(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013858
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】水中機器回転軸部の防水構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/16 20060101AFI20240125BHJP
F16J 15/34 20060101ALI20240125BHJP
F16J 15/3244 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
F16J15/16 E
F16J15/34 J
F16J15/3244
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116256
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】福沢 功雄
【テーマコード(参考)】
3J041
3J043
【Fターム(参考)】
3J041AA04
3J041DA05
3J041DA12
3J043AA16
3J043BA05
3J043CA02
3J043DA03
3J043HA01
3J043HA02
(57)【要約】
【課題】水中機器回転軸部の防水構造を小型化する手段を提供する。
【解決手段】水中機器回転軸部の防水構造は、筐体1内に設けられた油室である第1部屋R1と、第1部屋R1に第2仕切り部24を介して設けられた第2部屋R2と、第1部屋R1の前部25に設けられたオイルシール10及び第1メカニカルシール2と、第1部屋R1内に設けられた油と、第1部屋R1に接続された等圧機構20と、を備え、第1メカニカルシール2の外側に、海水5側を密閉流体側としてオイルシール10を位置させ、オイルシール10には接触圧によるポンピング作用があり、密閉流体側へ液を戻そうとする作用がある構造である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(1)内に設けられた油室である第1部屋(R1)と、前記第1部屋(R1)に第2仕切り部(24)を介して設けられた第2部屋(R2)と、前記第1部屋(R1)の前部(25)に設けられたオイルシール(10)及び第1メカニカルシール(2)と、前記第1部屋(R1)内に設けられた油と、前記第1部屋(R1)に接続された等圧機構(20)と、を備え、
前記第1メカニカルシール(2)の外側に、海水(5)側を密閉流体側として前記オイルシール(10)を位置させ、前記オイルシール(10)には接触圧によるポンピング作用があり、前記密閉流体側へ液を戻そうとする作用があることを特徴とする水中機器回転軸部の防水構造。
【請求項2】
前記第1部屋(R1)の第2圧力(P2)が外気の外圧の第1圧力(P1)と等圧でも前記海水(5)が内部に浸入することを防止することを特徴とする請求項1記載の水中機器回転軸部の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中機器回転軸部の防水構造に関し、特に、メカニカルシールを使用する比較的高圧かつ高速回転する軸に適用可能な等圧機構を有する防水構造を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の水中機器回転軸部の防水構造としては、例えば、特許文献1他等に示された構造を本発明の従来例
図3及び
図4に示す構造として、その概要を挙げることができる。
まず、
図3で示される第1従来例において、符号1で示されるものは筐体であり、この筐体1にはメカニカルシール2が設けられている。
前記メカニカルシール2には、回転軸3が設けられ、スクリュ4が回転する構造である。
次に、
図4で示される第2従来例においては、回転軸3が筐体1の一対の第1、第2メカニカルシール2、2aでシールされ、一対のメカニカルシール2、2a間に第1部屋R1が形成され、前記第2メカニカルシール2aの後段から筐体1の後部1Aまでに第2部屋R2が形成されており、前記回転軸3の後端3bにはスクリュ4が設けられている。
【0003】
また、
図4で示される第2従来例においては、前記筐体1外の海水5の第1圧力P
1は、前記筐体1内の第2部屋R2の第3圧力P
3に対して、P
1≫P
3の状態にあると共に、前記海水5中の第1圧力P
1と前記第1部屋R1の第2圧力P
2と第2部屋R2の第3圧力P
3の圧力関係は、P
1<P
2≫P
3の状態にある。
【0004】
また、前記第1部屋R1には、水圧+αでオイルを供給するための加圧機構20が設けられ、水圧+αでオイルを第1部屋R1に供給するように構成されている。
図4の第2従来例の構造においては、防水機構自体が、一対のメカニカルシール2、第1部屋R1、第2部屋R2及び加圧機構20で形成されているため、第1圧力P
1、第2圧力P
2及び第3圧力P
3の関係は、前述のように、P
1<P
2≫P
3となっているため、通常では、外部からの水が前記第2部屋R2に浸入することはないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の水中機器回転軸部の防水構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、第1従来例である
図3の構造の場合、1個のメカニカルシールのみで、外部(海)からカバー部材内に水が浸入しないように形成しており、本来であれば、メカニカルシールは高圧及び高回転用として最適であるが、その構造上、一定量の浸水を避けることは不可能であった。
また、
図4の第2従来例においては、一対の第1、第2メカニカルシールを設け、各部屋間の圧力が異なり、P
