(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138484
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20241001BHJP
F04C 18/16 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
F04C29/02 311K
F04C18/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024112349
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2021051804の分割
【原出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川副 幸二
(72)【発明者】
【氏名】津山 遼
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大型化を抑制しつつ、潤滑油の貯留量を増加させることができるコンプレッサを提供する。
【解決手段】本発明のコンプレッサは、空気を圧縮して排出する圧縮機2と、圧縮機に動力を供給する変速機3と、を備え、変速機は、出力軸と、出力軸に回動力を供給する入力軸32と、入力軸と出力軸とを連結し、入力軸の回動力を変速しつつ出力軸に伝達する変速ギヤと、変速ギヤ及び変速ギヤに供給される潤滑油を内部に収容するギヤ室と、ギヤ室の一部、入力軸の少なくとも一部、及び、出力軸の少なくとも一部が内部に設けられた変速ケース31と、を備え、入力軸及び出力軸の少なくとも一方は、一部が変速ケースから外方に突出し、ギヤ室は、潤滑油を内部に収容可能な膨出部62を備え、膨出部は、変速ケースから、入力軸及び出力軸の少なくとも一方が突出する側に膨出し、入力軸及び出力軸の少なくとも一方と並んで設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮して排出する圧縮機と、前記圧縮機に動力を供給する変速機と、を備え、
前記圧縮機は、
回動する圧縮ロータと、
前記圧縮ロータを格納する圧縮ケースと、を備え、
前記変速機は、
前記圧縮ロータに回動力を供給する出力軸と、
前記出力軸に回動力を供給する入力軸と、
前記入力軸と前記出力軸とを連結し、前記入力軸の回動力を変速しつつ前記出力軸に伝達する変速ギヤと、
前記変速ギヤ及び前記変速ギヤに供給される潤滑油を内部に収容するギヤ室と、
前記ギヤ室の一部、前記入力軸の少なくとも一部、及び、前記出力軸の少なくとも一部が内部に設けられた変速ケースと、を備え、
前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方は、一部が前記変速ケースから外方に突出し、
前記ギヤ室は、前記潤滑油を内部に収容可能な膨出部を備え、
前記膨出部は、
前記変速ケースから、前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方が突出する側に膨出し、
前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方と並んで設けられるコンプレッサ。
【請求項2】
前記ギヤ室は、前記変速ギヤが収容されるギヤ室本体を備え、
前記膨出部の内部空間は、前記ギヤ室本体の内部空間と連通して設けられ、
前記膨出部の内部の底面は、前記ギヤ室本体の内部の底面以下の高さに位置するよう設けられる請求項1に記載のコンプレッサ。
【請求項3】
前記膨出部は、内部の上面が前記変速ギヤの下端よりも上方に位置するように設けられ、
前記潤滑油は、液面が前記変速ギヤの下端よりも上方、かつ、前記膨出部の内部の上面よりも下方に位置するように充填される請求項1又は2に記載のコンプレッサ。
【請求項4】
前記膨出部は、内部の底面が前記変速ギヤの下端よりも下方に位置するように設けられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を圧縮して排出するコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンプレッサとして、特許文献1に記載のような、オス・メス一対のスクリュロータを噛み合い可能に収容する圧縮機本体と、駆動源からの回転駆動力を圧縮機本体に伝動する変速装置と、を備えたスクリュ圧縮機が知られている。具体的に、変速装置は、駆動源から回転駆動力を与えられる主軸と、主軸に取り付けられた駆動ギヤと、駆動ギヤの回転を増速して伝動する中間従動ギヤ及び最終従動ギヤと、最終従動ギヤに取り付けられ、圧縮機本体に回転駆動力を伝導するロータ軸と、を備える。また、変速装置は、主軸及びロータ軸の一部と複数のギヤとを収容する変速ギヤ室を備え、変速ギヤ室の底部には、少なくとも一つのギヤが浸漬するように潤滑油が貯留される。
