(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138573
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電池モジュール、及び当該電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/512 20210101AFI20241002BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20241002BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20241002BHJP
【FI】
H01M50/512
H01M50/507
H01M50/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137849
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】古田 武男
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐之介
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA08
5H043FA04
5H043FA23
5H043HA09F
5H043HA17F
5H043JA03F
5H043JA09F
(57)【要約】
【課題】組立作業性の向上を図る電池モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の電池モジュール(1)は、電極体を内部に配置する外装体(11)と、正極に電気接続されて外方へ延びる正極タブ(20)と、負極に電気接続されて外方へ延びる負極タブ(25)とを含む電池セル(10)と、正極側本体部(32)及び正極側本体部を貫通する正極側スリット(34)を含む正極側集電板(30)と、負極側本体部(42)及び負極側本体部を貫通する負極側スリット(44)を含む負極側集電板(40)と、を備え、正極側本体部の正極側壁面部(32a)は、正極側本体部の内側面(36)から外側面(38)に先細に形成され、正極タブは、弾性変形して正極側壁面部に押し当てられた状態で正極側本体部に溶接され、負極側本体部の負極側壁面部は、負極側本体部の内側面から外側面に先細に形成され、負極タブは、弾性変形して負極側壁面部に押し当てられた状態で負極側本体部に溶接される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の正極、平板状の負極、前記正極及び前記負極の間に位置する平板状のセパレータを含む電極体と、前記電極体を内部に配置し密閉して構成される袋状の外装体と、前記正極に電気接続され、前記外装体の外方へ延びる正極タブと、前記負極に電気接続され、前記外装体の外方へ、前記正極タブとは反対方向に延びる負極タブと、を含んで構成される電池セルと、
平板状の正極側本体部、及び前記正極側本体部を貫通する正極側スリットを含み、前記正極タブと対向するように配置された正極側集電板であって、前記正極側スリットは、前記正極タブに面する前記正極側本体部の内側面から前記内側面に背向する前記正極側本体部の外側面に向かって延びている正極側集電板と、
平板状の負極側本体部、及び前記負極側本体部を貫通する負極側スリットを含み、前記負極タブと対向するように配置された負極側集電板であって、前記負極側スリットは、前記負極タブに面する前記負極側本体部の内側面から前記内側面に背向する前記負極側本体部の外側面に向かって延びている負極側集電板と、を備え、
前記正極側本体部は、前記正極側スリットの輪郭を少なくとも部分的に画成する正極側壁面部を有しており、前記正極側壁面部は、前記正極側本体部の前記内側面から前記正極側本体部の前記外側面に向かって先細に形成されており、前記正極タブは、弾性変形して前記正極側壁面部に接触した状態で前記正極側本体部に溶接されており、
前記負極側本体部は、前記負極側スリットの輪郭を少なくとも部分的に画成する負極側壁面部を有しており、前記負極側壁面部は、前記負極側本体部の前記内側面から前記負極側本体部の前記外側面に向かって先細に形成されており、前記負極タブは、弾性変形して前記負極側壁面部に接触した状態で前記負極側本体部に溶接されている、ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記正極タブは、少なくとも前記正極側本体部の前記外側面の側で前記正極側壁面部に接触しており、
