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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138542
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20241001BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20241001BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20241001BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q1/22 Z
H01Q1/40
H05K1/02 J
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116034
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2020180284の分割
【原出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】武 誠司
(72)【発明者】
【氏名】川口 修司
(57)【要約】
【課題】保護層と給電部とが互いに剥離することを抑制することが可能な、配線基板および配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置され、複数の配線21を含む配線パターン領域20と、配線パターン領域20に電気的に接続された給電部40と、を備えている。給電部40は、凹凸41aが形成された内側領域41と、内側領域41の周囲に設けられ、凹凸が形成されていないか、あるいは内側領域41の凹凸41aよりも小さい凹凸42aが形成された外側領域42と、を有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
基板と、
前記基板上に配置され、複数の配線を含む配線パターン領域と、
前記配線パターン領域に電気的に接続された給電部と、を備え、
前記給電部は、
内側領域と、
前記内側領域の周囲に設けられた外側領域と、を有し、
前記外側領域の表面の表面粗さRaは、前記内側領域の表面の表面粗さRaよりも小さい、配線基板。
【請求項2】
前記内側領域の表面の表面粗さRaは、0.2μm以上100μm以下である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記内側領域に凹凸が形成され、前記外側領域に前記内側領域の凹凸よりも小さい凹凸が形成され、前記外側領域の表面の表面粗さRaは、10nm以上100nm以下である、請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記外側領域の幅は、前記給電部の表皮深さ以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記外側領域の幅は、前記給電部の長手方向の長さの25%以下である、請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記基板上に、前記配線パターン領域及び前記給電部を覆うように保護層が形成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記保護層のうち前記給電部の前記内側領域に対応する領域は、前記内側領域の凹凸を転写した形状を有する、請求項6に記載の配線基板。
【請求項8】
前記保護層のうち前記給電部の前記外側領域に対応する領域は、前記外側領域の凹凸を転写した形状を有する、請求項6または7に記載の配線基板。
【請求項9】
電波送受信機能を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項10】
配線基板の製造方法であって、
基板を準備する工程と、
前記基板上に、複数の配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、を備え、
前記給電部は、
内側領域と、
前記内側領域の周囲に設けられた外側領域と、を有し、
前記外側領域の表面の表面粗さRaは、前記内側領域の表面の表面粗さRaよりも小さい、配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記内側領域に凹凸が形成され、前記内側領域の凹凸は、エンボス加工によって形成される、請求項10に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、配線基板および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、タブレット等の携帯端末機器の高機能、小型化、薄型化および軽量化が進んでいる。これら携帯端末機器は、複数の通信帯域を使用するため、通信帯域に応じた複数のアンテナが必要とされる。例えば、携帯端末機器には、電話用アンテナ、WiFi(Wireless Fidelity)用アンテナ、3G(Generation)用アンテナ、4G(Generation)用アンテナ、LTE(Long Term Evolution)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC(Near Field Communication)用アンテナ等の複数のアンテナが搭載されている。しかしながら、携帯端末機器の小型化に伴い、アンテナの搭載スペースは限られており、アンテナ設計の自由度は狭まっている。また、限られたスペース内にアンテナを内蔵していることから、電波感度が必ずしも満足できるものではない。
【0003】
このため、携帯端末機器の表示領域に搭載することができるフィルムアンテナが開発されている。このフィルムアンテナは、透明基材上にアンテナパターンが形成された透明アンテナにおいて、アンテナパターンが、不透明な導電体層の形成部としての導体部と非形成部としての多数の開口部とによるメッシュ状の導電体メッシュ層によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-66610号公報
