(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138574
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】固定子構成体および電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/08 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H02K5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137877
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 正之
(72)【発明者】
【氏名】岡元 学
(72)【発明者】
【氏名】今村 翔
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA07
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC10
5H605GG18
(57)【要約】
【課題】充填樹脂が漏れるのを抑止する。
【解決手段】開示される固定子構成体20は、複数のティース部32bを含む固定子磁心31、各ティース部32bを覆うインシュレータ33、およびインシュレータ33に巻回された巻装体34を有する固定子30と、開口を有する有底筒状に形成され、固定子30を収容する固定子枠体40と、固定子枠体40の底部と固定子30との間の第1空間S1、固定子枠体40の内周面と固定子磁心31の外周面との間の第2空間、および隣り合う巻装体34の間の第3空間に充填される充填樹脂70と、を備える。固定子枠体40は、充填樹脂70の充填に用いられる樹脂注入路41を有する。樹脂注入路41は、充填樹脂70の開口側の端面70aよりも開口側で開口する注入口41aと、第1空間S1および第2空間の少なくとも一方に開口する注出口41bとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティース部を含む固定子磁心、各前記ティース部を覆うインシュレータ、および前記インシュレータに巻回された巻装体を有する固定子と、
開口を有する有底筒状に形成され、前記固定子を収容する固定子枠体と、
前記固定子枠体の底部と前記固定子との間の第1空間、前記固定子枠体の内周面と前記固定子磁心の外周面との間の第2空間、および隣り合う前記巻装体の間の第3空間に充填される充填樹脂と、
を備え、
前記固定子枠体は、前記充填樹脂の充填に用いられる樹脂注入路を有し、
前記樹脂注入路は、前記充填樹脂の前記開口側の端面よりも前記開口側で開口する注入口と、前記第1空間および前記第2空間の少なくとも一方に開口する注出口とを含む、固定子構成体。
【請求項2】
前記注出口は、前記第1空間に開口する、請求項1に記載の固定子構成体。
【請求項3】
前記注入口は、前記固定子枠体の軸方向端面で開口する、請求項1または2に記載の固定子構成体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の固定子構成体を備える電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固定子構成体および電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のティース部を含む固定子磁心、各ティース部を覆うインシュレータ、およびインシュレータに巻回された巻装体を有する固定子と、開口を有する有底筒状に形成され、固定子を収容する固定子枠体と、固定子枠体の内部に充填される充填樹脂と、を備える固定子構成体が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の固定子構成体の固定子枠体は、その壁部に設けられた樹脂注入口にセルフクローズ弁が設けられている。充填樹脂の注入に際しては、セルフクローズ弁にディスペンサのノズルが挿入され、当該ノズルを介して液状の充填樹脂が注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の固定子構成体では、樹脂注入口にセルフクローズ弁が設けられているものの、充填樹脂の注入後、例えば樹脂注入口からノズルを抜き取る際に、樹脂注入口から液状の充填樹脂が漏れるおそれがある。このような状況において、本開示は、充填樹脂が注入口から漏れにくくすることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、固定子構成体に関する。当該固定子構成体は、複数のティース部を含む固定子磁心、各前記ティース部を覆うインシュレータ、および前記インシュレータに巻回された巻装体を有する固定子と、開口を有する有底筒状に形成され、前記固定子を収容する固定子枠体と、前記固定子枠体の底部と前記固定子との間の第1空間、前記固定子枠体の内周面と前記固定子磁心の外周面との間の第2空間、および隣り合う前記巻装体の間の第3空間に充填される充填樹脂と、を備え、前記固定子枠体は、前記充填樹脂の充填に用いられる樹脂注入路を有し、前記樹脂注入路は、前記充填樹脂の前記開口側の端面よりも前記開口側で開口する注入口と、前記第1空間および前記第2空間の少なくとも一方に開口する注出口とを含む。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、電動機に関する。当該電動機は、上述の固定子構成体を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、充填樹脂が注入口から漏れにくくなるので、固定子構成体および電動機の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る固定子構成体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】固定子構成体の構成について説明するための斜視図であって、(a)は固定子磁心と固定子枠体を概略的に示し、(b)はセグメントコアを概略的に示す。
