(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138609
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/22 20060101AFI20241002BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F02D41/22
F02D45/00 364A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049163
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】平迫 一樹
(72)【発明者】
【氏名】北井 宏尚
(72)【発明者】
【氏名】鄭 嘉豪
【テーマコード(参考)】
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G301HA01
3G301HA02
3G301JA34
3G301KA25
3G301NA04
3G301NA08
3G301ND02
3G301PE01Z
3G301PE06Z
3G384AA01
3G384AA03
3G384BA02
3G384BA03
3G384CA19
3G384DA50
3G384EA02
3G384ED04
3G384ED07
3G384FA54Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】必要以上のトルクダウンを行うことなく内燃機関の過回転を抑制する。
【解決手段】コントロールユニットは、内燃機関の現在の機関回転数Rrと上限回転数Rmとの差分に基づいて所定の目標差回転数Rtdを算出し、この目標差回転数Rtdの積算値に基づいて内燃機関の出力制限用のリミットトルクTLを算出する。目標差回転数Rtdの積算値は、目標差回転数Rtdに所定の補正係数を乗じたものを利用して算出される。この補正係数は、リミットトルクTLがトルク閾値Th未満の場合、変速機のギヤ段によらず所定の一定値となる第3補正量Giとなる。補正係数は、リミットトルクTLがトルク閾値Th以上の場合、変速機のギヤ段が低いほど大きい値となる第4補正量Gioとなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の機関回転数と予め設定された上記内燃機関の上限回転数との差分に基づいて所定の目標差回転数を算出し、
上記目標差回転数の積算値に基づいて上記内燃機関のリミットトルクを算出し、
上記内燃機関の目標トルクが上記リミットトルク以上となった場合に、上記内燃機関のトルクを上記リミットトルクに制限し、
上記目標差回転数の積算値は、上記目標差回転数に所定の補正係数を乗じたものを利用して算出され、
上記リミットトルクが所定のトルク閾値未満の場合は、上記補正係数が上記内燃機関に接続された変速機のギヤ段によらず所定の一定値に設定され、
上記リミットトルクが所定のトルク閾値以上の場合は、上記補正係数が上記内燃機関に接続された変速機のギヤ段が低いほど大きい値に設定されることを特徴とする車両の制御方法。
【請求項2】
上記トルク閾値は、上記変速機のギヤ段に応じて設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項3】
上記トルク閾値は、上記変速機のギヤ段が低いほど小さい値に設定されることを特徴とする請求項2に記載の車両の制御方法。
【請求項4】
上記変速機は、車速の上昇に伴って上記内燃機関の機関回転数が上昇する変速モードを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御方法。
【請求項5】
内燃機関の機関回転数と予め設定された上記内燃機関の上限回転数との差分に基づいて所定の目標差回転数を算出する目標差回転数算出部と、
上記目標差回転数の積算値に基づいて上記内燃機関のリミットトルクを算出するリミットトルク算出部と、
上記内燃機関の目標トルクが上記リミットトルク以上となった場合に、上記内燃機関のトルクを上記リミットトルクに制限する制御部と、を有し、
上記目標差回転数の積算値は、上記目標差回転数に所定の補正係数を乗じたものを利用して算出され、
