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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013857
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電磁ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/28 20060101AFI20240125BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20240125BHJP
   F16D 27/112 20060101ALI20240125BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20240125BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20240125BHJP
【FI】
F16D55/28 B
F16D65/18
F16D27/112 Z
F16D121:14
F16D121:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116255
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】藤川 達也
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA79
3J058AA88
3J058BA23
3J058CC07
3J058CC13
3J058CC72
3J058CC77
(57)【要約】
【課題】ブレーキの作動時に、可動部材と回転部材との接触による衝撃を確実に緩和させる。
【解決手段】電磁ブレーキ装置1は、軸方向において回転部材2の一方側に隣接配置された可動板4と、複数のバネ6と、電磁石ユニット5とを備える。電磁石ユニット5は、内筒部53と外筒部54とを有するヨーク51と、コイル52と、外筒部54と可動板4との軸方向における相対移動を規制する端面54bと、を有する。端面54bは、可動板4が磁力によってヨーク51に引き寄せられた状態で、回転部材2の端面22aと、可動板4に形成された端面4bとを平行にするように構成されている。可動板4がヨーク51に引き寄せられた状態で可動板4及びヨーク51を含んで形成された磁路のうち、仮想平面Pよりも一方側に配置された第1磁路の磁気抵抗が、仮想平面Pよりも他方側に配置された第2磁路の磁気抵抗よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸方向を回転軸方向として回転する回転部材を制動する電磁ブレーキ装置であって、
前記軸方向において前記回転部材の一方側に隣接配置され、前記軸方向に移動可能に構成され、前記回転部材の前記軸方向における一方側の端に形成された端面に接触しているときに前記回転部材の回転を制動する、磁性材料で形成された可動部材と、
前記可動部材を前記軸方向における他方側へ付勢する複数の付勢部材と、
前記軸方向における前記一方側への磁力を前記可動部材に加えることが可能に構成された電磁石ユニットと、を備え、
前記電磁石ユニットは、
前記軸方向に延び且つ磁性材料で形成された筒状の内筒部と、前記内筒部の径方向における外側に配置され且つ磁性材料で形成された筒状の外筒部と、を有し、前記可動部材の前記軸方向における前記一方側に配置されたヨークと、
前記径方向において前記内筒部の外側且つ前記外筒部の内側に配置され、電流が流れているときに前記可動部材及び前記ヨークを通る磁束を生成するように構成されたコイルと、
前記外筒部に設けられ、前記回転部材の回転中心軸を含む所定の仮想平面の両側に配置され、前記可動部材の前記軸方向における前記一方側への移動を規制する規制部と、を有し、
前記規制部は、前記可動部材が前記磁力によって前記ヨークに引き寄せられたときに、前記仮想平面の両側において前記可動部材と接触することにより、前記回転部材の前記端面と、前記可動部材に形成され前記回転部材の前記端面と前記軸方向において対向する対向面とを平行にするように構成され、
前記可動部材が前記磁力によって前記ヨークに引き寄せられた状態で、前記可動部材及び前記ヨークを含んで形成された磁路のうち、前記仮想平面の一方側に配置された第1磁路の磁気抵抗が、前記仮想平面の他方側に配置された第2磁路の磁気抵抗よりも大きいことを特徴とする電磁ブレーキ装置。
【請求項2】
前記複数の付勢部材は、前記外筒部に収容され、且つ、前記可動部材の周方向において互いに異なる位置に配置され、
前記規制部は、少なくとも、前記周方向において、前記複数の付勢部材のうち前記周方向において互いに隣り合う2つの付勢部材の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁ブレーキ装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記外筒部の全周に亘って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電磁ブレーキ装置。
【請求項4】
前記複数の付勢部材は、前記仮想平面よりも前記一方側に配置された1以上の第1付勢部材と、前記仮想平面よりも前記他方側に配置された1以上の第2付勢部材と、を有し、