前記負極タブは、少なくとも前記負極側本体部の前記外側面の側で前記負極側壁面部に接触している、請求項1記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記正極側壁面部は、前記正極側本体部の前記内側面から前記正極側本体部の前記外側面に向かって直線テーパ状に形成されており、
前記負極側壁面部は、前記負極側本体部の前記内側面から前記負極側本体部の前記外側面に向かって直線テーパ状に形成されている、請求項1又は2記載の電池モジュール。
【請求項4】
請求項1記載の電池モジュールの製造方法であって、
前記正極タブが前記正極側壁面部と対向し且つ前記負極タブが前記負極側壁面部と対向するように、前記電池セル、前記正極側集電板、及び前記負極側集電板を位置決めする第1工程と、
前記正極タブ及び前記正極側集電板を互いに接近させ、且つ前記負極タブ及び前記負極側集電板を互いに接近させる第2工程と、
前記正極タブを前記正極側壁面部に接触させて前記正極タブを弾性変形させ、且つ前記負極タブを前記負極側壁面部に接触させて前記負極タブを弾性変形させる第3工程と、
前記正極タブが弾性変形して前記正極側壁面部に接触した状態で、前記正極タブを前記正極側本体部に溶接し、且つ前記負極タブが弾性変形して前記負極側壁面部に接触した状態で、前記負極タブを前記負極側本体部に溶接する第4工程と、を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記第3工程において、前記正極タブを、少なくとも前記正極側本体部の前記外側面の側で前記正極側壁面部に接触させ、且つ前記負極タブを、少なくとも前記負極側本体部の前記外側面の側で前記負極側壁面部に接触させる、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程において、前記正極側本体部の前記内側面から前記正極側本体部の前記外側面に向かって直線テーパ状に形成された前記正極側壁面部に、前記正極タブを接触させて弾性変形させ、且つ前記負極側本体部の前記内側面から前記負極側本体部の前記外側面に向かって直線テーパ状に形成された前記負極側壁面部に、前記負極タブを接触させて弾性変形させる、請求項4又は5記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール、特にラミネート型二次電池を含む電池モジュールに関する。また、本発明は、当該電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セパレータを挟んで正極と負極を交互に重ねて構成される電極体をラミネートで封止したラミネート型二次電池を含む電池パックが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の電池パックは、複数のラミネート型二次電池を積層して構成されている。そして、当該ラミネート型二次電池は、積層方向と直交する方向に突出した電極タブを含んでおり、当該電極タブは夫々異なる極性を有し、互いに反対方向に突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のラミネート型二次電池を積層して構成された電池パックでは、ラミネート型二次電池から突出した各々の電極タブをバスバー等に並列に電気接続して集電を行うことがある。この場合、バスバーに形成されたスリットに電極タブが挿入され、当該電極タブがスリットの壁面に押し付けられ、その状態を維持して電極タブがバスバーにレーザ溶接されており、これにより、バスバーに対する電極タブの電気接続を実現している。
【0005】
しかしながら、上述のように電池パックを組み立てる場合、別個に用意した治具を使用して、電極タブをスリットの壁面に隙間なく接触させながらレーザ溶接する必要があり、電池パックの組立作業性が悪化するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、組立作業性の向上を図る電池モジュール、及び、当該電池モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る電池モジュールは、平板状の正極、平板状の負極、前記正極及び前記負極の間に位置する平板状のセパレータを含む電極体と、前記電極体を内部に配置し密閉して構成される袋状の外装体と、前記正極に電気接続され、前記外装体の外方へ延びる正極タブと、前記負極に電気接続され、前記外装体の外方へ、前記正極タブとは反対方向に延びる負極タブと、を含んで構成される電池セルと、平板状の正極側本体部、及び前記正極側本体部を貫通する正極側スリットを含み、前記正極タブと対向するように配置された正極側集電板であって、前記正極側スリットは、前記正極タブに面する前記正極側本体部の内側面から