(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138453
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】アミノ酸界面活性剤
(51)【国際特許分類】
C09K 23/28 20220101AFI20241001BHJP
C07C 229/12 20060101ALI20241001BHJP
C11D 1/10 20060101ALI20241001BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20241001BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241001BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241001BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241001BHJP
A01N 25/30 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C09K23/28
C07C229/12
C11D1/10
C11D17/08
A61K8/44
A61Q5/02
A61Q5/12
A01N25/30
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111720
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2022546410の分割
【原出願日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/967,170
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アシルバサム,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ホンチュク,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ミハリ,ボイチータ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面活性特性を有するアミノ酸の誘導体を提供する。
【解決手段】アミノ酸は、天然若しくは合成のアミノ酸であってよい、又はカプロラクタムなどのラクタムの開環反応を介して得られてもよい。アミノ酸は、官能化されて、表面活性であり、有利な界面活性剤特性を有する化合物を形成し得る。本開示の化合物は、低い臨界ミセル濃度(CMC)、さらには液体の表面張力を低下させる優れた能力を有する。化合物は、表面活性剤として有効であり、数ある用途の中でも、湿潤剤又は発泡剤、分散剤、乳化剤、及び洗剤用として有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、及び
以下の式の界面活性剤であって、
【化1】
式中、Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び水酸化物イオンから成る群より選択されるアニオンである、界面活性剤、
を含む液体組成物。
【請求項2】
Xが臭化物イオンである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
Xがヨウ化物イオンである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
Xが水酸化物イオンである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が以下の式、
【化2】
を有する6-(ドデシルオキシ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムクロリドである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、水中、約1.4mmolの臨界ミセル濃度(CMC)を有する、請求項5に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、水中、約30mN/mの最小表面張力のプラトー値を有する、請求項5に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、2.7mmol以上の濃度で、水中、約33mN/m以下の表面張力を有する、請求項5に記載の液体組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、水中、100ms以上の表面経過時間において、40mN/m以下の表面張力を有する、請求項5に記載の液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示内容が参照により本明細書に援用される2020年1月29日に出願された米国仮特許出願第62/967,170号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、アミノ酸の誘導体及びその合成方法に関し、アミノ酸誘導体は、表面活性特性を有する。
