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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138536
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H02K1/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115087
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2021552267の分割
【原出願日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019190556
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】上野 友之
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠一
(57)【要約】
【課題】生産性に優れ、かつエネルギー損失が少ない回転電機を提供する。
【解決手段】第一ステータと第二ステータとロータとが、ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機である。第一ステータは、第一コイルが配置される圧粉磁心で構成された第一コアを備える。第二ステータは、第二コイルが配置される圧粉磁心で構成された第二コアを備える。第一コアは、円環状の第一ヨークと、複数の第一ティースと、第一ヨークの周方向の基準となる位置を示す第一マークとを備える。第二コアは、円環状の第二ヨークと、複数の第二ティースと、第二ヨークの周方向の基準となる位置を示す第二マークとを備える。回転軸の軸方向に見て、第一マークと第二マークとが回転軸に関して互いに対称な位置に配置されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ステータと第二ステータとロータとが、前記ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記第一ステータは、第一コイルと、前記第一コイルが配置される圧粉磁心で構成された第一コアとを備え、
前記第二ステータは、第二コイルと、前記第二コイルが配置される圧粉磁心で構成された第二コアとを備え、
前記第一コアは、
第一ヨーク面を有する円環状の第一ヨークと、
前記第一ヨーク面から突出する複数の第一ティースと、
前記第一ヨークの周方向の基準となる位置を示す第一マークとを備え、
前記第二コアは、
前記第一ヨーク面に対向する第二ヨーク面を有する円環状の第二ヨークと、
前記第二ヨーク面から突出する複数の第二ティースと、
前記第二ヨークの周方向の基準となる位置を示す第二マークとを備え、
前記回転軸の軸方向に見て、前記第一マークと前記第二マークとが前記回転軸に関して互いに対称な位置に配置されている、
回転電機。
【請求項2】
前記第一ヨークに、前記第一ヨークの軸方向に見て前記第一マークと前記第一ヨークの軸心を通る第一基準直線を仮想し、前記第二ヨークに、前記第二ヨークの軸方向に見て前記第二マークと前記第二ヨークの軸心を通る第二基準直線を仮想した場合、
前記第一基準直線に関して互いに対称な位置にある複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面から複数の前記第一ティースの端面までの突出高さ差分が0.15mm以下であり、
前記第二基準直線に関して互いに対称な位置にある複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面から複数の前記第二ティースの端面までの突出高さの差分が0.15mm以下である、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記回転軸の軸方向に対向する位置にある前記第一ティースと前記第二ティースとで構成されるティース対を複数備え、
複数の前記ティース対それぞれにおける前記第一ティースの端面の面積重心から前記第二ティースの端面の面積重心に至る距離をティース間距離とし、最大の前記ティース間距離と最小の前記ティース間距離との差が0.08mm以下である請求項1又は請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第一コアにおける複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下であり、
前記第二コアにおける複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第一ヨークの厚さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下であり、
前記第二ヨークの厚さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
複数の前記第一ティースの突出高さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下であり、
複数の前記第二ティースの突出高さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ロータは、前記第一ティースの端面に対向する第一ロータ面と、前記第二ティースの端面に対向する第二ロータ面とを備え、
複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが、複数の前記第一ティースと前記第一ロータ面との距離の平均値の20%以下であり、
複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが、複数の前記第二ティースと前記第二ロータ面との距離の平均値の20%以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記ロータは、前記第一ティースの端面に対向する第一ロータ面と、前記第二ティースの端面に対向する第二ロータ面とを備え、
前記第一ヨークの厚さのバラツキが、前記第一ヨーク面と前記第一ロータ面との距離の平均値の2%以下であり、
前記第二ヨークの厚さのバラツキが、前記第二ヨーク面と前記第二ロータ面との距離の平均値の2%以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
通電時に、前記第一コアと前記ロータと前記第二コアとを透過する環状磁路が形成され、
複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが、前記環状磁路の磁路長の1%以下であり、
複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが、前記環状磁路の磁路長の1%以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項10】
