(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138497
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】電力変換器、電力供給システムおよび高周波プラズマシステム
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20241001BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20241001BHJP
H03F 3/30 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H03F3/217
H03F3/217 160
H03F3/30
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112928
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2021505656の分割
【原出願日】2019-07-29
(31)【優先権主張番号】18461598.7
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508142413
【氏名又は名称】トゥルンプフ ヒュッティンガー スプウカ ズ オグラニショナ オドポヴィヂャルノスツィア
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Huettinger Sp. z o. o.
【住所又は居所原語表記】Ul. Marecka 47, 05-220 Zielonka, Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルチン ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】アンジェイ クリムチャク
(72)【発明者】
【氏名】コンラート レヴァンドフスキ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増幅器の反射電力に対する安定性、耐性を改善する。
【解決手段】高周波電力信号を生成するように構成された電力変換器(3)は、それぞれ1つの増幅器(42a、43a)を備えた第1増幅器パス(42)および第2増幅器パス(43)を有する少なくとも1つの増幅段(40)を有する。第1増幅器パス(42)は、第1増幅器パス出力信号を出力し、第2増幅器パス(43)は、第1増幅器パス出力信号に対し、0°よりも大きくかつ180°よりも小さい位相シフトを有する第2増幅器パス出力信号を出力する。第1増幅器パス(42)および第2増幅器パス(43)は、第1増幅器パス出力信号および第2増幅器パス出力信号を結合して高周波電力信号を形成するように構成された位相シフトカプラ(47)に接続されている。第1増幅器パス(42)および第2増幅器パス(43)の少なくとも1つの増幅器(42a、43a)は、SiC-MOSFETを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマプロセス用の高周波電力信号を生成するように構成された電力変換器(3)であって、前記電力変換器(3)は、
それぞれ1つの増幅器(42a、43a)を備えた第1増幅器パス(42)および第2増幅器パス(43)を有する少なくとも1つの増幅段(40)を有し、前記第1増幅器パス(42)は、第1増幅器パス出力信号を出力し、前記第2増幅器パス(43)は、前記第1増幅器パス出力信号に対し、0°よりも大きくかつ180°よりも小さい位相シフトを有する第2増幅器パス出力信号を出力し、
前記第1増幅器パス(42)および前記第2増幅器パス(43)は、前記第1増幅器パス出力信号および前記第2増幅器パス出力信号を結合して前記高周波電力信号を形成するように構成された位相シフトカプラ(47)に接続されており、
前記第1増幅器パス(42)および前記第2増幅器パス(43)の少なくとも1つの増幅器(42a、43a)は、SiC MOSFETを有する、電力変換器。
【請求項2】
前記SiC MOSFETは、高電圧SiC MOSFETである、ことを特徴とする、請求項1記載の電力変換器。
【請求項3】
前記第1増幅器パス(42)および前記第2増幅器パス(43)の少なくとも1つの前記増幅器(42a、43a)は、スイッチモード増幅器である、ことを特徴とする、請求項1または2記載の電力変換器。
【請求項4】
前記スイッチモード増幅器は、D級またはE級増幅器である、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の電力変換器。
【請求項5】
出力コネクタを有し、前記出力コネクタは、前記出力コネクタに接続されているプラズマ負荷(6)に前記高周波電力信号を出力するように構成されている、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電力変換器。