【背景技術】
【0003】
界面活性剤(表面活性特性を有する分子)は、強く求められている特徴を有する重要な分子のクラスである。界面活性剤は、非イオン性、双性イオン性、カチオン性、又はアニオン性であり得る。多くの場合、これらの化合物は、非水溶性の疎水性「尾部」基及び水溶性の親水性「頭部」基を有する両親媒性分子である。これらの化合物は、2つの液体間、気液間、又は固液間の界面などの界面で吸着し得る。水と油との間の界面の場合、親水性の頭部基は水中へ延び、一方疎水性の尾部は油中へ延びる。水に添加されると、親水性の頭部基は水中へ延び、一方疎水性の尾部は空気中へ延びる。界面活性剤の存在によって、水分子間の分子間相互作用が乱され、それが、水分子と界面活性剤との間のより弱い相互作用に置き換わる。これは、表面張力を低下させる結果となり、界面を安定化させるようにも働き得る。
【0004】
充分に高い濃度では、界面活性剤は、疎水性の尾部が極性溶媒に曝露することを制限する凝集体を形成する場合がある。1つのそのような凝集体はミセルであり、この場合、分子は球状に配列され、疎水性の尾部が球の内側にあり、親水性の頭部が外側にあって極性溶媒と相互作用する。任意の化合物が表面張力に対して有する効果及びそれがミセルを形成する濃度は、界面活性剤を規定する特徴として有用であり得る。
【0005】
界面活性剤は、洗剤からヘアケア製品や化粧品まで様々な製剤として、市販品用途に広く用いられている。表面活性特性を有する化合物は、中でもセッケン、洗剤、潤滑剤、湿潤剤、発泡剤、及び展着剤として用いられている。したがって、そのような化合物を識別し、合成することが継続して求められている。
【0006】
しかし、その構造からだけでは、任意の化合物が表面活性特性を有するかどうかを予測することは困難であり得、ましてや、化合物が有用な界面活性剤となるかどうかに対してやはり必須である界面吸着動態、実現可能な最小表面張力、並びに/又は疎水性及び/若しくは親油性表面を濡らす能力などの他の重要な特徴については言うまでもない。例えば、ある特定のアミノ酸及びその誘導体は、界面活性剤のための構成要素として望ましいものであるが、どのアミノ酸を用いるべきかの選択は、決して分かりやすいとは言えない。そのような化合物の合成は、同じ分子中に存在する異なる要素及び部分に起因すると考えられる溶解度の違いにより、困難さのさらなる階層を追加する。簡便な経路を介して商業的スケールで容易に合成することができる効果の高い界面活性剤が依然として求められている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、表面活性特性を有するアミノ酸の誘導体を提供する。アミノ酸は、天然若しくは合成のアミノ酸であってよい、又はカプロラクタムを例とするラクタムなどの分子の開環反応を介して得られてもよい。アミノ酸は、官能化されて、表面活性特性を有する化合物が形成されてもよい。特徴的なことには、これらの化合物は、低い臨界ミセル濃度(
CMC)及び/又は液体の表面張力を低下させる能力を有し得る。
【0008】
本開示は、本明細書において界面活性剤とも称される以下の式Iの化合物を提供し:
【0009】
【0010】
式中、R1、R2、及びR3は、独立して、水素及びC1~C6アルキル、すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、又はC6、から選択され;nは、2~5の整数、すなわち、2、3、4、又は5であり;mは、9~20の整数、すなわち、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり;並びにXは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び水酸化物イオンから成る群より選択され得るアニオンである。
【0011】
本開示は、特に、本明細書において界面活性剤とも称される以下の式IIの化合物を提供し:
【0012】
【0013】
式中、Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び水酸化物イオンから成る群より選択され得るアニオンである。
本開示によって提供される1つの具体的な化合物は、以下の式を有する6-(ドデシルオキシ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムクロリドである。
【0014】
【0015】
本開示の上述の及び他の特徴、並びにそれらを達成する方法は、以下の実施形態の記述を添付の図面と合わせて参照することによって、より明らかとなり、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、例2で述べるように、pH=7で測定した表面張力対濃度のプロットを示し、Y軸は、表面張力(γ)をミリニュートン毎メートル(mN/m)で表し、X軸は濃度(c)をミリモル(mM)で表す。
【
図2】
