IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特開2024-138575モータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラム
<>
  • 特開-モータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラム 図1
  • 特開-モータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラム 図2
  • 特開-モータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138575
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】モータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241002BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138184
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴紀
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770FA04
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA07W
5H770LA01W
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】突入抵抗を長時間の過電流から保護する。
【解決手段】開示されるモータ駆動装置4は、直流出力部10と、コンデンサ31を有する平滑回路30と、インバータ回路40と、直流出力部10と平滑回路30との間に設けられた電流制限回路50と、平滑回路30の短絡異常を検出する異常検出部60と、を備える。電流制限回路50は、互いに直列接続された突入抵抗51および第1スイッチング素子52を有する。異常検出部60は、直流出力部10から直流電力が出力されている状態で、第1時間にわたって第1スイッチング素子52を導通状態にし、コンデンサ31の端子間電圧が第1時間内に第1閾値Vthを上回るか否かを判定し、コンデンサ31の端子間電圧が第1閾値Vthを上回らなかった場合、平滑回路30に短絡異常が生じていると判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を出力する直流出力部と、
前記直流出力部の直流電力を平滑化するコンデンサを有する平滑回路と、
平滑化された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、
前記直流出力部と前記平滑回路との間に設けられ、前記コンデンサに流れる突入電流を制限する電流制限回路と、
前記平滑回路の短絡異常を検出する異常検出部と、
を備え、
前記電流制限回路は、互いに直列接続された突入抵抗および第1スイッチング素子を有し、
前記異常検出部は、前記直流出力部から直流電力が出力されている状態で、第1時間にわたって前記第1スイッチング素子を導通状態にし、前記コンデンサの端子間電圧が前記第1時間内に第1閾値を上回るか否かを判定し、前記端子間電圧が前記第1閾値を上回らなかった場合、前記平滑回路に短絡異常が生じていると判定する、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記電流制限回路は、前記突入抵抗および前記第1スイッチング素子と並列に接続された第2スイッチング素子をさらに有する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記モータの駆動中、前記第1スイッチング素子を非導通状態に維持する、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記モータの回生動作時に回生電力を消費する回生回路をさらに備え、
前記回生回路は、一方の主端子が前記突入抵抗と前記第1スイッチング素子との間に接続された第3スイッチング素子を有し、
前記突入抵抗は、前記回生回路の回生抵抗を兼ねる、請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
直流電力に出力する直流出力部と、前記直流出力部の直流電力を平滑化するコンデンサを有する平滑回路と、平滑化された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、前記直流出力部と前記平滑回路との間に設けられ、前記コンデンサに流れる突入電流を制限する電流制限回路と、を備え、前記電流制限回路は、互いに直列接続された突入抵抗および第1スイッチング素子を有する、モータ駆動装置において前記平滑回路の短絡異常を検出する異常検出方法であって、
前記直流出力部から直流電力が出力されている状態で、第1時間にわたって前記第1スイッチング素子を導通状態にする導通工程と、
前記コンデンサの端子間電圧が前記第1時間内に第1閾値を上回るか否かを判定する電圧判定工程と、