上記リミットトルクが所定のトルク閾値未満の場合は、上記補正係数が上記内燃機関に接続された変速機のギヤ段によらず所定の一定値に設定され、
上記リミットトルクが所定のトルク閾値以上の場合は、上記補正係数が上記内燃機関に接続された変速機のギヤ段が低いほど大きい値に設定されることを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、内燃機関の機関回転数が所定回転数に到達すると、アクセル開度の大きさに関わらず、スロットル弁のスロットル開度を変速機のギヤ位置に応じて設定された目標スロットル開度に制御して、車両走行中における内燃機関の過回転を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の機関回転数は、変速機のギヤ段に応じて所定回転数に到達するまでの上昇速度が異なる。そのため、内燃機関は、トルクダウンを開始する所定回転数を変速機のギヤ段に関係なく一定に設定すると、必要以上のトルクダウンにより駆動力不足となったり、トルクダウンが不足して過回転を招いたりする虞がある。
【0005】
つまり、内燃機関の過回転を抑制して当該内燃機関を保護するにあたっては、更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両は、内燃機関の機関回転数内燃機関の上限回転数との差分に基づいて算出される目標差回転数の積算値に基づいて内燃機関のリミットトルクを算出し、内燃機関の目標トルクがリミットトルク以上となった場合に、内燃機関のトルクをリミットトルクに制限する。目標差回転数の積算値は、目標差回転数に所定の補正係数を乗じたものを利用して算出される。この補正係数は、リミットトルクが所定のトルク閾値未満の場合、内燃機関に接続された変速機のギヤ段によらず所定の一定値に設定される。また、この補正係数は、リミットトルクが所定のトルク閾値以上の場合、内燃機関に接続された変速機のギヤ段が低いほど大きい値に設定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内燃機関の過回転を防止する際に、内燃機関のトルク変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】内燃機関の過回転を防止する際の機関回転数とトルクの動きの一例を示すタイミングチャート。
【
図2】本発明が適用された内燃機関の過回転を防止する際の機関回転数とトルクの動きの一例を示すタイミングチャート。
【
図3】本発明が適用された内燃機関の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
本発明が適用される車両は、当該車両の駆動源となる内燃機関と、内燃機関の駆動力を変速する変速機と、変速機を介して内燃機関の駆動力が伝達される駆動輪と、を有している。
【0011】
内燃機関は、例えばガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジンである。
【0012】
変速機は、有段もしくは無段の変速機であり、車速の上昇に伴って内燃機関の機関回転数が上昇するような変速モードを有するものである。
【0013】
また、車両は、内燃機関の機関回転数を検出可能なセンサや、各種センサからの信号に基づいて各種の演算を行う制御部としてのコントロールユニットを有している。
【0014】
コントロールユニットは、車両の走行中、内燃機関の機関回転数が所定の上限回転数(許容回転数)Rmを超えることがないように、内燃機関を制御している。上限回転数Rmは、内燃機関で許容される上限の回転数である。
【0015】
内燃機関の機関回転数は、スロットル弁を絞って吸入空気量を減らし、内燃機関のトルクを低下させることで低下させることが可能となる。
【0016】
そこで、コントロールユニットは、内燃機関の現在の機関回転数Rrと上限回転数Rmとの差分に基づいて所定の目標差回転数Rtdを算出し、この目標差回転数Rtdの積算値に基づいて内燃機関の出力制限用のリミットトルクTLを算出する。つまり、コントロールユニットは、目標差回転数算出部及びリミットトルク算出部に相当する。
【0017】