図2は、例3で述べるように、時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示し、Y軸は、表面張力をミリニュートン毎メートル(mN/m)で表し、X軸は、表面経過時間をミリ秒(ms)で表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で用いられる場合、「上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内」の句は、文字通り、値が列挙の低い値の方にあるか、又は列挙の高い値の方にあるかにかかわらず、その句の前に列挙された値のいずれか2つからのいずれの範囲が選択されてもよいことを意味する。例えば、値の対は、低い方の値2つ、高い方の値2つ、又は低い方の値及び高い方の値、から選択されてよい。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」の語は、いずれの飽和炭素鎖をも意味し、直鎖であっても又は分岐鎖であってもよい。
本明細書で用いられる場合、「表面活性」の句は、関連する化合物が、それが溶解されている媒体の表面張力及び/又は他の相との界面張力を低下させることができ、したがって、気液界面及び/又は他の界面に吸着し得ることを意味する。「界面活性剤」の用語は、そのような化合物に適用され得る。
【0019】
不正確さの用語に関して、「約」及び「およそ」の用語は、記載された測定値を含み、その記載された測定値に対して合理的に近いいずれの測定値も含む測定値を意味するために、交換可能に用いられてよい。記載された測定値に対して合理的に近い測定値は、該当する技術分野の当業者によって理解され、容易に確認される合理的に小さい量の分、記載された測定値から逸脱している。そのような逸脱は、例えば、測定誤差又は性能を最適化するために成される少しの調整に起因すると考えられ得る。該当する技術分野の当業者が、そのような合理的に小さい差異に関する値が容易に確認されるものではないと判断する場合には、「約」及び「およそ」の用語は、記載された値のプラス又はマイナス10%を意味するものと理解されてよい。
【0020】
本開示は、アミノ酸の誘導体を提供する。アミノ酸は、天然若しくは合成のアミノ酸であってよい、又はカプロラクタムなどのラクタムの開環反応から得られてもよい。本開示の化合物は、表面活性特性を有することが示され、例えば界面活性剤及び湿潤剤として用いられ得る。特に、本開示は、以下に示す式Iの化合物を提供し、
【0021】
【0022】
式中、R1、R2、及びR3は、独立して、水素及びC1~C6アルキル、すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、又はC6、から選択され;nは、2~5の整数、すなわち、2、3、4、又は5であり;mは、9~20の整数、すなわち、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり;並びにXは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び水酸化物イオンから成る群より選択され得るアニオンである。
【0023】
別の選択肢として、本開示は、以下に示す式IIの化合物も提供し、
【0024】
【0025】
式中、Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び水酸化物イオンから成る群より選択され得るアニオンである。
本開示によって提供される1つの具体的な化合物は、以下の式を有する6-(ドデシルオキシ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムクロリドである。
【0026】
【0027】
これらの化合物は、様々な方法によって合成され得る。1つのそのような方法は、ラクタムを開環してN末端を有するアミノ酸を得ること、及びアミノ酸のN末端をアルキル化剤と反応させて三級アミンを得ること、を含む。得られた三級アミンを、次に、酸性条件下でアルコールと反応させて、N末端を有するアミノ酸エステルを得ることができる。次に、アミノ酸エステルのN末端を酸と反応させて、四級アミン塩を得ることができる。
【0028】
アミノ酸は、天然若しくは合成であってよい、又は例えばプロピオラクタム、ブチロラクタム、バレロラクタム、及びカプロラクタムなどのラクタムの開環反応から誘導されてもよい。開環反応は、酸又はアルカリ触媒反応のいずれであってもよく、酸触媒反応の例を以下のスキーム1に示す。
【0029】
【0030】
アミノ酸は、少なくは2個の又は多くは5個の、すなわち、2、3、4、又は5個の炭素を、N末端とC末端との間に有し得る。アルキル鎖は、分岐鎖又は直鎖であってよい。アルキル鎖には、窒素、酸素、又は硫黄が介在していてもよい。アルキル鎖は、さらに、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてもよい。N末端窒素は、アシル化又は1若しくは複数のアルキル基でアルキル化されていてもよい。例えば、アミノ酸は、6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸であってよい。
【0031】