前記内側面に背向する前記正極側本体部の外側面に向かって延びている正極側集電板と、平板状の負極側本体部、及び前記負極側本体部を貫通する負極側スリットを含み、前記負極タブと対向するように配置された負極側集電板であって、前記負極側スリットは、前記負極タブに面する前記負極側本体部の内側面から前記内側面に背向する前記負極側本体部の外側面に向かって延びている負極側集電板と、を備え、前記正極側本体部は、前記正極側スリットの輪郭を少なくとも部分的に画成する正極側壁面部を有しており、前記正極側壁面部は、前記正極側本体部の前記内側面から前記正極側本体部の前記外側面に向かって先細に形成されており、前記正極タブは、弾性変形して前記正極側壁面部に接触した状態で前記正極側本体部に溶接されており、前記負極側本体部は、前記負極側スリットの輪郭を少なくとも部分的に画成する負極側壁面部を有しており、前記負極側壁面部は、前記負極側本体部の前記内側面から前記負極側本体部の前記外側面に向かって先細に形成されており、前記負極タブは、弾性変形して前記負極側壁面部に接触した状態で前記負極側本体部に溶接されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電池モジュールの製造方法は、上述した電池モジュールの製造方法であって、前記正極タブが前記正極側壁面部と対向し且つ前記負極タブが前記負極側壁面部と対向するように、前記電池セル、前記正極側集電板、及び前記負極側集電板を位置決めする第1工程と、前記正極タブ及び前記正極側集電板を互いに接近させ、且つ前記負極タブ及び前記負極側集電板を互いに接近させる第2工程と、前記正極タブを前記正極側壁面部に接触させて前記正極タブを弾性変形させ、且つ前記負極タブを前記負極側壁面部に接触させて前記負極タブを弾性変形させる第3工程と、前記正極タブが弾性変形して前記正極側壁面部に接触した状態で、前記正極タブを前記正極側本体部に溶接し、且つ前記負極タブが弾性変形して前記負極側壁面部に接触した状態で、前記負極タブを前記負極側本体部に溶接する第4工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電池モジュールによれば、正極側壁面部は、正極側本体部の内側面から正極側本体部の外側面に向かって先細に形成されており、正極タブは、弾性変形して正極側壁面部に接触した状態で正極側本体部に溶接されている。負極側壁面部は、負極側本体部の内側面から負極側本体部の外側面に向かって先細に形成されており、負極タブは、弾性変形して負極側壁面部に接触した状態で負極側本体部に溶接されている。また、本発明に係る電池モジュールの製造方法によれば、正極タブが弾性変形して正極側壁面部に接触した状態で、正極タブを正極側本体部に溶接し、且つ負極タブが弾性変形して負極側壁面部に接触した状態で、負極タブを負極側本体部に溶接する。このため、正極タブ及び負極タブはそれぞれ、自身の弾性を利用して、正極側壁面部及び負極側壁面部の先細形状に沿って各側壁面部に密着する。そして、このような密着が維持された状態で、正極タブ及び負極タブは正極側本体部及び負極側本体部に溶接される。このように、正極タブ及び負極タブ自身の弾性を利用して正極タブ及び負極タブを正極側壁面部及び負極側壁面部に密着させることができるので、別個に用意した治具を使用して密着させる必要がなく、組立作業性が向上した電池モジュール、及び当該電池モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電池モジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電池モジュールを左側からみた左側面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すA-A断面を示す電池モジュールの断面図であり、外装体の内部に配置される電極体を省略して示すものである。
【
図4】
図4は、
図3に示す正極タブ及び正極側集電体の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る電池モジュールを製造する工程を説明する図であり、正極タブ及び正極側集電板を位置決めし、正極タブを正極側集電板に接近させる工程を説明するものである。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る電池モジュールを製造する工程を説明する図であり、正極タブを弾性変形させ、正極タブを正極側集電板に溶接する工程を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面の参照しながら、本発明を具体化した電池モジュール1の説明をする。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電池モジュール1を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電池モジュール1を左側からみた左側面図である。