【請求項6】
前記SIC MOSFETは、300kHzより高くかつ10MHzよりも低い、特に1MHzよりも高くかつ特に5MHzよりも低い周波数を有する高周波信号を増幅するために使用される、ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載電力変換器。
【請求項7】
前記出力コネクタにおける前記信号の広帯域測定を実行するように構成された第1回路(48)を有する、ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電力変換器。
【請求項8】
前記第1増幅器パス(42)および前記第2増幅器パス(43)に電圧を供給するように構成された電圧源(44)と、前記第1回路(48)から受信した信号に応じて、前記電圧源(44)を制御するように構成された第2回路(50)とを有し、前記電圧源を制御するように構成された前記第2回路(50)は、前記出力コネクタにおける前記信号の広帯域測定を実行するように構成された前記第1回路(48)に接続されている、ことを特徴とする、請求項7記載の電力変換器。
【請求項9】
さらに、吸収抵抗器(51)に関連するデータ、特に、前記吸収抵抗器(51)における電圧および/または前記吸収抵抗器(51)の温度を測定するように構成された第3回路(55)を有する、請求項7または8記載の電力変換器。
【請求項10】
少なくとも1つの前記増幅器に電圧を供給するように構成された調整可能電圧源と、前記調整可能電圧源によって出力される信号を測定する第4回路(52)とを有する、請求項8または9記載の電源変換器。
【請求項11】
プラズマプロセスの電極に接続されておりかつ前記プラズマプロセスの前記電極に高周波電力を供給するように構成された電力供給システム(2)であって、請求項1から10までのいずれか1項記載の電力変換器(3)を有する、ことを特徴とする、電力供給システム(2)。
【請求項12】
高周波プラズマシステム(1)であって、前記高周波プラズマシステム(1)は、
少なくとも1つの電極が配置されているプラズマチャンバと、前記電極に接続されておりかつ前記電極に高周波電力を供給するように構成されている、請求項11記載の電力供給システム(2)と、を有する、高周波プラズマシステム(1)。
【請求項13】
さらに、前記プラズマプロセスに接続されている、異なる周波数を有する複数の電源を有し、極めて多種多様な周波数を有する反射電力が、電力供給システム(2)および電力変換器(3)に戻って結合される、請求項12記載の高周波プラズマシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器と、プラズマプロセスに供給可能な高周波電力を生成する電力供給システムと、高周波(HF:high-frequency)プラズマシステムとに関する。
【0002】
電力供給システム、特に、300kHzよりも高い周波数で1kWよりも多くの電力を生成するシステムは、例えば、プラズマドライエッチングプロセスのようなプラズマプロセス、プラズマコーティング設備、またはこれに類するものに使用される。
【0003】
米国特許出願公開第2017/0064802号明細書には、反応性ガス生成器用の電力供給システムが示されており、この電力生成システムに、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ、バイポーラ接合トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタまたはシリコンカーバイド(SiC:silicon carbide)トランジスタが使用されることが提案されている。
【0004】
プラズマプロセス用の電力供給システムでは、例えば、プラズマチャンバにおいてアークが発生し、これに応じて、供給される電力が適合されなければならない場合に、必要な電力に急峻な変化が発生することがある。他方においてプラズマを点火するのに必要な電力は、プラズマプロセスを動作させる電力とは異なっていてよい。プラズマ状態が変化すると、相応に負荷インピーダンスが変化する。このことは結果的に負荷における急峻な変化にも結び付く。十分に迅速にインピーダンスを調整できないことも多く、これによって電力は負荷によって反射されてしまう。また周波数の異なる複数の電源が、例えばプラズマドライエッチングプロセスのようなプラズマプロセスに接続される場合、電源に反射される電力は、多種多様な周波数を呈し得る。したがって多種多様な周波数を有する電力が、電源に戻って結合されることがあり、この電力に対処する必要がある。
【0005】
本発明の1つの目的は、特に、反射電力に対する安定性および耐性を改善することである。
【0006】
