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特開2024-138445がん遺伝子によって促進されるがんの処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138445
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】がん遺伝子によって促進されるがんの処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7076 20060101AFI20241001BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20241001BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K31/7076
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K33/243
A61K31/704
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024111629
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2021578166の分割
【原出願日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】62/817,425
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518242226
【氏名又は名称】アーカス バイオサイエンシズ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン ビー.エル. タン
(72)【発明者】
【氏名】アクシャタ アール. ウドヤヴァール
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ ダブリュ. ヤング
(57)【要約】
【課題】がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象を処置する方法であって、前記対象に、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤を投与することを含む方法を提供すること。
【解決手段】本開示は、がん遺伝子によって促進されるがん(すなわち、正常な細胞増殖に関与する少なくとも1つの遺伝子が突然変異したがん)が、アデノシンの細胞外産生に関与する1つ以上のタンパク質の発現レベル及び/又は1つ以上のアデノシン受容体シグナル伝達タンパク質の発現レベルをしばしば改変するという発見に注目する。これらのタンパク質の発現レベルの変化は、腫瘍微小環境におけるアデノシン量の増加及び/又はアデノシン媒介シグナル伝達経路の過剰な活性化を引き起こすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定されたヒト対象を処置する方法における使用のための医薬の製造におけるアデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤の使用であって、前記方法は、前記対象にアデノシンの細胞外産生を標的にする前記薬剤を投与することを含み、
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象は、KRASに変異を有し、
アデノシンの細胞外産生を標的にする前記薬剤は、化合物A
【化1】

又は薬学的に許容されるその塩である、使用。
【請求項2】
前記方法が、1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記追加の治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD1、PDL1、BTLA、LAG3、B7ファミリーメンバー、TIM3、TIGIT又はCTLA4の少なくとも1つの活性をブロックする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、MEDI-0680、BGB-108、GB-226、PDR-001、mDX-400、SHR-1210、IBI-308、PF-06801591、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS-936559、KD-033、CA-327、CA-170、ALN-PDL、TSR-042及びSTI-1014からなる群から選択されるPD1及び/又はPDL1阻害剤である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記PD1及び/又はPDL1阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブからなる群から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記追加の治療剤が化学療法剤である、請求項2に記載の使用。
【請求項8】
前記化学療法剤が、プラチナをベースとした又はアントラサイクリンをベースとした化学療法剤を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン及びドキソルビシンからなる群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記がん遺伝子によって促進されるがんが、前立腺、結腸、直腸、膵臓、頸部、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、首、皮膚、中皮内膜、白血球、食道、乳房、筋肉、結合組織、肺、副腎腺、甲状腺、腎臓若しくは骨のがんであるか、又は神経膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、肉腫、絨毛癌、皮膚基底細胞癌若しくは精巣セミノーマである、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記がんが、黒色腫、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、卵巣がん、カポジ肉腫、腎細胞癌、頭頸部がん及び食道がんからなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記がん遺伝子によって促進されるがんが、甲状腺、副腎腺、中皮内膜、胆管、膵臓、脳、腎臓、食道、直腸、結腸、胃、頭部、首、皮膚、精巣、卵巣、肺、子宮内膜、目、前立腺、乳房若しくは肝臓のがんであるか、又は神経膠芽腫、中皮腫若しくは肉腫である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記がんが、甲状腺、副腎腺、中皮内膜、胆管、膵臓、脳、腎臓、食道、直腸、結腸、胃、頭部、首若しくは皮膚のがんからなる群から選択されるか、又は神経膠芽腫、中皮腫若しくは肉腫である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記がんが、精巣、卵巣、肺、子宮内膜及び副腎腺のがんからなる群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記がんが、目、前立腺、乳房、腎臓、肝臓及び肺のがんからなる群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤を含む、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定されたヒト対象を処置するための組成物であって、
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象は、KRASに変異を有し、
アデノシンの細胞外産生を標的にする前記薬剤は、化合物A
【化2】

又は薬学的に許容されるその塩である、組成物。
【請求項17】
1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記追加の治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD1、PDL1、BTLA、LAG3、B7ファミリーメンバー、TIM3、TIGIT又はCTLA4の少なくとも1つの活性をブロックする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、MEDI-0680、BGB-108、GB-226、PDR-001、mDX-400、SHR-1210、IBI-308、PF-06801591、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS-936559、KD-033、CA-327、CA-170、ALN-PDL、TSR-042及びSTI-1014からなる群から選択されるPD1及び/又はPDL1阻害剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記PD1及び/又はPDL1阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブからなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記追加の治療剤が化学療法剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
前記化学療法剤が、プラチナをベースとした又はアントラサイクリンをベースとした化学療法剤を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン及びドキソルビシンからなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記がん遺伝子によって促進されるがんが、前立腺、結腸、直腸、膵臓、頸部、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、首、皮膚、中皮内膜、白血球、食道、乳房、筋肉、結合組織、肺、副腎腺、甲状腺、腎臓若しくは骨のがんであるか、又は神経膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、肉腫、絨毛癌、皮膚基底細胞癌若しくは精巣セミノーマである、請求項16から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記がんが、黒色腫、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、卵巣がん、カポジ肉腫、腎細胞癌、頭頸部がん及び食道がんからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記がん遺伝子によって促進されるがんが、甲状腺、副腎腺、中皮内膜、胆管、膵臓、脳、腎臓、食道、直腸、結腸、胃、頭部、首、皮膚、精巣、卵巣、肺、子宮内膜、目、前立腺、乳房若しくは肝臓のがんであるか、又は神経膠芽腫、中皮腫若しくは肉腫である、請求項16から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記がんが、甲状腺、副腎腺、中皮内膜、胆管、膵臓、脳、腎臓、食道、直腸、結腸、胃、頭部、首若しくは皮膚のがんからなる群から選択されるか、又は神経膠芽腫、中皮腫若しくは肉腫である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記がんが、精巣、卵巣、肺、子宮内膜及び副腎腺のがんからなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記がんが、目、前立腺、乳房、腎臓、肝臓及び肺のがんからなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月12日に出願された米国仮出願第62/817,425号(参照によりその全体
が本明細書に組み込まれる)についての優先権に基づく利益を主張する出願である。
【0002】
連邦支援研究開発の下でなされた発明に対する権利に関する記載
適用なし
【0003】
コンパクトディスクで提出される「配列表」、表又はコンピュータープログラムリスト
添付資料の参照
適用なし
【発明の概要】
【0004】
一部の態様では、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象を処置
する方法であって、前記対象に、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はア
デノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤を投与することを含む方法が提
供される。
【0005】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から当業者には明ら
かであろう。
【0006】
特許又は出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含有する。カラー図面を含む
この特許又は特許出願公開のコピーは、請求及び必要な手数料の支払いにより特許庁より
提供される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象を処置する方法であって、前記対象に、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はアデノシンによるそ
の受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤を投与することを含む方法。
(項目2)
前記対象がアデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤を投与される、項目1に記載の方
法。
(項目3)
前記対象がアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤を投与される、
項目1に記載の方法。
(項目4)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が、KRAS、BRAF、MET、FUBP1、RAC1、EGFR、CDK4、CTCF、PGR、RET、RASA1、JAK1、PHF6、NF1、CIC、ARID1A、ZFHX3、ZCCHC12、GNA11、SMAD4、USP9X、CDKN2A、FAT1、PIK3R1、SCAF4、PMS2、RNF43、SMC1A、BCOR、FGFR2、COL5A1、ATM、KMT2B、CTNNB1、MYC、RAD21、PTEN、AXL、HIF1/2A、PAK4、RHOB、TBL1XR1、KEAP1、ZFP36L2、FGFR3、FOXA1、FLT3、TRAF3、RNF111、PPP2R1A、TXNIP、STAG2、RIT1、TGIF1、FOXQ1、ATR、CYSLTR2、PCBP1、PIK3R2、ASXL1、HIST1H1C、KLF5、PIK3CB、SPOP、MECOM、CACNA1A、CTNND1、DACH1、XPO1、ZNF750、FBXW7、MUC6、KDM6A、GATA3、ZBTB20、PIK3CA、RB1、SOX17、SMARCA4、KIT、CHD8、CHD4、及びAPOBからなる
群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有する、項目1から3のいずれか一
項に記載の方法。
(項目5)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が、KRAS、BRAF、MET、FUBP1、RAC1、EGFR、CDK4、CTCF、PGR、RET、RASA1、JAK1、PHF6、NF1、CIC、ARID1A、ZFHX3、ZCCHC12、GNA11、SMAD4、USP9X、CDKN2A、FAT1、PIK3R1、SCAF4、PMS2、RNF43、SMC1A、BCOR、FGFR2、COL5A1、ATM、KMT2B、CTNNB1、MYC、RAD21、PTEN、AXL、HIF1/2A、及びPAK4からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有する、項目1から3
のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が、EGFR、KRAS、BRAF、MET、FUBP1、CDK4、CTCF、PGR、RET、RASA1、JAK1、NF1、CIC、ARID1A、ZFHX3、SMAD4、USP9X、CDKN2A、FAT1、AXL、HIF1/2A、PAK4及びATMからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有する、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が、MYC、PMS2、CTNNB1
及びSMAD4からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有する、項目1
から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が、KRAS、BRAF、RASA1
、AXL、HIF1/2A、PAK4及びRAC1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有する、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が、EGFR、KRAS及びBRAFからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有する、項目1から3のい
ずれか一項に記載の方法。
(項目10)
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤が、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)阻害剤、CD73阻害剤、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラー
ゼ1(ENPP1)阻害剤、CD38阻害剤及びCD39阻害剤からなる群から選択される、項目1、2又は4から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤が、アデノシンA1受容体(A1R)アンタゴニスト、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/若しくはアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニスト、又はアデノシンA3受容体アンタゴニスト(A3R)である、項目1又は3から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤が、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストである、項目1又は3から9のい
ずれか一項に記載の方法。
(項目13)
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが式(I)、
【化1】

又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物を有し、
式中、
G1はN又はCR3aであり、
G2はN又はCR3bであり、
G3はN又はCR3cであり、
R3a、R3b及びR3cの各々は独立してH又はC1~3アルキルであり、
R1a及びR1bは、
viii)H
ix)1~3つのR5置換基で必要に応じて置換されたC1~8アルキル、
x)1~3つのR5置換基で必要に応じて置換されたX1-O-C1~8アルキル、
xi)-C(O)-R6
xii)1~3つのR7置換基で必要に応じて置換されたY、及び
xiii)1~3つのR7置換基で必要に応じて置換されたX1-Y、
からなる群から各々独立して選択されるか、又は
xiv)R1a及びR1bは、それらが結合する窒素と一緒に1~3つのR8置換基で必要に応じて置換された5~6員環のヘテロシクロアルキル環を形成し、ヘテロシクロアルキルはO、N及びSからなる群から選択される0~2つの追加のヘテロ原子環頂点を有し、
各YはC3~8シクロアルキル又は、O、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ
原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、
R2及びR4は各々独立してH又はC1~3アルキルであり、
Ar1はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR9で必要に
応じて置換されており、
Ar2はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR10で必要に応じて置換されており、
Ar1及びAr2の5~6員環のヘテロアリールはO、N及びSからなる群から選択される1~3つ
のヘテロ原子環頂点を各々独立して有し、
各X1はC1~6アルキレンであり、
各R5はヒドロキシル、C3~8シクロアルキル、フェニル、-O-フェニル、-C(O)ORa及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R6はC1~8アルキル又はYであり、それぞれはヒドロキシル、-O-フェニル、フェニル
及び-O-C1~8アルキルからなる群から選択される1~3つの置換基で必要に応じて置換されており、
各R7はC1~8アルキル、ヒドロキシル、-O-C1~8アルキル、オキソ及びC(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各R8はC1~8アルキル、ヒドロキシル及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R9は、C1~8アルキル、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8
ルキル、-X1-O-X1-O-C1~8アルキル、-C(O)ORa、ハロゲン、シアノ、-NRbRc、Y、-X1-C3
~8シクロアルキル及び-X2-Zからなる群から独立して選択され、X2はC1~6アルキレン、-C1~6アルキレン-O-、-C(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され、ZはO、N及びSからな
る群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、前記R9置換基の各々は1~3つのR11で必要に応じて置換されており、
各R10は、C1~8アルキル、ハロ、シアノ、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)NRdRe、及びO、N及びSからなる群
から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロアリールからなる群から独立して選択され、前記R10置換基の各々は1~3つのR12で必要に応じて置換されているか、又はAr2の隣接した環頂点上の2つのR10は必要に応じて組み合わされて1~2つのハ
ロゲンで必要に応じて置換された5員環の複素環を形成し、
各R11は、ヒドロキシル、ハロ、シアノ、-NRdRe、-C(O)ORa、フェニル、C3~8シクロアルキル、及びC(O)ORaで必要に応じて置換されたC1~4アルキルからなる群から独立して選択され、
各R12は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、-C(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各RaはH又はC1~6アルキルであり、
各Rb及びRcは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)ORa及び-X1-C(O)ORa
からなる群から独立して選択され、
各Rd及びReは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキルからなる群から独立して選択され、
但し、G1及びG2が各々Nであり、G3がCHであり、R2がCH3であり、R1a及びR1bが各々Hで
ある場合、Ar2は2-チエニル、フェニル、2-、3-若しくは4-メトキシフェニル、3-若しく
は4-ハロフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,4-ジクロロフェニル又は2-若しくは4-メチルフェニル以外である、
項目12に記載の方法。
(項目14)
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物1
【化2】

又は薬学的に許容されるその塩である、項目12に記載の方法。
(項目15)
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物2
【化3】

又は薬学的に許容されるその塩である、項目12に記載の方法。
(項目16)
アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが化合物3
【化4】