図3は、
図2に示すA-A断面を示す電池モジュール1の断面図であり、外装体11の内部に配置される電極体を省略して示すものである。
図4は、
図3に示す正極タブ20及び正極側集電板30の一部を拡大して示す部分拡大図である。なお、説明の便宜上、
図1に示す電池モジュール1の向きを基準に、電池セル10の積層方向を前後方向(前側、後側)、電池モジュール1に対して正極側集電板30が配置されている方向を左方向(左側)、電池モジュール1に対して負極側集電板40が配置されている方向を右方向(右側)とし、前後方向及び左右方向に垂直な方向を上下方向(上側、下側)とする。
【0013】
<電池モジュール>
図1に示すように、電池モジュール1は、電池セル10、正極側集電板30、負極側集電板40を含んで構成されている。電池モジュール1は、6個の電池セル10を並列接続して構成されている。具体的には、電池モジュール1は、複数の電池セル10を前後方向に積層するとともに、隣り合う電池セル10の正極タブ20及び負極タブ25を正極側集電板30及び負極側集電板40に電気接続して、並列接続を構成している。なお、電池セル10は6個に限定されるものではなく、その積層数は、必要とされる出力等に応じて適宜変更可能である。
【0014】
<電池セル>
電池セル10は、例えば、車両に搭載され、当該車両の走行エネルギーを蓄積するリチウムイオン二次電池、具体的にはラミネート型リチウムイオン二次電池であってよい。なお、電池セル10の用途はこれに限定されるものではなく、二次電池を必要とする機器全般に使用されるものである。
図2から
図4に示すように、電池セル10は、電極体(図示せず)と、外装体11と、正極タブ20と、負極タブ25とを含んで構成されている。電極体は、平板状の正極、平板状の負極、正極及び負極の間に位置する平板状のセパレータを含む(図示せず)。外装体11は、当該電極体を内部に配置し密閉して構成される袋状の部材である。正極タブ20は、正極に電気接続され、外装体11の外方(左方向)へ延びている。負極タブ25は、負極に電気接続され、外装体11の外方へ、正極タブ20とは反対方向(右方向)に延びている。
【0015】
具体的には、電池セル10は、平板状の正極と負極を、セパレータを介して対向配置させながら所定数積層してなる電極体を、電解液とともにラミネートフィルムの袋状の外装体11内に密閉し、正極タブ20及び負極タブ25の一部を外装体11の外部に露出して構成されている。電池セル10において、電極体は扁平箱状であり、この電極体が扁平な矩形袋状のラミネートフィルムから成る外装体11の中に収容されている。これにより、電池セル10では、外装体11の中央にこの電極体による扁平箱状の膨らみが形成される。なお、本実施形態において、電池セル10の厚さ(前後方向厚み)は8.4mmに設定されている。しかし、電池セル10の厚さはこれに限定されるものではなく、必要とされる出力等に応じて適宜変更可能である。
【0016】
電池セル10の正極タブ20は、外装体11の内部で電極体の正極に接続された金属薄板(厚さ0.35mmのアルミ(A1050)板)であり、
図2から
図4に示すように、その一部が外装体11の左側で露出している。具体的には、正極タブ20は、正極に接続されて左方向へ延びる正極タブ本体部20aと、当該正極タブ本体部20aの左側端部から前側且つ左側に斜めに延びる正極タブ先端部20bとを含む。正極タブ先端部20bは、後述する正極側本体部32にレーザ溶接される部分である。また、電池セル10の負極タブ25は、外装体11の内部で電極体の負極に接続された金属薄板(厚さ0.20mmの銅(A1100)板)であり、その一部が外装体11の右側で露出している。具体的には、負極タブ25は、負極に接続されて右方向へ延びる負極タブ本体部25aと、当該負極タブ本体部25aの右側端部から前側且つ右側に斜めに延びる負極タブ先端部25bとを含む。負極タブ先端部25bは、後述する負極側本体部42にレーザ溶接される部分である。上述したように、隣り合う電池セル10の正極タブ20及び負極タブ25をそれぞれ、正極側集電板30及び負極側集電板40にレーザ溶接して電気接続することで、複数の電池セル10の並列接続が形成される。そして、この電池セル10は、積層して並列接続した状態で、正極側集電板30及び負極側集電板40を介して図示しない外部の電気機器と接続される。
【0017】
<正極側集電板、負極側集電板>
図2及び
