(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138540
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】インフルエンザ治療薬の製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20241001BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241001BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241001BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/72
A61K47/26
A61K9/14
A61P31/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115824
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2021526323の分割
【原出願日】2019-11-13
(31)【優先権主張番号】62/760,121
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517333222
【氏名又は名称】コクリスタル ファーマ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】COCRYSTAL PHARMA,INC.
【住所又は居所原語表記】19805 North Creek Parkway,Bothell,WA 98011 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ティアンジン
(72)【発明者】
【氏名】マオ,リャン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブソン,イリーナ,シー.
(72)【発明者】
【氏名】リー,サム,エスケー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吸入による投与に適したインフルエンザを治療するための抗ウイルス治療薬の組成物を提供する。
【解決手段】3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸またはその薬学的に許容される塩を微粒子化した粒子と、充填剤の粒子と、を含む製剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤であって、
(a)化合物1またはその薬学的に許容される塩と、
(b)充填剤と、を含む製剤。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インフルエンザは季節的流行で世界中に広がり、その結果、毎年数十万人、パンデミックの年には数百万人が死亡する。例えば、20世紀には3つのインフルエンザパンデミックが発生し、数千万人が死亡し、これらのパンデミックはそれぞれ、ヒトでの新しいウイルス株の出現によって引き起こされている。しばしば、これらの新しい株は、既存のインフルエンザウイルスが他の動物種からヒトに広がったことに起因する。
【0002】
インフルエンザは主に、感染者が咳またはくしゃみをしたときに生じる大きなウイルスを含んだ液滴を介して人から人へと伝染される。次いで、これらの大きな液滴は、感染者の近くの(例えば、約6フィート以内の)感染を受けやすい個人の上気道粘膜表面に定着し得る。伝染は、インフルエンザウイルスで汚染された表面に触れ、次いで目、鼻、または口に触れるなど、気道分泌物との直接的な接触または間接的な接触によっても発生し得る。成人は、症状が出る1日前から症状が始まってから約5日後までにインフルエンザを他人に広めることが可能となり得る。小児および免疫系が弱っている人は、症状の発症後10日以上感染し得る。
【0003】
インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、イサウイルス、およびトゴトウイルスの5つの属を含む、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のRNAウイルスである。
【0004】
A型インフルエンザウイルス属は、季節性インフルエンザおよびパンデミックなインフルエンザ流行の原因である。A型インフルエンザウイルス属は、A型インフルエンザウイルスという1つの種を有しており、野生の水鳥は非常に様々なA型インフルエンザの自然宿主である。時には、ウイルスは他の種に伝染し、次いで家禽において壊滅的発生を引き起こし得、またはヒトインフルエンザパンデミックを引き起こし得る。A型ウイルスは、3つのインフルエンザ型の中で最も伝染性の高いヒト病原体であり、最も重篤な疾患を引き起こす。A型インフルエンザウイルスは、これらのウイルスに対する抗体応答に基づいて様々な血清型に細分化され得る。ヒトで確認されている血清型は、既知のヒト汎流行死者数によって順番が付けられ、H1N1(1918年にスペイン風邪(Spanish influenza)を引き起こした)、H2N2(1957年にアジア風邪(Asian Influenza)を引き起こした)、H3N2(1968年に香港風邪(Hong Kong Flu)を引き起こした)、H5N1(2007~2008年のインフルエンザ流行期における汎流行の脅威)、H7N7(潜在的な汎流行の脅威)、H1N2(ヒトおよびブタにおける風土病)、H9N2、H7N2、H7N3、およびH10N7である。
【0005】
B型インフルエンザウイルス属は、季節性インフルエンザの原因であり、B型インフルエンザウイルスという1つの種を有する。B型インフルエンザはほぼ例外なくヒトに感染し、A型インフルエンザよりも一般的ではない。B型インフルエンザ感染を受けやすいことが既知である他の動物はアザラシのみである。この型のインフルエンザは、A型より2~3倍遅い速度で変異し、その結果、遺伝的な多様性が低く、B型インフルエンザ血清型は1つだけである。抗原多様性の欠如の結果として、B型インフルエンザに対するある程度の免疫は、通常、幼時期に獲得される。しかしながら、B型インフルエンザは、持続的な免疫が不可能になるほど十分に変異する。その宿主範囲が限定されていること(これは種間抗原シフトを妨げる)と組み合わせて、この低い抗原変化率により、B型インフルエンザのパンデミックが発生しないことが確保される。
【0006】
C型インフルエンザウイルス属は、C型インフルエンザウイルスという1つの種を有し、これはヒトおよびブタに感染し、重篤な病気および局所的な流行を引き起こし得る。しかしながら、C型インフルエンザは他の型よりも一般的ではなく、通常、小児において軽度の疾患を引き起こすものと思われる。
【0007】
インフルエンザウイルスは、血清型および属にわたって構造が非常に類似している。インフルエンザウイルスゲノムは、リボ核タンパク質複合体(RNP)として既知である、様々なサイズの棒状構造にパッケージングされた8つの一本鎖RNAからなる。各RNPは、固有のウイルスRNA、足場核タンパク質の複数コピー、ならびにウイルスゲノムの転写および複製を触媒するPA、PB1、およびPB2サブユニットからなるヘテロ三量体ウイルスポリメラーゼを含む。インフルエンザポリメラーゼ複合体の最近の生化学的および構造的研究は、インフルエンザポリメラーゼによるキャップスナッチング(cap-snatching)およびRNA合成の機構の理解についての洞察を提供している。簡単に述べると、PB2キャップ結合ドメインは、最初に、5’キャップに結合することによって宿主のプレ-mRNAを隔離する。次いで、エンドヌクレアーゼサブユニットであるPAが、キャップ下流にある捕捉されたプレ-mRNAの10~13個のヌクレオチドを切断する。その後、PB2サブユニットは約70°回転して、キャップ付プライマーをPB1ポリメラーゼの活性部位に向ける。PB1サブユニットは、PB2およびPAサブユニットの両方と直接相互作用する。これらのサブユニットは、様々なインフルエンザ株間で高度に保存されたドメインを含み、可能性のある抗インフルエンザ薬の標的として注目を集めている。ポリメラーゼ複合体に加えて、インフルエンザゲノムは、その独自のノイラミニダーゼ(NA)、ヘマグルチニン(HA)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質M1およびM2、ならびに非構造タンパク質NS1およびNS2をコードする。NAは、抗ウイルス薬のオセルタミビル(Tamiflu(登録商標))とザナミビル(Relenza(登録商標))の標的である。これらの薬物は、NAの酵素活性を阻害し、したがって感染細胞からの子孫ウイルスの放出を遅延させる、シアル酸類似体である。