又は薬学的に許容されるその塩である、項目12に記載の方法。
(項目17)
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストが、AZD4635、シフォラデナント(CPI-444)、NIR178及びPBF-1129からなる群から選択される、
項目12に記載の方法。
(項目18)
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がA1Rアンタゴニストである、項目11に記載
の方法。
(項目19)
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がA3Rアンタゴニストである、項目11に記載
の方法。
(項目20)
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がCD73阻害剤である、項目10に記載の方法。(項目21)
CD73阻害剤が式(i)、
【化5】

又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物を有し、
式中、
各R1は、水素、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル、必要に応じて置換されたアリール及び-C(R2R2)-O-C(O)-OR3からなる群から独立して選択されるか、又は2つのR1基は必要に応じて組み合わされて5~7員環を形成し、
各R2は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独立して選択され

各R3は、H、C1~C6アルキル及び必要に応じて置換されたアリールからなる群から独立し
て選択され、
R5は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から選択され、
XはO、CH2及びSからなる群から選択され、
Aは以下からなる群から選択され:
【化6】

その各々は1~5つのR6置換基で必要に応じて置換されており、
式中、下付き文字nは0から3の整数であり、
Zは、CH2、CHR6、NR6及びOからなる群から選択され、
各R6は、H、CH3、OH、CN、F、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル及びOC(O)-C1~C6
アルキルからなる群から独立して選択され、必要に応じて隣接した環頂点上の2つのR6
は連結されて、環頂点として少なくとも1つのヘテロ原子を有する5~6員環を形成し、
Hetは以下からなる群から選択され:
【化7】

式中、波線は化合物の残部への結合点を示し:
Raは、H、NH2、NHR7、NHC(O)R7、NR7R7、R7、OH、SR7及びOR7からなる群から選択され、
Rbは、H、ハロゲン、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH及びOR7からなる群から選択され、
Rc及びRdは、H、ハロゲン、ハロアルキル、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH、OR7、SR7、SO2R7、-X1-NH2、-X1-NHR7、-X1-NR7R7、-X1-OH、-X1-OR7、-X1-SR7及び-X1-SO2R7からなる群
から独立して選択され、
Re及びRfは、H、ハロゲン及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独
立して選択され、
各X1はC1~C4アルキレンであり、
各R7は、必要に応じて置換されたC1~C10アルキル、必要に応じて置換されたC2~C10アルケニル、必要に応じて置換されたC2~C10アルキニル、必要に応じて置換されたC3~C7
クロアルキル、必要に応じて置換されたC3~C7シクロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルケニル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルキニル、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルケニル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC2~C4アルキニルからなる群から独立して選択され、必要に応じて窒素原子に結合する2つのR7基は連
結されて、必要に応じてアリール環に融合される4~7員環の複素環を形成し、
但し、これらの化合物は、X、A及びHetの組合せが
【化8】

をもたらす化合物以外のものであり、
式中、RgはHであるか又は2つのRg基が組み合わされてアセトニドを形成し、かつ、
(1)Rc及びReは水素であり、Raは-OEt、-OCH2Ph、-SCH2Ph、-NH2、メチルアミノ、エチル
アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、フェニルアミノ
、ベンジルアミノ、2-フェニルエチルアミノ、N-ベンジル-N-エチルアミノ、ジベンジル
アミノ、4-アミノベンジルアミノ、4-クロロベンジルアミノ、4-ニトロベンジルアミノ若しくは4-スルファモイルベンジルアミノであるか、又は
(2)Rcは水素であり、Raは-NH2であり、Reはブロモ、クロロ、アミノメチル又はチオエチ
ルであるか、又は
(3)Rcは水素であり、Raはベンジルアミノであり、Reはブロモである、
項目20に記載の方法。
(項目22)
CD73阻害剤が化合物A
【化9】

又は薬学的に許容されるその塩である、項目20に記載の方法。
(項目23)
CD73阻害剤が化合物B
【化10】

又は薬学的に許容されるその塩である、項目20に記載の方法。
(項目24)
CD73阻害剤が化合物C
【化11】

又は薬学的に許容されるその塩である、項目20に記載の方法。
(項目25)
CD73阻害剤がオレクルマブ(MEDI-9447)、CPI-006、NZV930/SRF373、BMS-986179及びTJ4309からなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目26)
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がTNAP阻害剤である、項目10に記載の方法。(項目27)
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がENPP1阻害剤である、項目10に記載の方法