アミノ酸の誘導体は、以下のスキーム2に示されるように合成され得る。示されるように、6-アミノヘキサン酸が、還流下、ギ酸中でホルムアルデヒドで処理されて、6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸が得られる。次に、この遊離カルボン酸が、トルエン中、p
-トルエンスルホン酸(PTSA)の存在下でドデカノールなどのアルコールで処理されて、対応するエステルであるドデシル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエートが得られる。次に、N末端が、炭酸ナトリウムの存在下、ヨウ化メチルでアルキル化される。
【0032】
【0033】
本開示の化合物は、表面活性特性を呈する。これらの特性は、様々な方法によって測定し、表され得る。界面活性剤を表し得る1つの方法は、分子の臨界ミセル濃度(CMC)による。CMCは、ミセルを形成する界面活性剤の濃度として定義され得るものであり、それよりも高い濃度では、追加の界面活性剤はすべてミセルに取り込まれる。
【0034】
界面活性剤濃度が上昇するに従って、表面張力は低下する。表面が界面活性剤分子で完全に覆われると、ミセルが形成し始める。この時点が、CMC、さらには最小表面張力を表している。界面活性剤をさらに添加しても、表面張力にさらに影響を与えることはない。CMCは、したがって、界面活性剤濃度の関数として表面張力の変化を観察することによって測定され得る。この値を測定するためのそのような1つの方法は、ウィルヘルミープレート法である。ウィルヘルミープレートは、通常、ワイヤで天秤に取り付けられた薄いイリジウム-白金プレートであり、空気-液体界面に対して垂直に配置される。天秤を用いて、濡れによってプレートに働く力が測定される。次に、この値を用い、式1に従って表面張力(γ)が算出され:
式1:γ=F/l cosθ
式中、lは、濡れ周長(w及びdをそれぞれプレートの厚さ及び幅とした場合に、2w+2d)に等しく、cosθについては、液体とプレートとの間の接触角は、現存文献値がない場合は0と仮定する。
【0035】
界面活性剤の性能を評価するために用いられる別のパラメータは、動的表面張力である。動的表面張力は、特定の表面又は界面の経過時間に対する表面張力の値である。界面活性剤が添加された液体の場合、これは、平衡値と異なり得る。表面が生成された直後は、表面張力は、純液体の表面張力と等しい。上記で述べたように、界面活性剤は、表面張力を低下させるものであるため、表面張力は、平衡値に到達するまで低下する。平衡に到達するのに要する時間は、界面活性剤の拡散速度及び吸着速度に依存する。
【0036】
動的表面張力を測定する1つの方法は、最大泡圧式張力計によるものである。この装置は、キャピラリーによって液体中に形成された気泡の最大内圧を測定する。測定された値は、気泡形成の開始から最大圧力となるまでの時間である、ある特定の表面経過時間での表面張力に相当する。表面張力の表面経過時間に対する依存性は、気泡が生成される速度を変動させることによって測定することができる。
【0037】
表面活性化合物は、接触角によって測定される固体基材上での湿潤能力によっても評価され得る。液滴が、空気などの第三の媒体中で固体表面と接触する場合、液体、気体、及び固体間で三相線が形成される。三相線で役割を果たしており、液滴の接線である表面張力の単位ベクトルと、表面と、の間の角度が、接触角として表される。接触角(湿潤角としても知られる)は、液体による固体の濡れ性の尺度である。完全濡れの場合、液体は固体上に完全に拡がっており、接触角は0°である。濡れ特性は、典型的には、任意の化合物に対して1~100×CMCの濃度で測定されるが、濃度に依存する特性ではないことから、濡れ特性の測定値は、これよりも高い又は低い濃度で測定されてもよい。
【0038】
1つの方法では、光学接触角ゴニオメーターが、接触角の測定に用いられ得る。この装置は、デジタルカメラ及びソフトウェアを用いて、表面上の液体の静止液滴の輪郭形状を分析することによって接触角を求める。
【0039】
本開示の表面活性化合物に対する考え得る用途としては、シャンプー、ヘアコンディショナー、洗剤、スポットフリーリンス溶液、床及びカーペットクリーナー、落書き除去用の洗浄剤、作物保護用の湿潤剤、作物保護用の補助剤、並びにエアロゾルスプレーコーティング用の湿潤剤として用いるための製剤が挙げられる。
【0040】
当業者であれば、化合物間の少しの相違が、著しく異なる界面活性剤特性に繋がり得ることから、異なる基材、異なる用途においては、異なる化合物が用いられ得ることは理解される。
【0041】
以下の限定されない実施形態は、異なる界面活性剤の異なる特性を示すために提供される。
化合物は、表面活性剤として有効であり、数ある用途の中でも、湿潤剤又は発泡剤、分散剤、乳化剤、及び洗剤用として有用である。
【0042】
本開示の化合物は、上記で述べた用途、及び表面処理剤などの、パーソナルヘアケア製品などの、いくつかのさらなる特別な用途の両方に有用であり得、また、撥水性表面を生成するために用いることもできる。
【0043】