【0008】
インフルエンザにより、生産性の低下およびそれに伴う医学的処置に起因する直接的な費用、ならびに予防手段の間接的な費用が生じる。米国では、インフルエンザは年間100億ドル超の総費用の原因となっているが、将来のパンデミックにより直接および間接的な費用が数千億ドルになり得ると推定されている。予防の費用も高い。世界中の政府は、潜在的なH5N1鳥インフルエンザパンデミックについての準備および計画に数十億ドルを費やしており、薬およびワクチンの購入、ならびに災害訓練および国境管理の改善のための戦略の進展に関連する費用を伴う。
【0009】
インフルエンザについての現在の処置の選択肢には、ワクチン接種、および抗ウイルス医薬による化学療法または化学予防が含まれる。インフルエンザワクチンを用いたインフルエンザに対するワクチン接種はしばしば、小児および高齢者などのリスクの高い群、または喘息、糖尿病、もしくは心臓疾患を有する人に対して推奨される。しかしながら、ワクチン接種を受けてもまだインフルエンザに感染する可能性がある。ワクチンは、いくつかの特定のインフルエンザ株について各流行期に再び製剤化されるが、その流行期において世界中の人々に活発に感染しているすべての株を含めることはできない。季節的流行に対処するために必要となる数百万の用量を製剤化および製造するのに、製造業者が約6ヶ月かかる。時には、新しいまたは見過ごされていた株がその期間中に顕著になり、ワクチン接種を受けたにもかかわらず人々に感染する(2003~2004年のインフルエンザ流行期におけるH3N2福建省インフルエンザによるものなど)。ワクチンは効果が発揮されるまでに約2週間かかるので、ワクチン接種の直前に感染し、ワクチンによって予防されるはずのまさにその株によって病気になる可能性もある。
【0010】
さらに、これらのインフルエンザワクチンの有効性は変動的である。ウイルスの変異率が高いために、特定のインフルエンザワクチンによっては、通常、数年しか防御されない。インフルエンザウイルスは時間とともに急速に変化し、異なる株が優勢になるので、ある年について製剤化されたワクチンは翌年には有効ではなくなり得る。
【0011】
RNA校正酵素が存在しないために、インフルエンザvRNAのRNA依存RNAポリメラーゼは、インフルエンザvRNAのおおよその長さである約1万個のヌクレオチドごとに1つのヌクレオチド挿入エラーを生じる。したがって、新しく作り出されるすべてのインフルエンザウイルスは、変異抗原ドリフト(mutant-antigenic drift)である。ゲノムをvRNAの8つの別々のセグメントに分離することにより、2つ以上のウイルス系統が単一の細胞に感染した場合にはvRNAを混合または再分類することが可能となる。結果として生じるウイルス遺伝の急速な変化により、抗原シフトが生じ、ウイルスが新しい宿主種に感染し、防御免疫を迅速に克服することが可能となる。
【0012】
抗ウイルス薬はインフルエンザの処置にも使用でき、NA阻害剤が特に有効であるが、ウイルスは承認されたNA抗ウイルス薬に対する耐性を発現し得る。多剤耐性パンデミックA型インフルエンザウイルスが出現することも十分に実証されている。薬剤耐性パンデミックA型インフルエンザは、公衆衛生上の大きな脅威になる。薬剤耐性A型インフルエンザウイルスに加えて、NA阻害剤は、早期の(インフルエンザ症状発症から48時間以内の)インフルエンザ感染の処置用に承認されている。
【0013】
したがって、肺送達を介して投与することができるインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤の製剤が必要である。
【発明の概要】
【0014】
本明細書では、化合物1および充填剤の製剤が提供される。ある場合には、製剤は、(a)化合物1またはその薬学的に許容される塩、および(b)充填剤を含む。様々な場合において、製剤は、本質的に(a)化合物1またはその薬学的に許容される塩、および(b)充填剤からなる。様々な場合において、製剤は、(a)化合物1またはその薬学的に許容される塩と、(b)本質的にラクトース一水和物からなる充填剤とを含む吸入投与用の粉末製剤であり、製剤は、1~2μmの体積平均直径(VMD)、0.5μm~0.7μmのD10、1μm~1.4μmのD50、および2.5μm~2.8μmのD90を特徴とする粒度分布を有する。ある場合には、VMDは、1.5μmであり、D10が0.6μm、D50が1.3μm、およびD90が2.8μmである。
【0015】
様々な実施形態において、充填剤は、ラクトースを含み、より具体的には、ラクトース一水和物を含む。ある場合には、充填剤は、微粒子化される。充填剤は、0.5μm~10μmの体積平均直径(VMD)を有し得る。ある場合には、充填剤は、1.5~5μmのVMDを有する。
【0016】
様々な実施形態において、化合物1またはその塩は、微粒子化される。化合物1は、(結晶形で)結晶化することができ、ある場合には、微粒子化結晶として存在する。ある場合には、化合物1の結晶形は、B型であり、5.6±0.2°、6.8±0.2°、8.4±0.2°、10.1±0.2°、10.6±0.2°、11.3±0.2°、15.1±0.2°、15.8±0.2°、18.0±0.2°、18.5±0.2°、19.1±0.2°、20.4±0.2°、および20.9±0.2°の2θ値を示すX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。様々な場合において、化合物1(例えば、B型として)は、280℃~283℃の融点を有する。様々な場合において、化合物1は、A型またはC型としてあり得る。
【0017】
化合物1またはその塩は、0.5μm~10μmの体積平均直径(VMD)を有し得る。ある場合には、化合物1のVMDは、1.5~5μmである。本明細書に開示の製剤は、化合物1またはその塩対充填剤の重量比が1:3~1:5であり得る。ある場合には、重量比は1:4である。
【0018】
本明細書に開示の製剤は、吸入製剤として適合可能であり得る。製剤は、化合物1またはその塩を、吸入を介して対象に送達するための製剤として企図されている。本明細書に開示の製剤は、吸入による投与時に、吸入の1時間後の血漿中薬物濃度の少なくとも50倍である肺中薬物濃度を提供することができる。様々な場合において、肺中薬物濃度は、吸入の1時間後の血漿中薬物濃度の少なくとも100倍である。様々な場合において、肺中薬物濃度は、吸入の24時間後の血漿中薬物濃度の少なくとも50倍である。様々な場合において、肺中薬物濃度は、吸入の24時間後の血漿中薬物濃度の少なくとも100倍である。様々な場合において、肺中薬物濃度は、吸入の48時間後の血漿中薬物濃度の少なくとも50倍である。様々な場合において、肺中薬物濃度は、吸入の48時間後の血漿中薬物濃度の少なくとも100倍である。
【0019】
本明細書では、インフルエンザウイルスの感染または複製の治療または予防を必要とする対象にインフルエンザウイルスの感染または複製を治療または予防する方法をさらに提供し、この方法は、本明細書に開示の製剤を対象に投与することを含む。
【0020】
