(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138580
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/12 20140101AFI20241002BHJP
E05B 79/06 20140101ALI20241002BHJP
E05B 81/76 20140101ALI20241002BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E05B85/12 A
E05B79/06 A
E05B81/76
B60J5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049125
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 玲貴
(72)【発明者】
【氏名】高岡 真之輔
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250PP02
2E250PP13
2E250QQ03
2E250QQ09
2E250RR11
(57)【要約】
【課題】操作性を向上する。
【解決手段】車両用ドアハンドル装置10では、節度機構50が、操作レバー30のスイッチ操作位置と解除位置との間の節度位置において、操作レバー30に節度感を付与すると共に、操作レバー30の操作荷重が最大となる。すなわち、操作レバー30の全操作範囲内において、節度感が付与される節度位置での操作荷重が最大となる。このため、良好な節度感を操作レバー30に付与することができる。すなわち、操作レバー30がスイッチ操作位置を通過して解除位置側へ回動されたことを乗員に良好に認識させることができる。また、節度位置において、操作レバー30の操作荷重が最大となるため、節度位置の通過後に、操作荷重が、節度位置での操作荷重のF3よりも高くならない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアに設けられたベースと、
前記ベースに設けられ、ラッチ機構を電気的に作動させるための信号を出力するスイッチと、
第1方向を軸方向として回動可能に前記ベースに連結され、初期位置から回動方向一方側のスイッチ操作位置に回動されることで前記スイッチを作動させると共に、前記スイッチ操作位置を経由して解除位置に回動されることで前記ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除状態に機械的に切替える操作レバーと、
前記操作レバーを回動方向他方側に付勢すると共に、前記操作レバーを初期位置に保持するレバー付勢部材と、
前記操作レバーの前記スイッチ操作位置と前記解除位置との間の中間位置において前記操作レバーに節度感を付与する節度機構と、
を備え、
前記操作レバーの操作荷重が、前記中間位置において最大となる車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記節度機構は、
前記操作レバーに一体回動可能に設けられた節度部と、
前記第1方向に移動可能に構成され、前記節度部に対して前記回動方向一方側に離間して配置された節度付与部材と、
前記節度付与部材を前記第1方向の一方側へ付勢する節度付勢部材と、
を含んで構成されており、
前記操作レバーの回動時に前記節度付与部材が前記節度付勢部材の付勢力に抗して前記節度部を乗り越えることで前記操作レバーに節度感を付与される請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記節度部は、前記操作レバーの回動時に前記節度付与部材に当接する第1傾斜面及び第2傾斜面を有しており、
前記第1傾斜面が、前記第2傾斜面の前記回動方向一方側に配置されると共に、前記回動方向一方側へ向かうに従い前記第1方向の一方側へ傾斜し、
前記第2傾斜面は、前記回動方向他方側へ向かうに従い前記第1方向の一方側へ傾斜しており、
前記操作レバーの前記スイッチ操作位置への通過後に、前記節度付与部材が前記第1傾斜面に当接する請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