【0003】
上記のようなスクリュ圧縮機によれば、変速装置が駆動源からの回転駆動力を圧縮機本体に伝動する際に、潤滑油に浸漬した少なくとも一つのギヤが回転することで、潤滑油が跳ね上がり、変速ギヤ室内に収容された各ギヤに給油が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のようなスクリュ圧縮機では、潤滑油を変速ギヤ室内の一部の空間にしか貯留することができないため、潤滑油の量が比較的少なくなる。そのため、ギヤ同士の摩擦による熱などで潤滑油の温度が上がりやすく、潤滑油の劣化が早まる恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、大型化を抑制しつつ、潤滑油の貯留量を増加させることができるコンプレッサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンプレッサは、空気を圧縮して排出する圧縮機と、前記圧縮機に動力を供給する変速機と、を備え、前記圧縮機は、回動する圧縮ロータと、前記圧縮ロータを格納する圧縮ケースと、を備え、前記変速機は、前記圧縮ロータに回動力を供給する出力軸と、前記出力軸に回動力を供給する入力軸と、前記入力軸と前記出力軸とを連結し、前記入力軸の回動力を変速しつつ前記出力軸に伝達する変速ギヤと、前記変速ギヤ及び前記変速ギヤに供給される潤滑油を内部に収容するギヤ室と、前記ギヤ室の一部、前記入力軸の少なくとも一部、及び、前記出力軸の少なくとも一部が内部に設けられた変速ケースと、を備え、前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方は、一部が前記変速ケースから外方に突出し、前記ギヤ室は、前記潤滑油を内部に収容可能な膨出部を備え、前記膨出部は、前記変速ケースから、前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方が突出する側に膨出し、前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方と並んで設けられる。
【0008】
かかる構成によれば、膨出部によって潤滑油の貯留量を増加させることができ、かつ、膨出部が変速ケースから入力軸及び出力軸の少なくとも一方が突出する側に膨出し、入力軸又は出力軸と並んで配置されるので、変速機が入力軸又は出力軸の軸線方向に大きくなることを抑制できる。
【0009】
また、前記ギヤ室は、前記変速ギヤが収容されるギヤ室本体を備え、前記膨出部の内部空間は、前記ギヤ室本体の内部空間と連通して設けられ、前記膨出部の内部の底面は、前記ギヤ室本体の内部の底面以下の高さに位置することもできる。
【0010】
かかる構成によれば、膨出部の内部の底面は、ギヤ室本体の内部の底面以下の高さに位置するので、ギヤ室本体に溜まる潤滑油が膨出部に流れやすくなる。
【0011】
また、前記膨出部は、内部の上面が前記変速ギヤの下端よりも上方に位置するように設けられ、前記潤滑油は、液面が前記変速ギヤの下端よりも上方、かつ、前記膨出部の内部の上面よりも下方に位置するように充填されることもできる。
【0012】
かかる構成によれば、潤滑油の液面の面積を膨出部の分だけ増加させることができるので、変速ギヤが潤滑油を掻き揚げ、ギヤ室の底部に溜まる潤滑油の量が減少した時の液面の低下量を抑制できるため、潤滑油の液面の高さが安定する。
【0013】
また、前記膨出部は、内部の底面が前記変速ギヤの下端よりも下方に位置することもできる。
【0014】
かかる構成によれば、膨出部の内部の底面が変速ギヤの下端よりも下方に位置するので、変速ギヤに供給される潤滑油の量を膨出部によりだけ確実に増加させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大型化を抑制しつつ、潤滑油の貯留量を増加させることができるコンプレッサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスクリュコンプレッサの斜視図である。
【
図2】同スクリュコンプレッサの変速機及び圧縮機を示す側面図である。
【
図3】同スクリュコンプレッサの圧縮機を示す側面図である。