【特許文献2】特許第5636735号明細書
【特許文献3】特許第5695947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルムアンテナにおいては、導電体メッシュ層や給電部を保護するために保護層で覆うことが好ましい。しかしながら、一般に、導電体メッシュ層に電気を供給する給電部は、全面にわたって隙間なく均一な金属の板状部材からなるため、給電部を覆う保護層と給電部とが剥離するおそれがある。
【0006】
本実施の形態は、保護層と給電部とが互いに剥離することを抑制することが可能な、配線基板および配線基板の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態による配線基板は、配線基板であって、透明性を有する基板と、前記基板上に配置され、複数の配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域に電気的に接続された給電部と、を備え、前記給電部は、凹凸が形成された内側領域と、前記内側領域の周囲に設けられ、凹凸が形成されていないか、あるいは前記内側領域の凹凸よりも小さい凹凸が形成された外側領域と、を有する、配線基板である。
【0008】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記内側領域の表面の表面粗さRaは、0.2μm以上100μm以下であってもよい。
【0009】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記外側領域に前記内側領域の凹凸よりも小さい凹凸が形成され、前記外側領域の表面の表面粗さRaは、10nm以上100nm以下であってもよい。
【0010】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記外側領域の幅は、前記給電部の表皮深さ以上であってもよい。
【0011】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記外側領域の幅は、以下であってもよい。
【0012】
本開示の一実施の形態による配線基板において、前記基板上に、前記配線パターン領域及び前記給電部を覆うように保護層が形成されていてもよい。
【0013】
本開示の一実施の形態による配線基板は、電波送受信機能を有していてもよい。
【0014】
本開示の一実施の形態による配線基板の製造方法は、配線基板の製造方法であって、透明性を有する基板を準備する工程と、前記基板上に、複数の配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、を備え、前記給電部は、凹凸が形成された内側領域と、前記内側領域の周囲に設けられ、凹凸が形成されていないか、あるいは前記内側領域の凹凸よりも小さい凹凸が形成された外側領域と、を有する、配線基板の製造方法である。
【0015】
本開示の一実施の形態による配線基板の製造方法において、前記内側領域の凹凸は、エンボス加工によって形成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示の実施の形態によると、保護層と給電部とが互いに剥離することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施の形態による配線基板を示す平面図である。
図2図2は、一実施の形態による配線基板を示す拡大平面図(図1のII部拡大図)である。
図3図3は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(図2のIII-III線断面図)である。
図4図4は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(図2のIV-IV線断面図)である。
図5図5は、一実施の形態による配線基板を示す拡大平面図(図1のV部拡大図)である。
図6図6は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(図5のVI-VI線断面図)である。
図7図7は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(図5のVII-VII線断面図)である。
図8図8(a)-(f)は、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
図9図9(a)-(d)は、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
図10図10は、一実施の形態による画像表示装置を示す平面図である。
図11図11は、一実施の形態による配線基板の変形例を示す断面図(図6に対応する図)である。
図12図12は、一実施の形態による配線基板の変形例を示す平面図(図5に対応する図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、図1乃至図10により、一実施の形態について説明する。図1乃至図10は本実施の形態を示す図である。
【0019】
以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0020】
本実施の形態において、「X方向」とは、基板の1つの辺に対して平行な方向である。「Y方向」とは、X方向に垂直かつ基板の他の辺に対して平行な方向である。「Z方向」とは、X方向およびY方向の両方に垂直かつ配線基板の厚み方向に平行な方向である。また、「表面」とは、Z方向プラス側の面であって、基板に対して配線が設けられた面をいう。「裏面」とは、Z方向マイナス側の面であって、基板に対して配線が設けられた面と反対側の面をいう。なお、本実施の形態において、配線パターン領域20が、電波送受信機能(アンテナとしての機能)を有するアンテナパターン領域20である場合を例にとって説明するが、配線パターン領域20は電波送受信機能(アンテナとしての機能)を有していなくても良い。