第一ステータと第二ステータとロータとが、前記ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記第一ステータは、第一コイルと、前記第一コイルが配置される圧粉磁心で構成された第一コアとを備え、
前記第二ステータは、第二コイルと、前記第二コイルが配置される圧粉磁心で構成された第二コアとを備え、
前記第一コアは、
第一ヨーク面を有する円環状の第一ヨークと、
前記第一ヨーク面から突出する複数の第一ティースと、
前記第一ヨークの周方向の基準となる位置を示す第一マークとを備え、
前記第二コアは、
前記第一ヨーク面に対向する第二ヨーク面を有する円環状の第二ヨークと、
前記第二ヨーク面から突出する複数の第二ティースと、
前記第二ヨークの周方向の基準となる位置を示す第二マークとを備え、
前記回転軸の軸方向に見て、前記第一マークと前記第二マークとが前記回転軸に関して互いに対称な位置に配置されており、
前記第一ヨークに、前記第一ヨークの軸方向に見て前記第一マークと前記第一ヨークの軸心を通る第一基準直線を仮想し、前記第二ヨークに、前記第二ヨークの軸方向に見て前記第二マークと前記第二ヨークの軸心を通る第二基準直線を仮想した場合、
前記第一基準直線に関して互いに対称な位置にある複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面から複数の前記第一ティースの端面までの突出高さ差分が0.15mm以下であり、
前記第二基準直線に関して互いに対称な位置にある複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面から複数の前記第二ティースの端面までの突出高さの差分が0.15mm以下であり、
前記第一コアにおける複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下であり、
前記第二コアにおける複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下であり、
前記ロータは、前記第一ティースの端面に対向する第一ロータ面と、前記第二ティースの端面に対向する第二ロータ面とを備え、
複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが、複数の前記第一ティースと前記第一ロータ面との距離の平均値の20%以下であり、
複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが、複数の前記第二ティースと前記第二ロータ面との距離の平均値の20%以下である、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機に関する。本出願は、2019年10月17日出願の日本出願2019-190556号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型の回転電機(電動機・発電機)として、特許文献1の図13には、ロータを一対のステータで挟み込んだダブルステータタイプの回転電機が開示されている。ステータは、コイルが配置されるコアを備える。コアは、円盤状のヨークと、ヨークの一面側から突出する複数のティースとを備える。ティースの外周にはコイルが配置される。特許文献1では、ヨークに孔を設け、その孔に柱状のティースを嵌め込むことでステータのコアを構成している。一方、ロータは、複数の永久磁石を有する。
【0003】
一対のステータを備えるアキシャルギャップ型の回転電機では、ロータの回転軸の軸方向に、一方のステータ、ロータ、他方のステータの順に並べる。その際、一方のステータのティースと、他方のステータのティースとが向かい合うように両ステータを配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/114079号
【発明の概要】
【0005】
本開示の回転電機は第一ステータと第二ステータとロータとが、前記ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記第一ステータは、第一コイルと、前記第一コイルが配置される圧粉磁心で構成された第一コアを備え、
前記第二ステータは、第二コイルと、前記第二コイルが配置される圧粉磁心で構成された第二コアを備え、
前記第一コアは、
第一ヨーク面を有する円環状の第一ヨークと、
前記第一ヨーク面から前記ロータ方向に突出し、前記第一ヨークと一体に構成された複数の第一ティースと、
前記第一ヨークの周方向の基準となる位置を示す第一マークとを備え、
前記第二コアは、
前記第一ヨーク面に対向する第二ヨーク面を有する円環状の第二ヨークと、
前記第二ヨーク面から前記ロータ方向に突出し、前記第二ヨークと一体に構成された複数の第二ティースと、
前記第二ヨークの周方向の基準となる位置を示す第二マークとを備え、
前記回転軸の軸方向に見て、前記第一マークと前記第二マークとが前記回転軸に関して互いに対称な位置に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態1のアキシャルギャップ型の回転電機の部分縦断面図である。
図2図2は、第一ステータの第一コアの斜視図である。
図3図3は、第一ステータの第一コアの上面図である。
図4図4は、第二ステータの第二コアの上面図である。
図5図5は、第一ティースを作製する金型と給粉機の位置関係を示す模式図である。
図6図6は、図5のVI-VI断面図である。
図7図7は、第一ティースと第二ティースとロータとの配置関係の模式図である。
図8図8は、試験例に記載される試料No.1のトルクリプルを示すグラフである。
図9図9は、試験例に記載される試料No.1のコギングトルクを示すグラフである。
図10図10は、試験例に記載される試料No.2のトルクリプルを示すグラフである。
図11図11は、試験例に記載される試料No.2のコギングトルクを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特許文献1では、ヨークとティースとを別個に作製し、それらを組み合わせてステータのコアを作製している。この構成では、ヨークとティースとを組み合わせる手間がかかるため、回転電機の生産性が芳しくない。
【0008】
また、特許文献1の構成では、ヨークからのティースの突出高さがバラツキ易い。ティースの突出高さにバラツキがあると、トルクリプルの増大などによって電磁気的なエネルギー損失が増大する。また、ロータの回転軸が変動し易くなるので、シャフトと軸受との間の摩擦の増大などによって機械的なエネルギー損失が増大する。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