【
図5】同スクリュコンプレッサの変速機を示す側面図である。
【
図6】同スクリュコンプレッサの変速機を示す正面図である。
【
図8】同スクリュコンプレッサの前方蓋部及び膨出部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るスクリュコンプレッサ1について
図1乃至
図9を参照して説明する。説明の便宜上、上下方向及び、前後方向は、
図1に記載の方向を基準に説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、スクリュコンプレッサ1は、変速機3と、変速機3の後側に並んで設けられる圧縮機2と、を備える。本実施形態のスクリュコンプレッサ1は、例えば、粉粒体運搬車(図示しない)のような車両に設けられ、該車両から動力の供給を受けるように構成されている。本実施形態のスクリュコンプレッサ1は、スクリュコンプレッサ1の外部と空気のやり取りをするパイプ部4を備える。また、パイプ部4は、スクリュコンプレッサ1と車両とを連結するための部位である。具体的に、パイプ部4は、車両の外部の空気を吸入する吸入部41と、圧縮した空気を排出する排出部42と、を備える。また、本実施形態では、車両のエンジンからPTO軸(パワーテイクオフ軸)を介して動力を供給される場合について説明する。
【0019】
図3及び
図4に示すように、圧縮機2は、圧縮ケース21と、圧縮ケース21の内部に設けられる一対の圧縮ロータ22と、圧縮ロータ22に回動力を供給する一対の圧縮軸部23と、を備える。また、圧縮機2は、変速機3によって変速されて出力された動力(回動力)によって一対の圧縮軸部23及び圧縮ロータ22が回動するように構成されている。
【0020】
圧縮ケース21は、一対の圧縮ロータ22を内部に格納する圧縮室21aが内部に設けられたケースである。本実施形態の圧縮ケース21には、圧縮ケース21の外部と圧縮室21aを連通する吸入口2a及び排出口2bが形成されている。吸入口2aには、吸入部41が連結され、排出口2bには、排出部42が連結されている。
【0021】
圧縮ロータ22は、回動して空気を圧縮するロータである。本実施形態の圧縮ロータ22は、外周面に歯部222を備えた、オスメス一対のロータである。具体的に、圧縮ロータ22は、円柱形状の基部221と、基部221から径外側に突出するように設けられる歯部222と、を備える。このような一対の圧縮ロータ22は、回動することで互いの歯部222が噛み合い、吸入口2a側の空気を圧縮し、圧縮空気を排出口2bから排出する。また、吸入口2a側の空気が圧縮され排出口2bから排出されることで、吸入口2a側が陰圧となり、外部から吸入口2aに空気が吸入される。
【0022】
圧縮軸部23は、圧縮ロータ22に連結され、変速機3が出力した動力を圧縮ロータ22に伝動する部位である。具体的に、圧縮軸部23は、圧縮ロータ22に連結される棒状の圧縮軸本体231と、圧縮軸本体231に設けられる同期ギヤ232と、を備える。同期ギヤ232は、変速機3から出力された動力を受けて回動し、一対の圧縮ロータ22の歯部222が噛み合いながら回動できるように各圧縮軸部23の回動速度及び回動方向を調整する。
【0023】
以上のような構成の圧縮機2によれば、空気を吸入して圧縮し、圧縮空気を排出できる。
【0024】
図5乃至
図7に示すように、変速機3は、変速機3に入力される動力(回動力)を変速して圧縮機2に出力する。本実施形態で、変速機3は、車両のエンジンからPTO軸を介して供給される回動力を変速して圧縮機2に供給する。具体的に、変速機3は、回動力が入力される入力軸32と、回動力を変速しつつ伝達する変速ギヤ33と、変速された回動力を出力する出力軸34(
図4参照)と、入力軸32の一部、出力軸34、及び、変速ギヤ33が内部に設けられる変速ケース31と、を備える。また、変速機3は、変速ギヤ33と変速ギヤ33に供給される潤滑油5とを収容するギヤ室6を備える。
【0025】
変速ケース31は、箱状の部位であり、内部に、主に変速ギヤ33が収容されるケースである。具体的に、変速ケース31は、前方が開口した略箱状のケース本体部311と、ケース本体部311の前方の開口を覆うように設けられる前方蓋部312と、を備える。ケース本体部311には、前後方向の中途部分で前後に仕切る変速仕切部313が設けられている。具体的に、ケース本体部311は、変速仕切部313によって、前方に形成される前方領域31Fと、後方に形成される後方領域31Rと、に仕切られる。前方領域31Fは、ケース本体部311のうち、変速仕切部313よりも前方部分と前方蓋部312によって画定され、主に変速ギヤ33が格納される領域である。後方領域31Rは、ケース本体部311の変速仕切部313よりも後方部分と圧縮ケース21の外面によって画定され、主に同期ギヤ232が収容される領域である。