【0021】
[配線基板の構成]
図1乃至図7を参照して、本実施の形態による配線基板の構成について説明する。図1乃至図7は、本実施の形態による配線基板を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態による配線基板10は、例えば画像表示装置のディスプレイ上に配置されるものである。このような配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたアンテナパターン領域(配線パターン領域)20と、を備えている。また、アンテナパターン領域20には、給電部40が電気的に接続されている。
【0023】
このうち基板11は、平面視で略長方形状であり、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向がX方向に平行となっている。基板11は、透明性を有するとともに略平板状であり、その厚みは全体として略均一となっている。基板11の長手方向(Y方向)の長さLは、例えば100mm以上200mm以下の範囲で選択することができ、基板11の短手方向(X方向)の長さLは、例えば50mm以上100mm以下の範囲で選択することができる。なお、基板11は、その角部がそれぞれ丸みを帯びていても良い。
【0024】
基板11の材料は、可視光線領域での透明性および電気絶縁性を有する材料であればよい。本実施の形態において基板11の材料はポリエチレンテレフタレートであるが、これに限定されない。基板11の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂材料等の有機絶縁性材料を用いることが好ましい。また、基板11の材料としては、用途に応じてガラス、セラミックス等を適宜選択することもできる。なお、基板11は、単一の層によって構成された例を図示したが、これに限定されず、複数の基材又は層が積層された構造であってもよい。また、基板11はフィルム状であっても、板状であってもよい。このため、基板11の厚さは特に制限はなく、用途に応じて適宜選択できるが、一例として、基板11の厚みT(Z方向の長さ、図3参照)は、例えば10μm以上200μm以下の範囲とすることができる。
【0025】
図1において、アンテナパターン領域20は、基板11上に複数(3つ)存在しており、それぞれ異なる周波数帯に対応している。すなわち、複数のアンテナパターン領域20は、その長さ(Y方向の長さ)Lが互いに異なっており、それぞれ特定の周波数帯に対応した長さを有している。なお、対応する周波数帯が低周波であるほどアンテナパターン領域20の長さLが長くなっている。配線基板10が例えば画像表示装置90のディスプレイ91(後述する図10参照)上に配置される場合、各アンテナパターン領域20は、配線基板10が電波送受信機能を有する場合、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかに対応していても良い。あるいは、配線基板10が電波送受信機能を有していない場合、各アンテナパターン領域20は、例えばホバリング(使用者がディスプレイに直接触れなくても操作可能となる機能)、指紋認証、ヒーター、ノイズカット(シールド)等の機能を果たしても良い。
【0026】
各アンテナパターン領域20は、それぞれ平面視で略長方形状である。各アンテナパターン領域20は、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向(幅方向)がX方向に平行となっている。各アンテナパターン領域20の長手方向(Y方向)の長さLは、例えば3mm以上100mm以下の範囲で選択することができ、各アンテナパターン領域20の短手方向(X方向)の幅Wは、例えば1mm以上25mm以下の範囲で選択することができる。
【0027】
アンテナパターン領域20は、それぞれ金属線が格子形状または網目形状に形成され、X方向およびY方向に均一な繰り返しパターンを有している。すなわち図2に示すように、アンテナパターン領域20は、X方向に延びる部分(第2方向配線22)とY方向に延びる部分(第1方向配線21)とから構成されるL字状の単位パターン形状20a(図2の網掛け部分)の繰り返しから構成されている。
【0028】
図2に示すように、各アンテナパターン領域20は、アンテナとしての機能をもつ複数の第1方向配線(配線)21と、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22とを含んでいる。具体的には、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とは、全体として一体となって、規則的な格子形状または網目形状を形成している。各第1方向配線21は、アンテナの周波数帯に対応する方向(Y方向)に延びており、各第2方向配線22は、第1方向配線21に直交する方向(X方向)に延びている。第1方向配線21は、所定の周波数帯に対応する長さL(上述したアンテナパターン領域20の長さ、図1参照)を有することにより、主としてアンテナとしての機能を発揮する。一方、第2方向配線22は、これらの第1方向配線21同士を連結することにより、第1方向配線21が断線したり、第1方向配線21と給電部40とが電気的に接続しなくなったりする不具合を抑える役割を果たす。
【0029】