(a)化合物1またはその塩を微粒子化して化合物1の粒子を形成すること、(b)任意選択で、充填剤を微粒子化して充填剤の粒子を形成すること、(c)微粒子化された化合物1またはその塩と、任意選択で微粒子化された充填剤とを混ぜ合わせて、製剤を形成することにより、本明細書に開示の製剤を作製する方法も提供される。様々な場合において、化合物1もしくはその塩または充填剤の微粒子化は、手動粉砕またはジェットミルを介して行われる。
【0021】
様々な場合において、この方法は、微粒子化の前に化合物1またはその塩を結晶化することをさらに含み得る。ある場合には、結晶化は、化合物1またはその塩とエタノールとを少なくとも50℃の温度で混合すること、室温に冷却して化合物1またはその塩の結晶化を可能にすること、濾過により結晶を収集すること、任意選択で微粒子化する前に結晶を乾燥させることを含む。混合物の温度は75℃にすることができる。ある場合には、混合は4~10時間の間に生じる。
【0022】
本明細書では、化合物1の結晶形がさらに提供される。ある場合には、化合物1はB型であり、結晶は、5.6±0.2°、6.8±0.2°、8.4±0.2°、10.1±0.2°、10.6±0.2°、11.3±0.2°、15.1±0.2°、15.8±0.2°、18.0±0.2°、18.5±0.2°、19.1±0.2°、20.4±0.2°、および20.9±0.2°の2θ値を有するX線粉末回折(XRPD)パターンを示し得る。ある場合には、B型は、
図1に実質的に示すXRPDを有する。様々な場合において、B型の融点は280℃~283℃である。ある場合には、化合物1はC型であり、結晶は、
図3(中央のスペクトル)に示すXRPDパターンを実質的に示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】結晶性化合物1のB型としてのXRPD(X線粉末回折)パターンを示す。
【
図2】結晶性化合物1のB型としてのDSC(示差走査熱量測定)サーモグラムを示す。
【
図3】結晶性化合物1のXRPDパターンをC型(中央のスペクトル)として示す。
【
図4】(上から下へ)C型、C型、B型、B型、およびA型について、スラリー法によって形成された結晶性化合物1のXRPDパターンの比較を示す。
【
図5】(上から下へ)C型、E型、A型について、貧溶媒法で形成された結晶性化合物1のXRPDパターンの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書では、抗インフルエンザ化合物の組成物、およびインフルエンザウイルス活性の阻害におけるこれらの組成物の使用を開示する。いくつかの態様において、本開示は、一般に、生物試料または患者におけるインフルエンザウイルスの複製を阻害するため、生物試料または患者におけるインフルエンザウイルスの量を減少させる(ウイルス力価を減少させる)ため、および患者におけるインフルエンザを治療または予防するための本明細書に記載の組成物の使用に関する。本明細書に開示の組成物は、例えば、吸入を介して、対象、患者、または宿主への肺投与のためのものであり得る。
【0025】
本明細書に開示の組成物は、インフルエンザウイルス感染に対する治療として有用である。したがって、いくつかの態様において、ヒト患者におけるインフルエンザウイルス感染または複製の治療または予防のために、本明細書に開示の治療有効量の組成物の使用が提供される。例えば、インフルエンザウイルスは、パンデミックまたは薬剤耐性のパンデミック/季節性インフルエンザウイルスであり得る。
【0026】
様々な場合において、インフルエンザウイルスを本明細書に開示の組成物と接触させることを含む、インフルエンザAまたはBウイルスにおけるインフルエンザポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を阻害する方法が提供される。ある場合には、本明細書に開示の治療量の組成物を宿主に投与することを含む、宿主におけるインフルエンザAまたはインフルエンザB感染を治療または予防するための方法が提供される。様々な場合において、本明細書に開示の治療量の組成物を宿主に投与することを含む、宿主におけるインフルエンザAまたはBウイルスにおけるインフルエンザポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を低下させるための方法が提供される。ある場合には、本明細書に開示の治療量の組成物を宿主に投与することを含む、宿主におけるインフルエンザウイルス複製を減少させるための方法が提供される。
【0027】
化合物1
本明細書に開示の組成物は、とりわけ、3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸を含み、代わりに本明細書では「化合物1」と呼ばれる。化合物1の活性部分は、CAP結合PB2ドメイン阻害剤であると考えられる。
【0028】
化合物1は、遊離形態で、または適切な場合には塩として存在し得る。薬学的に許容されるそれらの塩は、医療目的用の記載される組み合わせの成分である化合物を投与するのに有用であるので、特に興味深い。薬学的に許容されない塩は、単離および精製目的のための製造プロセスにおいて有用であり、いくつかの場合では、本明細書に記載の化合物またはその中間体の立体異性体の分離での使用に有用である。
【0029】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」との用語は、毒性、刺激、アレルギー反応などの過度の副作用なしに、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび下等動物の組織との接触での使用に好適であり、合理的な利益/リスク比に見合った、化合物の塩を指す。
【0030】
薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知されている。例えば、S.M.Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19において、薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩には、好適な無機および有機の酸および塩基に由来するものが含まれる。これらの塩は、化合物の最終単離および精製中にインサイチュで調製することができる。
【0031】
本明細書に記載の化合物が塩基性基または十分に塩基性の生物学的等価体(bioisostere)を含む場合、1)遊離塩基形態の精製化合物を好適な有機酸または無機酸と反応させ、2)そのようにして形成された塩を単離することにより、酸付加塩を調製することができる。実際には、酸付加塩が、使用のためにより好都合な形態である場合があり、塩の使用は遊離塩基形態の使用に等しい。
【0032】
薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸で形成される、あるいはイオン交換などの当該技術分野で使用される他の方法を使用することによって形成される、アミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、樟脳スルホン酸塩(camphorsulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(pamoate)、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。
【0033】
本明細書に記載の化合物がカルボン酸基または十分に酸性の生物学的等価体を含む場合、1)酸形態の精製化合物を好適な有機塩基または無機塩基と反応させ、2)そのようにして形成された塩を単離することにより、塩基付加塩を調製することができる。実際には、塩基付加塩の使用がより好都合である場合があり、塩形態の使用は遊離酸形態の使用と本質的に等しい。適切な塩基に由来する塩には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、リチウム、およびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、アンモニウム、およびN+(C1-4アルキル)4塩が含まれる。本開示はまた、本明細書に開示の化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も企図している。水溶性もしくは油溶性または分散性産生物は、かかる四級化によって得られ得る。