そして、コントロールユニットは、内燃機関の目標トルクTtがリミットトルクTL以上となった場合に、内燃機関のトルクをリミットトルクTLに制限する。目標トルクTtは、例えばアクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)に応じて設定される。
【0018】
目標差回転数Rtdは、上限回転数Rmから現在の機関回転数Rrを減じた値に、所定の第1補正量Gdを乗じて得られる値である。第1補正量Gdは、変速機の現在選択されているギヤ段が低いほど大きい値に設定される。従って、目標差回転数Rtdは、変速機の現在選択されているギヤ段が低いほど大きい値に設定される。
【0019】
リミットトルクTLは、目標差回転数Rtdに第2補正量Gpを乗じた値に、所定のトルク補正量Tcを加えて得られる値である。第2補正量Gpは、変速機のギヤ段によらず所定の一定値(固定値)に設定されている。トルク補正量Tcは、目標差回転数Rtdに補正係数に相当する所定の第4補正量Gioを乗じた値に、トルク補正量Tcの前回値に加算して得られる値である。つまり、リミットトルクTLは、目標差回転数Rtdの積算値に基づいて算出されるものである。第4補正量Gioは、変速機のギヤ段に応じて設定される値であり、変速機のギヤ段が低いほど大きい値に設定される。第4補正量Gioは、変速機のギヤ段によらず、後述する第3補正量Giに対して相対的に大きい値である。
【0020】
なお、目標トルクTtがリミットトルクTL未満の場合には、トルク補正量Tcを算出する際に、第4補正量Gioに替えて、補正係数に相当する第3補正量Giを用いる。すなわち、目標トルクTtがリミットトルクTL未満の場合のトルク補正量Tcは、目標差回転数Rtdに所定の第3補正量Giを乗じた値をトルク補正量Tcの前回値に加算して得られる値となる。第3補正量Giは、例えば「0」に近い小さい値であり、変速機のギヤ段によらず所定の一定値(固定値)に設定されている。
【0021】
従って、リミットトルクTLは、変速機のギヤ段が低いほど変化の割合が大きくなる。
【0022】
さらに、内燃機関は、トルクダウン中にリミットトルクTLがトルク閾値Th未満になると、トルク補正量Tcを算出する際に、第4補正量Gioに替えて、補正係数に相当する第3補正量Giを用いる。すなわち、目標トルクTtがリミットトルクTL以上で、リミットトルクTLがトルク閾値Th未満の場合のトルク補正量Tcは、目標差回転数Rtdに所定の第3補正量Giを乗じた値をトルク補正量Tcの前回値に加算して得られる値となる。
【0023】
図1は、内燃機関の過回転を防止する際の機関回転数とトルクの動きの一例を本発明が適用された内燃機関と比較例の内燃機関とで対比して示すタイミングチャートである。
【0024】
図1に実線で示す特性線C1は、本発明が適用された場合の内燃機関の機関回転数を示している。
図1に破線で示す特性線C2は、比較例の内燃機関の機関回転数を示している。
図1に実線で示す特性線C3は、本発明が適用された場合の内燃機関のリミットトルクTLを示している。
図1に破線で示す特性線C4は、比較例の内燃機関のトルクを示している。
【0025】
ここで、比較例は、内燃機関の機関回転数が上限回転数Rmに達したタイミングで、内燃機関のトルクダウンを行って機関回転数が上限回転数Rmを超えないようにしている。
【0026】
このような比較例においては、
図1に示すように、機関回転数の上昇率が大きい場合に回転数制限が間に合わず、機関回転数が上限回転数Rmを上回ってしまう虞がある。
【0027】
また、比較例においては、
図1に示すように、内燃機関の機関回転数が上限回転数Rmに達してから内燃機関のトルクダウンを実施するため、トルクダウンする際のトルクの低下速度が大きくなり、減速Gによる違和感を運転者に与える虞がある。
【0028】
また、比較例においては、
図1に示すように、トルクダウンする際のトルクの低下速度が速くなって、トルクダウンによる駆動力不足を運転者に感じさせる虞がある。
【0029】
そこで、本発明が適用された内燃機関は、変速機のギヤ段が低いほど大きい値に設定される目標差回転数Rtdの積算値に基づいて算出したリミットトルクTL(特性線C3)を利用して当該内燃機関の過回転を抑制するトルクダウンを実施する。
【0030】
図1の時刻t1は、アクセルペダルが踏み込まれ、トルクが所定のトルク閾値Thよりも大きい目標トルクTtに設定されたタイミングである。
【0031】