前記端子間電圧が前記第1閾値を上回らなかった場合、前記平滑回路に短絡異常が生じていると判定する異常判定工程と、
を備える、異常検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の異常検出方法をコンピュータに実行させるための異常検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電力を平滑化するコンデンサを有する平滑回路と、平滑化された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、を備えるモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1のモータ駆動装置は、直流電力を出力するバッテリと平滑回路との間に設けられ、コンデンサに流れる突入電流を制限する電流制限回路をさらに備え、この電流制限回路は、互いに直列接続された突入抵抗およびスイッチング素子を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-014282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータ駆動装置には、平滑回路の出力端子が装置外部からアクセス可能になっているものがある。そのようなモータ駆動装置において、平滑回路の出力端子同士が誤って接続されると、平滑回路が短絡した状態になる。平滑回路が短絡した状態でモータを駆動しようとすると、電流制限回路の突入抵抗に長時間にわたって過電流が流れる。その場合、突入抵抗が破損してしまうおそれがある。このような状況において、本開示は、突入抵抗を長時間の過電流から保護することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、モータ駆動装置に関する。当該モータ駆動装置は、直流電力を出力する直流出力部と、前記直流出力部の直流電力を平滑化するコンデンサを有する平滑回路と、平滑化された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、前記直流出力部と前記平滑回路との間に設けられ、前記コンデンサに流れる突入電流を制限する電流制限回路と、前記平滑回路の短絡異常を検出する異常検出部と、を備え、前記電流制限回路は、互いに直列接続された突入抵抗および第1スイッチング素子を有し、前記異常検出部は、前記直流出力部から直流電力が出力されている状態で、第1時間にわたって前記第1スイッチング素子を導通状態にし、前記コンデンサの端子間電圧が前記第1時間内に第1閾値を上回るか否かを判定し、前記端子間電圧が前記第1閾値を上回らなかった場合、前記平滑回路に短絡異常が生じていると判定する。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、異常検出方法に関する。当該異常検出方法は、直流電力を出力する直流出力部と、前記直流出力部の直流電力を平滑化するコンデンサを有する平滑回路と、平滑化された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、前記直流出力部と前記平滑回路との間に設けられ、前記コンデンサに流れる突入電流を制限する電流制限回路と、を備え、前記電流制限回路は、互いに直列接続された突入抵抗および第1スイッチング素子を有する、モータ駆動装置において前記平滑回路の短絡異常を検出する異常検出方法であって、前記直流出力部から直流電力が出力されている状態で、第1時間にわたって前記第1スイッチング素子を導通状態にする導通工程と、前記コンデンサの端子間電圧が前記第1時間内に第1閾値を上回るか否かを判定する電圧判定工程と、前記端子間電圧が前記第1閾値を上回らなかった場合、前記平滑回路に短絡異常が生じていると判定する異常判定工程と、を備える。
【0007】
本開示に係る別の一局面は、異常検出プログラムに関する。当該異常検出プログラムは、上述の異常検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、突入抵抗を長時間の過電流から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1のモータ駆動装置を概略的に示す回路図である。
図2】異常検出方法の一例のタイムチャートであって、(a)は正常時のタイムチャートであり、(b)は短絡異常時のタイムチャートである。
図3】実施形態2のモータ駆動装置を概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係るモータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラムの実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0011】
(モータ駆動装置)
本開示に係るモータ駆動装置は、直流出力部と、平滑回路と、インバータ回路と、電流制限回路と、異常検出部とを備える。
【0012】