図3に示すように、正極側集電板30は、正極タブ20と対向するように電池セル10の左側に配置されている。正極側集電板30は、平板状の正極側本体部32と、正極側本体部32を貫通する正極側スリット34とを含む。
図3及び
図4に示すように、正極側本体部32は、断面矩形の部材であり、正極タブ20に面するように右側を向く面である内側面36と、当該内側面36に背向するように左側を向く面である外側面38とを含む。正極側スリット34は、正極側本体部32の内側面36から正極側本体部32の外側面38に向かって、正極側本体部32を左右方向に貫通するように延びている。また、正極側スリット34は、側面視で、前後方向よりも上下方向に長い細長形状である(
図2)。正極側スリット34は、本実施形態では6個形成されているが、その数は電池セル10の個数に応じて適宜変更されてよい。なお、正極側集電板30は、例えば金属製のバスバーであってよい。
【0018】
図3及び
図4に示すように、正極側本体部32は、正極側スリット34の輪郭を少なくとも部分的に画成する正極側壁面部32aを有している。
図4に示すように、正極側壁面部32aは、正極側スリット34の前側及び後側の境界を規定する一対の壁面部分である。正極側壁面部32aは、正極側本体部32の内側面36から正極側本体部32の外側面38に向かって先細に形成されている。具体的には、正極側壁面部32aは、正極側本体部32の内側面36から正極側本体部32の外側面38に向かって直線テーパ状に形成されている。なお、正極側壁面部32aの形状は直線テーパ状に限定されるものではなく、例えば凹又は凸の湾曲テーパ状であってもよい。また、正極側壁面部32aの角度は任意であり、電池セル10の厚さ、電池セル10のピッチに応じて適宜変更可能なものである。
【0019】
図4に示すように、正極タブ20の正極タブ先端部20bは、少なくとも正極側本体部32の外側面38の側で正極側壁面部32aに接触している。つまり、正極タブ先端部20bは、少なくとも正極側本体部32の外側面38の近傍(
図4に示す点Pの近傍)で正極側壁面部32aに接触している。なお、正極タブ先端部20bは、その全体で正極側壁面部32aに接触していてもよい。そして、正極タブ20の正極タブ先端部20bは、弾性変形して正極側壁面部32aに接触した状態で正極側本体部32にレーザ溶接されている。
図4の符号Pは、正極タブ先端部20bと正極側本体部32との溶接個所を示しており、当該溶接個所Pは、上下方向に沿って延在している。
【0020】
図3に示すように、負極側集電板40は、負極タブ25と対向するように電池セル10の右側に配置されている。負極側集電板40は、平板状の負極側本体部42と、負極側本体部42を貫通する負極側スリット44とを含む。負極側本体部42は、断面矩形の部材であり、負極タブ25に面するように左側を向く面である内側面46と、当該内側面46に背向するように右側を向く面である外側面48とを含む。負極側スリット44は、負極側本体部42の内側面46から負極側本体部42の外側面48に向かって、負極側本体部42を左右方向に貫通するように延びている。また、負極側スリット44は、正極側スリット34と同様に、側面視で前後方向よりも上下方向に長い細長形状である。負極側スリット44は、本実施形態では6個形成されているが、その数は電池セル10の個数に応じて適宜変更されてよい。なお、負極側集電板40は、例えば金属製のバスバーであってよい。
【0021】
負極側本体部42は、負極側スリット44の輪郭を少なくとも部分的に画成する負極側壁面部を有している。負極側壁面部は、正極側壁面部32aと同様に、負極側スリット44の前側及び後側の境界を画成する一対の壁面部分である。負極側壁面部は、正極側壁面部32aと同様に、負極側本体部42の内側面46から負極側本体部42の外側面48に向かって先細に形成されている。具体的には、負極側壁面部は、正極側壁面部32aと同様に、負極側本体部42の内側面46から負極側本体部42の外側面48に向かって直線テーパ状に形成されている。なお、負極側壁面部の形状は直線テーパ状に限定されるものではなく、例えば凹又は凸の湾曲テーパ状であってもよい。また、負極側壁面部の角度は任意であり、電池セル10の厚さ、電池セル10のピッチに応じて適宜変更可能なものである。
【0022】
図3に示すように、負極タブ25の負極タブ先端部25bは、負極側本体部42の外側面48の側で負極側壁面部に接触している。つまり、負極タブ先端部25bは、正極タブ先端部20bと同様に、少なくとも負極側本体部42の外側面48の近傍で負極側壁面部に接触している。なお、負極タブ先端部25bは、その全体で負極側壁面部に接触していてもよい。そして、負極タブ25の負極タブ先端部25bは、弾性変形して負極側壁面部に接触した状態で負極側本体部42にレーザ溶接されている。負極タブ先端部25bと負極側本体部42との溶接個所は、上下方向に沿って延在している。