【
図3】本開示に係る電動機の一例を模式的に示す図であって、(a)が正面図であり、(b)が側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る固定子構成体および電動機の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0010】
(固定子構成体)
本開示に係る固定子構成体は、固定子と、固定子枠体と、充填樹脂とを備える。
【0011】
固定子は、複数のティース部を含む固定子磁心と、各ティース部を覆うインシュレータと、インシュレータに巻回された巻装体とを有する。隣り合う巻装体の間には、第3空間が形成される。
【0012】
固定子磁心は、略円筒状に形成されたバックヨーク部を有してもよく、各ティース部は、バックヨーク部から径方向内側に突出していてもよい。バックヨーク部は、分割型でも一体型でもよい。固定子磁心は、多数枚の電磁鋼板を積層して構成されていてもよい。インシュレータは、絶縁性の樹脂材料で構成されていてもよい。巻装体は、絶縁被膜を有する絶縁電線で構成されていてもよい。巻装体は、集中巻方式で巻回されていてもよいし、分布巻方式で巻回されていてもよい。
【0013】
固定子枠体は、開口を有する有底筒状に形成され、固定子を収容する。固定子枠体の底部と固定子との間には、第1空間が形成される。固定子枠体の内周面と固定子磁心の外周面との間には、第2空間が形成される。固定子枠体は、熱伝導率の高い材料、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されていてもよい。固定子枠体の構成材料の熱伝導率は、固定子磁心の構成材料の熱伝導率よりも高くてもよい。
【0014】
充填樹脂は、第1空間、第2空間、および第3空間に充填される。充填樹脂は、通常、複数成分を含む樹脂組成物であり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、またはポリウレタン樹脂などを含んでもよい。充填樹脂は、フィラーを含んでもよい。フィラーとしては、無機粒子が望ましく、例えば水酸化アルミニウムを用い得る。充填樹脂のフィラー含有率は、10重量%以上、50重量%以下であってもよい。充填樹脂の熱伝導率は、巻装体を構成する絶縁電線が有する絶縁被膜の構成材料の熱伝導率よりも高くてもよい。充填樹脂の曲げ弾性率は、固定子枠体の構成材料の曲げ弾性率よりも低くてもよい。
【0015】
固定子枠体は、充填樹脂の充填に用いられる樹脂注入路を有する。樹脂注入路は、充填樹脂の固定子枠体の開口側の端面よりも当該開口側で開口する注入口と、第1空間および第2空間の少なくとも一方に開口する注出口とを含む。このような樹脂注入路を用いて液状の充填樹脂を注入する場合、固定子枠体をその開口が上方を向くように配置することで、樹脂注入路の注入口から充填樹脂が漏れにくくなる。なぜなら、液状の充填樹脂の充填の完了時における充填樹脂の液面高さが、注入口が位置する高さよりも低いためである。液状の充填樹脂は、固定子枠体の開口を上方に向けたままで硬化させればよい。
【0016】
注出口は、第1空間に開口していてもよい。この構成によると、液状の充填樹脂が下方からせり上がるようにして固定子枠体の内部空間(第1~第3空間を含む。)に充填されるため、充填樹脂に気泡が含まるのを抑止することができる。
【0017】
注入口は、固定子枠体の軸方向端面で開口していてもよい。この構成によると、例えば固定子枠体の軸方向端面からの穿孔加工により、樹脂注入路を容易に作製することができる。
【0018】
樹脂注入路の少なくとも一部は、固定子枠体の軸方向に沿って延びていてもよい。この場合において、注入口が固定子枠体の軸方向端面で開口すると共に、樹脂注入路のうち注入口を含む一部が、固定子枠体の軸方向に沿って第1空間の径方向外側まで延びていることが好ましい。
【0019】
(電動機)
本開示に係る電動機は、上述の固定子構成体を備える。電動機は、さらに、回転子、出力軸(回転軸)、一対の軸受、ブラケットなどの各構成要素を備えてもよい。出力軸を有する回転子は、固定子構成体の内部空間に配置されてもよい。出力軸の両端は、一対の軸受によって回転可能に支持されてもよい。一方の軸受の外輪側は、ブラケットの収容部に固定されてもよい。他方の軸受の外輪側は、固定子枠体の底部の収容部に固定されてもよい。
【0020】
以上のように、本開示によれば、液状の充填樹脂を充填する際に、注入口から充填樹脂が漏れるのを抑止することができる。さらに、本開示によれば、充填樹脂の漏れに起因する電動機の外観悪化を回避することができる。
【0021】
