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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013861
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】パルプモールド外装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/06 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B65D77/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116264
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綿世 真弓
(72)【発明者】
【氏名】和田 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】節田 征矢
(72)【発明者】
【氏名】松室 繁幸
(72)【発明者】
【氏名】八木 晴可
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AB28
3E067AB81
3E067BA03C
3E067BA12B
3E067BB01C
3E067BB14B
3E067EB32
3E067EE40
3E067FA04
(57)【要約】
【課題】簡素な構成にてパルプモールド外装体の自立性の向上を図る。
【解決手段】パルプモールド外装体1は、第1胴部11と、第1底部12と、第1天部13と、第1合わせ面を含む第1フランジ部14とを有する第1半割体、および、第2胴部と、第2底部と、第2天部と、第2合わせ面を含む第2フランジ部とを有する第2半割体を備える。第1底部12は、第1合わせ面に直交する第1底板部12aと、第1合わせ面に隣接しかつ第1胴部11の幅方向の両端に連続する部分に位置する第1後退部12bとを含む。第2底部は、第2合わせ面に直交する第2底板部と、第2合わせ面に隣接しかつ第2胴部の幅方向の両端に連続する部分に位置する第2後退部とを含む。第1底部12に対応する部分の第1フランジ部14は、第1後退部12bのみに設けられ、第2底部に対応する部分の第2フランジ部は、第2後退部のみに設けられる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品が収容可能な収容空間が設けられたパルプモールド外装体であって、
第1胴部、第1底部および第1天部を含み、周縁に第1フランジ部が設けられた第1半割体と、
第2胴部、第2底部および第2天部を含み、周縁に第2フランジ部が設けられた第2半割体とを備え、
前記収容空間は、前記第1フランジ部によって規定される第1合わせ面と前記第2フランジ部によって規定される第2合わせ面とが向き合うように前記第1半割体と前記第2半割体とが組み合わされた状態において、前記第1胴部、前記第1底部、前記第1天部、前記第2胴部、前記第2底部および前記第2天部によって規定され、
前記第1底部は、前記第1合わせ面に直交する方向に延在する第1底板部と、前記第1底板部よりも前記第1天部側に位置する第1後退部とを含み、
前記第1後退部は、前記第1合わせ面に隣接する部分であってかつ前記第1胴部の幅方向の一端および他端に連続する部分に設けられ、
前記第1天部は、前記第1合わせ面から遠ざかるにつれて前記第1底部に近づくように傾斜する第1天板部を含み、
前記第2底部は、前記第2合わせ面に直交する方向に延在する第2底板部と、前記第2底板部よりも前記第2天部側に位置する第2後退部とを含み、
前記第2後退部は、前記第2合わせ面に隣接する部分であってかつ前記第2胴部の幅方向の一端および他端に連続する部分に設けられ、
前記第2天部は、前記第2合わせ面から遠ざかるにつれて前記第2底部に近づくように傾斜する第2天板部を含み、
前記第1底部に対応する部分の前記第1フランジ部が、前記第1後退部のみに設けられているとともに、前記第2底部に対応する部分の前記第2フランジ部が、前記第2後退部のみに設けられている、パルプモールド外装体。
【請求項2】
前記パルプモールド外装体が、ヒンジ部をさらに備え、
前記第1フランジ部の前記第1胴部の幅方向における一端と、前記第2フランジ部の前記第2胴部の幅方向における一端とが、前記ヒンジ部によって連結されている、請求項1に記載のパルプモールド外装体。
【請求項3】
前記第1天部の前記第1合わせ面側の端部に第1天部側切り欠き部が設けられ、