【0026】
本実施形態で、変速ケース31及び圧縮ケース21は、一体として構成されている。具体的に、変速ケース31及び圧縮ケース21は、1つのケースの内部を前側と後側に分ける全体仕切壁11(
図4参照)を備え、該1つのケースのうち、仕切られた領域の前側を変速ケース31、後側を圧縮ケース21として構成している。
【0027】
入力軸32は、回動力が入力される軸体である。入力軸32は、一端部(前端部)が動力源(本実施形態ではPTO軸)に連結され、他端部(後端部)が変速ギヤ33に連結される。具体的に、入力軸32は、動力源の回動力が伝達可能に連結される動力連結部321と、変速ギヤ33に連結される入力ギヤ連結部322と、を備える。入力ギヤ連結部322には、外周面に変速ギヤ33(具体的には入力ギヤ331)が、入力軸32と一体となって回動するように連結される。
【0028】
動力連結部321は、動力源に連結される部位である。具体的に、動力連結部321は、回動力が伝達可能なように動力源に連結される連結本体部3211と、動力源からの回動力が一定値を上回るときに、連結本体部3211を空回りさせるトルクリミッタ3212と、を備える。本実施形態の連結本体部3211は、PTO軸が挿入可能なフランジである。また、トルクリミッタ3212は、動力源から供給される回動力が一定値よりも大きい場合に連結本体部3211を入力ギヤ連結部322に対して空回りさせ、一定値以上の回動力が入力ギヤ連結部322を介して変速ギヤ33に入力されることを規制する。
【0029】
入力軸32は、前端部が変速ケース31から前方に突出するように設けられる。具体的に、入力軸32は、入力ギヤ連結部322が変速ケース31の内部に設けられ、動力連結部321が変速ケース31の外部に設けられる。即ち、動力連結部321は、前方蓋部312よりも前側に位置するように設けられている。また、動力連結部321は、トルクリミッタ3212及び連結本体部3211が変速ケース31から前方に突出するように設けられている。具体的に、連結本体部3211は、トルクリミッタ3212よりも前方に位置するように設けられている。
【0030】
変速ギヤ33は、入力軸32を介して供給された回動力を変速して出力する。また、変速ギヤ33は、入力軸32に供給された回動力を変速しつつ出力軸34に伝達する。変速ギヤ33は、径の異なる複数のギヤを備える。具体的に、変速ギヤ33は、入力軸32(入力ギヤ連結部322)に連結されて、入力軸32から回動力の供給を受けて回動する入力ギヤ331と、入力ギヤ331の回動に従属して回動する従動ギヤ332と、を備える。本実施形態で、従動ギヤ332は、入力ギヤ331よりも径が小さい。即ち、本実施形態の変速ギヤ33は、入力軸32を介して供給された回動力を増速して出力する。本実施形態では、入力ギヤ331の下端が、変速ギヤ33の下端331aである。
【0031】
複数の従動ギヤ332のうち、一の従動ギヤ332は出力軸34に連結され、出力軸34に回動力を供給する。具体的に、
図3に示すように、複数の従動ギヤ332のうち、一の従動ギヤ332は、出力軸34の外周に設けられ、出力軸34と一体となって回動する。
【0032】
このような変速ギヤ33が噛み合いながら回動する際には、ギヤの破損及び摩耗を抑制するために、潤滑油5が用いられる。本実施形態では、変速ギヤ33の下端部が漬浸するように潤滑油5が設けられ、ギヤが回動しながら、潤滑油5を掻き揚げたり跳ね上げたりすることで、変速ギヤ33全体に潤滑油5を行きわたらせることができる。
【0033】
出力軸34は、変速ケース31の後方に設けられ、変速機3と圧縮機2とを連結する部位である。具体的に、出力軸34は、前端部が変速ギヤ33に連結され、後端部が圧縮軸部23に連結される軸体である。即ち、変速ギヤ33が変速した回動力は、出力軸34を介して圧縮機2(圧縮軸部23)に伝達される。また、出力軸34は、変速仕切部313を貫通し、前方領域31Fから後方領域31Rに亘って設けられている。さらに、出力軸34は、全体が変速ケース31の内部(前方領域31F及び後方領域31R)に収容されている。
【0034】
