(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138533
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】望ましくない細胞の再指向性死滅に対する二成分系のための機能的抗体断片相互補完
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241001BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241001BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241001BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241001BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241001BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K39/395 E
A61K39/395 T
C07K16/46
A61K39/395 N
C07K16/28
C07K16/30
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114909
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2022078408の分割
【原出願日】2016-11-18
(31)【優先権主張番号】62/257,552
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/270,907
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518166380
【氏名又は名称】レビトープ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】コボルド,マーク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための標的化T細胞結合剤を提供する。
【解決手段】望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための二成分系であって、a.標的化T細胞結合剤を含む第1の成分、b.前記第1のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第2のT細胞結合ドメインを含む第2の成分、を含み、ここでは、前記第1及び第2のT細胞結合ドメインが、どちらも不活性結合パートナーに結合していない場合に結合することができる、前記二成分系が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための二成分系であって、
a.標的化T細胞結合剤を含む第1の成分であって、前記標的化T細胞結合剤は、
i.前記望ましくない細胞を標的とすることができる第1の標的化部分、
ii.第2のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第1のT細胞結合ドメイン(ここでは、前記第2のT細胞結合ドメインは前記第1の成分の一部ではない)、
iii.前記第1のT細胞結合ドメインに対する第1の不活性結合パートナーであって、前記不活性結合パートナーが除去されない限り前記第1のT細胞結合ドメインが前記第2のT細胞結合ドメインに結合しないように前記第1のT細胞結合ドメインに結合する、前記不活性結合パートナー、
iv.前記第1のT細胞結合ドメインと前記第1の不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、前記切断部位は、
(1)前記望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
(2)前記望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
(3)補体依存的切断反応によって切断される、または
(4)前記薬剤中の標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって前記望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)を含む、前記第1の成分、
b.前記第1のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第2のT細胞結合ドメインを含む第2の成分、を含み、ここでは、前記第1及び第2のT細胞結合ドメインが、どちらも不活性結合パートナーに結合していない場合に結合することができる、前記二成分系。
【請求項2】
前記第2の成分が前記望ましくない細胞を標的とすることができる第2の標的化部分をさらに含む、請求項1に記載の二成分系。
【請求項3】
前記第2の成分が、前記第2のT細胞結合ドメインに対する第2の不活性結合パートナーであって、前記不活性結合パートナーが除去されない限り前記第2のT細胞結合ドメインが前記第1のT細胞結合ドメインに結合しないように前記第2のT細胞結合ドメインに結合する、前記不活性結合パートナー、及び
a.前記第2のT細胞結合ドメインと前記第2の不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、前記切断部位は、
i.前記望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
ii.前記望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
iii.補体依存的切断反応によって切断される、または
iv.前記薬剤中の前記標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって前記望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)をさらに含み、
ここでは、前記切断部位の切断が前記不活性結合パートナーの喪失及び前記二成分系の前記第1のT細胞結合ドメインとの相互補完を引き起こす、請求項2に記載の二成分系。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の標的化部分が異なる、請求項3に記載の二成分系。
【請求項5】
前記第1及び第2の切断部位が異なる、請求項3に記載の二成分系。
【請求項6】
少なくとも1つの切断部位がプロテアーゼ切断部位である、請求項3に記載の二成分系。
【請求項7】
前記望ましくない細胞が発現する少なくとも1つの酵素がプロテアーゼである、請求項6に記載の二成分系。
【請求項8】
少なくとも1つの不活性結合パートナーが前記T細胞結合ドメインと特異的に結合する、請求項3に記載の二成分系。
【請求項9】
少なくとも1つの不活性結合パートナーがVHまたはVLドメインである、請求項8に記載の二成分系。
【請求項10】
a.前記T細胞結合ドメインがVHドメインである場合は、前記不活性結合パートナーがVLドメインであり、b.前記T細胞結合ドメインがVLドメインである場合は、前記不活性結合パートナーがVHドメインである、請求項9に記載の二成分系。
【請求項11】
少なくとも1つの標的化部分が抗体またはその機能的断片である、請求項3に記載の二成分系。
【請求項12】
前記少なくとも1つの不活性結合パートナーが、少なくとも1つの切断部位が切断されると解離することができ、解離後に、前記2つのT細胞結合ドメインが互いに結合することができ、T細胞結合活性を示すことができる、請求項3に記載の二成分系。
【請求項13】
一方のT細胞結合ドメインがVHドメインであり、他方のT細胞結合ドメインがVLドメインである、請求項12に記載の二成分系。
【請求項14】
第1の標的化T細胞結合剤を含む、望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための二成分系で使用するための成分であって、前記第1の標的化T細胞結合剤は、
a.前記望ましくない細胞を標的とすることができる標的化部分、
b.第2のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第1のT細胞結合ドメイン(ここでは、前記第2のT細胞結合ドメインは前記第1の標的化T細胞結合剤の一部ではない)、
c.前記第1のT細胞結合ドメインに対する不活性結合パートナーであって、前記不活性結合パートナーが除去されない限り前記第1のT細胞結合ドメインが前記第2のT細胞結合ドメインに結合しないように第1のT細胞結合ドメインに結合する、前記不活性結合パートナー、
d.前記第1のT細胞結合ドメインと前記不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、前記切断部位は、
i.前記望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
ii.前記望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
iii.補体依存的切断反応によって切断される、または
iv.前記薬剤中の前記標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって前記望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)を含み、
ここでは、前記切断部位の切断が前記不活性結合パートナーの喪失を引き起こし、前記薬剤の一部ではない前記第2のT細胞結合ドメインとの相互補完を可能にする、前記成分。
【請求項15】
請求項1に記載の前記二成分系の前記第1及び第2の成分をコードする1組の核酸分子。
【請求項16】
請求項14に記載の二成分系で使用するための前記成分をコードする核酸分子。
【請求項17】
患者におけるがんの治療方法であって、請求項1に記載の二成分系を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項18】
患者におけるがんの治療方法であって、請求項3に記載の二成分系を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記がんが、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、黒色腫、肺がん、前立腺がん、精巣がん、甲状腺がん、脳のがん、食道がん、胃がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肝臓がん、白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、リンパ増殖性障害、骨髄異形成障害、骨髄増殖性疾患または前がん性疾患のうちのいずれか1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
患者の免疫応答を望ましくない細胞に対して標的化する方法であって、請求項3に記載の二成分系を前記患者に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための標的化T細胞結合剤に関する。特に、本出願は、望ましくない細胞、例えばがんまたは他の疾患を引き起こす細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するのに使用することができる薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
望ましくない細胞の存在によって引き起こされるがん及び他の疾患は、多大な人命の喪失、苦痛及び経済的影響をもたらす。がんの標的化に対する免疫療法的ストラテジーは、ずっと橋渡し臨床研究の活発な分野である。
【0003】
免疫療法のために様々な他のアプローチが探究されているが、これらの以前のアプローチの多くは、特定の望ましくない細胞に対して十分な特異性を欠く。例えば、標的細胞上の異なる抗原に結合するscFv部分、補完的デミボディとの対形成を可能にするFcドメイン及び相補デミボディ上の別の結合パートナーとの結合を形成することができる結合パートナーをそれぞれが有するデミボディが設計されている。WO2007/062466。しかし、これらのデミボディは、必ずしもがん細胞に特異的とは限らず、同じ抗原を発現する他の細胞と結合し、その細胞上で活性を有する可能性がある。第1の抗原及び機能ドメインの第1の断片に結合する標的化部分を有する第1のポリペプチドを、第2抗原に結合する標的化部分及び機能ドメインの第1の断片に相補的な機能ドメインの第2の断片を有する第2のポリペプチドとともに提供する、WO2013/104804も参照されたい。同様に、このアプローチは、必ずしもがん細胞に特異的とは限らず、同じ抗原を発現する他の細胞と結合し、その細胞上で活性を有する可能性がある。
【0004】
以前のアプローチでいくつかの肯定的な試験データが示されているが、臨床的に有効な治療的ストラテジーは、疾患、例えばがんを罹患する個体において強い免疫応答を誘発することができなければならない。さらに、有効な療法は、非常に特異的であるべきであり、体内の他の細胞型に望ましくない副作用を引き起こしてはならない。したがって、再指向性免疫療法のこの分野におけるさらなる発展が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
説明に従って、本発明者らは、望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための標的化T細胞結合剤を記載する。この薬剤は、
(a)望ましくない細胞を標的とすることができる標的化部分、
(b)第2のT細胞結合ドメインと結合した場合に活性になることができる第1のT細胞結合ドメイン(ここでは、第2のT細胞結合ドメインは薬剤の一部ではない)、
(c)少なくとも1つの不活性結合パートナーであって、その不活性結合パートナーが除去されない限り第1のT細胞結合ドメインが第2のT細胞結合ドメインに結合しないように第1のT細胞結合ドメインと結合することができる、不活性結合パートナー、