前記第2天部の前記第2合わせ面側の端部に第2天部側切り欠き部が設けられ、
前記第1天部側切り欠き部および前記第2天部側切り欠き部は、前記第1半割体と前記第2半割体とが組み合わされた状態において物品に設けられたスパウトが挿通される天部側孔部を規定している、請求項1に記載のパルプモールド外装体。
【請求項4】
前記第1天部は、スパウトに係合可能な係合片を含み、
前記第1半割体と前記第2半割体とが組み合わされた状態において前記第2天部が前記第1天部よりも前記第2底板部の法線方向における外側に位置することとなるように、前記第2半割体が、前記第2底板部の前記法線方向において前記第1半割体よりも大きく構成されている、請求項3に記載のパルプモールド外装体。
【請求項5】
前記第1底部の前記第1合わせ面側の端部に第1底部側切り欠き部が設けられ、
前記第2底部の前記第2合わせ面側の端部に第2底部側切り欠き部が設けられ、
前記第1底部側切り欠き部および前記第2底部側切り欠き部は、前記第1半割体と前記第2半割体とが組み合わされた状態において底部側孔部を規定する、請求項1に記載のパルプモールド外装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を内部に収容可能なパルプモールド外装体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パウチ等からなる詰め替え容器を収容可能な外装体としては、プラスチック製のものが多用されている。しかしながら、環境負荷の低減の観点から、パルプモールドからなる外装体が用いられることが求められている。また、このような外装体は、実用性の観点から、物品が収容された状態において自立可能であることが望まれている。
【0003】
底面を平坦にすることで自立性が高められたパルプモールド外装体が開示された文献としては、たとえば特表2012-501930号公報(特許文献1)や特開2009-196644号公報(特許文献2)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-501930号公報
【特許文献2】特開2009-196644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に開示されたパルプモールド外装体においては、当該外装体を構成する一対の半割体のうちの一方の底部に形成された接合片と、他方の半割体の底部に形成された接合片とを内側に折り込み、これらを接着あるいは係合させている。これにより、一対の半割体の合わせ面を規定するフランジ部が底面側から突出することがなくなるため、結果としてパルプモールド外装体の底面を平坦に仕上げることが可能になっている。
【0006】
しかしながら、接合片同士を接着させた場合には、物品を取り替えてパルプモールド外装体を繰り返し使用することができなくなり、また、接合片同士を係合させた場合には、これらが内側に折り込まれていることに起因して、係合を解除する作業が容易でなくなるという問題が生じ得る。そのため、パルプモールド外装体にあっては、より簡素な構成にて自立性を向上させることが望まれる。
【0007】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、物品を内部に収容可能なパルプモールド外装体において、簡素な構成にて自立性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づくパルプモールド外装体は、物品が収容可能な収容空間が設けられたものであって、第1胴部、第1底部および第1天部を含み、周縁に第1フランジ部が設けられた第1半割体と、第2胴部、第2底部および第2天部を含み、周縁に第2フランジ部が設けられた第2半割体とを備えている。上記収容空間は、上記第1フランジ部によって規定される第1合わせ面と上記第2フランジ部によって規定される第2合わせ面とが向き合うように上記第1半割体と上記第2半割体とが組み合わされた状態において、上記第1胴部、上記第1底部、上記第1天部、上記第2胴部、上記第2底部および上記第2天部によって規定される。上記第1底部は、上記第1合わせ面に直交する方向に延在する第1底板部と、上記第1底板部よりも上記第1天部側に位置する第1後退部とを含んでいる。上記第1後退部は、上記第1合わせ面に隣接する部分であってかつ上記第1胴部の幅方向の一端および他端に連続する部分に設けられている。上記第1天部は、上記第1合わせ面から遠ざかるにつれて上記第1底部に近づくように傾斜する第1天板部を含んでいる。