(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013844
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】配管の接続構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240125BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20240125BHJP
F16L 17/073 20060101ALI20240125BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16J15/10 L
F16J15/10 N
F16L5/00 C
F16L17/073
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116232
(22)【出願日】2022-07-21
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】角田 友和
(72)【発明者】
【氏名】田中 武史
(72)【発明者】
【氏名】笹次 伸明
(72)【発明者】
【氏名】マック ドー コア
(72)【発明者】
【氏名】清宗 恭英
(72)【発明者】
【氏名】高木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】水谷 紘基
【テーマコード(参考)】
3H014
3J040
5E322
【Fターム(参考)】
3H014AA02
3H014AA06
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA02
3J040EA16
3J040EA25
3J040FA05
3J040HA03
5E322AA05
5E322AB01
5E322AB11
5E322DA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケースの外部に配された配管を貫通孔から引き抜く際に配管のみを引き抜くことを可能とする。
【解決手段】第一配管1と第二配管2とを、ガスケット3を介し、ケース100の壁体101に設けられた貫通孔10Aと第一配管との間及び貫通孔と第二配管との間を密封した状態で接続する配管の接続構造で、ガスケットは、第一配管の一方端1aに外嵌される筒状の第1保持部と、第1保持部の内周面に形成され第一配管の外周面1aaに弾接する内周第1リップ部32と、第1保持部の外周面に形成され貫通孔の内周面に弾接する外周リップ部31と、ケース内に配設される第二配管の端部2aに外嵌される筒状の第2保持部と、第2保持部の内周面に形成され第二配管の外周面に弾接する内周第2リップ部43とを有し、第一配管を貫通孔から引き抜く際に第1保持部にかかる抵抗を、外周リップ部及び内周第2リップ部の合わせた引き抜き抵抗よりも小さく構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの外部に配設された第一配管と前記ケースの内部に配設された第二配管とを、ガスケットを介し、前記ケースの壁体に設けられた貫通孔と前記第一配管との間及び前記貫通孔と前記第二配管との間を密封した状態で接続する配管の接続構造であって、
前記ガスケットは、前記第一配管の一方端に外嵌される筒状の第1保持部と、前記第1保持部の内周面に形成され前記第一配管の外周面に弾接する内周第1リップ部と、前記第1保持部の外周面に形成され前記貫通孔の内周面に弾接する外周リップ部と、前記ケース内に配設される第二配管の端部に外嵌される筒状の第2保持部と、前記第2保持部の内周面に形成され前記第二配管の外周面に弾接する内周第2リップ部とを有し、
前記第一配管を前記貫通孔から引き抜く際に、前記内周第1リップ部を含む前記第1保持部にかかる抵抗が、前記外周リップ部及び前記内周第2リップ部のそれぞれに生じる引き抜き方向に対する抵抗を合わせた抵抗よりも小さく構成されていることを特徴とする配管の接続構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記内周第1リップ部の前記第一配管の前記外周面への弾接部位には、潤滑剤が塗布されていることを特徴とする配管の接続構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第一配管は、前記第1保持部が嵌合される環状の溝部を有し、
前記第1保持部は、前記溝部の外周壁に沿って当接するように平坦に形成される平坦部を有しており、