前記可動部材が前記ヨークに引き寄せられた状態で、前記1以上の第1付勢部材による第1付勢力が、前記1以上の第2付勢部材による第2付勢力よりも強いことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電磁ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定の軸方向を回転軸方向として回転する円板(以下、回転部材)を制動する電磁ブレーキ装置が開示されている。電磁ブレーキ装置は、軸方向において回転部材と隣接配置された可動板(以下、可動部材)と、可動部材を軸方向において回転部材側に付勢するバネと、可動部材を軸方向において回転部材から離隔させるための電磁石とを備える。可動部材は磁性材料からなる。電磁石は、軸方向において可動部材を隔てて回転部材と反対側に配置されたヨークと、ヨークに収容されたコイルとを有する。コイルが通電されているとき、可動部材が磁気吸引力(以下、単に磁力)によってヨークに引き寄せられており、回転部材から離隔している。コイルへの通電が切られたとき、磁力が短時間で弱まる。バネによる付勢力が磁力よりも相対的に強くなったとき、可動部材が軸方向に移動して回転部材と接触することで、摩擦力によるブレーキが作動する。
【0003】
ブレーキの作動時に可動部材と回転部材とが接触することによる衝撃の緩和を目的として、特許文献1に記載の可動部材のヨーク側の端部、及びヨークの可動部材側の端部には段差が形成されている。より詳しくは、可動部材の上記端部は、周方向において分割された2つの半リング状の端面(説明の便宜上、第1可動面及び第2可動面と呼ぶ)を有する。第2可動面は、軸方向において第1可動面よりもヨークから遠い側に配置されている。ヨークの上記端部も、同様に周方向において分割された2つの端面(説明の便宜上、第1ヨーク端面及び第2ヨーク端面と呼ぶ)を有する。第1ヨーク端面は軸方向において第1可動端面と対向し、第2ヨーク端面は軸方向において第2可動端面と対向する。第2可動端面と第2ヨーク端面との軸方向における距離は、第1可動端面と第1ヨーク端面との軸方向における距離よりも大きい。これにより、第2可動端面と第2ヨーク端面との間に作用する磁力が、第1可動端面と第1ヨーク端面との間に作用する磁力よりも弱くなる。これにより、コイルへの通電が切られた際に、可動部材のうち第2可動端面が形成された部分を、可動部材のうち第1可動端面が形成された部分よりも早く回転部材に接触させることが図られる。このように、可動部材の全面が回転部材に同時に接触することを回避し、可動部材を回転部材に徐々に接触させることで、衝撃の緩和が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-88032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルが通電されているときに、可動部材のうち軸方向において回転部材に近い側の端面(回転部材側端面)が、回転部材のうち回転部材側端面と対向する端面(可動部材側端面)と平行であれば、上述したように、可動部材を回転部材に徐々に接触させることができる。しかしながら、一般的には、電磁ブレーキ装置は、ブレーキのオンとオフとを確実に切り換えるため、電磁石による吸引力がバネによる付勢力と比べて非常に強くなるように設計される。このため、コイルへの通電が開始された際、第1可動端面が第1ヨーク端面に接触した後、第1可動端面と第2可動端面との境目部分を支点として第2可動端面が第2ヨーク端面側へ傾き、第2可動端面までもがヨークに完全に吸着される可能性がある。このとき、可動部材の回転部材側端面が、回転部材の可動部材側端面に対して傾いてしまう。このような状態でコイルへの通電が切られると、上述したように第2可動端面が第2ヨーク端面から早く離れるため、回転部材側端面が可動部材側端面と略平行に戻ったタイミングで、可動部材が回転部材に接触するおそれがある。この場合、結局は、可動部材の全面が回転部材に同時に接触してしまう。
【0006】
本発明の目的は、ブレーキの作動時に、可動部材と回転部材との接触による衝撃を確実に緩和させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の電磁ブレーキ装置は、所定の軸方向を回転軸方向として回転する回転部材を制動する電磁ブレーキ装置であって、前記軸方向において前記回転部材の一方側に隣接配置され、前記軸方向に移動可能に構成され、前記回転部材の前記軸方向における一方側の端に形成された端面に接触しているときに前記回転部材の回転を制動する、磁性材料で形成された可動部材と、前記可動部材を前記軸方向における他方側へ付勢する複数の付勢部材と、前記軸方向における前記一方側への磁力を前記可動部材に加えることが可能に構成された電磁石ユニットと、を備え、前記電磁石ユニットは、前記軸方向に延び且つ磁性材料で形成された筒状の内筒部と、前記内筒部の径方向における外側に配置され且つ磁性材料で形成された筒状の外筒部と、を有し、前記可動部材の前記軸方向における前記一方側に配置されたヨークと、前記径方向において前記内筒部の外側且つ前記外筒部の内側に配置され、電流が流れているときに前記可動部材及び前記ヨークを通る磁束を生成するように構成されたコイルと、前記外筒部に設けられ、前記回転部材の回転中心軸を含む所定の仮想平面の両側に配置され、前記可動部材の前記軸方向における前記一方側への移動を規制する規制部と、を有し、前記規制部は、前記可動部材が前記磁力によって前記ヨークに引き寄せられたときに、前記仮想平面の両側において前記可動部材と接触することにより、前記回転部材の前記端面と、前記可動部材に形成され前記回転部材の前記端面と前記軸方向において対向する対向面とを平行にするように構成され、前記可動部材が前記磁力によって前記ヨークに引き寄せられた状態で、前記可動部材及び前記ヨークを含んで形成された磁路のうち、前記仮想平面の一方側に配置された第1磁路の磁気抵抗が、前記仮想平面の他方側に配置された第2磁路の磁気抵抗よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明では、コイルが通電されているとき(すなわち、コイルに電流が流れているとき)、可動部材が磁力によってヨークに引き寄せられる。