プラズマプロセス用に高周波電力信号を生成可能な電力変換器は、それぞれ1つの増幅器を備えた第1増幅器パスおよび第2増幅器パスを有する少なくとも1つの増幅段を有していてよい。第1増幅器パスは、第1増幅器パス出力信号を出力することができ、第2増幅器パスは、第1増幅器パス出力信号に対し、0°よりも大きくかつ180°よりも小さい位相シフトを有する第2増幅器パス出力信号を出力することができる。第1増幅器パスおよび第2増幅器パスは、第1増幅器パス出力信号および第2増幅器パス出力信号を結合して高周波電力信号を形成するように構成可能な位相シフトカプラに接続可能である。第1増幅器パスおよび第2増幅器パスの少なくとも1つの増幅器は、SiC MOSFETを有していてよい。
【0007】
位相シフトカプラは、2つの入力信号を結合して、少なくとも1つの入力信号に対して相対的に位相シフトされた出力信号にするユニットであると理解される。位相シフトカプラは、カプラと、選択的には、1つ以上の増幅器パスのそれぞれに対する位相シフトネットワークとを有していてよく、正常な動作中には、カプラの入力信号は、0°でも180°でもなくかつ特に0°よりも大きくかつ180°よりも小さい位相位置を互いに対して相対的に有していてよい。例えば、複数の入力信号は、90°位相シフトされていてよい。位相シフトカプラは、90°ハイブリッドカプラまたは3dBカプラであってよい。
【0008】
3dBカプラは、「ハイブリッドカプラ」とも称され、プラズマ電源の分野におけるその振る舞いは、米国特許第7151422号明細書、米国特許第7477114号明細書、米国特許出願公開第2018/0123212号明細書、米国特許出願公開第2013/0038226号明細書、欧州特許第2202776号明細書、米国特許第8133347号明細書に記載されており、例えば、本明細書の意味において、3dBカプラは、これらの文献に記載されているように振る舞う。
【0009】
位相シフトカプラ、特に90°ハイブリッドカプラまたは3dBカプラは、その入力ポートおよび出力ポートにおいて、10Ω~100Ω、特に30Ω~60Ωの範囲のインピーダンスを有していてよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、SiC MOSFETは、高電圧SiC MOSFETであってよい。高電圧SiC MOSFETは、1,500Vまたはこれよりも高い、好ましくは600Vまたはこれよりも高い、ドレインとソースとの間の最大定格電圧を有する新世代のSiC(Silicon Carbide) MOSFETである。SiC MOSFETの一般的な応用は、今のところ、例えば、太陽光インバータ、DC/DCコンバータ、スイッチモード電源、誘導加熱またはモータ駆動部である。
【0011】
高電圧SiC MOSFETは、多くの場合に70nsよりも長い立ち上がり時間または立ち下がり時間を有するタイミング特性を有し、このことが示唆し得るのは、高周波数応用におけるその使用が困難になり得ることである。本発明の一実施形態において提案されるのは、高電圧SiC MOSFETを備えた少なくとも1つの増幅器と、負荷、例えばプラズマから増幅器への多重反射を抑制する位相シフトカプラとを組み合わせることである。このような実施形態において、高電圧SiC MOSFETは、有利な特性を呈し、安定であることが判明している。
【0012】
一実施形態において、電力変換器の第1増幅器パスおよび第2増幅器パスの少なくとも1つの増幅器は、スイッチモード増幅器であってよい。
【0013】
電力変換器の第1増幅器パスおよび第2増幅器パスは、反射電力を供給するように構成されたカプラとも理解される位相シフトカプラに接続されており、この反射電力は、負荷、例えばプラズマ負荷からカプラを通って、異なる位相で、すなわち位相シフトされて増幅器に戻るように伝導される。負荷は、時間と共にそのインピーダンスを変化させることがある。負荷インピーダンスが、ソースインピーダンスと同じでない状態は、「インピーダンス不整合」または「不整合」と称される。負荷インピーダンス不整合の場合、送出された電力の一部が、ソースに反射される。ソースが、位相シフトカプラ、例えば90°ハイブリッドカプラを有する電源の場合、負荷から戻されて供給される反射電力は、このカプラにより、90°だけ位相シフトされてその2つの入力コネクタ間で分割されることがある。このとき、反射電力は、位相シフトされて、入力コネクタに接続されている増幅器に戻されて供給されることがある。
【0014】
カプラは、反射電力の位相を変化させるため、増幅器は、反射電力における位相変化に直面させられる。スイッチモード増幅器は、スイッチの出力部間の電圧がゼロまたはゼロに近い場合に、スイッチを閉じるように設計可能である。このときこれは、ソフトスイッチングと称される。
【0015】