本発明者らは、ヨークと複数のティースとを備えるコアを圧紛磁心によって構成することを検討した。圧粉磁心によって構成されるコアを作製する場合、給粉機を用いて金型内に磁性粉末を充填し、加圧成形する。一般的な給粉機は、金型上を直線的に往復して金型内に給粉する。ここで、本発明者らは、金型における給粉開始側の箇所の方が、給粉機の折り返し側の箇所よりも磁性粉末が多く充填され易い傾向にあるという知見を得た。また、本発明者らは、上面視した金型の中心を通って給粉機の往復方向に沿った直線を給粉軸線としたとき、給粉軸線に関して互いに対称な位置にある箇所における磁性粉末の充填量は同程度となり易いという知見を得た。つまり、圧紛磁心のコアでは、コアに備わる複数のティースのうち、給粉開始側から給粉機の折り返し側に向って、ティースの高さが徐々に低くなり易い。また、給粉軸線に関して互いに対称な位置にあるティースの突出高さはほぼ同じとなる。これらの知見に基づいて、本発明者らは実施形態に係る回転電機を完成させた。
以下、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
<1>実施形態に係る回転電機は、
第一ステータと第二ステータとロータとが、前記ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記第一ステータは、第一コイルと、前記第一コイルが配置される圧粉磁心で構成された第一コアを備え、
前記第二ステータは、第二コイルと、前記第二コイルが配置される圧粉磁心で構成された第二コアを備え、
前記第一コアは、
第一ヨーク面を有する円環状の第一ヨークと、
前記第一ヨーク面から前記ロータ方向に突出し、前記第一ヨークと一体に構成された複数の第一ティースと、
前記第一ヨークの周方向の基準となる位置を示す第一マークとを備え、
前記第二コアは、
前記第一ヨーク面に対向する第二ヨーク面を有する円環状の第二ヨークと、
前記第二ヨーク面から前記ロータ方向に突出し、前記第二ヨークと一体に構成された複数の第二ティースと、
前記第二ヨークの周方向の基準となる位置を示す第二マークとを備え、
前記回転軸の軸方向に見て、前記第一マークと前記第二マークとが前記回転軸に関して互いに対称な位置に配置されている。
【0011】
上記回転電機は生産性に優れる。上記回転電機の第一コアと第二コアは共に、ヨークとティースとを一体に成形した圧粉磁心であるため、ヨークとティースとを組み合わせる工程が省略されるからである。
【0012】
上記回転電機はエネルギー効率に優れる。上記回転電機では、複数のティース対が形成される。ティース対は、ロータの軸方向に対向する位置にある第一ティースと第二ティースとの組である。ここで、第一マークと第二マークとが回転軸に関して互いに対称な位置に配置されているので、全てのティース対におけるティース間距離がほぼ等しくなる。その結果、ロータの周方向の各所において各ティース対からもたらされるトルクのバラツキが小さくなる。つまり、上記回転電機におけるトルクリプルが小さくなる。従って、上記回転電機における磁気的なエネルギー損失が増加し難い。また、トルクリプルが小さいため、ロータの回転軸が振れ難い。つまり、回転軸と軸受との間の摩擦力が変動し難い。従って、回転電機における機械的なエネルギー損失が増加し難いと考えられる。更に、トルクリプルが小さいため、回転電機の騒音と振動が抑制される。
【0013】
ロータの回転軸に関して互いに第一マークと第二マークとが対称な位置に配置されることで全てのティース対におけるティース間距離がほぼ等しくなるのは、圧粉磁心で構成されるコアにおけるティースの突出高さに線対称性があるからである。この線対称性を考慮せずに、圧粉磁心で構成される第一コアと第二コアとを組み合わせてダブルステータタイプの回転電機を作製すると、ティース間距離のバラツキが大きくなる恐れがある。
【0014】
上記回転電機は、容易に組み立て可能である。回転電機に備わる第一コアと第二コアとにそれぞれ第一マークと第二マークとが設けられているからである。第一マーク及び第二マークは、例えば給粉機の往復方向の一端側(給粉開始側、又は給粉機の折り返し側)を示す形態が挙げられる。その他、第一マークは、第一ヨークの周方向に上記一端から所定長さ分ずれた位置に設けられる形態が挙げられる。その他、第二マークは、第二ヨークの周方向に上記一端から所定長さ分ずれた位置に設けられる形態が挙げられる。いずれにせよ、ロータの回転軸に関して互いに対称となる位置に第一マークと第二マークとが配置されれば、ティース間距離のバラツキが小さくなるように第一コアと第二コアとを位置合わせされる。
【0015】
<2>実施形態に係る回転電機の一形態として、
前記第一ヨークに、前記第一ヨークの軸方向に見て前記第一マークと前記第一ヨークの軸心を通る第一基準直線を仮想し、前記第二ヨークに、前記第二ヨークの軸方向に見て前記第二マークと前記第二ヨークの軸心を通る第二基準直線を仮想した場合、
前記第一基準直線に関して互いに対称な位置にある複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面から複数の前記第一ティースの端面までの突出高さの差分が0.15mm以下であり、
前記第二基準直線に関して互いに対称な位置にある複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面から複数の前記第二ティースの端面までの突出高さの差分が0.15mm以下である、
形態を挙げることができる。
【0016】
第一コアの第一基準直線は、第一コアを作製する際の給粉軸線に一致すると考えて良い。また、第二コアの第二基準直線は、第二コアを作製する際の給粉軸線に一致すると考えて良い。コアの基準直線は、コアの各ティースの突出高さを測定し、それらの突出高さを比較することで求めることができる。例えば、時計の文字盤のように1時から12時の位置に12個のティースが並ぶコアの場合を考える。12時の位置にあるティースが最も高く、6時の位置にあるティースが最も低ければ、12時の位置と6時の位置を結ぶ直線が基準直線であると推察できる。この場合、基準直線に関して互いに対称な位置にあるティースの突出高さは実質的に揃っている。例えば、1時の位置にあるティースの高さと、11時の位置にあるティースの高さとは実質的に揃っている。また、ティースの高さは、12時の位置のティース>1時(11時)の位置のティース>2時(10時)の位置のティース>3時(9時)の位置のティース>4時(8時)の位置のティース>5時(7時)の位置のティース>6時の位置のティースとなっている。従って、第一マークと第二マークとがロータの回転軸に関して互いに対称な位置に配置されれば、全てのティース対におけるティース間距離のバラツキが非常に小さくなる。
【0017】
<3>実施形態に係る回転電機の一形態として、
前記回転軸の軸方向に対向する位置にある前記第一ティースと前記第二ティースとで構成されるティース対を複数備え、