この状態で、規制部によって、回転部材の軸方向における一方側の端面と、可動部材の対向面とを平行にすることができる。その上で、可動部材がヨークに引き寄せられた状態で、第1磁路の磁気抵抗が第2磁路の磁気抵抗よりも大きい。これにより、コイルへの通電が切られた際、可動部材のうち仮想平面よりも一方側に配置された部分(以下、第1部分)に作用する磁力が、可動部材のうち仮想平面よりも他方側に配置された部分(以下、第2部分)に作用する磁力よりも早く弱まる。このため、コイルへの通電が切られた際、第1部分が、第2部分よりも先にヨークから離れて回転部材に接触する。つまり、可動部材がわずかに傾いた状態で回転部材に接触する。その後、第2部分が第1部分よりも若干遅れて回転部材に接触する。このようにすることで、回転部材の回転を制動する際に、可動部材と回転部材との接触面積を徐々に大きくすることができる。したがって、ブレーキの作動時に、可動部材と回転部材との接触による衝撃を確実に緩和できる。
【0009】
第2の発明の電磁ブレーキ装置は、前記第1の発明において、前記複数の付勢部材は、前記外筒部に収容され、且つ、前記可動部材の周方向において互いに異なる位置に配置され、前記規制部は、少なくとも、前記周方向において、前記複数の付勢部材のうち前記周方向において互いに隣り合う2つの付勢部材の間に配置されていることを特徴とする。
【0010】
説明の便宜上、可動部材のうち、周方向において付勢部材が配置された位置に位置している部分を付勢部分と呼ぶ。可動部材のうち、周方向において付勢部材が配置されていない位置に位置している部分を非付勢部分と呼ぶ。コイルに電流が流れているときに、非付勢部分は、付勢部分と比べて強い力でヨークに引き寄せられるため、撓んでしまう可能性がある。本発明では、周方向において非付勢部分が配置された位置に規制部が設けられている。このため、可動部材がヨークに吸着されたとき等に、可動部材が撓むことを抑制できる。
【0011】
第3の発明の電磁ブレーキ装置は、前記第2の発明において、前記規制部は、前記外筒部の全周に亘って設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明では、可動部材がヨークに吸着されているときに可動部材が撓んでしまうことを効果的に防止できる。
【0013】
第4の発明の電磁ブレーキ装置は、前記第1~第3のいずれかの発明において、前記複数の付勢部材は、前記仮想平面よりも前記一方側に配置された1以上の第1付勢部材と、前記仮想平面よりも前記他方側に配置された1以上の第2付勢部材と、を有し、前記可動部材が前記ヨークに引き寄せられた状態で、前記1以上の第1付勢部材による第1付勢力が、前記1以上の第2付勢部材による第2付勢力よりも強いことを特徴とする。
【0014】
本発明では、コイルへの通電が切られた際、第1部分を第2部分よりも確実に早く回転部材に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る電磁ブレーキ装置を軸方向から見た図である。
図2】(a)、(b)は、図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】ヨークの内筒部の断面図である。
図5】内筒部の斜視図である。
図6】コイルへの通電が切られてから第1時間が経過した後の電磁ブレーキ装置の状態を示す説明図である。
図7図6に示す状態からさらに第2時間が経過した後の電磁ブレーキ装置の状態を示す説明図である。
図8】変形例に係る電磁ブレーキ装置を軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る電磁ブレーキ装置1について説明する。説明の便宜上、図1の紙面垂直方向及び図2の紙面上下方向を軸方向と呼ぶ。軸方向は、後述する回転軸RS(図2参照)の回転軸方向である。回転軸RSの径方向を単に径方向と呼ぶ。径方向は、電磁ブレーキ装置1全体の径方向と等しい。回転軸RSの周方向を単に周方向と呼ぶ。周方向は、電磁ブレーキ装置1全体の周方向と等しい。
【0017】
(電磁ブレーキ装置の概要)
電磁ブレーキ装置1の概要について、図1図2(b)を参照しつつ説明する。図1は、軸方向において後述の固定板3側から電磁ブレーキ装置1を見た図である。図2(a)は、図1のII-II線断面図である。より具体的には、図2(a)は、後述するコイル52が通電されているとき(すなわち、コイル52に電流が流れているとき)の電磁ブレーキ装置1の状態を示す図である。図2(b)は、図2(a)と同様に、図1のII-II線断面図である。より具体的には、図2(b)は、コイル52に電流が流れていないときの電磁ブレーキ装置1の状態を示す図である。
【0018】