電力が反射される状況では、位相シフトカプラに起因する位相変化により、これらのスイッチは、これらのスイッチの出力部間の電圧がゼロでない場合に、このスイッチが切り換わらなければならない状況になることがある。このときこれは、ハードスイッチングと称され、スイッチには有害でありかつスイッチへの損傷のリスクを生じさせることがある。このことはインピーダンスが頻繁、高速かつ大幅に変化するプラズマ電力供給ステムにおいては特に重要である。スイッチのこの損傷は、特に、一般に300kHzを上回る周波数において使用される高速スイッチングMOSFETに生じ得る。電力変換器の少なくとも1つの増幅器に、または場合によってはそれぞれの増幅器にSiC MOSFETを使用することにより、上述のこれらのハードスイッチング条件において、これらのSiC MOSFETは、過去においてプラズマ電源に推奨されていなかったのにもかかわらず、電力変換器の信頼性を向上させ得ることが判明した。これはおそらくは300kHzを上回る周波数におけるそれらの臨界的なタイミングの振る舞いに起因していると思われる。向上されたこの信頼性は、電力変換器の少なくとも1つの増幅器に少なくとも1つのSiC MOSFETを使用することに起因し得る。
【0016】
本発明の一実施形態において、スイッチモード増幅器は、D級またはE級増幅器であってよい。
【0017】
一実施形態において、増幅器は、F級または逆F級(Class F-1)モードで動作するように構成可能である。
【0018】
D級、E級、F級またはF
-1級増幅器のようなスイッチモード増幅器の基本回路および機能は、例えば、欧州特許第1601098号明細書に、特に
図1および
図2A~
図2Fならびに対応する段落0006~0014に記載されている。このような種類の増幅器にSiC MOSFETを使用することにより、DCリンク電圧を増大させることができ、このことは、トランジスタ当たりの電力が増大することを意味する。したがって、例えばE級の使用が拡張される可能性がある。
【0019】
本発明の一実施形態において、電力変換器は、負荷、例えばプラズマ負荷に接続され、出力コネクタを介して負荷に高周波電力信号を出力可能である。特に、1kWを上回るプラズマプロセスは、高速に変化するインピーダンスを有し、電源は、反射電力に対して耐性を有する必要がある。
【0020】
電力供給システムは、300kHzより高くかつ10MHzよりも低い、特に1MHzよりも高くかつ特に5MHzよりも低い周波数で電力を生成するように構成可能である。この領域において、上述の利点は、特に明らかである。
【0021】
本発明の一実施形態において、位相シフトカプラは、吸収抵抗器を介してアースに接続されているコネクタを有していてよい。吸収抵抗器は、出力電力の少なくとも10%になり得る大量の電力を吸収するように構成されている。この吸収抵抗器は、10Ω~100Ω、特に30Ω~60Ωの範囲にある値を有し得る。位相シフトカプラはまた、第1入力コネクタにおいて第1入力インピーダンスを有しかつ第2入力コネクタにおいて第2インピーダンスを有するユニットであって、反射出力がカプラを介して入力コネクタにわたされない場合には入力インピーダンスが等しく、反射出力がカプラを介して入力コネクタにわたされる場合には入力インピーダンスが異なるように構成されたユニットであると理解することも可能である。
【0022】
電力変換器に含まれている位相シフトカプラによれば、このカプラに接続されている2つの増幅器パスは、不整合の場合、インピーダンスが異なり得る。さらに不整合の場合、出力は、増幅器パスに反射されて戻ることはなく、その代わりに吸収抵抗器へと放散可能である。
【0023】
1つの増幅器、特にそれぞれの増幅器は、その出力部において、カプラの入力インピーダンスとは異なり得る出力インピーダンスを有していてよい。この場合、負荷から電力が反射されるとき、増幅器により、そこに伝導された電力の大部分が、反射されてカプラに戻る。このとき、カプラは、吸収抵抗器に電力を伝導する。これにより、システムの安定性および信頼性が改善される。
【0024】
例えば、異なる周波数を有する複数の電源が、プラズマプロセス、例えばドライエッチングプロセスに接続される場合、極めて多種多様な周波数を有する反射出力が、電源および電力変換器に戻って結合されることがある。
【0025】
本発明の一実施形態において、電力変換器は、この電力変換器の出力コネクタにおける信号の広帯域測定を実行するように構成された第1回路を有する。この広帯域測定により、電力変換器によって供給される周波数とは異なる周波数の測定も可能になる。このような周波数は、例えば、電力変換器の出力コネクタに接続可能な負荷から反射されて戻る周波数であってよい。
【0026】
電力変換器の一実施形態には、第1増幅器パスおよび第2増幅器パスに電圧を供給するように構成された電圧源が含まれていてよい。第2回路は、電圧源を制御するように構成されていてよく、出力信号の広帯域測定を実行するように構成された第1回路に接続可能である。第1回路は、例えば、高サンプリングレートを有するアナログ・デジタル変換器を有していてよく、高速デジタル評価部、例えばPLD(Programmable Logic Device)に接続されていてよい。第2回路は、電源の出力部における信号の周波数、電圧および電流に関連する情報を有する、第1回路の出力を受信可能である。このとき、第2回路は、第1回路から受信された信号に応じて、第1増幅器パスおよび第2増幅器パスへの電圧供給を調整可能である。