複数の前記ティース対それぞれにおける前記第一ティースの端面の面積重心から前記第二ティースの端面の面積重心に至る距離をティース間距離とし、最大の前記ティース間距離と最小の前記ティース間距離との差が0.08mm以下である形態を挙げることができる。
【0018】
上記規定は、ティース間距離のバラツキが0.08mm以下であることを意味する。つまり、上記構成を備える回転電機では、全てのティース対におけるティース間距離が実質的に揃っているといえる。従って、この回転電機は、エネルギー効率に優れる。
【0019】
<4>実施形態に係る回転電機の一形態として、
前記第一コアにおける複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下であり、
前記第二コアにおける複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下である形態を挙げることができる。
【0020】
既に述べたように、圧粉磁心のコアにおける各ティースの高さはバラツキ易い。しかし、そのバラツキは小さい方が好ましい。上記構成では、第一コアにおける各第一ティースからロータまでの距離のバラツキが小さく、第二コアにおける各第二ティースからロータまでの距離のバラツキが小さくなる。つまり、ロータの周方向に並ぶ複数のティース対から得られるトルクのバラツキが小さくなるので、トルクリプルを低減できる。そのため、上記構成によれば、回転電機のエネルギー効率を高めることができる。
【0021】
<5>実施形態に係る回転電機の一形態として、
前記第一ヨークの厚さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下であり、
前記第二ヨークの厚さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下である形態を挙げることができる。
【0022】
上記構成によれば、上記<4>と同様の理由により、回転電機のエネルギー効率を高めることができる。
【0023】
<6>実施形態に係る回転電機の一形態として、
複数の前記第一ティースの突出高さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下であり、
複数の前記第二ティースの突出高さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下である形態を挙げることができる。
【0024】
上記構成によれば、上記<4>と同様の理由により、回転電機のエネルギー効率を高めることができる。
【0025】
<7>実施形態に係る回転電機の一形態として、
前記ロータは、前記第一ティースの端面に対向する第一ロータ面と、前記第二ティースの端面に対向する第二ロータ面とを備え、
複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが、複数の前記第一ティースと前記第一ロータ面との距離の平均値の20%以下であり、
複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが、複数の前記第二ティースと前記第二ロータ面との距離の平均値の20%以下である形態を挙げることができる。
【0026】
上記構成によれば、上記<4>と同様の理由により、回転電機のエネルギー効率を高めることができる。
【0027】
<8>実施形態に係る回転電機の一形態として、
前記ロータは、前記第一ティースの端面に対向する第一ロータ面と、前記第二ティースの端面に対向する第二ロータ面とを備え、
前記第一ヨークの厚さのバラツキが、前記第一ヨーク面と前記第一ロータ面との距離の平均値の2%以下であり、
前記第二ヨークの厚さのバラツキが、前記第二ヨーク面と前記第二ロータ面との距離の平均値の2%以下である形態を挙げることができる。
【0028】
上記構成によれば、回転電機のエネルギー効率を高めることができる。
【0029】
<9>実施形態に係る回転電機の一形態として、
通電時に、前記第一コアと前記ロータと前記第二コアとを透過する環状磁路が形成され、
複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが、前記環状磁路の磁路長の1%以下であり、
複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが、前記環状磁路の磁路長の1%以下である形態を挙げることができる。
【0030】
上記構成によれば、回転電機のエネルギー効率を高めることができる。環状磁路の一例については後述する実施形態で述べる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る回転電機の具体例を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
<実施形態1>
≪回転電機≫
実施形態1では、図1に示すアキシャルギャップ型の回転電機100を例にして説明を行う。回転電機100は、発電機でも良いし、電動機(モータ)でも良い。回転電機100は、ハウジング101内に配置される第一ステータ1と第二ステータ2とロータ3とを備える。本例の回転電機100は、3相4極6スロットの回転電機100である。つまり、回転電機100は3相交流で使用される。ロータ3に設けられる磁石32は4つである。第一ステータ1の第一ティース5は6つである。第二ステータ2の第二ティース7は6つである。ここで、交流の位相数、及び極数(磁石32の数)は特に限定されない。また、スロットの数は、位相数の倍数であれば特に限定されない。
【0033】
・ロータ
ロータ3は、平板状の複数の磁石32と、磁石32を支持する円環形状の保持板31とを備える。保持板31は、シャフト30に固定され、シャフト30と共に回転する。磁石32は保持板31に埋め込まれている。磁石32は、保持板31の周方向に間隔をあけて配置されている。また、磁石32は、ロータ3の回転軸方向(シャフト30の軸方向)に着磁されている。シャフト30の周方向に隣り合う磁石32の磁化方向は互いに逆になっている。
【0034】
・第一ステータ
第一ステータ1は、第一コア10と第一コイル11とを備える。第一コア10は、図2の斜視図と図3の上面図に示すように、円環状の第一ヨーク4と、柱状に形成される複数の第一ティース5とを備える。第一ティース5の形状は特に限定されない。例えば、第一ティース5は図2に示すように概略三角柱状とすることができる。その他、第一ティース5の形状は、円柱状や四角柱状などでも良い。ここで、図2,3では、各第一ティース5を区別できるように、符号51~56を付している。全ての第一ティース51~56は、第一ヨーク4の第一ヨーク面40から突出している。第一ヨーク面40は、図1に示すロータ3の第一ロータ面3Aに対向する面である。
【0035】