(項目28)
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がCD38阻害剤である、項目10に記載の方法。(項目29)
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がCD39阻害剤である、項目10に記載の方法。(項目30)
1つ以上の追加の治療剤を投与することをさらに含む、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
追加の治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、項目30に記載の方法。
(項目32)
免疫チェックポイント阻害剤がPD1、PDL1、BTLA、LAG3、B7ファミリーメンバー、TIM3
、TIGIT又はCTLA4の少なくとも1つの活性をブロックする、項目31に記載の方法。
(項目33)
免疫チェックポイント阻害剤がペムブロリズマブ、ニボルマブ、MEDI-0680、BGB-108、GB-226、PDR-001、mDX-400、SHR-1210、IBI-308、PF-06801591、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、BMS-936559、KD-033、CA-327、CA-170、ALN-PDL、TSR-042及びSTI-1014からなる群から選択されるPD1及び/又はPDL1阻害剤である、項目32に記載の方法。(項目34)
PD1及び/又はPDL1阻害剤がペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブからなる群から選択される、項目32に記載の方法。
(項目35)
追加の治療剤が化学療法剤である、項目30に記載の方法。
(項目36)
化学療法剤がプラチナをベースとした又はアントラサイクリンをベースとした化学療法剤を含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
化学療法剤がシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン及びドキソルビシンからなる群から選択される、項目36に記載の方法。
(項目38)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が、EGFR、KRAS及びBRAFからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有し、
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がCD73阻害剤であり、及び/又は、
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤がアデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストである、
項目1から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニスト又はCD73阻害剤が項目13から25のいずれか一項に記載の化合物である、項目38に記載の方法。
(項目40)
がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が、MYC、PMS2、CTNNB1
及びSMAD4からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有し、
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤がCD73阻害剤であり、及び/又は、
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤がアデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストである、
項目1から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニスト又はCD73阻害剤が項目13から25のいずれか一項に記載の化合物である、項目40に記載の方
法。
(項目42) がん遺伝子によって促進されるがんが、前立腺、結腸、直腸、膵臓、頸部、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、首、皮膚(黒色腫及び基底癌を含
む)、中皮内膜、白血球(リンパ腫及び白血病を含む)、食道、乳房(トリプルネガティブ乳がんを含む)、筋肉、結合組織、肺(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、副腎腺、甲状
腺、腎臓又は骨のがんであるか、又は神経膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、肉腫(カポ
ジ肉腫を含む)、絨毛癌、皮膚基底細胞癌若しくは精巣セミノーマである、項目1から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記がんが黒色腫、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、卵巣がん、カポジ肉腫、腎細胞癌、頭頸部がん及び食道がんからなる群から選択される、項目42に記載の方法。
(項目44)
がん遺伝子によって促進されるがんが、甲状腺、副腎腺、中皮内膜、胆管、膵臓、脳、腎臓、食道、直腸、結腸、胃、頭部、首、皮膚、精巣、卵巣、肺、子宮内膜、目、前立腺、乳房若しくは肝臓のがんであるか、又は神経膠芽腫、中皮腫若しくは肉腫である、項目1から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記がんが、甲状腺、副腎腺、中皮内膜、胆管、膵臓、脳、腎臓、食道、直腸、結腸、胃、頭部、首若しくは皮膚のがんからなる群から選択されるか、又は神経膠芽腫、中皮腫若しくは肉腫である、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記がんが精巣、卵巣、肺、子宮内膜及び副腎腺のがんからなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記がんが目、前立腺、乳房、腎臓、肝臓及び肺のがんからなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目48)
対象がヒト対象である、項目1から47のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】汎がんTCGA全体のCD73/TNAP比を示す図。CD73及びTNAP発現は、汎がんTCGAアトラスデータセットから導かれた。数字は、CD73及びTNAPのlog2 CPM値の比を示す。左の腫瘍はCD73が高くてTNAPが低いが、右の腫瘍はTNAPが高くてCD73が低い。
図2A】CD73発現の腫瘍形成ドライバーの同定を示す図。CD73発現を予測する、がんドライバー遺伝子の変化の、腫瘍タイプで調整した線形モデル予想。
図2B-C】腫瘍形成がんドライバーの代表例である、KRAS(B)及びTBL1XR1(C)におけるCD73発現をプロットする図。左のグラフはWT発現であり、右のグラフは参照用の腫瘍形成がんドライバー(ALT)の突然変異発現である。
図2D】アデノシン経路遺伝子の腫瘍形成調節因子の同定を示す図。CD73の正の調節因子(D)がプロットされ、ここでX軸はパネルAからのがん遺伝子を表し、Y軸は特定のアデノシン経路遺伝子のための、腫瘍タイプで調整した線形モデル予想を示す。
図2E】アデノシン経路遺伝子の腫瘍形成調節因子の同定を示す図。CD73の負の調節因子(E)がプロットされ、ここでX軸はパネルAからのがん遺伝子を表し、Y軸は特定のアデノシン経路遺伝子のための、腫瘍タイプで調整した線形モデル予想を示す。
図3A】汎がんTCGAデータセットにおける無進行生存についての、がんドライバーごとのWT(A、B)におけるCD73発現のための、腫瘍タイプで調整した95%信頼区間による危険率を示すForestプロットを示す図。X軸は危険率であり、Y軸は異なる腫瘍形成タンパク質を掲載する。ここで提示される危険率は、Cox回帰モデルから導かれる係数の指数である。同じくp値はWTとALT群の間の生存差が有意であるかどうかを表す同じモデルから来る。
図3B】汎がんTCGAデータセットにおける無進行生存についての、がんドライバーごとのWT(A、B)におけるCD73発現のための、腫瘍タイプで調整した95%信頼区間による危険率を示すForestプロットを示す図。X軸は危険率であり、Y軸は異なる腫瘍形成タンパク質を掲載する。ここで提示される危険率は、Cox回帰モデルから導かれる係数の指数である。同じくp値はWTとALT群の間の生存差が有意であるかどうかを表す同じモデルから来る。
図3C】汎がんTCGAデータセットにおける無進行生存についての、がんドライバーごとの突然変異(ALT)(C、D)患者におけるCD73発現のための、腫瘍タイプで調整した95%信頼区間による危険率を示すForestプロットを示す図。X軸は危険率であり、Y軸は異なる腫瘍形成タンパク質を掲載する。ここで提示される危険率は、Cox回帰モデルから導かれる係数の指数である。同じくp値はWTとALT群の間の生存差が有意であるかどうかを表す同じモデルから来る。
図3D】汎がんTCGAデータセットにおける無進行生存についての、がんドライバーごとの突然変異(ALT)(C、D)患者におけるCD73発現のための、腫瘍タイプで調整した95%信頼区間による危険率を示すForestプロットを示す図。X軸は危険率であり、Y軸は異なる腫瘍形成タンパク質を掲載する。ここで提示される危険率は、Cox回帰モデルから導かれる係数の指数である。同じくp値はWTとALT群の間の生存差が有意であるかどうかを表す同じモデルから来る。
図3E】EGFR突然変異体対野生型患者におけるCD73発現のカプラン-マイアー曲線を示す図。X軸は年数を表し、Y軸は無進行生存を有する患者の確率を表す。EGFR ALT及び高いCD73を有する患者は、最悪の生存率を有し、EGFR ALT及び低いCD73の者はEGFR WT患者により近い生存率を有していた。
図4A】NSCLCにおけるペムブロリズマブ応答及びCD73を調節するがんドライバーの突然変異状態の関連を示す図。パネルA及びBは、図1からのCD73と正及び負に関連したがんドライバー変化についてのスタックされた棒グラフを示す。Y軸は、ペムブロリズマブで6カ月を越えて永続的な臨床的利益を達成するか又は達成しない患者のパーセンテージを表す。X軸は、列挙される腫瘍形成ドライバーごとにWT及びALTを表す。
図4B】NSCLCにおけるペムブロリズマブ応答及びCD73を調節するがんドライバーの突然変異状態の関連を示す図。パネルA及びBは、図1からのCD73と正及び負に関連したがんドライバー変化についてのスタックされた棒グラフを示す。Y軸は、ペムブロリズマブで6カ月を越えて永続的な臨床的利益を達成するか又は達成しない患者のパーセンテージを表す。X軸は、列挙される腫瘍形成ドライバーごとにWT及びALTを表す。
図4C】CD73の正及び負の調節因子であるがんドライバーの危険率を表す無進行生存のForestプロットを示す図。X軸は危険率を表し、Y軸は特定の腫瘍形成ドライバーを掲載する。本明細書で提示される危険率は、Cox回帰モデルから導かれる係数の指数である。同じくp値はWTとALT群の間の生存差が有意であるかどうかを表す同じモデルから来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
I.総論
本開示は、がん遺伝子によって促進されるがん(すなわち、正常な細胞増殖に関与する
少なくとも1つの遺伝子が突然変異したがん)が、アデノシンの細胞外産生に関与する1つ
以上のタンパク質の発現レベル及び/又は1つ以上のアデノシン受容体シグナル伝達タンパ
ク質の発現レベルをしばしば改変するという発見に注目する。これらのタンパク質の発現
レベルの変化は、腫瘍微小環境におけるアデノシン量の増加及び/又はアデノシン媒介シ
グナル伝達経路の過剰な活性化を引き起こすことができる。腫瘍微小環境におけるアデノ
シンの増加したレベル及び特定のアデノシン媒介シグナル伝達経路の活性化の存在は、腫
瘍モデルで免疫抑制効果を提供することが示されている。したがって、がん遺伝子によっ
て促進されるがんを有すると特定された対象は、アデノシンの細胞外産生に関与するタン
パク質を標的にする薬剤及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する
薬剤による療法のための主要な候補である。有利にも、これらの薬剤の1つ以上を投与す
ることによって、細胞外アデノシンの産生及び/又はアデノシン媒介シグナル伝達に関与
するタンパク質の発現の変化の影響を低減、最小化又は排除することができる。非限定的
な例として、EGFR、BRAF及びKRAS突然変異の各々はCD73発現を上方制御し、それはアデノ
シンの局所レベルを増加させる。CD73阻害剤を投与することは、これらのがんタイプにお
いて上方制御されたCD73レベルの影響を低減又は排除することによって正の臨床的利益を
提供する。
【0009】
II.定義
別途指示がない限り、以下の用語は、下に示す意味を有するものである。他の用語は、
明細書全体の他の場所で規定される。
【0010】
用語「アルキル」は、それ自体で又は別の置換基の一部として、他に記載されていない
限り、指定された数の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを意味する(す
なわち、C1~8は、1~8個の炭素を意味する)。アルキルとしては、任意の数の炭素、例え
ば、C1~2、C1~3、C1~4、C1~5、C1~6、C1~7、C1~8、C1~9、C1~10、C2~3、C2~4
、C2~5、C2~6、C3~4、C3~5、C3~6、C4~5、C4~6及びC5~6が含まれる。アルキル基
の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソ
ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられ
る。
【0011】
用語「アルキレン」は、示された数の炭素原子を持ち、少なくとも2つの他の基を連結
している直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族ラジカル、すなわち2価の炭化水素ラジカルを指す
。アルキレンに連結している2つの部分は、アルキレン基の同じ原子に連結していても、
異なる原子に連結していてもよい。例えば、直鎖アルキレンは、-(CH2)n-の2価のラジカ
ルであることができ、ここでnは1、2、3、4、5又は6である。代表的なアルキレン基とし
ては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、se
cブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細
書においてしばしばX1基又はX2基と称するアルキレン基は、置換型又は非置換型であり得
る。X1又はX2か含む基が必要に応じて置換されている場合、必要に応じた置換は、その部
分のアルキレン部においてなされてよいことが理解されたい。
【0012】
用語「シクロアルキル」は、示された数の環原子を有し(例えば、C3~6シクロアルキル
)、完全に飽和しているか、又は環頂点間に1つを超えない二重結合を有する炭化水素環を
指す。「シクロアルキル」はまた、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]
オクタンなどの二環式及び多環式炭化水素環を指すことが意図される。一部の実施形態で
は、本開示のシクロアルキル組成物は、単環式C3~6シクロアルキル部分である。
【0013】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、示された数の環頂点(又はメンバー)を有し、N、O、
及びSから選択される1~5個の炭素頂点を置き換えるヘテロ原子を1~5個有するシクロア
ルキル環を指し、窒素及び硫黄原子は場合により酸化され、窒素原子(複数可)は場合によ
り四級化されている。シクロヘテロアルキルは、単環式、二環式、又は多環式環系であっ
てもよい。シクロヘテロアルキル基の非限定的な例としては、ピロリジン、イミダゾリジ
ン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノン、ヒダントイン
、ジオキソラン、フタルイミド、ピペリジン、1,4-ジオキサン、モルホリン、チオモルホ
リン、チオモルホリン-S-オキシド、チオモルホリン-S,S-オキシド、ピペラジン、ピラン
、ピリドン、3-ピロリン、チオピラン、ピロン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオ
フェン、キヌクリジンなどが挙げられる。シクロヘテロアルキル基は、環炭素又はヘテロ
原子を介して分子の残部に結合することができる。
【0014】
本明細書で使用される場合、本明細書中に記載される任意の化学構造における単結合、
二重結合、又は三重結合を横切る波線「
」は、分子の残部への単結合、二重結合、又は三重結合の結合点を表す。さらに、環(例
えば、フェニル環)の中心へと伸びた結合は、任意の利用可能な環頂点における結合を示
すことを意味する。環に結合しているように示される複数の置換基が、安定した化合物を
もたらし、他の場合には立体的は互換性を有する環頂点を占めることは、当業者には明ら
かであろう。二価の成分の場合における表現は、いずれの方向(順方向又は逆方向)も含む
ことを意味する。例えば、基「-C(O)NH-」では、-C(O)NH-又は-NHC(O)-のいずれの方向の
連結も含むことを意味し、同様に、「-O-CH2CH2-」は-O-CH2CH2-及び-CH2CH2-O-の両方を
含むことを意味する。
【0015】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、それ自体で又は別の置換基の一部として、他に記載
されていない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロア
ルキル」などの用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことが意図される
。例えば、用語「C1~4ハロアルキル」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエ
チル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことが意図される。
【0016】
用語「アリール」は、他に記載されていない限り、単環、又は一緒に縮合しているか若
しくは共有結合している多環(3つまでの環)であり得る、多価不飽和の、一般的には芳香
族の炭化水素基を意味する。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、ナフチル、
及びビフェニルが挙げられる。
【0017】
用語「ヘテロアリール」は、N、O、及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を含有す
るアリール基(又は環)を指し、窒素及び硫黄原子は場合により酸化され、窒素原子(複数
可)は場合により四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残
部に結合することができる。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、ピリジル、ピリ
ダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリニル、キノキサリニル、キ
ナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ベンゾトリアジニル、プリニル、ベンゾイミ
ダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、イソベン
ゾフリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾトリアジニル、チエノピリジニル、
チエノピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジン、ベンゾチアゾリル、ベ
ンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イソチアゾリル
、ピラゾリル、インダゾリル、プテリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリ
ル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、チアゾリル、フリル
、チエニルなどが挙げられる。ヘテロアリール環のそれぞれの置換基は、以下に記載され
る許容される置換基の群から選択され得る。
【0018】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」)は、一部
の実施形態では、場合により、置換される。各タイプの基の選択される置換基は、以下に
提供される。
【0019】
場合により、アルキルラジカル(アルキレン、アルケニル、及びアルキニルとしばしば
呼ばれる基を含む)の置換基は、0から(2m'+1)の範囲の数の、-ハロゲン、-OR'、-NR'R''
、-SR'、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C
(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)
=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'S(O)2R''、-CN(シアノ)、-NO2、アリール
、アリールオキシ、オキソ、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルから選択される
様々な基であってよく、m'はこのようなラジカル中の炭素原子の総数である。R'、R''、
及びR'''は、それぞれ独立して、水素;非置換C1~8アルキル;非置換アリール;1~3個
のハロゲンで置換されたアリール、C1~8アルコキシ若しくはC1~8チオアルコキシ基;又
は非置換アリール-C1~4アルキル基を表す。R'及びR''が同じ窒素原子に結合している場
合、それらは窒素原子と組み合わされて、3、4、5、6、又は7員環を形成することができ
る。例えば、-NR'R''は、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことが意図される。
【0020】
場合により、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルラジカルの置換基は、場合によ
り、C(O)OR'、-ハロゲン、-OR'、-NR'R''、-SR'、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-C
O2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NH
-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'
S(O)2R''、-CN(シアノ)、-NO2、アリール、アリールオキシ及びオキソから選択される様
々な基で置換されるアルキルであってよい。R'、R''、及びR'''は、それぞれ独立して、
水素;非置換C1~8アルキル;非置換アリール;1~3個のハロゲンで置換されたアリール
、C1~8アルコキシ若しくはC1~8チオアルコキシ基;又は非置換アリール-C1~4アルキル
基を表す。
【0021】
同様に、場合により、アリール及びヘテロアリール基の置換基は、多様であり、一般に
、0から芳香族環系上の開放原子価(open valence)の総数までの範囲の数の、-ハロゲン、
-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-CONR'R''、-C(O)R'、-OC(O
)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)
=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'S(O)2R''、-N3、ペルフ
ルオロ(C1~C4)アルコキシ、及びペルフルオロ(C1~C4)アルキルから選択され; R'、R''
、及びR'''は、独立して、水素、C1~8アルキル、C1~8ハロアルキル、C3~6シクロアル
キル、C2~8アルケニル、及びC2~8アルキニルから選択される。他の適切な置換基として
は、炭素原子1~6個のアルキレンテザー(tether)によって環原子に結合した上記アリール
置換基のそれぞれが挙げられる。
【0022】
アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、場合により、式-T-C(O)
-(CH2)q-U-の置換基で置き換わっていてもよく、式中、T及びUは、独立して、-NH-、-O-
、-CH2-、又は単結合であり、qは0~2の整数である。あるいは、アリール又はヘテロアリ
ール環の隣接原子上の置換基の2つは、場合により、式-A-(CRfRg)r-B-の置換基で置き換
わっていてもよく、式中、A及びBは、独立して、-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-S(O)2NR'-、又は単結合であり、rは1~3の整数であり、Rf及びRgは、それぞれ独立
してH又はハロゲン(H of halogen)である。このようにして形成された新しい環の単結合
の1つは、場合により、二重結合で置き換わっていてもよい。あるいは、アリール又はヘ
テロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、場合により、式-(CH2)s-X-(CH2)t-の置換
基で置き換わっていてもよく、式中、s及びtは、独立して、0~3の整数であり、Xは、-O-
、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、又は-S(O)2NR'-である。-NR'-及び-S(O)2NR'-中の置換
基R'は、水素又は非置換C1~6アルキルから選択される。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、及
びケイ素(Si)を含むことが意図される。
【0024】
用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書に記載の化合物上に見られる特定の置換基
に応じて、比較的非毒性の酸又は塩基で調製される活性化合物の塩を含むことが意図され
る。本発明の化合物が比較的酸性の官能性を有する場合、塩基付加塩は、このような化合
物の中性形態を、純粋な状態の又は適切な不活性溶媒中のいずれかの、十分な量の所望の
塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される無機塩基から誘導
される塩の例としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄
、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛
などが挙げられる。薬学的に許容される有機塩基から誘導される塩としては、置換アミン
、環状アミン、天然に存在するアミンなどを含めた第一級、第二級、及び第三級アミン、
例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミ
ン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタ
ノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミ
ン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグ
ルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン
、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタ
ミンなどの塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能性を有する場合、酸付
加塩は、このような化合物の中性形態を、純粋な状態の又は適切な不活性溶媒中のいずれ
かの、十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容さ
れる酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogenc
arbonic acid)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric acid)、二水素リン酸(d
ihydrogenphosphoric acid)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水
素酸、又は亜リン酸などの無機酸から誘導されるもの、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ
酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、
ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの
比較的非毒性の有機酸から誘導される塩が挙げられる。また、アルギン酸塩などのアミノ
酸の塩、並びにグルクロン酸若しくはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例え
ば、Berge, S.M., et al, "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Scienc
e, 1977, 66, 1-19を参照)。本発明のある特定の化合物は、化合物が塩基付加塩又は酸付
加塩のいずれにも変換されることを可能にする塩基性及び酸性の両方の官能性を有する。
【0025】
化合物の中性形態は、塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を従来の方法で単離するこ
とによって、再生することができる。化合物の親形態は、特定の物理的性質、例えば、極
性溶媒への溶解性において様々な塩形態とは異なるが、他の点では、塩は、本発明の目的
において化合物の親形態と等価である。塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態で
ある化合物を提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容
易に化学変化を受けて、本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグ
は、ex vivo環境において化学的又は生化学的方法によって本発明の化合物に変換するこ
とができる。例えば、プロドラッグを、適切な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザー
バー中に配置した場合、本発明の化合物にゆっくりと変換させることができる。プロドラ
ッグは、本明細書の他の場所に詳細に記載されている。
【0026】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書に記
載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化を受けて、本発明の化合
物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境において化学的又は
生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグを
、適切な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバー中に配置した場合、本発明の化合
物にゆっくりと変換させることができる。
【0027】
本発明のある特定の化合物は、非溶媒和形態及び溶媒和形態、例えば水和形態で存在す
ることができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に
包含されることが意図される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶又は非晶質形態で存
在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本発明によって企図される用途について等価で
あり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0028】
本発明のある特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)又は二重結合を有し; ラセミ体
、ジアステレオマー、幾何異性体、位置異性体、及び個々の異性体(例えば、分かれた鏡
像異性体)は、全て本発明の範囲内に包含されることが意図される。立体化学的描写が示
されている場合、異性体の1つが存在し、他の異性体が実質的に存在しない化合物を指す
ことが意図される。別の異性体が「実質的に存在しない」とは、2つの異性体の少なくと
も80/20の比、より好ましくは90/10、又は95/5若しくはそれを超える比を示す。一部の実
施形態では、異性体の1つが、少なくとも99%の量で存在する。
【0029】
本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する原子の1つ以上に原子同位体の非
天然の割合を含有してもよい。同位体の非天然の割合は、自然界に見出される量から、問
題の原子が100%を構成する量までの範囲と定義することができる。例えば、化合物は、放
射性同位体、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、若しくは炭素-14(14C)、又は非
放射性同位体、例えば重水素(2H)若しくは炭素-13(13C)を組み込んでもよい。このような
同位体バリエーションは、本出願の他の場所に記載されたものに追加の有用性を提供する
ことができる。例えば、本発明の化合物の同位体バリアントは、追加の有用性、例えば以
下に限定されないが、診断及び/若しくは画像化試薬として、又は細胞傷害性/放射性毒性
治療剤としての有用性を見出すことができる。さらに、本発明の化合物の同位体バリアン
トは、治療中の安全性、忍容性、又は効力の増強に寄与し得る変化した薬物動態特性及び
薬力学特性を有することができる。本発明の化合物の全ての同位体バリエーションは、放
射性であろうとなかろうと、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0030】
用語「患者」又は「対象」は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を指すために互
換的に使用される。
【0031】
用語「投与」、「投与する」などは、それらが例えば対象、細胞、組織、臓器又は体液
に適用される場合、例えばA2aR/A2bRの阻害剤(又は、本明細書に記載される別の阻害剤又
はアンタゴニスト)又はそれを含む医薬組成物の、対象、細胞、組織、臓器又は体液への
接触を指す。細胞との関連で、投与は試薬の細胞への接触(例えば、in vitro又はex vivo
の)、並びに試薬の液体への接触を含み、ここで液体は細胞と接触している。
【0032】
用語「処置する」、「処置すること」、「処置」などは、対象を侵す疾患、障害若しく
は状態の根底にある原因の少なくとも1つ、又は対象を侵す疾患、障害、状態に関連した
症状の少なくとも1つを一時的又は恒久的に排除、低減、抑制、軽減又は改善するために
、疾患、障害又は状態又はその症状が診断、観察された後などに開始される一連の行動(
例えば、本明細書に記載されるA2aR/A2bRの阻害剤又は別の阻害剤若しくはアンタゴニス
トを投与すること)を指す。したがって、処置は、活動性の疾患を阻止すること(例えば、
疾患、障害又は状態又はそれに関連した臨床症状の発生又はさらなる発達を抑えること)
を含む。
【0033】
本明細書で使用される用語「処置を必要とする」は、対象が処置を必要とするか又はそ
の恩恵を受けるという医師又は他の看護人による判断を指す。この判断は、医師又は看護
人の専門知識の領域内にある様々な因子に基づいてなされる。
【0034】
用語「予防する」、「予防すること」、「予防」などは、一般的に特定の疾患、障害又
は状態の素因を有する対象との関連で、疾患、障害、状態などを起こす対象のリスクを一
時的又は恒久的に予防、抑制、阻止若しくは低減するか(例えば、臨床症状の不在で決定
される)又はその発症を遅らせるような方法で(例えば、疾患、障害、状態又はその症状の
発症前に)開始される一連の行動(例えば、本明細書に記載されるA2aR/A2bR阻害剤又は別
の阻害剤若しくはアンタゴニストを投与すること)を指す。ある特定の場合には、これら
の用語は、疾患、障害若しくは状態の進行を遅らせること、又は有害であるかさもなけれ
ば望ましくない状態へのその進行を阻止することも指す。
【0035】
本明細書で使用される用語「予防を必要とする」は、対象が予防的医療を必要とするか
又はその恩恵を受けるという医師又は他の看護人による判断を指す。この判断は、医師又
は看護人の専門知識の領域内にある様々な因子に基づいてなされる。
【0036】
「治療的有効量」という語句は、対象へ投与したときに疾患、障害又は状態の任意の症
状、態様又は特徴に任意の検出可能な正の効果を及ぼすことが可能な量での、単独での又
は医薬組成物の一部としての、及び単回投与での又は一連の投与の一部としての対象への
薬剤の投与を指す。治療的有効量は関連する生理的効果を測定することによって確認する
ことができ、それは投薬レジメン及び対象の状態などの診断分析に関連して調整すること
ができる。例として、投与後の特定の時間のA2aR/A2bR阻害剤(又は、例えば本明細書に記
載される別の阻害剤又はアンタゴニスト)の血清レベルの測定は、治療的有効量が使用さ
れたかどうかの指標となることができる。
【0037】
「変化をもたらすのに十分な量で」という語句は、特定の療法の投与の前(例えば、ベ
ースラインレベル)及び後に測定される指標のレベルの間に検出可能な差があることを意
味する。指標には、任意の客観的なパラメーター(例えば、血清濃度)又は主観的なパラメ
ーター(例えば、対象の健康感覚)が含まれる。
【0038】
用語「小分子」は、約10kDa未満、約2kDa未満又は約1kDa未満の分子量を有する化合物
を指す。小分子には、限定されずに、無機分子、有機分子、無機の構成成分を含有する有
機分子、放射性原子を含む分子及び合成分子が含まれる。治療上、小分子は大分子より細
胞に透過性であり、分解に感受性でなく、免疫応答を導き出す可能性が低い。
【0039】
用語「リガンド」は、例えば、受容体のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する
ことができるペプチド、ポリペプチド、膜関連若しくは膜結合分子、又はその複合体を指
す。リガンドは天然及び合成のリガンド、例えば、サイトカイン、サイトカイン変異体、
類似体、突然変異タンパク質(mutein)及び抗体に由来する結合性組成物、並びに小分子を
包含する。この用語は、アゴニストでもアンタゴニストでもないが、その生物学的特性、
例えば、シグナル伝達又は接着に有意に影響することなく受容体に結合することができる