【0023】
次いで、本発明の一実施形態の電池モジュール1の製造方法について説明する。
図5は、一実施形態に係る電池モジュール1を製造する工程を説明する図であり、正極タブ20及び正極側集電板30を位置決めし、正極タブ20を正極側集電板30に接近させる工程(第1工程、第2工程)を説明するものである。
図6は、一実施形態に係る電池モジュール1を製造する工程を説明する図であり、正極タブ20を弾性変形させ、正極タブ20を正極側集電板30に溶接する工程(第3工程、第4工程)を説明するものである。なお、
図5及び
図6は、正極タブ20及び正極側集電板30を溶接する手順を説明するものである。負極タブ25及び負極側集電板40を溶接する手順は、正極タブ20及び正極側集電板30を溶接する手順と同様であるので、その図示を省略している。
【0024】
一実施形態に係る電池モジュール1の製造方法は、後述する第1工程、第2工程、第3工程、第4工程の順に実施される。
図5に示すように、第1工程では、正極タブ20が正極側壁面部32aと対向し且つ負極タブ25が負極側壁面部と対向するように、電池セル10、正極側集電板30、及び負極側集電板40を位置決めする。具体的には、正極タブ20の左側端面20cが正極側壁面部32aの一方(
図5では後側の正極側壁面部32a)と対向するように、電池セル10及び正極側集電板30を位置決めする。同様に、負極タブ25の右側端面が負極側壁面部の一方(例えば後側の負極側壁面部)と対向するように、電池セル10及び負極側集電板40を位置決めする。なお、第1工程では、正極タブ20の左側端面20cが前側の正極側壁面部32aと対向するように位置決めされてもよいし、負極タブ25の右側端面が前側の負極側壁面部と対向するように位置決めされてもよい。
【0025】
図5に示すように、第2工程では、正極タブ20及び正極側集電板30を互いに接近させ、且つ負極タブ25及び負極側集電板40を互いに接近させる。具体的には、正極側集電板30を位置固定した状態で、正極タブ20の左側端面20cを後側の正極側壁面部32aに接近させる。次いで、負極側集電板40を位置固定した状態で、負極タブ25の右側端面を後側の負極側壁面部に接近させる。なお、第2工程では、正極タブ20ひいては電池セル10を位置固定した状態で、後側の正極側壁面部32aを正極タブ20の左側端面20cに接近させてもよいし、負極タブ25ひいては電池セル10を位置固定した状態で、後側の負極側壁面部を負極タブ25の右側端面に接近させてもよい。
【0026】
図6に示すように、第3工程では、正極タブ20を正極側壁面部32aに接触させて正極タブ20弾性変形させ、且つ負極タブ25を負極側壁面部に接触させて負極タブ25を弾性変形させる。より詳細には、第3工程において、正極タブ20は、少なくとも正極側本体部32の外側面38の側(
図6の点P近傍)で正極側壁面部32aに接触し、負極タブ25は、負極側本体部42の外側面48の側で負極側壁面部に接触する。つまり、正極タブ先端部20bは、少なくとも正極側本体部32の外側面38の近傍(
図6に示す点Pの近傍)で正極側壁面部32aに接触している。なお、正極タブ先端部20bは、その全体で正極側壁面部32aに接触していてもよい。具体的には、正極側壁面部32aは、正極側本体部32の内側面36から正極側本体部32の外側面38に向かって直線テーパ状に形成されており、正極タブ20は、当該正極側壁面部32aに接触して弾性変形する。同様に、負極側壁面部は、負極側本体部42の内側面46から負極側本体部42の外側面48に向かって直線テーパ状に形成されており、負極タブ25は、当該負極側壁面部に接触して弾性変形する。正極タブ20を正極側壁面部32aに接触させると、正極タブ20は正極側壁面部32aの形状に沿って弾性変形し、これにより正極タブ先端部20bが形成される。そして、正極タブ先端部20bは、所定の弾性力F(
図6)で正極側壁面部32aに押圧される。同様に、負極タブ25を負極側壁面部に接触させると、負極タブ25は負極側壁面部の形状に沿って弾性変形し、これにより負極タブ先端部25bが形成される。そして、負極タブ先端部25bは、所定の弾性力で負極側壁面部に押圧される。
【0027】
図6に示すように、第4工程では、正極タブ20を、弾性変形させて正極側壁面部32aに接触させた状態で正極側本体部32に溶接する(
図6の点P)。同様に、負極タブ25を、弾性変形させて負極側壁面部に接触させた状態で負極側本体部42に溶接する。
【0028】