1<P
2≫P
3の関係である間は防水効果が得られているが、前述の圧力関係を保つには、第1、第2メカニカルシール2、2a間の第1部屋R1に加圧機構(水圧+αでオイルを供給する)を設けなければならず、防水機構の形状を小型化することは極めて困難であった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、メカニカルシールを使用する比較的高圧かつ高速回転する回転軸に適用可能な防水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による水中機器回転軸部の防水構造は、筐体内に設けられた油室である第1部屋と、前記第1部屋に第2仕切り部を介して設けられた第2部屋と、前記第1部屋の前部に設けられたオイルシール及び第1メカニカルシールと、前記第1部屋内に設けられた油と、前記第1部屋に接続された等圧機構と、を備え、前記第1メカニカルシールの外側に、海水側を密閉流体側として前記オイルシールを位置させ、前記オイルシールには接触圧によるポンピング作用があり、前記密閉流体側へ液を戻そうとする作用がある構造であり、また、前記第1部屋の第2圧力(P2)が外気の外圧の第1圧力(P1)と等圧でも海水が内部に浸入することを防止する構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、第1部屋に対して等圧機構を接続し、油のみを第1部屋に送油しているため、油は等圧機構側に戻ろうとする。
そのため、第1圧力P1は第1部屋内の第2圧力P2を下げることになるため、圧力の関係式は、P1=P2≫P3となり、従来よりも高効率であるため、前記等圧機構も従来よりも小型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態による水中機器回転軸部の防水構造の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による水中機器回転軸部の防水構造は、特に、メカニカルシールを使用する比較的高圧且つ高速回転する軸に適用可能な等圧機構を有する防水構造を得ることである。
【実施例0012】
以下、図面と共に本発明による水中機器回転軸部の防水構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、
図3及び
図4の従来例で示した構造と同一部分には、同一符号を用いて説明する。
図1は本発明の防水構造を示すもので、全体を覆うための筐体1内には、第1、第2部屋R1、R2が形成され、前記第1部屋R1の前方位置(前)には、第1メカニカルシール2が設けられ、この第1メカニカルシール2に隣接してオイルシール10が並設されている。
【0013】
前記筐体1内には、前記筐体1を分割して第1、第2部屋R1、R2を形成するための壁である第1、第2仕切り部23、24が設けられ、前記第1仕切り部23と回転軸3との間には、第1メカニカルシール2が設けられている。
【0014】
前記第2仕切り部24は、前記筐体1の内面1aと第2メカニカルシール2aとの間に設けられている。
前記回転軸3の前端3aには、スクリュ4が設けられ、その後端3bには、駆動モータMが設けられている。
前記第1仕切り部23の
図1で見て底部20aには、油のみを収容するための油の等圧機構20が接続されている。
前記等圧機構20は、パイプ21を介して油のみを前記第1部屋R1に供給する構造である。
【0015】
次に、動作について説明する。
前記第1メカニカルシール2の外側に、海水5側を密閉流体側として、オイルシール10を取付けているため、前記オイルシール10には、前記第1メカニカルシール2との接触圧によるポンピング作用があり、前記第1部屋R1側へ油を戻そうとする作用(ポンピング)を有している。
その結果、前記第1部屋R1内の内圧である第2圧力P2が外部の外圧である第1圧力P1と等圧であったとしても、海水5が内部の前記第2部屋R2には浸入しなくなる。
これにより、前述の等圧機構20は、比較的簡易な等圧機構に切換可能となる。
【0016】
また、
図2で示されるものは、本発明による水中機器回転軸部の防水構造の実機の半断面図を参考のために示しており、前記等圧機構20は、前記
図1の前記第1部屋R1に接続されている。
他の海水5、筐体1の、第1メカニカルシール2、オイルシール10、回転軸3、スクリュ4、第2部屋R2及び各圧力P
1、P
2、P
3は、
図1に示されたものを
図2に転記したもので、説明の繰り返しとなるため、ここでは省略している。
【0017】
次に、本発明による水中機器回転軸部の
図1の防水構造の要点について述べる。
すなわち、筐体1内に設けられた油室である第1部屋R1と、前記第1部屋R1に第2仕切り部24を介して設けられた第2部屋R2と、前記第1部屋R1の前部25に設けられたオイルシール10及び第1メカニカルシール2と、前記第1部屋R1内に設けられた油と、前記第1部屋R1に接続された等圧機構20と、を備え、前記第1メカニカルシール2の外側に、海水5側を密閉流体側として前記オイルシール10を位置させ、前記オイルシール10には接触圧によるポンピング作用があり、前記密閉流体側へ液を戻そうとする作用がある構造であり、また、前記第1部屋R1の第2圧力P
2が外気の外圧の第1圧力P
1と等圧でも海水5が内部に浸入することを防止することができる。
本発明による水中機器回転軸部の防水構造は、筐体内が2個の部屋に分けられ、油のみを収容する等圧機構が設けられているため、第1部屋内の油が、第1メカニカルシールのポンピング作用により、海水側へ押し出され、海水中の油がカバー部材内への第2部屋内へ浸入することはなく、回転軸及びスクリュは安定して回転を継続することができる。