薬剤も包含する。さらに、この用語は、例えば化学的又は組換え方法によって膜結合リガ
ンドの可溶性バージョンに変更された膜結合リガンドを含む。リガンド又は受容体は完全
に細胞内であってよく、すなわち、それはサイトゾル、核又は一部の他の細胞内コンパー
トメントに存在することができる。リガンド及び受容体の複合体は、「リガンド-受容体
複合体」と呼ばれる。
【0040】
用語「阻害剤」及び「アンタゴニスト」又は「活性化因子」及び「アゴニスト」は、例
えば、リガンド、受容体、補因子、遺伝子、細胞、組織又は臓器の活性化などのための阻
害性又は活性化作用の分子をそれぞれ指す。阻害剤は、例えば、遺伝子、タンパク質、リ
ガンド、受容体又は細胞を減少、ブロック、阻止、活性化を遅延、不活化、脱感作又は下
方制御する分子である。活性化因子は、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体
又は細胞を増加、活性化、促進、活性化を増強、感作又は上方制御する分子である。阻害
剤は、構成的活性を低減、ブロック又は不活性化する分子として規定することもできる。
「アゴニスト」は、標的と相互作用して標的の活性化の増加を引き起こすか促進する分子
である。「アンタゴニスト」は、アゴニストの作用に対抗する分子である。アンタゴニス
トは、アゴニストの活性を阻止、低減、阻害又は中和し、アンタゴニストは、特定された
アゴニストがない場合でさえも標的、例えば標的受容体の構成的活性を阻止、阻害又は低
減することもできる。
【0041】
用語「モジュレートする」、「モジュレーション」などは、本明細書に記載されるアデ
ノシン関連タンパク質の機能又は活性を直接的又は間接的に増減する分子(例えば、活性
化因子又は阻害剤)の能力を指す。モジュレーターは単独で作用することができるか、又
はそれは補因子、例えばタンパク質、金属イオン又は小分子を使用することができる。モ
ジュレーターの例には、小分子化合物及び他の生物有機化学分子が含まれる。小分子化合
物の多数のライブラリー(例えば、コンビナトリアルライブラリー)が市販されており、モ
ジュレーターを特定するための出発点の役割をすることができる。当業者は、所望の特性
を有する1つ以上の化合物を特定するためにそのような化合物ライブラリーをスクリーニ
ングすることができる、1つ以上のアッセイ(例えば、生化学的又は細胞をベースとしたア
ッセイ)を開発することができる。その後、熟練薬学者は、例えばその類似体及び誘導体
を合成して評価することによって、そのような1つ以上の化合物を最適化することができ
る。活性化因子の特定において、合成及び/又は分子モデリング研究を利用することもで
きる。
【0042】
分子の「活性」は、分子のリガンド又は受容体への結合、触媒活性、遺伝子発現又は細
胞のシグナル伝達、分化若しくは成熟を刺激する能力、抗原活性、他の分子の活性のモジ
ュレーションなどを記載するか指すことができる。用語「増殖活性」は、例えば正常な細
胞分裂並びにがん、腫瘍、形成異常、細胞形質転換、転移及び血管新生を促進するか、そ
のために必要であるか、それと特異的に関連する活性を包含する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「同等の」、「同等の活性」、「と同等の活性」、「同等
の効果」、「と同等の効果」などは、定量的及び/又は定性的に見ることができる相対語
である。これらの用語の意味は、それらが使用される状況に頻繁に依存する。例として、
両方が1つの受容体を活性化する2つの薬剤は、定性的観点から同等の効果を有すると見る
ことができるが、当技術分野認定のアッセイ(例えば、用量反応アッセイ)又は当技術分野
認定の動物モデルで決定される通り、1つの薬剤が他の薬剤の活性の20%を達成することが
できるだけであるならば、2つの薬剤は定量的観点から同等の効果が欠如していると見る
ことができる。1つの結果を別の結果と(例えば、1つの結果を参照標準と)比較する場合、
「同等」は、1つの結果が参照標準から35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、
10%未満、7%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満それることを頻繁に(常に
ではないが)意味する。特定の実施形態では、それが参照標準から15%未満、10%未満又は5
%未満それる場合、1つの結果は参照標準と同等である。一例であり、限定するものではな
いが、活性又は効果は、有効性、安定性、溶解性又は免疫原性を指すことができる。
【0044】
「実質的に純粋な」は、構成成分が組成物の全含有量の約50%より多く、及び一般的に
全ポリペプチド含有量の約60%より多くを占めることを示す。より一般的には、「実質的
に純粋な」は、全組成物の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%又はそれより
多くが目的の構成成分である組成物を指す。一部の場合には、ポリペプチドは組成物の全
含有量の約90%より多く、又は約95%より多くを占める。
【0045】
用語「特異的に結合する」又は「選択的に結合する」は、リガンド/受容体、抗体/抗原
又は他の結合対を指す場合、タンパク質及び他の生物物質の不均一集団中のタンパク質の
存在の決定因子である結合反応を示す。したがって、指定された条件下で、特定のリガン
ドは特定の受容体に結合し、試料中に存在する他のタンパク質には有意な量で結合しない
。企図された方法の抗体又は抗体の抗原結合性部位に由来する結合性組成物は、その抗原
、又はその変異体若しくは突然変異タンパク質に、任意の他の抗体又はそれに由来する結
合性組成物による親和性よりも少なくとも2倍大きいか、少なくとも10倍大きいか、少な
くとも20倍大きいか、少なくとも100倍大きい親和性で結合する。特定の実施形態では、
抗体は、例えばスキャッチャード分析によって決定される通り、約109リットル/molを超
える親和性を有する(Munsen, et al. 1980 Analyt. Biochem. 107:220-239)。
【0046】
例えば細胞、組織、臓器又は生物体の「応答」という用語は、生化学的又は生理的挙動
、例えば、生物学的コンパートメントの中の、濃度、密度、接着又は移動、遺伝子発現率
又は分化状態の変化を包含し、ここで、変化は活性化、刺激又は処置と、又は遺伝的プロ
グラミングなどの内部機構と相関している。ある特定の状況では、用語「活性化」、「刺
激」などは、内部機構並びに外部又は環境の因子によって調節される細胞活性化を指し、
用語「阻害」、「下方制御」などは反対の効果を指す。
【0047】
用語「がん遺伝子によって促進されるがん」は、突然変異した正常な細胞増殖に関与す
る少なくとも1つの遺伝子を有することによって特徴付けられる様々な悪性新生物を指す
。正常な細胞増殖に関与する遺伝子には、限定されずに、KRAS、BRAF、MET、FUBP1、RAC1
、EGFR、CDK4、CTCF、PGR、RET、RASA1、JAK1、PHF6、NF1、CIC、ARID1A、ZFHX3、ZCCHC1
2、GNA11、SMAD4、USP9X、CDKN2A、FAT1、PIK3R1、SCAF4、PMS2、RNF43、SMC1A、BCOR、F
GFR2、COL5A1、ATM、KMT2B、CTNNB1、MYC、RAD21、PTEN、AXL、HIF1/2A、PAK4、RHOB、TB
L1XR1、KEAP1、ZFP36L2、FGFR3、FOXA1、FLT3、TRAF3、RNF111、PPP2R1A、TXNIP、STAG2
、RIT1、TGIF1、FOXQ1、ATR、CYSLTR2、PCBP1、PIK3R2、ASXL1、HIST1H1C、KLF5、PIK3CB
、SPOP、MECOM、CACNA1A、CTNND1、DACH1、XPO1、ZNF750、FBXW7、MUC6、KDM6A、GATA3、
ZBTB20、PIK3CA、RB1、SOX17、SMARCA4、KIT、CHD8、CHD4、及びAPOBが含まれる。正常な
細胞増殖に関与する遺伝子における突然変異は、アデノシンの細胞外産生に関与する1つ
以上のタンパク質の発現レベル、及び/又は1つ以上のアデノシン受容体シグナル伝達タン
パク質の発現レベルをしばしば変更する。これらのタンパク質には、限定されずに、アデ
ノシンA2a受容体(A2aR)、アデノシンA2b受容体(A2bR)、アデノシンA1受容体(A1R)、組織
非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)、CD73、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ
/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)、CD38及び/又はCD39が含まれる。
【0048】
用語「アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤」は、アデノシンの細胞外産生に関与
する1つ以上のタンパク質のモジュレーターを指す。モジュレーターの例には、小分子化
合物、抗体及び干渉RNAが含まれる。アデノシンの細胞外産生に関与するタンパク質には
、限定されずに、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)、CD73、エクトヌクレオチ
ドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)、CD38及び/又はCD39が含まれる。
したがって、これらのタンパク質を標的にすることが公知であるモジュレーターは、現開
示に関連する。
【0049】
用語「アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤」は、アデノシンが
、アデノシン受容体タンパク質、しばしば内在性膜タンパク質に結合することを低減する
か完全に阻止するアンタゴニストを指す。アデノシンによって活性化されるタンパク質受
容体には、限定されずに、アデノシンA1受容体(A1R)、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/
又はアデノシンA2b受容体(A2bR)が含まれる。したがって、これらの受容体を標的にする
ことが公知であるアンタゴニストは、現開示に関連する。
【0050】
III.実施形態の詳細な記載
本明細書では、例えば、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象
の方法であって、前記対象に、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はアデ
ノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤を投与することを含む方法が提供
される。
【0051】
がん遺伝子によって促進されるがん
がん遺伝子によって促進されるがんは、突然変異した正常な細胞増殖に関与する少なく
とも1つの遺伝子を有することによって特徴付けられる様々な悪性新生物を指す。本明細
書で実証されるように、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の汎がん分析は、がん遺伝子に
よって促進されるがんにおける特定の突然変異がん遺伝子は、アデノシン経路のタンパク
質並びにアデノシン受容体シグナル伝達タンパク質の調節因子として作用し、それらの発
現レベルを変更することを実証する。前述の通り、腫瘍微小環境におけるアデノシンレベ
ルの増加及び/又は特定のアデノシン媒介シグナル伝達経路の過剰活性化は、免疫抑制効
果を提供する。したがって、本明細書に記載される方法は、対象でがん遺伝子によって促
進されるがんに基づいて療法への対象の応答を向上させる好適な処置オプションを有利に
特定することによって、医師を支援する。
【0052】
多くのがん遺伝子が知られており、本開示により、特定のがん遺伝子と、アデノシンの
細胞外産生に関与するタンパク質の変化した発現レベル及び/又は1つ以上のアデノシン受
容体シグナル伝達タンパク質の変化した発現レベルとの間の関係を立証する。したがって
、本明細書に記載の処置に適した対象には、KRAS、BRAF、MET、FUBP1、RAC1、EGFR、CDK4
、CTCF、PGR、RET、RASA1、JAK1、PHF6、NF1、CIC、ARID1A、ZFHX3、ZCCHC12、GNA11、SM
AD4、USP9X、CDKN2A、FAT1、PIK3R1、SCAF4、PMS2、RNF43、SMC1A、BCOR、FGFR2、COL5A1
、ATM、KMT2B、CTNNB1、MYC、RAD21、PTEN、AXL、HIF1/2A、PAK4、RHOB、TBL1XR1、KEAP1
、ZFP36L2、FGFR3、FOXA1、FLT3、TRAF3、RNF111、PPP2R1A、TXNIP、STAG2、RIT1、TGIF1
、FOXQ1、ATR、CYSLTR2、PCBP1、PIK3R2、ASXL1、HIST1H1C、KLF5、PIK3CB、SPOP、MECOM
、CACNA1A、CTNND1、DACH1、XPO1、ZNF750、FBXW7、MUC6、KDM6A、GATA3、ZBTB20、PIK3C
A、RB1、SOX17、SMARCA4、KIT、CHD8、CHD4、及びAPOBからなる群から選択される少なく
とも1つの遺伝子に突然変異を有する、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特
定された対象が含まれる。
【0053】
一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が
、KRAS、BRAF、MET、FUBP1、RAC1、EGFR、CDK4、CTCF、PGR、RET、RASA1、JAK1、PHF6、N
F1、CIC、ARID1A、ZFHX3、ZCCHC12、GNA11、SMAD4、USP9X、CDKN2A、FAT1、PIK3R1、SCAF
4、PMS2、RNF43、SMC1A、BCOR、FGFR2、COL5A1、ATM、KMT2B、CTNNB1、MYC、RAD21、PTEN
、AXL、HIF1/2A、及びPAK4からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異
を有する。
【0054】
一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が
、EGFR、KRAS、BRAF、MET、FUBP1、CDK4、CTCF、PGR、RET、RASA1、JAK1、NF1、CIC、ARI
D1A、ZFHX3、SMAD4、USP9X、CDKN2A、FAT1、及びATMからなる群から選択される少なくと
も1つの遺伝子に突然変異を有する。
【0055】
一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が
、MYC、PMS2、CTNNB1及びSMAD4からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然
変異を有する。
【0056】
一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が
、KRAS、BRAF、RASA1、AXL、HIF1/2A、PAK4及びRAC1からなる群から選択される少なくと
も1つの遺伝子に突然変異を有する。
【0057】
一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定された対象が
、EGFR、KRAS及びBRAFからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子に突然変異を有
する。
【0058】
上記のがん遺伝子中の突然変異は、公知の検査技術及び市販キットを使用して試験し、
特定することができる。例えば、SNPアレイ、Foundation MedicineによるFoundation One
試験、RNAシークエンシング又は全ゲノム/エクソームシークエンシング。これらの突然変
異は、変異体コーリングアルゴリズム、例えばMutect2、Varscan、RADIA等(Ellrott K et
.al Cell Systems 2018)のような複数のモダリティーを使用して特定することができる。
【0059】
一部の実施形態では、本開示は、がん遺伝子によって促進されるがんを有すると特定さ
れた対象を、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤、及び/又はアデノシンによるそ
の受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤と、その例は本明細書の他の場所で示される少な
くとも1つの追加の治療薬によって処置する方法を提供する。
【0060】
一部の実施形態では、がんはPD-1及び/又はPD-L1処置に非応答性である。
【0061】
アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤
一部のタンパク質が体内でアデノシンの細胞外産生に関与することが公知である。例え
ば、細胞外アデノシンの生成につながる優占経路は、ATPをADPに、次にAMPに加水分解す
るCD39、及びAMPをアデノシンに加水分解するCD73によるATPの逐次的な脱リン酸である。
TNAPは、AMPからのアデノシンの産生に同じく寄与する。細胞外アデノシンの生成につな
がる代わりの機構は、CD38によるADPRへのNAD+の加水分解及びENPP1によるAMPへのADPRの
加水分解である。ENPP1は、NAD+を加水分解してAMPを産生することもできる。したがって
、アデノシンの細胞外産生に関与するタンパク質には、限定されずに、組織非特異的アル
カリホスファターゼ(TNAP)、CD73、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエ
ステラーゼ1(ENPP1)、CD38及び/又はCD39が含まれる。前述のように、1つ以上のがん遺伝
子における突然変異は、アデノシンの産生に関与する1つ以上のタンパク質の発現レベル
を変更することができる。したがって、アデノシンの産生に関与するタンパク質の活性を
モジュレートすることができる薬剤は、がん遺伝子によって促進されるがんによって引き
起こされる変更されたタンパク質発現及びアデノシンレベルの増加の影響を低減又は排除
するために使用することができるので有用である。
【0062】
本明細書で企図されるように、本開示は、アデノシンの細胞外産生を標的にする1つ以
上の薬剤を使用して、対象においてがん遺伝子によって促進されるがんを処置する方法を
提供する。
【0063】
組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)阻害剤。いくつかのTNAP阻害剤が、当技術
分野で公知である。一部の実施形態では、記載される方法において有用なTNAP阻害剤は、
各々の内容が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、WO/2013/126608、
WO/2006/039480又はWO/2002/092020に開示される薬剤である。
【0064】
CD73阻害剤。一部の実施形態では、記載されている方法に有用なCD73阻害剤は、式(i)
の化合物:
【0065】
【化1】
又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物であり、
式中、
各R1は、水素、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル、必要に応じて置換されたアリー
ル及び-C(R2R2)-O-C(O)-OR3からなる群から独立して選択されるか、又は2つのR1基は必要
に応じて組み合わされて5~7員環を形成し、
各R2は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独立して選択され