【0027】
電力変換器はさらに、吸収抵抗器に関連するデータを測定するように構成された第3回路を有していてよい。
【0028】
本発明の一実施形態において、電力変換器は、少なくとも1つの増幅器に電圧を供給するように構成された調整可能電圧源と、調整可能電圧源によって出力される信号を測定する第4回路とを有していてよい。
【0029】
本発明の別の複数の実施形態において、電源内の付加的な信号および値は、第1回路によって出力される信号、例えばDCリンク電圧、DCリンク電流、DCリンク電力、吸収抵抗器電圧または温度に応じて測定され、かつ/またはこれらの影響を受けることが可能である。測定される値は、学習プロセスのベースであってよく、この学習プロセスでは、他の値に影響が及ぼされ、結果が測定され、このときにこれらの値への影響が調整される。この場合にこの手順は、システムの閉ループ制御に類似し得る。この学習プロセスは、ニューラルネットワークによって実現可能である。
【0030】
本発明の別の複数の実施形態では、例えば、電源の状態を全体システム制御部に、かつ/またはシステムに存在し得る別の複数の電源に通信する、電源の外部の付加的な通信チャネルが設けられていてよい。
【0031】
本発明の一様相は、プラズマプロセスの電極に接続可能でありかつプラズマプロセスの電極に高周波電力を供給するように構成された電力供給システムを特徴とする。この電力供給システムは、それぞれ1つの増幅器を備えた第1増幅器パスおよび第2増幅器パスを有する少なくとも1つの増幅段を備えた電力変換器を有していてよい。第1増幅器パスは、第1増幅器パス出力信号を出力可能であり、第2増幅器パスは、第1増幅器パス出力信号に対し、0°よりも大きくかつ180°よりも小さい、例えば90°の位相シフトを有し得る第2増幅器パス出力信号を出力可能である。第1増幅器パスおよび第2増幅器パスは、第1増幅器パス出力信号および第2増幅器パス出力信号を結合して高周波電力信号を形成するように構成可能な位相シフトカプラに接続可能である。第1増幅器パスおよび第2増幅器パスの少なくとも1つの増幅器は、SiC MOSFETを有していてよい。
【0032】
本発明の一様相は、少なくとも1つの電極が配置可能なプラズマチャンバと、電極に接続されかつ電極に高周波電力を供給するように構成可能な電力供給システムとを有し得る高周波プラズマシステムを特徴とする。
【0033】
本発明の特徴および利点をさらに正しく評価できるようにするために、以下では、添付の概略図面を参照し、単なる実施例として複数の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】電力供給システムおよび負荷を有するプラズマシステムの概略図である。
【
図2】増幅器およびカプラを有する電力変換器の概略図である。
【
図3】さらなる測定回路を有する電力変換器の概略図である。
【0035】
図1には、電力供給システム2を有するプラズマシステム1が示されている。電力供給システム1それ自体は、電圧供給網4に接続可能な電力変換器3を有する。電力変換器3の出力部に生成される電力は、インピーダンス整合ネットワーク5を介して、例えばプラズマチャンバであってよい負荷6にわたされ、このプラズマチャンバでは、このプラズマチャンバにおけるプラズマ加工に使用可能なプラズマが生成される。特に、被加工物をエッチングすることができるかまたは材料層を基板に被着することができる。負荷6はまた、ガスレーザ励起部であってもよい。
【0036】
図2は、電力供給システム2の極めて概略的な描画である。電力供給システム2は、負荷6、例えばプラズマプロセスまたはレーザ励起に供給可能な出力電力を生成する電力変換器3を有する。インピーダンス整合ネットワーク5は、負荷6と電力変換器3との間に配置可能である。
【0037】
デジタル・アナログ変換器(DAC:digital-to-analogue converter)31により、アナログ出力信号が生成される。生成されたアナログ信号は、増幅段40、特にその中のスプリッタ41に供給される。スプリッタ41は、位相シフトされた2つの信号に、特に90°だけ位相シフトされた信号にアナログ信号を分割するハイブリッドカプラとして構成可能である。スプリッタ41によって放出される一方の信号は、第1増幅器パス42に供給可能であり、スプリッタ41によって放出される他方の信号は第2増幅器パス43に供給可能である。増幅器パス42、43はそれぞれ少なくとも1つの増幅器42a、43aを有し、増幅器42a、43aは、プッシュプル増幅器として、したがってそれぞれが2つのトランジスタ、特に2つのSiC MOSFETトランジスタを有するように形成可能である。増幅器パス42、43の、したがって増幅器42a、43aおよびそこに含まれるトランジスタの電圧供給は、電圧源44によって行われる。それぞれの増幅器パス42、43の出力部には出力ネットワーク45、46が設けられており、このネットワークにより、増幅器42a、43aの出力インピーダンスが、位相シフトカプラ47の入力インピーダンスに整合され、同時に不所望の高調波がフィルタリングされる。位相シフトカプラ47では、増幅器パス42、43の出力信号が位相に依存して結合されて、出力信号が形成され、この出力信号が、選択的なインピーダンス整合ネットワーク5を介して最終的には負荷6にわたされる。位相シフトカプラ47は、吸収抵抗器51を介してアースに接続される。位相シフトカプラ47は、好ましくは90°ハイブリッドカプラである。