前記平坦部の前記外周壁への弾接部位には、潤滑剤が塗布されていることを特徴とする配管の接続構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記ケースは、電子機器が収容されるケースであって、前記第一配管内及び前記第二配管内には、前記電子機器を冷却する冷却媒体が流通する配管の接続構造。
【請求項5】
請求項3において、
前記ケースは、電子機器が収容されるケースであって、前記第一配管内及び前記第二配管内には、前記電子機器を冷却する冷却媒体が流通する配管の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースの外部に配設された第一配管と前記ケースの内部に配設された第二配管とを接続するガスケットを介して、前記ケースに設けられた貫通孔と前記第一配管との間等を密封した状態で接続する配管の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような接続構造が開示されたものとしては、下記特許文献1及び下記特許文献2が挙げられる。下記特許文献1及び下記特許文献2には、ケースの壁体に設けられた貫通孔と貫通孔に挿入される配管との間を密封するガスケットが記載されている。当該ガスケットは、配管の外周面に弾接する内周リップ部が配された内周側の内シール領域は、貫通孔の内周面に弾接する外周リップ部が配された外周側の外シール領域と径方向に重ならない位置に設けられている。これにより、偏心によるシール面圧への影響を抑制するとともに、配管の挿入荷重を低減し組み付け性のよいガスケットを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6818303号公報
【特許文献2】特開2020-41632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような接続構造において、ケースの外部に配設された配管は、メンテナンス時などに取り外す場合がある。しかし、上記特許文献1及び上記特許文献2に開示のものは、ケースの外部に配設された配管を貫通孔から引き抜く際には、配管だけでなく、ガスケットも一緒に引き抜いて取り外す仕様が想定されており、ケースの外部に配設された配管のみを引き抜ける構造にはなっていないものであった。上記配管内を冷却媒体等の流動体が流通する場合、メンテナンス時に配管とともにガスケットが引き抜かれてしまうと、貫通孔が密封されてない状態になるため、貫通孔からケース内に流動体や塵埃等が侵入するおそれがある。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、ケースの外部に配された配管を貫通孔から引き抜く際に配管のみを引き抜くことができる配管の接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る配管の接続構造は、ケースの外部に配設された第一配管と前記ケースの内部に配設された第二配管とを、ガスケットを介し、前記ケースの壁体に設けられた貫通孔と前記第一配管との間及び前記貫通孔と前記第二配管との間を密封した状態で接続する配管の接続構造であって、前記ガスケットは、前記第一配管の一方端に外嵌される筒状の第1保持部と、前記第1保持部の内周面に形成され前記第一配管の外周面に弾接する内周第1リップ部と、前記第1保持部の外周面に形成され前記貫通孔の内周面に弾接する外周リップ部と、前記ケース内に配設される第二配管の端部に外嵌される筒状の第2保持部と、前記第2保持部の内周面に形成され前記第二配管の外周面に弾接する内周第2リップ部とを有し、前記第一配管を前記貫通孔から引き抜く際に前記内周第1リップ部を含む第1保持部にかかる抵抗が、前記外周リップ部及び前記内周第2リップ部のそれぞれに生じる引き抜き方向に対する抵抗を合わせた抵抗よりも小さく構成されている。
【0007】
上記構成において、前記内周第1リップ部の前記第一配管の前記外周面への弾接部位には、潤滑剤が塗布されていてもよい。また上記構成において、前記第一配管は、前記第1保持部が嵌合される環状の溝部を有し、前記第1保持部は、前記溝部の外周壁に沿って当接するように平坦に形成される平坦部を有しており、前記平坦部の前記外周壁への弾接部位には、潤滑剤が塗布されていてもよい。さらに上記構成において、前記ケースは、電子機器が収容されるケースであって、前記第一配管内及び前記第二配管内には、前記電子機器を冷却する冷却媒体が流通するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る配管の接続構造は、上述の構成としたことで、ケースの外部に配された配管を貫通孔から引き抜く際に配管のみを引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る配管の接続構造が適用される例を説明するため、適用されるケース及び配管等を示した模式的斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る配管の接続構造を説明するための図であり、