電磁ブレーキ装置1は、回転軸RS(図2参照)の回転を制動することにより、回転軸RSが接続された機器(不図示)の動作を停止させるための装置である。図1図2(a)に示すように、電磁ブレーキ装置1は、回転部材2と、固定板3と、可動板4(本発明の可動部材)と、電磁石ユニット5と、複数のバネ6(本発明の付勢部材)とを備える。電磁ブレーキ装置1は、回転軸RSに取り付けられた回転部材2を固定板3と可動板4とによって挟み込むことによりブレーキを作動させるように構成されている。より具体的には、電磁石ユニット5が可動板4を引き寄せて回転部材2から離隔させることにより、回転部材2の回転が可能となる。また、電磁石ユニット5が可動板4を引き寄せている状態が解除される(以下、「電磁石ユニット5が可動板4を釈放する」と称する)ことにより、可動板4が複数のバネ6によって回転部材2に押し付けられる(図2(b)参照)。これにより、ブレーキが作動する。
【0019】
(各構成要素)
次に、電磁ブレーキ装置1の各構成要素のより詳細について、図1図3を参照しつつ説明する。図3は、コイル52が通電されているときの、図1のIII-III断面図である。
【0020】
回転部材2は、ハブ21と、ディスク22とを有する。ハブ21は、回転軸RSの先端部RS1に固定された略筒状の部分である。ハブ21は、例えば公知のスプラインカラーである。ハブ21は、例えばディスク22の内周部と嵌合する嵌合部21a(図1参照)を有する。ディスク22は、径方向においてハブ21の外側に配置された略円板状の部材である。ディスク22の内周部は、ハブ21の嵌合部21aと嵌合している。これにより、ディスク22はハブ21と一体回転可能となっている。或いは、ハブ21及びディスク22は、1つの部材によって形成されていても良い。
【0021】
以下、説明の便宜上、図2(a)に示すように、軸方向における一方側及び他方側を定義する。図2(a)の紙面下側が、軸方向における一方側である。図2(a)の紙面上側が、軸方向における他方側である。図2(b)において図示を省略するが、軸方向における一方側及び他方側の定義は、図2(a)と図2(b)とで同じである。図2(a)、図2(b)に示すように、ディスク22の軸方向における一方側の端に、端面22aが形成されている。ディスク22の軸方向における他方側の端に、端面22bが形成されている。端面22aは、可動板4の端面4b(後述)と接触可能に配置された面である。端面22bは、固定板3の端面3a(後述)と接触可能に配置された面である。
【0022】
固定板3は、例えば略円板状の部材である。図2(a)~図3に示すように、固定板3は、ディスク22の軸方向における他方側に隣接配置されている。固定板3の軸方向における一方側の端に、端面3aが形成されている。端面3aは、ディスク22の端面22bと接触可能に配置された面である。図3に示すように、固定板3は、複数のボルトBの軸がそれぞれ挿通される複数の挿通孔3bを有する。固定板3は、複数のボルトBによって電磁石ユニット5に固定されている。
【0023】
可動板4は、例えば略円板状の部材である。可動板4は、鉄などの磁性材料によって形成されている。図2(a)~図3に示すように、可動板4は、ディスク22の軸方向における一方側に隣接配置されている。可動板4は、電磁石ユニット5の軸方向における他方側に隣接配置されている。可動板4は、回転軸RSの径方向における外側に配置されている。可動板4の軸方向における一方側の端に、端面4aが形成されている。端面4aは、後述するヨーク51に形成された端面54bと接触可能に配置された面である。可動板4の軸方向における他方側の端に、端面4b(本発明の対向面)が形成されている。端面4bは、ディスク22の端面22aと接触可能に配置された面である。端面4aと端面4bは略平行である。
【0024】
図3に示すように、可動板4は、複数のカラーCがそれぞれ挿通される複数の挿通孔4cを有する。各挿通孔4cは、可動板4を軸方向に貫通している。複数のカラーCの各々は、軸方向に延びている。複数のカラーCは、複数のボルトBによって、固定板3と電磁石ユニット5との間にそれぞれ固定されている。可動板4は、複数のカラーCによって軸方向に案内される。これにより、可動板4は、軸方向に移動可能である。より具体的には、可動板4は、ブレーキ解除位置(図2(a)参照)と、ブレーキ作動位置(図2(b)参照)との間で移動可能である。ブレーキ解除位置は、可動板4が軸方向において電磁石ユニット5側に引き寄せられて吸着したときの可動板4の位置である。ブレーキ作動位置は、可動板4が電磁石ユニット5から釈放されてディスク22に完全に押し当てられたときの可動板4の位置である。
【0025】
電磁石ユニット5は、可動板4を吸着させたり釈放したりするためのユニットである。図2(a)~図3に示すように、電磁石ユニット5は、軸方向において可動板4の一方側に隣接配置されている。電磁石ユニット5は、ヨーク51と、コイル52とを有する。
【0026】
ヨーク51は、軸方向に沿って延びた概ね筒状の部材である。ヨーク51は、鉄などの磁性材料によって形成されている。ヨーク51は、回転軸RSの径方向における外側に配置されている。ヨーク51は、内筒部53と、外筒部54と、円板部55とを有する。内筒部53、外筒部54及び円板部55によって、コイル52が収容されるコイル収容溝56が形成されている。本実施形態では、内筒部53、外筒部54及び円板部55は1つの部材によって一体的に形成されている。但し、これには限られない。
【0027】
