1-2:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として5:5
結合液の調製工程は以下の手順で実施した。
[1]精製水7.164 kgにヒドロキシプロピルセルロース0.456 kgを徐々に加え、30分以上撹拌し溶解させた。
[2][1]の水溶液に撹拌しながら8.702 kgのうちの任意の割合の化合物Aのリン酸共結晶を徐々に加え、20分以上撹拌・分散した。
[3][2]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残り及び化合物Aのリン酸共結晶の凝集物がないことを目視で確認した。
[4][3]に用いたSUS容器に精製水を1.5 kg加え、付着している原薬を洗い込み、篩
で篩過し、結合液とした。
【0085】
造粒・乾燥は以下に示す手順で実施した。
[1]乳糖水和物4.218 kg、カルメロースカルシウム0.760 kg、残りの化合物Aのリン酸共結晶の順に流動層造粒乾燥機に投入した。
[2]吸気温度設定値70℃で排気温度が40℃となるまで予熱混合した後、結合液噴霧速度が目標の液速度になるように調整し造粒した。
[3]結合液を全量噴霧した後、吸気温度80℃で製品温度が45℃に達するまで乾燥し、造粒物を得た。
【0086】
混合・打錠は以下の手順で実施した。
[1]カルメロースカルシウム0.760 kg及びステアリン酸マグネシウム0.304 kgと造粒物を混合機に投入し混合機回転速度25 min-1で混合して混合顆粒を得た。なお、本工程に用いられるカルメロースカルシウムとステアリン酸マグネシウムの量は、上記を理論値とし、実際の造粒物の収量に応じて調整した。
[2][1]の混合顆粒を打錠して、素錠を得た。なお、素錠中の化合物Aのリン酸共結晶の重量割合は、化合物A換算で50%である。
【0087】
コーティング液及びコーティングは以下の手順で実施した。
[1]固形分濃度が10 w/w%となるよう、精製水を撹拌しながらコーティング成分を徐々
に加え、45分以上撹拌した。
[2]篩で篩過し、コーティング液を得た。
[3]通気式コーティングシステムにて錠剤をコーティングした。
【0088】
製造した結果を表1に示す。
【0089】
【表1】


【0090】
条件1-1、1-2いずれにおいても造粒中の流動性は良好であり、缶体への付着は認められずまた打錠時のスティッキングも認められなかった。
【実施例0091】
化合物Aのリン酸共結晶を、以下の条件で用いて流動層造粒を行い、錠剤を得た。
条件2-1:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として10:0
条件2-2:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として7:3
条件2-3:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として5:5
条件2-4:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として3:7
【0092】
結合液の調製工程は以下の手順で実施した。
[1]精製水470 gにヒドロキシプロピルセルロース30 gを徐々に加え、撹拌し溶解させ
た。
[2][1]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残りがないことを目視で確認し、結合液とした。
[3]必要に応じて[2]の水溶液に撹拌しながら572.5 gのうちの任意の割合の化合物
Aのリン酸共晶を徐々に加え、20分以上撹拌・分散した。
[4][3]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残り及び必要に応じて加えた化合物Aのリン酸共晶の凝集物がないことを目視で確認した。
[5][3]に用いたSUS容器に精製水100 gを加え、付着している原薬を洗い込み、篩で篩過し、結合液とした。
【0093】
造粒・乾燥は以下に示す手順で実施した。
[1]乳糖水和物277.5 g、カルメロースカルシウム50 g、残りの化合物Aのリン酸共結
晶の順に流動層造粒乾燥機に投入した。
[2]吸気温度設定値70℃で予熱混合した後、結合液噴霧速度が目標の液速度になるように調整し造粒した。