トルク閾値Thは、一定速度で走行する際の走行抵抗(いわゆる「road load」 )に相当するトルク値であり、車速が速くなるほど大きい値となる。つまり、ギヤ段が高くなるほど大きい値となる。
【0032】
図1の時刻t2は、目標トルクTtが特性線C3で表されるリミットトルクTL以上となるタイミングである。本実施例の内燃機関は、時刻t2のタイミングから機関回転数が上限回転数Rmを超えないようにトルクダウンを開始する。そのため、本実施例の内燃機関は、時刻t2のタイミングから機関回転数の上昇率(上昇速度)が低下する。また、本実施例の内燃機関は、比較例の内燃機関に対してトルクダウンのタイミングが早くなるので、比較例の内燃機関に対してトルクダウンする際のトルクの変化速度を遅くなり、トルクダウンが運転者に与える影響(減速G、駆動力不足を感じさせること等)を抑制できる。
【0033】
図1の時刻t3は、特性線C2で表される比較例の内燃機関の機関回転数が上限回転数Rmに達したタイミングである。比較例の内燃機関は、時刻t3タイミングから機関回転数が上限回転数Rmを超えないようにトルクダウンを開始する。そのため、比較例の内燃機関は、時刻t3のタイミングから機関回転数が上限回転数Rmを超えないようにトルクダウンを開始するため、機関回転数が上限回転数Rmに対してオーバーシュートしている。また、比較例の内燃機関は、本実施例の内燃機関に対してトルクダウンのタイミングが遅くなるので、本実施例の内燃機関に対してトルクダウンする際のトルクの変化速度を早くなる。
【0034】
図1の時刻t4は、特性線C1で表される本実施例の内燃機関の機関回転数が上限回転数Rmに達したタイミングである。本実施例の内燃機関は、
図1に矢印で示すように、機関回転数が上限回転数Rmに達する前にトルクダウンを開始して、機関回転数の上昇速度を低下させているので、時刻t4以降の機関回転数の上限回転数Rmに対するオーバーシュートやアンダーシュートが抑制される。同様に、本実施例の内燃機関は、
図1に矢印で示すように、機関回転数が上限回転数Rmに達する前にトルクダウンを開始して、機関回転数の上昇速度を低下させているので、時刻t4以降のトルクのトルク閾値Thに対するオーバーシュートやアンダーシュートが抑制される。
【0035】
また、本実施例の内燃機関は、リミットトルクTLを算出する際に用いる目標差回転数Rtdが変速機のギヤ段に応じて変化する。つまり、本実施例の内燃機関は、リミットトルクTLが、高ギヤ段側と低ギヤ段側とでは異なる値となる。
【0036】
図2は、本発明が適用された内燃機関の過回転を防止する際の機関回転数とトルクの動きの一例を変速段が低い場合と高い場合とで対比して示すタイミングチャートである。
【0037】
図2に実線で示す特性線C1
Lは、変速段が低い場合の内燃機関の機関回転数を示している。
図1に破線で示す特性線C1
Hは、変速段が高い場合の内燃機関の機関回転数を示している。
図1に実線で示す特性線C3
Lは、変速段が低い場合の内燃機関のリミットトルクTLを示している。
図1に破線で示す特性線C3
Hは、変速段が高い場合の内燃機関のリミットトルクTLを示している。
【0038】
図2の時刻t1は、アクセルペダルが踏み込まれ、トルクが所定のトルク閾値Thよりも大きい目標トルクTtに設定されたタイミングである。
【0039】
図2の時刻t2は、目標トルクTtが特性線C3
Lで表されるリミットトルクTL以上となるタイミングである。
図2の時刻t3は、目標トルクTtが特性線C3
Hで表されるリミットトルクTL以上となるタイミングである。
【0040】
内燃機関は、変速段が低いほどリミットトルクTLが小さい値となり、早期にトルクダウンが開始される。
【0041】
リミットトルクTLの低下速度(変化の割合)は、変速機の変速段が低いほど大きくなる。また、リミットトルクTLの所定時間(単位時間)当たりの変化量(特性線C3の傾き)は、変速機の変速段が低いほど大きくなる。従って、内燃機関のトルクは、リミットトルクTLに制限すると、変速機のギヤ段が低くなるほど、所定時間当たりのトルクの変化量が大きくなる。
【0042】
リミットトルクTLの所定時間(単位時間)当たりの変化量は、リミットトルクTLが目標トルクTtよりも小さくなると、リミットトルクTLが目標トルクTt以上のときよりも大きくなっている。リミットトルクTLは、目標トルクTtとトルク閾値Thとの間では、トルク補正量Tcの値を大きくすることで所定時間(単位時間)当たりの変化量を大きくしている。