(d)第1のT細胞結合ドメインと不活性結合パートナーを分離する、少なくとも1つの切断部位
を含む。
【0006】
一実施形態では、望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための二成分系が包含され、二成分系は、
a.標的化T細胞結合剤を含む第1の成分であって、標的化T細胞結合剤は、
i.望ましくない細胞を標的とすることができる第1の標的化部分、
ii.第2のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第1のT細胞結合ドメイン(ここでは、第2のT細胞結合ドメインが第1の成分の一部ではない)、
iii.第1の不活性結合パートナーであって、その不活性結合パートナーが除去されない限り第1のT細胞結合ドメインが第2のT細胞結合ドメインに結合しないように第1のT細胞結合ドメインに結合する第1のT細胞結合ドメインに対する、不活性結合パートナー、
iv.第1のT細胞結合ドメインと第1の不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、切断部位は、
(1)望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
(2)望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
(3)補体依存的切断反応によって切断される、または
(4)薬剤中の標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)を含む、第1の成分、
b.第1のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第2のT細胞結合ドメインを含む第2の成分を含み、ここでは、第1及び第2のT細胞結合ドメインが、どちらも不活性結合パートナーに結合していない場合に結合することができる。
【0007】
別の実施形態では、二成分系の第2の成分は、望ましくない細胞を標的とすることができる第2の標的化部分をさらに含む。
【0008】
別の実施形態では、二成分系の第2の成分は、第2のT細胞結合ドメインに対する第2の不活性結合パートナーであって、不活性結合パートナーが除去されない限り第2のT細胞結合ドメインが第1のT細胞結合ドメインに結合しないように第2のT細胞結合ドメインに結合する、不活性結合パートナー及び
a.第2のT細胞結合ドメインと第2の不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、切断部位は、
i.望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
ii.望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
iii.補体依存的切断反応によって切断される、または
iv.薬剤中の標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)をさらに含み、ここでは、切断部位の切断が不活性結合パートナーの喪失及び二成分系の第1のT細胞結合ドメインとの相互補完を引き起こす。
【0009】
いくつかの実施形態では、二成分系の第1及び第2の標的化部分は同じである。
【0010】
いくつかの実施形態では、二成分系の第1及び第2の標的化部分は異なる。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の切断部位は同じである。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の切断部位は異なる。
【0013】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの切断部位はプロテアーゼ切断部位である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの切断部位は、望ましくない細胞の外部で切断され得る。
【0014】
二成分系のいくつかの実施形態では、望ましくない細胞が発現する少なくとも1つの酵素はプロテアーゼである。
【0015】
二成分系のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの不活性結合パートナーがT細胞結合ドメインと特異的に結合する。
【0016】
二成分系のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの不活性結合パートナーはVHまたはVLドメインである。
【0017】
二成分系のいくつかの実施形態では、T細胞結合ドメインはVHドメインであり、不活性結合パートナーはVLドメインであり、T細胞結合ドメインがVLドメインである場合、不活性結合パートナーはVHドメインである。
【0018】
二成分系のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの標的化部分は抗体またはその機能的断片である。二成分系のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの不活性結合パートナーは、少なくとも1つの切断部位がいったん切断されたならば解離することができ、解離後に、2つのT細胞結合ドメインは互いに結合することができ、T細胞結合活性を示すことができる。
【0019】
二成分系のいくつかの実施形態では、1組の核酸分子が二成分系の第1及び第2の成分をコードする。二成分系のいくつかの実施形態では、核酸分子は二成分系で使用するための成分をコードする。
【0020】
二成分系のいくつかの実施形態では、一方のT細胞結合ドメインはVHドメインであり、他方のT細胞結合ドメインはVLドメインである。
【0021】
別の実施形態では、第1の標的化T細胞結合剤を含む望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための二成分系で使用するための成分は、
a.望ましくない細胞を標的とすることができる標的化部分、
b.第2のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第1のT細胞結合ドメイン(ここでは、第2のT細胞結合ドメインは第1の標的化T細胞結合剤の一部ではない)、
c.第1のT細胞結合ドメインに対する不活性結合パートナーであって、その不活性結合パートナーが除去されない限り第1のT細胞結合ドメインが第2のT細胞結合ドメインに結合しないように第1のT細胞結合ドメインに結合する、不活性結合パートナー、
d.第1のT細胞結合ドメインと不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、切断部位は、
i.望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
ii.望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
iii.補体依存的切断反応によって切断される、または薬剤中の標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)
を含み、ここでは、切断部位の切断が不活性結合パートナーの喪失を引き起こし、薬剤の一部ではない第2のT細胞結合ドメインにとの相互補完を可能にする。
【0022】
いくつかの実施形態では、患者に二成分系を投与することを含む、望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる患者における疾患の治療方法が包含される。いくつかの実施形態では、二成分系を投与することを含む、望ましくない細胞に対する患者の免疫応答の標的化方法が包含される。いくつかの実施形態では、これらの望ましくない細胞はがん細胞である。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、黒色腫、肺がん、前立腺がん、精巣がん、甲状腺がん、脳のがん、食道がん、胃がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肝臓がん、白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、リンパ増殖性障害、骨髄異形成障害、骨髄増殖性疾患または前がん性疾患のうちのいずれか1つである。
【0023】
さらなる目的及び利点は、以下の説明に部分的に記載され、部分的に説明から明白であり、または実施によって学ぶことができる。目的及び利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される要素及び組み合わせによって、実現及び達成される。
【0024】
前述の概要及び以下の詳細な説明の両方とも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を制限しないことを理解されたい。
【0025】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、1つの(いくつかの)実施形態(複数可)を図示し、説明とともに、本明細書に記載の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の成分が、不活性結合パートナーを有する不活性状態の標的化T細胞結合剤である、二成分系の第1の成分の一実施形態を示す図である。
【
図2】切断可能なリンカーが切断され、不活性結合パートナーが放出されて、活性実体を生成するプロセスを示す図である。
【
図3】二成分系の1対の補完的な成分から不活性結合パートナーが放出された後の活性な標的化T細胞結合剤の生成を図示する図である。
【
図4】
図4A~Cは、標的細胞に結合している二成分系の相補成分の対の段階的プロセスの切断(A)、不活性結合パートナーを結合しているリンカーの切断(A及びB)及びT細胞の能力がある活性部分を生成するための結合を図示する図である。
【
図5】
図5A~Bは、SDS PAGE及びクマシーブルー染色によるコンストラクトの評価を示す図である。
【
図6】がん細胞を様々な個々のコンストラクト及び組み合わせで処理した場合の、T細胞応答の代理としてのIFNγの発現を示す図である。6245は陽性対照として働き、6248と6249の組み合わせが有益な結果を示す。
【
図7】がん細胞を様々な個々のコンストラクト及び組み合わせで処理した場合の、T細胞応答の代理としてのIFNγの発現を示す図である。6245を陽性対照として用い、6248と6249の組み合わせが有益な結果を示す。
【
図8】がん細胞を様々な濃度のコンストラクトで処理した場合の、T細胞応答の代理としてのIFNγの発現を示す図である。6245を陽性対照として用い、6248と6249の組み合わせが有益な結果を示す。
【
図9】
図9A~Bは、がん細胞を対照または様々な濃度のコンストラクトで処理した場合のT細胞応答の代理としてのIFNγの発現を示す図である。6245を陽性対照として用い、6248と6249の組み合わせが有益な結果を示す。PHAも、非特異的なT細胞活性化の陽性対照として働いた。
【
図10】がん細胞を対照または様々な濃度のコンストラクトで処理した場合の、T細胞応答の代理としてのIFNγの発現を示す図である。抗CDE3 scFvに対するVHまたはVLのみを有するコンストラクトで非常に低レベルであるが、陽性対照ならびに二重特異性コンストラクト(9332及び9333の両方)はより高レベルの活性を示した。
【
図11】二成分系の相補的コンストラクトの化学量論的評価を示す図である。
【
図12】MCF-7がん細胞を対照または様々な濃度のコンストラクトで処理した場合の、T細胞応答の代理としてのIFNγの発現を示す図である。
【
図13】がん細胞を対照またはEpCAMを標的とする様々な濃度のコンストラクトで処理した場合の、T細胞応答の代理としてのIFNγの発現を示す図である。
【
図14】がん細胞を対照、または二重パラトピックEGFRエピトープを標的とするかEpCAMとEGFRの組み合わせを標的とする様々な濃度のコンストラクトで処理した場合の、T細胞応答の代理としてのIFNγの発現を示す図である。
【
図15】プロテアーゼ切断部位を含むコンストラクトまたはプロテアーゼ切断部位を含まないコンストラクトに対するプロテアーゼ阻害剤の影響を示す図である。
【
図16】VHH標的化部分を有するコンストラクトを、scFv部分を有するコンストラクトと首尾よく対形成させることによって、異なる種類の標的化部分を使用することができることを示す図である。
【
図17】コンストラクト6248及び6249に対する模式的な配列を示し、様々なリンカーを枠で囲み、プロテアーゼ切断部位を太字及び下線で示す。Hisタグも太字である。
【0027】
配列の説明
表1A及び1Bは、本明細書で言及するある特定の配列のリストを提供する。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【発明を実施するための形態】
【0040】
I.少なくとも1つの標的化T細胞結合剤を含む二成分系