[3]結合液を全量噴霧した後、吸気温度80℃で製品温度が約35℃以上まで乾燥し、造粒物を得た。
【0094】
混合・打錠は以下の手順で実施した。
[1]カルメロースカルシウム50 g及びステアリン酸マグネシウム20 gと造粒物を袋混合で100回混合して混合顆粒を得た。なお、本工程に用いられるカルメロースカルシウムと
ステアリン酸マグネシウムの量は、上記を理論値とし、実際の造粒物の収量に応じて調整した。
[2][1]の混合物を打錠して、素錠を得た。打錠時に、経時的に杵への粉付着を確認するため、打錠開始5分,10分,20分の時点で打錠を停止し、杵の色差計を用いた評価を
行った。なお、素錠中の化合物Aのリン酸共結晶の重量割合は、化合物A換算で50%である。
【0095】
製造した結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
条件2-1から2-4のいずれにおいても造粒中の流動性は良好であり、缶体への付着も認められなかった。
【0098】
色差計による杵の継時変化を図1に示す。
色差計で測定した色差はΔEで表され、打錠前の杵の色のΔEの値を0とした時、打錠に伴い杵に粉が付着すると初期からの色が変化するため、ΔEの値は大きくなる。
上記のように、化合物Aのリン酸共結晶を流動層造粒機中に投入する量と結合液に分散させる量の割合を変化させ、流動層造粒により造粒を行ったところ、図1に記載した通りの結果となった。すなわち、流動層造粒機中に投入する化合物Aのリン酸共結晶の重量と結合液に分散させる化合物Aのリン酸共結晶の重量の割合を5:5あるいは3:7とした条件2-3または2-4の処方系については、ΔEの値が10:0や7:3など条件2-1または2-2の処方系と比較して小さいことが確認できた。すなわち、条件2-3または2-4のように化合物Aのリン酸共結晶の一部を結合液に分散させて造粒を行うことにより、杵への粉付着が低減されることを確認できた。このことは、化合物Aのリン酸共結晶の一部を結合液に分散させて造粒を行うことによりスティッキングの度合いが改善することを示唆している。なお、色差計の測定条件は表3に示す通りである。
【0099】
【表3】

【実施例0100】
化合物Aのリン酸共結晶を、以下の条件で用いて流動層造粒を行い、錠剤を得た。
条件3-1:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として0:10
【0101】
結合液の調製工程は以下の手順で実施した。
[1]精製水473 gにヒドロキシプロピルセルロース27 gを徐々に加え、撹拌し溶解させ
た。
[2][1]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残りがないことを目視で確認し、結合液とした。
[3][2]の水溶液に撹拌しながら343.5 gの化合物Aのリン酸共晶を徐々に加え、20
分以上撹拌・分散した。
[4][3]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残り及び必要に応じて加えた化合物Aのリン酸共晶の凝集物がないことを目視で確認した。
[5][3]に用いたSUS容器に精製水100 gを加え、付着している原薬を洗い込み、篩で篩過し、結合液とした。
【0102】
造粒・乾燥は以下に示す手順で実施した。
[1]乳糖水和物約421.5 g、カルメロースカルシウム30 gの順に流動層造粒乾燥機に投
入した。
[2]吸気温度設定値70℃で予熱混合した後、結合液噴霧速度が目標の液速度になるように調整し造粒した。
[3]結合液を全量噴霧した後、吸気温度80℃で製品温度が約35℃以上まで乾燥し、造粒物を得た。
【0103】
混合・打錠は以下の手順で実施した。
[1]カルメロースカルシウム45 g及びステアリン酸マグネシウム18 gと造粒物を袋混合で100回混合して混合顆粒を得た。なお、本工程に用いられるカルメロースカルシウムと
ステアリン酸マグネシウムの量は、上記を理論値とし、実際の造粒物の収量に応じて調整した。
[2][1]の混合物を打錠して、素錠を得た。なお、素錠中の化合物Aのリン酸共結晶の重量割合は、化合物A換算で33.3%である。
【0104】
製造した結果を表4に示す。
【0105】
【表4】

【0106】
造粒中の流動性は良好であり、缶体への付着も認められず、打錠時のスティッキングも認められなかった。
【実施例0107】