前記第1方向に直交する方向に沿う面に対する前記第1傾斜面の傾斜角度が前記第2傾斜面の傾斜角度よりも大きい請求項3に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項5】
前記節度部及び前記操作レバーが分割不能な単一部材にて構成されている請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項6】
前記操作レバーは、前記第1方向と直交する第2方向に延在され、前記操作レバーの第2方向の一方側端部には、前記第1方向を軸方向する支持軸に回動可能に支持された被支持部が設けられており、
前記節度部が、前記被支持部の前記第2方向の一方側端部に設けられている請求項3に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項7】
前記第1方向及び前記第2方向と直交する方向を第3方向とし、
前記操作レバーは、前記被支持部から第3方向の一方側へ延出されたアーム部を有しており、
前記アーム部には、前記ラッチ機構に連結されたワイヤの一端部が連結されており、前記スイッチ操作位置への回動時に前記アーム部によって前記スイッチが押圧されて作動する請求項6に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項8】
前記第1方向から見て、前記節度機構が、前記操作レバーの回動方向において、前記アーム部と重なる位置に配置されている請求項7に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の車両用ドアオープナー装置(車両用ドアハンドル装置)では、車両の平常時において、レバーを所定の操作位置に回動することで、ドアロックが電気的に解除される。一方、車両用電源の喪失時等の車両の非常時では、レバーを所定操作位置よりもさらに回動させて、レバーによってケーブルを引っ張ることで、ドアロックを機械的に解除することができる。
【0003】
また、レバーは可動プレートに回動可能に連結され、レバーと可動プレートとの間にはレバーバネが設けられている。さらに、可動プレートはベースに回動可能に連結されており、可動プレートとベースとの間にはプレートバネが設けられている。そして、操作レバーが所定操作位置よりもさらに回動するときには、レバーの操作支点がレバー軸からプレート軸に切り替わるため、レバーの操作方向が変化する。これにより、レバーに節度感を生じさせることができる。また、操作レバーが所定操作位置よりもさらに回動するときには、レバーの回動支点から操作部までの距離が短くなる。このため、レバーの回動角に対する操作荷重の増加量が、所定操作位置を境界として高くなる。以上により、レバーが所定操作位置を超えたことを操作者が認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両用ドアオープナー装置では、以下に示す点において、改善の余地がある。すなわち、上記車両用ドアオープナー装置では、レバーが所定操作位置を超えるときには、レバーに対する操作荷重の変化は比較的少なく、レバーの操作方向のみが変化するようになる。このため、操作者が、レバーの所定操作位置の通過を明確に把握することが困難となる。よって、レバーの操作性を向上するという点において改善の余地がある。
【0006】
また、車両用ドアオープナー装置では、上述のように、レバーの回動角に対する操作荷重の増加量が、所定操作位置を境界として高くなる。このため、レバーの所定操作位置の通過後では、レバーを操作する操作者の負荷が高くなる。よって、この点からも、レバーの操作性を向上するという点において改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、操作性を向上することができる車両用ドアハンドル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、車両用ドアに設けられたベースと、前記ベースに設けられ、ラッチ機構を電気的に作動させるための信号を出力するスイッチと、第1方向を軸方向として回動可能に前記ベースに連結され、初期位置から回動方向一方側のスイッチ操作位置に回動されることで前記スイッチを作動させると共に、前記スイッチ操作位置を経由して解除位置に回動されることで前記ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除状態に機械的に切替える操作レバーと、前記操作レバーを回動方向他方側に付勢すると共に、前記操作レバーを初期位置に保持するレバー付勢部材と、前記操作レバーの前記スイッチ操作位置と前記解除位置との間の中間位置において前記操作レバーに節度感を付与する節度機構と、を備え、前記操作レバーの操作荷重が、前記中間位置において最大となる車両用ドアハンドル装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る車両用ドアハンドル装置が搭載された車両を示す左側から見た側面図である。
【
図2】本実施の形態に係る車両用ドアハンドル装置を示す右側から見た側面図である。
【
図3】
図2に示される車両用ドアハンドル装置の左側から見た側面図である。
【
図4】
図3に示される車両用ドアハンドル装置の下部を示す上側から見た断面図(
図3の4-4線断面図)である。
【
図5】
図4に示される節度機構を示す左斜め後方側から見た断面図(
図4の5-5線断面図)である。
【
図6】
図5に示される節度機構の節度部と節度ピンとの位置関係を示す後側から見た斜視図である。
【
図7】操作レバーの回動操作時における節度部と節度ピンとの位置関係を説明するための説明図である。
【
図8】操作レバーの回動操作時における操作荷重を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係る車両用ドアハンドル装置10について説明する。
図1に示されるように、車両用ドアハンドル装置10は、車両V(自動車)における車両用ドアとしてのサイドドア60に設けられている。なお、図面において、適宜示される矢印UP、矢印FR、矢印LHは、それぞれ車両Vの車両上側、車両前側、車両左側(車幅方向一方側)を示している。以下、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両上下方向、車両前後方向、車両左右方向を示すものとする。そして、上下方向が本発明の第1方向に対応し、前後方向が本発明の第2方向に対応し、左右方向が本発明の第3方向に対応している。
【0012】
以下、車両Vの左側部に設けられたサイドドア60を用いて、車両用ドアハンドル装置10について説明する。サイドドア60では、その前端部が、図示しないヒンジ機構によって上下方向を軸方向として車両Vの車体に回動可能に連結されており、サイドドア60の開閉時には、サイドドア60が前端部を中心として回動される。そして、サイドドア60の閉状態において、サイドドア60の厚み方向が左右方向と一致し、サイドドア60の前後方向が車両Vの前後方向と一致している。
【0013】
車両用ドアハンドル装置10は、サイドドア60の下部内に設けられており、サイドドア60から車室内側へ操作可能に露出している。また、サイドドア60には、ラッチ機構62が設けられており、ラッチ機構62は、サイドドア60の閉状態を保持してサイドドア60の開閉を禁止するラッチ状態、又は、サイドドア60の開閉を許可するラッチ解除状態に切替可能に構成されている。ラッチ機構62は、モータ62Aを有しており、モータ62Aが作動することで、ラッチ機構62がラッチ状態又はラッチ解除状態に電動で切替わるようになっている。
【0014】
また、詳細については後述するが、乗員(操作者)が車両用ドアハンドル装置10の操作レバー30をスイッチ操作位置へ回動させることで、モータ62Aが作動して、ラッチ機構62がラッチ状態又はラッチ解除状態に電動で切替わるようになっている。また、乗員が操作レバー30をスイッチ操作位置よりもさらに回動させて、解除位置まで操作することで、ラッチ機構62を、手動で作動させて、ラッチ状態からラッチ解除状態に切替えるようになっている。すなわち、車両用ドアハンドル装置10は、モータ62Aを駆動させてラッチ機構62を電動で(電気的に)作動させるための機能と、ラッチ状態のラッチ機構62を手動で(機械的に)作動させるための機能と、の2つの機能を有している。
【0015】
図2~
図6に示されるように、車両用ドアハンドル装置10は、ベース20と、操作レバー30と、節度機構50と、を含んで構成されている。
【0016】
(ベース20について)