上記第2底部は、上記第2合わせ面に直交する方向に延在する第2底板部と、上記第2底板部よりも上記第2天部側に位置する第2後退部とを含んでいる。上記第2後退部は、上記第2合わせ面に隣接する部分であってかつ上記第2胴部の幅方向の一端および他端に連続する部分に設けられている。上記第2天部は、上記第2合わせ面から遠ざかるにつれて上記第2底部に近づくように傾斜する第2天板部を含んでいる。本発明に基づくパルプモールド外装体にあっては、上記第1底部に対応する部分の上記第1フランジ部が、上記第1後退部のみに設けられているとともに、上記第2底部に対応する部分の上記第2フランジ部が、上記第2後退部のみに設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物品を内部に収容可能なパルプモールド外装体において、簡素な構成にて自立性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るパルプモールド外装体およびこれに収容されたパウチを正面側から見た斜視図である。
図2】実施の形態に係るパルプモールド外装体およびこれに収容されたパウチを背面側から見た斜視図である。
図3図1に示すパルプモールド外装体およびこれに収容されたパウチが水平面上に載置された状態における右側面図および底面図である。
図4図1に示すパルプモールド外装体が開かれた状態における正面図である。
図5図4に示すパルプモールド外装体が途中まで開かれた状態における斜視図である。
図6図4に示すパルプモールド外装体が閉じられた状態における正面図および要部拡大正面図である。
図7図4に示すパルプモールド外装体の製造方法を示すフロー図である。
図8図7に示す工程S1を表わした模式断面図である。
図9】抄造成形された第1パルプモールド中間体の平面図である。
図10図7に示す工程S2を表わした模式断面図である。
図11図7に示す工程S5を表わした模式断面図である。
図12図7に示す工程S6を表わした模式断面図である。
図13図7に示す工程S8を表わした模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、物品としてのパウチを収容可能に構成されたパルプモールド外装体に本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0012】
(実施の形態)
図1および図2は、それぞれ実施の形態に係るパルプモールド外装体およびこれに収容されたパウチを正面側および背面側から見た斜視図である。図3は、図1に示すパルプモールド外装体およびこれに収容されたパウチが水平面上に載置された状態を示す図であり、図3(A)は、上記状態におけるパルプモールド外装体の右側面図、図3(B)は、上記状態におけるパルプモールド外装体の底面図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、パウチ100を収容した状態における、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1の概略的な構成について説明する。
【0013】
図1ないし図3に示すパルプモールド外装体1は、液体調味料、食用油、化粧品あるいは液体洗剤等のパウチ100を収容可能な収容空間2が設けられたものであり、パウチ100を、その内容物を使い切ったタイミングで他のパウチと取り替えながら繰り返しの使用ができる。ただし、パルプモールド外装体1は、パウチ100の内容物を使い切ったタイミングでこれと共に廃棄される使い捨ての外装体として使用されてもよい。
【0014】
図1および図2に示すように、パルプモールド外装体1は、後述する第1胴部11および第2胴部21の各々の幅方向(すなわち、図中における略左右方向)に直交する方向に延びる略円柱状の外形を有しており、その正面側を規定する第1半割体10と、背面側を規定する第2半割体20と、これらを回動可能に連結するヒンジ部30を備えている。パルプモールド外装体1は、これら第1半割体10と第2半割体20とがヒンジ部30によって連結された一体品として製造されるものである。
【0015】
第1半割体10は、第1胴部11、第1底部12および第1天部13を含んでおり、周縁に第1フランジ部14を有している。第2半割体20は、第2胴部21、第2底部22および第2天部23を含んでおり、周縁に第2フランジ部24を有している。
【0016】