図1に示すケース及び配管の接続部位を示す模式的部分断面図である。
【
図3】同実施形態に係る配管の接続構造を説明するための図であり、配管同士をガスケットを介して接続した状態から一方の配管を引き抜く過程を示す模式的部分断面図である。
【
図4】同実施形態に係る配管の接続構造を説明するための図であり、配管同士をガスケットを介して接続した状態から一方の配管のみを引き抜いた状態を示す模式的部分断面図である。
【
図5】同実施形態に係る配管の接続に用いられるガスケットを説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。また
図5では、ガスケット3の構成要素の形状をわかり易く説明するため、弾性変形していない原形状のガスケット3を実線で示しているが、実際には
図2~
図4に示すように弾性変形した状態で組み付けられる。
【0011】
本実施形態に係る配管の接続構造は、ケース100の外部に配設された第一配管1とケース100の内部に配設された第二配管2とを、ガスケット3を介し、ケース100の壁体101に設けられた貫通孔10Aと第一配管1との間及び前記貫通孔10Aと前記第二配管2との間を密封した状態で接続するものである。ガスケット3は、第一配管1の一方端1aに外嵌される筒状の第1保持部30と、第1保持部30の内周面30aに形成され第一配管1の外周面1aaに弾接する内周第1リップ部32と、第1保持部30の外周面30bに形成され貫通孔10Aの内周面10aに弾接する外周リップ部31と、ケース100内に配設される第二配管2の端部2aに外嵌される筒状の第2保持部40と、第2保持部40の内周面40aに形成され第二配管2の外周面2aaに弾接する内周第2リップ部42とを有している。そして当該配管の接続構造では、第一配管1を貫通孔10Aから引き抜く際に内周第1リップ部32を含む第1保持部30にかかる抵抗が、外周リップ部31及び内周第2リップ部42のそれぞれに生じる引き抜き方向に対する抵抗を合わせた抵抗よりも小さく構成とされている。以下、詳述する。
【0012】
本実施形態の配管の接続構造は、例えば自動車用電子機器を冷却媒体によって冷却する冷却器の冷却パイプと外部ホースとを接続する構造として適用することができる。このような配管の接続構造は、冷却媒体の漏洩防止だけでなく外部からの雨水等の浸入、車両等を高圧洗浄する際の水の噴射にも耐えられ、配管が偏心しても維持できるシール性が求められる。そしてメンテナンス等で外部ホースを貫通孔から引き抜く際に外部ホースのみが引き抜ける構造が求められる。以下では、自動車用インバータケース100内に配設された第二配管2と、インバータケース100の外部に配設された第一配管1とをガスケット3によって接続する配管の接続構造について説明する。なお、実際のパワーコントロールユニット・PCUの一部を構成するインバータケース100の構造は複雑であるが、図では簡略化して示す。
【0013】
<インバータ>
自動車の駆動源として電動機を備えたものの場合、電動機の動作はインバータ20により制御されている。電動機はバッテリから電力を得て駆動力を発生するモータ等として働き、インバータ20は、バッテリ等から供給される直流電源をスイッチング作用により交流電源に変換して電動機に電力の供給を行っている。このような自動車に用いられるインバータ20は大きな電力量を求められ、スイッチング素子等に大電流が流れるため、発熱量が多い。そこで本実施形態に係るインバータケース100では、インバータケース100内に冷却水や冷却液等の冷却媒体が流れる冷却媒体流路を構成し、インバータ20を構成する各種電子機器を冷却するシステムが採用されている。
【0014】
インバータケース100は、上下に分割して構成された略直方体形状の箱体とされ、
図1に示すインバータケース100は蓋ケース100Aと、上ケース100Bと、下ケース100Cとを備えている。インバータケース100は、下ケース100Cの上に上ケース100Bが積み重ねられ、その上に蓋ケース100Aが被せられて構成されている。インバータケース100はアルミニウム等の金属材や樹脂材等からなり、上ケース100Bの側面に配される壁体101には、上ケース100B外に冷却媒体を排出するためのパイプ(不図示)が接続される排出口300と、第一配管1の一方端1aが接続される円形の貫通孔10A(
図2等参照)とが設けられている。壁体101の貫通孔10A周囲には、段差状に形成された段差部102が設けられており、段差部102は、第一配管1の一方端1a側の鍔部12Aが収まるように形成される。第二配管2は、