様々な標的化T細胞結合剤が異なる実施形態で記載され、いくつかの実施形態では第1の成分及び第2の成分を含む二成分系の一部として記載される。しかし、実施形態のそれぞれにおいて、標的化部分を使用して、望ましくない細胞の領域に標的化T細胞結合剤を送達し、それによって、治療効果が局所的に送達されることを可能にすることができる。標的化T細胞結合剤は、第2のT細胞結合ドメインに結合した場合に活性になることができる第1のT細胞結合ドメインも含むが、第2のT細胞結合ドメインは標的化T細胞結合剤の一部ではない。言い換えれば、標的化T細胞結合剤の一部ではない第2のT細胞結合ドメインがなければ、第1のT細胞結合ドメインはT細胞結合活性になることができない。標的化T細胞結合剤は、第1のT細胞結合ドメインに結合することができ、それが第2のT細胞結合ドメインへ結合することを妨げることができる、不活性結合パートナーも含む。言い換えれば、不活性結合パートナーは、不活性結合パートナーが除去されない限り第1のT細胞結合ドメインが第2のT細胞結合ドメインに結合しないように、第1のT細胞結合ドメインに結合する。結合しないことによって、本出願は非特異的結合または低レベルの結合(例えば、≦1%、≦5%、≦10%)を除外しない。この概念は、T細胞標的結合に不十分な新規のVH/VL相互補完をともなう機能不足のうちの1つである。タンパク質分解性切断は、不活性なVHまたはVL基を遊離させ、これによって、細胞表面での活性なVHとVLの対の再対形成の機会を与えることが可能になる。さらに、標的化T細胞結合剤は、第1のT細胞結合ドメインと不活性結合パートナーを分離する切断部位を含む。標的化T細胞結合剤が望ましくない細胞の微小環境に存在する場合に、切断部位が切断される。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2のT細胞結合ドメインは第2の標的化T細胞結合剤の一部である。したがって、いくつかの実施形態では、キットまたは組成物は、1つは第1のT細胞結合ドメインを有しもう1つは第2のT細胞結合ドメインを有する、2つの標的化T細胞結合剤を含むことができる。そのようなキットまたは組成物では、不活性結合パートナーは、各薬剤の切断部位がいったん切断されると解離することができ、解離後に、2つのT細胞結合ドメインは互いに結合することができ、活性を示すことができる。
【0042】
2つの標的化T細胞結合剤を有するいくつかの実施形態では、二成分系は、VHドメインであってよい1つのT細胞結合ドメイン及びVLドメインであってよいもう1つのT細胞結合ドメインを含む。2つの標的化T細胞結合剤を有する実施形態では、第1の成分及び第2の成分中の標的化部分は、同じでもよく、または異なっていてもよい。
【0043】
2つの標的化T細胞結合剤を有する実施形態では、第1の成分及び第2の成分中の切断部位は同じでもよく、または異なっていてもよい。
【0044】
図1は、(a)標的と結合するVHドメイン及びVLドメインを含むscFv標的化ドメインであって、VH及びVLドメインが可撓性リンカーによって結合している、scFv標的化ドメイン、(b)不活性なVHドメインに結合するVLドメインを含む不活性なT細胞結合ドメインであって、VH及びVLドメインが、切断部位を有する可撓性リンカーによって結合している、T細胞結合ドメイン、ならびに(c)標的化ドメインと不活性なT細胞結合ドメインを結合する可撓性リンカーを含む、標的化T細胞結合剤コンストラクトの一実施形態を示す。
【0045】
いくつかの実施形態では、
図2は、切断可能なリンカーが切断され、不活性結合パートナーが放出されて、不活性結合パートナーを有さない実体を生成するプロセスを示す。この実体は、T細胞結合ドメイン中のVLドメインがそのままでは活性でないので、依然として不活性である。
【0046】
いくつかの実施形態では、
図3は、1対の相補的な標的化T細胞結合剤から不活性結合パートナーが放出された後の、活性な標的化T細胞結合剤の生成を図示する。
【0047】
いくつかの実施形態では、
図4A~Cは、標的細胞に結合している標的化T細胞結合剤の段階的プロセスの切断(4A)、不活性結合パートナーの切断(4A及び4B)ならびに活性な標的化T細胞結合剤を生成するための結合(4C)を図示する。
【0048】
いくつかの代替実施形態では、第2のT細胞結合ドメインは標的化部分に結合していなくてもよく、ならびに/または切断部位及び不活性結合パートナーを含んでいなくてもよい。ある場合には、第2のT細胞結合ドメインは、標的化部分(同じ標的化部分または異なる標的化部分のいずれか)にコンジュゲートまたは連結していてもよいが、そのような一実施形態では、このドメインは不活性結合パートナーにコンジュゲートまたは連結していないであろう。そのような一実施形態では、第1のT細胞結合ドメインのみが不活性結合パートナーに結合している。別の実施形態では、第2のT細胞結合ドメインは、それぞれ本明細書に記載の、標的化部分、切断部位及び不活性結合パートナーを含むこともできる。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の成分のN末端からC末端の構造配置はIBVL-L1-TCEVH-L2-TVL-L3-TVHを含む。いくつかの実施形態では、第2の成分のN末端からC末端の構造配置はTCEVL-L2-TVH-L3-TVLを含む。いくつかの実施形態では、第2の成分のN末端からC末端の構造配置はIBVH-L1-TCEVL-L2-TBVH-L3-TBVLを含む。これらの実施形態のそれぞれでは、IBは不活性結合パートナーを表し、IBVLはVL不活性結合パートナーであり、一方、IBVHはVHインサート結合ドメインである。TCEはT細胞結合を表し、TCEVLはT細胞結合ドメインのVL部分であり、TCEVHはT細胞結合ドメインのVH部分である。TBは標的結合ドメインを表し、TBVHは標的結合ドメインのVH部分であり、TBVLは標的結合ドメインのVL部分である。L1はプロテアーゼ切断部位を有するリンカーであり、一方でL2及びL3は、随意に、L1と同じプロテアーゼによって随意に切断不可能なリンカーである。
【0050】
A.標的化部分
標的化部分は、望ましくない細胞の局所的環境に薬剤を送達することによって標的化T細胞結合剤中で機能し、これによって、局所的治療ストラテジーが可能になる。ある特定の実施形態では、標的化部分は、望ましくない細胞に特異的に結合することによって、望ましくない細胞を標的にする。ある場合には、標的化部分は、不活性結合パートナーが第1のT細胞結合ドメインへ結合している間でさえ、望ましくない細胞と特異的に結合する。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の標的化部分は、随意にリンカーによって、第1のT細胞結合ドメインに結合しており、別のコンストラクトの一部として、第2の標的化部分は、随意にリンカーによって、第2のT細胞結合ドメインに結合している。このようにして、T細胞結合ドメインの各相補的部分は、別々の標的化部分によって望ましくない細胞に送達される。いくつかの実施形態では、標的化部分は同じ種類のものであり、いくつかの実施形態では、標的化部分は異なる。標的化部分が異なる種類のものである場合、これらは、望ましくない細胞の同じ標的タンパク質上のいずれかの異なるエピトープ(重複または非重複のいずれか)を標的にすることができるか、異なる標的タンパク質を標的にすることができる。標的化部分が異なるタンパク質を標的にする状況では、望ましくない細胞は、2種の標的化部分のそれぞれに対応する抗原を発現し、これは、本アプローチにさらなる特異性を与える。
【0052】
ある特定の実施形態では、標的化部分は抗体またはその機能的部分である。機能的部分は、望ましくない細胞上の標的に対してその結合活性を保持する任意の抗体断片、例えばscFvもしくはVHH、または他の機能的断片、例えば、軽鎖の欠けた免疫グロブリン、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、抗体断片、ダイアボディ、scAB、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体、Fd、CDR領域もしくは抗原もしくはエピトープと結合することができる、抗体の任意の部分もしくはペプチド配列を意味する。特に「全長抗体」と言及しない限り、本出願が抗体を指す場合は、これは、その機能的部分への言及を本質的に含む。
【0053】
ある特定の抗体標的(括弧内に望ましくない細胞型の例を示す)としては、以下を挙げることができる:Her2/Neu(上皮悪性腫瘍);CD22(B細胞、自己免疫性または悪性);EpCAM(CD326)(上皮悪性腫瘍);EGFR(上皮悪性腫瘍);PMSA(前立腺癌);CD30(B細胞悪性腫瘍);CD20(B細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);CD33(骨髄性悪性腫瘍);膜lgE(アレルギー性B細胞);lgE受容体(CD23)(アレルギー性疾患における肥満細胞またはB細胞)、CD80(B細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);CD86(B細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);CD2(T細胞またはNK細胞リンパ腫);CA125(卵巣癌を含めた複数のがん);炭酸脱水酵素IX(腎細胞癌を含めた複数のがん);CD70(B細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);CD74(B細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);CD56(T細胞またはNK細胞リンパ腫);CD40(B細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);CD19(B細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);c-met/HGFR(消化管及び肝臓の悪性腫瘍);TRAIL-R1(卵巣及び結腸直腸の癌腫を含めた複数の悪性腫瘍);DRS(卵巣及び結腸直腸の癌腫を含めた複数の悪性腫瘍);PD-1(B細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);PD1L(上皮腺癌を含めた複数の悪性腫瘍);IGF-1R(上皮腺癌を含めた、たいていの悪性腫瘍);VEGF-R2(上皮腺癌を含めた悪性腫瘍の大部分と関係がある脈管系);前立腺幹細胞抗原(PSCA)(前立腺腺癌);MUC1(上皮悪性腫瘍);CanAg(腫瘍、例えば結腸及び膵臓の癌腫);メソテリン(中皮腫ならびに卵巣及び膵臓の腺癌を含めた多くの腫瘍);P-カドヘリン(乳腺癌を含めた上皮悪性腫瘍);ミオスタチン(GDF8)(肉腫ならびに卵巣及び膵臓の腺癌を含めた多くの腫瘍);Cripto(TDGF1)(結腸、乳房、肺、卵巣及び膵臓のがんを含めた上皮悪性腫瘍);ACVRL1/ALK1(白血病及びリンパ腫を含めた複数の悪性腫瘍);MUC5AC(乳腺癌を含めた上皮悪性腫瘍);CEACAM(乳腺癌を含めた上皮悪性腫瘍);CD137(B細胞またはT細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);CXCR4(B細胞またはT細胞、自己免疫性、アレルギー性または悪性);ニューロピリン1(肺がんを含めた上皮悪性腫瘍);グリピカン(肝臓、脳及び乳房のがんを含めた複数のがん);HER3/EGFR(上皮悪性腫瘍);PDGFRa(上皮悪性腫瘍);EphA2(神経芽腫、黒色腫、乳がん及び小細胞肺癌を含めた複数のがん);CD38(骨髄腫);CD138(骨髄腫);α4-インテグリン(AML、骨髄腫、CLL及びほとんどのリンパ腫)。
【0054】
ある特定の形態では、抗体としては、抗上皮増殖因子受容体抗体、例えばセツキシマブ、抗Her2抗体、抗CD20抗体、例えばリツキシマブ、抗CD22抗体、例えばイノツズマブ、G544またはBU59、抗CD70抗体、抗CD33抗体、例えばhp67.6またはゲムツズマブ、抗MUC1抗体、例えばGP1.4及びSM3、抗CD40抗体、抗CD74抗体、抗P-カドヘリン抗体、抗EpCAM抗体、抗CD138抗体、抗E-カドヘリン抗体、抗CEA抗体、抗FGFR3抗体ならびに抗α4-インテグリン抗体、例えばナタリズマブが挙げられる。
【0055】
表2Aは、がんの種類、可能な標的化部分及びこれらのがんの種類によって発現されるプロテアーゼの非限定例を提供する。二成分系を調製するために、がんを列1から特定することができ、(所望の場合)1つまたは2つの標的を標的化部分について選択することができ、(所望の場合)同様に1つまたは2つのプロテアーゼをがんの種類について選択することができる。本出願の他のセクションで、1つ対2つの標的化部分及び1つ対2つのプロテアーゼ切断部位を使用する場合を論じる。
【0056】
【0057】
【0058】
例えば、第1及び第2の成分中の標的化部分が異なる場合、表2Bは、特定のがんの種類と組み合わせて使用するための、潜在的な標的化部分の非限定的リストを提供する。二成分系では、第1の成分のための標的化部分は存在することとなり、第2の成分のための第2の標的化部分は随意に存在し得る。第1の成分のみが標的化部分を有する場合、または第1及び第2の成分が同じ標的化部分を有する場合は、列3にがんのタイプが列挙される場合、表の列1または列2に列挙される標的化部分のいずれかを使用することができる。
【0059】
【0060】
【0061】
いくつかの実施形態では、標的化部分は抗体ではないが、別の種類の標的化部分である。例えば、標的化部分は望ましくない細胞で発現していることが知られているタンパク質に対する結合パートナーでもよい。そのような発現レベルは過剰発現を含む。例えば、以下の結合パートナーは、望ましくない細胞上の以下の標的に結合することができる。
【0062】
【0063】
結合パートナーは、表3に列挙される結合パートナーのために全長または野生型配列を含む必要はない。必要とされることは、結合パートナーが望ましくない細胞上の標的に結合することだけであり、したがって、当技術分野で周知であるトランケート形態、類似体、変異体及び誘導体を含むことができる。
【0064】
さらに、いくつかの実施形態では、結合パートナーは、望ましくない細胞で発現していることが知られているタンパク質に結合することができるアプタマーでもよい。望ましくない細胞、例えばがん細胞に結合するアプタマーは周知であり、その設計方法は既知である。
【0065】