ベース20は、右側(車室内側)且つ前側へ開放された略矩形箱形状に形成されて、サイドドア60のインナパネル(図示省略)に固定されている。ベース20の後部における上壁と下壁との間には、支持軸22が架け渡されており、支持軸22は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。また、ベース20の底壁(左壁)には、左側へ突出した中間支持壁20Aが一体に形成されており、支持軸22の軸方向中間部が中間支持壁20Aによっても支持されている。また、ベース20の後部の底壁には、中間支持壁20Aの下側において、開口部20Bが貫通形成されている。
【0017】
(操作レバー30について)
操作レバー30は、上下方向を厚み方向とする略L字形ブロック状に形成されている。詳しくは、操作レバー30の後端部は、被支持部としてのレバー取付部30Aとされており、レバー取付部30Aは、他の部分と比べて、左側へ突出している。レバー取付部30Aには、左側へ開放された凹部30Bが形成されている。凹部30Bの上壁は、操作レバー30の上面よりも一段上がった位置に隆起している。凹部30Bの上壁及び下壁には、上下一対のレバー支持孔30C(
図6参照)が貫通形成されており、一対のレバー支持孔30Cは同軸上に配置されている(
図6では、上側のレバー支持孔30Cのみ図示されている)。そして、レバー取付部30Aが、ベース20の下壁と中間支持壁20Aとの間に配置され、支持軸22の下部が、レバー支持孔30C内に挿入されている。これにより、操作レバー30が、支持軸22を介してベース20に上下方向を軸方向として回動可能に連結されている。
【0018】
操作レバー30の前部(レバー取付部30Aから前側へ延出された部分)は、ハンドル部30Dとして構成されている。ハンドル部30Dには、上側且つ左側へ開放された抉り部30Eが形成されている。また、ハンドル部30Dは、平面視で、前側且つ左側へ開放されるように切り欠かれている。
【0019】
また、操作レバー30は、サイドドア60から車室内側へ回動操作可能に露出されている。これにより、乗員が操作レバー30のハンドル部30Dを把持して操作レバー30を回動操作することで、操作レバー30が支持軸22の軸回りを回動方向一方側(
図4及び
図6の矢印A方向側)へ回動する構成になっている。具体的には、操作レバー30のハンドル部30Dが、初期位置(
図4において実線にて示される操作レバー30を参照)からスイッチ操作位置(
図4において2点鎖線にて示される操作レバー30-1を参照)を経由し、解除位置(
図4において2点鎖線にて示される操作レバー30-2を参照)へ回動操作可能に構成されている。なお、操作レバー30が解除位置よりもさらに回動方向一方側へ回動されると、操作レバー30が図示しない位置でベース20に当接して操作レバー30の回動が制限される。
【0020】
また、支持軸22には、トーションバネとして構成されたリターンスプリング32が外挿されている。リターンスプリング32は、操作レバー30の凹部30B内に収容されている。リターンスプリング32の一端部はベース20に係止され、リターンスプリング32の他端部は操作レバー30に係止されており、リターンスプリング32が操作レバー30を回動方向他方側へ付勢している。これにより、操作レバー30が初期位置に保持されている。なお、操作レバー30の初期位置では、操作レバー30が、図示しない位置でベース20に当接して操作レバー30の回動方向他方側への回動が制限されている。
【0021】
操作レバー30におけるレバー取付部30Aの下部には、左側へ延出されたアーム部としてのレバーアーム30Fが設けられている。レバーアーム30Fの先端部は、ベース20の開口部20Bから左側へ若干突出して、ベース20に設けられたスイッチ34を作動させる部位として構成されている。スイッチ34は、レバーアーム30Fの先端部の下側に配置され、制御部64に電気的に接続されている。そして、操作レバー30がスイッチ操作位置へ回動すると、レバーアーム30Fがスイッチ34のスイッチ部を押圧して、スイッチ34が、オン状態に切替わり、制御部64へ出力信号を出力する。これにより、制御部64がラッチ機構62のモータ62Aを駆動させて、ラッチ機構62を電動で作動させるようになっている。
【0022】
また、レバーアーム30Fの先端部には、ワイヤ36(
図3及び