第一ヨーク4と第一ティース5の寸法は、回転電機100に求められる特性に応じて適宜選択できる。例えば、第一ヨーク4の内径は10mm以上100mm以下、外径は20mm以上120mm以下とすることができる。また、第一ヨーク面40から第一ティース5の端面までで示される第一ティース5の突出高さは2mm以上40mm以下、突出高さに直交する断面の面積は10mm以上800mm以下とすることができる。
【0036】
3相交流で使用する本例の回転電機100(図1)では、U相の第一コイル11(図1)は第一ティース51と第一ティース54に巻回され、V相の第一コイル11は第一ティース52と第一ティース55に巻回され、W相の第一コイル11は第一ティース53と第一ティース56に巻回される。
【0037】
第一コア10は、磁性粉末を加圧成形することで得られる圧粉磁心である。軟磁性粉末としては、例えば、純鉄(純度99質量%以上)、Fe-Si-Al系合金(センダスト)、Fe-Si系合金(ケイ素鋼)、Fe-Al系合金、及びFe-Ni系合金(パーマロイ)などの鉄基合金から選択される少なくとも一種の粉末が挙げられる。軟磁性粒子は、その表面に絶縁被覆を有することが好ましい。軟磁性粒子の表面に絶縁被覆が形成されていることで、軟磁性粒子同士の電気的絶縁を確保できる。絶縁被覆としては、例えば、リン酸塩被覆やシリカ被覆などが挙げられる。
【0038】
圧粉磁心で構成される第一コア10では、各第一ティース5の高さにバラツキが生じ易い。しかし、そのバラツキ方には一定の法則性がある。その法則性は、第一コア10の作製方法に起因するものである。そこで、図5,6を参照して第一コア10の作製方法の一例を説明する。
【0039】
図5は、第一コア10を作製するための金型9と、金型9に磁性粉末を供給する給粉機8を上面視した図である。図6は、図5のVI-VI断面図である。金型9は、その上面側に設けられる凹みであるヨーク形成部90と、ヨーク形成部90の底面に設けられる凹みであるティース形成部91~96を備える。ヨーク形成部90は、図2図3の第一ヨーク4に対応する型である。ティース形成部91~96はそれぞれ、図2図3の第一ティース51~56に対応する型である。例えば、ティース形成部91は第一ティース51の型であり、ティース形成部92は第一ティース52の型である。
【0040】
給粉機8は、金型9の径方向に移動する。例えば、給粉機8は白抜き矢印で示すように、ティース形成部91側からティース形成部94側に移動して、金型9内に磁性粉末8dを供給する。給粉機8には、その移動方向に直交する方向に沿った幅広の給粉口80を備える。給粉口80の幅(図5の紙面上下方向の長さ)は、ヨーク形成部90の開口幅以上となっている。給粉は、白抜き矢印で示す往路のみで行っても良いし、往路と復路(白抜き矢印と反対方向)の両方で行っても良い。
【0041】
金型9上を直線的に移動する給粉機8では、各ティース形成部91~96に対する磁性粉末8dの充填量に差が生じる傾向にある。具体的には、例えば流動性が高い磁性粉末8dであれば、金型9における給粉開始側(紙面右側)の箇所の方が、給粉機8の折り返し側(紙面左側)の箇所よりも多く充填され易い傾向にある。図5の例では、ティース形成部91に磁性粉末8dが多く充填され易く、ティース形成部94に向うに従って磁性粉末8dの充填量が少なくなる。また、図5の金型9の中心を通って給粉機8の往復方向に沿った直線を給粉軸線8sとしたとき、給粉軸線8sに関して互いに対称な位置にあるティース形成部92,96への磁性粉末8dの充填量は同程度となり易い。また、給粉軸線8sに関して互いに対称な位置にあるティース形成部93,95への磁性粉末8dの充填量も同程度となり易い。つまり、磁性粉末8dの充填量は、ティース形成部91>ティース形成部92,96>ティース形成部93,95>ティース形成部94となる。
【0042】
図5の例では給粉軸線8sがティース形成部91,94を通過するように設定されている。本例とは異なり、給粉軸線8sはヨーク形成部90を通過するように設定しても良い。例えば、ティース形成部91,92の間を通って、ティース形成部94,95の間を抜けるように給粉軸線8sを設定しても良い。その場合、磁性粉末8dの充填量は、ティース形成部91,92>ティース形成部93,96>ティース形成部94,95となる。
【0043】
以上説明したように、直線的に移動する給粉機8を用いた場合、給粉軸線8sを対称軸として金型9への磁性粉末の充填量が線対称になる傾向にある。そのため、金型9で作製された図2,3の第一コア10における第一ティース51~56の突出高さ(第一ヨーク4の軸方向の長さ)にも線対称性がある。つまり、第一コア10には、その作製時の給粉軸線8s(図5)に対応する第一基準直線1sを仮想できる。第一基準直線1sは、第一ヨーク4の軸心を通って径方向に延びる直線である。第一基準直線1sを対称軸として、各第一ティース51~56の高さが線対称となっている。具体的には、第一ティース51の突出高さ>第一ティース52,56の突出高さ>第一ティース53,55の突出高さ>第一ティース54の突出高さとなる。第一ティース52と第一ティース56との突出高さの差は0.02mm以下であり、第一ティース52と第一ティース56の突出高さは実質的に同じと考えて良い。また、第一ティース53と第一ティース55との突出高さの差は0.02mm以下であり、第一ティース53と第一ティース55の突出高さは実質的に同じと考えて良い。ここで、第一ティース51~56の突出高さhとは、図7に示すように、第一ヨーク面40を含む仮想平面から垂直に延び、第一ティース51~56の端面の面積重心に至る直線の長さである。第一ティース51~56の突出高さhは、例えばキーエンス社製ワンショット3D形状測定機VR-5000を用いて測定できる。第一ティース51~56の突出高さhは、第一ティース51~56の端面の面積重心を通る高さプロファイルにより算出される。後述される全体高さhも、同様に測定できる。
【0044】
第一基準直線1sは、各第一ティース51~56の突出高さhを測定し、それの突出高さhの線対称性から求めることができる。第一コア10に第一基準直線1sの位置を示す第一マーク15(図3)を設けておけば、突出高さhの測定の手間を省ける。本例の第一マーク15は、第一コア10を作製する際の給粉開始側を示している。従って、本例では、第一マーク15は、最も突出高さhが高いティースである第一ティース51と第一ヨーク4の端部との間に設けられる。より詳細には、第一マーク15は、第一ティース51の面積重心と第一ヨーク4の軸心を結ぶ直線上、かつ、第一ヨーク4における第一ティース51から近い側の端部と第一ティース51との間に設けられる。第一マーク15は、最も突出高さhが高いティースを示すことになり、第一ヨーク4における周方向の基準である。本例とは異なり、第一マーク15は、給粉機8(図5図6)の折り返し側を示すものであっても良い。この場合、第一マーク15は、最も突出高さhが低いティースを示すことになり、第一ヨーク4における周方向の基準である。つまり、第一マーク15は、最も突出高さhが高いティース、または、最も突出高さhが低いティースのいずれかを示す。後述される第二マーク25についても同様である。第一マーク15は、第一コア10に設けられる凹部又は凸部で構成することができる。この場合、金型9(図5)に凸部又は凹部を形成しておくと良い。第一マーク15は、第一コア10の磁気特性に悪影響を及ぼし難い位置に設けることが好ましい。第一マーク15はペイント又はシールなどで構成することもできる。この場合、第一マーク15が第一コア10の磁気特性に悪影響を及ぼさない。