細胞ベースのSELEXシステムを使用して、ランダムな候補ライブラリーから標的細胞特異的アプタマーのパネルを選択することができる。ssDNAプールを結合緩衝液に溶解し、変性させ、次いで標的細胞とインキュベートすることができる。洗浄後、結合DNAを加熱によって溶出し、次いで、(必要に応じて)陰性細胞とインキュベートし、遠心分離し、上清を取り出すことができる。ビオチン標識プライマーを用いて、この上清をPCRによって増幅することができる。ストレプトアビジンコーティングビーズを使用して、選択されたセンスssDNAをアンチセンスビオチン標識鎖から分離させることができる。親和性を増大させるために、洗浄時間、緩衝液量及び洗浄数を増やすことによって洗浄強度を増大させることができる。所望の選択ラウンド後に、選択されたssDNAプールをPCR増幅し、E.coliにクローニングし、配列決定することができる。Shangguan et al.,Aptamers evolved from live cells as effective molecular probes for cancer study,PNAS 103(32:11838-11843(2006)、Lyu et al,Generating Cell Targeting Aptamers for Nanotherapeutics Using Cell-SELEX,Theranostics 6(9):1440-1452(2016)を参照されたい。Li et al.,Inhibition of Cell Proliferation by an Anti-EGFR Aptamer,PLoS One 6(6):e20229(2011)も参照されたい。これらの参考文献におけるアプタマーの設計に関する特定のアプローチ及びがん細胞に結合する特定のアプタマーは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
例えば、アプタマーは配列番号94~164を含むことができる。いくつかの実施形態では、アプタマーは配列番号95を含むことができる。これらのアプタマーはEGFRに向けられ、望ましくない細胞に提示される標的に結合することができるアプタマーの代表としてのみ提供される。Zhu et al.,Progress in Aptame
r Mediated Drug Delivery Vehicles for Ca
ncer Targeting,Theranostics 4(9):931-944(2014)に記載されているような、望ましくない細胞上の他の標的に対する他のアプタマーは、同様に本明細書の記載の一部であり、参照により組み込まれる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用するためのアプタマーは、ナノモル濃度からピコモル濃度の範囲(例えば、1ピコモル濃度から500ナノモル濃度または1ピコモル濃度から100ナノモル濃度)のKdで、望ましくない細胞上の標的に結合する。
【0068】
B.T細胞結合ドメイン
標的化T細胞結合剤は、単独でT細胞結合することができない第1のT細胞結合ドメインを含む。代わりに、標的化T細胞結合剤の一部ではない第2のT細胞結合ドメインに結合した場合に、第1のT細胞結合ドメインは活性になることができる。したがって、第1及び第2のT細胞結合ドメインは、単独でT細胞結合活性を有さないが、互いと対形成したときにその活性を有する、任意の2つの部分でもよい。言い換えれば、第1及び第2のT細胞結合ドメインは、機能的に活性なタンパク質の相補的な2分体である。
【0069】
二成分系で2つのT細胞結合ドメインが一緒に結合すると、これらがT細胞を活性化するので、これらはT細胞表面のCD3抗原及び/またはT-細胞受容体に結合することができる。CD3はすべてのT細胞に存在し、γ、δ、ε、ζ及びηと呼ばれるサブユニットから成る。CD3の細胞質尾部は、TCR受容体複合体の他の成分の非存在化でT細胞活性化に必要なシグナルを伝達するのに十分である。通常は、T細胞の細胞傷害性の活性化は、最初に、別の細胞に位置した、それ自体が異質抗原に結合した主要組織適合抗原複合体(MHC)タンパク質とのTCRの結合に依存する。通常の状況では、この初期のTCR-MHC結合が起こった場合のみ、T細胞のクローン性増殖及び最終的にT細胞の細胞傷害性に関与するCD3依存的シグナルカスケードが続いて起こり得る。しかし、本実施形態のいくつかでは、二成分系がCD3及び/またはTCRに結合する場合、独立したTCR-MHCの非存在化における細胞障害性T細胞の活性化が、免疫シナプス形成を模倣する、CD3及び/またはTCR分子の架橋によって起こり得る。これは、クローン的に独立した様式で、すなわち、T細胞によって運ばれる特定のTCRクローンから独立した方式で、T細胞が細胞傷害性的に活性化され得ることを意味する。これによって、ある種のクローン的に同一の特定のT細胞のみではなく、T細胞コンパートメント全体の活性化が可能になる。
【0070】
いくつかの実施形態では、第1のT細胞結合ドメインはVHドメインであり、第2のT細胞結合ドメインはVLドメインである。他の実施形態では、第1のT細胞結合ドメインはVLドメインであり、第2のT細胞結合ドメインはVHドメインである。そのような実施形態では、一緒に対形成する場合、第1及び第2のT細胞結合ドメインはscFvを含むことができる。
【0071】
第1及び第2のT細胞結合ドメインが1対のVH及びVLドメインである場合、VH及びVLドメインは、T細胞の表面で発現する抗原、例えばCD3またはTCRに対して特異的でもよい。抗原がCD3である場合、1つの潜在的なT細胞結合ドメインはムロモナブに由来してもよい。
【0072】
C.不活性結合パートナー
標的化T細胞結合剤は、第1のT細胞結合ドメインに結合することができ、ある特定の状態が生じない限り、それが第2のT細胞結合ドメインへ結合することを妨げることができる、少なくとも1つの不活性結合パートナーも含む。第1のT細胞結合ドメインが少なくとも1つの不活性結合パートナーに結合している場合、これはT細胞結合活性を有さない。言い換えれば、少なくとも1つの不活性結合パートナーは、第1のT細胞結合ドメインがその相補的な対(第2のT細胞結合ドメイン)と結合することを阻止し、2つのドメインが一緒に結合してT細胞結合活性を有することを妨げることによって、第1のT細胞結合ドメインの機能を失わせる。言い換えれば、不活性結合パートナーは、不活性結合パートナーが除去されない限り第1のT細胞結合ドメインが第2のT細胞結合ドメインに結合しないように、第1のT細胞結合ドメインに結合する。結合しないことによって、本出願は、非特異的結合または低レベルの結合(例えば、≦1%、≦5%、≦10%)を除外しない。
【0073】
いくつかの実施形態では、不活性結合パートナーは、T細胞結合ドメインに特異的に結合する。
【0074】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの不活性結合パートナーはVHまたはVLドメインである。いくつかの実施形態では、標的化T細胞結合剤中のT細胞結合ドメインがVHドメインである場合、不活性結合パートナーはVLドメインでもよく、第1のT細胞結合ドメインがVLドメインである場合、不活性結合パートナーはVHドメインでもよい。
【0075】
第1の成分が標的化部分及びVL T細胞結合ドメイン及びVH不活性結合パートナーを含む場合、いくつかの実施形態では、VH不活性結合パートナーは、VL T細胞結合ドメインの、第2の成分中のそのパートナーVH T細胞結合ドメインに対する平衡解離定数より大きい、VL T細胞結合ドメインへの結合に対する平衡解離定数を有する。いくつかの実施形態では、前の文は、VHがVLに取り換えられた場合も同様に当てはまり、逆もまた同じである。
【0076】
実施例の実験的証拠に基づくと、コンストラクト中にT細胞結合ドメインの誤った対形成パートナーとして不活性結合パートナーを使用することは、より安定で製造しやすいコンストラクトをもたらすと考えられる。
【0077】
D.切断部位
概説すると、切断部位は、(i)望ましくない細胞が発現する酵素によって切断されてもよく、(ii)望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断されてもよく、(iii)補体依存的切断反応によって切断されてもよく、または(iv)薬剤中の標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断されてもよい。いくつかの実施形態では、切断部位はプロテアーゼ切断部位である。
【0078】
切断部位は、第1のT細胞結合ドメインから不活性結合パートナーを放出するように機能する。切断部位は、望ましくない細胞の微小環境において第1のT細胞結合ドメインのT細胞エピトープから不活性結合パートナーを放出するように、様々な方法で機能することができる。切断は、用いられるストラテジーに応じて、望ましくない細胞の内部または望ましくない細胞の外部で起こり得る。切断が望ましくない細胞の外部で起こる場合は、T細胞結合ドメインは、最初に細胞中に内部移行すること及び古典的な抗原プロセシング経路に関わることなく、提示され得る。
【0079】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの切断部位が、望ましくない細胞が発現する酵素によって切断され得る。例えば、がん細胞は、ある特定の酵素、例えばプロテアーゼを発現することが知られており、標的化T細胞結合剤の切断部位を切断するために、これらを本ストラテジーで用いることができる。非限定例として、例えば、カテプシンBは中でもFR、FK、VA及びVRを切断し、カテプシンDはPRSFFRLGK(配列番号45)を切断し、ADAM28はKPAKFFRL(配列番号1)、DPAKFFRL(配列番号2)、KPMKFFRL(配列番号3)及びLPAKFFRL(配列番号4)を切断し、MMP2はAIPVSLR(配列番号46)、SLPLGLWAPNFN(配列番号47)、HPVGLLAR(配列番号48)、GPLGVRGK(配列番号49)及びGPLGLWAQ(配列番号50)を切断する。表1Aまたは2Aに列挙される他の切断部位も用いることができる。がんと関係があるプロテアーゼ切断部位及びプロテアーゼは当技術分野で周知である。Oncomine(www.Oncomine.org)は、オンラインのがん遺伝子発現データベースであるので、本発明の薬剤が、がんを治療するためのものである場合、当業者は、所与のがんのタイプを治療するのに適している特定のプロテアーゼ切断部位(または2つのプロテアーゼ切断部位)を特定するために、Oncomineデータベースを検索することができる。別のデータベースとしては、欧州バイオインフォマティクス研究所(www.ebi.ac.uk)、特に、(www.ebi.ac.uk/gxa)が挙げられる。プロテアーゼデータベースとしては、PMAP(www.proteolysis.org)、ExPASy Peptide Cutter(ca.expasy.org/tools/peptidecutter)及びPMAP.Cut DB(cutdb.burnham.org)が挙げられる。
【0080】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの切断部位が、望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断され得る。標的化T細胞結合剤が細胞中に内部移行する場合は、切断反応は、細胞の内部で起こり得、望ましくない細胞の外部の微小環境と細胞の内部の間のpHの変化によって引き起こされ得る。具体的には、いくつかのがんの種類は、がん細胞の内部に酸性環境を有することが知られている。そのようなアプローチは、内部の望ましくない細胞型が、特に糖衣などの細胞外微小環境と特徴的に異なるpHを有する場合に、用いることができる。pH切断はリゾチーム中のすべての細胞で起こり得るので、pH感受性切断部位を使用する場合の標的化薬剤の選択は、必要に応じて、より高い特異性を必要とし得る。例えば、pH感受性切断部位が使用される場合、がん細胞のみに、または非常に好ましくはがん細胞に結合する標的化薬剤が所望され得る(例えば、肺がん治療のための、メソテリンに結合する抗体など)。
【0081】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの切断部位が補体依存的切断反応によって切断され得る。標的化T細胞結合剤が望ましくない細胞に結合すると、患者の補体カスケードが誘発され得る。そのような場合、補体プロテアーゼに感受性の切断部位を使用して、第1のT細胞結合ドメインから不活性結合パートナーを切断するために、補体カスケードを使用することもできる。例えば、C1r及びC1sならびにC3転換酵素(C4B,2a及びC3b,Bb)はセリンプロテアーゼである。C3/C5及びC5も補体プロテアーゼである。補体カスケードにも含まれ、C4b2bへのC4及びC2の切断(C3転換酵素)に関与する、セリンプロテアーゼであるマンノース関連結合タンパク質(Mannose-associated binding proteins)(MASP)も使用することもできる。例えば、限定はされないが、C1sはYLGRSYKV及びMQLGRXを切断する。MASP2は、SLGRKIQIを切断すると考えられている。補体成分C2a及び補体因子Bbは、GLARSNLDEを切断すると考えられている。
【0082】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの切断部位が、標的化T細胞結合剤中の標的化部分と同じまたは異なる標的化部分によって望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって、切断され得る。例えば、プロテアーゼを望ましくない細胞の微小環境の位置に送達する標的化薬剤にプロテアーゼをコンジュゲートすることによって、任意のプロテアーゼを望ましくない細胞の微小環境に同時に向けることができる。標的化薬剤は、本明細書に記載のいかなる標的化薬剤でもよい。ペプチドリンカーまたは化学リンカーを介してプロテアーゼを標的化薬剤に付けることができ、標的化薬剤に結合した場合に十分な酵素活性を維持することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、第1の成分と第2の成分の両方が不活性結合パートナーと誤って対形成している。いくつかの実施形態では、第1の成分及び第2の成分のプロテアーゼ切断部位は同じである。他の実施形態では、第1の成分及び第2の成分のプロテアーゼ切断部位は、同じプロテアーゼに対する異なる切断部位である。他の実施形態では、第1の成分及び第2の成分のプロテアーゼ切断部位は、異なるプロテアーゼに対する切断部位である。2つの異なるプロテアーゼを用いるいくつかの実施形態では、望ましくない細胞が両方のプロテアーゼを発現する。
【0084】
いくつかの実施形態において、第1の成分では、未切断状態の不活性結合パートナーは、VLまたはVH T細胞結合ドメインの、それぞれそのパートナーVHまたはVL、すなわち第2の成分中のT細胞結合ドメインへの特異的結合に干渉する。いくつかの実施形態では、未切断状態の不活性結合パートナーは、VLまたはVH T細胞結合ドメインの、それぞれそのパートナーVHまたはVL、すなわち未切断状態の第2の成分中のT細胞結合ドメインに対する解離定数(Kd)が、VLまたはVH T細胞結合ドメインの、それぞれそのパートナーVHまたはVL、すなわち切断状態の第2の成分中のT細胞結合ドメインに対するKdより少なくとも100倍大きいように、VLまたはVH T細胞結合ドメインの、それぞれそのパートナーVHまたはVL、すなわち第2の成分中のT細胞結合ドメインへの結合を阻害する。
【0085】
E.リンカー
切断部位に加えて、標的化T細胞結合剤の別々の部分を一緒に結合させるために、リンカーを随意に使用することができる。リンカーには、これらの部分を一緒に結合させる任意の化学的部分が含まれる。いくつかの実施形態では、リンカーは可撓性リンカーでもよい。リンカーとしては、ペプチド、ポリマー、ヌクレオチド、核酸、多糖及び脂質有機化学種(例えばポリエチレングリコール)が挙げられる。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。ペプチドリンカーは、約2~100、10~50または15~30アミノ酸長でもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20アミノ酸長でもよく、80以下、90以下または100以下のアミノ酸長でもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、単一または反復のGGGGS(配列番号85)、GGGS(配列番号86)、GS(配列番号87)、GSGGS(配列番号88)、GGSG(配列番号89)、GGSGG(配列番号90)、GSGSG(配列番号91)、GSGGG(配列番号92)、GGGSG(配列番号93)及び/またはGSSSG(配列番号94)配列(複数可)を有するペプチドリンカーである。
【0086】
いくつかの実施形態では、リンカーはマレイミド(MPA)またはSMCCリンカーである。
【0087】
F.製造方法
本明細書に記載の標的化T細胞結合剤は、遺伝子工学技法を使用して製造することができる。具体的には、適切な宿主で核酸を発現させて、標的化T細胞結合剤を生成することができる。例えば、その成分部分のすべて及びリンカーを含む標的化T細胞結合剤をコードする核酸配列を含むベクターを調製することができ、そのベクターを使用して、適切な宿主細胞を形質転換することができる。
【0088】
宿主の性質及び宿主への核酸の導入方式ならびにエピソームの維持または組込みが所望されるかどうかに応じて、様々な調節エレメントをベクター中で使用することもできる。
【0089】
マレイミドまたはSMCCリンカーを使用するなどの化学的結合技法を用いることもできる。
【0090】
結合パートナーがアプタマーである場合は、アプタマーをタンパク質、すなわちT細胞結合ドメインにコンジュゲートする方法を当業者なら理解するであろう。チオール結合または他の標準的なコンジュゲーション化学を使用してアプタマーをコンジュゲートすることができる。マレイミド、スクシンイミドまたはSH基をアプタマーに付けて、T細胞結合ドメインにそれを結合させることができる。
【0091】
II.医薬組成物
医薬組成物として標的化T細胞結合剤を用いることができる。したがって、標的化T細胞結合剤は、医薬的に許容可能な担体とともに調製することができる。非経口投与が所望される場合、例えば、無菌の発熱物質を含有しない注射用水または無菌の発熱物質を含有しない生理食塩水中に標的化T細胞結合剤を提供することができる。あるいは、無菌の液状担体を加えて再懸濁するための凍結乾燥形態で、標的化T細胞結合剤を提供することができる。
【0092】
III.治療方法A.望ましくない細胞の低減、免疫応答の標的化及びがん治療
本明細書に記載の標的化T細胞結合剤は、各成分が上記の様々な実施形態で詳細に記載されたように、少なくとも1つの標的化T細胞結合剤及び第2の成分を含む二成分系を患者に投与することを含む、望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる患者における疾患の治療方法で使用することができる。さらに、本明細書に記載の薬剤は、患者に二成分系を投与することを含む、患者の自分自身の免疫応答を望ましくない細胞に対して標的化する方法で使用することもできる。
【0093】
患者に投与する薬剤の量は、問題になっている状態を治療するのに有効な量を提供するように、患者の医師が選択することができる。二成分系の第1の成分及び第2の成分は、同じ製剤で、または患者において活性であるために十分に近い期間内で2つの異なる製剤で投与することができる。
【0094】
治療を受ける患者はヒトでもよい。患者は霊長類または任意の哺乳動物でもよい。あるいは、患者は動物、例えば、飼育動物(例えば、イヌもしくはネコ)、実験動物(例えば、実験用のげっ歯類、例えば、マウス、ラットもしくはウサギ)または農業上重要な動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジもしくはヤギ)でもよい。
【0095】
望ましくない細胞を特徴とする状態としては、がんを挙げることができる。がんは、固形悪性腫瘍でもよく、または非固形悪性腫瘍でもよい。がんは、リンパ腫ではない固形腫瘍でもよい。がんは、任意のがん、例えば、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、黒色腫、肺がん、前立腺がん、精巣がん、甲状腺がん、脳のがん、食道がん、胃がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肝臓がん、白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、リンパ増殖性障害、骨髄異形成障害、骨髄増殖性疾患及び前がん性疾患でもよい。
【0096】
二成分系は、単独で、または手術、放射線照射もしくは従来の化学療法を含めた他の療形態法と併せて投与することができる。
【実施例0097】
実施例1.コンストラクトの調製
本実施例で、対照及び実験用の両方の様々なコンストラクトを調製し使用した。
【0098】
A.単鎖scFv二重特異性コンストラクト
陽性対照として扱うために、単鎖scFvコンストラクトを本用途で使用した。コンストラクト6245(配列番号165)を、抗EPCAM scFv及び抗CD3E scFvを含む二重特異性抗体として調製した。このコンストラクトは、不活性結合パートナーとのいかなる誤った対形成も含まず、活性な標的化部分及びT細胞結合部分の両方を有する。
【0099】
B.標的化scFvを使用する予め切断された二成分系コンストラクト
コンストラクト6246(配列番号166)及び6247(配列番号167)は、二成分系における補完的な予め切断されたコンストラクトである。予め切断されたによって、本説明は、機能的標的化部分及び非対形成のT細胞結合部分(すなわち、不活性結合パートナーに誤って対形成していないもの及びさらに、機能的なT細胞結合複合体を形成するように、その正しいパートナーとまだ対形成していないもの)を有するコンストラクトを指す。両方のコンストラクトは抗EPCAM scFvを含む。コンストラクト6246は抗CD3E VHドメインを含むが、コンストラクト6247は抗CD3E VLドメインを含む。いずれのコンストラクトも誤った対形成パートナーとして不活性結合パートナーを含まない。
【0100】
C.標的化scFv及び不活性結合パートナーに誤って対形成したT細胞結合ドメインならびに不活性結合パートナーを放出するためのプロテアーゼ切断部位を使用する二成分系コンストラクト
コンストラクト6248(配列番号168)及び6249(配列番号169)は二成分系における相補的コンストラクトである。両方のコンストラクトは抗EPCAM scFvを含む。コンストラクト6248は、MMP2切断部位(AIPVSLR(配列番号46))を有する25merリンカーを介してガンテネルマブ由来の不活性結合パートナーVLドメインに連結した抗CD3E VHドメインを含む。コンストラクト6249は、MMP2切断部位(AIPVSLR(配列番号46))を有する25merリンカーを介してクローンアルファ-MUC1-1抗体由来の不活性結合パートナーVHドメインに連結した抗CD3E VLドメインを含む。
【0101】
D.標的化部分及び不活性結合パートナーと誤って対形成したT細胞結合ドメインを有し、不活性結合パートナーを放出するためのプロテアーゼ切断部位を有さない、二成分系コンストラクト
コンストラクト9327(配列番号170)及び9328(配列番号171)は、scFv標的化ドメインを使用する二成分系コンストラクトである。しかし、これらは、誤った対形成部分として働く不活性結合パートナーを放出するためのプロテアーゼ切断部位を有さない。両方のコンストラクトは、EpCAMを発現する望ましくない細胞に対してコンストラクトを標的化するために、抗EPCAM scFvを含む。コンストラクト9327は、実施例で使用するプロテアーゼに対応するプロテアーゼ切断部位を有さない25merリンカーによってガンテネルマブ由来の不活性結合パートナーVLドメインに連結した抗CD3E VHドメインを含む。コンストラクト9328は、実施例で使用するプロテアーゼに対応するプロテアーゼ切断部位を有さない25merリンカーによってクローンアルファ-MUC1-1抗体由来の不活性結合パートナーVHドメインに連結した抗
CD3E VLドメインを含む。
これらのコンストラクトは実施例で使用するプロテアーゼに対応するプロテアーゼ切断部位を有さないので、不活性結合パートナーは、コンストラクトに結合したたままであり、二成分系の相補的であろう2つの成分が一緒になって活性な抗CD3E scFvを生成するのを防ぐ。
【0102】
E.異なる標的化部分を提供するコンストラクト
コンストラクト9329(配列番号172)及び9330(配列番号173)は、異なる標的化部分を提供する。これらのコンストラクトは、1つのコンストラクトががん細胞上の第1の抗原を標的にし、第2のコンストラクトが同じがん細胞上の第2の抗原を標的にする二成分系で使用することを目的とした。scFv及びVHH標的化部分の相対的な大きさが類似しているので、これらのコンストラクトは、抗CD3E VLドメインを有する対形成可能なコンストラクトと「うまく組み合わせる(mix-and-match)」ことを目的とした。
【0103】
コンストラクト9329は、抗グリピカン-3VHH配列を含む。これは、MMP2切断部位(AIPVSLR(配列番号46))を含む25merリンカーによってガンテネルマブ由来の不活性結合パートナーVLドメインに結合している抗CD3E VHドメインも含む。
【0104】
コンストラクト9330は、インダツキシマブ由来の抗SDC1 scFvを標的化部分として含む。これは、MMP2切断部位(AIPVSLR(配列番号46))を含む25merリンカーによってガンテネルマブ由来の不活性結合パートナーVLドメインに結合している抗CD3E VHドメインも含む。
【0105】
F.VHH/scFv二重特異性コンストラクト
コンストラクト9332(配列番号174)及び9333(配列番号175)は両方とも、抗EGFR VHH部分及び抗CD3E scFv部分を含む、VHH/scFv二重特異性コンストラクトである。これらの2つのコンストラクトは、いかなるインサート結合ドメインも含まない。
【0106】
G.標的化VHHドメイン、不活性結合パートナーに誤って対形成したT細胞結合ドメインを使用し、不活性結合パートナーを放出するためのプロテアーゼ切断部位を含む、二成分系コンストラクト
コンストラクト9334(配列番号176)及び9335(配列番号177)は、標的化VHHドメインを使用する相補的な二成分系コンストラクトである。両方のコンストラクトは、EGFRを発現する望ましくない細胞への標的化のために、抗EGFR VHHドメインを含む。コンストラクト9334は、MMP2切断部位(AIPVSLR(配列番号46))を有する25merリンカーによってガンテネルマブ由来の不活性結合パートナーVLドメインに連結した抗CD3E VHドメインを含む。MMP2切断部位(AIPVSLR(配列番号46))を有する25merリンカーによってクローンアルファ-MUC1-1抗体由来の不活性結合パートナーVHドメインに連結した抗CD3E VHドメインを含む、コンストラクト9335を調製した。
【0107】
したがって、概要として、コンストラクトは表4に提供される通りであり、さらなる詳細及び配列は上で表1Bに提供し、IBDは不活性結合パートナーを表す。
【0108】
【0109】
H.すべてのコンストラクトの調製及び保管
コンストラクトをDNA2.0(Newark、California)によって生成し、HEK293T細胞で発現させた。下流の精製を補助するために、一本鎖オリゴヌクレオチドをC末端のヘキサヒスチジンタグで特定の配列をカバーするよう設計した。オリゴヌクレオチドを化学合成し、次いで、配列の特徴に応じて様々な独自のプロトコールを使用してアセンブルした。ある場合には、鋳型非依存的PCRを使用した。ある場合には、標準的な制限酵素消化及び連結酵素媒介性アセンブリーを使用することによって、短い配列をアセンブルして、長い配列を生成した。次いで、アセンブルしたオリゴヌクレオチドを標準的なE.coliプラスミドにクローニングし、ABIハードウェアでの自動サンガー配列決定によって、完全な二本鎖配列を検証した。150mlスケールの、HEK293T細胞への一過的なトランスフェクションによって、コンストラクトを発現させ、アフィニティークロマトグラフィーを使用して抗体断片を精製した。
【0110】
実験を開始する前に、コンストラクトを氷上で解凍し、無菌条件下で低タンパク質結合チューブに分取した。必要になるまで分取物を-80℃で保管した。使用直前に分取物を氷上で解凍した。分取物は、最大5回の凍結融解サイクルに使用した。
【0111】
実施例2.コンストラクト製造の評価A.