各アンテナパターン領域20においては、互いに隣接する第1方向配線21と、互いに隣接する第2方向配線22とに取り囲まれることにより、複数の開口部23が形成されている。また、第1方向配線21と第2方向配線22とは互いに等間隔に配置されている。すなわち複数の第1方向配線21は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP図2参照)は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、複数の第2方向配線22は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP図2参照)は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。このように、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とがそれぞれ等間隔に配置されていることにより、各アンテナパターン領域20内で開口部23の大きさにばらつきがなくなり、アンテナパターン領域20を肉眼で視認しにくくすることができる。また、第1方向配線21のピッチPは、第2方向配線22のピッチPと等しい。このため、各開口部23は、それぞれ平面視略正方形状となっており、各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。このため、各開口部23の面積を広くすることにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。なお、各開口部23の一辺の長さL図2参照)は、例えば0.01μm以上1μm以下の範囲とすることができる。なお、各第1方向配線21と各第2方向配線22とは、互いに直交しているが、これに限らず、互いに鋭角または鈍角に交差していてもよい。また、開口部23の形状は、全面で同一形状同一サイズとするのが好ましいが、場所によって変えるなど全面で均一としなくても良い。
【0030】
図3に示すように、各第1方向配線21は、その長手方向に垂直な断面(X方向断面)が略長方形形状又は略正方形形状となっている。この場合、第1方向配線21の断面形状は、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。また、図4に示すように、各第2方向配線22の長手方向に垂直な断面(Y方向断面)の形状は、略長方形形状又は略正方形形状であり、上述した第1方向配線21の断面(X方向断面)形状と略同一である。この場合、第2方向配線22の断面形状は、第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。第1方向配線21と第2方向配線22の断面形状は、必ずしも略長方形形状又は略正方形形状でなくても良く、例えば表面側(Z方向プラス側)が裏面側(Z方向マイナス側)よりも狭い略台形形状、あるいは、幅方向両側に位置する側面が湾曲した形状であっても良い。
【0031】
本実施の形態において、第1方向配線21の線幅W(X方向の長さ、図3参照)および第2方向配線22の線幅W(Y方向の長さ、図4参照)は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。例えば、第1方向配線21の線幅Wは0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができ、第2方向配線22の線幅Wは、0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。また、第1方向配線21の高さH(Z方向の長さ、図3参照)および第2方向配線22の高さH(Z方向の長さ、図4参照)は特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。
【0032】
第1方向配線21および第2方向配線22の材料は、導電性を有する金属材料であればよい。本実施の形態において第1方向配線21および第2方向配線22の材料は銅であるが、これに限定されない。第1方向配線21および第2方向配線22の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。
【0033】
本実施の形態において、アンテナパターン領域20の全体の開口率Atは、例えば87%以上100%未満の範囲とすることができる。アンテナパターン領域20の全体の開口率Atをこの範囲とすることにより、配線基板10の導電性と透明性を確保することができる。なお、開口率とは、所定の領域(例えばアンテナパターン領域20の一部)の単位面積に占める、開口領域(第1方向配線21、第2方向配線22等の金属部分が存在せず、基板11が露出する領域)の面積の割合(%)をいう。
【0034】
再度図1を参照すると、給電部40は、各アンテナパターン領域20にそれぞれ電気的に接続されている。この給電部40は、略長方形状の導電性の薄板状部材からなる。給電部40の長手方向はX方向に平行であり、給電部40の短手方向はY方向に平行である。また、給電部40は、基板11の長手方向端部(Y方向マイナス側端部)に配置されている。給電部40の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。この給電部40は、配線基板10が画像表示装置90(図10参照)に組み込まれた際、給電線95を介して画像表示装置90の無線通信用回路92と電気的に接続される。なお、給電部40は、基板11の表面に設けられているが、これに限らず、給電部40の一部又は全部が基板11の周縁よりも外側に位置していても良い。また、図1において、各配線パターン領域20にそれぞれ対応する給電部40が接続されているが、これに限らず、1つの給電部40が複数の配線パターン領域20に電気的に接続されていても良い。
【0035】
図5に示すように、複数の第1方向配線21は、Y方向マイナス側においてそれぞれ給電部40に電気的に接続されている。この場合、給電部40は、アンテナパターン領域20と一体に形成されている。給電部40のうち、アンテナパターン領域20の反対側(Y方向マイナス側)には、後述する給電線95と電気的に接続される接続領域46が形成されている。給電部40の長手方向(X方向)の長さLは、1mm以上50mm以下としても良く、給電部40の短手方向(Y方向)の長さLは、0.5mm以上10mm以下としても良い。また、給電部40の厚みT図6参照)は、第1方向配線21の高さH図3参照)および第2方向配線22の高さH図4参照)と同一とすることができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。
【0036】