各R3は、H、C1~C6アルキル及び必要に応じて置換されたアリールからなる群から独立し
て選択され、
R5は、H及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から選択され、
XはO、CH2及びSからなる群から選択され、
Aは以下からなる群から選択され:
【0066】
【化2】
その各々は1~5つのR6置換基で必要に応じて置換されており、
式中、下付き文字nは0から3の整数であり、
Zは、CH2、CHR6、NR6及びOからなる群から選択され、
各R6は、H、CH3、OH、CN、F、必要に応じて置換されたC1~C6アルキル及びOC(O)-C1~C6
アルキルからなる群から独立して選択され、必要に応じて隣接した環頂点上の2つのR6
は連結されて、環頂点として少なくとも1つのヘテロ原子を有する5~6員環を形成し、
Hetは以下からなる群から選択され:
【0067】
【化3】
式中、波線は化合物の残部への結合点を示し:
Raは、H、NH2、NHR7、NHC(O)R7、NR7R7、R7、OH、SR7及びOR7からなる群から選択され、
Rbは、H、ハロゲン、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH及びOR7からなる群から選択され、
Rc及びRdは、H、ハロゲン、ハロアルキル、NH2、NHR7、NR7R7、R7、OH、OR7、SR7、SO2R7
、-X1-NH2、-X1-NHR7、-X1-NR7R7、-X1-OH、-X1-OR7、-X1-SR7及び-X1-SO2R7からなる群
から独立して選択され、
Re及びRfは、H、ハロゲン及び必要に応じて置換されたC1~C6アルキルからなる群から独
立して選択され、
各X1はC1~C4アルキレンであり、
各R7は、必要に応じて置換されたC1~C10アルキル、必要に応じて置換されたC2~C10アル
ケニル、必要に応じて置換されたC2~C10アルキニル、必要に応じて置換されたC3~C7
クロアルキル、必要に応じて置換されたC3~C7シクロアルキルC1~C4アルキル、必要に応
じて置換された4~7員環のシクロヘテロアルキル、必要に応じて置換された4~7員環のシ
クロヘテロアルキルC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置
換されたアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルケニル、
必要に応じて置換されたアリールC2~C4アルキニル、必要に応じて置換されたヘテロアリ
ール、必要に応じて置換されたヘテロアリールC1~C4アルキル、必要に応じて置換された
ヘテロアリールC1~C4アルケニル、必要に応じて置換されたヘテロアリールC2~C4アルキ
ニルからなる群から独立して選択され、必要に応じて窒素原子に結合する2つのR7基は連
結されて、必要に応じてアリール環に融合される4~7員環の複素環を形成し、
但し、これらの化合物は、X、A及びHetの組合せが
【0068】
【化4】
をもたらす化合物以外のものであり、
式中、RgはHであるか又は2つのRg基が組み合わされてアセトニドを形成し、かつ、
(1) Rc及びReは水素であり、Raは-OEt、-OCH2Ph、-SCH2Ph、-NH2、メチルアミノ、エチル
アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、フェニルアミノ
、ベンジルアミノ、2-フェニルエチルアミノ、N-ベンジル-N-エチルアミノ、ジベンジル
アミノ、4-アミノベンジルアミノ、4-クロロベンジルアミノ、4-ニトロベンジルアミノ若
しくは4-スルファモイルベンジルアミノであるか、又は
(2) Rcは水素であり、Raは-NH2であり、Reはブロモ、クロロ、アミノメチル又はチオエチ
ルであるか、又は
(3) Rcは水素であり、Raはベンジルアミノであり、Reはブロモである。
【0069】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は化合物A:
【0070】
【化5】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0071】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は化合物B:
【0072】
【化6】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0073】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は化合物C:
【0074】
【化7】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0075】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は、その内容が全ての目的のために参照により本明細
書に組み込まれる、米国特許出願公開第2017/0267710号(2017年6月6日に出願の米国特許
出願第15/400,748号を参照)に記載される分子である。
【0076】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は、その各々の内容が全ての目的のために参照により
本明細書に組み込まれる、WO2015/164573、WO2017/120508、WO2018/183635、WO2018/0941
48、WO2018/119284、WO2018/183635、WO2018/208727、WO2018/208980、WO2017/098421、W
O2017/153952に開示される薬剤である。
【0077】
一部の実施形態では、CD73阻害剤は、オレクルマブ(MEDI-9447)、CPI-006、NZV930/SRF
373、BMS-986179又はTJ4309である。
【0078】
エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)阻害剤。一部
の実施形態では、記載される方法で有用なエクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホス
ホジエステラーゼ1(ENPP1)阻害剤は、MV-626である。
【0079】
一部の実施形態では、記載される方法で有用なENPP1阻害剤は、その内容が全ての目的
のために参照により本明細書に組み込まれる、WO2019/023635に開示される薬剤である。
【0080】
CD38阻害剤。一部の実施形態では、記載される方法で有用なCD38阻害剤は、ダラツムマ
ブ又はイサツキシマブである。
【0081】
一部の実施形態では、CD38阻害剤は、その各々の内容が全ての目的のために参照により
本明細書に組み込まれる、WO/2019/034753、US2018/0298106、WO2019/034752に開示され
る薬剤である。
【0082】
CD39阻害剤。CD39は、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ-1としても知
られる。一部の実施形態では、記載される方法で有用なCD39阻害剤は、IPH5201、SRF617
又はTTX-030である。
【0083】
一部の実施形態では、CD39阻害剤は、その各々の内容が全ての目的のために参照により
本明細書に組み込まれる、WO2012/085132、WO2017/089334、WO2009/095478、WO2011/1544
53及びWO2018/224685に開示される薬剤である。
【0084】
本開示は、上記のいずれかの薬学的に許容される塩又は誘導体を包含する。
【0085】
アデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤
細胞外アデノシンによって活性化されるいくつかの受容体が体内にある。すなわち、ア
デノシンの結合は、酵素活性を開始し、及び/又は細胞シグナルを伝播させる。アデノシ
ンによる活性化は、4つのG共役アデノシン受容体: A1、A2a、A2b及びA3を通して起こる。
アデノシンはA2a受容体(T細胞上で主に発現される)及びA2b受容体(骨髄細胞上で発現され
る)を通して主にシグナル伝達し、それはアデノシンによって刺激されてT細胞活性化の悪
化につながる。あまり理解されていないが、A1受容体は乳房、結腸及び胃のがんなどのが
んの病因に関与することが報告されており、A3受容体は結腸直腸及び乳がんに関与するこ
とが報告されている。腫瘍微小環境におけるアデノシンによるこれらの受容体の1つ以上
の過剰活性化は、免疫抑制効果につながることがある。したがって、これらの受容体への
アデノシンの結合をブロックするかさもなければ阻止することができるアンタゴニストは
、がん遺伝子によって促進されるがんの処置で有用である。関連する受容体には、限定さ
れずに、アデノシンA1受容体(A1R)、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b
受容体、及びアデノシンA3受容体(A3R)が含まれる。
【0086】
本明細書で企図されるように、本開示は、アデノシンによるその受容体の1つの活性化
に拮抗する1つ以上の薬剤を使用して、がん遺伝子によって促進されるがんを処置する方
法を提供する。
【0087】
アデノシンA1受容体(A1R)アンタゴニスト。一部の実施形態では、記載される方法で有
用なA1Rアンタゴニストは、FK352、KW-3902(Rolofylline)、SLV320、BG9719(CVT-124)又
はBG9928(Adentri)である。
【0088】
アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体アンタゴニスト。一部の実
施形態では、記載されている方法で使用され得るアデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はア
デノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴニストは式(I)の化合物
【0089】
【化8】
又は薬学的に許容されるその塩、水和物若しくは溶媒和物であり、
式中、
G1はN又はCR3aであり、
G2はN又はCR3bであり、
G3はN又はCR3cであり、
R3a、R3b及びR3cの各々は独立してH又はC1~3アルキルであり、
R1a及びR1bは、
i) H
ii) 1~3つのR5置換基で必要に応じて置換されたC1~8アルキル、
iii) 1~3つのR5置換基で必要に応じて置換されたX1-O-C1~8アルキル、
iv) -C-(O)R6
v) 1~3つのR7置換基で必要に応じて置換されたY、及び
vi) 1~3つのR7置換基で必要に応じて置換されたX1-Y、
からなる群から各々独立して選択されるか、又は
vii) R1a及びR1bは、それらが結合する窒素と一緒に1~3つのR8置換基で必要に応じ
て置換された5~6員環のヘテロシクロアルキル環を形成し、ヘテロシクロアルキルはO、N
及びSからなる群から選択される0~2つの追加のヘテロ原子環頂点を有し、
各YはC3~8シクロアルキル又は、O、N及びSからなる群から選択される1~3つのヘテロ
原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキルであり、
R2及びR4は各々独立してH又はC1~3アルキルであり、
Ar1はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR9で必要に
応じて置換されており、
Ar2はフェニル又は5~6員環のヘテロアリールであり、それぞれは1~3つのR10で必要に
応じて置換されており、
Ar1及びAr2の5~6員環のヘテロアリールはO、N及びSからなる群から選択される1~3つ
のヘテロ原子環頂点を各々独立して有し、
各X1はC1~6アルキレンであり、
各R5はヒドロキシル、C3~8シクロアルキル、フェニル、-O-フェニル、-C(O)ORa及びオ
キソからなる群から独立して選択され、
各R6はC1~8アルキル又はYであり、それぞれはヒドロキシル、-O-フェニル、フェニル
及び-O-C1~8アルキルからなる群から選択される1~3つの置換基で必要に応じて置換され
ており、
各R7はC1~8アルキル、ヒドロキシル、-O-C1~8アルキル、オキソ及びC(O)ORaからなる
群から独立して選択され、
各R8はC1~8アルキル、ヒドロキシル及びオキソからなる群から独立して選択され、
各R9は、C1~8アルキル、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-O-X1-O-C1~8
ルキル、-X1-O-X1-O-C1~8アルキル、-C(O)ORa、ハロゲン、シアノ、-NRbRc、Y、-X1-C3
~8シクロアルキル及び-X2-Zからなる群から独立して選択され、X2はC1~6アルキレン、-
C1~6アルキレン-O-、-C(O)-及び-S(O)2-からなる群から選択され、ZはO、N及びSからな
る群から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロシクロアルキル
であり、前記R9置換基の各々は1~3つのR11で必要に応じて置換されており、
各R10は、C1~8アルキル、ハロ、シアノ、-O-C1~8アルキル、-X1-O-C1~8アルキル、-
O-X1-O-C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)NRdRe、及びO、N及びSからなる群
から選択される1~3つのヘテロ原子環頂点を有する4~6員環のヘテロアリールからなる群
から独立して選択され、前記R10置換基の各々は1~3つのR12で必要に応じて置換されてい
るか、又はAr2の隣接した環頂点上の2つのR10は必要に応じて組み合わされて1~2つのハ
ロゲンで必要に応じて置換された5員環の複素環を形成し、
各R11は、ヒドロキシル、ハロ、シアノ、-NRdRe、-C(O)ORa、フェニル、C3~8シクロア
ルキル、及びC(O)ORaで必要に応じて置換されたC1~4アルキルからなる群から独立して選
択され、
各R12は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、-C(O)ORaからなる群から独立して選択され、
各RaはH又はC1~6アルキルであり、
各Rb及びRcは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキル、-C(O)ORa及び-X1-C(O)ORa
からなる群から独立して選択され、
各Rd及びReは、H、C1~8アルキル、-S(O)2-C1~6アルキルからなる群から独立して選択
され、
但し、G1及びG2が各々Nであり、G3がCHであり、R2がCH3であり、R1a及びR1bが各々Hで
ある場合、Ar2は2-チエニル、フェニル、2-、3-若しくは4-メトキシフェニル、3-若しく
は4-ハロフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,4-ジクロロフェニル又は2-若しくは4-メ
チルフェニル以外である。
【0090】
一部の実施形態では、アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アン
タゴニストは化合物1
【0091】
【化9】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0092】
一部の実施形態では、アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アン
タゴニストは化合物2
【0093】
【化10】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0094】
一部の実施形態では、アデノシンA2a受容体(A2aR)又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アン
タゴニストは化合物3
【0095】
【化11】
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0096】
一部の実施形態では、アデノシンA2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR
)アンタゴニストは、米国特許出願公開第2018/0215730号(その内容が全ての目的のために
参照により本明細書に組み込まれる、2018年6月19日に出願の米国特許出願第15/875,106
号も参照)に記載される分子である。
【0097】
一部の実施形態では、A2a受容体(A2aR)及び/又はアデノシンA2b受容体(A2bR)アンタゴ
ニストは、AZD4635、シフォラデナント(CPI-444)、NIR178又はPBF-1129である。
【0098】
アデノシンA3受容体(A3R)アンタゴニスト。一部の実施形態では、記載される方法で有
用なA3Rアンタゴニストは、その各々の内容が全ての目的のために参照により本明細書に
組み込まれる、WO2007/063539A1、US2003/0078232に記載される分子である。
【0099】
がんのタイプ
当業者は、同じタンパク質によって引き起こされるがん遺伝子によって促進されるがん
は、体の異なる部分で及び異なる細胞型で生じることができることを認める。このような
場合には、2つの異なる細胞型又は体の異なる部分における同じタンパク質の突然変異は
、異なるタイプのがんであるがん遺伝子によって促進されるがんをもたらすことができる
。療法を導くためにアデノシンの産生に関与するタンパク質の発現レベルと特定のがん遺
伝子における特定の突然変異の間の関係を使用して、本開示は、がんの特定のタイプに限
定されない方法を提供する。したがって、本開示は、前立腺、結腸直腸、膵臓、頸部(cer
vix)、胃、子宮内膜、脳、肝臓、膀胱、卵巣、精巣、頭部、首、皮膚(黒色腫及び基底癌
を含む)、中皮内膜(mesothelial lining)、白血球(リンパ腫及び白血病を含む)、食道、
乳房(トリプルネガティブ乳がんを含む)、筋肉、結合組織、肺(小細胞肺癌及び非小細胞
肺癌を含む)、副腎腺、甲状腺、腎臓又は骨のがん、神経膠芽腫、中皮腫、腎細胞癌、胃
癌、肉腫(カポジ肉腫を含む)、絨毛癌、皮膚基底細胞癌及び精巣セミノーマを限定されず
に含む、いくつかの異なるがんタイプの処置で有用である。
【0100】
一部の実施形態では、本開示は、がん遺伝子によって促進されるがんの特定のタイプを
有すると特定された対象を、アデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤、及び/又はアデ
ノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤、並びにその例が本明細書の他の
場所で示される少なくとも1つの追加の治療薬によって処置する方法を提供する。
【0101】
本開示の一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんは、黒色腫、結腸が
ん、膵がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、肉腫、卵巣がん
、頭頸部がん、子宮頸がん又はカポジ肉腫である。
【0102】
本開示の一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんは、甲状腺、副腎腺
、中皮内膜、胆管、膵臓、脳、腎臓、食道、直腸、結腸、胃、頭部、首、皮膚、精巣、卵
巣、肺、子宮内膜、目、前立腺、乳房又は肝臓のがん、又は神経膠芽腫、中皮腫若しくは
肉腫である。
【0103】
本開示の一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんは、精巣、卵巣、肺
、子宮内膜又は副腎腺のがんである。
【0104】
本開示の一部の実施形態では、がん遺伝子によって促進されるがんは、目、前立腺、乳
房、腎臓、肝臓又は肺のがんである。
【0105】
併用療法
本開示は、本明細書に記載される治療剤の単独使用、又は1つ以上の活性治療剤との併
用を企図する。追加の活性治療剤は、小さい化学分子、巨大分子、例えば、タンパク質、
抗体、ペプチボディ、ペプチド、DNA、RNA、又はそのような巨大分子の断片、又は細胞若
しくは遺伝子療法であってよい。そのような併用療法では、様々な活性薬剤は、異なる相
補的作用機構をしばしば有する。そのような併用療法は、薬剤の1つ以上の用量低減を可
能にし、それによって薬剤の1つ以上と関連する有害作用を低減又は排除することによっ
て特に有利であるかもしれない。さらに、そのような併用療法は、根底にある疾患、障害
又は状態に対して相乗的な治療又は予防効果を及ぼすことができる。
【0106】