化合物Aのリン酸共結晶を、以下の条件で用いて流動層造粒を行い、錠剤を得た。
条件4-1:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として0:10
【0108】
結合液の調製工程は以下の手順で実施した。
[1]精製水282 gにヒドロキシプロピルセルロース18 gを徐々に加え、撹拌し溶解させ
た。
[2][1]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残りがないことを目視で確認し、結合液とした。
[3][2]の水溶液に撹拌しながら343.5 gの化合物Aのリン酸共晶を徐々に加え、20
分以上撹拌・分散した。
[4][3]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残り及び必要に応じて加えた化合物Aのリン酸共晶の凝集物がないことを目視で確認した。
[5][3]に用いたSUS容器に精製水100 gを加え、付着している原薬を洗い込み、篩で篩過し、結合液とした。
【0109】
造粒・乾燥は以下に示す手順で実施した。
[1]乳糖水和物約166.5 g、カルメロースカルシウム30 gの順に流動層造粒乾燥機に投
入した。
[2]吸気温度設定値70℃で予熱混合した後、結合液噴霧速度が目標の液速度になるように調整し造粒した。
[3]結合液を全量噴霧した後、吸気温度80℃で製品温度が約35℃以上まで乾燥し、造粒物を得た。
【0110】
混合・打錠は以下の手順で実施した。
[1]カルメロースカルシウム30 g及びステアリン酸マグネシウム12 gと造粒物を袋混合で100回混合して混合顆粒を得た。なお、本工程に用いられるカルメロースカルシウムと
ステアリン酸マグネシウムの量は、上記を理論値とし、実際の造粒物の収量に応じて調整した。
[2][1]の混合物を打錠して、素錠を得た。なお、素錠中の化合物Aのリン酸共結晶の重量割合は、化合物A換算で50%である。
【0111】
製造した結果を表5に示す。
【0112】
【表5】

【0113】
造粒中の流動性は良好であり、打錠時のスティッキングも認められなかった。
【実施例0114】
化合物Aのリン酸共結晶を、全て流動層造粒機に投入し、以下の通り流動層造粒を行い、錠剤を得た。なお、造粒工程の1回分を1バッチと定義し、繰り返し3回製造を行い取得
した3バッチ分を混合工程でまとめてを混合した。また、混合工程の1回分を1ロットと定
義し、以降の打錠工程及びコーティング工程を実施した。(1ロット = 3バッチ)
結合液の調製工程は以下の手順で実施した。(1バッチ分を記載)
[1]精製水434.7 gにヒドロキシプロピルセルロース37.80 gを徐々に加え、撹拌し溶解させた。工程中でのロス量を考慮し、理論仕込み量の150 %仕込み量とした。
[2][1]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残りがないことを目視で確認した。
【0115】
造粒・乾燥は以下に示す手順で実施した。(1バッチ分を記載)
[1]化合物Aのリン酸共結晶320.6 gが入った袋に乳糖水和物401.8 gのうちの一部投入し、50回混合した後に、篩で篩過し造粒機に投入した。その後、残りの乳糖水和物を造粒機に投入した。
[2]結合液噴霧速度が目標の液速度になるように調整し造粒した。
[3]結合液を全量噴霧した後、吸気温度80℃で製品温度が45℃に達するまで乾燥し、造粒物を得た。
【0116】
混合・打錠は以下の手順で実施した。(1ロット分を記載)
[1]低置換度ヒドロキシプロピルセルロース252.0 g及びステアリン酸マグネシウム25.20 gと造粒物を混合機に投入し混合機回転速度36 min-1で混合して混合顆粒を得た。なお、本工程に用いられる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとステアリン酸マグネシウムの量は、上記を理論値とし、実際の造粒物の収量に応じて調整した。
[2][1]の混合物を打錠して、4ロット分の素錠を得た。なお、素錠中の化合物Aのリン酸共結晶の重量割合は、化合物A換算で33.3%である。
【0117】
コーティング液及びコーティングは以下の手順で実施した。(1ロット分を記載)
[1]固形分濃度が10 w/w%となるよう、精製水を撹拌しながらコーティング成分を徐々