図2等に示すように端部2aの先側が、貫通孔10A内に位置するように配されており、積層ユニット200に設けられた冷却プレート(不図示)と通じるように構成される。下ケース100Cの側面に配される壁体103には、第一配管1の他方端1bが接続される円形の貫通孔10Bが設けられている。壁体103の貫通孔10B周囲には、段差部104が設けられており、段差部104には、第一配管1の他方端1b側の鍔部12Bが収まるように形成される。
【0015】
下ケース100の供給口(不図示)から下ケース100C内に供給される冷却媒体は、下ケース100C内に設けられた冷却媒体流路6(
図2等参照)を通じ、第一配管1、第二配管2に達し、第二配管2を通じて積層ユニット200に設けられた冷却プレート内を流通する。そして、上ケース100B内に設けられた冷却媒体流路を通じた冷却媒体は、最終的に上ケース100Bに設けられた排出口300から排出される。
【0016】
<ガスケット>
ガスケット3は、第一配管1と第二配管2とを接続し、冷却媒体流路を形成するための一部材であり、全体がエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等のゴム材、エラストマー、合成樹脂等からなる弾性体で、筒状の成型体とされている。ガスケット3は、第1保持部30と、第2保持部40と、繋ぎ部50とを有し、ガスケット3の一方端3aが第1保持部30の端部であり、他方端3bが第2保持部40の端部である。第1保持部30は、第一配管1の一方端1aに被さるように外嵌されるとともに貫通孔10Aの内周面10aに内嵌される。第2保持部40は、第二配管2の端部2aに被さるように外嵌される。繋ぎ部50は、第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ部材であり、繋ぎ部50自体が弾性を備えているので、これによって、第一配管1、第二配管2が偏心しても、径方向の変位が可能となる。第一配管1の外径は、第二配管2の外径より若干大とされ、これに伴い、第1保持部30の内径は、第2保持部40の内径より大とされている。よって、これら第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ繋ぎ部50は、第1保持部30から第2保持部40に向けて漸次縮径するテーパ形状とされている。
【0017】
<第一配管,第二配管>
第一配管1は、樹脂材やアルミウム材等の中空の円筒状体からなり、略U字形状に形成されている。
図1に示すように第一配管1の一方端1aは上ケース100Bに接続され、他方端1bは下ケース100Cに接続されている。これにより、上ケース100B内に通じ第二配管2へ至った冷却媒体を下ケース100C内に設けられた冷却媒体流路6へ送り込むことができる。第二配管2は、樹脂材やアルミウム材等の中空の円筒状体からなり、積層ユニット200の冷却プレート内を通じた冷却媒体を第一配管1へ流通させるよう設けられている。
【0018】
図2等に示すとおり、第一配管1の一方端1aには、環状の溝部11と、溝部11のさらに外周に径方向外向きに突出して形成された環状の鍔部12Aとが設けられている。溝部11は、底部11cと、内周壁11a(第一配管1の外周面1aaでもある)と、外周壁11bと、開口部11dとを有し、溝部11にはガスケット3の第1保持部30が嵌合される。この溝部11と第1保持部30との嵌合部位には、潤滑剤G1,G2が塗布されており、この潤滑剤G1,G2については後述する。溝部11には、空気通路となる筋状のスリット部(不図示)が軸方向に沿って形成されているものとしてもよい。例えば、スリット部が溝部11の底部11cから開口部11dに至るように外周壁11bに沿って形成されたものとすれば、第1保持部30を嵌合する際にスリット部から空気が抜け、ガスケット3の第1保持部30を第一配管1の外周面1aa(溝部11の内周壁11aに相当)に挿入しやすい。また第一配管1を引き抜く際にも、スリット部が形成されていると、潤滑剤G1,G2がスリット部に保持され、第1保持部30に生じる抵抗を低減し抜き易く構成できる。鍔部12Aは、壁体101に設けられた段差部102内に収まるように貫通孔10Aよりも大きく且つ段差部102より小さい径とされ、この鍔部12Aには、ビス等の固定具が挿通される挿通孔(不図示)が形成されている。そしてこの鍔部12を不図示の固定具によって壁体101の外側面に固着することにより第一配管1の一方端1aを壁体101に固定できる。
【0019】