図5および図6に示すように、本実施の形態において、給電部40は、凹凸41a(図6参照)が形成された内側領域41と、内側領域41の周囲に設けられ、凹凸が形成されていない外側領域42と、を有している。このうち内側領域41は、平面視で略長方形状である。内側領域41の長手方向は、X方向に平行であり、内側領域41の短手方向(幅方向)は、Y方向に平行である。内側領域41の長手方向(X方向)の長さL図5参照)は、給電部40の長手方向(X方向)の長さLの50%以上99%以下としても良く、0.5mm以上49.5mm以下としても良い。また、内側領域41の短手方向(Y方向)の長さL図5参照)は、給電部40の短手方向(Y方向)の長さLの50%以上99%以下としても良く、0.25mm以上9.9mm以下としても良い。なお、これに限らず、内側領域41の平面形状は、円形状、楕円形状、長方形形状等の多角形形状等としても良い。
【0037】
また、内側領域41の表面の表面粗さRaは、0.2μm以上100μm以下であってもよい。ここで、表面粗さRaとは、算術平均粗さのことであり、JIS B 0601-2013に基づいて測定される。内側領域41の表面の表面粗さRaが0.2μm以上であることにより、後述する保護層17のうち、内側領域41の凹凸41aの凸部間(凹部内)に進入する保護層17の一部17aの体積を大きくすることができる。これにより、後述するように、保護層17のうちアンカーとして作用する部分の体積を大きくすることができる。このため、保護層17と給電部40とを強固に結合させることができる。また、内側領域41の表面の表面粗さRaが100μm以下であることにより、配線基板10の厚み、および配線基板10が組み込まれる画像表示装置90(図10参照)の厚みが厚くなり過ぎることを抑制することができる。また凹凸41aの起伏が大き過ぎることに起因して、基板11の表面に設けられた給電部40が、一部断線してしまうことを抑えることができる。さらに、内側領域41の表面の表面粗さRaが0.2μm以上100μm以下であることにより、内側領域41の凹凸41aの成形性を向上させることができる。表面粗さRaは、一例として、レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-X250(制御部)、VK-X260(測定部)、レーザー波長408nm)を用いて測定することができる。
【0038】
この場合、凹凸41aは、内側領域41の面内の略全域に配置されているが、これに限られるものではない。凹凸41aは、少なくとも保護層17に覆われる領域内と、接続領域46内に配置されることが好ましい。これにより、保護層17と給電部40との密着性や、給電線95を接続する半田と給電部40との密着性を高めることができる。このような内側領域41の凹凸41aは、例えばエンボス加工によって形成されていてもよい。なお、図示はしないが、例えば、内側領域41に凹凸41aを形成することに起因して、給電部40を厚み方向(Z方向)に貫通する複数の貫通孔が、内側領域41に形成されていてもよい。この場合、各貫通孔から、透明性を有する基板11が露出していてもよい。
【0039】
外側領域42は、内側領域41を取り囲むように枠状に設けられている。上述したように、外側領域42には、凹凸が形成されていない。このため、外側領域42の表面は、平滑になっている。本実施の形態では、外側領域42の幅W図5参照)は、全周にわたって略均一になっている。外側領域の幅Wは、給電部40の後述する表皮深さ以上であっても良く、給電部40の長手方向(X方向)の長さLの25%以下であってもよい。外側領域42の幅Wが表皮深さ以上であることにより、凹凸41aが形成されていない領域を広くすることができる。ここで、凹凸41aが形成された場合、凹凸41aが形成されていない場合と比較して、電流が流れる経路の長さが長くなる。これにより、電力損失が発生する可能性がある。これに対して、外側領域42の幅Wが表皮深さ以上であることにより、凹凸41aが形成されていない領域を広くすることができ、高周波電流が流れる外側領域42における電力損失を低減することができる。また、外側領域42の幅Wが給電部40の長手方向の長さLの25%以下であることにより、外側領域42において後述する表皮効果が発現した場合に、外側領域42の断面において、外側領域42に電流が流れる領域の割合を大きくすることができる。すなわち、外側領域42の幅Wが給電部40の長手方向の長さLの25%以下であることにより、外側領域42の断面の略全域にわたって電流を流すことが可能となる。このため、アンテナ特性を向上させることができる。なお、外側領域42の幅Wは、全周にわたって略均一になっていなくてもよい。例えば、外側領域42のうち、X方向に沿って延びる部分の幅(Y方向の長さ)と、Y方向に沿って延びる部分の幅(X方向の長さ)とが、互いに異なっていてもよい。
【0040】
外側領域42の幅Wは、給電部40の表皮深さを考慮して決定され得る。以下、このような外側領域42の幅Wを決定する手法について説明する。
【0041】
上述したように、アンテナパターン領域20の長さ(Y方向の長さ)Lは、特定の周波数帯に対応した長さを有しており、対応する周波数帯が低周波であるほど長さLが長くなる。アンテナパターン領域20の長さLを決定した後、外側領域42の幅Wを決定してもよい。
【0042】
すなわち、外側領域42の幅Wについては、対応する周波数帯に応じて、表皮効果の影響を考慮して決定してもよい。具体的には、後述するように、外側領域42の幅Wが、給電部40の表皮深さ以上となるようにしてもよい。
【0043】
一般に、交流電流を導体に流したとき、周波数が高くなるほど、導体の中心部分には電流が流れにくくなり、導体の表面を電流が流れるようになる。このように、導体に交流電流を流したときに表面にのみ電流が流れる現象のことを表皮効果という。また、表皮深さとは、最も電流が流れやすい導体の表面の電流に対して、1/e(約0.37)倍に減衰する、導体の表面からの深さのことをいう。この表皮深さδは、一般に下記の式によって求めることができる。
【0044】
【数1】
【0045】