【0038】
カプラ47の出力部における出力電力は、第1回路48、例えば適切な広帯域測定回路によって検出可能である。破線49は、広帯域測定回路が、第2回路50、例えば電圧制御システムに接続されていることを示しており、第2回路50それ自体は、電圧源44を動作させる。特に第1回路48は、負荷6に供給される電力および負荷6によって反射される電力も検出可能である。この検出には、特に、負荷6に供給され、負荷6によって反射される信号の電圧、電流および周波数が含まれていてよい。
図3に関連して説明されるようにこれらの値から、負荷6の反射を示す信号が、生成可能であり、供給される電圧および他の要因に影響を及ぼすために使用可能である。
【0039】
図3は、第1増幅器パス42および第2増幅器パス43と、第1増幅器パス42および第2増幅器パス43ならびにこれらに含まれる増幅器に電圧を供給する電圧源44とを含む電力変換器3の極めて概略化された図である。1つの電圧源44の代わりに、第1増幅器パス42および第2増幅器パス43にそれぞれ電圧を供給するために2つの電圧源を使用することも可能である。位相シフトカプラ47により、増幅器パス42、43の出力信号が結合されて、電力変換器3の高周波電力信号が形成される。位相シフトカプラ47は、吸収抵抗器51を介してアースに接続されている。吸収抵抗器51により、負荷6によって反射された電力を吸収可能である。電力変換器3はさらに、第1回路48と、第2回路50と、第3回路55と、第4回路52とを有する。
【0040】
第1回路48は、広い周波数範囲にわたって位相シフトカプラ47の出力信号の電圧および電流を測定するように構成されている。特に、測定される広い周波数範囲には、電力変換器3それ自体の1つまたは複数の周波数も、電力変換器3それ自体の周波数範囲外にある広い周波数範囲も共に含まれていてよい。第1回路48には、高いサンプリングレートおよび高速の評価ユニット、例えばPLDを備えたアナログ・デジタル変換器(ADC:analogue-to-digital converter)が含まれていてよい。
【0041】
第1回路48により、測定結果に関連する信号が第2回路50に出力される。第2回路50は、電圧源44を制御するように構成されている。第2回路50は、電圧源44を介して、増幅器パス42、43に供給される電圧を制御可能である。第2回路はまた、システム制御部60にも接続可能である。
【0042】
第3回路55は、吸収抵抗器51に関連するデータを測定するように構成されている。測定されるデータの例は、吸収抵抗器51における電圧および/またはその温度である。
【0043】
第4回路52は、電圧源44によって出力される電圧を測定するように構成されている。この測定により、第4回路52は、電圧源44によって出力される電圧をシステム制御部60にフィードバック可能である。
【0044】
システム制御部60は、例えば、DCリンク電圧、DCリンク電流、DCリンク電力、吸収抵抗器電圧および/または吸収抵抗器温度のような異なる種類の測定値を使用可能である。学習プロセスは、システム制御部60内で実行可能であり、システム制御部60は、他の電源および/またはプラズマシステム制御部全体と通信可能である。システム制御部60に供給されるデータは、例えば電力変換器および/またはプラズマシステムの閉ループ制御を実現するために使用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマプロセス用の高周波電力信号を生成するように構成された電力変換器(3)であって、前記電力変換器(3)は、
それぞれ1つの増幅器(42a、43a)を備えた第1増幅器パス(42)および第2増幅器パス(43)を有する少なくとも1つの増幅段(40)を有し、前記第1増幅器パス(42)は、第1増幅器パス出力信号を出力し、前記第2増幅器パス(43)は、前記第1増幅器パス出力信号に対し、0°よりも大きくかつ180°よりも小さい位相シフトを有する第2増幅器パス出力信号を出力し、
前記第1増幅器パス(42)および前記第2増幅器パス(43)は、前記第1増幅器パス出力信号および前記第2増幅器パス出力信号を結合して前記高周波電力信号を形成するように構成された位相シフトカプラ(47)に接続されており、
前記第1増幅器パス(42)および前記第2増幅器パス(43)の少なくとも1つの増幅器(42a、43a)は、SiC MOSFETを有し、