直流出力部は、直流電力を出力する。直流出力部は、例えば、交流電源の交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路であってもよいし、直流電源としてのバッテリであってもよい。コンバータ回路は、複数(例えば、6つ)のダイオード素子を有してもよい。コンバータ回路は、全波整流方式であってもよいし、半波整流方式であってもよい。
【0013】
平滑回路は、直流出力部の直流電力を平滑化するコンデンサを有する。コンデンサは、電解コンデンサであってもよく、これ以外の種類のコンデンサであってもよい。コンデンサは、2つ以上が直列および/または並列に接続されたモジュールであってもよい。
【0014】
インバータ回路は、平滑化された直流電力を交流電力に変換してモータ(例えば、三相同期電動機)に供給する。インバータ回路は、複数(例えば、6つ)のスイッチング素子(例えば、IGBT)を有してもよい。各スイッチング素子は、ゲートドライブ回路によって導通状態と非導通状態とを切り替えられてもよい。
【0015】
電流制限回路は、直流出力部と平滑回路との間に設けられる。電流制限回路は、コンデンサに流れる突入電流を制限する。電流制限回路は、互いに直列接続された突入抵抗および第1スイッチング素子を有する。突入抵抗は、例えば、固定抵抗であってもよいし、サーミスタであってもよい。第1スイッチング素子は、例えば、リレーであってもよいし、電界効果トランジスタであってもよい。第1スイッチング素子は、ノーマルオープンであってもよい。
【0016】
異常検出部は、平滑回路の短絡異常を検出する。ここで、平滑回路の短絡異常とは、コンデンサの両端子が電気的に短絡した状態にあることをいう。そのような状態の一例として、平滑回路とインバータ回路とを接続するホットラインおよびグランドラインが互いに短絡している状態が挙げられる。
【0017】
異常検出部は、直流出力部から直流電力が出力されている状態で、第1時間にわたって第1スイッチング素子を導通状態にする。これにより、正常時であれば、突入抵抗およびコンデンサで構成されるRC回路の時定数にしたがって当該コンデンサが充電されていく。一方、平滑回路に短絡異常が生じていれば、コンデンサはほとんど充電されない。第1時間は、平滑回路に短絡異常が生じていても(すなわち、突入抵抗に一時的に過電流が流れても)、突入抵抗などの回路素子が破損しない程度の長さに設定される。第1時間は、例えば、0.05秒以上、0.5秒以下であってもよい。
【0018】
異常検出部は、コンデンサの端子間電圧が第1時間内に第1閾値を上回るか否かを判定する。第1閾値は、例えば、正常な状態で第1時間にわたって充電されたコンデンサの端子間電圧の10%以上、50%以下であってもよい。なお、第1閾値は、これ以外にも任意に設定可能である。異常検出部は、コンデンサの端子間電圧が第1閾値を上回らなかった場合、平滑回路に短絡異常が生じていると判定する。異常検出部は、コンデンサの端子間電圧が第1閾値を上回った場合、平滑回路に短絡異常が生じていないと判定してもよい。平滑回路に短絡異常が生じている場合、その後のモータ駆動制御を実行しないことで、突入抵抗を長時間の過電流から保護することができる。
【0019】
電流制限回路は、突入抵抗および第1スイッチング素子と並列に接続された第2スイッチング素子をさらに有してもよい。この場合の電流制限回路は、いわゆるアクティブ型の電流制限回路である。この構成によると、平滑回路の短絡異常を検出する際には第2スイッチング素子を非導通状態にしておき、平滑回路に短絡異常が生じてないことがわかってモータ駆動制御を実行する際には第2スイッチング素子を導通状態にすることで、モータ駆動時における電流制限回路での電力損失を抑制することができる。
【0020】
異常検出部は、モータの駆動中、第1スイッチング素子を非導通状態に維持してもよい。これにより、モータ駆動時において、直流出力部から突入抵抗および第1スイッチング素子を介して平滑回路およびインバータ回路へ電流が流れる経路が遮断される。よって、モータ駆動時に第2スイッチング素子が非導通になる異常が生じても、突入抵抗に過電流が流れることがない。このように、突入抵抗を保護する効果をより一層高めることができる。
【0021】
モータ駆動装置は、モータの回生動作時に回生電力を消費する回生回路をさらに備えてもよい。回生回路は、一方の主端子が突入抵抗と第1スイッチング素子との間に接続された第3スイッチング素子を有してもよい。突入抵抗は、回生回路の回生抵抗を兼ねてもよい。この構成によると、突入抵抗は、平滑回路の異常検出時には、第1スイッチング素子が導通した状態でコンデンサに流れる突入電流を制限する機能を発揮する一方、モータの回生動作時には、第3スイッチング素子が導通した状態で回生電力を消費する機能を発揮する。突入抵抗に2つの機能を担わせることで、モータ駆動装置の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0022】
(異常検出方法)
本開示に係る異常検出方法は、上述のモータ駆動装置において平滑回路の短絡異常を検出する方法であって、導通工程と、電圧判定工程と、異常判定工程とを備える。
【0023】
導通工程では、直流出力部から直流電力が出力されている状態で、第1時間にわたって第1スイッチング素子を導通状態にする。これにより、正常時であれば、突入抵抗およびコンデンサで構成されるRC回路の時定数にしたがって当該コンデンサが充電されていく。一方、平滑回路に短絡異常が生じていれば、コンデンサはほとんど充電されない。