第一配管1の他方端1bには、径方向外向きに突出して形成された環状の鍔部12Bが設けられている。鍔部12Bには、ビス等の固定具が挿通される挿通孔(不図示)が形成されており、不図示の固定具によって下ケース100Cの壁体103の外側面に固着することにより第一配管1の他方端1bを壁体103に固定できる。第一配管1の他方端1bの先端部1baと段差部104の外壁104aとの間には、断面略円形状で環状のリングガスケット7が装着されている。これにより第一配管1の他方端1bとその接続部位との間をシールすることができる。第二配管2の端部2aの先側は、ガスケット3が脱着され易いように若干径が他の部位より小さい傾斜した先端部2ab(
図5参照)を備えている。
【0020】
<第1保持部>
ガスケット3の一部を構成する第1保持部30は、
図5等に示すように内周第1リップ部32と、内周突部33と、外周リップ部31と、平坦部34と、端部35とを有している。内周第1リップ部32は、周方向に連続して形成された略直角三角形状の環状のリップであり、同じ態様のものが複数設けられている。内周第1リップ部32は、斜辺に相当する部位が第一配管1の外周面1aaに弾接し、溝部11へ挿入されるに伴い、倒れるように弾性変形し、その状態で溝部11に嵌合される。よって、内周第1リップ部32は、第一配管1の挿入方向に沿って倒れるように弾性変形するのとは反対側向きに弾性変形して溝部11に装着される(
図2・X部拡大図参照)。内周突部33は、内周第1リップ部32に隣接して設けられ、断面視において略2等辺三角形状に形成されており、内周突部33の突出量は、内周第1リップ部32の突出量より小さい。外周リップ部31は、周方向に連続した環状のリップであり、貫通孔10Aの内周面10aに曲げ変形に伴う締め代を有して弾接する。外周リップ部31の突出量は、内周第1リップ部32の突出量より大きい。平坦部34は、溝部11の外周壁11bに沿って当接するように平坦に形成されている。端部35は、溝部11の底部11cに沿って当接するように平坦に形成されている。内周第1リップ部32は、複数、並んで設けられ、複数の内周第1リップ部32,32が配された内周側の領域を内シール領域S1という。この内シール領域S1は、冷却媒体流路を隔てるシール部であり、インバータケース100外の冷却媒体流路をシールする領域といえる。また外周リップ部31が配された外周側の領域を外シール領域S2という。この外シール領域S2は、インバータケース100内外を隔てるシール領域ともいえる。
【0021】
本実施形態に係る配管接続構造によれば、この内シール領域S1と外シール領域S2とが、径方向に重ならない位置に設けられているので、第一配管1の一方端1aにガスケット3を嵌合し組み付けた状態で、壁体101の貫通孔10Aに挿入する際、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また第一配管1の軸心L1と貫通孔10Aの軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響を受けず、シール性を維持することができる。また内シール領域S1は、外シール領域S2より第一配管1の挿入方向に対して反対側に設けられ、内シール領域S1が形成された部位に対応する外周面が平坦部34とされ第一配管1の溝部11に嵌合される。よって、第一配管1が偏心しても内シール領域S1に配された複数の内周第1リップ部32,32によって第一配管1に対する密封性は維持され、安定したシール性を確保できる。
【0022】
内周突部33が、外周リップ部31の形成された位置に対応する内周面30aに設けられているので、第一配管1に偏心しようとする力が加わっても、第一配管1の姿勢を正しい位置に(第一配管1の軸心と貫通孔10Aの軸心Lとがほぼ一致する位置)保持することができる。また第一配管1が偏心した場合でも、内周突部33が第一配管1の外周面1aaに当接して内周第1リップ部32の過圧縮を抑制し、内周第1リップ部32のシール面圧に影響を与えることを防止するので、安定したシール性を維持できる。さらに第一配管1を通じる冷却媒体の圧力があがると、第一配管1に装着された第1保持部30は溝部11から抜けようとする力が生じるが、内周第1リップ部32と内周突部33の押し付ける力で第1保持部30が抜けないように作用する。
なお、本実施形態は、内周突部33は、第一配管1の外周面1aaに当接する例を図示しているが、偏心したときには弾接するが、正しい位置にある場合には、外周面1aaに近接(若干隙間がある)するものとしてもよい。
【0023】
第1保持部30の外周面30bには、貫通孔10Aの内周面10aに弾性変形した状態で当接する外周リップ部31が設けられている。外周リップ部31は、
図2等に示すように倒れた状態に変形して貫通孔10Aの内周面10aに弾接するため、第一配管1もしくは第二配管2が偏心した時も貫通孔10Aの内周面10aとのシール性が維持でき、外周リップ部31の曲げ変形により、高い追従性を実現できる。