図4参照)の一端部が連結されており、ワイヤ36は、レバーアーム30Fから後側へ延出されている。ワイヤ36の他端部は、ラッチ機構62に連結されている。これにより、操作レバー30が回動操作されることで、ワイヤ36がラッチ機構62を前方側へ引っ張って、ラッチ機構62を、手動で作動させるようになっている。具体的には、操作レバー30が解除位置へ回動されることで、ラッチ機構62に入力された操作力によって、ラッチ機構62が、機械的にラッチ状態からラッチ解除状態に切替わるようになっている。
【0023】
(節度機構50について)
節度機構50は、節度部52と、節度付与部材としての節度ピン54と、節度付勢部材としての節度スプリング56(
図5参照)と、を含んで構成されている。
【0024】
節度部52は、操作レバー30におけるレバー取付部30Aの後端外周部に一体に形成されている。節度部52は、支持軸22の径方向を厚み方向とする略矩形ブロック状に形成され、操作レバー30の後面から後側へ突出すると共に、支持軸22の後方側に位置している。節度部52は、平面視で、支持軸22の周方向(操作レバー30の回動方向)に沿うように延在されており、前述したレバーアーム30Fが、平面視で、節度部52に対して操作レバー30の回動方向一方側に位置している(
図4参照)。
【0025】
節度部52の上面には、第1傾斜面52A及び第2傾斜面52Bが形成されており(
図5~
図7参照)、第1傾斜面52Aが第2傾斜面52Bに対して操作レバー30の回動方向一方側に位置している。支持軸22の径方向から見て、第1傾斜面52Aは、操作レバー30の回動方向一方側へ向かうに従い下側へ傾斜しており、第2傾斜面52Bは、操作レバー30の回動方向他方側へ向かうに従い下側へ傾斜している。すなわち、節度部52の上面が上側へ凸となる山形状に形成されている。上下方向に対して直交する水平面に対する第1傾斜面52Aの傾斜角度AG1(
図5参照)が、水平面に対する第2傾斜面52Bの傾斜角度AG2(
図5参照)よりも大きく設定されている。第1傾斜面52Aと第2傾斜面52Bとの接続部には、頂面52Cが形成されており、頂面52Cは、水平面に沿うように形成されて、節度部52の頂部を構成している。換言すると、節度部52では、第1傾斜面52A及び第2傾斜面52Bの接続部が、頂面52Cによって滑らかに接続されている。また、操作レバー30の回動方向における第2傾斜面52Bの延在長さが、第1傾斜面52Aの延在長さと比べて大幅に長くなっている。すなわち、頂面52Cが、節度部52の上面の回動方向一方側の端部側に位置している。
【0026】
節度ピン54は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。節度ピン54は、ベース20の後端部に設けられた支持スリーブ24(
図5参照)に上下方向に移動可能に支持されている。支持スリーブ24は、下側へ開放された略有底円筒状に形成されており、支持スリーブ24の上壁には、ピン孔24Aが貫通形成されている。そして、節度ピン54が、上下方向に移動可能に支持スリーブ24内に挿入されている。
【0027】
節度ピン54の支持スリーブ24への挿入状態では、節度ピン54の上端部がピン孔24Aから上側へ突出している。節度ピン54の上端部には、節度ピン54の径方向に延在されたストッパピン58が設けられており、ストッパピン58の両端部が節度ピン54の径方向外側へ突出している。そして、ストッパピン58が、支持スリーブ24の上面に係止されて、節度ピン54の下側への移動が制限されている。
【0028】
節度ピン54の下端部は、ピン側摺動部54Aとして構成されており、ピン側摺動部54Aは、支持スリーブ24から下側へ突出して、節度部52の上部(第1傾斜面52A及び第2傾斜面52B)に対して操作レバー30の回動方向一方側に離間して配置されている(
図5参照)。ピン側摺動部54Aは、下側へ凸となる略円錐状に形成されており、ピン側摺動部54Aの下端面は、略半球面状に形成されている。ピン側摺動部54Aの上端部の直径は、節度ピン54の直径よりも大きく設定されており、ピン側摺動部54Aの上端部が、ピン孔20C内に挿入されている。
【0029】