【0024】
電圧判定工程では、コンデンサの端子間電圧が第1時間内に第1閾値を上回るか否かを判定する。電圧判定工程では、第1時間の経過時において、当該端子間電圧が第1閾値を上回るか否かを判定してもよい。あるいは、電圧判定工程では、第1時間の経過前または経過後において、当該端子間電圧が第1閾値を上回るか否かを判定してもよい。
【0025】
異常判定工程では、コンデンサの端子間電圧が第1閾値を上回らなかった場合、平滑回路に短絡異常が生じていると判定する。異常判定工程では、コンデンサの端子間電圧が第1閾値を上回った場合、平滑回路に短絡異常が生じていないと判定してもよい。
【0026】
(異常検出プログラム)
本開示に係る異常検出プログラムは、上述の異常検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラム(ソフトウェア)である。異常検出プログラムは、非一時的なデータを記憶可能なコンピュータ読み取り可能媒体に記録されてもよい。そのようなコンピュータ読み取り可能媒体に記録されたプログラムをコンピュータにインストールすることにより、当該コンピュータに上述の異常検出方法を実行させることができる。
【0027】
以上のように、本開示によれば、平滑回路の短絡異常を検出することで、突入抵抗を長時間の過電流から保護することができる。
【0028】
以下では、本開示に係るモータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラムの一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例のモータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラムの構成要素および工程には、上述した構成要素および工程を適用できる。以下で説明する一例のモータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラムの構成要素および工程は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例のモータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラムの構成要素および工程のうち、本開示に係るモータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラムに必須ではない構成要素および工程は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0029】
《実施形態1》
本開示の実施形態1について説明する。図1に示すように、本実施形態のモータ駆動装置4は、交流電源1から供給される電力を利用してモータ3を回転駆動する装置である。交流電源1は、例えば商用電源であってもよい。モータ駆動装置4は、コンバータ回路10と、回生回路20と、平滑回路30と、インバータ回路40と、電流制限回路50と、制御器60とを備える。
【0030】
コンバータ回路10は、交流電源1および開閉器2(不図示の上位システムによって開閉される。)の下流に設けられる。コンバータ回路10は、交流電源1の交流電力を直流電力に変換して出力する。本実施形態のコンバータ回路10は、6つのダイオード(図示せず)を備える全波整流方式であるが、これに限定されるものではない。コンバータ回路10は、直流出力部の一例である。
【0031】
回生回路20は、コンバータ回路10とインバータ回路40との間に設けられる。回生回路20は、互いに直列接続された回生抵抗21および第3スイッチング素子22を有する。回生回路20は、モータ3の回生動作時に、制御器60により第3スイッチング素子22が導通状態にされた状態で回生電力を消費する。回生回路20は、回生抵抗21と並列に接続された第2ダイオード23をさらに有する。この第2ダイオード23は、第3スイッチング素子22が導通状態から非導通状態に遷移する際のサージ電圧を低減する機能を有する。
【0032】
平滑回路30は、コンバータ回路10の下流に設けられる。平滑回路30は、コンバータ回路10が出力した直流電力を平滑化するコンデンサ31を有する。本実施形態のコンデンサ31は、電解コンデンサで構成されるが、これに限定されるものではない。
【0033】
インバータ回路40は、平滑回路30の下流に設けられる。インバータ回路40は、平滑回路30が供給する直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。インバータ回路40は、例えば、6つのスイッチング素子と、各スイッチング素子に対応する6つの還流ダイオードと(それぞれ図示せず)を備えてもよい。
【0034】