【0034】
塩基性付加塩には、薬学的に許容される金属塩およびアミン塩が含まれる。好適な金属塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウムが含まれる。ナトリウムおよびカリウムの塩が通常は好ましい。さらなる薬学的に許容される塩には、適切な場合、非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、および対イオンを使用して形成されるアミンカチオン、例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などが含まれる。好適な無機塩基付加塩は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などを含む金属塩基から調製される。好適なアミン塩基付加塩は、低毒性および医療用途に対する許容性のために、医薬品化学で頻繁に使用されるアミンから調製される。アンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N、N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェンアミン(ephenamine)、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸、ジシクロヘキシルアミンなど。
【0035】
他の酸および塩基は、それ自体は薬学的に許容されないが、本明細書に記載の化合物およびその薬学的に許容される酸または塩基付加塩を得るときの中間体として有用な塩の調製に使用され得る。
【0036】
組み合わせの成分は、溶媒和物の形で存在することができる。「溶媒和物」という用語は、化合物(その塩を含む)の、1つ以上の溶媒分子との分子複合体を指す。そのような溶媒分子は、レシピエントに無害であることが知られている製薬分野で一般的に使用されるもの、例えば、水、エタノール、ジメチルスルホキシド、アセトンおよび他の一般的な有機溶媒である。「水和物」という用語は、化合物および水を含む分子複合体を指す。
【0037】
化合物1、もしくはその塩または溶媒和物は、本明細書に開示の組成物で使用するために微粒子化することができる。微粒子化とは、15μm未満の粒子を有する固形を指す。様々な場合において、化合物1、またはその塩または溶媒和物は、0.5μm~10μm、例えば、1μm~10μm、2μm~10μm、3μm~10μm、4μm~10μm、5μm~10μm、6μm~10μm、1μm~7μm、2μm~7μm、3μm~7μm、2μm~6μm、2μm~5μm、3μm~7μm、または3μm~6μmの粒子として存在し得る。
【0038】
化合物1、もしくはその塩または溶媒和物は、任意の既知の技術を使用して微粒子化することができる。ある場合には、微粒子化はジェットミルまたは手動粉砕による。
【0039】
化合物1は、開示の組成物中に結晶形として存在し得る。
【0040】
B型:様々な場合において、結晶形は、実施例に記載のように得られ、Cu-Kα放射を使用して約5.6±0.2°、6.8±0.2°、8.4±0.2°、10.1±0.2°、10.6±0.2°、11.3±0.2°、15.1±0.2°、15.8±0.2°、18.0±0.2°、18.5±0.2°、19.1±0.2°、20.4±0.2°、および20.9±0.2°に2θピークを有する、X線粉末回折パターンによって特徴付けることができ、「B型」と称する。いくつかの実施形態において、結晶性化合物1は、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンによって特徴付けることができ、「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。スペクトルの相対的なピーク高さは、試料調製および機器の形状などのいくつかの要因に依存するが、ピーク位置は実験の詳細に比較的影響を受けないことは、XRPDの分野では周知である。
【0041】
ある場合には、結晶性化合物1は、たとえば
図2に実質的に示すように、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けることができる。ある場合には、結晶性化合物1は、280℃~283℃、または約282℃の融解温度を有する。
【0042】
A型:様々な場合において、結晶形は、実施例に記載のように得られ、実質的に
図4に示すような2θピークを有する、X線粉末回折パターンによって特徴付けることができ、「A型」と称する。「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。スペクトルの相対的なピーク高さは、試料調製および機器の形状などのいくつかの要因に依存するが、ピーク位置は実験の詳細に比較的影響を受けないことは、XRPDの分野では周知である。
【0043】
C型:様々な場合において、結晶形は、実施例に記載のように得られ、実質的に
図3(中央のスペクトル)に示すような2θピークを有する、X線粉末回折パターンによって特徴付けることができ、「C型」と称する。「実質的に」とは、報告されたピークが約±0.2°変動し得ることを意味する。スペクトルの相対的なピーク高さは、試料調製および機器の形状などいくつかの要因に依存するが、ピーク位置は実験の詳細に比較的影響を受けないことは、XRPDの分野では周知である。
【0044】
以下の実施例のセクションで説明するように、化合物1は、D型またはE型としても存在し得る。
【0045】
充填剤
本明細書に開示の組成物は、充填剤を含む。充填剤としては、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、ラクトース(ラクトース一水和物を含む)、トレハロース、スクロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、デンプン、およびステアリン酸マグネシウムまたは亜鉛を挙げることができる。ある場合には、充填剤は、ラクトース、グルコース、およびデンプングリコール酸ナトリウムのうちの1つまたは複数である。ある場合には、充填剤はラクトース、例えばラクトース一水和物を含む。ある場合には、充填剤は、Inhalac(登録商標)、例えば、Inhalac(登録商標)400などの結晶性ラクトース一水和物である。
【0046】
充填剤は、本明細書に開示の組成物で使用するために微粒子化することができる。微粒子化とは、15μm未満の粒子を有する固形を指す。様々な場合において、充填剤は、0.5μm~10μm、例えば、1μm~10μm、2μm~10μm、3μm~10μm、4μm~10μm、5μm~10μm、6μm~10μm、1μm~7μm、2μm~7μm、3μm~7μm、2μm~6μm、2μm~5μm、3μm~7μm、または3μm~6μmの粒子として存在し得る。
【0047】
充填剤は、任意の既知の技術を使用して微粒子化することができる。ある場合には、微粒子化はジェットミルまたは手動粉砕による。
【0048】
様々な場合において、本明細書に開示の組成物は、化合物1および充填剤を1:3~1:5の重量比で含む。様々な場合において、重量比は約1:4である。
【0049】
肺投与およびデバイス
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、吸入により気道を介して下気道(例えば、肺)に直接投与されるように適合される。吸入による投与用の組成物は、吸入可能な粉末であり得、粉末吸入器デバイスを使用して投与され得る。そのようなデバイスは周知である。
【0050】
