(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138490
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】多軸インテグラルジオグリッド並びにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
E02D17/20 103B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112463
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2022577148の分割
【原出願日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】63/043,627
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/154,209
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/154,588
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/355,843
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522301474
【氏名又は名称】テンサー インターナショナル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、カーソン
(72)【発明者】
【氏名】トム-ロス、ジェンキンス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、エドワード、ウォーラー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、ジョン、ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、マーク、ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】マノイ、クマール、ティアギ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ、カバノフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造物や建造物の補強および安定化、および他の地質工学的目的のために使用されるインテグラルジオグリッドおよび他の配向グリッドに全体として提供する。
【解決手段】骨材を安定化させるのに適した単層多軸インテグラルジオグリッドは、複数の相互接続する配向ストランドと複数の部分配向接合部とを含み、配向ストランドおよび部分配向接合部は、一連の開口を有する外側六角形の繰り返しパターンを形成する。外側六角形の各々から内方に延びる配向リブが、配向ストランドを有する小型の内側六角形を支持するとともに取り囲むことにより、複数の台形開口および単一の六角形開口が形成される。外側六角形の配向ストランドおよび部分配向接合部は、多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形強軸ストランドを形成するとともに、さらなる三角形開口を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相互接続する配向ストランドと複数の部分配向接合部とを備える多軸インテグラルジオグリッドであって、前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、一連の開口を有する外側六角形の繰り返しパターンを形成し、
前記外側六角形の各々は、配向ストランドを有する小型の内側六角形を支持するとともに取り囲み、
前記外側六角形の前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形ストランドを規定する、
多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項2】
複数の前記線形ストランドは、外側六角形の内側と交差することなく、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる、
請求項1に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項3】
前記配向ストランドは、二軸延伸されている、
請求項1または2に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項4】
前記小型の内側六角形は、前記骨材の圧縮中に、前記ジオグリッドの平面から上下に偏向可能である、
請求項1、2または3に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項5】
前記小型の内側六角形は、前記骨材の圧縮中に、前記ジオグリッドの前記平面から上下に、前記部分配向接合部の厚さの約33%まで偏向可能である、
請求項4に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項6】
前記配向多軸インテグラルジオグリッドは、三軸インテグラルジオグリッドの個別開口部面積分布、強度、および剛性に対して、高い個別開口部面積分布および剛性を呈する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項7】
前記配向ストランドは、繰り返される六角形の形状、台形の形状、および三角形の形状を有する開口を形成する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項8】
前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる3種の連続強軸ストランドが存在し、前記ストランドは、互いから約120°で離間する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項9】
前記ジオグリッドは、単層である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項10】
前記ジオグリッドは、約3mm~約9mmの厚さを有する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項11】
前記ジオグリッドは、約4mm~約7mmの厚さを有する、
請求項10に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項12】
前記開口は、少なくとも200mm2の異なる粒子サイズを有する粒状材料との相互作用範囲を提供する、
請求項7に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項13】
前記配向ストランドは、少なくとも1.0、好適には1.86を超えるアスペクト比を有する、
請求項1~12の一項に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項14】
前記小型の内側六角形は、周囲の前記外側六角形の全厚の33%の量で上下に偏向可能である、
請求項4に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項15】
前記小型の内側六角形は、前記骨材の圧縮中に、約50%~約75%程度のコンプライアンス領域において、前記ジオグリッドの前記平面から上下に偏向可能である、
請求項4に記載に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項16】
ポリマーシートを備える多軸インテグラルジオグリッドを製造するための出発材料であって、
前記ポリマーシートは、3種の異なる形状の開口と複数の線形ストランドとを提供する孔または凹部からなるパターンを有し、
前記シートが二軸延伸されると、前記線形ストランドは、前記多軸ジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる、
出発材料。
【請求項17】
前記シートが二軸延伸されると、前記孔または凹部からなるパターンは、開口からなる六角形パターン内に、配向ストランドから形成される繰り返される六角形を提供する、
請求項16に記載の出発材料。
【請求項18】
前記3種の異なる形状の開口は、繰り返される六角形の形状、台形の形状、および三角形の形状である、
請求項16または17に記載の出発材料。
【請求項19】
前記ポリマーシートは、約3mm~約10mmの初期厚さを有する、
請求項16、17または18に記載の出発材料。
【請求項20】
前記ポリマーシートは、約5mm~約8mmの初期厚さを有する、
請求項19に記載の出発材料。
【請求項21】
前記多軸ジオグリッドは、請求項1~15のいずれか一項に記載されるものである、
請求項16に記載の出発材料。
【請求項22】
多軸インテグラルジオグリッドを製造する方法であって、
ポリマーシートを提供するステップと、
パターン化された複数の孔または凹部を、前記ポリマーシートに提供するステップと、
前記パターン化された複数の孔または凹部を有する前記ポリマーシートを配向して、複数の相互接続する配向ストランドと部分配向接合部とを提供するステップであって、前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、一連の開口を有する外側六角形の繰り返しパターンを形成し、前記外側六角形の各々は、前記外側六角形の内側に、配向ストランドを有する小型の内側六角形を支持するとともに取り囲み、前記外側六角形の前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形ストランドを形成する、ステップと、
を備える方法。
【請求項23】
多軸インテグラルジオグリッドを製造する方法であって、
ポリマーシートを提供するステップと、
パターン化された複数の孔または凹部を、前記ポリマーシートに提供するステップと、
前記パターン化された複数の孔または凹部を有する前記ポリマーシートを配向して、複数の相互接続する配向ストランドと部分配向接合部とを提供するステップであって、前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、一連の開口を有する外側六角形の繰り返しパターンを形成し、前記外側六角形の各々は、配向ストランドを有する小型の内側六角形を支持するとともに取り囲み、前記外側六角形の前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形ストランドを規定する、ステップと、
を備える方法。
【請求項24】
前記パターン化された複数の孔または凹部を有する前記ポリマーシートは、二軸延伸により配向される、
請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマーシートは、約3mm~約10mmの初期厚さを有する、
請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマーシートは、約5mm~約8mmの初期厚さを有する、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記開口は、繰り返される六角形の形状、台形の形状、および三角形の形状を有する、
請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記多軸ジオグリッドは、請求項1~15のいずれか一項に記載されるものである、
請求項22または23に記載の方法。
【請求項29】
パターン化された複数の孔または凹部を有するポリマーシートである出発材料を二軸延伸して多軸インテグラルジオグリッドを提供するステップであって、前記多軸インテグラルジオグリッドは、複数の相互接続する配向ストランドと複数の部分配向接合部とを有し、前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、一連の開口を有する外側六角形の繰り返しパターンを形成し、前記外側六角形の各々は、配向ストランドを有する小型の内側六角形を支持するとともに取り囲み、前記外側六角形の前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形ストランドを規定する、ステップと、
前記多軸インテグラルジオグリッドを、粒子状材料の塊に埋設するステップと、
を備える多軸インテグラルジオグリッド構造物を提供する方法。
【請求項30】
複数の前記線形ストランドは、外側六角形の内側と交差することなく、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記開口は、繰り返される六角形の形状、台形の形状、および三角形の形状を有する、
請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記多軸ジオグリッドは、請求項1~15のいずれか一項に記載されるものである、
請求項29または30に記載の方法。
【請求項33】
複数の相互接続する配向ストランドと複数の部分配向接合部とを備える多軸インテグラルジオグリッドであって、前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、一連の開口を有する選択された外側の幾何学的形状の繰り返しパターンを形成し、
前記外側の幾何学的形状の各々は、配向ストランドを有する小型の内側の幾何学的形状を支持するとともに取り囲み、前記内側の幾何学的形状は、前記外側の幾何学的形状と同一である、または異なり、
前記外側の幾何学的形状の前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、少なくとも2つのセットの実質的に平行な線形ストランドであって、前記多軸ジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる線形ストランドを形成する、