図5A:SDS PAGE及びクマシーブルー染色によるコンストラクトの評価
抗体の分取物を氷上で解凍し、25mMトリスpH7.4中に希釈して、2.0mg/mlの終濃度にした。コンストラクトが既にこれよりも希釈されていた場合は、希釈ステップを省略した。適切な量の6×ゲル試料緩衝液(0.5MトリスpH6.8、12%(w/v)SDS、25%(v/v)グリセロール、5mM EDTA、200mM N-エチルマレイミド)を各試料に加え、次いで、これを10分間90℃に加熱した。
【0112】
4~20%のプレキャストグラジエントゲルに10μgの各コンストラクトを泳動した。泳動した後、染色緩衝液(10%(v/v)酢酸、50%(v/v)メタノール及び40%(v/v)dH2O)中でゲルを30分間固定し、次いで、これをクマシーブルーR-250(染色緩衝液中に0.25%)中で2時間染色し、続いて、必要に応じて緩衝液をいくつか変化させた染色緩衝液中で2~3時間脱染色した。記録化するまで、7%(v/v)酢酸中にゲルを保管した。
【0113】
図5Aに結果を示す。これは、タンパク質が作られ、その配列によって予測された正しい分子量とともに、非常に高い純度を有することを示す。
【0114】
B.
図5B
図5Bでは、さらなるコンストラクトを評価した。
図5Aに使用した方法を5Bに使用した。
【0115】
コンストラクト6245(対形成を必要としない二重特異性コンストラクト)、6248及び6248(不活性結合パートナー及びMMP2切断部位を有する対形成可能なコンストラクト)を適切に生成した。コンストラクト6246及び6247(不活性結合パートナー非含有)を低収量で生成し、これは、不安定であると考えられる。VH/VL対形成が断片の安定性に重要であると思われる。
【0116】
したがって、不活性結合パートナーと誤って対形成したコンストラクトは、より安定で製造しやすいと考えられる。
【0117】
C.収量
図5Bで評価したコンストラクトの収量は以下の通りである。
【0118】
【0119】
実施例3.腫瘍細胞株と混合し様々なコンストラクトで処理したT細胞におけるIFNγ発現の評価
二成分系の相補的コンストラクトがT細胞応答を誘発する能力を試験するために、単一コンストラクト及び混合コンストラクトの調製物をこれらのIFNγの発現について試験した。
【0120】
一般的なIFNγのアッセイの背景:インビトロでのサイトカインマーカーの発現、例えばIFNγの発現は、T細胞応答に対して予想値を有することが知られているので、インビボの結果を予測する。Ghanekar et al.,Clin Diag La
b Immunol j8(3):628-31(2001)に記載されているように、サイトカインフローサイトメトリー(CFC)によって測定した、CD8+T細胞におけるIFNγの発現は、細胞傷害性Tリンパ球の応答の代替マーカーである(Ghanekar、628頁)。先行研究によって、CD8+T細胞によるIFNγの発現とCTLエフェクター細胞の活性の間に強い相関があることが示された。(Ghanekar、630頁)。先行研究によって、IFNγの発現に関するデータの使用によって、臨床環境におけるCD8+T細胞応答の評価のより高い精度が可能になることが示される(同上、631頁)。これは、本明細書のサイトカイン発現アッセイがインビボ及び臨床応答に対する予想値を有することが知られていたことを示す。IFNγの発現を評価する複数の方法が存在するので、本明細書の方法はGhanekarの正確な方法ステップに従わないが、Ghanekarは、IFNγの発現がT細胞活性の代理であることを示す。
【0121】
T細胞株の培養:細胞障害性T細胞をIFNγアッセイで使用し、4.0mMのL-グルタミン、1%のペニシリン及びストレプトマイシン、10%の熱失活したFBS、1%の熱失活したヒト血清(プールしたAB血清、TCS Bioscience)ならびに1,000U/mlのIL-2を含むRPMI-1640培地で培養した。細胞を1~2×106細胞/mlの密度で維持し、48時間毎に培地の4分の3を交換することによって、養分を与えた。これは、10μgのHLA-A*0201制限されたウイルスペプチドNLVPMVATVをHLA-A*0201+提供者由来の1000万個の末梢血単核球(PBMC)に加えることによって、最初に生成した。4.0mMのL-グルタミン、1%のペニシリン及びストレプトマイシン、10%の熱失活したFBSならびに1%の熱失活したヒト血清(プールしたAB血清、TCS Bioscience)を含むRPMI-1640培地で4日間細胞を培養してから、1000U/mlのIL-2を含むように培地を変えた。T細胞は主にCD8+T細胞であり、少量のCD4+T細胞も含んでいた。
【0122】
腫瘍細胞株の培養:以下の細胞株を使用した:SW620、MCF-7、SNU398及びU266。10%の熱失活したFBS、2mMのグルタミン及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むRPMI-1640培地で培養したSNU398及びU266細胞を除いて、10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で細胞を培養した。SW620細胞はヒト結腸がん転移部に由来する。MCF-7細胞はヒト乳がん転移性部位(胸水)に由来する。SNU398細胞は、1990年のヒト未分化肝細胞癌患者に由来する。U266細胞はIgEを分泌するヒト男性多発性骨髄腫患者に由来する。
【0123】
IFNγ生成へのコンストラクトの影響:接着細胞株を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)に少なくとも16時間プレーティングした。非付着細胞(ウェルあたり100,000細胞)を、400×gで5分間培養物を遠心分離し、T細胞培地に細胞を再懸濁することにより、実験の当日にプレーティングした。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクトをT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。コンストラクトの混合物を使用した場合は、これらを前もって混合してから、培養物に加えた。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。
【0124】
IFNγのELISA:組織培養上清中のIFNγレベルを、eBioscience
Ready-Set-Go ELISAキット(カタログ番号88-7316-88)またはBioLegendヒトIFNγELISAマックスキット(カタログ番号430106)のいずれかを使用して、製造者の指示書の通りにアッセイした。
【0125】
A.
図6
様々な単一コンストラクト及び混合コンストラクトについて、IFNγを評価した。指示されている場合を除いて、上記に提供されるIFNγの生成及びELISAアッセイのプロトコールを使用した。10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、SW620細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1μg/mlの終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、SW620細胞+T細胞(添加なし)及びSW620細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。
【0126】
様々な単一コンストラクト及び混合コンストラクトについて、IFNγを評価した。コンストラクト6425(EpCAM及びCD3Eに対する二重特異性scFv)を陽性対照として扱って、単一コンストラクを評価した。SW620がん細胞をともなうT細胞、SW620がん細胞単独及びT細胞のIFNγ発現能力を示すためにフィトヘマグルチニン(PHA)で非特異的に刺激したT細胞中で、ベースラインのIFNγを評価した。
【0127】
SW620腫瘍細胞では、1μg/mlの終濃度でコンストラクトを使用した。培養物を4時間インキュベートし、IFNγについて上清をアッセイした。3連の平均±標準偏差を示す。様々な単一コンストラクト及び混合コンストラクトについて、IFNγを評価した。培養物を4時間インキュベートし、IFNγについて上清をアッセイした。3連の平均±標準偏差を示す。1μg/mlの終濃度でコンストラクトを使用した。培養物を24時間インキュベートし、IFNγについて上清をアッセイした。3連の平均±標準偏差を示す。
【0128】
コンストラクト6245は、標的化抗EpCAM scFvと抗CD3E scFvの両方を有するので、陽性対照として働く。したがって、これはT細胞結合(TCE)活性に対形成を必要としない二重特異性コンストラクトである。
【0129】
コンストラクト6248及び6249(MMP2切断部位を有するリンカーによってそれぞれ抗CD3E T細胞結合VLまたはVHから分離されている不活性結合パートナーをそれぞれ有する、二成分系の対)は、一緒に対形成した場合に、単独で投与された場合よりも多くのIFNγ発現を示した。6246と6247の組み合わせ(不活性結合パートナーへの任意の誤った対形成またはそれらが結合するのに必要とされるプロテアーゼ切断部位を有さない二成分系の対)は、6248と6249の組み合わせよりもはるかに低い応答をもたらし、これは、それぞれ各コンストラクトにおいて非対形成の抗CD3E VH及びVLドメインを安定化すると考えられている不活性結合パートナーによって、6246及び6247が製造中に保護されないためである可能性が高い。したがって、不活性結合パートナーを有する誤って対形成したコンストラクトは、非対形成の抗CD3E VHまたはVLドメインを有する前切断されたコンストラクトよりも安定で製造しやすいことが考えられる。
【0130】
B.