以下では、本開示に係る固定子構成体および電動機の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の固定子構成体および電動機の構成要素には、上述した構成要素を適用できる。以下で説明する一例の固定子構成体および電動機の構成要素は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の固定子構成体および電動機の構成要素のうち、本開示に係る固定子構成体および電動機に必須ではない構成要素は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0022】
(固定子構成体)
図1および
図2に示すように、固定子構成体20は、固定子30と、固定子枠体40と、印刷配線板50と、コネクタ60と、充填樹脂70とを備える。
【0023】
固定子30は、複数のティース部32bを含む固定子磁心31と、各ティース部32bを覆うインシュレータ33と、インシュレータ33に巻回された巻装体34とを有する。隣り合う巻装体34の間には、第3空間(図示せず)が形成される。
【0024】
図2(a)に示すように、本実施形態の固定子磁心31は、複数のセグメントコア32を結合して構成される。各セグメントコア32は、
図2(b)に示すように、ヨーク部32aと、ティース部32bと、鍔部32cとを有する。各セグメントコア32は、電磁鋼板を積層して構成される。なお、
図2(a)には、インシュレータ33および巻装体34を、それぞれ1つずつのみ示してある。
【0025】
固定子枠体40は、開口を有する有底筒状に形成され、固定子30を収容する。固定子枠体40の底部と固定子30との間には、第1空間S1が形成される。固定子枠体40の内周面と固定子磁心31の外周面との間には、第2空間(図示せず)が形成される。この第2空間は、固定子磁心31の外周面に形成された不図示の溝に対応する空間である。固定子枠体40は、例えばアルミニウム合金で構成される。
【0026】
印刷配線板50は、巻装体34と電気的に接続される。印刷配線板50は、固定子枠体40内において、固定子30よりも開口側に配置される。印刷配線板50は、環状(ドーナツ型形状)、扇型形状(円弧状)、C字状などに形成されていてもよい。印刷配線板50は、中央に中空部を有し、この中空部に電動機10の出力軸80(
図3を参照)が挿通される。
【0027】
コネクタ60は、印刷配線板50に電気的に接続される。コネクタ60は、印刷配線板50を介して巻装体34に電気的に接続され、巻装体34に電力を供給するための電源(図示せず)が接続される。コネクタ60は、固定子枠体40の開口の近傍に配置される。
【0028】
充填樹脂70は、第1空間S1、第2空間、および第3空間に充填される。充填樹脂70は、例えばエポキシ樹脂であるが、これに限定されるものではない。充填樹脂70は、フィラーを含む。充填樹脂70のフィラー含有率は、例えば10重量%以上、50重量%以下である。
【0029】
上記固定子枠体40は、充填樹脂70の充填に用いられる樹脂注入路41を有する。樹脂注入路41は、充填樹脂70の固定子枠体40の開口側(
図1における上側)の端面70a(
図1における上端面)よりも当該開口側で開口する注入口41aと、第1空間S1に開口する注出口41bとを含む。注入口41aは、固定子枠体40の軸方向端面(
図1における上端面)で開口している。樹脂注入路41のうち注入口41aを含む一部は、固定子枠体40の軸方向(すなわち、固定子30の軸方向)に沿って延びている。樹脂注入路41の最小径(断面の相当円の直径)は、例えば2mm以上、4mm以下である。このような樹脂注入路41を用いて液状の充填樹脂70を注入する場合、液状の充填樹脂70は、樹脂注入路41を通過して、まず第1空間S1に充填され、引き続き、第2空間と第3空間に充填される。その際、固定子枠体40をその開口が上方を向くように(
図1のような姿勢で)配置することで、樹脂注入路41の注入口41aから充填樹脂70が漏れるのを回避することができる。
【0030】
なお、注出口41bは、第2空間に開口していてもよい。この場合にも、液状の充填樹脂70の充填の完了時における充填樹脂70の液面高さは、注入口41aが位置する高さ(例えば、固定子枠体40の軸方向端面(
図1における上端面))よりも低くなるためである。注出口41bは、第1空間S1および第2空間の両方に開口していてもよい。
【0031】
(電動機)
図3に示すように、電動機10は、上述の固定子構成体20の他に、回転子、出力軸80、一対の軸受、およびブラケットなどの各構成要素を備える。なお、回転子、一対の軸受、およびブラケットについては、図示を省略する。出力軸80を有する回転子は、固定子構成体20の内部空間に配置される。出力軸80の両端は、一対の軸受によって回転可能に支持される。一方の軸受の外輪側は、ブラケットの収容部に固定される。他方の軸受の外輪側は、固定子枠体40の底部の収容部に固定される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示は、固定子構成体および電動機に利用できる。
【符号の説明】
【0033】
10:電動機
20:固定子構成体
30:固定子
31:固定子磁心
32:セグメントコア
32a:ヨーク部
32b:ティース部
32c:鍔部
33:インシュレータ
34:巻装体
40:固定子枠体
41:樹脂注入路
41a:注入口
41b:注出口
50:印刷配線板
60:コネクタ
70:充填樹脂
70a:端面
80:出力軸
S1:第1空間