多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項34】
前記外側の幾何学的形状と前記内側の幾何学的形状とは同一であり、前記形状は、三角形、長方形、正方形、および六角形からなるグループから選択される、
請求項33に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項35】
前記内側の幾何学的形状は、前記外側の幾何学的形状内において可撓性を有する、または可撓性を有しない、
請求項33または34に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項36】
粒子状材料の塊と、
前記粒子状材料に埋設されるとともにこれと係合する多軸インテグラルジオグリッドであって、複数の相互接続する配向ストランドと複数の部分配向接合部とを有し、前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、一連の開口を有する外側六角形の繰り返しパターンを形成する、多軸インテグラルジオグリッドと、
を備える補強安定化複合土壌構造であって、
前記外側六角形の各々は、配向ストランドを有する小型の内側六角形を支持するとともに取り囲み、
前記外側六角形の前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形ストランドを形成する、
補強安定化複合土壌構造。
【請求項37】
複数の相互接続する配向ストランドと複数の部分配向接合部とを備える多軸インテグラルジオグリッドであって、前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、一連の開口を有する外側六角形の繰り返しパターンを形成し、
前記外側六角形の各々は、配向リブにより小型の配向内側幾何学的構成を支持し、
前記配向ストランド、前記部分配向接合部、前記配向リブ、および前記小型の配向内側幾何学的構成は、前記多軸ジオグリッドの全体に亘って繰り返される少なくとも3種の異なる幾何学的構成を形成し、
前記外側六角形の前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形ストランドを規定する、
多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項38】
前記3種の異なる幾何学的構成は、六角形、台形、三角形である、
請求項37に記載の多軸インテグラルジオグリッド。
【請求項39】
特定の骨材に関連する特定のジオグリッドの性能を判定する方法であって、
前記ジオグリッドおよび一定量の前記骨材を用いて標準化された保持性試験を実施するステップと、
前記試験中に、前記ジオグリッドが前記骨材の少なくとも約50%を捕捉したか否かを判定するステップと、
を備える方法。
【請求項40】
前記捕捉についての前記判定が、少なくとも75%、好適には90%を超える、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ジオグリッドは、請求項1~15のいずれか一項に記載の多軸ジオグリッドである、
請求項39または40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年6月24日出願の米国特許仮出願第63/043,627号、2021年2月26日出願の米国特許仮出願第63/154,209号、2021年2月26日出願の米国特許仮出願第63/154,588号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、構造物や建造物の補強および安定化、および他の地質工学的目的のために使用されるインテグラルジオグリッドおよび他の配向グリッドに全体として関する。より詳細には、本発明は、単層多軸グリッド形状を有するこのようなインテグラルジオグリッドに関する。インテグラルジオグリッドは、より多様で幅広い性質の骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させる高い能力を有しているとともに、本明細書に開示される他の望ましい特性を有しており、これらを組み合わせると、性能が向上し、より大きい経済的利益が得られ、かつ環境保全上の利点が得られる。
【0003】
また、本発明は、このような多軸インテグラルジオグリッドを作製する方法に関する。
【0004】
最後に、本発明は、土壌および微粒子を補強し安定化させるためのこのような多軸インテグラルジオグリッドの使用、およびこのような補強および安定化の方法に関する。
【0005】
本発明の目的に関して、用語「インテグラルジオグリッド」は、必要な厚さを有するシートまたはシート状形状にあるとともに孔または凹部が設けられたポリマー出発材料を配向すなわち延伸することにより製造されたインテグラルジオグリッドおよび他のインテグラルジオグリッド構造を含むことを意図している。
【0006】
実質的に平行の配向ストランドおよびそれらの間の接合部からなる種々の幾何学的パターンにより規定されたメッシュ開口を有するポリマーインテグラルグリッド構造、例えばインテグラルジオグリッドは、35年間にわたり製作されている。このようなグリッドは、孔または凹部からなる所定パターンを有する一体鋳造された出発シートを押出して形成し、次いで、シートを制御された一軸または二軸延伸および配向に供して、孔または凹部により形成されたメッシュ開口により規定された高度に配向された(高度配向)ストランドおよび部分的に配向された(部分配向)接合部にすることにより製作されている。シートをこのように一軸および二軸方向において延伸および配向することにより、対応するストランド方向におけるストランド引張強度および係数が得られる。また、これらのグリッド構造の性能において、ストランド強度が重要であるだけでなく接合部強度も重要であることも知られている。これらのインテグラル配向ポリマーグリッド構造は、土壌、土、砂、粘度、砂利等の任意の適切な形態にある粒子状材料を、道路または他の切削または盛り土の側部、路面下、滑走面等の任意の適切な場所において保持する、または安定化させるために使用され得る。
【0007】
より高いレベルの強度重量比を達成するため、または作製プロセス中のより迅速な加工速度を達成するために、孔の種々の形状やパターンが実験されてきた。配向は、制御された温度およびひずみ速度の下で実現される。本プロセスにおける変数の一部には、ポリマーの延伸比、分子量、分子量分布、分岐または架橋の度合が含まれる。
【0008】
このようなインテグラルジオグリッドおよび他のインテグラルグリッド構造の作製および使用は、周知技術により実現され得る。マーサーに対する米国特許第4,374,798号、マーサーに対する米国特許第4,590,029号、マーサーおよびマーチンに対する米国特許第4,743,486号、マーサーに対する米国特許第4,756,946号およびマーサーに対する米国特許第5,419,659号に詳細に記載されるように、出発ポリマーシート材料が、まず押し出され、次いで打抜きにより孔または凹部からなる必要な所定のパターンが形成される。そして、打抜きされたシート材料を必要により延伸および配向することにより、インテグラルジオグリッドが形成される。
【0009】
このような、一軸インテグラルジオグリッドおよび二軸インテグラルジオグリッド(総称的に「インテグラルジオグリッド」、または別個に「一軸インテグラルジオグリッド」または「二軸インテグラルジオグリッド」)であるこのようなインテグラルジオグリッドは、1970年代末に上述のマーサーが発明して、過去35年間に亘り多大な商業的成功を収めて、土壌、道路の基礎層およびその他の粒状骨材または粒子状材料からなる土木構造の強化技術を完全に革命化させた。
【0010】
マーサーは、比較的厚い、好適には1.5mm(約0.06インチ)~4.0mm(約0.16インチ)程度の厚さを有する実質的に一平面状のポリマー出発シートであって、中心が行および列からなる想定上の実質的に正方形または矩形グリッド上に位置する孔または凹部からなるパターンを有するポリマー出発シートから始めて、ストランドの配向が接合部まで延びるように出発シートを一軸または二軸方向に延伸させることにより、全く新しい実質的に一平面状のインテグラルジオグリッドが形成され得ることを見出した。マーサーが記載するように、「一平面状」とは、シート状材料のすべてのゾーンが、シート状材料の正中面を中心として全体的に対称であることを意味する。マーサーのジオグリッドは、土木・地質工学的用途における使用に関連するニーズに対応したものである。高い強度および剛性を有する一方向または二方向におけるストランド、および高い完全性および剛性を有する接合部が必要とされた。この目的は、ジオグリッドを堅牢かつ土木・地質工学的用途における目的に適合したものとすること、そして、土壌および骨材粒子がストランドおよび接合部内に落下してこれらに閉じ込められ得るようにすることである。
【0011】
米国特許第3,252,181号、第3,317,951号、第3,496,965号、第4,470,942号、第4,808,358号および第5,053,264号において、孔または凹部からなる必要なパターンを有する出発材料は、円筒状ポリマー押出成形と併せて形成され、この押出物を拡大マンドレル上を通過させることにより実質的な一平面性が達成される。次いで、拡大した円筒状物に長手方向に切り込みを入れることで、平坦で実質的に一平面状の出発シートが生成される。
【0012】
別のインテグラルジオグリッドが、ジョージア州アトランタのテンサー・インターナショナル・コーポレーション(以下「テンサー」)の関連会社であるテンサー・インターナショナル・リミテッドに譲渡されたウォルシュに対する米国特許第7,001,112号(以下「ウォルシュ’112特許」という)に記載されている。ウォルシュ’112特許は、二軸延伸インテグラルジオグリッドを含む配向ポリマーインテグラルジオグリッドを開示している。ここでは、配向ストランドが、各隅部に部分配向接合部を有するとともに、各接合部で合流する6本の高度配向ストランドを有する三角形のメッシュ開口を形成している(以下、本明細書において「三軸インテグラルジオグリッド」と称する場合がある)。ウォルシュ’112特許の三軸インテグラルジオグリッドは、テンサーにより商品化され、大きく成功している。ウォルシュ’112特許のジオグリッドは、使用中に受ける荷重をより良好に分散しこれに抵抗するよう、二方向を超える方向におけるストランドであって高い強度および剛性を有するストランドと、高い完全性および剛性を有する接合部とを追加するとともに、ジオグリッドとともに設置された土壌または骨材を拘束し支持するジオグリッドの能力を向上させるように三角形の開口部を使用することにより、マーサー技術を改善するニーズに取り組んだ。
【0013】
より最近では、改良されたインテグラルジオグリッドが、ウォルシュに対する米国特許第9,556,580号、ウォルシュに対する米国特許第10,024,002号、およびウォルシュに対する米国特許第10,501,896号に開示されており、これらはすべて、当特許出願の譲渡人の別の関連会社であるテンサー・テクノロジー社に譲渡されている。上述のウォルシュ米国特許第9,556,580号、10,024,002号、および10,501,896号は、高アスペクト比として当業者に知られているもの、すなわちストランド断面の幅に対する厚さまたは高さの比が1.0より大きいインテグラルジオグリッドを開示している。以降、これらの特許を、高アスペクト比(High Aspect Ratio)特許、またはウォルシュHAR特許と称する。ウォルシュHAR特許の高アスペクト比ジオグリッドも、テンサーにより商品化され、大きく成功している。
【0014】
ウォルシュHAR特許の教示によれば、高いアスペクト比を有するリブまたはストランド断面を有する適切な開口部安定係数(ASM)を持つ多軸ジオグリッドが、ジオグリッドの単数または複数の層が地盤改良または路盤補強として採用される道路や鉄道等の土木構造体において、補強または安定化要素として利用される場合、良好な性能が提供されるということである。ウォルシュHAR特許のこの開示は、最大開口部安定係数を有することが望まれるとする先行技術の教示に取って代わった。
【0015】
ウォルシュHAR特許は、従来の多軸ジオグリッドにおいて、ウォルシュの
図5に示すリブのアスペクト比と轍(わだち)深さとの関係に代表される、リブのアスペクト比とトラフィック性能との関係が、線形ではないことを示している。アスペクト比が0.375から1.4に変化すると、轍の深さは38mmから23mmに減少するが、1.4から2.2に増加すると轍の深さは19mmに減少する。この改善は有意義であるが、グリッド構造の厚さを増加させることにより単にリブのアスペクト比を増加させるだけでは、重量が増加するとともに製品コストが高騰する。
【0016】
ウォルシュHAR特許は、二方向を超える方向におけるストランドであって高い強度および剛性を有するストランドと、高い完全性および剛性を有する接合部とを追加するウォルシュ技術をさらに改良し、引張ストランドの寸法および位置を慎重に変更することで、ジオグリッドとともに設置された土壌または骨材を拘束し支持するジオグリッドの能力をさらに向上させたことを実証している。
【0017】
さらに別のインテグラルジオグリッドが、CN 102615818 Aに開示されている。これは、亀甲パターンに似た形状を有するプラスチック製ジオグリッドを対象としている。「六角形中の六角形」のグリッド形状が開示されているが、ジオグリッドの長さまたは幅のいずれかに亘って直線的に連続するストランドは、この形状には存在しない。
【0018】
したがって、上述の従来の出発材料から作製されたインテグラルジオグリッドは、土壌および他の骨材と係合しこれを安定化させる目的に対しては、概して申し分ない性質を呈し得る。しかしながら、ジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる線形のストランドが存在しないことにより、ジオグリッドの構造的完全性が大きく損なわれるとともに、ジオグリッドの面内引張特性およびジオシンセティック用途におけるその有用性が制限されている。
【0019】