内筒部53は、回転軸RSの径方向におけるすぐ外側に配置された略円筒状の部分である。説明の便宜上、外筒部54の軸方向における一方側の端は、図2(a)、図2(b)において二点鎖線で示されている。内筒部53は、径方向における外側の端に形成された外周面53aを有する。外周面53aは、径方向において後述の内周面54aと対向するように配置されている。内筒部53は、例えば、軸方向における他方側の端に形成されたリング収容溝53bを有する。リング収容溝53bは、内筒部53の全周(すなわち、周方向における全域)に亘って延びている。リング収容溝53bには、例えばOリングRがはめ込まれている。OリングRは、可動板4とヨーク51との接触時に生じる衝撃及び音を抑制するための緩衝部材である。なお、OリングRは別の位置に設けられていても良い。リング収容溝53bの代わりに、例えば外筒部54の端面54b(後述)に不図示のリング収容溝が設けられていても良い。このような不図示のリング収容溝にOリングRが収容されていても良い。
【0028】
外筒部54は、内筒部53の径方向における外側に配置された略円筒状の部分である。説明の便宜上、外筒部54の軸方向における一方側の端は、図2(a)、図2(b)において二点鎖線で示されている。外筒部54は、径方向における内側の端に形成された内周面54aを有する。内周面54aは、径方向において、内筒部53の外周面53aと離隔して配置され且つ外周面53aと対向するように配置されている。外筒部54の軸方向における他方側の端には、端面54b(本発明の規制部)が形成されている。端面54bは、可動板4の端面4aと接触可能に配置されている。外筒部54は、軸方向にそれぞれ延びた複数の螺合孔54cを有する。複数の螺合孔54cには、複数のボルトBがそれぞれ螺合されている。外筒部54は、軸方向にそれぞれ延びた複数のバネ収容孔57を有する。複数のバネ収容孔57の各々には、バネ6が収容されている。
【0029】
円板部55は、略円板状の部分である。円板部55は、内筒部53及び外筒部54の軸方向における一方側に配置されている。説明の便宜上、円板部55と内筒部53との境界及び円板部55と外筒部54との境界は、図2(a)、図2(b)において二点鎖線で示されている。円板部55の上端には、上面55aが形成されている。上面55aは、径方向において内筒部53の外周面53aと外筒部54の内周面54aとの間に配置されている。上面55aは、外周面53a及び内周面54aと接続されている。外周面53a、内周面54a及び上面55aによって、上述したコイル収容溝56が形成されている。
【0030】
コイル52は、電流が流れているときに、可動板4及びヨーク51を通る磁束を生成するように構成されている。コイル52は、コイル収容溝56内に配置されている。コイル52は、周方向に巻かれている(図2(a)等における、コイル52を示す記号を参照)。コイル52は、不図示の電源に接続されている。コイル52に電流が流れることによって生成される磁束は、例えば、内筒部53、可動板4、外筒部54及び円板部55をこの順に通る(図示は省略する)。このように、磁束が通る磁路が、電磁石ユニット5の全周に亘って形成されている。
【0031】
複数のバネ6は、可動板4を軸方向における他方側へ付勢するための付勢部材である。複数のバネ6の各々は、例えば公知の圧縮コイルバネである。複数のバネ6は、複数のバネ収容孔57にそれぞれ収容されている。複数のバネ6は、例えば、周方向において略等間隔に配置されている。本実施形態では、6つのバネ6が6つのバネ収容孔57(図1参照)に収容されている。
【0032】
(電磁ブレーキ装置の動作の概略)
以上の構成を有する電磁ブレーキ装置1の動作の概略について説明する。コイル52が通電されたとき、上記磁束によって可動板4とヨーク51との間に磁力(磁気吸引力)が発生する。磁力がバネ6による付勢力(すなわち、弾性復元力。バネ荷重とも呼ばれる)よりも強くなったとき、可動板4が付勢力に抗って軸方向における一方側へ移動し、ヨーク51に吸着される(図2(a)参照)。このとき、可動板4はブレーキ解除位置へ移動する。可動板4がブレーキ解除位置に位置しているとき、回転部材2は、軸方向において固定板3及び可動板4からわずかに離隔している。これにより、回転部材2及び回転軸RSが回転可能となる。
【0033】
一方、コイル52への通電が切られたとき、上記磁力が短時間で弱まる。バネ6による付勢力が磁力よりも相対的に強くなったとき、可動板4がヨーク51から離隔する(すなわち、電磁石ユニット5から釈放される)。このとき、可動板4は付勢力によってブレーキ作動位置へ移動する。可動板4が回転部材2に押し付けられると、回転部材2が固定板3と可動板4とによって挟み込まれる。これにより、ディスク22の端面22aと可動板4の端面4bとの間に摩擦力が作用し、且つ、ディスク22の端面22bと固定板3の端面3aとの間に摩擦力が作用する。これにより、回転部材2及び回転軸RSの回転が制動される(すなわち、ブレーキが作動する)。
【0034】
ここで、可動板4がブレーキ作動位置からブレーキ解除位置へ移動する際には、上述したOリングRによって衝撃等を緩和できる。しかし、可動板4がブレーキ解除位置からブレーキ作動位置へ移動する際の衝撃を緩和することを目的として、軸方向において回転部材2と可動板4との間にOリング等の緩衝部材を設けることはできない。その理由は、緩衝部材が設けられると、ディスク22の端面22aと可動板4の端面4aとの接触面積が減少してしまうためである。この場合、回転部材2及び回転軸RSを制動するために必要な摩擦力が得られなくなるおそれがある。
【0035】