【0043】
目標トルクTtがリミットトルクTL以上となるタイミングの機関回転数は、変速機のギヤ段が低くなるほど低くなっている。
【0044】
図2の時刻t4は、内燃機関の機関回転数が上限回転数Rmに達したタイミングである。
【0045】
本実施例の内燃機関は、リミットトルクTLとトルク閾値Thの大小関係に応じてトルク補正量Tcを算出する際に用いる補正係数を使い分けている。具体的には、リミットトルクTLがトルク閾値Thよりも小さい値になると、トルク補正量Tcを算出する際に、目標差回転数Rtdに対して第4補正量Gioではなく第3補正量Giを乗じている。そのため、リミットトルクTLを表す特性線C3L、C3Hは、内燃機関の機関回転数が上限回転数Rmに到達するタイミングにおいて、トルク閾値Thに対するアンダーシュートが抑制されている。
【0046】
上述した実施例の内燃機関は、目標差回転数Rtdの積算値であるトルク補正量Tcが目標差回転数Rtdに所定の補正係数を乗じたものを利用して算出されている。
【0047】
そして、トルク補正量Tcは、リミットトルクTLがトルク閾値Th未満の場合、変速機のギヤ段によらず所定の一定値となる第3補正量Giを補正係数として算出される。また、トルク補正量Tcは、リミットトルクTLがトルク閾値Th以上の場合、変速機のギヤ段が低いほど大きい値となる第4補正量Gioを補正係数として算出される。
【0048】
これによって、内燃機関は、トルク補正量Tcを精度良く収束させることができ、トルク閾値Thに対するリミットトルクTLのアンダーシュートを抑制することができる。つまり、内燃機関の過回転を防止する際に、内燃機関のトルク変動を抑制することができる。
【0049】
また、上述した実施例の内燃機関は、目標差回転数Rtdが変速機のギヤ段が低いほど大きい値に設定されている。
【0050】
そのため、本実施例の内燃機関は、機関回転数の上昇率に応じたリミットトルクTLによるトルク制御(トルク制限)により適切な回転数制御(回転数制限)を行うことができる。
【0051】
なお、回転数制御は、変動周波数が高いため制御の誤判定が起きやすいが、トルク制御は、変動周波数が低いため制御の誤判定が起きにくいという利点がある。さらに、回転数制御は、変動周波数が高いため制御対象となる機関回転数のハンチングが発生しやすいが、トルク制御は、変動周波数が低いため制御対象となるトルクのハンチングが発生しにくい。
【0052】
図3は、上述した実施例の内燃機関の制御の流れを示すフローチャートである。
【0053】
ステップS1では、変速機の現在のギヤ段を検出して読み込む。
【0054】
ステップS2では、目標差回転数Rtd、リミットトルクTL、トルク補正量Tcを算出する。ステップS2で算出されるトルク補正量Tcは、第3補正量Giを用いて算出される。
【0055】
ステップS3では、目標トルクTtがリミットトルクTLよりも小さいか否かを判定する。ステップ3において目標トルクTtがリミットトルクTLよりも小さい場合は、ステップS4へ進む。ステップ3において目標トルクTtがリミットトルクTL以上の場合は、ステップS5へ進む。
【0056】
ステップS4では、第3補正量Giを用いたトルク補正量Tcに基づきリミットトルクTLを算出する。
【0057】
ステップS5では、リミットトルクTLがトルク閾値Th以上であるか否かを判定する。ステップ5において、リミットトルクTLがトルク閾値Th以上である場合は、ステップS6へ進む。ステップ5において、リミットトルクTLがトルク閾値Th未満である場合は、ステップS4へ進む。
【0058】
ステップS6では、第4補正量Gioを用いたトルク補正量Tcに基づきリミットトルクTLを算出する。
【0059】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
例えば、本発明は、内燃機関の動力で駆動輪を駆動して走行する走行モードを有するハイブリッド車両にも適用可能である。
【0061】
上述した実施例は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関するものである。