製剤に用いられる本明細書で開示される化合物の量は、低くは約0.001重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、若しくは約5重量%、又は高くは約8重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、若しくは約25重量%、又は上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であり得る。
【0044】
実施例
核磁気共鳴(NMR)分光法は、Bruker 500MHz分光計で行った。臨界ミセル濃度(CMC)は、ウィルヘルミープレート法により、Pt-Irプレートを備えた張力計(DCAT 11,DataPhysics Instruments GmbH)を用いて23℃で特定した。動的表面張力は、最大泡圧式張力計(Kruss BP100,Kruss GmbH)を用いて23℃で特定した。接触角は、デジタルカメラを備えた光学接触角ゴニオメーター(OCA 15 Pro,DataPhysics GmbH)を用いて特定した。
【0045】
例1:
6-(ドデシルオキシ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムクロリドの合成
6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸(11.99g、75.36mmol)を、Dean-Starkトラップを取り付けた丸底フラスコ中のトルエン(50mL)に溶解した。次に、ドデカノール(12.68g、75.36mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(PTSA)(14.33g、75.36mmol)を添加した。Dean-Starkトラップにさらなる水が見られなくなるまで、反応物を加熱して24時間にわたって還流した。溶媒を真空除去し、得られた固体をヘキサンで洗浄した。この固体をジクロロメタン(200mL)に溶解し、飽和炭酸ナトリウムで洗浄して、51%の収率でドデシル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエートを得た。1H NMR(DMSO)δ 4.00(t,J=6.5Hz,2H),2.27(t,J=7.3Hz,2H),2.13-2.16(m,2H),2.01(s,6H),1.54-1.53(m,6H),1.27-1.18(m,20H),0.86(t,3H)。
【0046】
ドデシル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート(100mg、0.305mmol)を水(10mL)に溶解した。濃塩酸(11.14mg、0.305mmol)を添加した。
【0047】
例2:
臨界ミセル濃度(CMC)の特定
臨界ミセル濃度(CMC)を調べた。水溶液の濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約1.4mmolであると特定した。この界面活性剤で到達可能である最小表面張力のプラトー値は、約30mN/m、すなわち、30mN/m±3mN/mである。
図1は、これらの結果のプロットであり、表面張力対濃度を示している。これらの結果のプロットから、CMCでの表面張力は、約30mN/m以下である。このプロットはさらに、2.7mmol以上の濃度での表面張力が33mN/m以下であることも示している。
【0048】
例3:
動的表面張力の特定
動的表面張力は、新たに作り出された空気-水界面の表面張力の経時での変化を測定する最大泡圧式張力計で特定した。
図2は、表面張力対時間のプロットを表し、1~100msの時間間隔で、表面張力が約50mN/mから約40mN/mに急速に低下することを示している。100~50,000msの時間間隔では、表面張力は、40mN/mから約34mN/mにゆっくり低下し、CMCでの表面張力の飽和値に漸近的に近づいている。
【0049】
例4:
濡れ特性の特定
表面張力及び表面動態に加えて、化合物の濡れ特性を様々な表面上で試験した。例えば、ポリエチレン-HDなどの疎水性基材は、接触角42.5°の表面濡れを呈する。テフロン(登録商標)などの疎油性及び疎水性基材上では、測定した接触角は、水よりも非常に低く、66.6°であった(表1)。
【0050】
【0051】
例5:
シャンプー用製剤
この例では、シャンプーとして用いるための製剤を提供する。この製剤は、毛髪に滑らかでシルキーな感触を与えるのに有用である。製剤の成分を以下の表2に示す。加えて、製剤は、他の天然油及び原料成分、さらには消費者へのアピールのためにビタミンを、1重量%未満の量で含んでもよい。
【0052】
【0053】
例6:
ヘアコンディショナー用製剤
この例では、ヘアコンディショナーとして用いるための製剤を提供する。この製剤は、ヘアコンディショナーがもたらす櫛通りの良さ及びシルキーでソフトな感触は保持しながら、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-7、及びジメチコン油を置き換える又は削減するために用いられ得る。
【0054】
製剤を以下の表3に示す。
【0055】
【0056】
例7:
落ちにくいスポット汚れを表面から除去するための洗車洗剤用製剤