図3に示すように、パルプモールド外装体1は、第1フランジ部14によって規定される第1合わせ面14aと、第2フランジ部24によって規定される第2合わせ面24aとが向き合うように、第1半割体10と第2半割体20とが組み合わされる(すなわち、第1半割体10が第2半割体20に対して閉じられる)ことにより、内部に収容空間2が設けられるものである。この収容空間2は、第1胴部11、第1底部12、第1天部13、第2胴部21、第2底部22および第2天部23によって規定される。
【0017】
このようにして設けられた収容空間2には、パウチ100が収容される。パウチ100は、パウチ本体101と、その天部に設けられたスパウト102とを有している。
【0018】
パウチ本体101の形状は、特にこれが制限されるものではなく、たとえば、底側に襠部を有するいわゆるスタンディングパウチや、サイドガゼットパウチ、平パウチ、あるいは天襠部を有するもの等を用いることができる。本実施の形態においては、パウチ本体101としてスタンディングパウチが用いられている。
【0019】
スパウト102としては、着脱可能なキャップと、当該キャップの下方に位置する単数または複数のフランジを有するものが用いられる。
【0020】
第1胴部11は、上述した第1半割体10と第2半割体20とが組み合わされた状態(以下、この状態を、パルプモールド外装体1の閉状態と称する)において第2胴部21に面するように湾曲した凹形状を有している。同様に、第2胴部21もまた、上記閉状態において第1胴部11に面するように湾曲した凹形状を有している。これにより、パルプモールド外装体1の閉状態において当該パルプモールド外装体1に設けられる収容空間2は、第1胴部11と第2胴部21とによって主として規定されることになる。
【0021】
図3(A)に示すように、第1底部12は、第1合わせ面14aが水平面に直交するようにパルプモールド外装体1を水平面上に載置した際に当該水平面に対して平行に延在する第1底板部12aを含んでいる。すなわち、第1底部12は、第1合わせ面14aに直交する方向に延在する第1底板部12aを含んでいる。同様に、第2底部22は、第2合わせ面24aに直交する方向に延在する第2底板部22aを含んでいる。
【0022】
第1天部13は、パルプモールド外装体1を水平面上に載置した際に当該水平面に対して傾斜して延在する第1天板部13aを含んでいる。より具体的には、第1天板部13aは、第1合わせ面14aから遠ざかるにつれて第1底部12に近づくように、上記水平面(すなわち、第1合わせ面14aと直交する平面)に対して角度αだけ傾斜している。ここで、第1天板部13aが、第1合わせ面14aから遠ざかるにつれて第1底部12に近づくように傾斜しているとは、第1合わせ面14aが含まれる平面の法線方向に沿って当該平面から遠ざかるにつれて、第1天部13側から第1底部12側に向けて近づくように、第1天板部13aが傾斜していることを意味する。
【0023】
同様に、第2天部23は、パルプモールド外装体1を水平面上に載置した際に当該水平面に対して傾斜して延在する第2天板部23aを含んでいる。より具体的には、第2天板部23aは、第2合わせ面24aから遠ざかるにつれて第2底部22に近づくように、上記水平面(すなわち、第2合わせ面24aと直交する平面)に対して角度βだけ傾斜している。なお、角度βは、角度αと同じ大きさであってもよいし、異なった大きさであってもよい。
【0024】
図3(A)に示すように、第1底部12は、第1底板部12aの法線方向に沿って見た場合に、第1天部13よりも大きい外形を有している。同様に、第2底部22は、上記法線方向に沿って見た場合に、第2天部23よりも大きい外形を有している。
【0025】
すなわち、パルプモールド外装体1は、第1底部12側から第1天部13側に向かうにつれて外形が小さくなる先細り形状を有している。これにより、パルプモールド外装体1は、その重心が下方に位置することで自立性の向上が図られることになる。
【0026】
パルプモールド外装体1の原料としては、新聞紙、チラシ、中質紙、および上質紙等からなる印刷使用済み古紙に、湿式で離解、および精選等の処理を施すことによって得られる古紙パルプ、または、上記処理に加えて脱墨および漂白等の処理を施すことによって得られる脱墨古紙パルプ、もしくは晒パルプまたは未晒パルプ等のセルロースパルプが用いられる。
【0027】
パルプモールド外装体1は、これらのパルプにサイズ剤、填料、染料、定着剤、および耐水化剤等が適宜添加されてなる後述するパルプスラリー203が、所望の形状に成形されることによって製造されるが、その詳細については後述することとする。
【0028】
なお、上述した各種パルプに代えて、バージンパルプ、または、サトウキビの搾りかすであるバガスもしくは竹等の非木材系パルプが用いられてもよい。また、いずれのパルプにおいても、合成樹脂が少量(好ましくは5%以下程度)含まれていてもよい。