少なくとも1つの前記増幅器(42a、43a)が、少なくとも1つの前記増幅器(42a、43a)の出力部において、前記位相シフトカプラ(47)の入力インピーダンスとは異なる出力インピーダンスを有する、
電力変換器(3)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記増幅器(42a、43a)が、不整合の場合に、少なくとも1つの前記増幅器(42a、43a)の出力部において、前記位相シフトカプラ(47)の前記入力インピーダンスとは異なる出力インピーダンスを有する、請求項1記載の電力変換器(3)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記増幅器(42a、43a)のそれぞれの増幅器(42a、43a)が、当該それぞれの増幅器(42a、43a)の出力部において、前記位相シフトカプラ(47)の前記入力インピーダンスとは異なる出力インピーダンスを有する、
請求項1または2記載の電力変換器(3)。
【請求項4】
前記SiC MOSFETは、高電圧SiC MOSFETである、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の電力変換器(3)。
【請求項5】
前記第1増幅器パス(42)および前記第2増幅器パス(43)の少なくとも1つの前記増幅器(42a、43a)は、スイッチモード増幅器である、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電力変換器(3)。
【請求項6】
前記スイッチモード増幅器は、D級またはE級増幅器である、ことを特徴とする、請求項5記載の電力変換器(3)。
【請求項7】
出力コネクタを有し、前記出力コネクタは、前記出力コネクタに接続されているプラズマ負荷(6)に前記高周波電力信号を出力するように構成されている、ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電力変換器(3)。
【請求項8】
前記SiC MOSFETは、300kHzより高くかつ10MHzよりも低い周波数を有する高周波電力信号を増幅するために使用される、ことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の電力変換器(3)。
【請求項9】
前記高周波電力信号は、1MHzよりも高くかつ5MHzよりも低い周波数を有する、ことを特徴とする、請求項8記載の電力変換器(3)。
【請求項10】
前記出力コネクタにおける前記高周波電力信号の広帯域測定を実行するように構成された第1回路(48)を有する、ことを特徴とする、請求項7を引用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の電力変換器(3)。
【請求項11】
前記第1増幅器パス(42)および前記第2増幅器パス(43)に電圧を供給するように構成された電圧源(44)と、前記第1回路(48)から受信した信号に応じて、前記電圧源(44)を制御するように構成された第2回路(50)とを有し、前記電圧源を制御するように構成された前記第2回路(50)は、前記出力コネクタにおける前記高周波電力信号の広帯域測定を実行するように構成された前記第1回路(48)に接続されている、ことを特徴とする、請求項10記載の電力変換器(3)。
【請求項12】
さらに、吸収抵抗器(51)に関連するデータを測定するように構成された第3回路(55)を有する、請求項10または11記載の電力変換器(3)。
【請求項13】
前記吸収抵抗器(51)に関連するデータは、前記吸収抵抗器(51)における電圧および/または前記吸収抵抗器(51)の温度である、請求項12記載の電力変換器(3)。
【請求項14】
少なくとも1つの前記増幅器に電圧を供給するように構成された調整可能電圧源と、前記調整可能電圧源によって出力される信号を測定する第4回路(52)とを有する、請求項11から13までのいずれか1項記載の電力変換器(3)。
【請求項15】
プラズマプロセスの電極に接続されておりかつ前記プラズマプロセスの前記電極に高周波電力を供給するように構成された電力供給システム(2)であって、請求項1から14までのいずれか1項記載の電力変換器(3)を有する、ことを特徴とする、電力供給システム(2)。
【請求項16】
高周波プラズマシステム(1)であって、前記高周波プラズマシステム(1)は、
少なくとも1つの電極が配置されているプラズマチャンバと、前記電極に接続されておりかつ前記電極に高周波電力を供給するように構成されている、請求項15記載の電力供給システム(2)と、を有する、高周波プラズマシステム(1)。
【請求項17】
さらに、前記プラズマプロセスに接続されている、異なる周波数を有する複数の電源を有し、複数の異なる周波数を有する反射電力が、電力供給システム(2)および電力変換器(3)に戻って結合される、請求項16記載の高周波プラズマシステム(1)。
【外国語明細書】