【0024】
<潤滑剤>
図2のX部拡大図及び
図4のY部拡大図等に示すとおり、第1保持部30に設けられる内周第1リップ部32,32の第一配管1の外周面1aaへの弾接部位には、潤滑剤G1が塗布されている。また第1保持部30に設けられる平坦部34の外周壁11bへの弾接部位には、潤滑剤G2が塗布されている。これにより、前記第一配管を前記貫通孔から引き抜く際に、内周第1リップ部32,32を含む第1保持部30にかかる抵抗が、外周リップ部31及び内周第2リップ部42のそれぞれに生じる引き抜き方向に対する抵抗を合わせた抵抗よりも小さく構成することができる。言い換えると、第一配管1を引き抜く際にかかる抵抗(荷重)は、内シール領域S1<外シール領域S2+リップ形成領域Aとすることができる。
【0025】
第一配管1と第二配管2とをガスケット3を介して接続する場合に、第一配管1及び第二配管2内の冷却媒体の漏洩防止に加え、インバータケース100外部(第一配管1側)からの雨水等の浸入を防ぐことができる密封性を確保するために、内周第1リップ部32を含む第1保持部30にかかる抵抗が、外周リップ部31及び内周第2リップ部42のそれぞれに生じる引き抜き方向に対する抵抗を合わせた抵抗よりも大きくなるようになっていた。すなわち、第一配管1が貫通孔10Aから容易に抜けないようにガスケット3に設けられる各種リップ(内周第1リップ部32、外周リップ部31、内周第2リップ部42等)の圧縮量は、例えば0.2mm~0.7mmの範囲でできる限り高い水準になり、圧縮量が大きければ大きいほど、密封性は向上するが、メンテナンス時に第一配管1のみを引き抜くことができず、第一配管1を引き抜こうとすると、ガスケット3も一緒に取り外されてしまう。しかし、上述のとおり、第1保持部30に設けられる内周第1リップ部32,32の第一配管1の外周面1aaへの弾接部位と、平坦部34の外周壁11bへの弾接部位に潤滑剤G1,G2を塗布すると、内シール領域S1の抵抗を同じ圧縮量であっても、約80%削減することができた。よって、メンテナンス等で第一配管1のみを貫通孔10Aから引き抜いた後でも、ガスケット3及び第二配管2は貫通孔10Aに取り付けられた状態にできるので、外周リップ部31によって貫通孔10Aと第1保持部30との間が密封され、内周第2リップ部42によって第二配管2と第2保持部40との間を密封することができ、第一配管1を取り外すことにより、第一配管1内及び第二配管2内に流れる冷却媒体が上ケース100B内に浸入することを防止できる。また生産工程等で第一配管1とガスケット3とを組み立てる際にも挿入荷重が下がったことから容易に組み立てられる。
【0026】
潤滑剤G1,G2としては、特に限定されないが、ガスケット3が例えばエチレンプロプレンゴムからなる場合、シリコーン系のオイルがゴム材や冷却媒体への影響が少なく好適である。シリコーン系のオイルを用いれば、使用環境下で蒸発したり結晶化せず、周辺部品を劣化させたり、ガスケット3の変形を阻害しない。シリコーン系のオイルとしては、例えば信越化学社製のKF-96 1000CS等としてもよい。潤滑剤G1,G2の粘度も特に限定されないが、粘度は低いほど、滲みやたれにより摩擦を下げてしまい、粘度は高いほど、取り扱い性が悪いため、基油動粘度が25℃700mm2/S~1000mm2/Sが好適である。潤滑剤G1,G2の弾接部位への塗布方法は特に限定されず、スポンジ等に含ませてガスケット3に転写してもよいし、溝部11に塗布してもよい。
【0027】
<繋ぎ部>
繋ぎ部50は、第一配管1の一方端1aに装着される第1保持部30と、第二配管2の端部2aに装着される第2保持部40とを繋ぎ、弾性変形可能とされている。第1保持部30及び第2保持部40は第一配管1及び第二配管2の径に応じて互いに径が異なるため、繋ぎ部50はテーパ形状とされている。
【0028】
繋ぎ部50には、外周リップ部31の挿入方向側(第2保持部40側)に隣接して断面山型形状で且つ貫通孔10Aの内周面10aに弾接する外周突部51が設けられている。外周突部51は、周方向に沿って連続して形成されているものとしてもよいし、適宜間隔を空けて形成されているものとしてもよい。外周突部51は、外周リップ部31より小さい突出量の断面山型形状に形成されている。
なお、本実施形態は、外周突部51は、貫通孔10Aの内周面10aに当接する例を図示しているが、内周面10aに近接(若干隙間がある)しており、第一配管1又は第二配管2が偏心したときに弾接するものとしてもよい。
【0029】
<第2保持部>