図7
様々な単一コンストラクト及び混合コンストラクトについて、IFNγを価した。10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、SW620細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1μg/mlの終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。コンストラクトの混合物を使用した場合は、これらを前もって混合してから培養物に加えた(コンストラクトの終濃度はコンストラクトあたり1μg/mlであった)。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、SW620細胞+T細胞(添加なし)及びSW620細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。3連の平均±標準偏差を示す。
【0131】
コンストラクト6245は、標的化抗EpCAM scFvと抗CD3E scFvの両方を有するので、陽性対照として働く。したがって、これはT細胞結合(TCE)活性に対形成を必要としない二重特異性コンストラクトである。
【0132】
コンストラクト6248及び6249(MMP2切断部位を有するリンカーによってそれぞれ抗CD3E T細胞結合VLまたはVHから分離されている不活性結合パートナーをそれぞれ有する二成分系の対)は、一緒に対形成した場合、単独で投与された場合よりも多くのIFNγ発現を示した。6246と6247の組み合わせ(任意の結合ドメインまたはそれらが結合するのに必要とされるプロテアーゼ切断部位を有さない二成分系の対)は、6248と6249の組み合わせよりもはるかに低い応答をもたらし、これは、それぞれ各コンストラクトにおいて非対形成の抗CD3E VH及びVLドメインを安定化すると考えられている不活性結合パートナーによって、6246及び6247が製造中に保護されないためである可能性が高い。したがって、不活性結合パートナーを有する誤って対形成したコンストラクトは、非対形成の抗CD3E VHまたはVLドメインを有するコンストラクトよりも安定で製造しやすいことが考えられる。
【0133】
図8
10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、SW620細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1ng/ml~1μg/mlの範囲の終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。コンストラクトの混合物を使用した場合は、これらを前もって混合してから培養物に加えた(コンストラクトあたり1ng/ml~1μg/mlの範囲のコンストラクトの終濃度)。対照は、SW620細胞+T細胞(添加なし)及びSW620細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。3連の平均±標準偏差を
図8に示した。
【0134】
コンストラクト6245は陽性対照として働き、対形成したコンストラクト6248及び6249を評価した。対照コンストラクトと対形成した二成分系の両方ともIFNγの発現を示した。これは、不活性なVL及びVHドメインがそれぞれコンストラクト6248及び6249から切断されていること、ならびにT細胞に結合することができる完全な抗CD3E scFvを生成するようにこれらの2つのコンストラクトが対形成していることを示す。
【0135】
二成分系(6248及び6249)は二重特異性の6245コンストラクトよりも弱い効力を有するが、依然として許容可能な範囲にあり、副作用の回避の面で投薬の利点を実際に与え得る。
【0136】
D.
図9A~B
10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、SW620細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1ng/ml~1μg/mlの範囲の終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。コンストラクトの混合物を使用した場合は、これらを前もって混合してから培養物に加えた(コンストラクトあたり10ng/ml~10μg/mlの範囲のコンストラクトの終濃度)。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、SW620細胞+T細胞(添加なし)及びSW620細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-200℃で保管した。3連の平均±標準偏差を
図9A~Bに示した。
【0137】
対照コンストラクトと対形成した二成分系の両方ともIFNγの発現を示した。これは、不活性なVL及びVHドメインがそれぞれコンストラクト6248及び6249から切断されていること、ならびにT細胞に結合することができる完全な抗CD3E scFvを生成するようにこれらの2つのコンストラクトが対形成していることを示す。
【0138】
二成分系(6248及び6249)は二重特異性の6245コンストラクトよりも弱い効力を有するが、依然として許容可能な範囲にあり、副作用の回避の面で投薬の利点を実際に与え得る。
【0139】
E.
図10
10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、SW620細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1μg/mlの終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。コンストラクトの混合物を使用した場合は、これらを前もって混合してから培養物に加えた(コンストラクトの終濃度はコンストラクトあたり1μg/mlであった)。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、SW620細胞+T細胞(添加なし)及びSW620細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。
図10は、3連の平均±標準偏差を提供する。
【0140】
図10は、抗CD3E scFvに対するVHまたはVLしか有さないコンストラクトに対ついて非常に低レベルのIFNγの発現を示すが、完全なscFvを有する陽性の二重特異性コンストラクト(9332及び9333)は、より高いIFNγの発現レベルを示した。
【0141】
F.二成分系の相補的コンストラクトの化学量論的評価(
図11)
図11に示すように、二成分系の相補的コンストラクト(6248及び6249)を様々な比率で一緒加えた。
【0142】
10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、SW620細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクトをT細胞培地中に特定の比率で前もって混合し、培養物に加えた(コンストラクトの終濃度は全体で1μg/mlであった)。2つの成分6248及び6249(一方はCD3活性化部分のVHドメインを含み(6249)、他方はCD3活性化部分のVLドメインを含む(6248))を100:0、90:10、75:25、50:50、25:75、10:90及び0:100の比率で前もって混合した。2つの成分の混合物を100,000個の望ましくない腫瘍細胞及び20,000個のT細胞に加えた。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、SW620細胞+T細胞(添加なし)及びSW620細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。
【0143】
図11の結果は、2つの成分の比が平衡に達するにつれて、T細胞の活性化が増大することを示す。CD3活性化部分のVHドメインを含む成分(6249)またはCD3活性化部分のVLドメインを含む他の成分(6248)のいずれか過剰量である場合、T細胞の活性化は低下し、これは、活性化がCD3活性化部分のVH及びVLの両方が一緒になることに依存しているのからである。したがって、IFNγの発現レベルは、提供されるすべてまたはほとんどすべてのコンストラクトが1つのタイプまたは他のタイプのものであった場合に、非常に低かった。最高のIFNγ発現レベルは、等量の2つの相補的コンストラクトのそれぞれが提供された場合のシナリオに対応する。これは、IFNγの発現が二成分系の2つのコンストラクトから一緒に来る抗CD3E scFvの2つの2分体によって引き起こされることを示す、さらなる証拠を提供する。
【0144】
G.MCF-7細胞の使用(
図12)
図12は、MCF-7腫瘍細胞株で行われた実験を示す。10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、MCF-7細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1μg/mlの終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、MCF-7細胞+T細胞(添加なし)及びMCF-7細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。
【0145】
使用した他の細胞株と同様の結果が得られた。
図12では、陽性対照コンストラクト6245、9332及び9333(それぞれ完全な抗CD3E scFvを有する)は、抗CD3E抗体からのVHまたはVLドメインのみを含む単一成分のどれよりもはるかに高いIFNγ発現レベルを示した。
図12は、MCF-7細胞単独またはPHAで非特異的に刺激したT細胞に対するベースラインのIFNγ発現レベルも提供する。
【0146】
H.
図13~14
10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、SW620細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1μg/mlの終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。コンストラクトの混合物を使用した場合は、これらを前もって混合してから培養物に加えた(コンストラクトの終濃度はコンストラクトあたり1μg/mlであった)。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、SW620細胞+T細胞(添加なし)及びSW620細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。
【0147】
図13では、データは、6248及び6249の二成分系は、これらのコンストラクトがMMP2切断部位で切断され得る不活性結合パートナーならびに対形成可能な抗CD3E可変ドメイン(1つは6248のVH及び1つは6249のVL)を有するので、期待されたように機能することを示す。コンストラクト9327及び9328は、これらのコンストラクトのいずれも不活性結合パートナーと抗CD3E可変ドメインの間に切断部位を有さないので、強いIFNγシグナルを生成しない。
【0148】
コンストラクト9327及び6248は、これらは両方とも抗CD3E抗体に対するVHドメインを有し、機能的な抗CD3E scFvを作製することができず、さらに9327は切断部位を有さないので、いかなる活性も示さない。9327及び6249は、9327は切断部位を有さず、6249は切断部位を有するが、いくらかの低レベルの自発的な切断が生じる場合に2つが一緒に抗CD3E scFvを作製することができるので、非常に低レベルの活性を示す。
【0149】
図14では、コンストラクト9334及び9335の対形成(EGFR上の異なるエピトープに対する標的化抗体scFvを用いる、EFGR標的化に対する二重パラトピックアプローチを提供する)は、IFNγシグナルを生成しなかった。EGFR上のいずれのエピトープも遠く離れすぎていて、2つの抗CD3E可変ドメインが互いに到達することができないこと、またはエピトープが近すぎて、抗体側での結合に立体障害をもたらすことが考えられる。しかし、二重パラトピックの組み合わせを試験することは非常に合理的である。本アプローチの組み合わせのために、EGFRに対する別の抗体を同定し、試験することができる。
【0150】
図14は、同じがん細胞で発現している2つの異なるタンパク質の標的化も示す。コンストラクト6248はEpCAMと結合し、EGFRに結合する9335と首尾よく対形成する。コンストラクト6249もEpCAMと結合し、9334と首尾よく対形成する。これは、がん細胞の様々な分子を標的にできることを確証し、本明細書に記載の二成分系のいくつかの実施形態に対して特異性のさらに別の層を提供する。これは、成分9335及び9334が他の状況で働くというさらなる証拠も提供し、さらに、上で述べたそれらの互いの組み合わせにおいて、これらの成分が互いに近すぎたまたは遠すぎたことを示唆する。
【0151】
9334と6249の組み合わせは、この図において有用な情報提供し、コンストラクト9334がEGFRを標的にし、9249がEpCAMを標的にするので、二重標的化を達成することができることを示す。
【0152】
9334及び6248の組み合わせは、両方のコンストラクトが抗CD3E抗体からのVHを含み、いずれのコンストラクトもその抗体からのVLを含まないので、活性を有するとは期待されなかった。
【0153】
I.
図15
10%のFBS、2mMグルタミン及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むRPMI1640中で、SNU398細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1μg/mlの終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。コンストラクトの混合物を使用した場合は、これらを前もって混合してから培養物に加えた(コンストラクトの終濃度はコンストラクトあたり1μg/mlであった)。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、SNU398細胞+T細胞(添加なし)及びSNU398細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。
【0154】
図15は、プロテアーゼ阻害剤の添加が、プロテアーゼ切断部位を有する二成分系(コンストラクト6248及び6249)のIFNγの発現を低減することを示す。プロテアーゼ阻害剤は、切断及び対形成が活性に必要とされないので、6245二重特異性コンストラクトに影響しない。
【0155】
J.