に加え、45分以上撹拌した。
[2]篩で篩過し、コーティング液を得た。
[3]通気式コーティングシステムにて錠剤をコーティングした。
【0118】
製造した結果を表6に示す。
【0119】
【表6】
【0120】
本実施例では、化合物Aのリン酸共結晶の素錠中含有量が化合物A換算で30重量%の医
薬組成物を製造するために、化合物Aのリン酸共結晶をすべて造粒機中に投入し、流動層造粒により造粒を行い、混合、打錠及びコーティングを行った。同一処方及び同一条件で複数ロット製造した際に、全てのロットで打錠工程におけるスティッキングに由来する外観不良錠がみとめられたが、造粒中の流動性は良好であり、缶体への付着も認められなかった。
【実施例0121】
化合物Aのリン酸共結晶を、以下の条件で用いて流動層造粒を行い、錠剤を得た。
条件6-1:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として7:3
【0122】
結合液の調製工程は以下の手順で実施した。
[1]精製水584 gにヒドロキシプロピルセルロース36 gを徐々に加え、撹拌し溶解させ
た。
[2][1]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残りがないことを目視で確認し、結合液とした。
[3]必要に応じて[2]の水溶液に撹拌しながら137.4 gの化合物Aのリン酸共晶を徐
々に加え、20分以上撹拌・分散した。
[4][3]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残り及び加えた化合物Aのリン酸共晶の凝集物がないことを目視で確認した。
[5][3]に用いたSUS容器に精製水100 gを加え、付着している原薬を洗い込み、篩で篩過し、結合液とした。
【0123】
造粒・乾燥は以下に示す手順で実施した。
[1]乳糖水和物602.0 g、カルメロースカルシウム40 g、化合物Aのリン酸共結晶320.6
gの順に流動層造粒乾燥機に投入した。
[2]吸気温度設定値70℃で予熱混合した後、結合液噴霧速度が目標の液速度になるように調整し造粒した。
[3]結合液を全量噴霧した後、吸気温度80℃で製品温度が約35℃以上まで乾燥し、造粒物を得た。
【0124】
混合・打錠は以下の手順で実施した。
[1]カルメロースカルシウム29.7 g及びステアリン酸マグネシウム18 gと造粒物を袋混合で50回混合して混合顆粒を得た。なお、本工程に用いられるカルメロースカルシウムとステアリン酸マグネシウムの量は、上記を理論値とし、実際の造粒物の収量に応じて調整した。
[2][1]の混合物を打錠して、素錠を得た。打錠時に、経時的に杵への粉付着を確認するため、打錠開始5分,10分,20分の時点で打錠を停止し、杵の色差計を用いた評価を
行った。なお、素錠中の化合物Aのリン酸共結晶の重量割合は、化合物A換算で33%である。
【0125】
製造した結果を表7に示す。
【0126】
【表7】

【0127】
条件6-1においても造粒中の流動性は良好であり、缶体への付着も認められなかった。
【0128】
色差計による杵の継時変化を図2に示す。
上記のように、1錠中の化合物Aのリン酸共結晶の含有量が化合物A換算で33重量%,
化合物Aのリン酸共結晶を流動層造粒機中に投入する量と結合液に分散させる量の重量割合を70:30として、流動層造粒により造粒を行ったところ、図2に記載した通りの結果と
なった。図1で示したスティッキングの度合いが改善している処方である条件2-3また
は2-4の処方系と同程度のΔEの値を示した。なお、色差計の測定条件は表3に示す通りである。
【実施例0129】
化合物Aのリン酸共結晶を、以下の条件で用いて流動層造粒を行い、錠剤を得た。
条件7-1:流動層造粒機に粉体として投入する化合物Aのリン酸共結晶と結合液に加える化合物Aのリン酸共結晶の比率が、重量として3:7
【0130】
結合液の調製工程は以下の手順で実施した。
[1]精製水606.8 gにヒドロキシプロピルセルロース37.2 gを徐々に加え、撹拌し溶解
させた。
[2][1]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残りがないことを目視で確認し、結合液とした。
[3]必要に応じて[2]の水溶液に撹拌しながら320.6 gの化合物Aのリン酸共晶を徐
々に加え、20分以上撹拌・分散した。