図5に示されるように、節度スプリング56は、圧縮コイルスプリングとして構成されている。節度スプリング56は、節度ピン54に外挿されると共に、支持スリーブ24内に配置されている。節度スプリング56の上端部は、支持スリーブ24に係止され、節度スプリング56の下端部は、ピン側摺動部54Aに係止されて、節度スプリング56が、節度ピン54を下側へ付勢している。これにより、節度ピン54が非作動位置(
図5に示される位置)に保持されている。
【0030】
また、
図4に示されるように、節度機構50は、平面視で、操作レバー30の回動方向において、レバーアーム30Fと重なる位置に配置されている。すなわち、平面視で、節度部52、節度ピン54、及びレバーアーム30Fが操作レバー30の回動方向に並んで配置されると共に、節度ピン54が、節度部52とレバーアーム30Fとの間に配置されている。
【0031】
また、詳細については後述するが、操作レバー30の初期位置からの回動では、操作レバー30のスイッチ操作位置への通過後に、節度部52の第1傾斜面52Aが節度ピン54のピン側摺動部54Aに当接する設定になっている(
図7の(1)にて示される位置であり、以下、操作レバー30のこの位置を節度開始位置という)。操作レバー30が節度開始位置からさらに回動すると、第1傾斜面52Aがピン側摺動部54Aの外周面上を摺動することで、節度ピン54が第1傾斜面52Aによって上側へ移動するようになっている。そして、操作レバー30がさらに回動されることで、節度部52の頂面52Cが、ピン側摺動部54Aの下端面に到達する(
図7の(2)にて示される位置であり、以下、操作レバー30のこの位置を中間位置としての節度位置という)。操作レバー30が節度位置からさらに回動すると、第2傾斜面52Bがピン側摺動部54Aの外周面上を摺動することで、節度ピン54が下側へ移動する。また、第2傾斜面52Bにおける長手方向中間部において、節度ピン54が非作動位置に復帰する設定になっている。これにより、第2傾斜面52Bとピン側摺動部54Aとの当接が解除され、ピン側摺動部54Aが第2傾斜面52Bの上側に離間する設定になっている(
図7の(3)にて示される位置であり、操作レバー30のこの位置を節度完了位置という)。そして、操作レバー30が節度完了位置の通過後に、操作レバー30(節度部52)が解除位置(
図7の(4)にて示される位置)に到達する設定になっている。また、車両用ドアハンドル装置10では、節度位置における操作レバー30の操作力が最大となるように、節度スプリング56及びリターンスプリング32のバネ荷重が設定されている。
【0032】
(作用効果)
次に、車両用ドアハンドル装置10の動作を
図8に示されるグラフを用いて説明しつつ、本実施形態の作用効果について説明する。なお、
図8に示されるグラフは、操作レバー30の回動操作時における操作荷重を模式的に示すグラフであり、横軸が操作レバー30の回動位置であり、縦軸が操作レバー30の操作荷重である。
【0033】
操作レバー30の初期位置では、リターンスプリング32によって操作レバー30が回動方向他方側へ付勢されて、初期位置での操作荷重がF0となっている。操作レバー30を初期位置からリターンスプリング32の付勢力に抗してスイッチ操作位置に回動させると、操作荷重がF0から徐々に増加してF1になる。そして、操作レバー30のスイッチ操作位置では、レバーアーム30Fによってスイッチ34がオンして、スイッチ34から制御部64へオン信号が出力される。これにより、制御部64によってラッチ機構62のモータ62Aが駆動して、ラッチ機構62がモータ62Aによって電気的に作動する。また、操作レバー30のスイッチ操作位置では、操作レバー30の節度部52が節度ピン54のピン側摺動部54Aに対して回動方向他方側に離間して配置されて、節度機構50の非作動状態が維持される。
【0034】
操作レバー30をスイッチ操作位置から節度開始位置に回動させると、操作荷重がF1から徐々に増加してF2になる。そして、操作レバー30の節度開始位置では、操作レバー30における節度部52の第1傾斜面52Aが節度ピン54のピン側摺動部54Aに当接する。
【0035】
操作レバー30を節度開始位置から節度位置にさらに回動させると、節度部52の第1傾斜面52Aが節度ピン54のピン側摺動部54A上を摺動しながら操作レバー30が回動し、節度部52の頂面52Cがピン側摺動部54Aに当接する。このときには、節度ピン54が節度スプリング56の付勢力に抗して非作動位置から上側へ移動する。これにより、操作荷重が、F2からF3に急激に増加する。よって、操作レバー30がスイッチ34を操作するスイッチ操作位置を通過して解除位置側へ回動したことを、乗員が認識する。