本発明は、シート形成の開始方法や、出発材料をインテグラルジオグリッドまたはグリッド構造に配向する方法に関係なく、すべてのインテグラルグリッドに適用可能であることが意図されている。上述の米国特許第3,252,181号、第3,317,951号、第3,496,965号、第4,470,942号、第4,808,358号、第5,053,264号、第7,001,112号、第9,556,580号、第10,024,002号および第10,501,896号の主題は、開示内容がその全体としてここに示されたかのように参照によりこの明細書に明示的に組み込まれる。これらの特許は、例示として引用するものであり、インテグラルポリマーグリッド材料の作製について当技術分野で知られている他の技術を、包含するものとも除外するものともみなされない。
【0020】
多軸ジオグリッドを含むジオシンセティックが車両交通の轍の影響に対向するために道路用途で使用される場合、土壌や石等の粒状材料上におけるその性能を説明および/または予測するメカニズムは、まだ発展途上にある。研究により、ジオグリッドの物理的および/または機械的性能のみに基づいて道路用途におけるジオグリッドの性能を説明および/または予測することは不可能であると示されている。例えば、Giroud,J.P.and Han,J.,“「ジオグリッドで補強された未舗装道路に対する設計方法、I:設計方法の開発」に対する閉鎖”Journal of Geotechnical and Geoenvironmental Engineering,ASCE,Vol.130,No.8,pp.775-786,August 2004;Webster,S.L.,“軽飛行機用の可撓性舗装道路のためのジオグリッド補強路盤:試験区間建設、交通挙動、室内試験、および設計基準”Report DOT/FAA/RD-92,December 1992を参照。したがって、ジオグリッドと、ジオグリッドに閉じ込められるとともに拘束された粒状材料とからなる複合マトリクスを考える必要がある。
【0021】
既存の先行技術のジオグリッドは、粒状材料のサイズとジオグリッド開口部のサイズとの関係を最適化することを目的として、かつ高度な「通り抜け(ストライクスルー)」または「通過」、すなわち骨材グラデーションの多くがジオグリッドの開口部に落下することにより粒状材料が閉じ込めリブの側壁に当接し得ることを目標として開発されてきた。例えば、マーサー 米国特許第5,419,659号,col.21,lines 32-43;ウォルシュHAR特許 No.10,501,896,col.1,lines 51-64 and col. 4, line 62 - col. 5, line 11;“Geosynthetic Design & Construction Guidelines-Reference Manual-NHI Course No.132013,”U.S. Department of Transportation Federal Highway Administration Publication No.FHWA NHI-07-092,August 28,2008;“Use of Geogrid for Strengthening and Reducing the Roadway Structural Sections,”NDOT Research Report,Report No.327-12-803,January 2016を参照。ウォルシュHAR特許および他の先行技術の場合、開口部の単一サイズは、個々の粒子が完全に閉じ込められることを意図して、比較的大きな粒状粒子サイズに一致していた。下の写真に示すウォルシュHAR特許のアプローチを参照。
【0022】
【0023】
したがって、最適な性能のために、最適な骨材粒子サイズの範囲は、各ジオグリッド用途に選択されたジオグリッド構造の開口部サイズによって制限されていた。
【0024】
道路等の公共インフラは、老朽化が進み性能が低下しているため、これらの資産を交換しアップグレードするニーズが高まっている。これと同時に、道路や他の公共インフラの建設に従来的に使用されている材料は、特に高品質の天然骨材の採掘による環境への影響を理由としてコスト上昇と不足が続いている。この結果、より容易に入手できて調達に環境負荷の少ない材料を使用したいというニーズが高まっている。典型的には、これらの材料は、その性質において従来の材料と異なり、そして性能が低いことが多い。
【0025】
したがって、性能および経済性の向上を促進し得ると同時に、道路等の公共インフラへの環境影響を軽減し得るジオグリッド材料に対する商業的および環境的ニーズが存在する。このため、従来のジオグリッドに関連する形状よりも多様で幅広い品質の骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させることができる形状を有するインテグラルジオグリッドであって、少なくとも2方向に連続ストランドを含む形状を有しつつ、同時に、現在のインテグラルジオグリッドでは得られない他の所望の性質に加えて様々な程度の局所的な面外剛性を提供するインテグラルジオグリッドに対するニーズが存在している。
【発明の概要】
【0026】
先行のジオグリッド構造に関連する形状よりも多様で幅広い品質の骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させることができる形状を有するインテグラルジオグリッドであって、少なくとも2方向に連続ストランドを含む形状を有しつつ、同時に、様々な程度の局所的な面外および面内剛性、ならびに他の所望の性質を提供するインテグラルジオグリッドを達成するために、本発明は、異なる長さ、高さおよび幅を有するリブから形成される、異なる形状およびサイズの開口部から構成される繰り返し形状を有する単層多軸グリッドを提供する。ここで、リブは、好適には、1.0を超えるアスペクト比を有する。一部のリブは、グリッドを横切って連続する直線的な態様において横方向および斜め方向に延び、他のストランドは、局所的なコンプライアンスゾーンを提供するように中断される。
【0027】
より具体的には、本発明による多軸ジオグリッドは、以下の特徴を組み合わせている。
・異なる幅および深さを有するリブであって、好適には高いアスペクト比を保持するリブ
・様々な粒状材料に良好に適合する異なる開口部形状およびサイズ
・単位面積当たりの配向リブの個数を増加させることで粒状材料を良好に閉じ込める繰り返し形状
・単位面積当たりの配向リブ間に形成された角度の個数を増加させることで粒状材料を良好に閉じ込める繰り返し形状
・単位面積当たりの配向リブ間に形成された異なる角度を含むことで粒状材料を良好に閉じ込める繰り返し形状
・負荷分散を容易にするインテグラル接合部
・ジオグリッドの全体に亘って複数の方向に連続的に延びて荷重分布を最適化する安定強化強軸ストランド
・局所的に変更可能な面内および面外剛性。
【0028】
好適な実施形態において、本発明は、相互接続した配向ストランドと部分配向接合部とからなる繰り返しパターンを採用する。配向ストランドおよび部分配向接合部は、外側六角形の繰り返されるパターンを形成する。外側六角形の各々は、内側の小型六角形を支持するとともに取り囲んで、単層多軸インテグラルジオグリッドの3種の異なる形状の開口を規定する。また、さらなる強度および安定性を提供するように、外側六角形の形状は、他の外側六角形の内部に交差することなく、多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形ストランド、または強軸ストランドすなわちリブを形成または規定する。これにより、ジオグリッドは骨材の安定化に適したものとなる。連続的な線形ストランドは、配向ストランドおよび部分配向接合部からなり、これらは外側六角形を規定するとともに同一ラインまたはストランド方向に整列することを理解されたい。外側六角形の連続線形ストランドは、隣接する外側六角形間に三角形の開口も形成する。それらは、ジオグリッドの全体に亘って繰り返され、さらなるストランドまたはリブにより遮られない。
【0029】
このように形成されているため、内側六角形は、さらなるストランドまたはリブにより遮られない六角形の開口を規定する6本の配向ストランドから構成される。内側六角形は、外側六角形の部分配向接合部から内側六角形の各隅部まで延びて配向三結節点を形成する6本の配向接続ストランドにより支持される。三結節点は、部分配向接合部よりもはるかに高いレベルの配向性を有し、完全に配向される傾向がある。内側六角形を構成する6本の配向ストランドおよび6本の支持配向接続ストランドは、外側六角形の隣接する配向ストランドとともに、6個の台形の開口部を形成する。台形の開口部のすべては、さらなるストランドまたはリブにより遮られない。
【0030】
また、前段落に記載の構成により、内側六角形が外側六角形構造に対して懸架された、すなわち浮いた構造が形成される。このような構造により、内側六角形は、ジオグリッドの主平面に対して、および、外側六角形を規定する配向ストランドおよび部分配向接合部からなる連続線形ストランドに対して、上方または下方に変位して「浮く」または曲がる、すなわち変形することができる。したがって、骨材の配置および圧縮に際して、骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させるジオグリッドの能力が、浮き内側六角形により向上する。
【0031】
上述のジオグリッド構造を、以下において「六角形パターン内で繰り返される浮き六角形」または単純に「六角形パターン内の浮き六角形」としばしば称する。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、多軸インテグラルジオグリッドを製造するための出発材料は、孔または凹部を有するポリマーシートを含む。出発材料が二軸延伸されると、孔または凹部は種々の形状の開口を提供する。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、多軸インテグラルジオグリッドは、六角形パターン内で繰り返される浮き六角形を含む。
【0034】
本発明のまた別の実施形態によれば、土壌構造物は、粒子状材料の塊を含み、粒子状材料の塊は、その中に、六角形パターン内で繰り返される浮き六角形を有する,ポリマー出発シートから作製された多軸インテグラルジオグリッドが埋設されることで強化および安定化される。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態によれば、多軸インテグラルジオグリッド用の出発材料を製造するための方法は、ポリマーシートを提供するステップと、これに孔または凹部を提供して、相互接続した配向ストランドおよび開口からなる六角形パターン内で繰り返される浮き六角形を有する多軸インテグラルジオグリッドを形成するステップと、を含む。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、多軸インテグラルジオグリッドを製造するための方法は、ポリマーシートを提供するステップと、これに孔または凹部を提供するステップと、孔または凹部を有するポリマーシートを二軸延伸して、六角形パターン内で繰り返される浮き六角形の形状にある種々の形状の開口を有する複数の相互接続した配向ストランドを提供するステップと、を含む。
【0037】
そして、本発明のまた別の実施形態によれば、粒子状材料の塊を強化するための方法は、粒子状材料の塊内に、粒子状材料の塊を安定化させるという使用に適したポリマーシートから作製された六角形パターン内で繰り返される浮き六角形を有する多軸インテグラルジオグリッドを埋設するステップを含む。
【0038】
したがって、本発明の目的は、六角形パターン内で繰り返される浮き六角形を有する多軸インテグラルジオグリッドを製造するための出発材料を提供することである。出発材料は、孔または凹部を有するポリマーシートを含む。出発材料が二軸延伸されると、孔または凹部は開口を提供する。
【0039】
本発明の別の目的は、骨材を安定化させるとともに強化するのに適した多軸インテグラルジオグリッドであって、ポリマーシートから作製された六角形パターン内で繰り返される浮き六角形を含み、多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる線形ストランドを有する多軸インテグラルジオグリッドを提供することである。本発明の関連する目的は、先行のジオグリッド構造に関連する形状よりも、多様で幅広い品質の骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させることができる形状を提供すると同時に、種々の程度の局所的な面外および面内剛性、および他の所望の多様な特性を提供することである。
【0040】
本発明のさらに別の目的は、粒子状材料の塊を含む土壌構造物であって、粒子状材料の塊は、その中に、角形パターン内で繰り返される浮き六角形を有する、ポリマーシートから作製された六多軸インテグラルジオグリッドが埋設されることで強化および安定化された土壌構造物を提供することである。
【0041】
本発明のさらに別の目的は、多軸インテグラルジオグリッド用の出発材料を製造する方法であって、ポリマーシートを提供するステップと、これに孔または凹部を提供して、相互接続した配向ストランドおよび開口からなる六角形パターン内で繰り返される浮き六角形を有する多軸インテグラルジオグリッドを形成するステップと、を含む方法を提供することである。
【0042】
本発明の別の目的は、インテグラルジオグリッドを製造する方法を提供することである。本方法は、ポリマーシートを提供するステップと、これに孔または凹部を提供するステップと、孔または凹部を有するポリマーシートを二軸延伸して、多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる線形ストランドを含む、一連の開口を有する複数の相互接続した配向ストランドと、多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる線形ストランドを含む、相互接続した配向ストランドおよび開口からなる六角形パターン内で繰り返される浮き六角形とを提供するステップと、を含む。本方法は、上述の米国特許第4,374,798号、第4,590,029号、第4,743,486号、第5,419,659号、第7,001,112号、第9,556,580号、第10,024,002号、第10,501,896号、ならびに他の特許に記載の既知のジオグリッド製造方法を採用することができる。
【0043】
本発明による多軸インテグラルジオグリッドに関連する多数の利点は、その性質において多様である。相互接続した配向ストランドおよび開口からなる六角形パターン内で繰り返される浮き六角形により、多軸インテグラルジオグリッドは、種々のサイズの骨材に、すなわち制限開口部寸法を変更することにより、良好に適合することができる。先行する市販のインテグラルジオグリッド構造は、典型的に1つの基本構造と1つの限定された寸法を有するが、本発明による多軸インテグラルジオグリッドは、3種の異なる基本形状、本例において、六角形、台形、および三角形を利用する。そして、これらの形状は、種々の形状および寸法の配向ストランドまたはリブにより規定されるとともに結合されている。このため、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、ジオグリッド全体に分布する骨材の通常発生する種々の角度、配向、およびサイズに良好に適合することができる。
【0044】
さらに、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、開口部サイズの広い分布範囲を提供することにより、多種の骨材を安定化させるのに一層適している。この結果、多様で幅広い性質を有する骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させる能力が、先行の多軸インテグラルジオグリッドに見られるような概して単一サイズ図の三角形または長方形のものより向上する。本発明の多軸インテグラルジオグリッドのパターンは、大型の周囲六角形と組み合わせた妨げられない開放した内側六角形を有している。これにより、最適な骨材閉じ込めおよび横方向拘束が提供される。開口部サイズのさらなる分布は、繰り返される台形および三角形の形状の開口部を介して達成される。
【0045】
また、本発明の多軸インテグラルジオグリッドにより、先行のインテグラルジオグリッドのアスペクト比と比較して、すべてのストランドに高いアスペクト比を提供する。本発明の高いアスペクト比により、骨材のインターロックが増加するため、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、骨材の種々のアスペクト比に良好に適合することができる。
【0046】
相互接続した配向ストランドおよび開口からなる特化矩形パターン内で繰り返される浮き六角形により、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、先行のインテグラルジオグリッドと比較して、ストランド要素の個数およびタイプが増加していることも特徴である。そして、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、より多くの配向引張要素を有するが、部分配向接合部の個数は少ない。このため、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、面外および面内の局所的な剛性の程度が多様であることが特徴である。
【0047】
本発明の多軸形状により、インテグラルジオグリッドに全体としてより大きな面内回転剛性が付与される一方で、より短い長さのストランドにより、インテグラルジオグリッドの回転剛性が、先行のインテグラルジオグリッドのものに対して増加する。したがって、多軸インテグラルジオグリッドは、良好な圧縮と高い密度をもたらすコンプライアンス性、すなわち初期弾性または可撓性を特徴としつつ、初期弾性の結果としてより大きい最終水平骨材ジオグリッド複合剛性を有している。
【0048】
そして、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、骨材の移動に対して同心円状に抵抗するより多くの閉じ込め要素、すなわちストランドを有している。同種の六角形サイズにおいて、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、従来の三軸インテグラルジオグリッドに対して、圧縮およびトラフィック中の径方向荷重運動に耐える閉じ込め要素の個数が2倍多い。
【0049】
要約すれば、相互接続する配向ストランドおよび開口からなる六角形パターン内で繰り返される浮き六角形により、本発明の好適な多軸インテグラルジオグリッドは、より多くの個数およびタイプのストランド要素および閉じ込め角すなわち「ヌーク」を有するとともに、上下の面外運動の制限のために懸架された内側六角形を有している。これらの特徴により、インテグラルジオグリッドの全体的な構造的完全性を維持しつつ、骨材と適合し閉じ込めるより多くの機会が得られる結果となる。さらに、多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる接続配向ストランド(またはリブ)および部分配向接合部からなる線形ストランドを含むことにより、本発明の多軸ジオグリッドは、骨材補強材として高い強度および安定性を有する。
【0050】
これらの目的および利点ならびに以下で明らかになる他の目的および利点は、以下に記載する構造および動作の詳細に存在する。本明細書の一部をなす添付図面を参照されたい。ここでは、全体を通じて同様の部品には同様の参照符号が付されている。添付図面は、本発明を説明することを意図しているが、必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、先行技術であるウォルシュ’112特許によるインテグラルジオグリッドの平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の好適な実施形態による多軸インテグラルジオグリッドの平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す多軸インテグラルジオグリッドを形成するための、孔または凹部が形成された出発シート材料の上面斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、
図3の出発シート材料に示す孔の可能なサイズおよび間隔の平面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す多軸インテグラルジオグリッドの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す多軸インテグラルジオグリッドを反時計回りに約30度回転させた拡大斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、リブAの部分断面、および
図5に示す多軸インテグラルジオグリッドの強軸ストランドの一部を形成または規定する外側六角形(
図13参照)の隣接する接合部を示す拡大側面概略図である。
【
図5B】
図5Bは、リブBおよびリブDの部分断面、および
図5に示す多軸インテグラルジオグリッドの内側六角形(
図13参照)の隣接する三結節点を示す拡大側面概略図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す先行技術のインテグラルジオグリッドの構造上の制約を示す部分平面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの構造的特質を示す部分平面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すタイプの先行技術のインテグラルジオグリッドにおける個別開口部面積の分布範囲を示すグラフである。
【
図9】
図9は、
図1に示すタイプの別の先行技術のインテグラルジオグリッドにおける個別開口部面積の分布範囲を示すグラフである。
【
図10】
図10は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドで達成可能であり得る個別開口部面積の良好な分布範囲を示すグラフである。
【
図11】
図11は、
図1に示す先行技術のインテグラルジオグリッドの面内回転剛性を示す部分平面図である。
【
図12】
図12は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドで達成可能であり得る良好な面内回転剛性を示す部分平面図である。
【
図13】
図13は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの種々のストランド長さを示す部分平面図である。
【
図14】
図14は、
図1に示す先行技術のインテグラルジオグリッドの単一の閉じ込め内角を示す部分平面図である。
【
図15】
図15は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの2種の閉じ込め内角を示す部分平面図である。
【
図16】
図16は、
図1に示す先行技術のインテグラルジオグリッドの特定距離における6個の閉じ込め要素を示す部分平面図である。
【
図17】
図17は、
図2に示す多軸インテグラルジオグリッド特定距離における12個の閉じ込め要素を示す部分平面図である。
【
図18】
図18は、
図1に示す先行技術のインテグラルジオグリッドの、すべてが同一角度である18個の角度ヌークを示す部分平面図である。
【
図19】
図19は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの、異なる角度を有する30個の角度ヌークを示す部分平面図である。
【
図20】
図20は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの内側六角形の浮く性質を示す部分斜視図である。
【
図21】
図21は、
図1に示す先行技術の先行技術のインテグラルジオグリッドの個々のストランドまたはリブに関連するコンプライアンスの低い局所ゾーンを示す部分平面図である。
【
図22】
図22は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの、外側六角形の個々のストランドまたはリブに関連するコンプライアンスの低い局所ゾーン、および内側六角形の高い弾性コンプライアンスの繰り返しゾーンを示す部分平面図である。
【
図23A】
図23Aは、後述の表Dに結果を記す保持性試験に使用した試験ボックス、粒状材料、およびTriAx
(R)ジオグリッドを示す三(3)枚の連続写真である。
【
図23B】
図23Bは、後述の表Dに結果を記す保持性試験に使用した試験ボックス、粒状材料、およびLab79として特定される本発明の試料の三(3)枚の連続写真である。
【
図24】
図24は、後述の表Eに記す複数のトラフィック試験において、10,000回通過後の表面変形に対するリブアスペクト比をプロットしたグラフである。
【
図25A】
図25Aは、先行技術のジオグリッドの開口部の大きさが大きいため、いかにして選択された骨材粒子が開口部の開放スペースに「落下する」かを示す図である。
【
図25B】
図25Bは、先行技術のジオグリッドとは対照的に、本発明のジオグリッドが、いかにして骨材をジオグリッドの上面に沿って保持する役割を果たすかを示す図である。
【
図26A】
図26Aは、
図23Aの写真に示すTriAx
(R)ジオグリッドの保持性試験の結果を示すボックスプロットである。
【
図27】
図27は、試験2(轍)で使用したサンプルおよび表Eに記した結果についての名目上同一の六角形の「フラットを横切る」」(A/F)寸法を示す
図6および
図7のコピーである。
【
図28】
図28は、試験2(轍)で使用したサンプルのそれぞれの開口部および表Eに記した結果についての寸法を示す
図6および
図7の別のコピーである。
【
図29A】
図29Aは、本発明による外側六角形内での内側六角形の制限された面外上方移動を示す概略図である。
【
図29B】
図29Bは、本発明による外側六角形内での内側六角形の制限された面外下方移動を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の好適な実施形態についてのみ詳細に説明するが、本発明は、その範囲において、以下の説明に記載された、または図面に示された構成要素の構成や配置の詳細に限定されないことを理解されたい。
【0053】
また、添付の特許請求の範囲を含む本明細書の目的のために好適な実施形態を説明するにあたって、明確化のために特定の用語が用いられることになる。各用語は、当業者により理解されるその最も広い意味を意図しており、同様の目的を達成するために同様の方法で動作するすべての技術的同等物を含むものである。本明細書で使用される場合、外側六角形のストランドおよび内側六角形のストランドまたはリブおよび三結節点に適用される「配向された」、「配向」および「高度に配向された」、ならびに外側六角形の接合部に適用される「部分的に配向された」または「部分配向」という用語は、過去長年にわたってジオグリッドに関連して当業者によく知られている意味を有するものとする。例えば、外側六角形の接合部に適用される「部分的に配向された(部分配向)」という用語は、本図面に示されるように、外側六角形のストランドおよび内側六角形のストランドまたはリブおよび三結節点と比較した場合、接合部がかなり大きく厚いという点で容易に明白である。
【0054】
このため、ジオグリッドを検査して出発シートの対応する厚さから、延伸または配向プロセスにより減少または増加したジオグリッドの厚さの程度を測定することにより、ならびに、ジオグリッドにおいて目視(肉眼)検査または走査電子顕微鏡で観察できる筋条痕により、ジオグリッドの配向のレベルは観察され得るものである。このような用語は、分子レベルでの筋条痕の測定、例えばポリマー分子の配向を顕微鏡で検査することが必要であることを意図するものではない。
【0055】
そして、添付の特許請求の範囲を含む本明細書の目的について、本明細書および特許請求の範囲において使用される「約」という用語がサイズ、寸法、部分、形状、構築、パラメータ、割合、数量、特性および他の数値を修飾する場合、本用語は、記載の値のプラスまたはマイナス10%を包含することを意味する。
【0056】
また、添付の特許請求の範囲を含む本明細書の目的について、「開口部」および「開口」という用語は、本明細書において互換的に使用される。この用語は、多軸インテグラルジオグリッドのストランドまたはリブに配置された複数の開放スペースのいずれかを記述することを意味する。
【0057】
本発明は、出発材料としてのポリマーシートから作製される多軸インテグラルジオグリッド構造に関する。本発明の好適な実施形態によれば、ポリマーシート出発材料は、実質的に平坦であり、好適には一平面または実質的に一平面である。
【0058】
本発明は、孔または凹部からなる選択されたパターンを有する出発シートおよびオーブン延伸プロセスを介して多軸インテグラルジオグリッドに変換された場合のポリマーシートから、先行の一軸、二軸および三軸ジオグリッドに対して独特な特性を有する完成品が作製されるという事実に基づく。
【0059】
図1は、先行技術によるインテグラルジオグリッド、すなわちウォルシュ’112特許による三軸インテグラルジオグリッドの平面図である。
図1に示すように、三軸インテグラルジオグリッド200は、三角形210が繰り返される形状を有している。三軸インテグラルジオグリッド200は、部分配向接合部235により相互接続する複数の配向ストランド205を含んでいる。各接合部235を取り囲む6個の三角形の開口210により、六角形が繰り返される形状が形成されている。
【0060】
図2は、本発明の好適な実施形態による単層多軸インテグラルジオグリッド100の平面図である。多軸インテグラルジオグリッド100は、一連の開口を内部に有する複数の相互接続した配向ストランドと、相互接続した配向ストランドおよび開口からなる六角形パターン内で繰り返される浮き六角形とを有し、かつ多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる線形ストランドを含んでいる。より具体的には、多軸インテグラルジオグリッド100は、各外側六角形110内に浮き内側六角形130の繰り返されるパターンを含んでいる。外側六角形110は、部分配向接合部115により相互接続した複数の外側配向ストランドまたはリブ120を含んでいる。内側六角形130は、三結節点135により相互接続した複数の配向接続ストランド145および150を含んでいるとともに、六角形状の中央開口170を包囲している。外側六角形110は、複数の台形状の開口180を規定する複数の支持ストランドまたはリブ140および160に小型の内側六角形130に接続している。3つの隣接する外側六角形110の各パターンの中央には、三角形状の開口190がある。図示のように、接合部115は、三結節点135よりもはるかに大きい。
【0061】
図2から明らかなように、本発明の多軸インテグラルジオグリッドの他の特徴は、繰り返される外側六角形パターンの外側ストランド120が直線的に連続する性質である。すなわち、配向ストランド120は、部分配向接合部115を介して直線的に連続している。なぜならば、それらは、
図4および
図5において矢印120A、120Bおよび120Cで示すように、およそ120°で互いに対して離間する3つの異なる方向において、多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びているからである。当業者には、打抜き出発シート形状が適切に対応して回転されるならば、同一基本形状の異なる配向が延伸後に可能であることが理解されるであろう。ストランド120の直線的に連続する性質により、必要とされる良好な強度および面内剛性が、本発明の多軸インテグラルジオグリッドに提供される。
【0062】
図3は、
図2に示す多軸インテグラルジオグリッドを形成するための孔または凹部が形成された出発単層材料シート300の斜視図である。本発明による多軸インテグラルジオグリッド用の出発材料として使用される単層出発シート300は、好適には貫通打抜きされているが、これに代えてシートに形成された凹部を使用することも可能であり得る。シートに凹部が形成された出発材料の実施形態によれば、凹部は、シートの各側に、すなわちシートの上下両方に設けられる。
【0063】
単層出発シート300は、配向時に
図2に示す多軸インテグラルジオグリッドの六角形パターン内の浮き六角形を提供する孔320および間隔330からなる繰り返しパターン310を含んでいる。本発明の可能な一実施形態によれば、孔320の直径は、3.68mmであり、数ミリの孔330の間隔は
図3Aに示される通りである。
【0064】
好適には、単層材料シート300の全厚は、約3mm~約10mmである。より好適には、単層材料シート300の全厚は、約5mm~約8mmである。
【0065】
一般に、単層材料シート300は、本来ポリマー製である。例えば、構成材料は、高分子量ポリオレフィン、および広範な仕様のポリマーを含み得る。さらに、ポリマー材料は、バージンストックであり得る、またはリサイクル材料、例えば製造後または消費者後のリサイクルポリマー材料であり得る。本発明の好適な実施形態によれば、高分子量ポリオレフィンは、ポリプロピレンである。
【0066】
図4は、
図2に示す多軸インテグラルジオグリッド100の斜視図であり、
図5は、
図4に示す多軸インテグラルジオグリッド100の拡大斜視図である。
図4および
図5から明らかなように、ストランド120、140、145、150および160は、当業者に高アスペクト比として知られるものを有している。すなわち上述のウォルシュHAR特許、米国特許第9,556,580号、10,024,002号、および10,501,896号に従い、ストランド断面の幅に対するストランド断面の厚さまたは高さの比が1.0より大きい。本発明に絶対的に必要ではないが、ストランドまたはリブの高いアスペクト比が好適である。このようにして、本発明の多軸インテグラルジオグリッドは、ジオグリッドと骨材との親和性を向上させる結果、骨材のインターロック、横方向拘束、および閉じ込めが改善される。
【0067】
図5Aは、リブAおよび外側六角形の隣接する接合部(
図13参照)の部分断面を示す拡大側面概略図である。これらは、本発明のジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる3種の直線強軸ストランドのうちの1つの一部を形成または規定する。これらの強軸ストランドは、土木用途において骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させる際に、ジオグリッドに必要とされる強度および面内安定性を提供する。
図5Bは、リブBおよびリブD、ならびに内側六角形の隣接する三結節点の部分断面を示す同様の拡大側面概略図である。本発明によるこれらの構成要素の各々の典型的な厚さを、
図5Aおよび
図5Bに記載する。
【0068】
図6は、
図1に示す先行技術の三軸インテグラルジオグリッドの特定の構造上の制約を示す部分平面図である。従来の三軸インテグラルジオグリッド200の繰り返される幾何学的要素は、1つの基本開口形状(三角形)、1つの限定されたストランド寸法、および接続ストランドに対する接合部の高い比率(1~3)を有している。このため、従来の三軸インテグラルジオグリッド200では、開口形状やサイズのいずれにも変化がなく、60°の単一の閉じ込め角しか提供されない。
【0069】
図7は、
図2に示す多軸インテグラルジオグリッド100の構造的特質を示す別の平面図である。同様に、
図1に示す従来の三軸インテグラルジオグリッド200は、1つの基本形状および1つの限定されたストランド寸法しか有しないのに対し、多軸インテグラルジオグリッド100では、3種の異なる基本開口形状(六角形110、台形180、三角形190)、種々のストランドサイズ、および2種の異なる閉じ込め内角(60°および120°)が活用されている。さらに、多軸インテグラルジオグリッド100は、6本の接続ストランド毎に接合部を1つしか含まないとともに、各三結節点に関連付けられる3本のストランドを有している。このため、多軸インテグラルジオグリッド100は、ジオグリッド全体に分布する骨材の種々の角度および配向に良好に適合し得る。
【0070】
図8は、
図1に示すタイプの先行技術の三軸インテグラルジオグリッド200における個別開口部面積の分布範囲を示すグラフである。より具体的には、
図8は、TriAx
(R)TX160
(R)ジオグリッドとしてテンサーから市販されている三軸インテグラルジオグリッドに関連する個別開口部面積の分布を示す。
図8から明らかなように、従来の三軸インテグラルジオグリッドに関連する個別開口部面積は比較的限定されており、個別開口部面積の分布範囲として、約775mm
2~約850mm
2、すなわち約75mm
2の範囲しか提供されていない。
【0071】
図9は、
図1に示すタイプの別の先行技術の三軸インテグラルジオグリッド200における個別開口部面積の分布範囲を示すグラフである。より具体的には、
図9は、TriAx
(R)TX130S
(R)ジオグリッドとしてテンサーから市販されている三軸インテグラルジオグリッドに関連する個別開口部面積の分布を示す。
図9から明らかなように、この従来の三軸インテグラルジオグリッドに関連する個別開口部面積も比較的限定されており、個別開口部面積の分布範囲として、約475mm
2~約550mm
2、すなわち約75mm
2の範囲しか提供されていない。
【0072】
これに対して、
図10は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッド100により達成され得る良好な個別開口部面積の分布範囲を示すグラフである。
図10から明らかなように、多軸インテグラルジオグリッド100に関連する個別開口部面積の分布範囲は、三軸インテグラルジオグリッドにより提供されるものよりもはるかに大きい。約475mm
2~約800mm
2の個別開口部面積のより広い分布により、種々の粒子サイズの粒状材料とのより最適な相互作用がもたらされる。特に、約500mm
2~約700mm
2、または少なくとも200mm
2の範囲において明白である。
【0073】
図11は、
図1に示す先行技術の三軸インテグラルジオグリッド200の面内回転剛性を示す平面図である。
図11から明らかなように、先行技術のインテグラルジオグリッド200は、配向ストランド205を接続する部分配向接合部235を有しており、ストランド205の各々は、ほぼ同一の長さを有している。
【0074】
これに対して、
図12は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッド100により達成可能である良好な面内回転剛性を示す部分平面図である。同様に、多軸インテグラルジオグリッド100は、好適な繰り返し浮き六角形を、外側六角形110と小型の内側六角形130とを有する六角形パターン内に含んでいる。外側六角形110は、部分配向接合部115により相互接続した複数の配向ストランド120を含んでいる。内側六角形130は、三結節点135により相互接続した複数の配向ストランド145および150を含んでいる。外側六角形110は、内側六角形130に、複数の配向支持または接続ストランド140および160により接続している。ストランド205の長さに対して配向ストランド140、145、150および160の長さが短いことにより、多軸インテグラルジオグリッド100は、大きな面内回転剛性を有する。
【0075】
図13は、
図2に示す多軸インテグラルジオグリッドの種々のストランドを示す部分平面図である。多軸インテグラルジオグリッド100は、繰り返し浮き六角形を、外側六角形110と小型の内側六角形130とを有する六角形パターン内に含んでいる。外側六角形110は、部分配向接合部115により相互接続した複数の配向ストランド120(
図13において「A」でも示す)を含んでいる。内側六角形130は、配向三結節点135により相互接続した複数の配向ストランド145(「B」)および150(「D」)を含んでいる。外側六角形110は、内側六角形130に、複数の配向支持ストランド140(「C」)および160(「E」)により接続している。(以下に呈示する表A、BおよびEのデータにおいて、種々のストランドに対してA、B、C、DおよびEの指定名を採用する。)
【0076】
本発明の一実施形態によれば、4本のストランド150(D)および2本のストランド160(E)は、最も幅が広く(横方向の厚さが最も大きく)、4本のストランド140(C)は、最も長い。これらのすべてが、強度および剛性を提供する。2本のストランド145(B)は最も細く、これにより面外可撓性が提供される。ストランド120(A)は、TX160
(R)の代表的なストランドであり、これらのストランドは、最も長くもなく最も幅が広くもなく、最大強度を有するものでもなく最大可撓性を有するものでもない。このため、これらは、ストランドB、C、D、およびEの存在がなければ、中立的で適応できない。このように、
図13は、複数のストランド寸法が強度および剛性に及ぼす影響を示している。当業者は、他の実施形態および寸法関係に容易に想到するであろう。
【0077】
表Aは、
図13に示す本発明の多軸ジオグリッド100の一例についての種々のストランド各々の高さ、幅、およびアスペクト比を示す。表Aに示す値は、本発明の多軸ジオグリッド100に関連し得る高さ、幅、およびアスペクト比を代表するものであるが、これらは、例示を目的として提示されるものであって、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0078】
【0079】
表Bは、テンサーにより商品化された種々の市販の三軸インテグラルジオグリッドのアスペクト比に対する本発明の多軸インテグラルジオグリッド100の種々のストランドに関連するアスペクト比の比較を示す。
【0080】
【0081】
表Bから明らかなように、多軸インテグラルジオグリッド100は、従来の三軸インテグラルジオグリッドの各々に比較して、すべてのストランドにおいてより高いアスペクト比を有する。この高いアスペクト比は、本発明の形状の他の特徴と組み合わせることにより、ウォルシュHAR特許よりも良好な性能を提供する。
【0082】
図13および
図15に示す本発明による多軸ジオグリッドの幅広い範囲および好適なパラメータは、以下のようなものである。
【0083】
リブAは、1mm~4mmの広範囲、2mm~3mmの好適な範囲にある高さであって、好適な寸法が2.86mmである高さを有している。リブAの幅は、0.75mm~3mmの広範囲、1mm~2mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が1.6mmである。リブAの長さは、30mm~45mmの広範囲、35mm~40mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が37mmである。リブAのアスペクト比は、1:1~3:1の広範囲、1.5:1~1.8:1の好適な範囲にあり、好適な値が1.7:1である。
【0084】
リブBの高さは、1mm~3mmの広範囲、1.5mm~2.5mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が1.6mmである。リブBの幅は、0.75mm~3.5mmの広範囲、1mm~3mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が1.8mmである。リブBの長さは、15mm~25mmの広範囲、18mmから22mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が21mmである。リブBのアスペクト比は、0.75:1~2:1の広範囲、1.2:1~1.4:1の好適な範囲にあり、好適な値が1.3:1である。
【0085】
リブCの高さは、1mm~4mmの広範囲、2mm~3mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が2.7mmである。リブCの幅は、0.75mm~3.5mmの広範囲、1mm~2.5mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が1.6mmである。リブCの長さは、15mm~30mmの広範囲、20mm~25mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が23mmである。リブCのアスペクト比は、1:1~3:1の広範囲、1.5:1~2.5:1の好適な範囲にあり、好適な値が1.7:1である。
【0086】
リブDの高さは、1.5mm~4mmの広範囲、2mm~3.5mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が2.3mmである。リブDの幅は、1mm~4mmの広範囲、1.5mm~2.5mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が1.5mmである。リブDの長さは、10mm~30mmの広範囲、15mm~25mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が18mmである。リブDのアスペクト比は、1:1~3:1の広範囲、1.4:1~1.7:1の好適な範囲にあり、好適な値が1.6:1である。
【0087】
リブEの高さは、1mm~4mmの広範囲、1.5mm~3.0mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が1.9mmである。リブEの幅は、0.75mm~3.5mmの広範囲、1mm~3mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が1.7mmである。リブEの長さは、15mm~30mmの広範囲、20mm~25mmの好適な範囲にあり、好適な寸法が22mmである。リブEのアスペクト比は、0.75:1~2:1の広範囲、1:1~1.5:1の好適な範囲にあり、好適な値が1.3:1である。
【0088】
そして、
図5Aに示すように、多軸インテグラルジオグリッド100の外側六角形110は、3mm~9mmの広範囲、4.5mm~7.5mmの好適な範囲にある部分配向接合部115厚さ(寸法「TO2」)であって、好適な寸法が約5.6mmの部分配向接合部115厚さ(寸法「TO2」)と、1mm~5mmの広範囲、1.5mm~3.5mmの好適な範囲にあるストランドまたはリブ120厚さ(寸法「TO1」)であって、好適な寸法が約2.8mmであるストランドまたはリブ120厚さ(寸法「TO1」)と、を有している。
【0089】
また、
図5Bに示すように、インテグラルジオグリッド100の内側六角形130は、1mm~5mmの広範囲、1.5mm~3.5mmの好適な範囲にある、三結節点135厚さ(寸法「TI1」)と、ストランドまたはリブ145厚さ(同じく寸法「TI1」)と、ストランドまたはリブ150厚さ(同じく寸法「TI1」)とを有している。
【0090】
図13に示す多軸インテグラルジオグリッドの好適な一実施形態によれば、「フラットを横切る寸法」、すなわち外側六角形の1つの接合部115(
図15参照)から外側六角形の対向する接合部115までの距離は、約80mmである。そして、同一実施形態について、フラットを横切る寸法、すなわち内側六角形の1つの三結節点135(
図15参照)から内側六角形の対向する三結節点135までの距離は、約33mmである。
【0091】
打抜きサイズ/直径は、2mm~7mmの広範囲、3mm~5mmの好適な範囲にあり、3.68mmの好適な寸法を有する。第1延伸方向の長ピッチは、5mm~9mmの広範囲、6mm~8mmの好適な範囲にあり、6.7088mmの好適な寸法を有する。第1延伸方向の短ピッチは、1mm~4mmの広範囲、2mm~3mmの好適な範囲にあり、2.58mmの好適な寸法を有する。第1延伸方向の第2長/短ピッチは、4mm~8mmの広範囲、5mm~7mmの好適な範囲にあり、5.934mmの好適な寸法を有する。第2延伸方向の長ピッチは、4mm~8mmの広範囲、5mm~7mm好適な範囲にあり、6.192mmの好適な寸法を有する。
【0092】
図14は、
図1に示す先行技術の三角インテグラルジオグリッド200の単一の閉じ込め内角を示す部分平面図である。明らかなように、インテグラルジオグリッド200は、単一の閉じ込め内角、すなわち約60°の角度を有している。すなわち、各接合部235について、インテグラルジオグリッド200は、合計で6個の閉じ込め角を有している。そして、インテグラルジオグリッド200は、単一の六角形の境界線内に合計で18個の60°の閉じ込め角を有している(
図14に示す指定名Aは、以下に呈示する表Eのデータにおいて採用された先行技術のTriAx
(R)ジオグリッドのストランド/リブに対する)。
【0093】
図15は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッド100の2種の異なる閉じ込め内角を示す部分平面図である。有利には、外側六角形110内に支持された内側六角形130を有する形状、および5種の異なるストランドタイプA、B、C、DおよびEにより、多軸インテグラルジオグリッド100は、60°とl20°の内角の組み合わせを有している。すなわち、接合部115について6個の60°の閉じ込め角が存在し、三結節点135について3つの120°の閉じ込め角が存在している。そして、多軸インテグラルジオグリッド100は、単一の外側六角形110の境界内に、合計30個の閉じ込め角を有している。このように、多軸インテグラルジオグリッド100は、その開口部の範囲全体に亘って2種の閉じ込め角を提供することにより、骨材の閉じ込めが良好になる。
【0094】
以下の表Cは、本発明の多軸インテグラルジオグリッド100で達成可能な結節点配向、引張要素配向、開放面積、および平均開口部開放面積と、種々の先行技術の三軸インテグラルジオグリッドの特徴との比較を示す。
【0095】
【0096】
表Cから明らかなように、TX160(R)と比較すると、本発明の多軸インテグラルジオグリッド100は、1平方メートルにつき、部分配向接合部115が20%少なく、配向引張要素120、140、145、150、160が56%多い。したがって、当接して閉じ込められ相互作用する骨材粒子に対する物理的要素の単位面積当たりの個数が著しく多く、かつ、単位面積当たりの物理的要素、すなわち、骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させるジオグリッドの能力にあまり貢献しない部分配向接合部の個数が著しく少ない。さらに、TX130S(R)と比較すると、本発明の多軸インテグラルジオグリッド100は、1平方メートル当たりの部分配向接合部115が47%少なく、1平方メートル当たりの配向引張要素120、140、145、150、160がほぼ同量であるが、閉じ込め角の個数が多い。これらの特徴により、当接して閉じ込められ相互作用する骨材粒子に対する物理的要素の単位面積当たりの個数が多いが、単位面積当たりの物理的要素、すなわち、骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させるジオグリッドの能力にあまり貢献しない部分配向接合部の個数が著しく少ない。
【0097】
図16は、
図1に示す先行技術の三角形のインテグラルジオグリッド200の特定距離における6個の閉じ込め要素を示す部分平面図である。
図16につき、先行技術のインテグラルジオグリッド200は、6個の当接要素、すなわち、接合部235を取り囲む6本のストランド205を有している。
【0098】
図17は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッド100の同一の特定距離における12個の閉じ込め要素を示す部分平面図である。
図17から明らかなように、多軸インテグラルジオグリッド100は、12個の当接(閉じ込め)要素、すなわち、外側六角形110を形成する6本のストランド120と、内側六角形130を形成する6本のストランド、すなわち2本のストランド145および4本のストランド150と、を有している。つまり、同様の「フラットを横切る」距離を有する同種の六角形サイズにおいて、多軸インテグラルジオグリッド100は、圧縮およびトラフィックに際して、2倍多い閉じ込め要素を提供して径方向負荷運動に耐える。したがって、多軸インテグラルジオグリッド100は、骨材の移動に対して同心円状の抵抗力を提供する2倍多い要素を提供する。
【0099】
図18は、
図1に示す先行技術のインテグラルジオグリッドの、すべてが同一角度である18個の角度ヌークを示す部分平面図である。上述のように、インテグラルジオグリッド200は、単一の閉じ込め内角、すなわち約60°の角度を有している。つまり、各接合部235について、インテグラルジオグリッド200は、合計で6個の60°の閉じ込め角、すなわちヌークを有している。そして、インテグラルジオグリッド200は、単一の六角形の境界内に、合計18個の60°の閉じ込め角、すなわちヌークを有している。
【0100】
図19は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの、異なる角度を有する30個の角度ヌークを示す部分平面図である。上述のように、外側六角形110内に支持された内側六角形130を有する形状、および5種の異なるストランドタイプA、B、C、DおよびEにより、多軸インテグラルジオグリッド100は、60°とl20°の内角の組み合わせを有している。すなわち、各接合部115について6個の60°の閉じ込め角すなわちヌークが存在し、各三結節点135について3個の120°の閉じ込め角すなわちヌークが存在している。そして、多軸インテグラルジオグリッド100は、単一の外側六角形110の境界内に、合計30個の閉じ込め角すなわちヌークを有している。このように、多軸インテグラルジオグリッド100は、その開口部の範囲全体に、二種の異なる閉じ込め内角を有する30個の独立した(または固有の)閉じ込め角すなわちヌークを提供する。この特徴の組み合わせにより、骨材の閉じ込めが良好になる。
【0101】
図20は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの内側六角形130が有する浮くという好適な性質を示す部分斜視図である。本発明には、弾性(すなわち懸架された)適合可能な内側六角形130が組み込まれていることにより、「面外」剛性を変化させることで、圧縮中の骨材に良好に適合する。浮き内側六角形は、鉛直Z軸寸法において比較的可動であり、このため、圧縮中の有意な程度のコンプライアンスまたは偏向を可能とする。
【0102】
本発明の好適な実施形態において、内側六角形130のこの鉛直方向のコンプライアンスまたは偏向は、周囲の外側六角形110の最大厚さの約33%と同量とすることができる。換言すれば、部分配向接合部(これは外側六角形の中で最も厚い構成要素である)の厚さが6mmである場合、浮き内側六角形140の面外コンプライアンスまたは偏向は、約2mmと同量とすることができる。この弾性(すなわち懸架された)コンプライアンスは、各外側六角形110により境界付けられた領域全体に亘って広がり、外側六角形の鉛直方向コンプライアンスの程度は小型の。驚くべきことに、内側六角形のこの良好な剛性を有する(懸架された)コンプライアンスまたは偏向により、骨材とインターロックするという本発明のジオグリッド100の能力が向上することが見出されている。
【0103】
図29Aに示すように、インテグラルジオグリッド100の内側六角形130は、上方に、すなわち外側六角形110の平面から離れるように外方に、距離「D」が周囲の外側六角形110の全厚の約33%に等しくなる程度まで撓む(すなわち浮く、または変形する)ことができる(外側六角形110の全厚は、本質的に接合部115の厚さである)。これに対応して、
図29Bに示すように、インテグラルジオグリッド100の内側六角形130は、下方に、すなわち外側六角形110の平面から離れるように外方に、距離「D」が周囲の外側六角形110の全厚の約33%に等しくなる程度まで撓む(すなわち浮くまたは変形する)ことができる。
【0104】
さらに、この弾性(すなわち懸架された)適合可能な内側六角形130が路盤上にあって、路盤が不均一である場合にはさらに鉛直方向上方に偏向するという性質により、横方向拘束が向上する機会が提供されるとともに、反復荷重を受けた場合に骨材がストランド140、145、150、160上で転がることが防止される。これは、外側六角形110が、骨材が通り抜けなければならない第2閉じ込めリングを形成するからである。ジオグリッド200のような従来の先行技術の多軸ジオグリッドは、このレベルの弾性(すなわち懸架された)コンプライアンスに欠けるため、1レベルの閉じ込めしか提供されない。
【0105】
図21は、
図1に示す先行技術の先行技術のインテグラルジオグリッド200の個々のストランドまたはリブに関連するコンプライアンスの低い局所ゾーンを示す部分平面図である。すなわち、個々のストランドまたはリブ205が部分配向接合部235を接続するため、先行技術のインテグラルジオグリッド200は、多くのコンプライアンスの低い局所ゾーンを有するため、最小限の弾性しか有しない。
【0106】
図22は、
図2に示す本発明の多軸インテグラルジオグリッドの、外側六角形110の個々のストランドまたはリブに関連するコンプライアンスの低い局所ゾーン、および内側六角形130の高い弾性コンプライアンスの繰り返しゾーンを示す部分平面図である。浮き内側六角形130が外側六角形110内で鉛直方向に偏向する能力により、多軸ジオグリッド100は、対応する外側六角形110の各々の内部において、高い弾性コンプライアンスを持つ繰り返しゾーンを有している。
【0107】
繰り返すと、
図21に示すように、従来の先行技術の三軸ジオグリッドは、本発明の多軸インテグラルジオグリッドを特徴付ける、このような大きな面積に亘るコンプライアンスのレベルを欠いている。このため、先行技術の三軸ジオグリッドに関連するコンプライアンスは、いずれかの端部に位置する接合部により拘束される個々のリブに限定されている。これに対し、本発明のジオグリッドは、単位面積につき、
図22に示すように約50%~約75%程度の顕著な鉛直方向弾性(または懸架された)コンプライアンスを持つ領域を有している。これは、
図21に示す、顕著な鉛直方向コンプライアンスを持つこのようなゾーンを有しない従来の先行技術の多軸ジオグリッドと対照的である。
【0108】
本発明の一態様において、ジオグリッド100は、水平方向の機械的に安定したジオグリッドを呈する。部分配向接合部115により相互接続した複数の外側配向ストランドまたはリブ120を含む外側六角形110の繰り返しパターンは、
図4でライン120A、120Bおよび120Cにより示されるように、ジオグリッド全体に直線経路において連続的に延びる強軸ストランドを備えている。
図4から注目されるように、
図4におけるライン120A、120Bおよび120Cにより示すように、部分配向接合部115により相互接続する外側配向ストランドまたはリブ120により形成される強軸ストランドは、外側六角形の内側と交差することなくジオグリッドの全体に亘って延びている。この特徴により、本発明のジオグリッドに必要な強度および安定性が提供される。別の態様において、部分配向接合部115から内方に延びるリブ140、160であって、浮き内側六角形145の三結節点135に接続するリブ140、160、または、このようなリブにより支持される以下に記載の他の幾何学的構成は、「工学的不連続性」または「浮き工学的不連続性」を備えている。
【0109】
また、本発明は、上述の多軸インテグラルジオグリッド100を製造する方法に関する。本方法は、ポリマーシート300を提供するステップと、ポリマーシート300にパターン化された複数の孔または凹部310を提供するステップと、パターン化された複数の孔または凹部310を有するポリマーシート300を配向するステップと、を含む。これにより、一連の開口170、180および190を有する複数の相互接続された配向ストランド120、140、145、150および160と、相互接続した配向ストランドおよび開口からなる外側六角形110パターン内の繰り返される浮き六角形130と、が提供され、多軸インテグラルジオグリッド100の全体に亘って連続的に延びる3種の線形ストランドを含まれる。
【0110】
一般に、孔または凹部を有するポリマーシート300が準備されると、多軸インテグラルジオグリッド100は、上述の先行技術特許および当業者に知られる方法に従って、シート300から作製され得る。
【0111】
上述のように、外側六角形110および小型の内側六角形130の六角形の幾何学的形状は、本発明の浮く幾何学的構成を提供するための好適な実施形態である。しかしながら、他の幾何学的形状も本発明の範囲内で可能である。例えば、幾何学的形状は、外側長方形または正方形の各内側隅部を小型の内側長方形または正方形の対応する外側隅部に接続する4本の支持または接続ストランドを有する長方形または正方形であり得る。あるいは、幾何学的形状は、外側三角形の隣接する内側隅部と小型の内側三角形の外側隅部との間の3本の支持または接続ストランドのみを有する三角形でもよい。他の多角形形状も本発明の範囲内において想定される。
【0112】
前段落に記載の本発明の長方形または正方形の実施形態において、好適には、外側長方形または正方形の各々に関してジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる相互接続した配向ストランドおよび部分配向接合部により規定された2本の線形ストランドが存在し得る。このような連続ストランドは、互いからおよそ90°の角度をなして延びている。三角形の実施形態において、好適には、本明細書で詳細に説明した好適な六角形の実施形態の線形ストランド120と同様に、各外側三角形について、互いからおよそ120°で延びる3本のこのような線形ストランドが存在し得る。
【0113】
また、本発明から逸脱することなく、異なる幾何学的形状も可能である。例えば、内側の幾何学的形状は、本明細書に開示される好適な実施形態と同様の6本の支持ストランドを有する好適な外側六角形状内に支持される円形リングであり得る。このように、外側の繰り返し構造と内側または内部浮き構造とは、同一の幾何学的形状に限定されないことが意図されている。
【0114】
上述するとともに添付図面で図示したように、本明細書に開示されるジオグリッドの実施形態は、単層構造を備えている。したがって、
図3に関して図示されるとともに記載される出発シート300の組成は、単一ポリマーまたはコポリマーからなる。
【0115】
小型の浮き内側六角形130を取り囲むとともに支持する外側六角形110を有するインテグラルジオグリッド100の好適な実施形態について説明したが、本発明は、外側六角形110が、浮いたり撓んだり(変形したり)せずにジオグリッドの平面内に留まる小型の内側六角形130を取り囲むとともに支持し得ることも想定している。したがって、本発明によれば、
図2、
図4および
図5に示すインテグラルジオグリッド100であって、
図3に示す出発シート材料から製造されるインテグラルジオグリッド100は、浮いたり撓んだりしない小型の内側六角形を有するように製造され得る。したがって、本発明の六角形パターン内で繰り返される六角形は、内側六角形130が浮くことができてもできなくても、同一である。
【0116】
最後に、多軸インテグラルジオグリッド100の外側六角形110の各々が、本願で開示したように、その内側に浮き六角形130を含んでいることが明瞭に好適である。一方で、一部の個々の打抜きパターンを変更する、または他の態様により、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、六角形130が外側六角形110の一部のみによって取り囲まれるとともに支持され、他の外側六角形が先行技術に含まれるような別の内側構造を支持する多軸インテグラルジオグリッドを作製することが可能である。このように変更された内側ジオグリッドが、浮くまたは浮かない小型の内側六角形130を取り囲むとともに支持する単数または複数の外側六角形110であって、ジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる実質的に平行な一連の必要な線形ストランド、すなわち本明細書に含まれる開示に従う強軸ストランドを規定する外側六角形110を含む限り、このような変更されたインテグラルジオグリッドは、本発明の範囲に含まれることが、現在のところ確信されている。
【0117】
上の「背景技術」セクションで示したように、先行技術のジオグリッドは、骨材粒子の大部分が物理的に開口部の開放スペースに「落ち込む」のに十分な大きさの開口部を有するという概念を利用している。そして、ジオグリッドは、上方から負荷がかかると、これらの粒子を横方向に拘束することにより恩恵をもたらす。負荷は上方からかかるため、骨材粒子は、下方および外方に(横方向に)移動しようとするが、ジオグリッドはその両方を防止する。このため、先行技術のジオグリッドの基本的な前提は、骨材粒子が、開口部を「通り抜ける」または「通過する」必要があるということである。この先行技術の通り抜けるという概念は、ウォルシュHAR特許により確認されており、「閉じ込め」を促進する長い/薄いリブの高アスペクト比の概念により、骨材の横方向へ広がることに対するさらに良好な抵抗が提供される。
【0118】
これに対し、本発明は、非連続ストランドに沿った他のすべての接合部を、開放六角形または他の開放幾何学的構成に変換している。このユニークな構成により、少なくとも2つの意義深い変化が生じる。第1に、本発明は、接合部が存在していたところに開口部構造を形成し、これにより、「非閉じ込め要素」があったところに「閉じ込め要素」を導入した。好適な実施形態において、内側六角形により形成された開口部により、六角形を形成する6本のリブが生じる。そして、これらのリブは、今や骨材と相互作用してこれを支持するように利用できる一方、置換された接合部は、ジオグリッドそれ自体の「接続点」でしかなくなる。第2に、本発明では、
図2および
図17に示す六(6)個の台形の開口部に関する開口部サイズを、
図1および
図16に示す三軸ジオグリッドの三角形の開口部と比較して小さくしたことにより、広範囲のサイズおよび品質の骨材を良好に保持し、かつ閉じ込める。
【0119】
このため、驚くべきことに、本発明による改良ジオグリッドの「目標」は、先行技術において具現化されるように、ほとんどの骨材粒子を開口部に落下させることではないことが見出された。むしろ、以下に記す試験結果から実証されるように、本発明のジオグリッド構造は、先行技術の構造よりも、ジオグリッドにおいて単位面積当たりにより多くの機能要素を形成する(上記表C参照)。そして、本発明の目標は、粒子を開口部を通過させて落下させることではなく、むしろ、より多くの骨材粒子をより多くの開口部に部分的に通過させることである。本発明対先行技術について、ジオグリッドとそこに閉じ込められるべき骨材粒子とのこの驚くべき新しい相互作用を、
図25Aおよび
図52Bの比較図面により説明する。
【0120】
以上の驚くべき発見は、以下の試験とその結果により実証される。
【0121】
試験方法例
試験1-保持性
粒状材料との相互作用を改善するための多軸ジオグリッドの性能を、公開されたガイダンス(例えば、「Tensar Installation Guideline IG/TriAx」2020年10月19日)に概説された設置方法に従って、ジオグリッド上に「カスケード」された粒状材料を模した小規模試験を用いて評価した。この小規模試験は、およそ350mm×350mmのジオグリッドの試験片がクランプされる開放ボックスを備えている。次いで、20mm~40mmの粒子サイズ(粒径)に等級分けした2kgの粒状材料が、「ブラッシング」動作によりジオグリッド全体にカスケードされる。20mm~40mmの粒子等級分けは、土木構造物の建設に一般的に使用される等級分けにおいて経験に基づく代表的なものであり、小型のまたはより大きい粒子サイズに関連する過剰な変動は除去されている。各試験について、ジオグリッドに「捕捉」された粒状材料の量、およびジオグリッドを通過して下方のボックスに落下した粒状材料の量が測定される。この2つの結果が比較される。粒状材料を「捕捉」するようにより良好に設計されたジオグリッドは、より多くの粒状材料をジオグリッド上に保持するであろうし、ジオグリッドの試験片の下方の開放ボックスに落下する材料ははるかに少なくなるであろう。典型的な比較は、同一の2kg分の粒状材料を用いて、各ジオグリッドタイプに対する10回の繰り返し試験に基づいて行われる。
【0122】
試験2-轍
車両交通による轍に抵抗する多軸ジオグリッドの性能を、Webster,S.L.「軽飛行機のフレキシブル舗道用ジオグリッド補強路盤:試験セクション建造物、交通ラボ試験での動作、および設計基準」(Report DOT/FAA/RD-92,1992年12月)に記載されるような確立された実地試験を模した小規模試験を用いて評価した。この小規模試験は、多軸ジオグリッドの交通性能に対する確立された実地試験の結果を再現するように設計され、下層の粘土路盤と、単一のジオグリッド層と、圧縮した粒状基部とからなる試験区間を備えている。この試験区間に、単一の重りを付けた車輪の荷重をかける。車輪は、試験区間の端から端まで常に方向を反転させつつ、試験区間を単一の水平方向経路に沿って横切る。ジオグリッドが存在しない対照試験は、このような検査のもとで急速に機能しなくなるであろう。例えば、無補強の試験区間で車輪を1000回以下通過させた後には、深い轍が形成されるであろう。補強部として適切に設計された多軸ジオグリッドを使用することにより、無補強の試験区間と比較して、所定回数の車輪の通過に対して轍深さが減少され得る。このように轍深さの減少は土木構造物の寿命に影響を与え、無補強の構造物と比較して最大で50倍もこの寿命を延ばすことができる。したがって、本発明にしたがって補強された道路や他の土木構造物は、長い寿命を有するがメンテナンスの必要性は少なくなる。
【0123】
本発明に関連して用いられた上述の小規模試験は、ウォルシュHAR特許に記載され(米国特許第10,501,896号、第10欄、43~67行参照)、そこに記されたたデータを生成したものと同じ小規模試験である。
【0124】
例-試験1(保持性)
粒状材料との相互作用を改善するための多軸ジオグリッドの性能を、公開されたガイダンスに概説された設置方法に従って、ジオグリッド上に「カスケード」された粒状材料を模した小規模試験を用いて評価した。
【0125】
市販の先行技術のTriAx
(R)ジオグリッドのサンプル(
図23A参照)に、20mm~40mmの粒子サイズに等級分けした2000g分の粒状材料を、その表面全体にカスケードさせた。ジオグリッドを通過して下方のボックスに落下した材料の重量を測定するとともに、ジオグリッド上に保持された材料の重量を測定した。この試験を、同一の試験片に対して10回繰り返し、各回とも同一の2000g分の粒状材料を使用した。
【0126】
次に、この試験を、Lab79(
図23B参照)として特定される本発明の試験片に対して繰り返した。Lab79は、既に試験が行われた先行技術のTriAx
(R)ジオグリッドと同じシート材料レシピから製造された。先行技術のTriAx
(R)ジオグリッドの評価に使用したのと同一の2000g分の粒状材料を、Lab79の評価に使用した。
【0127】
結果を下記の表Dに示す。
【0128】
【0129】
上記表Dに示す結果は、先行技術の多軸ジオグリッドと比較して、本発明の多軸ジオグリッドのすべての幾何学的要素の複合効果により、同一の粒状材料と相互作用する能力が大幅に向上することを示す。先行技術のジオグリッドはその表面全体をカスケードさせた材料の14%しか保持または捕捉せず、残りの86%はジオグリッドを通過して落下したのに対し、本発明のジオグリッドは粒状材料の96%を捕捉し、通過して落下したのは4%のみであった。粒状材料と相互作用する本発明によるジオグリッドの能力におけるこの非常に大きな改善は、トラフィック検査において轍に対する抵抗を向上させるのに有益である。
【0130】
表Dに記した試験結果を、
図26Aおよび
図26Bに示すボックスプロットにおいても示す。
図26Aに見られるように、2000g分の粒状材料の非常に大きな割合が、501でのテストプロットに示すように、TriAx
(R)ジオグリッドを通過し、502でのプロットテストに示すように、わずかな割合しかジオグリッド上に保持されなかった。翻って、
図26Bに示すように、503でのテストプロットに示すように、同一の2000g分の粒状材料のわずかな割合しか本発明のジオグリッドを通過せず、504でのテストプロットに示すように、ほとんどすべての骨材が保持された。
【0131】
本発明によれば、驚くべきことに、標準的な保持テストにおいて骨材を「保持する」ジオグリッドの能力は、先行技術が採用する「通り抜け/通過」概念よりも優れた予測因子であることが見出された。より具体的には、現時点では、任意の特定の骨材について、上述の保持性試験におけるジオグリッドの保持率が少なくとも50%であれば、試験したジオグリッドと試験した骨材を備える複合構造において効果的なジオグリッドが予測されるはずである。より好適には、保持性試験は、75%を超える保持率を示すべきであり、より好適には少なくとも90%以上を示すべきである。
【0132】
例-試験2(轍)
車両交通による轍に抵抗する多軸ジオグリッドの性能を、確立された実地試験を模した小規模試験を用いて評価した。
【0133】
下記の表Eに示す試験片について、トラフィック試験を実施した。この表は、本発明の主題である六角形の形状内の好適な浮き六角形についての八(8)回の試験と、先行技術のウォルシュHAR特許の形状に対する十八(18)回の試験に関するデータを示している。試験片は、同一のポリマー材料(ポリプロピレン)から製造された。同一の打抜きパターン(ただし、内側六角形を形成するために本発明の試験片について追加の打抜きが利用された)、および類似の出発シート厚さの範囲により、
図27に示すように、名目上同一の六角形をフラット(A/F)寸法に亘って有するジオグリッドサンプルであって、
図6(先行技術)に示す先行のウォルシュHAR特許のコピーであるジオグリッドサンプルと、
図7に示す本発明のジオグリッドとを作製した。
図6(先行技術)および
図7は、それぞれの外側六角形内の開口部の寸法を記載するために
図28に再現されている。
図6(先行技術)のサンプルにおいて、寸法A、B、C=33mm±3mmである。本発明のサンプルでは、寸法A=35mm±3mm、寸法B=24mm±3mm、寸法C=30mm±3mmである。先行技術の試験片のリブのアスペクト比は、本発明に従って製造される試験片のものを大きく超える。表Eにおいて、
図13および
図14に示すリブAが、比較として用いられている。
【0134】
【0135】
表Eのデータを用いて、轍に対する抵抗の観点からの性能の指標として、10,000回通過後の表面変形に対するリブのアスペクト比をプロットすることができる。前述のプロットを、図面中の
図24に示す。ここでは、本発明の試験片は、「InterAx」として識別されている。
【0136】
図24から明らかなように、先行技術の多軸ジオグリッドは、先行技術のウォルシュHAR特許の
図5に示すものと同様の挙動を示した。先行技術のジオグリッドの性能における向上は、リブアスペクト比が増加するにつれて横ばいになる傾向がある。リブのアスペクト比が1の場合、表面変形が45mm程度に制限されるのに対し、アスペクト比が2に増加すると、変形が42mmに減少する。アスペクト比を5まで上げると、変形が40mmに制限される。
【0137】
本発明の主題である好適な形状に従って製造されたジオグリッド試験片について、アスペクト比が1.4であれば、変形が40mm~30mmに制限され、アスペクト比が2.6に増加すると、変形が28mm~22mmに制限される。この試験データは、土木用途において骨材を安定化させ強化するという本発明の適合性において、先行技術のウォルシュHAR特許のジオグリッドに対する本発明の実質的な向上を実証するものである。
【0138】
以上から明らかなように、本発明のジオグリッドは、地質工学的用途において骨材と係合し、これを閉じ込め、そして安定化させるための六角形構造内の浮き六角形のユニークな構造および動作を理由として、先行技術のジオグリッドに対する多大な改善を提供する。
【0139】
より具体的には、既存の市販されている先行技術のジオグリッドは、製作方法に関係なく、配向リブ/ストランドとそれらの接合部および結節点との間に形成された開口部/開口の1つの基本的な繰り返し形状およびサイズを利用してきた。長方形、正方形、および三角形等の形状が利用されてきた。開口部からなる1つの基本的な繰り返される形状の使用は、交差する接合部または結節点において2つの隣接するリブ間に形成される角度が、ジオグリッド全体に亘って常に同一であるということも意味する。
【0140】
さらに、既存の先行技術のジオグリッドは、製作方法に関係なく、主方向において繰り返される連続リブを有している。上述のマーサー特許のように正方形または長方形の開口部を有する製品において、これらのリブは、直交し、典型的には機械方向に対して0°および90°で延在し得る。ウォルシュ’112特許のように三角形の開口部を有する製品において、これらのリブは、三角形の形状に依存するであろう。典型的な正三角形では、これらのリブは、機械方向に対して30°、90°および150°の角度で延在するであろう。
【0141】
またさらに、既存の市販されている先行技術のジオグリッドは、やはり製作方法に関係なく、典型的に、大体同一の断面積およびアスペクト比を有するリブを、それらが延在する方向に関係なく有している。
【0142】
先行技術のジオグリッドの特徴におけるこれらの類似性は、ジオグリッドと粒状材料とから構成される複合マトリクスの一部としてジオグリッドの性能を向上させ得る製品の性質が、ジオグリッドの本体全体に亘って広く類似しているということを意味する。先行技術で言及されるこれらの性質は、開口部安定性係数、ジオグリッドの面内および面外剛性、リブの面内および面外曲げ剛性、開口部開放面積、開口部形状、およびリブのアスペクト比を含み得る(がこれらに限定されない)。
【0143】
したがって、本発明によれば、複合マトリクスにおけるジオグリッドの性能は、ジオグリッドがその繰り返し形状ならびにその個々の特徴の両方において一層可変であれば向上し、複合マトリクスの他の成分を構成する粒状材料とより良好に一体化し得ることが見出された。複合マトリクスの成分として採用される粒状材料の大部分は、形状またはサイズにおいて均一ではないが、例えば、20~40mm、10~63mm、20~70mm等のサイズ範囲に「等級分け」されている。従来から一般的に使用されている粒状材料の典型的な等級分けカーブを、以下の「代表的な骨材等級分けカーブ」表に示す。
【0144】
【0145】
従来の粒状材料がますます不足しますます高価になるにつれて、建設に利用される粒状材料のより広範囲の変種が普通になってきている。この背景には、従来の高品質の天然骨材の採石に関連する環境負荷を最小限にするというニーズが大いにある。例えば、天然骨材の採石によるエネルギーと環境への影響、採石活動の閉鎖の圧力、採石した材料を現場に運ぶ際の影響、地元で入手できる粒状材料やリサイクル材料の利用を望む声などである。
【0146】
このため、驚くべきことに、本発明の多軸ジオグリッドは、先行技術の市販されているジオグリッドよりも、上述の低品質で多様な粒状材料と組み合わせても良好な性能を発揮するとともに、従来の良好に等級分けされた粒状材料と併せても良好な性能を有することが見出された。本発明のジオグリッド構成は、既存の先行技術のジオグリッドを超え、ウォルシュHAR特許の高アスペクト比の先行技術のジオグリッドに存在するのと同一の「収穫逓増」ルールにもはや従うものではない。特定の用途において意図された骨材に関する開口部のサイズは、先行の市販されているジオグリッドにおいて最適化されなければならないが、開口部の形状、サイズ、および内角のすべては、各々異なって構成されたジオグリッドのマクロおよびミクロレベル内で同一であった。また、繰り返される正三角形のパターンに基づくジオグリッドの方が、長方形または正方形の開口に基づくものよりも良好な性能を有する傾向がある。これに対して、本発明によれば、多軸ジオグリッドは、異なる形状およびサイズの開口部からなる繰り返し形状、複数の閉じ込め角を有し、異なる長さ、高さおよび幅のリブから形成されている。リブは、好適には1.0を超えるアスペクト比を有し、リブの一部、すなわち強軸ストランドは、グリッド全体に横方向および斜め方向に連続的に直線的な態様で延び、他のストランドは、局所的なコンプライアンスゾーン、すなわち工学的不連続性を提供するように中断されている。
【0147】
より具体的には、新しい幾何学的形状および開口部/開口サイズおよび形状により、本発明は多様な骨材の閉じ込めおよび安定化において2つの改良を達成したことが、驚くべきことに見出された。第1に、異なるサイズおよび形状の開口部/開口を有することにより、本発明のジオグリッドは、採石または採掘方法から調達される「天然」鉱物骨材であって、それらの調達および処理方法を理由として多様なサイズおよび形状を有する「天然」鉱物骨材と良好に調和することができる。第2に、本発明のジオグリッドは、天然骨材とは異なる物理的特性を有する傾向があるリサイクルコンクリートやガラス等の「非天然」骨材である代替物に、良好に適合しこれを安定化させる。先行技術のジオグリッドは天然骨材用に構成されているが、本発明の形状は、天然骨材とも非天然骨材とも申し分なく良好に係合し、これを閉じ込め、そして安定化させることができる。
【0148】
上記の他に、本発明に従って製造されるジオグリッドにより得られる性能改善に加えて、建設材料の節約、本発明のジオグリッドを具現化する地質工学的マトリクスの建設のための時間の節約、および二酸化炭素換算量(CO2e)の節約、(https://www.sustainablebusinesstoolkit.com/difference-between-co2-and-co2e/参照)が、マーサー特許およびウォルシュHAR特許に従って製造されたジオグリッド等の先行技術の市販されているジオグリッドが直面するコストに対して、予測されるはずであることも見出された。現在の推定によれば、また、高アスペクト比のリブを有するウォルシュHARの例以外の類似の物理的特性を有するジオグリッドと、本明細書に記載され本発明に従って説明された好適な形状を有する本発明の例とを比較すると、以下の表Fに示すように、本発明に従って製造されたジオグリッドによって達成されるコスト削減は、前記の従来技術の特許に従って製造されたジオグリッドを使用するコストに対して10%~40%にもなり得る。
【0149】
【0150】
上述のように、表Fは、従来の「ジオグリッドなし」構造、当初のマーサー米国特許第4,374,798号によるテンサーが商品化した二軸ジオグリッド構造、ウォルシュHAR特許に該当するテンサーが商品化した三軸ジオグリッド構造、および本発明の利用予測を比較したものである。相対比較のために、各比較対象ジオグリッドの骨材層の標準的な厚さが記載されている。計算は、少なくとも英国およびヨーロッパで標準的な建設業界の尺度である「レーン km」に基づく。「トン」という記載は、メートルトン(2,200ポンドに等しい)を意味する。
【0151】
上述の説明および図面は、本発明の原理を説明するものとみなされるべきである。本発明は、様々なサイズで構成することができ、六角形の実施形態内の好適な六角形の正確な形状に限定されない。さらに、多数の修正および変更が当業者には容易に生じ得るので、本発明を説明され示された正確な構成および動作に限定することは望まれない。むしろ、この発明の範囲内に入る、すべての適切な修正および等価物が用いられ得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相互接続する配向ストランドと複数の部分配向接合部とを備える多軸インテグラルジオグリッドであって、前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、一連の開口を有する外側六角形の繰り返しパターンを形成し、
前記外側六角形の各々は、配向ストランドを有する小型の内側六角形を支持するとともに取り囲み、
前記外側六角形の前記配向ストランドおよび前記部分配向接合部は、前記多軸インテグラルジオグリッドの全体に亘って連続的に延びる複数の線形ストランドを規定する、
多軸インテグラルジオグリッド。
【外国語明細書】