吸入可能な組成物は、単位用量または複数回用量送達用にパッケージ化され得る。たとえば、組成物は、GB2242134、米国特許第6,632,666号、同第5,860,419号、同第5,873,360号、および同第5,590,645号(すべて「Diskus」デバイスを示す)、またはGB2178965、GB2129691、GB2169265、米国特許第4,778,054号、同第4,811,731号、および同第5,035,237号(「Diskhaler」デバイスを示す)、またはEP69715(「Turbuhaler」デバイス)、またはGB2064336、および米国特許第4,353,656号(「Rotahaler」デバイス)に記載の方法と同様の方法で、複数回用量送達用にパッケージ化することができる。複数回用量は、リザーバーに保存されてもよく、または複数の個別にパッケージ化された用量は、例えば、ブリスターまたはカプセルに保存されてもよい。適切なデバイスの例としては、TURBUHALER(Astra Zeneca)、CLICKHALER(Innovata Biomed)、EASYHALER(Orion)、ACCUHALER、DISKUS、DISKHALER、ROTAHALER(GlaxoSmithKline)、HANDIHALER、INHALATOR、AEROHALER(Boehringer Ingelheim)、AEROLIZER(Schering Plough)、およびNOVOLIZER(ASTA Medica)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
例えば、吸入を介しての投与時に、本明細書に開示の組成物は、血漿中の曝露と比較して、肺における高レベルの薬物曝露を示す。これらの高い薬物曝露レベルは、いくつかの理由で有用である。第1に、肺投与は、感染点への治療薬の迅速な送達を提供する。第2に、血漿曝露を最小限に抑えながら肺で治療薬を維持することにより、最小限の治療薬が感染点から離れて移動するため、全身性の有害事象を減らすことができる。第3に、肺への曝露を集中させることにより、感染点(例えば、肺)での治療的有用性を最大化することができる。
【0052】
ある場合には、本明細書に開示の組成物の吸入による投与は、1時間後の血漿中の曝露よりも50倍大きい、化合物1への肺における曝露を提供する。様々な場合において、1時間後の曝露は、血漿中よりも肺において60倍、もしくは70倍、もしくは80倍、もしくは90倍、もしくは100倍、もしくは125倍、もしくは150倍大きい。
【0053】
ある場合には、本明細書に開示の組成物の吸入による投与は、24時間後の血漿中の曝露よりも50倍大きい化合物1への肺における曝露をもたらす。様々な場合において、24時間後の曝露は、血漿中よりも肺において60倍、もしくは70倍、もしくは80倍、もしくは90倍、もしくは100倍、もしくは125倍、もしくは150倍大きい。
【0054】
ある場合には、本明細書に開示の組成物の吸入による投与は、48時間後の血漿中での曝露よりも50倍大きい化合物1への肺での曝露をもたらす。様々な場合において、48時間後の曝露は、血漿中よりも肺において60倍、もしくは70倍、もしくは80倍、もしくは90倍、もしくは100倍、もしくは125倍、もしくは150倍大きい。
【0055】
様々な場合において、吸入による投与後4日後でも、肺での化合物1の曝露は、血漿での曝露よりも少なくとも100倍大きい。
【0056】
使用方法
本明細書に記載の組成物は、生物試料(例えば、感染細胞培養物)またはヒト(例えば、患者の肺ウイルス力価)におけるウイルス力価を低下させるために使用することができる。
【0057】
本明細書で使用される「インフルエンザウイルス媒介状態」、「インフルエンザ感染」、または「インフルエンザ」という用語は、インフルエンザウイルスによる感染によって引き起こされる疾患を意味するために交換可能に使用される。
【0058】
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる鳥類および哺乳類に罹患する感染である。インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、イサウイルス、およびトゴトウイルスの5つの属を含む、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のRNAウイルスである。A型インフルエンザウイルス属は、A型インフルエンザウイルスという1つの種を有し、これは、これらのウイルスに対する抗体応答に基づいて、異なる血清型:H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3H7N9、およびH10N7に分類し得る。B型インフルエンザウイルス属は、B型インフルエンザウイルスという1つの種を有する。B型インフルエンザは、ほぼ例外なくヒトに感染し、A型インフルエンザよりも一般的ではない。C型インフルエンザウイルス属は、C型インフルエンザウイルスウイルス(influenza virus C virus)という1つの種を有し、これはヒトおよびブタに感染し、重篤な病気および局所的流行を引き起こし得る。しかし、C型インフルエンザは他の型よりも一般的ではなく、通常、小児において軽度の疾患を引き起こすものと思われる。
【0059】
いくつかの実施形態において、インフルエンザまたはインフルエンザウイルスは、A型またはB型インフルエンザウイルスに関連している。いくつかの実施形態において、インフルエンザまたはインフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスに関連している。いくつかの特定の実施形態において、A型インフルエンザウイルスは、H1N1、H2N2、H3N2、H7N9、またはH5N1である。いくつかの実施形態において、開示された組み合わせは、パンデミックまたは薬剤耐性のパンデミック/季節性インフルエンザウイルスの増殖または複製を阻害するのに有効である。
【0060】
ヒトでは、インフルエンザの一般的な症状は、悪寒、発熱、咽頭炎、筋肉痛、激しい頭痛、咳、衰弱、一般的な不快感である。より深刻な場合では、インフルエンザは肺炎を引き起こし、これは特に小児および高齢者では致命的となり得る。インフルエンザはしばしば風邪と混同されるが、インフルエンザははるかに重篤な疾患であり、異なる型のウイルスによって引き起こされる。インフルエンザは、特に子供において悪心および嘔吐を生じさせ得るが、これらの症状は、「胃のインフルエンザ(stomach flu)」または「24時間インフルエンザ」と呼ばれることもある関連のない胃腸炎により特徴的である。
【0061】
インフルエンザの症状は、感染後1~2日で非常に突然に発生することができる。通常、最初の症状は悪寒または肌寒い感覚であるが、発熱も感染初期には一般的であり、体温は38~39℃(約100~103°F)の範囲である。多くの人々は非常に具合が悪くなるので、体全体に痛みおよび疼痛を伴って数日間寝たきりになり、これにより背中および脚が悪化する。インフルエンザの症状には、体の痛み、特に関節および喉、極度の寒さおよび発熱、疲労感、頭痛、炎症を起こした目、赤くなった目、皮膚(特に顔)、口、喉および鼻、腹痛(B型インフルエンザを有する子供で)が含まれ得る。インフルエンザの症状は非特異的であり、多くの病原体と重複する(「インフルエンザ様疾患)。通常、診断を確認するには実験室のデータ(laboratory data)が必要である。
【0062】
「疾患」、「障害」、および「状態」という用語は、ここでは交換可能に使用され得、インフルエンザウイルス媒介性の医学的または病的状態を指す。
【0063】
「対象」、「宿主」および「患者」という用語は交換可能に使用される。「対象」、「宿主」および「患者」という用語は、動物(例えば、ニワトリ、ウズラ、もしくはシチメンチョウなどの鳥類、もしくは哺乳類)、具体的には、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌ、もしくはマウス)、または霊長類(例えば、サル、チンパンジー、もしくはヒト)などの哺乳類、より具体的にはヒトを指し得る。いくつかの実施形態において、対象は、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、もしくはヒツジ)またはペット(例えば、イヌ、ネコ、モルモット、もしくはウサギ)などの非ヒト動物である。好ましい実施形態において、対象は「ヒト」である。