電流制限回路50は、コンバータ回路10と平滑回路30との間に設けられる。電流制限回路50は、互いに直列接続された突入抵抗51および第1スイッチング素子52と、これらに並列接続された第2スイッチング素子53とを有する。本実施形態の第1スイッチング素子52は、ノーマルオープンのリレーで構成されるが、これに限定されるものではない。本実施形態の第2スイッチング素子53は、サイリスタで構成されるが、これに限定されるものではない。電流制限回路50は、突入抵抗51と並列に接続された第1ダイオード54をさらに有する。この第1ダイオード54は、第1スイッチング素子52が導通状態から非導通状態に遷移する際のサージ電圧を低減する機能を有する。
【0035】
制御器60は、演算装置と、演算装置によって実行可能なプログラム(異常検出プログラムを含む。)が格納された記憶装置とを有する。制御器60は、不図示の各センサ(例えば、モータ角度を検出する角度センサや、モータ電流を検出する電流センサなど)からの信号を受けて、第1~第3スイッチング素子22,52,53およびインバータ回路40のスイッチング動作を制御する。制御器60は、平滑回路30の短絡異常を検出する。制御器60による異常検出動作(異常検出方法)について、詳しくは後述する。制御器60は、異常検出部の一例である。
【0036】
-異常検出方法-
上述のモータ駆動装置4において平滑回路30の短絡異常を検出する方法(異常検出方法)について、図2を参照して説明する。異常検出方法は、制御器60が、記憶装置に格納された異常検出プログラムを演算装置で実行することにより実施される。異常検出方法は、導通工程と、電圧判定工程と、異常判定工程とを備える。
【0037】
導通工程では、制御器60は、開閉器2が閉じている状態、すなわちコンバータ回路10から直流電力が出力されている状態で、第1時間にわたって(時刻t0から時刻t1まで)第1スイッチング素子52を導通状態にする。これにより、図2(a)に示す正常時であれば、コンデンサ31が充電されていく。一方、図2(b)に示す短絡異常時であれば、コンデンサ31はほとんど充電されない。
【0038】
電圧判定工程では、制御器60は、コンデンサ31の端子間電圧が第1時間内に第1閾値Vthを上回るか否かを判定する。本実施形態では、制御器60は、第1時間の経過時(時刻t1)において、コンデンサ31の端子間電圧が第1閾値Vthを上回るか否かを判定する。なお、制御器60は、第1時間の経過前または経過後において、当該端子間電圧が第1閾値Vthを上回るか否かを判定してもよい。なお、コンデンサ31の端子間電圧は、不図示の電圧検出回路により測定されてもよい。
【0039】
異常判定工程では、制御器60は、コンデンサ31の端子間電圧が第1閾値Vthを上回らなかった場合、平滑回路30に短絡異常が生じていると判定する。この場合、図2(b)に示すように、制御器60は、当該判定後において、第1スイッチング素子52や第2スイッチング素子53を非導通状態に維持する。これにより、コンデンサ31が過電流で破損するのを未然に防ぐことができる。
【0040】
一方、異常判定工程では、制御器60は、コンデンサ31の端子間電圧が第1閾値Vthを上回った場合、平滑回路30に短絡異常が生じていないと判定する。この場合、図2(a)に示すように、制御器60は、当該判定後において、第1スイッチング素子52を再び導通状態にし(時刻t2から時刻t3)、コンデンサ31を充電する。コンデンサ31の充電が完了すると、制御器60は、第1スイッチング素子52を非導通状態にすると共に第2スイッチング素子53を導通状態にして、モータ3の駆動制御を開始する。なお、制御器60は、モータ3の駆動中、第1スイッチング素子52を非導通状態に維持する。
【0041】
《実施形態2》
本開示の実施形態2について説明する。本実施形態のモータ駆動装置4は、突入抵抗51が回生回路20の回生抵抗21を兼ねる点などで上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0042】
図3に示すように、回生回路20が有する第3スイッチング素子22の一方の主端子(この例では、コレクタ端子)は、突入抵抗51と第1スイッチング素子52との間に接続されている。第3スイッチング素子22の他方の主端子(この例では、エミッタ端子)は、グランドラインに接続されている。また、本実施形態の第2スイッチング素子53は、サイリスタではなく、双方向に通電可能なスイッチング素子(例えば、リレー)で構成される。
【0043】
制御器60は、モータ3の回生動作時に、第2スイッチング素子53および第3スイッチング素子22を導通状態にする。これにより、第2スイッチング素子53、突入抵抗51(回生抵抗21)、および第3スイッチング素子22の順に回生電流が流れ、当該突入抵抗51で回生電力が消費される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示は、モータ駆動装置、異常検出方法、および異常検出プログラムに利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1:交流電源
2:開閉器
3:モータ
4:モータ駆動装置
10:コンバータ回路(直流出力部)
20:回生回路
21:回生抵抗
22:第3スイッチング素子
23:第2ダイオード
30:平滑回路
31:コンデンサ
40:インバータ回路
50:電流制限回路
51:突入抵抗
52:第1スイッチング素子
53:第2スイッチング素子
54:第1ダイオード
60:制御器(異常検出部)
Vth:第1閾値
図1
図2
図3