図16
10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を含むDMEM中で、SW620細胞を培養した。実験の前日に、細胞を96ウェルプレート(ウェルあたり100,000細胞)にプレーティングした。実験の当日に、培地を吸引し廃棄した。T細胞培地中のウェルあたり20,000個のT細胞を加えた。コンストラクト(1μg/mlの終濃度)をT細胞培地中で作製し、培養物に加えた。コンストラクトの混合物を使用した場合は、これらを前もって混合してから培養物に加えた(コンストラクトの終濃度はコンストラクトあたり1μg/mlであった)。対照は、PHA-M(終濃度10μg/ml)、SW620細胞+T細胞(添加なし)及びSW620細胞(T細胞または他の添加なし)であった。各条件を3連で実施した。培養物の最終量はウェルあたり200μlであった。培養物を37℃、5%CO
2及び100%相対湿度で24時間インキュベートした。培養物を400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、別のプレートに入れた。IFNγについて解析するまで、上清を-20℃で保管した。
【0156】
9335と6248の機能的組み合わせは、様々な種類の抗体断片をそれぞれ第1の成分及び第2の成分に組み合わせることができることを示す。9335は標的化部分として抗EGFR VHHを用い、6248は標的化部分として抗EPCAM scFvを用いる。
【0157】
実施例4.二成分系を使用する、B細胞リンパ腫のインビボ標的化
第1の成分及び第2の成分を含む二成分系をリンパ腫を有する患者に投与する。第1の成分は、標的化部分としてリツキシマブまたは抗CD22抗体を、T細胞結合ドメインとしてCD3に結合する抗体由来のVHドメインを、不活性結合パートナーとしてVLドメインを、及びADAM28切断部位KPAKFFRLを含む。第2の成分も、標的化部分としてリツキシマブまたは抗CD22抗体を、T細胞結合ドメインとしてCD3に結合する抗体由来の相補的なVLドメインを、不活性結合パートナーとしてVHを、及びADAM28切断部位KPAKFFRLを含む。第1の成分のT細胞結合ドメインとしてのCD3に結合する抗体由来のVHドメイン及び第2の成分のT細胞結合ドメインとしてのCD3に結合する抗体由来のVLドメインは、不活性結合パートナーに結合していない場合に互いに結合することができ、T細胞に結合する活性を有することができる。
【0158】
健常及び悪性のすべてのB細胞を標的にする薬剤を患者に注入する。悪性細胞に結合すると、薬剤はプロテアーゼと接触し、それによって、プロテアーゼ認識ドメインの切断により第1及び第2のT細胞結合ドメインの両方から不活性結合パートナーが放出される。
【0159】
今や活性化された二成分系複合体に結合している悪性のB細胞は、第1と第2のT細胞結合ドメインの複合体の存在及び活性により、T細胞による細胞溶解のために宿主免疫系を誘引する。
【0160】
実施例5.二成分系の特定の実施形態
系A~Eから選択される二成分系を表3に従って調製し、がんを有する患者に投与する。項目が随意として記載されている場合、表の行は、その項目を有するまたは有さない二成分系の両方を記載する。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
実施例6.実施形態
以下の番号付けした条項は本明細書に記載の実施形態を提供するが、ここに列挙する実施形態は限定的ではない。
【0166】
条項1.望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための二成分系であって、a.標的化T細胞結合剤を含む第1の成分であって、前記標的化T細胞結合剤は、
i.前記望ましくない細胞を標的とすることができる第1の標的化部分、
ii.第2のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第1のT細胞結合ドメイン(ここでは、前記第2のT細胞結合ドメインは前記第1の成分の一部ではない)、
iii.前記第1のT細胞結合ドメインに対する第1の不活性結合パートナーであって、不活性結合パートナーが除去されない限り前記第1のT細胞結合ドメインが前記第2のT細胞結合ドメインに結合しないように前記第1のT細胞結合ドメインに結合する、前記不活性結合パートナー、及び
iv.前記第1のT細胞結合ドメインと前記第1の不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、前記切断部位は、
(1)前記望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
(2)前記望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
(3)補体依存的切断反応によって切断される、または
(4)前記薬剤中の前記標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって前記望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)を含む、第1の成分、b.前記第1のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第2のT細胞結合ドメインを含む、第2の成分を含み、ここでは、前記第1及び第2のT細胞結合ドメインが、どちらも不活性結合パートナーに結合していない場合に結合することができる、前記二成分系。
【0167】
条項2.前記第2の成分が前記望ましくない細胞を標的とすることができる第2の標的化部分をさらに含む、条項1に記載の二成分系。
【0168】
条項3.前記第2の成分が、前記第2のT細胞結合ドメインに対する第2の不活性結合パートナーであって、前記不活性結合パートナーが除去されない限り前記第2のT細胞結合ドメインが前記第1のT細胞結合ドメインに結合しないように前記第2のT細胞結合ドメインに結合する、前記不活性結合パートナー、及びa.前記第2のT細胞結合ドメインと前記第2の不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、前記切断部位は、
i.前記望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
ii.前記望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
iii.補体依存的切断反応によって切断される、または
iv.前記薬剤中の前記標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって前記望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)をさらに含み、ここでは、前記切断部位の切断が前記不活性結合パートナーの喪失及び前記二成分系の前記第1のT細胞結合ドメインとの相互補完を引き起こす、条項1または2に記載の二成分系。
【0169】
条項4.前記第1及び前記第2の標的化部分が同じである、条項1~3のいずれか1項に記載の二成分系。
【0170】
条項5.前記第1及び前記第2の標的化部分が異なる、条項1~3のいずれか1項に記載の二成分系。
【0171】
条項6.前記第1及び第2の切断部位が同じである、条項1~5のいずれか1項に記載の二成分系。
【0172】
条項7.前記第1及び第2の切断部位が異なる、条項1~5のいずれか1項に記載の二成分系。
【0173】
条項8.少なくとも1つの切断部位がプロテアーゼ切断部位である、条項1~7のいずれか1項に記載の二成分系。
【0174】
条項9.少なくとも1つの切断部位が前記望ましくない細胞の外部で切断され得る、条項1~8のいずれか1項に記載の二成分系。
【0175】
条項10.前記望ましくない細胞が発現する少なくとも1つの酵素がプロテアーゼである、条項1~9のいずれか1項に記載の二成分系。
【0176】
条項11.少なくとも1つの不活性結合パートナーが前記T細胞結合ドメインと特異的に結合する、条項1~10のいずれか1項に記載の二成分系。
【0177】
条項12.少なくとも1つの不活性結合パートナーがVHまたはVLドメインである、条項1~11のいずれか1項に記載の二成分系。
【0178】
条項13.a.前記T細胞結合ドメインがVHドメインである場合は、前記不活性結合パートナーがVLドメインであり、
b.前記T細胞結合ドメインがVLドメインである場合は、前記不活性結合パートナーがVHドメインである、条項1~12のいずれか1項に記載の二成分系。
【0179】
条項14.少なくとも1つの標的化部分が抗体またはその機能的断片である、条項1~13のいずれか1項に記載の二成分系。
【0180】
条項15.前記少なくとも1つの不活性結合パートナーが、少なくとも1つの切断部位が切断されると解離することができ、解離後に、前記2つのT細胞結合ドメインが互いに結合することができ、T細胞結合活性を示すことができる、条項1~14のいずれか1項に記載の二成分系。
【0181】
条項16.一方のT細胞結合ドメインがVHドメインであり、他方のT細胞結合ドメインがVLドメインである、条項1~15に記載の二成分系。
【0182】
条項17.第1の標的化T細胞結合剤を含む望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる状態を治療するための二成分系で使用するための成分であって、前記第1の標的化T細胞結合剤は、
a.望ましくない細胞を標的とすることができる標的化部分、
b.第2のT細胞結合ドメインと結合した場合にT細胞結合活性になることができる第1のT細胞結合ドメイン(ここでは、前記第2のT細胞結合ドメインは前記第1の標的化T細胞結合剤の一部ではない)、
c.前記第1のT細胞結合ドメインに対する不活性結合パートナーであって、前記不活性結合パートナーが除去されない限り前記第1のT細胞結合ドメインが前記第2のT細胞結合ドメインに結合しないように前記第1のT細胞結合ドメインに結合する、前記不活性結合パートナー、
d.前記第1のT細胞結合ドメインと前記不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、前記切断部位は、
i.前記望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
ii.前記望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
iii.補体依存的切断反応によって切断される、または
iv.前記薬剤中の前記標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって前記望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)を含み、ここでは、前記切断部位の切断が前記不活性結合パートナーの喪失を引き起こし、前記薬剤の一部ではない前記第2のT細胞結合ドメインとの相互補完を可能にする、前記成分。
【0183】
条項18.前記切断部位がプロテアーゼ切断部位である、条項17に記載の二成分系で使用するための成分。
【0184】
条項19.前記切断部位が前記望ましくない細胞の外部で切断され得る、条項17~18のいずれか1項に記載の二成分系で使用するための成分。
【0185】
条項20.前記望ましくない細胞が発現する前記酵素がプロテアーゼである、条項17~19のいずれか1項に記載の二成分系で使用するための成分。
【0186】
条項21.少なくとも1つの不活性結合パートナーが前記T細胞結合ドメインと特異的に結合する、条項17~20のいずれか1項に記載の二成分系で使用するための成分。
【0187】
条項22.前記不活性結合パートナーがVHまたはVLドメインである、条項17~21のいずれか1項に記載の二成分系で使用するための成分。
【0188】
条項23.
a.前記T細胞結合ドメインがVHドメインである場合は、前記不活性結合パートナーがVLドメインであり、
b.前記T細胞結合ドメインがVLドメインである場合は、前記不活性結合パートナーがVHドメインである、条項17~22のいずれか1項に記載の二成分系で使用するための成分。
【0189】
条項24.前記標的化部分が抗体またはその機能的断片である、条項17~23のいずれか1項に記載の二成分系で使用するための成分。
【0190】
条項25.条項1~16のいずれか1項に記載の2成分系の前記第1及び第2の成分をコードする1組の核酸分子。
【0191】
条項26.条項17~24のいずれか1項に記載の二成分系で使用するための前記成分をコードする核酸分子。
【0192】
条項27.望ましくない細胞の存在によって特徴づけられる患者における疾患の治療方法であって、条項1~16のいずれか1項に記載の二成分系を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【0193】
条項28.望ましくない細胞に対する患者の免疫応答の標的化方法であって、条項1~16のいずれか1項に記載の二成分系を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【0194】
条項29.前記望ましくない細胞ががん細胞である、条項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【0195】
条項30.前記がんが、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、黒色腫、肺がん、前立腺がん、精巣がん、甲状腺がん、脳のがん、食道がん、胃がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肝臓がん、白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、リンパ増殖性障害、骨髄異形成障害、骨髄増殖性疾患または前がん性疾患のうちのいずれか1つである、条項29に記載の方法。
【0196】
均等物
前述の明細書は、当業者が実施形態を実施できるようにするのに十分であると考えられる。前述の説明及び実施例はある特定の実施形態を詳述し、本発明者らが企図する最良の形態を記載する。しかし、いかに詳細に前述の事項が本文中に現れようとも、実施形態は多くの方法で実施することができ、添付の特許請求の範囲及びその任意の均等物に従って解釈されるべきであることが理解されるであろう。
【0197】
本明細書で使用する場合、約という用語は、明確に示されたかどうかを問わず、例えば、整数、分数及びパーセンテージを含めた数値を指す。約という用語は、一般に、記載される値と均等である(例えば、同じ機能または結果を有する)と当業者が考えると思われる数値の範囲(例えば、記載される範囲の+/-5~10%)を指す。少なくとも及び約などの用語が数値または範囲のリストに先行する場合、これらの用語は、そのリストに提供される値または範囲のすべてを修飾する。ある場合には、約という用語は、最も近い有効数字に四捨五入される数値を含んでもよい。
前記第2の成分が、前記第2のT細胞結合ドメインに対する第2の不活性結合パートナーであって、前記不活性結合パートナーが除去されない限り前記第2のT細胞結合ドメインが前記第1のT細胞結合ドメインに結合しないように前記第2のT細胞結合ドメインに結合する、前記不活性結合パートナー、及び
a.前記第2のT細胞結合ドメインと前記第2の不活性結合パートナーを分離する切断部位(ここでは、前記切断部位は、
i.前記望ましくない細胞が発現する酵素によって切断される、
ii.前記望ましくない細胞の内部でpH感受性切断反応を介して切断される、
iii.補体依存的切断反応によって切断される、または
iv.前記薬剤中の前記標的化部分と同じもしくは異なる標的化部分によって前記望ましくない細胞に共存するプロテアーゼによって切断される)をさらに含み、
ここでは、前記切断部位の切断が前記不活性結合パートナーの喪失及び前記キットまたは組成物の前記第1のT細胞結合ドメインとの相互補完を引き起こす、請求項1に記載のキットまたは組成物。
a.前記T細胞結合ドメインがVHドメインである場合は、前記不活性結合パートナーがVLドメインであり、b.前記T細胞結合ドメインがVLドメインである場合は、前記不活性結合パートナーがVHドメインである、請求項9に記載のキットまたは組成物。
前記少なくとも1つの不活性結合パートナーが、少なくとも1つの切断部位が切断されると解離することができ、解離後に、前記2つのT細胞結合ドメインが互いに結合することができ、T細胞結合活性を示すことができる、請求項3に記載のキットまたは組成物。