次いで、本発明の一実施形態の電池モジュール1の作用、効果について説明する。上述したように、一実施形態に係る電池モジュール1において、正極側壁面部32aは、正極側本体部32の内側面36から正極側本体部32の外側面38に向かって先細に形成されており、正極タブ20は、弾性変形して正極側壁面部32aに接触した状態で正極側本体部32に溶接されている。負極側壁面部は、負極側本体部42の内側面46から負極側本体部42の外側面48に向かって先細に形成されており、負極タブ25は、弾性変形して負極側壁面部に接触した状態で負極側本体部42に溶接されている。また、一実施形態の電池モジュール1の製造方法において、正極タブ20が弾性変形して正極側壁面部32aに接触した状態で、正極タブ20を正極側本体部32に溶接し、且つ負極タブ25が弾性変形して負極側壁面部に接触した状態で、負極タブ25を負極側本体部42に溶接する。このため、正極タブ20及び負極タブ25はそれぞれ、自身の弾性を利用して、正極側壁面部32a及び負極側壁面部の先細形状に沿って各側壁面部に密着する。そして、このような密着が維持された状態で、正極タブ20及び負極タブ25は正極側本体部32及び負極側本体部42に溶接される。このように、正極タブ20及び負極タブ25自身の弾性を利用して正極タブ20及び負極タブ25を正極側壁面部32a及び負極側壁面部に密着させることができるので、別個に用意した治具を使用して密着させる必要がない。また、正極側壁面部32a及び負極側壁面部に対する正極タブ20及び負極タブ25の高い位置精度が不要となるので、当該位置調整に必要な工程や治具を不要とすることができる。また、上述したように弾性力を利用して密着させることができるので、正極側壁面部32a及び正極タブ20の接触面、並びに、負極側壁面部及び負極タブ25の接触面の高い平面度を不要とすることができる。更に、正極タブ20及び負極タブをそれぞれ、先細に形成された正極側壁面部32a及び負極側壁面部に接触させるため、正極タブ20及び負極タブを正極側壁面部32a及び負極側壁面部に容易に誘導することができる。このようにして、組立作業性が向上した電池モジュール1、及び当該電池モジュール1の製造方法を提供することができる。
【0029】
又、一実施形態に係る電池モジュール1において、正極タブ20は、正極側本体部32の外側面38の側(
図4、
図6の溶接個所Pの近傍)で正極側壁面部32aに接触しており、負極タブ25は、負極側本体部42の外側面48の側で負極側壁面部に接触している。このように、正極側本体部32の外側(左側)に正極タブ20との溶接個所Pを設けることができ、且つ負極本体部42の外側(右側)に負極タブ25との溶接個所(図示せず)を設けることができるので、正極側壁面部32a及び正極タブ20の接触面、並びに、負極側壁面部及び負極タブ25の接触面の高い平面度を不要とすることができる。つまり、当該溶接個所の近傍以外の部分において、正極側壁面部32a及び正極タブ20並びに負極側壁面部及び負極タブ25が隙間なく密着していなかったとしても、正極タブ20及び負極タブ25を正極側本体部32及び負極本体部42に上下方向に沿ってレーザ溶接することができる。このようにして、組立作業性が向上した電池モジュール1、及び当該電池モジュール1の製造方法を提供することができる。
【0030】
又、一実施形態に係る電池モジュール1において、正極側壁面部32aは、正極側本体部32の内側面36から正極側本体部32の外側面38に向かって直線テーパ状に形成されており、負極側壁面部は、負極側本体部42の内側面46から負極側本体部42の外側面48に向かって直線テーパ状に形成されている。このように、正極タブ20及び負極タブをそれぞれ、直線テーパ状に形成された正極側壁面部32a及び負極側壁面部に広い側(内側)から接触させるため、正極タブ20及び負極タブを正極側壁面部32a及び負極側壁面部に容易に誘導することができる。このようにして、組立作業性が向上した電池モジュール1、及び当該電池モジュール1の製造方法を提供することができる。
【0031】
以上、好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係る電池モジュール1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。また、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0032】
1 電池モジュール
10 電池セル
11 外装体
20 正極タブ
25 負極タブ
30 正極側集電板
32 正極側本体部
32a 正極側壁面部
34 正極側スリット
36 内側面
38 外側面
40 負極側集電板
42 負極側本体部
44 負極側スリット
46 内側面
48 外側面