【0029】
図4は、図1に示すパルプモールド外装体が開かれた状態における正面図であり、図5は、図4に示すパルプモールド外装体が途中まで開かれた状態における斜視図である。図6は、図4に示すパルプモールド外装体が閉じられた状態を示す図であり、図6(A)は、パルプモールド外装体の正面図、図6(B)は、図6(A)の第1後退部近傍を拡大した要部拡大正面図である。次に、これら図4ないし図6と、前述の図2および図3とを参照して、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1の詳細な構成について説明する。
【0030】
図4および図5に示すように、パルプモールド外装体1は、その正面側を規定する第1半割体10と、背面側を規定する第2半割体20とが、ヒンジ部30によって回転可能に連結されることで構成されている。
【0031】
より具体的には、ヒンジ部30は、第1半割体10の第1フランジ部14のうちの、第1胴部11の幅方向における一端と、第2半割体20の第2フランジ部24のうちの、第2胴部21の幅方向における一端とを連結している。
【0032】
なお、本実施の形態においては、パルプモールド外装体1の幅方向に直交する方向に延在する単数のヒンジ部30が形成されているが、ヒンジ部30は、たとえば、上記方向に沿って設けられた2~4個の長孔状切欠き等によって複数に分割されて形成されてもよい。
【0033】
第1半割体10の第1胴部11は、その幅方向におけるヒンジ部30に連結されている側とは反対側の端部に、薄板形状の複数の第1留め片11aを有している。第2半割体20の第2胴部21は、その幅方向におけるヒンジ部30に連結されている側とは反対側の端部に、薄板形状の複数の第2留め片21aを有している。
【0034】
これら複数の第1留め片11aと第2留め片21aとは、パルプモールド外装体1の幅方向に直交する方向において対応する位置に配置されている。本実施の形態においては、第1胴部11が2つの第1留め片11aを有しており、第2胴部21が2つの第2留め片21aを有している。
【0035】
2つの第2留め片21aの各々には、その延在方向と一致する方向にスリット孔21a1が設けられている。パルプモールド外装体1は、第1留め片11aを、これに対応する第2留め片21aのスリット孔21a1に挿通させることで第1留め片11aと第2留め片21aとを係合することにより、パルプモールド外装体1の閉状態を維持可能に構成されている。
【0036】
ここで、第2留め片21aは、上記閉状態においてパルプモールド外装体1の内側へ折り曲げられて収納される。これにより、パルプモールド外装体1の美観を損なうことなくこれをコンパクトに構成することが可能になる。
【0037】
第1半割体10の第1天部13の第1合わせ面14a側の端部には、略半円形状の第1天部側切り欠き部13cが設けられている。同様に、第2半割体20の第2天部23の第2合わせ面24a側の端部には、略半円形状の第2天部側切り欠き部23cが設けられている。
【0038】
第1天部側切り欠き部13cと第2天部側切り欠き部23cとは、パルプモールド外装体1の閉状態においてこれらが向き合うように位置することにより、略円形状の天部側孔部50を規定する(図1等参照)。天部側孔部50には、上記閉状態において、パルプモールド外装体1に収容されたパウチ100のスパウト102が挿通されることになる。
【0039】
図4および図5に示すように、第1天部13は、第1天部側切り欠き部13cの周縁部分に、スパウト102に係合可能な薄板形状の係合片13bを有している。係合片13bは、その根元部分において第1フランジ部14に連結されている。
【0040】
図5に示すように、係合片13bは、これが第1天部13に連続するように当該係合片13bの根元部分が折り曲げられた状態において、第1合わせ面14aから遠ざかる方向に向けて根元部分から突出する基部13b1と、当該基部13b1の先端に設けられた先端部13b2とを含んでいる。先端部13b2は、第1胴部11の幅方向における内側に向けて突出している。
【0041】
係合片13bは、その根元部分が折り曲げられた状態において第1天部側切り欠き部13c側に面することとなる基部13b1の端面と、上記状態において第1天部側切り欠き部13c側に面することとなる先端部13b2の端面とをスパウト102の首部に当接させることにより、当該スパウト102に係合される。
【0042】