そこで、ブレーキの作動時に、可動板4と回転部材2との接触による衝撃を確実に緩和させるため、電磁ブレーキ装置1は、さらに以下のように構成されている。
【0036】
(電磁ブレーキ装置の詳細構成)
電磁ブレーキ装置1の詳細構成(特に、ヨーク51の詳細構成)について、図1図5を参照しつつ説明する。図4は、ヨーク51の内筒部53の断面図である。図5は、内筒部53の斜視図である。図5においては、リング収容溝53bの図示を省略している。
【0037】
概要として、ヨーク51は、所定の仮想平面P(図1図2(a)、図2(b)及び図4を参照)を挟んで互いに反対側に形成された2つの磁路の磁気抵抗が、互いに異なるように構成されている。仮想平面Pとは、軸方向に平行であり、且つ、ヨーク51の径方向における略中心を通る所定の仮想的な平面である。仮想平面Pは、回転部材2の回転中心軸を含む。2つの磁路は、説明の便宜上、仮想平面Pによって仮想的に2つに分割された磁路である。すなわち、2つの磁路は、必ずしも部材等によって分割されたものではない。以下、仮想平面Pと垂直な方向を所定方向とする(図1図2(b)及び図4参照)。説明の便宜上、図1図2(b)及び図4において、紙面右側を所定方向における一方側と定義し、紙面左側を所定方向における他方側と定義する。図示は省略するが、図2(a)における所定方向の定義も、図1等における所定方向の定義と同じである。
【0038】
以下、説明の便宜上、電磁ブレーキ装置1のうち、仮想平面Pよりも所定方向における一方側に配置された部分を一方側部分と呼ぶ。電磁ブレーキ装置1のうち、仮想平面Pよりも所定方向における一方側に配置された部分を他方側部分と呼ぶ。
【0039】
図2に示すように、可動板4は、仮想平面Pを挟んで可動板部4Rと可動板部4Lとに便宜上分割される。可動板部4R(第1部分とも呼ぶことができる)は、電磁ブレーキ装置1の一方側部分に含まれる。可動板部4L(第2部分とも呼ぶことができる)は、電磁ブレーキ装置1の他方側部分に含まれる。
【0040】
図4及び図5に示すように、内筒部53は、円筒を斜めに切った形状を有する(図4及び図5参照)。内筒部53の軸方向における他方側の端部には、端面53cが形成されている。端面53cは、例えば、全体として概ねリング状である。端面53cは、全体として所定方向に対して傾いている。言い換えると、軸方向における位置が一定である仮想的な面を仮想端面53cVとしたとき(図4及び図5参照)、端面53cは、仮想端面53cVに対して傾いている。
【0041】
図4及び図5に示すように、内筒部53は、仮想平面Pを挟んで内筒部53Rと内筒部53Lとに便宜上分割される。内筒部53Rは、電磁ブレーキ装置1の一方側部分に含まれる。内筒部53Lは、電磁ブレーキ装置1の他方側部分に含まれる。内筒部53Rの軸方向における他方側の端面を端面53Rcと呼ぶ。内筒部53Lの軸方向における他方側の端面を端面53Lcと呼ぶ。端面53Rcの軸方向における位置と、端面53Lcの軸方向における位置は、互いに異なる。より具体的には、軸方向において、端面53Rcの所定方向における一方側の端は、端面53Lcの所定方向における他方側の端よりも一方側に位置している(図4に示す距離Dを参照)。これにより、可動板4がブレーキ解除位置に位置しているとき、端面53Rcと端面4aとの間に形成される隙間の大きさの平均値が、端面53Lcと端面4aとの間に形成される隙間の大きさの平均値よりも大きい。したがって、可動板4がブレーキ解除位置に位置しているとき、一方側部分において、他方側部分と比べて磁束が通りにくい。言い換えると、仮想平面Pよりも所定方向における一方側において形成される磁路(以下、第1磁路と呼ぶ)の磁気抵抗が、仮想平面Pよりも所定方向における他方側において形成される磁路(以下、第2磁路と呼ぶ)の磁気抵抗と比べて大きい。
【0042】
次に、外筒部54の形状の詳細について説明する。外筒部54の端面54bは、外筒部54の全周に亘って設けられている。言い換えると、端面54bは、少なくとも、周方向において、複数のバネ6のうち周方向において互いに隣り合う任意の2つのバネ6の間に配置されている。さらに、端面54bの軸方向における位置は、外筒部54の全周に亘って略一定である。つまり、端面54bの軸方向における位置は、仮想平面Pの両側において略同じである。これにより、可動板4がブレーキ解除位置に移動したとき、可動板4の端面4aは、外筒部54の端面54bと略全周に亘って確実に接触する。このため、可動板4がブレーキ解除位置に位置しているとき、可動板4の端面4bをディスク22の端面22aと略平行にすることができる。
【0043】
複数のバネ収容孔57のうち、仮想平面Pよりも所定方向における一方側に配置されたバネ収容孔57をバネ収容孔57Rと呼ぶ(図2(a)、図2(b)参照)。複数のバネ収容孔57のうち、仮想平面Pよりも所定方向における他方側に配置されたバネ収容孔57をバネ収容孔57Lと呼ぶ(図2(a)、図2(b)参照)。本実施形態では、複数の(より具体的には3つの)バネ収容孔57R、及び複数の(より具体的には3つの)バネ収容孔57Lが設けられている(図1参照)。複数のバネ収容孔57Rは、軸方向において複数のバネ収容孔57Lよりも浅い。言い換えると、バネ収容孔57Rの軸方向における一方側の端に形成された底面は、バネ収容孔57Lの軸方向における一方側の端に形成された底面よりも、軸方向における他方側に配置されている。複数のバネ収容孔57Rの軸方向における深さは、例えば略等しい。複数のバネ収容孔57Lの軸方向における深さは、例えば略等しい。