なお、上記式中、ωは角周波数(=2πf)、μは透磁率(真空中では4π×10-7[H/m])、σは導体の導電率(銅の場合は5.8×10[S/m])を意味する。銅の配線の表皮深さδは、周波数が0.8GHzの場合、δ=約2.3μmであり、周波数が2.4GHzの場合、δ=約1.3μmであり、周波数が4.4GHzの場合、δ=約1.0μmであり、周波数が6GHzの場合、δ=約0.85μmである。
【0046】
本実施の形態において、例えば、図7に示すように、外側領域42の幅Wが、対応するアンテナパターン領域20の周波数の表皮深さδ以上となっていてもよい(δ≦W)。この場合、例えば、アンテナパターン領域20の周波数が2.4GHzである場合、Wは1.3μm以上となり、アンテナパターン領域20の周波数が6GHzの場合、Wは0.85μm以上となっていてもよい。このように、外側領域42の幅Wが表皮深さδ以上であることにより、電流は、凹凸41aが形成された内側領域41ではなく、凹凸41aが形成されていない外側領域42に流れるようになる。すなわち、電流は、表面が平滑である外側領域42を流れるようになるので、電流が流れる経路の長さが長くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、電力損失を低減することができる。なお、この場合、図1に示すように、各アンテナパターン領域20にそれぞれ対応する給電部40が接続されていることが好ましい。一方、1つの給電部40が複数のアンテナパターン領域20に電気的に接続されている場合には、給電部40の表皮深さδを求める際、最も周波数が低いアンテナパターン領域20の周波数に基づいて、給電部40の表皮深さδを求めても良い。
【0047】
さらに、図3図4および図6に示すように、基板11の表面上には、アンテナパターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17が形成されている。保護層17は、アンテナパターン領域20及び給電部40を保護するものであり、基板11の表面の略全域に形成されていても良い。保護層17の材料としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂とそれらの変性樹脂と共重合体、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニル樹脂とそれらの共重合体、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリオレフィン等の無色透明の絶縁性樹脂を用いることができる。また、保護層17の厚みT図3参照)は、0.3μm以上100μm以下の範囲で選択することができる。
【0048】
図6に示すように、保護層17のうち給電部40の内側領域41に対応する領域は、内側領域41の凹凸41aを転写した形状を有する。これにより、保護層17の一部17aが内側領域41の凹凸41aの凸部間(凹部内)に進入して硬化することにより、保護層17の一部17aがアンカーとしての役割を果たす。これにより、保護層17が給電部40に強く密着し、保護層17が給電部40から剥離しないようにすることができる。なお、給電線95を給電部40に接続しやすくするため、保護層17は、給電部40の接続領域46を覆わないようにしても良い。
【0049】
[配線基板の製造方法]
次に、図8(a)-(f)および図9(a)-(d)を参照して、本実施の形態による配線基板の製造方法について説明する。図8(a)-(f)および図9(a)-(d)は、本実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【0050】
まず、図8(a)に示すように、透明性を有する基板11を準備する。
【0051】
次に、基板11上に、複数の第1方向配線21を含むアンテナパターン領域20と、アンテナパターン領域20に電気的に接続された給電部40とを形成する。この際、まず、基板11の表面の略全域に導電層51を形成する。本実施の形態において導電層51の厚さは、200nmである。しかしながらこれに限定されず、導電層51の厚さは10nm以上1000nm以下の範囲で適宜選択することができる。本実施の形態において導電層51は、銅を用いてスパッタリング法によって形成する。導電層51を形成する方法としては、プラズマCVD法を用いても良い。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、基板11の表面の略全域に光硬化性絶縁レジスト52を供給する。この光硬化性絶縁レジスト52としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ系樹脂等の有機樹脂を挙げることができる。
【0053】
続いて、図8(c)に示すように、絶縁層54をフォトリソグラフィ法により形成する。この場合、フォトリソグラフィ法により光硬化性絶縁レジスト52をパターニングし、トレンチ54aが形成された絶縁層54(レジストパターン)を形成する。トレンチ54aは、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する平面形状パターンを有する。また、この際、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する導電層51が露出するように、絶縁層54を形成する。
【0054】
なお、これに限らず、絶縁層54の表面に、インプリント法によってトレンチ54aを形成することができる。この場合、トレンチ54aに対応した凸部を有する透明なインプリント用のモールドを準備し、このモールドと基板11とを近接させて、モールドと基板11との間に光硬化性絶縁レジスト52を展開する。次に、モールド側から光照射を行い、光硬化性絶縁レジスト52を硬化させることにより、絶縁層54を形成する。これにより、絶縁層54の表面に、凸部が転写された形状をもつトレンチ54aが形成される。その後モールドを絶縁層54から剥離することで、図8(c)に示す断面構造の絶縁層54を得ることができる。ここで、図示はしないが、絶縁層54のトレンチ54aの底部には、絶縁材料の残渣が残ることがある。このため過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドンを用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、絶縁材料の残渣を除去する。このように、絶縁材料の残渣を除去することによって、図8(c)に示すように導電層51を露出したトレンチ54aを形成することができる。