[4][3]で調製した懸濁液を全量篩で篩過し、ヒドロキシプロピルセルロースの溶け残り及び加えた化合物Aのリン酸共晶の凝集物がないことを目視で確認した。
[5][3]に用いたSUS容器に精製水100 gを加え、付着している原薬を洗い込み、篩で篩過し、結合液とした。
【0131】
造粒・乾燥は以下に示す手順で実施した。
[1]乳糖水和物64.4 g、カルメロースカルシウム24.0 g、化合物Aのリン酸共結晶137.4 gの順に流動層造粒乾燥機に投入した。
[2]吸気温度設定値70℃で予熱混合した後、結合液噴霧速度が目標の液速度になるように調整し造粒した。
[3]結合液を全量噴霧した後、吸気温度80℃で製品温度が約35℃以上まで乾燥し、造粒物を得た。
【0132】
混合・打錠は以下の手順で実施した。
[1]カルメロースカルシウム19.8 g及びステアリン酸マグネシウム10.4 gと造粒物を袋混合で50回混合して混合顆粒を得た。なお、本工程に用いられるカルメロースカルシウムとステアリン酸マグネシウムの量は、上記を理論値とし、実際の造粒物の収量に応じて調整した。
[2][1]の混合物を打錠して、素錠を得た。打錠時に、経時的に杵への粉付着を確認するため、打錠開始5分,10分,20分の時点で打錠を停止し、杵の色差計を用いた評価を
行った。なお、素錠中の化合物Aのリン酸共結晶の重量割合は、化合物A換算で65%である。
【0133】
製造した結果を表8に示す。
【0134】
【表8】

【0135】
条件7-1においても造粒中の流動性は良好であり、缶体への付着も認められなかった。
【0136】
色差計による杵の継時変化を図3に示す。
上記のように、1錠中の化合物Aのリン酸共結晶の含有量が化合物A換算で65重量%,化合物Aのリン酸共結晶を流動層造粒機中に投入する量と結合液に分散させる量の重量割合を30:70として、流動層造粒により造粒を行ったところ、図3に記載した通りの結果となった。図1で示したスティッキングの度合いが改善している処方である条件2-3または2
-4の処方系と同程度のΔEの値を示した。なお、色差計の測定条件は表3に示す通りである。
【0137】
このように、1錠中の化合物Aのリン酸共結晶の含有量が化合物A換算で30重量%以上
の医薬組成物を造粒時のトラブルなどなく製造できることが示された。特に、化合物Aのリン酸共結晶の一部または全部を結合液に分散させて造粒を行うことにより、スティッキングに由来する外観不良を改善できることも確認できた。さらに、1錠中の化合物Aのリ
ン酸共結晶の含有量が化合物A換算で50重量%とより苛酷な条件の医薬組成物も、化合物
Aのリン酸共結晶の一部を流動層造粒機内に、残りを結合液に分散させ、造粒を行うことにより、スティッキングの他に流動性不良や缶体への付着など製造工程のトラブルも全て回避して製造でき、生産性の向上を実現できることが確認できた。
【0138】
上記に示したように、実施例2における条件2-3では条件2-2に対してスティッキングの度合いが改善され、製造工程のトラブルを回避して製造でき、実施例6における条件6-1、実施例7における条件7-1においても製造工程のトラブルを回避して製造で
きた。
条件2-2、条件2-3、条件6-1、条件7-1の4点について、X軸に医薬組成物の全重量を基準とした際の化合物A等の化合物A換算時の含有量(%)を取り、Y軸に造粒時の結合液中の化合物A等の重量比(%)を取り、4点の関係を最小二乗法にて算出したところ、Y=1.23X-15.79となった。造粒時の結合液中の化合物A等の重量比(%)が本式より上の範囲には、製造工程のトラブルを回避して製造できた、実施例1の条件1-1、1-2、実施例3の条件2-1および実施例4の条件4-1の各条件も含まれ、好ましい範囲と考えられる。
【実施例0139】
化合物Aのリン酸共結晶の接触角を以下の手順で測定した。
[1]化合物Aのリン酸共結晶を単発打錠機により圧縮を行い、表面が平らなペレットを作成した。
[2]ペレットの上に5 μLの精製水を滴下して、滴下から10秒後にCCDカメラにより画像を取得した。
[3]CCDカメラより取得した画像よりペレットと滴下した液滴がなす角度である静的接
触角を測定した。
上記の手順で測定し,得られた化合物Aのリン酸共結晶の静的接触角は,52.77°±2.72
°(n=5)であった。なお,平均値及び標準偏差の算出は、JIS Z 8401に則って求めた。
図1
図2
図3