【0064】
本明細書で使用される「生体試料」という用語には、限定されないが、細胞培養物またはその抽出物;哺乳類またはその抽出物から得られた生検材料;血液、唾液、尿、糞便、精液、涙、または他の体液もしくはその抽出物が含まれる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「インフルエンザウイルスの複製の阻害」という用語は、ウイルス複製の量の減少(例えば、少なくとも10%の減少)からウイルス複製の完全な停止(すなわち、ウイルス複製の量における100%減少)までの両方を含む。いくつかの実施形態において、インフルエンザウイルスの複製は、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%阻害される。
【0066】
インフルエンザウイルスの複製は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法によって測定することができる。例えば、生体試料(例えば、感染細胞培養物)またはヒト(例えば、患者における肺のウイルス力価)におけるインフルエンザウイルス力価を測定することができる。より具体的には、細胞ベースのアッセイについて、それぞれの場合で、細胞をインビトロで培養し、試験薬剤の存在下または非存在下でウイルスを培養物に添加し、好適な長さの時間後にウイルス依存性評価項目を評価する。典型的なアッセイでは、Madin-Darbyイヌ腎細胞(MDCK)および標準的な組織培養物に適合したインフルエンザ株A/Puerto Rico/8/34を使用することができる。本開示で使用することができる第1のタイプの細胞アッセイは、細胞変性効果(CPE)と呼ばれるプロセスである、感染標的細胞の死に依存し、ウイルス感染は、細胞供給源の枯渇および最終的な細胞溶解を引き起こす。第1のタイプの細胞アッセイでは、マイクロタイタープレートのウェル中の低い割合(通常1/10~1/1000)の細胞が感染し、ウイルスは48~72時間にわたって数回の複製を行うことが可能となり、次いで、細胞死の量は、感染していない対象と比較した細胞ATP含有量の減少を用いて測定される。本開示で使用することができる第2のタイプの細胞アッセイは、感染細胞におけるウイルス特異的RNA分子の増殖に依存し、RNAレベルは、分枝鎖DNAハイブリダイゼーション法(bDNA)を使用して直接測定される。第2のタイプの細胞アッセイでは、最初に少数の細胞をマイクロタイタープレートのウェル中で感染させ、ウイルスを感染細胞中で複製し、さらに細胞の追加のラウンドに広げ、次いで細胞を溶解し、ウイルスRNA含有量を測定する。このアッセイは、早期に、通常は18~36時間後に停止するが、すべての標的細胞はいまだ生存している。ウイルスRNAは、アッセイプレートのウェルに固定された特定のオリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーション、次いで、レポーター酵素に結合された追加のプローブとのハイブリダイゼーションによるシグナルの増幅によって定量化される。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ウイルス力価」または「力価」は、ウイルス濃度の尺度である。力価試験は、連続希釈を使用して、本質的に正または負としてのみ評価される分析手順からおおよその定量情報を取得し得る。力価は、なおも正の読み取り値をもたらす最高希釈係数に対応する。例えば、最初の8つの連続2倍希釈での正の読み取り値は1:256の力価に変換される。具体例は、ウイルス力価である。力価を決定するために、いくつかの希釈物を、例えば10-1、10-2、10-3、...、10-8などに調製することになる。依然として細胞に感染するウイルスの最低濃度がウイルス力価である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、および「処置する(treating)」という用語は、治療的(therapeutic)処置および予防的処置の両方を指す。例えば、治療的処置には、1つ以上の療法(例えば、本明細書に記載の化合物または組成物などの1つ以上の治療剤)の投与によって生じる、インフルエンザウイルスが媒介する状態の進行、重症度、および/もしくは持続期間の減少もしくは改善、またはインフルエンザウイルスが媒介する状態の1つ以上の症状(具体的には、1つ以上の認識可能な症状)の改善が含まれる。特定の実施形態において、治療的処置には、インフルエンザウイルスが媒介する状態の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善が含まれる。他の実施形態において、治療的処置には、例えば、認識可能な症状の安定化によって物理的に、例えば物理的パラメータの安定化によって生理学的に、またはその両方で、インフルエンザウイルスが媒介する状態の進行を阻害することが含まれる。他の実施形態において、治療的処置には、インフルエンザウイルスが媒介する感染の減少または安定化が含まれる。抗ウイルス薬は、症状の重症度を軽減し、人々が病気にかかっている日数を減らすために、すでにインフルエンザを有する人々を処置するために、共同体環境で使用することができる。
【0069】
本明細書で使用される「予防(prophylaxis)」、「予防的(prophylactic)」、「予防的使用」および「予防的処置」という用語は、疾患を処置または治癒するのではなく予防する(prevent)ことを目的とする任意の医学的または公衆衛生手順を指す。本明細書で使用する場合、「予防する(prevent)」、「予防(prevention)」、および「予防する(preventing)」という用語は、病気ではないが疾患を有している人の近くにあり得るか、またはその人の近くにいたことがある対象における、所与の状態を獲得もしくは発症するリスクの減少または上記状態の軽減もしくは再発の阻害を指す。「化学的予防」という用語は、障害または疾患の予防のためのワクチンではなく、医薬、例えば低分子薬物の使用を指す。
【0070】
予防的使用には、重篤なインフルエンザ合併症のリスクが高い多くの人々が互いに密接して住んでいる場所(例えば、病棟、デイケアセンター、刑務所、養護施設など)での感染の伝染または拡散を防ぐために、発生が検出された状況での使用が含まれる。予防的使用はまた、インフルエンザからの保護を必要とするがワクチン接種後に保護が得られない集団(例えば、免疫系が弱いことなどによる)、ワクチンがその集団に利用可能でない集団、または副作用のためにワクチンを受けることできない集団内での使用も含まれる。ワクチン接種後2週間、またはワクチン接種後であるがワクチンが有効である前の任意の期間の使用も含まれる。予防的使用には、インフルエンザを有するが病気ではない人または合併症のリスクが高いと考えられていない人を処置して、インフルエンザに感染し、彼らに密接に接触するリスクの高い人(例えば、医療従事者、養護施設の労働者など)にインフルエンザを移す機会を減少させることも含まれ得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、かつthe United States Centers for Disease Control and Prevention(US CDC)の用法と一致して、インフルエンザの「発生(outbreak)」は、通常のバックグラウンド率(background rate)を超えて、または集団の任意の対象が、インフルエンザについて試験が陽性であると分析されるときに、互いに近接している人々の群(例えば、介護施設の同じエリア、同じ世帯など)において、48~72時間以内に発生する急性熱性呼吸器疾患(AFRI)の突然の増加と定義されている。