【0036】
そして、操作レバー30が節度位置からさらに回動されると、節度部52の第2傾斜面52Bが節度ピン54のピン側摺動部54A上を摺動しながら操作レバー30が回動する。このときには、第2傾斜面52Bは、回動方向他方側へ向かうに従い下側へ傾斜しており、節度スプリング56は、節度ピン54を下側へ付勢しているため、操作荷重がF3から急激に減少して、F2よりも低くなる。これにより、操作レバー30が節度位置を超えることで、操作レバー30に節度感が付与される。よって、操作レバー30が節度位置を超えたことを、乗員が認識する。
【0037】
そして、操作レバー30が節度完了位置に到達すると、節度ピン54が非作動位置に復帰する。この時の操作荷重は、F4となり、操作荷重F4は、操作荷重F3よりも低くなる。また、操作レバー30の節度位置から節度完了位置への回動では、操作レバー30をリターンスプリング32の付勢力に抗して回動させるため、操作荷重F4は、操作荷重F2より高い値となっている。
【0038】
操作レバー30を節度完了位置からリターンスプリング32の付勢力に抗して解除位置に回動させると、操作荷重がF4から徐々に増加してF5になる。操作荷重F5は、操作荷重F3よりも低い値となっている。そして、操作レバー30の解除位置では、ワイヤ36によってラッチ機構62が前方側へ引っ張られて、ラッチ機構62が機械的にラッチ状態からラッチ解除状態に切替わる。これにより、車両Vのバッテリからの電力供給不足等の要因によってラッチ機構62が電気的に作動しない緊急時では、ラッチ機構62を手動で作動させることができる。
【0039】
以上説明したように、車両用ドアハンドル装置10では、操作レバー30のスイッチ操作位置においてスイッチ34がオンしてラッチ機構62が電気的に作動する。また、操作レバー30が解除位置に操作されることで、操作レバー30がワイヤ36を介してラッチ機構62を引っ張って、ラッチ機構62がラッチ状態からラッチ解除状態に切替わる。ここで、節度機構50が、操作レバー30のスイッチ操作位置と解除位置との間の節度位置において、操作レバー30に節度感を付与すると共に、操作レバー30の操作荷重が最大となる。すなわち、操作レバー30の全操作範囲内において、節度感が付与される節度位置での操作荷重が最大となる。このため、例えば、操作レバー30の回動量に対する操作荷重の増加量を、節度位置を境界として増加させる構成と比べて、良好な節度感を操作レバー30に付与することができる。すなわち、操作レバー30がスイッチ操作位置を通過して解除位置側へ回動されたことを乗員(操作者)に良好に認識させることができる。
【0040】
また、操作レバー30の操作荷重が、節度位置において、操作荷重が最大となるため、節度位置の通過後に、操作荷重が、節度位置での操作荷重のF3よりも高くならない。これにより、操作レバー30を操作する乗員(操作者)の負荷を軽減することができる。以上により、操作レバー30の操作性を向上することができる。
【0041】
また、節度機構50は、操作レバー30に一体回動可能に設けられた節度部52と、節度部52に対して回動方向一方側に離間して配置された節度ピン54と、節度ピン54を下側へ付勢する節度スプリング56と、を含んで構成されている。そして、操作レバー30の回動方向一方側への操作時に、節度ピン54のピン側摺動部54Aが節度スプリング56の付勢力に抗して上側へ移動して節度部52を乗り越えることで、操作レバー30に節度感が付与される。これにより、簡易な構成で操作レバー30に節度感を付与することができる。
【0042】
また、操作レバー30の初期位置から節度開始位置までの回動操作時、及び節度完了位置から解除位置までの回動操作時では、リターンスプリング32のバネ荷重及びバネ定数によって、操作レバー30の操作力が決定される。このため、操作レバー30の初期位置から節度開始位置までの回動操作時、及び節度完了位置から解除位置までの回動操作時において、操作レバー30の回動量に対する操作荷重の増加量を同じにすることができる。また、リターンスプリング32のバネ荷重及びバネ定数を低く設定することで、初期位置から節度開始位置までの回動操作時、及び節度完了位置から解除位置までの回動操作時における操作レバー30の操作荷重を比較的低くすることができる。よって、操作レバー30を操作する乗員(操作者)の負荷を一層軽減することができる。したがって、操作レバー30の操作性を一層向上することができる。