ギヤ室6は、変速ギヤ33及び潤滑油5を収容する。具体的に、ギヤ室6は、変速ギヤ33を収容するギヤ室本体61と、ギヤ室本体61と連通するように設けられる膨出部62と、を備え、潤滑油5はギヤ室本体61及び膨出部62の両方に収容される。本実施形態で、ギヤ室本体61は、前方蓋部312と変速ケース31によって画定される領域(前方領域31F)である。また、ギヤ室本体61と膨出部62は、変速ギヤ33の回動中の潤滑油5の液面5aの位置より下方で連通している。即ち、ギヤ室6は、ギヤ室本体61と膨出部62の間で潤滑油5が行き来できる状態で潤滑油5を収容する。
【0035】
図5に示すように、膨出部62は、ギヤ室本体61(前方領域31F)から前方に膨出した部位である。即ち、膨出部62は、変速ケース31の前端部(前方蓋部312)から前側に突出した部位である。また、膨出部62は、変速ケース31から入力軸32が突出する方向と同じ方向(前側)に膨出した部位である。さらに、膨出部62の変速ケース31からの膨出量は、入力軸32の変速ケース31からの突出量よりも少ない。具体的に、膨出部62の変速ケース31からの膨出量は、トルクリミッタ3212の突出量よりも少ない。また、膨出部62は、変速ケース31の下端部から前方に膨出した部位である。
【0036】
図6及び
図8に示すように、膨出部62は、内部空間62Sを有し、内部に潤滑油5を収容可能である。具体的に、膨出部62は、後部が開口した箱型の形状であり、開口部分がギヤ室本体61と連通している。膨出部62は、膨出部62の内部の上面62b(内部空間62Sの上端)を画定する上壁部621と、膨出部62の内部の底面62a(内部空間62Sの下端)を画定する下壁部622と、膨出部62の内部の前端を画定する前壁部624と、膨出部62の内部の左右の端を画定する側壁部623と、を備える。上壁部621、下壁部622、及び、側壁部623は、前方蓋部312から前側に向かって延びる壁体である。前壁部624は、上壁部621、下壁部622、及び、側壁部623の前端部に連結される壁体である。また、本実施形態の膨出部62は、前方蓋部312と一体形成されている。
【0037】
上壁部621には、潤滑油5を給油するための給油口6211が形成されている。給油口6211は、上壁部621に形成された、上下方向に貫通する貫通孔である。また、給油口6211は、開閉可能な孔である。このように、膨出部62のうち、上壁部621に給油口6211が設けられるので、ギヤ室6に潤滑油5を給油する場合に、上から潤滑油5を入れることができるため、側面から入れる場合に比べて給油作業がしやすくなる。また、膨出部62に給油口6211が設けられるので、潤滑油5の液面5aの近くから給油することができる。
【0038】
図5、
図6及び
図9に示すように、膨出部62の内部空間62Sは、上下方向において、変速ギヤ33の下端331aの高さが、膨出部62の内部の上面62b(内部空間62Sの上端)及び底面62a(内部空間62Sの下端)の間に位置するように形成される。具体的に、膨出部62は、下壁部622の内面が、変速ギヤ33の下端331aよりも下方に位置し、上壁部621の内面が、変速ギヤ33の下端331aよりも上方に位置するように構成されている。また、膨出部62の内部の底面62a(下壁部622の内面)は、前側が上に、後側が下に位置するような傾斜面となっている。さらに、膨出部62の内部の底面62a(下壁部622の内面)は、ギヤ室本体61の内部の底面61aに比べて下方に位置している。膨出部62の内部の底面62aは、ギヤ室本体61の内部の底面61a以下の高さに位置しているので、ギヤ室本体61に溜まる潤滑油5が膨出部62に流れやすくなる。特に、本実施形態では、膨出部62の内部の底面62aは、ギヤ室本体61の内部の底面61aよりも下方に位置しているので、ギヤ室本体61に溜まる潤滑油5が重力によって膨出部62に流れやすくなる。
【0039】
潤滑油5は、ギヤ室6に設けられ、変速ギヤ33を潤滑する。具体的に、潤滑油5は、ギヤ室6に変速ギヤ33の下端部を漬浸することができる程度設けられる。即ち、潤滑油5は、液面5aが変速ギヤ33の下端331aよりも上方に位置する程度の量設けられる。また、潤滑油5は、上下方向において、液面5aが膨出部62の内部空間62Sの範囲に収まる程度の量設けられる。本実施形態で、潤滑油5の液面5aは、変速ギヤ33の下端331aよりも上方かつ、膨出部62の内部の上面62b(上壁部621の内面)よりも下方に位置する。
【0040】