【0045】
圧粉磁心で構成される第一コア10の各部の寸法にバラツキが生じ易い傾向にあるとは言うものの、各部の寸法のバラツキは小さい方が好ましい。例えば、図7に示すように、第一コア10における第一ヨーク面40の反対面から各第一ティース51~56の端面までの全体高さhのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下であることが好ましい。全体高さhは、第一ティース51を例にすれば、第一ヨーク4の下面に垂直で、第一ティース51の端面の面積重心に至る直線の長さである。本例の場合、各第一ティース51~56の位置で6つの全体高さhが得られる。つまり、最も高いhと最も低いhとの差が0.05mm以上0.15mm以下であることが好ましい。全体高さhのバラツキは、0.13mm以下が好ましく、0.10mm以下がより好ましい。
【0046】
第一ヨーク4の厚さtのバラツキは0.03mm以上0.10mm以下であることが好ましい。厚さtは、周方向に隣接する二つの第一ティース51,52の中央位置の厚さである。本例の場合、第一ティース5の数と同じ6つの厚さtを測定し、最大の厚さtと最小の厚さtとの差が0.03mm以上0.10mm以下であることが好ましい。厚さtのバラツキは、0.09mm以下が好ましく、0.08mm以下がより好ましい。
【0047】
第一ティース51~56のそれぞれの突出高さhのバラツキは0.03mm以上0.10mm以下であることが好ましい。本例の場合、6つの突出高さhが得られるので、最大の突出高さhと最小の突出高さhとの差が0.03mm以上0.10mm以下であることが好ましい。突出高さhのバラツキは、0.09mm以下が好ましく、0.08mm以下がより好ましい。
【0048】
・第二ステータ
第二ステータ2は、図1に示すように、第二コア20と第二コイル21とを備える。図4に示すように、第二コア20は、円環状の第二ヨーク6と、第二ヨーク6の第二ヨーク面60から突出する複数の第二ティース71~76とを備える。この第二コア20は、第一コア10と同じ金型9(図5図6)で作製されたものである。第二ヨーク6、第二ヨーク面60、及び第二ティース71~76はそれぞれ、図2図3を参照する第一コア10の第一ヨーク4、第一ヨーク面40、及び第一ティース51~56と同じである。また、図4に示すように、第二基準直線2s及びその位置を示す第二マーク25も、第一コア10の第一基準直線1s及びその位置を示す第一マーク15と同じである。つまり、本例では、第二マーク25は、最も突出高さhが高いティースである第二ティース71と第二ヨーク6の端部との間に設けられる。より詳細には、第二マーク25は、第二ティース71の面積重心と第二ヨーク6の軸心を結ぶ直線上、かつ、第二ヨーク6における第二ティース71から近い側の端部と第一ティース71との間に設けられる。第二コア20の各構成の説明は省略する。
【0049】
≪第一コアと第二コアの配置状態≫
線対称性を有する第一コア10(図3)と第二コア20(図4)とを組み合わせる場合、ロータ3の回転軸(図1のシャフト30)の軸方向に見て、第一コア10の第一マーク15と、第二コア20の第二マーク25とが回転軸に関して互いに対称な位置に配置される。第一マーク15と第二マーク25とが互いに対称な位置に配置されることで、第一基準直線1sと第二基準直線2sとが一致する。図7では、第一ティース51~54、及び第二ティース71~74の高さを誇張して示している。また、第一コア10とロータ3との離隔距離、及び第二コア20とロータ3との離隔距離も実際より大きく示している。
【0050】
図7に示されるように、互いのティースが対向するように第一コア10と第二コア20とが配置されると、第一ティース51と第二ティース74とが回転軸の軸方向(第一ヨーク4、ロータ3、第二ヨーク6それぞれの中心を結ぶ方向)に対向したティース対が得られる。つまり、第一マーク15,第二マーク25が対称位置に配置されることで、第一コア10の最も高い第一ティース51と、第二コア20の最も低い第二ティース74とが対向する。また、第一ティース52と第二ティース73とのティース対、第一ティース53と第二ティース72のティース対、及び第一ティース54と第二ティース71のティース対が得られる。また、図面上は見えない位置にあるが、第一ティース55と第二ティース76のティース対、及び第一ティース56と第二ティース75のティース対が得られる。既に述べたように、ティースの高さは、ティース51,71>ティース52,56,72,76>ティース53,55,73,75>ティース54,74である。従って、全てのティース対は、最も高いティースと最も低いティースとの組合せ、又は二番目に高いティースと二番目に低いティースとの組合せのいずれかとなる。
【0051】
各ティース対におけるティース間距離Lのバラツキは0.08mm以下である。ティース間距離Lは、ティース対における第一ティースの端面の面積重心と、第二ティースの端面の面積重心と、の間の距離である。つまり、一つのティース対に対して一つのティース間距離Lが得られる。ティース間距離Lのバラツキが0.08mm以下とは、最大のティース間距離Lと最小のティース間距離Lとの差が0.08mm以下ということである。本例では、コア10,20の各ティースの高さの差を考慮してコア10,20が組み合わされている。従って、最大のティース間距離Lと最小のティース間距離Lとの差が0.08mm以下になる。上記差は小さいほど好ましい。例えば、上記差は0.06mm以下が好ましく、0.04mm以下がより好ましい。上記差はゼロが最も好ましい。
【0052】
≪本実施形態の効果≫
本例の回転電機100は生産性に優れる。回転電機100の第一コア10と第二コア20は共に、ヨークとティースとを一体に成形した圧粉磁心であるため、ヨークとティースとを組み合わせる手間を省けるからである。
【0053】
本例の回転電機100はエネルギー効率に優れる。本例の回転電機100では全てのティース対におけるティース間距離Lがほぼ等しいため、ロータ3の周方向の各所において各ティース対からもたらされるトルクのバラツキが小さくなる。つまり、回転電機100におけるトルクリプルが小さくなる。従って、回転電機100における磁気的なエネルギー損失が増加し難い。また、回転電機100のトルクリプルが小さいため、ロータ3の回転軸(シャフト30)が振れ難い。つまり、シャフト30と軸受33との間の摩擦力が変動し難い。従って、回転電機100における機械的なエネルギー損失が増加し難いと考えられる。