【0055】
次に、図8(d)に示すように、絶縁層54のトレンチ54aを、導電体55で充填する。本実施の形態において、導電層51をシード層として、電解メッキ法を用いて絶縁層54のトレンチ54aを銅で充填する。
【0056】
続いて、図8(e)に示すように、絶縁層54を除去する。この場合、過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドン、酸またはアルカリ溶液等を用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、基板11上の絶縁層54を除去する。
【0057】
その後、図8(f)に示すように、基板11の表面上の導電層51を除去する。この際、過酸化水素水を用いたウェット処理を行うことによって、基板11の表面が露出するように導電層51をエッチングする。このようにして、基板11と、基板11上に配置されたアンテナパターン領域20と、内側領域41に凹凸41aが形成される前の給電部40と、を備える配線基板10(以下、単に配線基板10aとも記す)が得られる。この場合、アンテナパターン領域20は、第1方向配線21および第2方向配線22を含む。上述した導電体55は、第1方向配線21と、第2方向配線22とを含んでいる。このとき、導電体55の一部によって、内側領域41に凹凸41aが形成される前の給電部40が形成されても良い。あるいは、内側領域41に凹凸41aが形成される前の給電部40であって平板状の給電部40を別途準備し、この給電部40を配線パターン領域20に電気的に接続しても良い。
【0058】
次に、内側領域41に凹凸41aを形成する。内側領域41の凹凸41aは、例えば、エンボス加工によって形成されてもよい。この際、まず、図9(a)に示すように、平坦面61aを有する第1型61を準備する。
【0059】
次に、図9(b)に示すように、第1型61の平坦面61a上に、配線基板10aを載置する。
【0060】
また、第2型62(図9(c)参照)を準備する。この第2型62には、内側領域41の凹凸41aに対応する凹凸62aが形成されている。
【0061】
次いで、図9(c)に示すように、第2型62の凹凸62aと配線基板10aの給電部40とが対面するように、第1型61と第2型62とによって配線基板10aを挟み込む。これにより、第2型62の凹凸62aの凹凸形状が給電部40の内側領域41に転写され、内側領域41に凹凸41aが形成される。なお、配線基板10aの基板11および給電部40が変形しやすいように、凹凸62aを予め加熱しておいてもよい。
【0062】
その後、配線基板10aを第1型61および第2型62から取り出し、図9(d)に示すように、基板11上のアンテナパターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17を形成する。保護層17を形成する方法としては、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、スロットダイコート、ダイコート、ナイフコート、インクジェットコート、ディスペンサーコート、キスコート、スプレーコート、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷を用いても良い。このとき、保護層17の一部17aが凹凸41aの凸部間(凹部内)に進入して硬化することにより、保護層17が給電部40と強固に結合する(図6参照)。
【0063】
このようにして、基板11と、基板11上に配置されたアンテナパターン領域20と、アンテナパターン領域20に電気的に接続された給電部40と、を備える配線基板10が得られる。
【0064】
[本実施の形態の作用]
次に、このような構成からなる配線基板の作用について述べる。
【0065】
図10に示すように、配線基板10は、ディスプレイ91を有する画像表示装置90に組み込まれる。配線基板10は、ディスプレイ91上に配置される。このような画像表示装置90としては、例えばスマートフォン、タブレット等の携帯端末機器を挙げることができる。配線基板10のアンテナパターン領域20は、給電部40及び給電線95を介して画像表示装置90の無線通信用回路92に電気的に接続される。このようにして、アンテナパターン領域20を介して、所定の周波数の電波を送受信することができ、画像表示装置90を用いて通信を行うことができる。
【0066】
ところで、一般に、給電部40は、第1方向配線21及び第2方向配線22と比較して、保護層17に対して広い面積で接触する。一方、金属製の給電部40と樹脂製の保護層17とは、材料が異なるため、その密着力は必ずしも強固ではない。このため、画像表示装置90を使用している間、配線基板10に対して曲げる方向に力が加わった場合等、保護層17が給電部40から剥離し、これを起点として保護層17が基板11の全面から剥離してしまうことも考えられる。
【0067】
これに対して本実施の形態によれば、給電部40が、凹凸41aが形成された内側領域41と、内側領域41の周囲に設けられ、凹凸が形成されていない外側領域42と、を有している。これにより、内側領域41の凹凸41aの凸部間(凹部内)に進入した保護層17の一部17aがアンカーとなって、保護層17と給電部40とが強固に結合する。これにより、保護層17が給電部40から剥離することを抑制することができる。また、凹凸が形成されていない外側領域42が内側領域41の周囲に設けられているため、電流が流れる経路の長さが長くなることを抑制することができ、電力損失を低減することができる。
【0068】