本明細書で使用される場合、「併用」は、別々に投与することができる、例えば、別々
の投与のために別々に製剤化することができる(例えば、キットで提供され得る)療法、及
び単一の製剤で一緒に投与する(すなわち、「共製剤」)ことができる療法を含むことを意
味する。
【0107】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される治療剤は逐次的に投与又は適用される
、例えば、1つの薬剤は1つ以上の他の薬剤の前に投与される。他の実施形態では、本明細
書に記載される治療剤は同時に投与され、例えば、2つ以上の薬剤が同時又はほぼ同時に
投与され、その2つ以上の薬剤は2つ以上の別々の製剤に存在することができるか、単一の
製剤に併合する(すなわち、共製剤)ことができる。2つ以上の薬剤が逐次的に投与される
か又は同時に投与されるかを問わず、それらは本発明のために併用投与されるとみなされ
る。
【0108】
本開示のアデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はアデノシンによるその受
容体の1つの活性化に拮抗する薬剤は、その状況下で適当な任意の方法で少なくとも1つの
他の(活性)薬剤と併用することができる。一実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤及
び本明細書に記載される少なくとも1つの治療剤による処置は、ある期間にわたって維持
される。別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置は低減又は中止され(例
えば、対象が安定している場合)、本明細書に記載される治療剤による処置は一定の投薬
レジメンで維持される。さらなる実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置は
低減又は中止され(例えば、対象が安定している場合)、本明細書に記載される治療剤によ
る処置は低減される(例えば、より低い用量、より低い頻度の投薬又はより短い処置レジ
メン)。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置は低減又は中止さ
れ(例えば、対象が安定している場合)、本明細書に記載される治療剤による処置は増加さ
れる(例えば、より高い用量、より高い頻度の投薬又はより長い処置レジメン)。さらに別
の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による処置は維持され、本明細書に記載され
る治療剤による処置は低減又は中止される(例えば、より低い用量、より低い頻度の投薬
又はより短い処置レジメン)。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤による
処置及び本明細書に記載される治療剤による処置は低減又は中止される(例えば、より低
い用量、より低い頻度の投薬又はより短い処置レジメン)。
【0109】
本開示は、がん遺伝子によって促進されるがんを、アデノシンの細胞外産生を標的にす
る薬剤、及び/又はアデノシンによるその受容体の1つの活性化に拮抗する薬剤及び少なく
とも1つの追加の治療剤若しくは診断薬で処置及び/又は予防する方法を提供する。一部の
実施形態では、追加の治療剤又は診断薬は、放射線、免疫調節剤若しくは化学療法剤、又
は診断薬である。本発明で使用することができる好適な免疫調節剤には、CD4OL、B7及びB
7RP1;刺激性受容体に対する活性化モノクローナル抗体(mAb)、例えば、抗CD40、抗CD38、
抗ICOS及び4-IBBリガンド;樹状細胞抗原ローディング(in vitro又はin vivo);樹状細胞が
んワクチンなどの抗がんワクチン;サイトカイン/ケモカイン、例えば、ILL IL2、IL12、I
L18、ELC/CCL19、SLC/CCL21、MCP-1、IL-4、IL-18、TNF、IL-15、MDC、IFNa/b、M-CSF、I
L-3、GM-CSF、IL-13及び抗IL-10;細菌リポ多糖(LPS);インドールアミン2,3-ジオキシゲナ
ーゼ1(IDO1)阻害剤及び免疫刺激性オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0110】
ある特定の実施形態では、本開示は、シグナル伝達阻害剤(STI)と組み合わせた本明細
書に記載される治療剤の投与を含む。本明細書で使用される場合、用語「シグナル伝達阻
害剤」は、シグナル伝達経路の中の1つ以上のステップを選択的に阻害する薬剤を指す。
本発明のシグナル伝達阻害剤(STI)には、以下のものが含まれる: (i) bcr/ablキナーゼ阻
害剤(例えば、GLEEVEC)、(ii)キナーゼ阻害剤及び抗体を含む上皮増殖因子(EGF)受容体阻
害剤、(iii) her-2/neu受容体阻害剤(例えば、HERCEPTIN)、(iv) Aktファミリーキナーゼ
又はAkt経路の阻害剤(例えば、ラパマイシン)、(v)細胞周期キナーゼ阻害剤(例えば、フ
ラボピリドール)、及び(vi)ホスファチジルイノシトールキナーゼ阻害剤。がん患者で腫
瘍増殖の抑制のために、免疫調節に関与する薬剤を本明細書に記載される治療剤と併用す
ることもできる。
【0111】
化学療法剤の例には、限定されずに、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホス
ファミド;アルキルスルホン酸塩、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポ
スルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ及びウレドパ;ア
ルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオ
ホスホルアミド及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamime)を含むエチレンイミ
ン及びメチラメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラム
ブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、
メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステ
リン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例え
ば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムス
チン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、
アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カミ
ノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、
デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エ
ソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノ
ガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシ
ン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジ
ン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサー
ト及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサー
ト、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メ
ルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビ
ン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、
ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カ
ルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テ
ストラクトン;抗副腎、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補液
、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;ア
ムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコル
チン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;
ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;
ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸; 2-エチルヒ
ドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;
トリアジコン; 2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジ
ン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビ
ノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル及び
ドキセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン; 6-チオグアニン;メルカプトプリン;メト
トレキサート;プラチナ及びプラチナ配位複合体、例えば、シスプラチン、カルボプラチ
ン及びオキサリプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマ
イシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テ
ニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート; CPT11;トポイ
ソメラーゼ阻害剤;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;
カペシタビン;アントラサイクリン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又
は誘導体が含まれる。
【0112】
化学療法剤には、腫瘍へのホルモン作用を調節又は阻害する作用をする抗ホルモン剤、
例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒ
ドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン及びトレ
ミフェンを含む抗エストロゲン;並びに抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド
、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容さ
れる塩、酸又は誘導体も含まれる。ある特定の実施形態では、併用療法は、1つ以上の化
学療法剤を含む化学療法レジメンを含む。ある特定の実施形態では、併用療法は、ホルモ
ン又は関係するホルモン剤の投与を含む。
【0113】
本明細書に記載される治療剤と併用することができる追加の処置モダリティーには、放
射線療法、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体及び毒素の複合体
、T細胞アジュバント、骨髄移植、又は、そのような抗原提示細胞を刺激するために使用
されるTLRアゴニストを含む抗原提示細胞(例えば、樹状細胞療法)が含まれる。
【0114】
ある特定の実施形態では、本開示は、抗腫瘍活性を有する免疫細胞ががん患者に投与さ
れる個人化免疫療法の新規で有望な形である、養子細胞療法と組み合わせた本明細書に記
載される治療剤の使用を企図する。養子細胞療法は、例えばキメラ抗原受容体(CAR)又はT
細胞受容体(TCR)を発現するように工学操作された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びT細胞を使
用して探求されている。養子細胞療法は、個体からT細胞を収集すること、特異抗原を標
的にするかそれらの抗腫瘍効果を増強するためにそれらを遺伝子改変すること、それらを
十分な数まで増幅すること、及びがん患者への遺伝子改変T細胞の注入を一般的に含む。T
細胞は、増量した細胞が後に再注入される患者から収集することができる(例えば、自家)
か、ドナー患者から収集することができる(例えば、同種異系)。
【0115】
ある特定の実施形態では、本開示は、遺伝子発現を抑制するためのRNA干渉に基づく療
法と組み合わせた本明細書に記載される化合物の使用を企図する。RNAiは、より長い二本
鎖RNAの小さい干渉RNA(siRNA)への切断で開始する。siRNAの1つの鎖は、RNA誘導サイレン
シング複合体(RISC)として知られるリボ核タンパク質複合体に組み込まれ、それは次に組
み込まれるsiRNA鎖に少なくとも部分的に相補的であるmRNA分子を特定するために使用さ
れる。RISCはmRNAに結合するか切断することができ、その両方は翻訳を阻害する。
【0116】
本開示は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた本明細書に記載される治療剤の
阻害剤の使用を企図する。
【0117】
全てのがんの特徴であるおびただしい数の遺伝的及びエピジェネティックな変化は、腫
瘍細胞をそれらの正常な対応物から区別するために免疫系が使用できる抗原の多様なセッ
トを提供する。T細胞の場合、T細胞受容体(TCR)による抗原認識を通して開始される応答
の最終的な振幅(例えば、サイトカインの産生又は増殖のレベル)及び品質(例えば、生成
される免疫応答のタイプ、例えばサイトカイン産生のパターン)は、共刺激及び阻害性シ
グナル(免疫チェックポイント)の間の平衡によって調節される。正常な生理的条件の下で
、免疫チェックポイントは、自己免疫の予防(すなわち、自己寛容の維持)のために、及び
免疫系が病原体感染症に応答している場合の傷害からの組織の保護のために重要である。
免疫チェックポイントタンパク質の発現は、腫瘍によって重要な免疫抵抗性機構として異
常調節されることがある。
【0118】
T細胞は、i)全ての細胞コンパートメントにおけるタンパク質に由来するペプチドを選
択的に認識するそれらの能力、ii)抗原発現細胞を直接的に認識して死滅させるそれらの
能力(細胞傷害性Tリンパ球(CTL)としても知られるCD8+エフェクターT細胞による)、及びi
ii)適応性及び先天性エフェクター機構を統合するCD4+ヘルパーT細胞により多様な免疫応
答を編成するそれらの能力のために、内因性抗腫瘍免疫を治療的に操作する努力の主要な
焦点であった。
【0119】
臨床場面では、抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす免疫チェックポイントの遮断は
、ヒトがん療法において有望なアプローチであることを示した。
【0120】
T細胞媒介性免疫は複数の逐次的ステップを含み、それぞれは応答を最適化するために
刺激性及び阻害性シグナルを相殺することによって調節される。免疫応答におけるほとん
ど全ての阻害性シグナルは細胞内シグナル伝達経路を最終的にモジュレートするが、多く
は膜受容体を通して開始され、そのリガンドは膜結合しているか可溶性である(サイトカ
イン)。T細胞活性化を調節する共刺激及び阻害性の受容体及びリガンドは正常な組織と比
較してがんでしばしば過剰発現されないが、組織でT細胞エフェクター機能を調節する阻
害性のリガンド及び受容体は、腫瘍細胞上で、又は腫瘍微小環境に関連する非形質転換細
胞上で一般的に過剰発現される。可溶性及び膜結合受容体-リガンド免疫チェックポイン
トの機能は、アゴニスト抗体(共刺激経路のために)又はアンタゴニスト抗体(阻害性経路
のために)を使用してモジュレートすることができる。したがって、がん療法のために現
在承認されているほとんどの抗体と対照的に、免疫チェックポイントをブロックする抗体
は腫瘍細胞を直接的に標的にせず、むしろ内因性抗腫瘍活性を増強するためにリンパ球受
容体又はそれらのリガンドを標的にする。(Pardoll, (April 2012) Nature Rev. Cancer
12:252-64を参照)。
【0121】
遮断の候補である、そのいくつかは各種の腫瘍細胞で選択的に上方制御される免疫チェ
ックポイント(リガンド及び受容体)の例には、PD1(プログラム細胞死タンパク質1);PDL1(
PD1リガンド); BTLA(B及びTリンパ球アテニュエーター); CTLA4(細胞傷害性T-リンパ球関
連抗原4); TIM3(T細胞膜タンパク質3); LAG3(リンパ球活性化遺伝子3); TIGIT(Ig及びITI
Mドメインを有するT細胞免疫受容体);並びにそれらの構造的特色に基づいて2つのクラス:
i)キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)及びii) C型レクチン受容体(II型膜貫通型受
容体ファミリーのメンバー)に分類することができるキラー阻害性受容体が含まれる。両
方の受容体(例えば、2B4(CD244としても知られる)受容体)及びリガンド(例えば、ある特
定のB7ファミリー阻害性リガンド、例えば、B7-H3(CD276としても知られる)及びB7-H4(B7
-S1、B7x及びVCTN1としても知られる))を含めて、他のあまり明確でない免疫チェックポ
イントが文献に記載されている。(Pardoll, (April 2012) Nature Rev. Cancer 12:252-6
4を参照)。
【0122】
本開示は、前記の免疫チェックポイント受容体及びリガンド並びに未記載の免疫チェッ
クポイント受容体及びリガンドの阻害剤と組み合わせた本明細書に記載される治療剤の使
用を企図する。PD1及びPD-L1抗体ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、ペムブロリズマブ
(Merck)、セミプリマブ(Sanofi and Regeneron)、アテゾリズマブ(Roche)、デュルバルマ
ブ(AstraZeneca)及びアベルマブ(Merck)を含む、免疫チェックポイントのある特定のモジ
ュレーターが今日利用でき、他のものが開発中である。
【0123】
本発明の一態様では、本明細書に記載される治療剤は、(i)刺激性(共刺激性を含む)受
容体のアゴニスト、又は(ii) T細胞上の阻害性(共阻害性を含む)シグナルのアンタゴニス
トである免疫腫瘍薬と組み合わされ、その両方は抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす
。刺激性及び阻害性分子のある特定のものは、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)
のメンバーである。共刺激性又は共阻害性受容体に結合する膜結合リガンドの1つの重要
なファミリーはB7ファミリーであり、それはB7-1、B7-2、B7-H1(PD-L1)、B7-DC(PD-L2)、
B7-H2(ICOS-L)、B7-H3、B7-H4、B7-H5(VISTA)及びB7-H6を含む。共刺激性又は共阻害性受
容体に結合する膜結合リガンドの別のファミリーは、同族のTNF受容体ファミリーメンバ
ーに結合する分子のTNFファミリーであり、それはCD40及びCD4OL、OX-40、OX-40L、CD70
、CD27L、CD30、CD3OL、4-1BBL、CD137 (4-1BB)、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/
DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR
、TACI、APRIL、BCMA、LT13R、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1
、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンフォトキシンa/TNF13、TNFR2、TNFa、LT13R、リンフォトキ
シンa1132、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、NGFRを含む。
【0124】