【0072】
いくつかの実施形態において、組成物は、インフルエンザウイルスによる感染に起因する合併症の素因を有する患者、特にヒトに対する予防策または予防対策として有用である。組成物は、発端者または発生が確認された状況下で、地域または人口集団の残りの部分における感染の拡大を防ぐための予防方法において有用であり得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。本開示において、所望の生物学的応答は、インフルエンザウイルスの複製を阻害すること、インフルエンザウイルスの量を減少させること、またはインフルエンザウイルス感染の重症度、期間、進行、もしくは発症を軽減もしくは寛解させ、インフルエンザウイルス感染の進行を防止し、ンフルエンザウイルス感染に関連する症状の再発、発生、発症もしくは進行を予防する、またはインフルエンザ感染症に対して使用される別の治療法の予防効果もしくは治療効果(複数可)を向上させるもしくは改善することである。対象に投与される化合物の正確な量は、投与様式、感染の種類および重症度、ならびに全身の健康状態、年齢、性別、体重、および薬物に対する耐性などの対象の特性に依存する。当業者は、これらおよび他の要因に依存して適切な投与量を決定し得るであろう。例えば、3-(2-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-5-フルオロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、治療的または予防的処置のために約0.01~100mg/kg体重/日の投与量範囲で対象に投与することができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載の化合物または組成物の「安全かつ有効な量」は、患者において過度または有害な副作用を引き起こさない化合物または組成物の有効量である。
【0075】
一般的に、投与レジメンは、処置される障害および障害の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、および食事;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;対象の腎および肝機能;ならびに使用される特定の化合物またはその塩、処置の期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医療分野で周知の同様の要因を含む、様々な要因に従って選択することができる。当業者は、疾患の進行を処置、予防、阻害(完全もしくは部分的に)、または停止するのに必要な本明細書に記載の化合物の有効量を容易に決定および処方し得る。
【0076】
化合物1の投与量は、約0.01~約100mg/kg体重/日、約0.01~約50mg/kg体重/日、約0.1~約50mg/kg体重/日、または約1~約25mg/kg体重/日の範囲であり得る。1日あたりの総量は、単回投与で投与することができるか、または1日2回(例えば12時間ごと)、1日3回(例えば8時間ごと)、または1日4回(6時間ごとなど)などの複数回投与で投与することができると理解される。
【0077】
治療的処置のために、化合物1は、例えば、症状(例えば、鼻づまり、喉の痛み、咳、痛み、倦怠感、頭痛、悪寒/汗)の発症から48時間以内(または40時間以内、または2日未満、または1.5日未満、または24時間以内)に患者に投与することができる。治療的処置は、任意の適切な期間、例えば、5日間、7日間、10日間、14日間など持続することができる。地域発生中の予防的処置のために、化合物1は、例えば、発端者における症状の発症の2日以内に投与することができ、任意の適切な期間、例えば、7日間、10日間、14日間、20日間、28日間、35日間、42日間など継続することができる。
【実施例0078】
化合物1の多形スクリーニング(スラリー法):約10mgの化合物1を200μLの様々な溶媒に添加した-メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、5/5の体積比のイソプロピルと酢酸エチル(IPA/EtOAc)、酢酸エチル(EtOAc)、8/2の体積比のイソプロピルアルコールと水、アセトニトリル(ACN)、アセトン、およびテトラヒドロフラン(THF)。各懸濁液を700rpmで24時間、40℃で撹拌した。化合物の残留物を遠心分離(14,000rpmで10分)によって分離し、さらに30℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。透明な溶液が残っている場合は、溶液を真空下で乾燥させて乾燥固体を生成した。乾燥固体をXRPDで分析し、型を割り当てた。結果を以下の表に示す。
【表1】
【0079】
結晶のXRPDパターンは、以下のパラメータを用いてBruker D8Advance機器を使用して取得した。B型のXRPD分析の結果を
図1に示す。C型の結果を
図3に示す。A、B、およびC型の結果を
図4に示す。
【表2】
【0080】
B型の結晶のDSCは、TAQ2000機器を使用して、次のパラメータで取得した。DSCの結果を
図2に示す。
【表3】
【0081】
化合物1の多形スクリーニング(貧溶媒法):約25mgの化合物1をガラスバイアルに量り取り、続いて0.5mLのジメチルアセトアミド(DMA)を添加して、透明な溶液として50mg/mLの濃度を達成した。次いで、この溶液に貧溶媒を、室温で、700rpmで攪拌しながら滴下して加えた。次いで、得られた結晶を遠心分離で収集した。結晶をXRPDで分析し、結果を
図5に示す。図では、上はE型、中央はC型、下はA型である。
【表4】
【0082】
様々な温度での多形形成-スラリー:約25mgの化合物1をガラスバイアルに量り取り、続いて500μLの様々な溶媒を添加した。溶液を700rpmで55℃または25℃で3日間撹拌した。化合物の残留物を遠心分離機(10,000rpmで10分間)で分離し、さらに30℃の真空オーブンで2日間乾燥させた。乾燥固体をXRPDで分析した。様々な条件下で得られた型の概要を以下に示す。
【表5】
【0083】
様々な温度での多形形成:約50mgの化合物1をガラスバイアルに量り取り、続いて500μLの様々な溶媒を添加した。次いで、溶液を700rpmで、55℃で3日間撹拌した。固体を遠心分離機(10,000rpmで10分間)で分離し、さらに30℃の真空オーブンで2日間乾燥させた。固体をXRPDで分析した。
【0084】
約25mgの化合物1をガラスバイアルに量り取り、25℃/60%RHまたは40℃/75%RHで1週間保存した。次いで、試料をXRPDで分析した。
【0085】
【0086】
様々な温度での多形形成(貧溶媒):約50mgの化合物1をガラスバイアルに量り取り、続いて1mLのDMAを添加し、次いで、超音波処理して透明な溶液を得た。次いで、溶液を700rpm、55℃で撹拌し、次いで、速い沈降または遅い沈降のいずれかで貧溶媒を加えた。速い沈降:一定量の貧溶媒を速い速度で加え、1時間以内に固体をろ過する。遅い沈降:一定量の貧溶媒を低速で加え、3日間スラリー化した後、固体をろ過する。得られた固体を遠心分離機(10,000rpmで10分)によって分離し、さらに30℃の真空オーブンで2日間乾燥させた。固体をXRPDで分析した。XRPDの結果を以下に示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【0087】
化合物1の微粒子化:結晶化化合物1(B型)を、インジェクターガス圧力4.5バール、粉砕ガスが4バールになるようにジェットミルに徐々に加えた。微粒子化生成物は、微粒子化前の化合物と同じ特徴的なピークを示した。さらに、DSCの結果により、分解前の198.27℃での連続した発熱ピークおよび280.40℃での単一の吸熱ピークが、微粒子化前の試料で観察されたものと同じであることが確認された。乾燥分散の結果の粒度分布(PSD)は、微粒子化化合物の粒度がVMD=2.08μm、D10=0.65μm、D50=1.44μmおよびD90=4.21μmであることを示した。