ところで、保護層17と給電部40とをより強固に結合するために、保護層17のうちアンカーとして作用する部分の体積を大きくすることが求められる場合がある。ここで、保護層の一部をアンカーとして作用させる場合、給電部40に、給電部40の厚み方向(Z方向)に貫通する貫通孔を形成し、当該貫通孔に保護層17の一部を進入させることによって、当該一部をアンカーとして作用させることも考えられる。一方、給電部40の厚みが薄い場合、保護層17のうち、当該貫通孔に進入する部分の体積を大きくすることが難しい場合がある。この場合、保護層17のうちアンカーとして作用する部分の体積を大きくすることが難しくなる。これに対して本実施の形態では、内側領域41に凹凸41aを形成している。これにより、凹凸41aの大きさを変更することによって、凸部間(凹部内)に進入させる保護層17の一部17aの体積を容易に大きくすることができる。このため、内側領域41に凹凸41aを形成することにより、給電部40に上述した貫通孔を形成する場合と比較して、保護層17と給電部40とを強固に結合させることができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、給電線95を給電部40に接続するための半田を、内側領域41の凹凸41aの凸部間(凹部内)に進入させることができる。これにより、凹凸41aの凸部間(凹部内)に進入した半田の一部がアンカーとなって給電部40と結合する。これにより、給電線95を給電部40に強固に接続することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置され、複数の第1方向配線21を含むアンテナパターン領域20とを備えるので、配線基板10の透明性が確保されている。これにより、配線基板10がディスプレイ91上に配置されたとき、アンテナパターン領域20の開口部23からディスプレイ91を視認することができ、ディスプレイ91の視認性が妨げられることがない。
【0071】
また、本実施の形態によれば、アンテナパターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17が形成されている。これにより、アンテナパターン領域20及び給電部40を外部からの衝撃等から保護することができる。
【0072】
(変形例)
次に、図11および図12を参照して、本実施の形態による配線基板の各種変形例について説明する。図11および図12は、配線基板の各種変形例を示す図である。図11および図12に示す変形例は、給電部40または配線パターン領域20の構成が異なるものであり、他の構成は上述した図1乃至図10に示す実施の形態と略同一である。図11および図12において、図1乃至図10に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0073】
(変形例1)
図11は、本実施の形態の変形例1による配線基板10Aを示している。図11において、外側領域42に内側領域41の凹凸41aよりも小さい凹凸42aが形成されている。言い換えれば、外側領域42に凹凸42aが形成され、外側領域42の表面の表面粗さRaが、内側領域41の表面の表面粗さRaよりも小さくなっている。
【0074】
図11に示すように、保護層17のうち給電部40の外側領域42に対応する領域は、外側領域42の凹凸42aを転写した形状を有していてもよい。これにより、保護層17の一部17bが外側領域42の凹凸42aの凸部間(凹部内)に進入して硬化することにより、保護層17の一部17bがアンカーとしての役割を果たす。これにより、保護層17が給電部40に強く密着し、保護層17が給電部40から剥離しないようにすることができる。
【0075】
本変形例では、外側領域42の少なくとも一部における表面の表面粗さRaは、10nm以上100nm以下であってもよい。外側領域42の表面の表面粗さRaが10nm以上であることにより、保護層17のうち、外側領域42の凹凸42aの凸部間(凹部内)に進入する保護層17の一部17bをアンカーとして作用させることができる。また、外側領域42の表面の表面粗さRaが100nm以下であることにより、凹凸42aに起因して、電流が流れる経路の長さが長くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、電力損失を低減することができる。
【0076】
(変形例2)
図12は、本実施の形態の変形例2による配線基板10Bを示している。図12において、第1方向配線21と第2方向配線22とは、斜めに交わっており、各開口部23は、平面視で菱形状に形成されている。第1方向配線21および第2方向配線22は、それぞれX方向及びY方向のいずれに対しても非平行となっている。配線パターン領域20のうち、給電部40に隣接する位置において、給電部40と第1方向配線21と第2方向配線22とによって取り囲まれる領域28は、非開口部となっている。この領域28は、平面視で三角形となっている。すなわち領域28には、第1方向配線21、第2方向配線22および給電部40を構成する金属が充填されており、基板11が露出していない。これにより、電流密度が高くなりやすく長期間使用した際に断線が生じやすい給電部40の近傍における第1方向配線21および第2方向配線22の強度を高め、第1方向配線21及び第2方向配線22の断線を抑制することができる。
【0077】
なお、給電部40と第1方向配線21と第2方向配線22とによって取り囲まれる複数の領域28の全てが非開口部となっていても良く、複数の領域28の一部のみが非開口部となっていても良い。後者の場合、例えば配線パターン領域20の幅方向(X方向)中央部近傍に位置する複数の領域28を開口部とし、配線パターン領域20の幅方向(X方向)縁部近傍に位置する複数の領域28を非開口部としても良い。
【0078】
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 配線基板
11 基板
17 保護層
20 アンテナパターン領域
21 第1方向配線
40 給電部
41 内側領域
41a 凹凸
42 外側領域
42a 凹凸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12