潤滑油5は、液面5aが膨出部62の内部空間62Sの範囲に収まるように設けられる(具体的には、変速ギヤ33の下端331aよりも上方かつ、膨出部62の内部の上面62bよりも下方に位置するように設けられる)ので、液面5aの面積を膨出部62の内部空間62Sの分だけ大きくすることができる。よって、潤滑油5が変速ギヤ33に掻き揚げられて、ギヤ室6の底部に溜まる潤滑油5の量(体積)が変動したときに、液面5aが膨出部62の内部空間62Sの範囲内に収まらない場合に比べて潤滑油5の液面5aの高さの変動を抑制することができ、潤滑油5の液面5aの高さが安定する。また、膨出部62の内部の底面62a(下壁部622の内面)は、変速ギヤ33の下端331aよりも下方に位置するので、潤滑油5を変速ギヤ33が掻き揚げることができる範囲内に亘って潤滑油5の液面5aの面積を増加させることができる。よって、潤滑油5の液面5aの高さが安定する。
【0041】
以上のような構成のスクリュコンプレッサ1によれば、膨出部62によって潤滑油5の貯留量を増加させることができ、また、変速機3が入力軸32又は出力軸34の軸線方向に大きくなることを抑制できる。
【0042】
また、本実施形態のように、PTO軸のような、回動力を、軸体を介して入力軸32に入力する動力源から回動力の供給を受けるスクリュコンプレッサ1において、入力軸32は、トルクリミッタ3212と、トルクリミッタ3212の前側(変速ケース31から突出する側)に設けられる連結本体部3211と、を備え、膨出部62は、変速ケース31から入力軸32が突出する側に膨出し、膨出部62の変速ケース31からの膨出量は、トルクリミッタ3212の変速ケース31からの突出量未満であるので、膨出部62が、動力源の軸体と干渉して、動力源の軸体を連結本体部3211に連結しづらくなることを抑制できる。また、入力軸32の軸線方向におけるトルクリミッタ3212が設けられる分のスペースのうち空いている部分を有効活用して、潤滑油5の貯留量を増やすことができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0044】
例えば、スクリュコンプレッサ1は、粉粒体運搬車などの車両に設けられるとして説明したが、車両以外の動力源によって動力を供給されるように構成することもできる。
【0045】
また、変速機3は、動力源の回動力を増速して圧縮機2に伝達する増速機である場合について説明したが、このような構成に限らず、動力源の回動力を減速して圧縮機2に伝達する減速機として構成してもよい。減速機として構成する場合には、変速ギヤ33は、入力ギヤ331の径が従動ギヤ332の径よりも小さく構成される。
【0046】
さらに、変速ギヤ33の下端331aは、入力ギヤ331の下端であるとして説明したが、このような場合に限らず、従動ギヤ332の下端を変速ギヤ33の下端331aとして構成してもよい。このように構成した場合、潤滑油5の液面5aは、従動ギヤ332の下端より上方に位置するように設けられ、従動ギヤ332が潤滑油5を掻き揚げることができるように構成される。
【0047】
また、入力軸32の一部が変速ケース31から突出し、出力軸34は、全体が変速ケース31の中に設けられる場合について説明したが、出力軸34の一部が変速ケース31から突出するように構成することもできる。このように構成する場合には、膨出部62は、変速ケース31から後側(出力軸34が突出する側)に膨出するように構成することができる。
【0048】
さらに、膨出部62は、変速ケース31から前側及び後側のいずれか一方にのみ膨出する場合について説明したが、このような構成に限らず、変速ケース31の前側及び後側の両方に膨出するように構成することもできる。なお、膨出部62が変速ケース31の前側及び後側の両方に膨出する場合には、入力軸32及び出力軸34も一部が変速ケース31から前後に突出するように構成される。
【0049】
また、膨出部62は、内部の底面62aが変速ギヤ33の下端331aよりも下方に位置し、上面62bが変速ギヤ33の下端331aよりも上方に位置する場合について説明したが、このような構成に限らない。例えば、膨出部62の内部の上面62bが変速ギヤ33の下端331aよりも下方に位置することもできるし、膨出部62の内部の底面62aが変速ギヤ33の下端331aよりも上方に位置することもできる。
【0050】
さらに、上壁部621に給油口6211が設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、上壁部621以外の位置に給油口6211が設けられるよう構成することもできる。
【0051】
また、入力軸32は、トルクリミッタ3212を備える場合について説明したが、トルクリミッタ3212を備えない構成とすることもできる。
【0052】