【0054】
≪その他の規定≫
以下に列挙する規定を満たすことで、回転電機100のエネルギー効率を高めることができる。
【0055】
図7に示す第一コア10の全体高さhのバラツキが、各第一ティース51~56(図3)と第一ロータ面3Aとの距離の平均値の20%以下である。上記距離の測定数は第一ティース51~56の数と同じである。また、第二コア20の全体高さhのバラツキが、各第二ティース71~76(図4)と第二ロータ面3Bとの距離の平均値の20%以下である。
上記距離の測定数は第二ティース71~76の数と同じである。
【0056】
第一ヨーク4の厚さtのバラツキが、第一ヨーク面40と第一ロータ面3Aとの距離の平均値の2%以下である。当該平均値は、第一ヨーク4の厚さtの側定位置から直交方向に延び、第一ロータ面3Aに至る直線距離の平均値である。側定数は、厚さtのバラツキを求める際の数と同じ、即ち第一ティース5の数と同じである。第二ヨーク6の厚さのバラツキを、第二ヨーク面60と第二ロータ面3Bとの距離の平均値の2%以下とする。当該平均値は、第二ヨーク6の厚さtの測定位置から直交方向に延び、第二ロータ面3Bに至る直線距離の平均値である。
【0057】
通電時に、第一コア10とロータ3と第二コア20とを透過する環状磁路(図7の二点鎖線を参照)が形成される。第一コア10の全体高さhのバラツキを、その環状磁路の磁路長の1%以下とする。また、第二コア20の全体高さhのバラツキを、環状磁路の磁路長の1%以下とする。
【0058】
ここで、本例における環状磁路とは、コイルに通電したときに形成される環状磁路を仮想的に求めたものである(図7の二点鎖線を参照)。例えば、U相の第一ティース51,54と、同じくU相の第二ティース71,74を通る環状磁路が形成される。環状磁路は、第一磁路線と第二磁路線と第三磁路線と第四磁路線とを繋いだものである。第一磁路線は、第一ティース51と第二ティース74の端面の面積重心を通り、第一ティース51,第二ティース74とロータ3を貫通する直線である。第二磁路線は、第一ティース54と第二ティース71の端面の面積重心を通り、第一ティース54,第二ティース71とロータ3を貫通する直線である。第三磁路線は、第一ヨークを厚み方向に二分する平面上にあり、第一磁路線と第二磁路線とを繋ぐ円弧状の曲線である。第四磁路線は、第二ヨークを厚み方向に二分する平面上にあり、第一磁路線と第二磁路線とを繋ぐ円弧状の曲線である。
【0059】
<試験例>
本試験例では、第一ステータと第二ステータと組み合わせ方によってモータのトルク及び損失にどの程度の影響があるかをシミュレーションによって求めた。検討した試料は以下の二つである。
【0060】
(試料No.1)
試料No.1の回転電機は、3相10極12スロットのダブルステータタイプの回転電機である。この回転電機に備わる第一コアと第二コアはそれぞれ12個のティースを備える。突出高さが最も高いティースを12時の位置に配置したとき、第一コアにおける12時の位置のティースとヨークの端の間に第一マークが設けられている。同様に、第二コアにおける12時の位置のティースとヨークの端の間に第二マークが設けられている。12個のティースの突出高さの関係は次のようになっている。
・12時の位置のティース>1時及び11時の位置のティース>2時及び10時の位置のティース>3時及び9時の位置のティース>4時及び8時の位置のティース>5時及び7時の位置のティース>6時の位置のティース
【0061】
試料No.1では、第一マークと第二マークを回転軸に関して互いに対称な位置に配置した。つまり、第一コアの12時の位置の第一ティースと、第二コアの6時の位置の第二ティースとを対向させた。この構成では、最大のティース間距離Lと最小のティース間距離Lとの差が0.05mmであった。その他の要件は以下の通りである。
・ヨークの外径:56mm、ヨークの内径:20mm
・ティースの断面積:60mm
・コイルの巻数:43ターン
・全体高さhのバラツキ:0.14mm
・ヨークの厚さtのバラツキ:0.05mm
・ティースの突出高さhのバラツキ:0.09mm
・ティースとロータ面との平均距離:1.0mm
・ティースとロータ面との平均距離に占める全体高さhのバラツキの割合:14%
・ヨーク面とロータ面との平均距離に占めるヨーク厚さtのバラツキの割合:0.8%
・磁路長に占める全体高さhのバラツキの割合:0.2%
・ロータの回転数:2000rpm
・電流密度:2.33Arms
【0062】
(試料No.2)
試料No.2の回転電機は、試料No.1で使用した第一コアと第二コアとを使用したダブルステータタイプの回転電機である。但し、第一マークと第二マークを回転軸に関して同じ位置に配置した。つまり、第一コアの12時の位置にある第一ティースと、第二コアの12時の位置にある第二ティースとを対向させた。この構成はいわば、12時の位置から6時の位置に向って徐々にティース間距離とが大きくなる構成である。
【0063】
≪試験結果≫
試料No.1のトルクリプルの試験結果を図8に、コギングトルクの試験結果を図9に示す。図8,9の横軸は、ロータの回転角度(degree)、縦軸はトルク(N・m)である。図8に示されるように、試料No.1のトルクの平均値は0.23N・m、トルクリプルは、トルクの平均値に対して1.3%であった。また、図9に示されるように、試料No.1のコギングトルクの振幅は0.00095N・mであった。
【0064】
試料No.1のエネルギー効率を計算により求めた。その結果、試料No.1の電磁気的なエネルギー効率は66.2%、機械的な損失を含めたエネルギー効率は66.0%であった。エネルギー効率は、モータに投入した電力エネルギーに対して、モータから得られる動力エネルギーの割合である。
【0065】
一方、試料No.2のトルクリプルの試験結果を図10に、コギングトルクの試験結果を図11に示す。図10図11の見方は、図8図9と同じである。図10に示されるように、試料No.2のトルクの平均値は0.23N・m、トルクリプルは、トルクの平均値に対して2.7%であった。また、図11に示されるように、試料No.2のコギングトルクの振幅は0.022N・mであった。試料No.2の構成では、ロータの周方向の異なる位置にティース間距離が狭い箇所と広い箇所ができる。このような構成では、ロータの周方向の各所において各ティース対からもたらされるトルクのバラツキが大きくなる。
従って、試料No.2のトルクリプルとコギングトルクが大きくなると考えられる。
【0066】
試料No.2のエネルギー効率を計算により求めた。その結果、試料No.2の電磁気的なエネルギー効率は66.2%、機械的な損失を含めたエネルギー効率は59.3%であった。
【0067】
上記の結果から、各ティース対におけるティース間距離のバラツキを小さくすることで、回転電機において発生する騒音と振動が低減されることが分かった。また、各ティース対におけるティース間距離のバラツキを小さくすることで、回転電機のエネルギー効率が高められることが分かった。