この例では、落ちにくいスポット汚れを表面から除去するための洗車洗剤に用いるための製剤を提供する。
【0057】
製剤を以下の表4に示す。
【0058】
【0059】
例8:
スポットフリーリンス溶液又は乾燥溶液用の製剤
この例では、スポットフリーリンス溶液又は乾燥溶液の製剤を提供する。この溶液は、主洗浄の完了後に、自動車の窓又は車体に適用され得る。
【0060】
製剤を以下の表5に示す。
【0061】
【0062】
例9:
ヘビーデューティーカーペットクリーナー用製剤
この例では、ヘビーデューティーカーペットクリーナー用の製剤を提供する。このクリーナーは、高発泡性ディープクリーナーである。
【0063】
製剤を以下の表6に示す。
【0064】
【0065】
例10:
ヘビーデューティー表面クリーナー用製剤
この例では、ヘビーデューティー表面クリーナー用の製剤を提供する。このクリーナーは、手動又は自動の表面クリーニングマシン用に用いられ得る。
【0066】
製剤を以下の表7に示す。
【0067】
【0068】
例11:
濃縮落書き除去洗剤用製剤
この例では、濃縮落書き除去洗剤用の製剤を提供する。この洗剤は、高圧ホースで使用され得る。
【0069】
製剤を以下の表8に示す。
【0070】
【0071】
例12:
エアロゾルスプレーの湿潤剤用製剤
この例では、エアロゾルスプレーの湿潤補助剤用の製剤を提供する。エアロゾルスプレーは、殺虫剤又は他の作物保護剤を適用するために用いられ得る。提供される製剤は、非常に優れた湿潤性及び低CMCによるより良好な性能を提供することによって、殺虫剤及び他の作物保護剤中の界面活性化学薬品の量を削減し(典型的には2~5%)、したがって、より環境にやさしい選択肢を提供することを目的としている。
【0072】
製剤を以下の表9に示す。
【0073】
【0074】
例13:
エアロゾルスプレー塗料用添加剤の製剤
この例では、水性エアロゾルスプレー塗料又はコーティング用添加剤のための製剤を提供する。この製剤は、適用後の表面におけるエアロゾル液滴の良好な動的濡れ性を提供し、したがって、塗料のクレーター形成及び他のそのような問題を防止することを目的としている。
【0075】
製剤を以下の表10に示す。
【0076】
【0077】
態様
態様1は、以下の式の化合物であり、
【0078】
【0079】
式中、Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び水酸化物イオンから成る群より選択されるアニオンである。
態様2は、以下の式を有する6-(ドデシルオキシ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムクロリドである態様1に記載の化合物である。
【0080】
【0081】
態様3は、水溶液の臨界ミセル濃度(CMC)が約1.4mmolである、態様1又は態様2に記載の化合物である。
態様4は、水溶液の最小表面張力のプラトー値が約30mN/mである、態様1~3のいずれか1つに記載の化合物である。
【0082】
態様5は、2.7mmol以上の濃度での水溶液の表面張力が33mN/m以下である、態様1~4のいずれか1つに記載の化合物である。
態様6は、100ms以上の表面経過時間における水溶液の表面張力が40mN/m以下である、態様1~5のいずれか1つに記載の化合物である。
【0083】
態様7は、アミノ酸界面活性剤の合成方法であり、(1)ラクタムを開環してN末端を有するアミノ酸を得る工程;(2)アミノ酸のN末端をアルキル化剤と反応させて三級アミンを得る工程;(3)三級アミンを、酸性条件下でアルコールと反応させて、N末端を有するアミノ酸エステルを得る工程;及び(4)アミノ酸エステルのN末端を酸と反応させて、以下の式のアミノ酸界面活性剤を得る工程、を含み、
【0084】
【0085】
式中、Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び水酸化物イオンから成る群より選択されるアニオンである。
態様8は、工程1において、ラクタムがカプロラクタムである、態様7に記載の方法である。
【0086】
態様9は、工程2において、アルキル化剤がホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドである、態様7又は態様8に記載の方法である。
態様10は、工程3において、アルコールがドデカノールである、態様7~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0087】
態様11は、工程3において、酸がp-トルエンスルホン酸である、態様7~10のいずれか1つに記載の方法である。
態様12は、工程4において、酸が塩酸である、態様7~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0088】
態様13は、媒体、及び以下の式の界面活性剤であって、
【0089】
【0090】
式中、Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及び水酸化物イオンから成る群より選択されるアニオンである、界面活性剤、を含む液体組成物である。
態様14は、媒体が水である、態様13に記載の組成物である。