第2保持部40の内周面40aは、第二配管2の外周面2aaに当接され環状の内周第2リップ部42が設けられたリップ形成領域Aを有している。この内周面40aに形成されたリップ形成領域Aに対応する第2保持部40の外周面40bには、環状の凹条部41が設けられている。このリップ形成領域Aは、冷却媒体流路を隔てるシール領域であり、インバータケース100内の冷却媒体流路をシールする領域といえる。凹条部41は周方向に沿って環状に形成されており、凹条部41には、第二配管2への嵌合を補強する補強リング4が嵌合した状態で収容されている。補強リング4は金属材、合成樹脂材等からなる環状体であり、凹条部41の溝深さ及び溝幅の寸法はこの補強リング4に応じて形成される。補強リング4は、第2保持部40の凹条部41に収容された状態で、第二配管2に外嵌された際には、求心方向に締め付け作用を発揮し、補強リング4及び内周第2リップ部42による第二配管2への密封力を強固にすることができ、第二配管2をより安定して保持できる。
【0030】
第2保持部40の端部、すなわちガスケット3の他方端3b側には、内周第2リップ部42に隣接して、突部43が形成されている。突部43は、周方向に沿って連続して形成され、第二配管2にガスケット3を挿入しやすいように、その頂部は、挿入方向とは反対側に傾斜した断面山型形状に形成されている。突部43は、第二配管2の外周面2aaに弾接するように形成されている。突部43の突出量及び隣接する内周第2リップ部42との間隔は、突部43が第二配管2の外周面2aaに嵌合され頂部が若干弾性変形し、内周第2リップ部42側に倒れた際でも、内周第2リップ部42には当接しない程度の突出量及び間隔を空けて形成されることが望ましく、内周第2リップ部42の突出量よりも突部43の突出量の方が小さい構造としている。
【0031】
内周第2リップ部42は、いずれも断面山型形状でなり、周方向に沿って環状に複数形成され、一定の距離(間隔)を空けて形成されている。内周第2リップ部42,42,42の突出量は、隣接する内周第2リップ部42,42間の距離より大とされる。内周第2リップ部42は、第二配管2に対し、締め代を持って弾接するよう構成され、隣接する内周第2リップ部42,42間の距離は、内周第2リップ部42の締め代より大とされる。
第二配管2は振動したり、第二配管2の素材によっては第二配管2に熱膨潤が生じる場合があるが、そのような場合でも、複数の内周第2リップ部42,42同士が上述のように設けられていれば、第二配管2への組み付け状態で接触せず、第二配管2の動きに追従し、シール性を維持できる。また、隣接する内周第2リップ部42,42同士が第二配管2への組み付け状態で接触しないため、内周第2リップ部42の相互の固着(内周第2リップ部42,42に貼り付きが発生しない)によってリップ反力が過度に上昇することはなく挿入及び引き抜き荷重の上昇を防止し、挿抜性能を向上させることができる。
【0032】
続いて、
図2を参照しながら、前記のように構成されたガスケット3を用いて、第一配管1及び第二配管2を貫通孔10Aにおいて接続する要領を説明する。
<接続要領>
先ず、ガスケット3には、補強リング4を予め第2保持部40の凹条部41に嵌合させ収容しておく。次いで第一配管1の一方端1aの溝部11にガスケット3の第1保持部30を嵌合し、第一配管1にガスケット3を組み付けた状態とする。この組み付け時に内周第1リップ部32は、底部11cから開口部11dに向かって斜めに倒れた状態に弾性変形する(
図2・X部拡大図と同様の状態になる)。また第一配管1の他方端1bにリングガスケット7を装着する。このとき、ガスケット3の第1保持部30の内周第1リップ部32,32及び平坦部34にはあらかじめ潤滑剤G1,G2が所定量塗布されている。
【0033】
そして、まず第一配管1の他方端1bから壁体103の貫通孔10Bにリングガスケット7、続いて第一配管1を挿通させていく。と同時に壁体101の貫通孔10Aに外部よりガスケット3、続いて第一配管1を挿通させていく。ガスケット3の他方端3bが、第二配管2の端部2aに至り、はじめに突部43の頂部が、第二配管2の先端部2abに弾接する。先端部2abは、第二配管2の他部位より、径が小さく漸次拡径するように傾斜して形成されているので、挿入方向とは反対側に傾斜した突部43はスムーズに弾性変形する。そして、次いで他方端3b側に配置された内周第2リップ部42が第二配管2の外周面2aaに弾接して、圧縮されながら弾性変形し、斜めに傾斜した状態で第二配管2に被さるように外嵌される。この際、挿通される第一配管1及び第二配管2の軸心が貫通孔10Aの軸心Lからずれる際には外周突部51が貫通孔10Aの内周面10aに当接し、第一配管1及び第二配管2の偏心を防止し、外周リップ部31のシール面圧への影響を少なくすることができる。外周突部51は、外周リップ部31の第2保持部40側に配置され、外周リップ部31が倒れる方向とは反対側に配置されているため、相互に接触はしない。また、外周突部51は、繋ぎ部50の第1保持部30側に配置されているので、貫通孔10Aの内周面10aに確実に当接する構造となっている。さらに、外周突部51は、ガスケット3の挿入時に貫通孔10Aの内周面10aの異物を除去する効果もあり、外周リップ部31の接触面に異物がかみこまない構造となっている。