【符号の説明】
【0068】
100 回転電機、101 ハウジング、1 第一ステータ、10 第一コア、11 第一コイル、15 第一マーク、2 第二ステータ、20 第二コア、21 第二コイル、25 第二マーク、3 ロータ、3A 第一ロータ面、3B 第二ロータ面、30 シャフト、31 保持板、32 磁石、 33 軸受、4 第一ヨーク、40 第一ヨーク面、5,51,52,53,54,55,56 第一ティース、6 第二ヨーク、60 第二ヨーク面、7,71,72,73,74,75,76 第二ティース、8 給粉機、8d 磁性粉末、8s、給粉軸線 80 給粉口、9 金型、90 ヨーク形成部、91,92,93,94,95,96 ティース形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ステータと第二ステータとロータとが、前記ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記第一ステータは、第一コイルと、前記第一コイルが配置される圧粉磁心で構成された第一コアとを備え、
前記第二ステータは、第二コイルと、前記第二コイルが配置される圧粉磁心で構成された第二コアとを備え、
前記第一コアは、
第一ヨーク面を有する円環状の第一ヨークと、
前記第一ヨーク面から突出する複数の第一ティースと、
前記第一ヨークの周方向の基準となる位置を示す第一マークとを備え、
前記第二コアは、
前記第一ヨーク面に対向する第二ヨーク面を有する円環状の第二ヨークと、
前記第二ヨーク面から突出する複数の第二ティースと、
前記第二ヨークの周方向の基準となる位置を示す第二マークとを備え、
前記第一ステータと前記第二ステータとは、前記第一ティースと前記第二ティースとが向かい合うように配置されており、
前記第一コアと前記第二コアとは、同一形状であり、
前記第一コアにおける前記第一マークの位置と、前記第二コアにおける前記第二マークの位置とは同一であり、
前記第一ヨークに、前記第一ヨークの軸方向から見て、前記第一ヨークの軸心を通る第一基準直線を仮想し、前記第二ヨークに、前記第二ヨークの軸方向から見て、前記第二ヨークの軸心を通る第二基準直線を仮想した場合、
前記第一基準直線は、前記第一コアにおける前記第一基準直線を挟んで線対称の位置にある一方のティースと他方のティースとの突出高さが揃うように仮想された直線であり、
前記第二基準直線は、前記第二コアにおける前記第二基準直線を挟んで線対称の位置にある一方のティースと他方のティースとの突出高さが揃うように仮想された直線であり、
前記ロータの前記回転軸の軸方向から見て、前記第一基準直線と前記第二基準直線とが一致している、
回転電機。
【請求項2】
前記第一コアにおける最も高さが高いティースと前記第二コアにおける最も高さが低いティースとが向かい合うように配置されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
記第一基準直線に関して互いに対称な位置にある複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面から複数の前記第一ティースの端面までの突出高さ差分が0.15mm以下であり、
前記第二基準直線に関して互いに対称な位置にある複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面から複数の前記第二ティースの端面までの突出高さの差分が0.15mm以下である請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記回転軸の軸方向に対向する位置にある前記第一ティースと前記第二ティースとで構成されるティース対を複数備え、
複数の前記ティース対それぞれにおける前記第一ティースの端面の面積重心から前記第二ティースの端面の面積重心に至る距離をティース間距離とし、最大の前記ティース間距離と最小の前記ティース間距離との差が0.08mm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第一コアにおける複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下であり、
前記第二コアにおける複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが0.05mm以上0.15mm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記第一ヨークの厚さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下であり、
前記第二ヨークの厚さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
複数の前記第一ティースの突出高さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下であり、
複数の前記第二ティースの突出高さのバラツキが0.03mm以上0.10mm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記ロータは、前記第一ティースの端面に対向する第一ロータ面と、前記第二ティースの端面に対向する第二ロータ面とを備え、
複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが、複数の前記第一ティースと前記第一ロータ面との距離の平均値の20%以下であり、
複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが、複数の前記第二ティースと前記第二ロータ面との距離の平均値の20%以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
前記ロータは、前記第一ティースの端面に対向する第一ロータ面と、前記第二ティースの端面に対向する第二ロータ面とを備え、
前記第一ヨークの厚さのバラツキが、前記第一ヨーク面と前記第一ロータ面との距離の平均値の2%以下であり、
前記第二ヨークの厚さのバラツキが、前記第二ヨーク面と前記第二ロータ面との距離の平均値の2%以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項10】
通電時に、前記第一コアと前記ロータと前記第二コアとを透過する環状磁路が形成され、
複数の前記第一ティースにおける前記第一ヨーク面の反対面から前記第一ティースの端面までの全体高さのバラツキが、前記環状磁路の磁路長の1%以下であり、
複数の前記第二ティースにおける前記第二ヨーク面の反対面から前記第二ティースの端面までの全体高さのバラツキが、前記環状磁路の磁路長の1%以下である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の回転電機。