【0043】
また、節度部52は、操作レバー30の回動時に節度ピン54のピン側摺動部54A上を摺動する第1傾斜面52A及び第2傾斜面52Bを有している。第1傾斜面52Aは、第2傾斜面52Bの回動方向一方側に配置されると共に、回動方向一方側へ向かうに従い下側へ傾斜し、第2傾斜面52Bは、回動方向他方側へ向かうに従い下側へ傾斜している。すなわち、節度部52の上面が上側へ凸となる山形状に形成されて、節度ピン54のピン側摺動部54Aが、第1傾斜面52Aと第2傾斜面52Bとの境界である頂面52Cを乗り越えることで、節度感が付与される。これにより、第1傾斜面52Aの傾斜角度AG1及び第2傾斜面52Bの傾斜角度AG2を適宜設定することで、操作レバー30に良好な節度感を付与できる。また、操作レバー30のスイッチ操作位置への通過後に、操作レバー30の第1傾斜面52Aが節度ピン54に当接する。すなわち、操作レバー30によるスイッチ34の作動後に、操作レバー30が節度開始位置に到達して、操作レバー30に対する節度感付与が開始される。これにより、例えば、通常時においてラッチ機構62を電動で作動させるために操作レバー30を操作する乗員(操作者)に、スイッチ34への操作が完了したことを明確に認識させることができる。したがって、操作レバー30の操作性を効果的に向上することができる。
【0044】
また、水平面に対する第1傾斜面52Aの傾斜角度AG1が第2傾斜面52Bの傾斜角度AG2よりも大きい。すなわち、節度開始位置から節度位置までの回動距離が、節度位置から節度完了位置までの距離よりも短い。これにより、節度部52の頂面52Cに対して節度ピン54を早期に乗り越えさせて、操作レバー30に節度感を付与することができる。換言すると、操作荷重が急激に増加する期間を比較的短くして、操作レバー30に節度感を付与することができる。したがって、操作レバー30の操作性を一層効果的に向上することができる。
【0045】
また、節度部52が操作レバー30に一体に形成されている。これにより、節度部52を、操作レバー30と別体に構成して、操作レバー30に固定する構造と比べて、コストダウン及び組立工数の削減に寄与することができる。
【0046】
また、操作レバー30では、ハンドル部30Dがレバー取付部30Aから前側へ延出されており、節度部52がレバー取付部30Aの後端部に一体に設けられている。このため、前後方向における操作レバー30の大型化を抑制しつつ、節度部52を操作レバー30に設けることができる。
【0047】
また、操作レバー30では、レバーアーム30Fがレバー取付部30Aから左側へ延出されており、ワイヤ36の一端部がレバーアーム30Fの先端部に連結されている。また、操作レバー30のスイッチ操作位置への回動時には、レバーアーム30Fによってスイッチ34が押圧されて作動する。このため、レバーアーム30Fを、ラッチ機構62を電動及び手動で作動させる共通部位として機能させることができる。これにより、操作レバー30の構造を簡略化しつつ操作レバー30の小型化に寄与することができる。
【0048】
また、平面視で、節度機構50が、操作レバー30の回動方向において、レバーアーム30Fと重なる位置に配置されている。すなわち、操作レバー30の回動方向において、節度部52、節度ピン54、及びレバーアーム30Fが並んで配置されている。これにより、車両用ドアハンドル装置10の体格の大型化を抑制しつつ、車両用ドアハンドル装置10に節度機構50を設けることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 車両用ドアハンドル装置
20 ベース
30 操作レバー
30A レバー取付部(被支持部)
30F レバーアーム(アーム部)
34 スイッチ
36 ワイヤ
50 節度機構
52 節度部
52A 第1傾斜面
52B 第2傾斜面
54 節度ピン(節度付与部材)
56 節度スプリング(節度付勢部材)
60 サイドドア(車両用ドア)
62 ラッチ機構
AG1 第1傾斜面の傾斜角度
AG2 第2傾斜面の傾斜角度