【0088】
ラクトース一水和物の微粒子化:いくつかのラクトース一水和物材料を調べ、以下の表に要約したように特徴付けた。
【表10】
【0089】
製剤の調製:結晶性化合物1(B型)を手動で粉砕してから、ラクトース一水和物(Inhalac400)と1:4の比率で混合した。混合物を10分間手動粉砕により混ぜ合わせた。次いで、混合物を以下の条件下でジェットミルを行った:インジェクターガス圧力4.5バール、粉砕ガス4バール。乾燥分散データのPSDは、製剤の粒度がVMD=1.52μm、D10=0.63μm、D50=1.26μm、およびD90=2.77μmであることを示した。
【0090】
インビボでのマウスPK研究:吸入経路を介した肺への化合物1の送達を示すために、マウス(BALB/C)薬物動態研究を行った。試料を収集する前に、吸入器を使用して、マウスを約1mgの乾燥粉末の単回投与で処置した。血漿と肺の試料を異なる時点で収集し、マウスの肺および血漿中の薬物濃度を測定した。下の表に示すように、吸入経路を介した肺組織における高濃度の薬物の急速な蓄積が観察された。対照的に、血漿中の薬物濃度は、肺で検出されたものよりも大幅に低かった。これらのデータは、化合物1の送達が、開示された製剤を使用する吸入投与を介して効果的に行われることが可能であり、化合物1が、例えば、インフルエンザに感染した気道と接触することを可能にすることを示す。興味深いことに、薬物レベルは4日目に治療用量(抗インフルエンザ効力、EC
500.1~3nM)の少なくとも100倍過剰のままであった。これらの結果は、さらに、インフルエンザ感染の治療のための化合物1乾燥粉末の臨床使用の可能性を確認した。
【表11】
下記は、もとの出願の請求項1~36に対応する[1]~[36]である。
[1] 製剤であって、
(a)化合物1またはその薬学的に許容される塩と、
(b)充填剤と、を含む製剤。
[2] 製剤であって、本質的に
(a)化合物1またはその薬学的に許容される塩と、
(b)充填剤と、からなる製剤。
[3] 吸入投与用の粉末製剤であって、
(a)化合物1またはその薬学的に許容される塩と、
(b)本質的にラクトース一水和物からなる充填剤と、を含み、
前記製剤が、1~2μmの体積平均直径(VMD)、0.5μm~0.7μmのD
10、1μm~1.4μmのD
50、および2.5μm~2.8μmのD
90を特徴とする粒度分布を有する、粉末製剤。
[4] 前記充填剤が、ラクトースを含む、[1]または[2]に記載の製剤。
[5] 前記充填剤が、ラクトース一水和物を含む、[4]に記載の製剤。
[6] 前記充填剤が、微粒子化されている、[1]~[5]のいずれか一項に記載の製剤。
[7] 化合物1またはその塩が、微粒子化されている、[1]~[6]のいずれか一項に記載の製剤。
[8] 化合物1またはその塩が、結晶化されている、[1]~[7]のいずれか一項に記載の製剤。
[9] 結晶性化合物1またはその塩が、5.6±0.2°、6.8±0.2°、8.4±0.2°、10.1±0.2°、10.6±0.2°、11.3±0.2°、15.1±0.2°、15.8±0.2°、18.0±0.2°、18.5±0.2°、19.1±0.2°、20.4±0.2°、および20.9±0.2°の2θ値を示すX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、[8]に記載の製剤。
[10] 前記結晶性化合物1またはその塩が、280℃~283℃の融点を有する、[8]または[9]に記載の製剤。
[11] 化合物1またはその塩が、微粒子化された結晶形として存在する、[8]~[11]のいずれか一項に記載の製剤。
[12] 化合物1またはその塩が、0.5~10μmの体積平均粒径を有する、[1]~[11]のいずれか一項に記載の製剤。
[13] 化合物1またはその塩が、1.5μm~5μmの体積平均粒径を有する、[12]に記載の製剤。
[14] 前記充填剤が、0.5~10μmの体積平均粒径を有する、[1]~[13]のいずれか一項に記載の製剤。
[15] 前記充填剤が、1.5μm~5μmの体積平均粒径を有する、[14]に記載の製剤。
[16] 化合物1またはその塩対充填剤の比が、重量比として1:3~1:5である、[1]~[15]のいずれか一項に記載の製剤。
[17] 吸入可能な製剤として適合される、[1]~[16]のいずれか一項に記載の製剤。
[18] 吸入による投与時に、肺における化合物1薬物濃度が、吸入の1時間後の血漿中の化合物1薬物濃度の少なくとも50倍である、[17]に記載の製剤。
[19] 肺における化合物1薬物濃度が、吸入の1時間後の血漿中の化合物1薬物濃度の少なくとも100倍である、[18]に記載の製剤。
[20] 吸入による投与時に、肺における化合物1薬物濃度が、吸入の24時間後の血漿中の化合物1薬物濃度の少なくとも50倍である、[17]~[19]のいずれか一項に記載の製剤。
[21] 肺における化合物1薬物濃度が、吸入の24時間後の血漿中の化合物1薬物濃度の少なくとも100倍である、[20]に記載の製剤。
[22] 吸入による投与時に、肺における化合物1薬物濃度が、吸入の48時間後の血漿中の化合物1薬物濃度の少なくとも50倍である、[17]~[21]のいずれか一項に記載の製剤。
[23] 肺における化合物1薬物濃度が、吸入の48時間後の血漿中の化合物1薬物濃度の少なくとも100倍である、[22]に記載の製剤。
[24] インフルエンザウイルス感染または複製の治療または予防を必要とする対象においてインフルエンザウイルス感染または複製を治療または予防する方法であって、[1]~[23]のいずれか一項に記載の製剤を、前記インフルエンザ感染を治療するのに有効な量で前記対象に投与することを含む方法。
[25] [1]~[23]のいずれか一項に記載の製剤を調製する方法であって、
(a)化合物1またはその塩を微粒子化して化合物1の粒子を形成することと、
(b)任意選択で、前記充填剤を微粒子化して前記充填剤の粒子を形成することと、
(c)前記微粒子化された化合物1またはその塩および前記任意選択で微粒子化された充填剤を混ぜ合わせて、前記製剤を形成することと、を含む、方法。
[26] 化合物1または前記充填剤の前記微粒子化が、ジェットミルまたは手動粉砕による、[25]に記載の方法。
[27] 化合物1または前記充填剤の前記微粒子化が、ジェットミルによる、[26]に記載の方法。
[28] 前記微粒子化ステップの前に化合物1またはその塩を結晶化することをさらに含む、[25]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
[29] 前記結晶化することが、化合物1またはその塩およびエタノールを少なくとも50℃の温度で混合することと、室温に冷却して化合物1またはその塩の結晶化を可能にすることと、濾過により前記結晶を収集することと、任意選択で、微粒子化する前に前記結晶を乾燥させることと、を含む、[28]に記載の方法。
[30] 化合物1またはその塩およびエタノールが75℃の温度で混合される、[29]に記載の方法。
[31] 化合物1またはその塩およびエタノールが75℃の温度で4~10時間混合される、[30]に記載の方法。
[32] B型と呼ばれる結晶性化合物1。
[33] 5.6±0.2°、6.8±0.2°、8.4±0.2°、10.1±0.2°、10.6±0.2°、11.3±0.2°、15.1±0.2°、15.8±0.2°、18.0±0.2°、18.5±0.2°、19.1±0.2°、20.4±0.2°、および20.9±0.2°の2θ値を示すX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、[32]に記載の結晶性化合物1。
[34] 280℃~283℃の融点を有する、[32]または[33]に記載の結晶性化合物1。
[35] A型と呼ばれる結晶性化合物1。
[36] C型と呼ばれる結晶性化合物1。