別の態様では、免疫腫瘍薬は、T細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL-6、IL
-10、TGF-B、VEGF及び他の免疫抑制サイトカイン)又は免疫応答を刺激するためにT細胞活
性化を刺激するサイトカインである。
【0125】
一態様では、T細胞応答は本明細書に記載される治療剤と、(i)T細胞活性化を阻害する
タンパク質のアンタゴニスト(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)、例えば、CTLA-4、
PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、ガレクチン9、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン-
1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1及びTIM-4、及
び/又は(ii)T細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニスト、例えば、B7-1、B7-2、CD28
、4-1BB(CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX4OL、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40
、DR3及びCD2の1つ以上との組合せによって刺激することができる。がんの処置のために
本明細書に記載される治療剤と組み合わせることができる他の薬剤には、NK細胞上の阻害
性受容体のアンタゴニスト又はNK細胞上の活性化受容体のアゴニストが含まれる。例えば
、本明細書の化合物はKIRのアンタゴニスト、例えばリリルマブと組み合わせることがで
きる。
【0126】
併用療法のためのさらに他の薬剤には、CSF-1Rアンタゴニスト、例えば、RG7155(WO11/
70024、WO11/107553、WO11/131407、WO13/87699、WO13/119716、WO13/132044)又はFPA-00
8(WO11/140249、WO13169264、WO14/036357)を含むCSF-1Rアンタゴニスト抗体を限定され
ずに含む、マクロファージ又は単球を阻害又は枯渇(deplete)する薬剤が含まれる。
【0127】
別の態様では、本明細書に記載されるタンパク質/受容体を標的にする開示された薬剤
は、正の共刺激受容体をライゲーションするアゴニスト剤、阻害性受容体を通してシグナ
ル伝達を弱めるブロッキング剤、アンタゴニスト、及び抗腫瘍T細胞の頻度を全身性に増
加させる1つ以上の薬剤、腫瘍微小環境の中の異なる免疫抑制経路を克服する薬剤(例えば
、阻害性受容体係合(engagement)(例えば、PD-Ll/PD-1相互作用)をブロックする、Tregs
を枯渇若しくは阻害する(例えば、抗CD25モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)を
使用して、又はex vivoの抗CD25ビーズ枯渇によって)、又はT細胞アネルギー若しくは消
耗を覆す/阻止する)並びに腫瘍部位で先天性免疫活性化及び/又は炎症を誘発する薬剤の1
つ以上と使用することができる。
【0128】
一態様では、免疫腫瘍薬はCTLA-4アンタゴニスト、例えば拮抗的CTLA-4抗体である。好
適なCTLA-4抗体には、例えば、YERVOY(イピリムマブ)又はトレメリムマブが含まれる。
【0129】
別の態様では、免疫腫瘍薬はPD-1アンタゴニスト、例えば拮抗的PD-1抗体である。好適
なPD-1抗体には、例えば、OPDIVO(ニボルマブ)、KEYTRUDA(ペムブロリズマブ)、MEDI-068
0(AMP-514、WO2012/145493)、BGB-108、GB-226、PDR-001、mDX-400、SHR-1210、IBI-308
、PF-06801591が含まれる。免疫腫瘍薬はピジリズマブ(CT-011)を含むこともできるが、P
D-1結合に対するその特異性は疑問視されている。PD-1受容体を標的にする別のアプロー
チは、AMP-224と呼ばれる、IgGlのFc部分に融合しているPD-L2の細胞外ドメイン(B7-DC)
で構成される組換えタンパク質である。
【0130】
別の態様では、免疫腫瘍薬はPD-L1アンタゴニスト、例えば拮抗的PD-L1抗体である。好
適なPD-L1抗体には、例えば、MPDL3280A(RG7446、WO2010/077634)、デュルバルマブ(MEDI
4736)、アテゾリズマブ、アベルマブ、BMS-936559(WO2007/005874)、MSB0010718C(WO2013
/79174)、KD-033、CA-327、CA-170、ALN-PDL、TSR-042及びSTI-1014が含まれる。
【0131】
別の態様では、免疫腫瘍薬は、LAG-3アンタゴニスト、例えば拮抗的LAG-3抗体である。
好適なLAG3抗体には、例えば、BMS-986016(WO10/19570、WO14/08218)又はIMP-731若しく
はIMP-321(WO08/132601、WO09/44273)が含まれる。
【0132】
別の態様では、免疫腫瘍薬はCD137(4-1BB)アゴニスト、例えばアゴニストCD137抗体で
ある。好適なCD137抗体には、例えば、ウレルマブ及びPF-05082566(WO12/32433)が含まれ
る。
【0133】
別の態様では、免疫腫瘍薬はGITRアゴニスト、例えばアゴニストGITR抗体である。好適
なGITR抗体には、例えば、BMS-986153、BMS-986156、TRX-518(WO06/105021、WO09/009116
)及びMK-4166(WO11/028683)が含まれる。
【0134】
別の態様では、免疫腫瘍薬はOX40アゴニスト、例えばアゴニストOX40抗体である。好適
なOX40抗体には、例えばMEDI-6383又はMEDI-6469が含まれる。
【0135】
別の態様では、免疫腫瘍薬はOX4OLアンタゴニスト、例えば拮抗的OX40抗体である。好
適なOX4OLアンタゴニストには、例えばRG-7888(WO06/029879)が含まれる。
【0136】
別の態様では、免疫腫瘍薬はCD40アゴニスト、例えばアゴニストCD40抗体である。さら
に別の実施形態では、免疫腫瘍薬はCD40アンタゴニスト、例えば拮抗的CD40抗体である。
好適なCD40抗体には、例えば、ルカツムマブ又はダセツズマブが含まれる。
【0137】
別の態様では、免疫腫瘍薬はCD27アゴニスト、例えばアゴニストCD27抗体である。好適
なCD27抗体には、例えばバルリルマブが含まれる。
【0138】
別の態様では、免疫腫瘍薬はMGA271(B7H3へ)(WO11/109400)である。
【0139】
投薬
本開示のアデノシンの細胞外産生を標的にする薬剤及び/又はアデノシンによるその受
容体の1つの活性化に拮抗する薬剤は、例えば、投与の目標(例えば、所望される解決の程
度);製剤が投与される対象の年齢、体重、性別及び健康状態及び体調;投与経路;並びに疾
患、障害、状態又はその症状の性質に依存する量で対象に投与することができる。投薬レ
ジメンは、投与される薬剤に関連するいかなる有害作用の存在、性質及び程度を考慮する
こともできる。有効薬量及び投薬レジメンは、例えば、安全性及び用量漸増試験、in viv
o研究(例えば、動物モデル)及び当業者に公知である他の方法から容易に決定することが
できる。
【0140】
一般に、投薬パラメーターは、投薬量が対象に不可逆的に毒性であるかもしれない量(
最大耐量(MTD))未満であり、対象に測定可能な効果をもたらすのに必要な量以上である必
要がある(dictate)。そのような量は、例えば、投与経路及び他の因子を考慮した、ADME
に関連した薬物動態学的及び薬力学的パラメーターによって決定される。
【0141】
有効用量(ED)は、それを受け取る対象の一部で治療応答又は所望の効果をもたらす薬剤
の用量又は量である。薬剤の「半有効量」又はED50は、それが投与される集団の50%にお
いて治療応答又は所望の効果をもたらす薬剤の用量又は量である。ED50は薬剤の効果の合
理的な期待の尺度として一般的に使用されるが、それは必ずしも臨床医が全ての関連する
因子を考慮して適当であると考える用量でない可能性がある。したがって、一部の状況で
は有効量は計算されたED50より高く、他の状況では有効量は計算されたED50未満であり、
さらに他の状況では、有効量は計算されたED50と同じである。
【0142】
さらに、本明細書に記載される治療剤を標的にする薬剤の有効用量は、対象に1つ以上
の用量で投与される場合に健康対象と比較して所望の結果をもたらす量であってよい。例
えば、特定の障害を経験している対象のために、有効用量はその障害の診断パラメーター
、尺度、マーカーなどを少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくと
も約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少
なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は90%を超えて改善するものであっ
てよく、ここで100%は正常な対象によって示される診断パラメーター、尺度、マーカーな
どと規定される。
【0143】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される治療剤は、所望の治療効果を得るため
に、1日につき対象の体重1kgあたり約0.01mg~約50mg又は約1mg~約25mgの投薬量レベル
で、1日に1回以上投与することができる(例えば、経口)。
【0144】
経口剤の投与のために、組成物は、1.0~1000ミリグラムの活性成分、特に1.0、3.0、5
.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0
、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0及び1000.0ミリグラムの活性成分を含有する錠剤
、カプセルなどの形で提供することができる。
【0145】
経口投薬に加えて、本明細書に記載されるある特定の薬剤のための好適な投与経路には
、非経口(例えば、筋肉内、静脈内、皮下(例えば、注射又はインプラント)、腹腔内、大
槽内、関節内、腹腔内、大脳内(実質内)及び脳室内)及び眼内が含まれる。規定の期間中
に本明細書に記載される薬剤を放出するために、皮下又は筋肉内に一般的に投与されるデ
ポー注射を利用することもできる。
【0146】
ある特定の実施形態では、所望の薬剤、本明細書に記載される治療剤の投薬量は、「単
位剤形」に含有される。「単位剤形」という語句は物理的に別々の単位を指し、各単位は
、所望の効果をもたらすのに十分である本明細書に記載される治療剤の所定量を、単独で
又は1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて含有する。単位剤形のパラメーターは特定の薬
剤及び達成すべき効果に依存することが理解される。
【0147】
キット
本開示は、本明細書に記載される治療剤及びその医薬組成物を含むキットも企図する。
キットは一般的に下記のように様々な構成成分を収容する物理的構造の形であり、例えば
上記の方法の実施で利用することができる。
【0148】
キットは、対象への投与に好適な医薬組成物の形であってよい本明細書に開示される化
合物の1つ以上(例えば、無菌の容器で提供される)を含むことができる。本明細書に記載
される化合物は、即時使用可能である形(例えば、錠剤又はカプセル)で、又は、例えば投
与の前に再構成若しくは希釈を必要とする形(例えば、粉末)で提供することができる。本
明細書に記載される化合物がユーザーによって再構成されるか希釈される必要がある形で
ある場合、キットは、本明細書に記載される化合物と一緒に又は別々にパッケージされる
希釈剤(例えば、無菌水)、緩衝剤、薬学的に許容される賦形剤などを含むこともできる。
併用療法が企図される場合、キットはいくつかの薬剤を別々に含有することができるか、
それらはキット中で既に組み合わされてもよい。キットの各構成成分は個々の容器の中に
封入されてもよく、様々な容器の全ては単一のパッケージ内にあってもよい。本発明のキ
ットは、その中に収容される構成成分を適切に維持するのに必要な条件(例えば、冷蔵又
は凍結)のために設計することができる。
【0149】
キットは、その中の構成成分のための識別情報及び使用説明書(例えば、投薬パラメー
ター、作用機構、薬物動態及び薬力学、有害作用、禁忌症等を含む活性成分の臨床薬理学
)を含むラベル又は添付文書を含有することができる。ラベル又は添付文書は、製造業者
情報、例えば、ロット番号及び有効期限日を含むことができる。ラベル又は添付文書は、
例えば、構成成分を収容する物理的構造の中に組み入れられても、物理的構造の中に別々
に含まれても、キットの構成成分(例えば、アンプル、チューブ又はバイアル)に貼り付け
られてもよい。ある特定の実施形態では、ラベルは、がん遺伝子によって促進されるがん
における製品使用を記載する使用説明書を含む。
【0150】
ラベル又は添付文書は、コンピューター可読媒体、例えばディスク(例えば、ハードデ
ィスク、カード、メモリディスク)、光学ディスク、例えばCD-若しくはDVD-ROM/RAM、DVD
、MP3、磁気テープ、又は電子記憶媒体、例えばRAM及びROM、又はこれらのハイブリッド
、例えば磁気/光学式記憶媒体、FLASH(登録商標)媒体又は記憶型カードをさらに含むこと
ができるか又はその中に組み込まれてもよい。一部の実施形態では、実際の使用説明書は
キット中に存在しないが、離れた供給源から、例えばインターネットを通して、使用説明
書を得るための手段が提供される。
【0151】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の作製方法及び使用方法についての完全な開示及び記載を当業
者に提供するために示され、発明者が彼らの発明と考えるものの範囲を限定するものでは
なく、それらは、下の実験が実行されたことを表すことでも、実行することができる実験
の全てであることを表すものでもない。現在時制で書かれる例示的な記載は必ずしも実行
されておらず、むしろ、それらの記載はその中に記載される性質のデータなどを作成する
ために実行することができることを理解すべきである。使用される数字(例えば、量、温
度等)に関して正確性を確保するように努めたが、多少の実験誤差及び偏差が考慮される
べきである。
【0152】
[実施例1]
複数のがんにおけるアデノシン経路発現のがん遺伝子による調節
がん遺伝子における突然変異と、アデノシンの細胞外産生に関与するタンパク質の発現
レベル及び/又は1つ以上のアデノシン受容体シグナル伝達タンパク質の発現レベルとの間
の関連を分析するために、汎がんのがんゲノムアトラス(TCGA)のRNA及びエクソームシー
クエンシングデータを使用した。
【0153】
RNAシークエンシングデータ:
汎がんのがんゲノムアトラス(TCGA)の生のカウントデータは、GDC commons(https://gd
c.cancer.gov/)からダウンロードした。limmaパッケージ(Ritchie et al., 2015)中のTMM
(Robinson and Oshlack, 2010)を使用して、生のカウントを正規化して100万あたりのlog
2(CPM)を得た。以下の分析のために原発腫瘍試料だけが含まれ、転移性及び正常な試料は
排除された。さらに、我々は固形腫瘍に焦点化し、散在性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、AML
並びに胸腺腫のような血液がんは排除した。CD73/TNAP比は、CD73及びTNAPのlog2 CPM値
の比で計算した。この分析の結果は、図1に示す。
【0154】
エクソームシークエンシングデータ:
TCGA中の複数のがんタイプにわたって299個のコンセンサスがんドライバーが特定され
た(Bailey et al., 2018)。299個の遺伝子の突然変異(SNP/挿入欠失(indel))並びにコピ
ー数変化は、cBioPortal(www.cbioportal.org)にホストされた汎がんTCGAデータからダウ
ンロードした。
【0155】
CD73発現を調節するがんドライバーにおける遺伝子変化の同定:
各がんドライバーについて、所与の遺伝子中の全ての変化を、突然変異体/変化又は野
生型に二値化した。RNAseq及びexomeSeqデータを有するTCGA患者だけを、以下の分析のた
めに使用した。線形回帰分析(Schneider et al., 2010)を使用して、個々の腫瘍タイプの
影響を調整した後にアデノシン経路中のCD73又は他の遺伝子の発現を予測するために、特
定のがんドライバー(WT又は突然変異体状態)の発現データを使用した。あらゆるがんドラ
イバーのための各遺伝子-がんドライバー対モデルについて推定値及びp値を計算し、Benj
amini-Hochberg方法(Benjamini and Hochberg, 1995)を使用して多重性修正を実行した。
この分析の結果は、図2A~Eに示す。
【0156】
生存分析:
CD73発現を中央値で2つの群-低(中央値未満)及び高(中央値より高い)-に切断した。全
体的生存(OS)及び無進行生存(PFS)における予測されたCD73調節因子の突然変異状態に及
ぼすCD73発現の予後の影響を調査するために、Cox回帰モデル(Mohamed Ahmed Abdelaal,
2015)を使用した。この分析の結果は、図3A~Dに示す。R中のsurvminerパッケージ(https
://cran.r-project.org/web/packages/survminer/index.html)を使用して、高い、対、低
いCD73発現を有する、EGFR WT又はALT患者についてのカプラン-マイアー曲線を作成し、
異なる群間の有意性を計算するためにログランク検定を使用した。この分析の結果は、図
3Eに示す。
【0157】
非小細胞肺がん(NSCLC)ペムブロリズマブコホート:
CD73発現の予測されたがんドライバー調節因子と6カ月を越える永続的な臨床的利益と
の関連のために、ペムブロリズマブNSCLCコホート(Rizvi et al., 2018)を使用した。こ
れらの患者の突然変異及び応答データは、cbioportal(www.cbioportal.org)からダウンロ
ードした。予測されたCD73調節因子の突然変異状態を無進行生存と関連付けるために、Co
x回帰モデル(Mohamed Ahmed Abdelaal, 2015)を使用した。この分析の結果は、図4に示す
【0158】
データ可視化及び統計値:
全てのグラフは、R(http://www.R-project.org)中のggplot2パッケージ(Wickham, 2016
)を使用して作成した。図2B~Cに示す、R中のggpubrパッケージ(https://www.rdocumenta
tion.org/packages/ggpubr)のウィルコクソン順位和検定又はt検定を使用して、2群比較
の箱ひげ図統計値を計算した。
参考文献:
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Wickham, H. (2016). ggplot2 (Cham: Springer International Publishing).
【0159】
発明者に既知である本発明を実行するための最良の形態を含む、本発明の特定の実施形
態が本明細書に記載される。上述の記載を読むことによって、開示される実施形態の変形
形態が当業者に明らかになることができ、当業者はそのような変形形態を適宜用いること
ができると予想される。したがって、本明細書で具体的に記載されるのと別の方法で本発
明が実施されること、及び適用法によって許可される通り、本発明がそれに添付される特
許請求の範囲で列挙される発明主題の全ての改変形及び同等物を含むことが意図される。
さらに、本明細書で別途指示されない限り、又は文脈によって別途明らかに否定されない
限り、その全ての可能な変形形態における上記の要素の任意の組合せが本発明によって包
含される。
【0160】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許出願、受託番号及び他の参考文献は、各個々
の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的に及び個々に示されるかの
ように、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B-C】
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
【外国語明細書】