【0034】
そして、
図2に示すように第一配管1の鍔部12A,12Bのそれぞれが段差部102,104内に収まり、壁体101,103に当接する程度まで、挿通させていく。すると、第一配管1の一方端1aは、貫通孔10Aの内周面10aに外周リップ部31が弾接した状態となり、他方端1bは、リングガスケット7が段差部104に弾接した状態となる。このとき、ガスケット3の内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また第一配管1の軸心と貫通孔10Aの軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響が少なく、安定したシール性を維持することができる。またこのとき、繋ぎ部50が弾性を有して径方向に変位することができるので、貫通孔10Aの軸心Lと、第二配管2の軸心とに多少の芯ずれがあっても、繋ぎ部50の弾性変形によって吸収される。特に、繋ぎ部50はテーパ形状とされているから、繋ぎ部50自体が弾性体からなることと相俟って、偏心のずれ分の吸収が効果的になされる。そして、第一配管1の鍔部12Aを固定具(不図示)によって壁体101に固定すれば、第一配管1及び第二配管2の接続が完了する。
【0035】
図2に示す接続状態では、第1保持部30の第一配管1に対する外嵌部分及び第2保持部40の第二配管2に対する外嵌部分には、それぞれ環状の内周第1リップ部32、内周第2リップ部42が圧縮状態で介在するので、シール性の高い接続構造とすることができ、第一配管1と第二配管2との間を、冷却媒体がガスケット3を介して流通可能となる。また、第1保持部30と貫通孔10Aとの間に環状の外周リップ部31が圧縮状態で介在することによって、貫通孔10Aを通じたインバータケース100の内外がシールされ、貫通孔10Aを通じて外部から塵埃等がインバータケース100内に侵入することを防止できる。
【0036】
次いで、
図2~
図4を参照しながら、前記のように接続された第一配管1を引き抜く際の引き抜き要領を説明する。
<引き抜き要領>
まずは、第一配管1を壁体101,103に固定する固定具(不図示)を外し、第一配管1をつかんで第二配管2から引き離す方向、すなわち引き抜き方向に力を加える。すると、内周第1リップ部32,32を含む第1保持部30にかかる抵抗が、外周リップ部31及び内周第2リップ部42,42,42のそれぞれに生じる引き抜き方向に対する抵抗を合わせた抵抗よりも小さく構成されているので、第一配管1のみを引き抜くことができる。すなわち、第一配管1を貫通孔10Aから引き抜く際にかかる内周第1リップ部32,32への抵抗が、外周リップ部31及び内周第2リップ部42,42,42のそれぞれに生じる引き抜き方向に対する抵抗を合わせた抵抗よりも大きいと、第一配管1を引き抜く際にガスケット3も引き抜かれてしまうが、上記構成により、第一配管1を貫通孔10Aから引き抜く際に第一配管1のみを引き抜くことができる。
【0037】
なお、前記実施形態では、自動車用インバータケース100内に配設された第二配管2と、インバータケース100の外部に配設された第一配管1とをガスケット3によって接続する配管接続構造について述べたが、壁体の貫通孔において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管をガスケットを介して接続する配管接続構造であれば、他の配管接続構造にも同様に適用可能である。また、ガスケット3の構成も一例であって、図例に限定されるものではなく、内周第2リップ部42,突部43,外周リップ部31,内周第1リップ部32,内周突部33,外周突部51の個数・形状(突出量、突出幅等)等も図例に限定されるものではない。壁体101,103に形成される貫通孔10A,10Bの形状も特に図例に限定されるものではなく、第二配管2と接続される第一配管1(外部ホース)の形状、大きさに応じて形成されている。また溝部11及び鍔部12A,12Bは、
図1のように第一配管1に一体に形成されていてもよいし、別体として、筒状の配管に嵌合させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
100 インバータケース
101 壁体
10A 貫通孔
10a 内周面
1 第一配管
2 第二配管
3 接続部材
30 第1保持部
30b 外周面
31 外周リップ部
40 第2保持部
50 繋ぎ部
51 外周突部