また、バネ収容孔57Rに収容されたバネ6をバネ6R(本発明の第1付勢部材)と呼ぶ。バネ収容孔57Lに収容されたバネ6をバネ6L(本発明の第2付勢部材)と呼ぶ。バネ6Rの数とバネ6Lの数は等しい。バネ6Rの自由高さとバネ6Lの自由高さは、例えば略等しい。バネ6Rのバネ定数とバネ6Lのバネ定数は、例えば略等しい。以上により、可動板4がブレーキ解除位置に位置しているとき、バネ6Rの変形量はバネ6Lの変形量よりも大きい。このため、可動板4がブレーキ解除位置に位置しているとき、複数のバネ6Rによる付勢力(以下、第1付勢力)は、複数のバネ6Lによる付勢力(以下、第2付勢力)よりも強い。第1付勢力は、複数のバネ6Rの各々のバネ荷重(弾性復元力)の和である。第2付勢力は、複数のバネ6Lの各々のバネ荷重の和である。
【0044】
(電磁ブレーキ装置の動作の詳細)
以上の構成を有する電磁ブレーキ装置1の動作の詳細について説明する。まず、コイル52に電流が流れているとき、可動板4は、上述したようにブレーキ解除位置に位置している(図2(a)参照)。このとき、可動板4の端面4aが、周方向における略全域に亘ってヨーク51の外筒部54の端面54bに接触している。このため、可動板4がブレーキ解除位置に位置しているとき、可動板4の端面4bは、ディスク22の端面22aと略平行である。ここで、上述した構成によって、電磁ブレーキ装置1の一方側部分は、電磁ブレーキ装置1の他方側部分と比べて以下の性質を有する。すなわち、一方側部分に形成される第1磁路の磁気抵抗は、他方側部分に形成される第2磁路の磁気抵抗よりも大きい。これにより、一方側部分において可動板4(可動板部4R)とヨーク51との間に発生する磁力は、他方側部分において可動板4(可動板部4L)とヨーク51との間に発生する磁力よりも弱い。また、一方側部分における、複数のバネ6Rによる第1付勢力は、他方側部分における、複数のバネ6Lによる第2付勢力よりも強い。
【0045】
電磁ブレーキ装置1は、以上のような性質を有するため、コイル52への通電が切られた後に、可動板4が図6及び図7に示すように動作する。図6は、コイル52への通電が切られてから所定の第1時間が経過した後の電磁ブレーキ装置1の状態を示す説明図である。図7は、図6に示す状態からさらに所定の第2時間が経過した後の電磁ブレーキ装置1の状態を示す説明図である。第1時間及び第2時間のいずれも、ごく短い時間である。
【0046】
まず、コイル52への通電が切られたとき、上述したように可動板4とヨーク51との間に発生していた磁力が弱まる。例えば、コイル52への通電が切られてから第1時間が経過したとき、一方側部分において可動板部4Rとヨーク51との間に作用している磁力が、バネ6Rの付勢力よりも弱くなる。つまり、バネ6Rの付勢力が、一方側部分における磁力よりも相対的に強くなる。一方、このとき、上述した電磁ブレーキ装置1の性質より、他方側部分において可動板部4Lとヨーク51との間に作用している磁力は、バネ6Lの付勢力よりもまだ強い。このため、可動板4のうち、可動板部4Rのみが、可動板部4Lと比べて先にヨーク51から釈放される(図6の矢印参照)。そして、可動板4の端面4bのうち、所定方向において仮想平面Pよりも一方側に配置された部分が、ディスク22の端面22aのうち所定方向における一方側の端に当接する(図6参照)。つまり、端面4bは、端面22aに対して傾いた状態で、端面22aの一部にのみ接触する。
【0047】
その後、さらに第2時間が経過したとき、可動板部4Lとヨーク51との間に作用している磁力が、バネ6Lの付勢力よりも弱くなる。つまり、バネ6Lの付勢力が、他方側部分における磁力よりも相対的に強くなる。これにより、可動板部4Lもヨーク51から釈放される(図7の矢印参照)。これにより、可動板4は、図6において端面22aに接触した部分を支点として、端面4bの端面22aに対する傾きが小さくなるように移動する。言い換えると、端面4bが、端面22aのうち所定方向における一方側の端から他方側の端へかけて徐々に接触する。
【0048】
以上のようにして、コイル52への通電が切られたとき、端面4bが端面22aに少しずつ接触する。つまり、コイル52への通電が切られたとき、可動板4と回転部材2との接触面積が徐々に大きくなる。これにより、可動板4がディスク22に接触したときの衝撃及び音が抑制される。
【0049】
以上のように、コイル52に電流が流れているとき、可動板4が磁力によってヨーク51に引き寄せられる。この状態で、外筒部54の端面54bによって、回転部材2(ディスク22)の軸方向一方側の端面22aと、可動板4の端面4bとを略平行にすることができる。その上で、可動板4がヨーク51に引き寄せられた状態で、第1磁路の磁気抵抗が第2磁路の磁気抵抗よりも大きい。これにより、コイル52への通電が切られた際、可動板部4Rに作用する磁力が、可動板部4Lに作用する磁力よりも早く弱まる。このため、コイル52への通電が切られた際、可動板部4Rが、可動板部4Lよりも先にヨーク51から離れて回転部材2に接触する。つまり、可動板4が所定方向からわずかに傾いた状態で回転部材2に接触する。その後、可動板部4Lが可動板部4Rよりも若干遅れて回転部材2に接触する。このようにすることで、回転部材2の回転を制動する際に、可動板4と回転部材2との接触面積を徐々に大きくすることができる。したがって、ブレーキの作動時に、可動板4と回転部材2との接触による衝撃を確実に緩和できる。
【0050】