さらに、膨出部62は、入力軸32よりも変速ケース31からの突出量が少ない場合について説明したが、入力軸32よりも突出量が多くなるように構成することもできる。
【0053】
また、前方領域31F全体がギヤ室本体61として構成される場合について説明したが、前方領域31Fのうち一部の空間をギヤ室本体61として構成することもできる。
【0054】
さらに、膨出部62の内部の底面62aは、ギヤ室本体61の内部の底面61aよりも下方に位置する場合について説明したが、膨出部62の内部の底面62aが、ギヤ室本体61の内部の底面61aよりも上方に位置してもよいし、膨出部62の内部の底面62aとギヤ室本体61の内部の底面61aが同じ高さであってもよい。
【0055】
また、膨出部62は、変速ケース31の前方蓋部312と一体形成される場合について説明したが、別体として構成することもできる。
【0056】
さらに、圧縮ケース21及び変速ケース31は一体である場合について説明したが、それぞれを別体のケースとして構成することもできる。
【0057】
また、圧縮機2は、一対の圧縮ロータ22を備える場合について説明したが、このような構成に限らず、圧縮機は、圧縮ロータ22の回動運動によって空気を圧縮する圧縮機であればよい。例えば、1軸の圧縮ロータの回動により空気を圧縮するよう構成することもできるし、外周面に歯部222を備えない圧縮ロータを採用することもできる。
【0058】
さらに、上記実施形態で、コンプレッサの一例として、スクリュコンプレッサ1を挙げて説明したが、スクリュコンプレッサ1以外のコンプレッサに本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1…スクリュコンプレッサ、11…全体仕切壁、2…圧縮機、21…圧縮ケース、22…圧縮ロータ、221…基部、222…歯部、23…圧縮軸部、231…圧縮軸本体、232…同期ギヤ、3…変速機、31…変速ケース、311…ケース本体部、312…前方蓋部、313…変速仕切部、32…入力軸、321…動力連結部、3211…連結本体部、3212…トルクリミッタ、322…入力ギヤ連結部、33…変速ギヤ、331…入力ギヤ、332…従動ギヤ、34…出力軸、4…パイプ部、41…吸入部、42…排出部、5…潤滑油、5a…液面、6…ギヤ室、61…ギヤ室本体、62…膨出部、62S…内部空間、621…上壁部、6211…給油口、622…下壁部、623…側壁部、624…前壁部
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮して排出する圧縮機と、前記圧縮機に動力を供給する変速機と、を備え、
前記圧縮機は、
回動する圧縮ロータと、
前記圧縮ロータを格納する圧縮ケースと、を備え、
前記変速機は、
前記圧縮ロータに回動力を供給する出力軸と、
前記出力軸に回動力を供給する入力軸と、
前記入力軸と前記出力軸とを連結し、前記入力軸の回動力を変速しつつ前記出力軸に伝達する変速ギヤと、
前記変速ギヤ及び前記変速ギヤに供給される潤滑油を内部に収容するギヤ室と、
前記ギヤ室の一部、前記入力軸の少なくとも一部、及び、前記出力軸の少なくとも一部が内部に設けられた変速ケースと、を備え、
前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方は、一部が前記変速ケースから外方に突出し、
前記ギヤ室は、前記潤滑油を内部に収容可能な膨出部を備え、
前記膨出部は、
前記変速ケースから、前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方が突出する側に膨出し、
前記入力軸及び前記出力軸の少なくとも一方と並んで設けられ、
前記膨出部の内部の底面は、前記変速ギヤから遠い側よりも近い側が下方に位置するように構成されているコンプレッサ。
【請求項2】
前記ギヤ室は、前記変速ギヤが収容されるギヤ室本体を備え、
前記膨出部の内部空間は、前記ギヤ室本体の内部空間と連通して設けられ、
前記膨出部の内部の底面は、前記ギヤ室本体の内部の底面以下の高さに位置するよう設けられる請求項1に記載のコンプレッサ。
【請求項3】
前記膨出部は、内部の上面が前記変速ギヤの下端よりも上方に位置するように設けられ、
前記潤滑油は、液面が前記変速ギヤの下端よりも上方、かつ、前記膨出部の内部の上面よりも下方に位置するように充填される請求項1又は2に記載のコンプレッサ。
【請求項4】
前記膨出部は、内部の底面が前記変速ギヤの下端よりも下方に位置するように設けられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンプレッサ。