(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138491
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】薄層の積層体が堆積されるドレッシングコンポーネントを備える携行型時計ケース
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20241001BHJP
G04B 19/04 20060101ALI20241001BHJP
G04B 1/08 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G04B19/06 B
G04B19/04 C
G04B1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112476
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2022143503の分割
【原出願日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21209841.2
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・キュルショ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・サガルドワイビュリュ
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・シュプリンガー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外観が優れた計時器のドレッシングコンポーネントを提供する。
【解決手段】透光体12と裏部13が固定されるミドル部11を備え内部空間を形成する携行型時計ケースであって、携行型時計ケース10は、内部空間内において、ドレッシングコンポーネント14を備え、ドレッシングコンポーネント14上に、基材層と固体の相切り替わり層を含む薄層の積層体15が堆積しており、相切り替わり層は、透光性封入層と、相切り替わり層を基材層から分離する離間層との間に挿入され、相切り替わり層は、透光性封入層と離間層の間にあり、離間層は、相切り替わり層を基材層から分離し、相切り替わり層は、薄層の積層体15に少なくとも2つの干渉色を与えるように光線に露光されることによって変わることができる屈折率を有するように構成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光体(12)と裏部(13)が固定されるミドル部(11)を備え内部空間を形成す
る携行型時計ケース(10)であって、
前記携行型時計ケース(10)は、前記内部空間内において、ドレッシングコンポーネ
ント(14)を備え、
前記ドレッシングコンポーネント(14)上に、基材層(150)と固体の相切り替わ
り層(151)を含む薄層の積層体(15)が堆積しており、前記相切り替わり層(15
1)は、透光性封入層(152)と、前記相切り替わり層(151)を前記基材層(15
0)から分離する離間層(153)との間に挿入され、
前記相切り替わり層(151)は、前記透光性封入層(152)と前記離間層(153
)の間にあり、
前記離間層(153)は、前記相切り替わり層(151)を前記基材層(150)から
分離し、
前記相切り替わり層(151)は、前記薄層の積層体(15)に少なくとも2つの干渉
色を与えるように光線に露光されることによって変わることができる屈折率を有するよう
に構成しており、
前記基材層(150)は、反射層によって形成され、
前記薄層の積層体(15)は、前記ドレッシングコンポーネント(14)のすべて又は
一部によって形成される支持体上に堆積され、
前記封入層(152)は、前記支持体によって形成される
ことを特徴とする携行型時計ケース(10)。
【請求項2】
前記相切り替わり層(151)は、2つの可逆的に切り替わり可能な相状態となるよう
に構成しており、
前記相状態は、結晶相とアモルファス相である
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計ケース(10)。
【請求項3】
前記封入層(152)は、前記露光下にて前記相切り替わり層(151)の屈折率が変
わることができる光線の波長に対して透光性である
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計ケース(10)。
【請求項4】
前記ドレッシングコンポーネント(14)は、表盤、計時器用ムーブメント(17)の
構造、透光体、ディスプレー、針、装飾物、ロゴ、又は振動錘である
ことを特徴とする請求項1に記載の携行型時計ケース(10)。
【請求項5】
請求項1に記載の携行型時計ケース(10)のドレッシングコンポーネント(14)を
装飾する方法であって、
所定の露光領域(16)上において前記薄層の積層体(15)を光線に露光させて、前
記相切り替わり層(151)の相を局所的に変えて、前記ドレッシングコンポーネント(
14)上にパターンを形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記光線は、制御ユニットによって制御されるレーザービームが発生させて、前記相切
り替わり層(151)の局所的な温度上昇、露光時間、及び前記所定の露光領域(16)
の形を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の製造の分野に関し、特に、薄層の積
層体が堆積されるドレッシングコンポーネントを備える携行型時計ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
携行型時計の製造の分野において、計時器用コンポーネントの表面特性を変えるために
薄層が一般的に用いられている。このような薄層は、特に、装飾のために用いられている
。
【0003】
薄層を堆積させるために、頭字語「PVD」として知られている物理蒸着法、頭字語「
CVD」として知られている化学蒸着法、頭字語「ALD」として知られている原子層堆
積、ガルバニック成長のようないくつかの方法を用いることができる。
【0004】
薄層は、純金属、金属合金、又はセラミックス材料によって作ることができる。
【0005】
それにもかかわらず、このような薄層の組成や厚みにしたがって発生する固有色の範囲
は比較的限られる。また、このような薄層は、その組成や厚みにしたがって多かれ少なか
れ透光性であり、色はやや不飽和的である。
【0006】
金属性の鏡によって形成される反射層上に堆積される、典型的には半透明の誘電体材料
によって作られる、異なる薄い層を積み重ねることによって得られる干渉色のおかげで、
広い範囲の色や飽和色を得ることができる。
【0007】
それにもかかわらず、このような積層体の色は、典型的には可視光の波長の4分の1程
度である、薄層の光学的厚みに密接に依存しており、このことによって、堆積厚みの正確
な制御が必要となり、平坦な形である、すなわち、二次元の形態の、基材上への堆積が制
限されてしまう。また、ユーザーが知覚するこのような薄層の色は、光路の長さが変わる
ために、見る角度に応じてかなり変わる。このことは、審美性が重要な用途においては大
きな課題となる。
【0008】
上記の薄層はすべてモノクロであり、多色の装飾には、所望の色と同じ数の堆積ステッ
プが必要となる。前記堆積ステップの後に、中間的構造化ステップを行う。これは、典型
的には、フォトリソグラフィー及び化学エッチング、いわゆる「リフトオフ」、「シャド
ーマスク」、又はレーザーアブレーションプロセスを用いて行う。
【0009】
このような構造化ステップは、許容誤差の要件を順守するために、面倒で高コストであ
ることが多い。また、汚れの原因となる。これは、特に、薬品槽を用いたり、気体、粉塵
、その他の残留物を発生させたりするためである。したがって、構造化ステップの後であ
って、作成されたコンポーネントを携行型時計に組み込む前に、洗浄ステップを行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、広い範囲の色にわたり明るく彩度の高い色を有するコンポーネントであっ
て、外観がコンポーネントを見る角度の影響をほとんど又はまったく受けず、このような
色を発生させる構造が、汚れを発生せず、ガス、粉塵又はその他の残留物を放出しやすく
ないものを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、透光体と裏部が固定されるミドル部を備え内部空間を形成する携行型時計ケ
ースに関する。前記携行型時計ケースは、前記内部空間内において、ドレッシングコンポ
ーネントを備え、前記ドレッシングコンポーネント上に、薄層の積層体が堆積される。
【0012】
前記薄層の積層体は、基材層と固体の相切り替わり層を含み、前記相切り替わり層は、
透光性封入層と、前記相切り替わり層を前記基材層から分離する離間層との間に挿入され
る。
【0013】
このような薄層の積層体の特定の構成のおかげで、前記ドレッシングコンポーネントは
、干渉色を発生させる光学的性質を有する。
【0014】
ここで、「干渉色」とは、光学的な干渉現象が発生させる色をいう。
【0015】
前記相切り替わり層は、特に局所的に吸収される光線に露光されているときに、熱的効
果による結晶学的相変化を行うように構成している。この結晶学的相変化は、屈折率の変
化を伴い、これによって、薄層の積層体における光線に露光される領域と光線に露光され
ない領域の間で少なくとも2つの異なる干渉色を与える。
【0016】
したがって、特に、相切り替わり層と離間層の厚みを変えることによって、広範囲の飽
和色かつ強い色を発生させることができ、ドレッシングコンポーネントの多色装飾を得る
ことができる。
【0017】
前記ドレッシングコンポーネントが配置される箇所に応じて、透光体、又は裏部に透光
体がある場合には裏部、を光線が通り抜けることは注目に値する。
【0018】
相の切り替わりは、気体、固体又は液体の排出物を発生しないため、前記少なくとも2
つの干渉色を発生させること、したがって、ドレッシングコンポーネントを装飾すること
は、その後に洗浄操作を行うことを必要としない。
【0019】
したがって、携行型時計ケースの生産終了時、携行型時計ケースの販売時、又はアフタ
ーセールス期間に、ドレッシングコンポーネントを装飾することができる。このおかげで
、ドレッシングコンポーネントの装飾のあらゆるカスタマイズが可能になる。
【0020】
特定の実施形態において、本発明は、さらに、単独で、又は技術的に可能な組み合わせ
で、以下の特徴の1つ又は複数を有することができる。
【0021】
特定の実施形態において、前記相切り替わり層は、2つの可逆的に切り替わり可能な相
状態となるように構成しており、前記相状態は、結晶相とアモルファス相である。
【0022】
したがって、前記ドレッシングコンポーネントのこの装飾は、可逆的なものである。
【0023】
特定の実施形態において、前記封入層は、前記露光下にて前記相切り替わり層の屈折率
が変わることができる光線の波長に対して透光性である。
【0024】
特定の実施形態において、前記基材層は、反射層によって形成される。
【0025】
特定の実施形態において、前記薄層の積層体は、前記ドレッシングコンポーネントのす
べて又は一部によって形成される支持体上に堆積され、前記封入層は、前記支持体によっ
て形成される。
【0026】
特定の実施形態において、前記ドレッシングコンポーネントは、表盤、計時器用ムーブ
メントの構造、透光体、針、装飾物、ロゴ、ディスク又は振動錘である。
【0027】
本発明の別の態様は、上記の携行型時計ケースのドレッシングコンポーネントを装飾す
る方法に関し、この方法は、所定の露光領域上において前記薄層の積層体を光線に露光さ
せて、前記相切り替わり層の相、したがって、その屈折率、さらには、前記露光領域にお
ける前記積層体の干渉色、を局所的に変えて、前記ドレッシングコンポーネント上にツー
トーンのパターンを発生させる。
【0028】
このように、携行型時計ケースが組み付けられるときに携行型時計ケースにおけるドレ
ッシングコンポーネントにツートーンの装飾を形成することが可能となり、したがって、
この携行型時計ケースの寿命のどの段階においてもドレッシングコンポーネントの装飾を
カスタマイズすることができる。
【0029】
本発明を実装する際には、制御ユニットによって制御されて、相切り替わり層の局所的
な温度上昇、露光時間、及び所定の露光領域の形を制御するようなレーザービームが光線
を発生させる。
【0030】
この特徴のおかげで、パターンを非常に正確に作ることができ、非常に多様な装飾を想
定することができ、また、このような装飾の生産品質を高くすることができる。
【0031】
添付の図面を参照しながら、例として与えられる以下の詳細な説明を読むことによって
、本発明の他の特徴と利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る携行型時計ケースの断面図を概略的に示している。
【
図2】
図1における携行型時計ケースにおけるドレッシングコンポーネントの断面図を概略的に示している。
【
図3】本発明の実施形態の別の例における、
図1の携行型時計ケースにおけるドレッシングコンポーネントの断面図を概略的に示しており、このドレッシングコンポーネントは、封入層を形成する支持体を形成している。
【
図4】支持体が基材層を形成する、
図1の携行型時計ケースにおけるドレッシングコンポーネントの断面図を概略的に示している。
【
図5】基材層が透光性である、
図4の携行型時計ケースにおけるドレッシングコンポーネントの断面図を概略的に示している。
【
図6】基材層が透光性である、
図3の携行型時計ケースにおけるドレッシングコンポーネントの断面図を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明に係る携行型時計ケース10の断面図の概略図を示している。携行型時
計ケース10には、ミドル部11があり、このミドル部11に透光体12と裏部13が固
定されて内部空間を形成する。
【0034】
携行型時計ケース10は、前記内部空間内にドレッシングコンポーネント14を備え、
このドレッシングコンポーネント14上に薄層の積層体15が堆積される。すなわち、薄
層の積層体15は、ドレッシングコンポーネント14のコーティングを形成する。
【0035】
薄層の積層体15は、以下において詳細に説明するように、ユーザーが見えるように意
図されている面上で、ドレッシングコンポーネント14に対していくつかの所定の干渉色
を与えるように構成している。
【0036】
好ましいことに、
図1に示しているように表盤によって、棒体やプレートのような計時
器用ムーブメント17の構造によって、振動錘によって、フランジによって、また、携行
型時計ケース10の内部空間に収容されていたり前記携行型時計ケース10上にある、裏
部13、透光体12、ベゼルのような任意の他のコンポーネントによって、ドレッシング
コンポーネント14を形成することができる。
【0037】
ここで、「透光体」という用語は、以下において、透光体12、又は裏部13の任意の
透光体を表すように用いられる。
【0038】
薄層の積層体15は、基材層150と、透光性封入層152と離間層153の間に挿入
される固体の相切り替わり層151を備え、離間層153は、前記相切り替わり層151
を基材層150から分離する。
【0039】
ここで、「透光性」という用語は、光放射、特に、肉眼で見える光、のすべて又は一部
を透過する材料の能力を表す。
【0040】
干渉色は、関連する本発明の実施例にしたがった反射性又は透過性の形態で、封入層1
52、相切り替わり層151、スペーサ層153及び基材層150の構成が発生させる干
渉効果によって発生する。
【0041】
図2に示している本発明の実施例において、任意の適切な材料によって作られた支持体
上に薄層の積層体15を堆積させることができ、前記支持体は、ドレッシングコンポーネ
ント14のすべて又は一部によって形成される。すなわち、基材層150は支持体に対向
するように配置され、離間層153を支持体から分離する。
【0042】
例えば、支持体は、フィルムなどの形態である、金属性材料、自然酸化物を含むケイ素
、ガラス、水晶、サファイア、又はポリエチレンテレフタレートによって作ることができ
る。
【0043】
図2に示している実施例において、基材層150は、反射層によって形成することがで
き、これは、例えば、金属性の鏡によって作られ、好ましくは、白金、ロジウム、銀、ア
ルミニウムのような高い反射率を有する材料によって作られる。この基材層においては、
ここで、薄層が互いに重なり合う方向に沿った寸法として定められる厚みが約100nm
であることができる。
【0044】
離間層153は、透光性の誘電体材料によって作られる。このような材料は、インジウ
ムスズ酸化物、二酸化ケイ素、又は硫化亜鉛であることができる。好ましくは、離間層1
53は、50nm~200nmの範囲内の厚みを有する。
【0045】
相切り替わり層151は、その構成物質のおかげで、適応する光線に露光されることに
よって、結晶相又はアモルファス相から、アモルファス相又は結晶相へとそれぞれ変わる
能力を有する。
【0046】
図1において、このような光線を破線の矢印で示している。
【0047】
特に、相切り替わり層151は、好ましくは可逆的なように、切り替わり可能な2つの
相状態を有するように構成している。すなわち、相切り替わり層151は、光線に露光さ
れた後に、初期の結晶又はアモルファス相から、最終的なアモルファス又は結晶相へとそ
れぞれ変わり、その初期相へと戻ることができるように構成している。
【0048】
特に、薄層の積層体15を光線に露光させると、相切り替わり層151が局所的に温度
上昇する。比較的長い時間、例えば、数秒や数十秒、ガラス転移点よりも高い温度にする
ことで、相切り替わり層151の結晶化、すなわち、アモルファス相から結晶相への変化
を誘発し、再結晶化させずにアモルファス相を固定するために十分短い時間融点よりも高
い温度にすることで、相切り替わり層151のアモルファス化、すなわち、結晶相からア
モルファス相への変化、を誘発する。
【0049】
好ましい例として、相切り替わり層151は、初期相がアモルファス相であるように、
堆積された後にはアモルファス相を含む。
【0050】
相切り替わり層151は、結晶相であるかアモルファス相であるかに応じて屈折率が変
わる。したがって、相切り替わり層151の相が変化すると、相切り替わり層151の屈
折率が変わり、したがって、積層体の干渉色が相切り替わり層151の屈折率に依存する
かぎり、ユーザーが知覚する視覚的外観が変わる。
【0051】
すなわち、相切り替わり層151は、その屈折率が、光線への露光の後に2つの値のい
ずれかであるように構成している。なお、封入層152を介して薄層の積層体15に局所
的に当たるように光線が発生して、外側部分コンポーネントが2つの異なる干渉色を有す
るようになる。
【0052】
好ましいことに、相切り替わり層151は、Ge2Sb2Te5やAgInSbTeの
ような相変化材料によって作られている。好ましくは、相切り替わり層151は、5nm
~20nmの範囲内の厚みを有する。
【0053】
ドレッシングコンポーネント14を装飾する方法において、光線を薄層の積層体15の
面上の所定の露光領域16に局所的に当てて、ドレッシングコンポーネント14上に所定
のパターンを形成する。したがって、このようなパターンは、ドレッシングコンポーネン
トの残りの部分とは異なる干渉色を有し、ロゴ、テキスト、又は任意の他のグラフィック
表現の形態であることができる。
【0054】
すなわち、相切り替わり層151の一部はアモルファス相又は結晶相を有し、この相切
り替わり層151の残りは異なる相を有し、したがって異なる屈折率を有し、このことに