また、端面54bは、少なくとも、周方向において、複数のバネ6のうち周方向において互いに隣り合う任意の2つのバネ6の間に配置されている。可動板4のうち、周方向においてバネ6が配置されていない位置に位置している部分は、コイル52が通電されているときにヨーク51側へ比較的強い力で引き寄せられるため、撓んでしまう可能性がある。この点、本実施形態では、上述した位置に端面54bが設けられているため、可動板4がヨーク51に吸着されたとき等に可動板4が撓んでしまうことを抑制できる。
【0051】
また、端面54bは、外筒部54の全周に亘って設けられている。したがって、可動板4がヨーク51に吸着されているときに可動板4が撓んでしまうことを効果的に抑制できる。
【0052】
また、複数のバネ6Rによる第1付勢力は、複数のバネ6Lによる第2付勢力よりも強い。これにより、コイルへの通電が切られた際、可動板部4Rを可動板部4Lよりも確実に早く回転部材2に接触させることができる。
【0053】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0054】
(1)前記実施形態において、バネ6Rの変形量がバネ6Lの変形量よりも大きくなるようにバネ収容孔57R及びバネ収容孔57Lが構成されているものとした。より具体的には、複数のバネ収容孔57Rは、軸方向において複数のバネ収容孔57Lよりも浅いものとした。また、複数のバネ収容孔57Rの軸方向における深さが略等しく、複数のバネ収容孔57Lの軸方向における深さが略等しいものとした。しかしながら、これには限られない。まず、複数のバネ収容孔57Rの軸方向における深さは、所定方向における位置に応じて互いに異なっていても良い。例えば、所定方向において仮想平面Pから最も遠いバネ収容孔57Rは、当該最も遠いバネ収容孔57Rよりも所定方向において仮想平面Pに近いバネ収容孔57Rと比べて、軸方向においてさらに浅くても良い。同様に、複数のバネ収容孔57Lの軸方向における深さも、所定方向における位置に応じて互いに異なっていても良い。例えば、所定方向において仮想平面Pから最も遠いバネ収容孔57Lは、当該最も遠いバネ収容孔57Lよりも所定方向において仮想平面Pに近いバネ収容孔57Lと比べて、軸方向においてさらに深くても良い。
【0055】
或いは、複数のバネ収容孔57Rは、軸方向において複数のバネ収容孔57Lよりも浅くなくても良い。すなわち、軸方向において、バネ収容孔57Rの一方側の端に形成された底面は、バネ収容孔57Lの一方側の端に形成された底面と略同じ位置に配置されていても良い。この場合、例えば以下のようにして、複数のバネ6Rによる第1付勢力を、複数のバネ6Lによる第2付勢力よりも強くしても良い。第1の例として、バネ6Rのバネ定数がバネ6Lのバネ定数よりも大きくても良い。第1の例によって、簡単な構造で、第1付勢力を第2付勢力よりも強くすることができる。第2の例として、図8に示すように、複数のバネ6Rの数が、複数のバネ6Lの数よりも多くても良い。
【0056】
(2)前記までの実施形態において、複数のバネ6Rによる第1付勢力が、複数のバネ6Lによる第2付勢力よりも強いものとした。しかしながら、これには限られない。第1付勢力と第2付勢力は、略同じでも良い。
【0057】
(3)電磁ブレーキ装置1が備えるバネ6の数及びボルトBの数は、上述したものに限られない。バネ6の数及びボルトBの数は、電磁ブレーキ装置1の仕様に応じて適切に設定される。
【0058】
(4)前記までの実施形態において、外筒部54の端面54bが、全周(周方向における全域)に亘って形成されているものとした。また、端面54bの軸方向における位置が、全周に亘って略一定であるものとした。しかしながら、これには限られない。上述したように、少なくとも、周方向において、複数のバネ6のうち互いに隣り合う任意の2つのバネ6の間に、可動板4の軸方向における移動を規制する複数の規制部が設けられていても良い。この場合、複数の規制部の軸方向における位置は、略同じである。或いは、複数の規制部は、必ずしも周方向において隣り合う2つのバネ6の間に配置されていなくても良い。
【0059】
(5)前記までの実施形態において、第1磁路の磁気抵抗を第2磁路の磁気抵抗よりも大きくするために、内筒部53が円筒を斜めに切った形状を有しているものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、内筒部53の端面53Rc及び端面53Lcが、階段状に形成されていても良い。つまり、端面53Rc及び端面53Lcが、仮想平面Pに関して非対称に形成されていても良い。また、内筒部53に加えて、或いは内筒部53の代わりに、可動板4の端面4aの形状が仮想平面Pに関して非対称に形成されていても良い。また、軸方向において端面53cと端面4aとの間に形成された隙間に、何らかの非磁性部材が配置されていても良い。以上のように、第1磁路の磁気抵抗を第2磁路の磁気抵抗よりも大きくするために、どのような手段が設けられていても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 電磁ブレーキ装置
2 回転部材
4 可動板(可動部材)
4b 端面(対向面)
5 電磁石ユニット
6 バネ(付勢部材)
6L バネ(第2付勢部材)
6R バネ(第1付勢部材)
22a 端面
51 ヨーク
52 コイル
53 内筒部
54 外筒部
54b 端面(規制部)
P 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8