よって、2つの異なる干渉色を発生させることができる。
【0055】
光線は、好ましくはレーザービームが発生させ、このレーザービームは、当業者であれ
ば当然知っている制御ユニットによって制御されて、相切り替わり層151の少なくとも
局所的な温度上昇、露光時間、及び薄層の積層体15の面における前記所定の露光領域1
6の形を制御する。
【0056】
好ましくは、レーザービームは、波長が赤外範囲内にある光線を発し、波長が可視範囲
又は紫外範囲内にある光線をビームが発するレーザーを用いて本発明を実装することもで
きる。レーザーの動作パワーは比較的低く、好ましくは、約50mWであり、パルス持続
時間が5ms程度であり、すなわち、パルスエネルギーが250μJ程度である。これに
よって、過熱、アブレーションの影響などによって相切り替わり層151を損傷してしま
うリスクがなく、相切り替わり層151の相を切り替える。
【0057】
封入層152のおかげで、薄層の積層体15、特に相切り替わり層151を、特に酸素
や湿気から、保護することができる。この封入層152を通してユーザーが相切り替わり
層151を見ることができる。
【0058】
また、封入層152は、相切り替わり層151が露光される光線の波長において透光性
である。
【0059】
封入層152は、特に、酸化インジウムスズ、二酸化ケイ素、又は硫化亜鉛によって作
ることができる。
【0060】
封入層152と離間層153の厚みと材料は、薄層の積層体15の所望の色に応じて選
択される。実際に、封入層152と離間層153の厚みと材料は、対応する屈折率を変え
、したがって、干渉色を変える。
【0061】
好ましくは、封入層152は、約10nmの厚みを有する。
【0062】
薄層の積層体15は、好ましくは、非常に薄い厚みを有し、したがって、携行型時計ケ
ース10又はドレッシングコンポーネント14の設計を変えることなく、携行型時計ケー
ス10のドレッシングコンポーネント14上に堆積されることができる。
【0063】
好ましくは、
図3に示している本発明の実施形態の別の例において、封入層152は、
支持体によって形成することができ、この支持体は透光性の材料によって作られる。
【0064】
薄層の積層体15は、支持体を介してユーザーによって観察される。
【0065】
この場合、ドレッシングコンポーネント14は、透光性の材料によって作られた透光体
又は表盤によって形成される。このようにして、好ましいことに、薄層の積層体15は、
携行型時計ケース10の内部空間内に配置され、いずれの摩擦もしない。
【0066】
好ましいことに、
図4に示している本発明の実施形態の別の例において、基材層150
は、支持体によって、すなわち、ドレッシングコンポーネント14によって、形成されて
いることができる。ここで、このドレッシングコンポーネント14は、白金、ロジウム、
銀、アルミニウムのような反射性材料によって作られる。
【0067】
図2及び3に示している本発明の実施例において、基材層150が反射層によって形成
されるので、薄層の積層体15は、露光された光を反射する可能性が高く、不透明なプレ
ーンな干渉色の美的外観を奏する。
【0068】
図5及び6にそれぞれ示している本発明の実施形態の別の例において、基材150は、
上記及び
図2~4に示している実施例とは異なり、反射層によって形成されていないが、
透光性ないし半透明である。特に、基材層150は、ポリエチレンテレフタレート、ガラ
ス、サファイアのような透光性ないし半透明の材料によって形成される。
【0069】
特に、
図5に示している本発明の実施例において、基材層150は、支持体によって形
成され、
図6に示している実施例において、封入層152は、支持体によって形成される
。
【0070】
本発明のこれらの実施例において、相切り替わり層151、離間層153及び基材層1
50の構成が発生させる干渉効果は、透過タイプのものである。
【0071】
図5及び6に示している実施例において、薄層の積層体15が発生させる装飾は、封入
層152と基材層150の両方を通して、ユーザーが観察することができる。
【0072】
本発明のこれらの実施例において、ドレッシングコンポーネント14は、好ましくは、
透光体又は表盤によって構成していることができる。
【0073】
なお、より一般的には、上記で考慮された実装及び実施形態は、例として説明しており
、したがって、別の変異形態を考えることができる。
【0074】
原則として、薄層の積層体15のいくつかの異なる薄層を、陰極スパッタリング法又は
別の適切な堆積方法によって堆積させることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 携行型時計ケース
11 ミドル部
12 透光体
13 裏部
14 ドレッシングコンポーネント
15 薄層の積層体
16 露光領域
17 計時器用ムーブメント
150 基材層
151 相切り替わり層
152 封入層
153 離間層
【外国語明細書】