このように係合片13bがスパウト102に係合された状態で第1半割体10と第2半割体20とを組み合わせることにより、パウチ100軸方向に位置ずれが、係合片13bによって防止されることになる。
【0043】
また、このように係合片13bをスパウト102の首部に係合させることにより、当該首部周縁の隙間が概ね塞がれることになるため、閉状態のパルプモールド外装体1の収容空間2に外部から液体等が侵入することを防止することができる。
【0044】
さらに、係合片13bは、スパウト102の首部を介してパウチ100を支持する補強部材として機能する。そのため、スパウト102にポンプを装着し、これによってパウチ100の内容物を取り出す際に加えられる外力に対する耐久性を高めることも可能になる。
【0045】
また、第1天板部13aおよび第2天板部23aは、上述したようにこれらが傾斜していることにより、第1天部13側から第1底部12側に向かう方向(すなわち、図3(A)における下方向)の外力に対する高い強度を有している。そのため、スパウト102に係合された係合片13bを介して、内容物を含むパウチ100の自重が第1天板部13aおよび第2天板部23aに印加された場合においても、第1天板部13aおよび第2天板部23aは、これらが変形することなくパウチ100を確実に保持することができる。
【0046】
ここで、図4に示すように、第2半割体20は、その高さが第1半割体10の高さよりも大きくなるように構成されている。より具体的には、第2半割体20は、少なくとも係合片13bの厚み分だけ第1半割体10よりも高さが大きい(図中の寸法H参照)。これにより、閉状態のパルプモールド外装体1が水平面上に載置された状態において、第2天部23は、第1天部13よりも第2底板部22aの法線方向における外側に位置することになる。
【0047】
これにより、パルプモールド外装体1の閉状態において、係合片13bがパルプモールド外装体1の内側に収納されることになるため、パルプモールド外装体1をコンパクトに構成することが可能になる。
【0048】
図2図3(B)および図5に示すように、第1底部12の第1合わせ面14a側の端部には、略台形状の第1底部側切り欠き部12cが設けられている。同様に、第2底部22の第2合わせ面24a側の端部には、略台形状の第2底部側切り欠き部22cが設けられている。
【0049】
第1底部側切り欠き部12cと第2底部側切り欠き部22cとは、パルプモールド外装体1の閉状態においてこれらが向き合うように位置することにより、偏平な略六角形状の底部側孔部60を規定する。
【0050】
図2ないし図4および図6に示すように、第1底部12は、上述した第1底板部12aと、一対の第1後退部12bとを含んでいる。これら一対の第1後退部12bは、第1底板部12aよりも第1天部13側に位置している。同様に、第2底部22は、上述した第2底板部22aと、一対の第2後退部22bとを含んでいる。これら一対の第2後退部22bは、第2底板部22aよりも第2天部23側に位置している。
【0051】
図3(B)および図6(A)に示すように、一対の第1後退部12bは、第1合わせ面14aに隣接する部分であって、かつ、第1胴部11の幅方向の一端および他端(すなわち、図6(A)中の左右方向における両端)に連続する部分に設けられている。同様に、一対の第2後退部22bは、第2合わせ面24aに隣接する部分であって、かつ、第2胴部21の幅方向の一端および他端に連続する部分に設けられている。
【0052】
図6(B)に示すように、第1底部12に対応する部分の第1フランジ部14は、第1後退部12bのみに設けられている。同様に、第2底部22に対応する部分の第2フランジ部24は、第2後退部22bのみに設けられている。
【0053】
ここで、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1にあっては、上述したように、第1底部12が、第1合わせ面14aに直交する方向に延在する第1底板部12aを含んでおり、第2底部22が、第2合わせ面24aに直交する方向に延在する第2底板部22aを含んでいる。
【0054】
このように構成した場合には、閉状態のパルプモールド外装体1が水平面上に載置される際に、水平面に対して平行に延在する第1底板部12aと第2底板部22aとが当該水平面に面することになるため、パルプモールド外装体1の自立性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1にあっては、上述したように、第1底部12に対応する部分の第1フランジ部14が、第1後退部12bのみに設けられているとともに、第2底部22に対応する部分の第2フランジ部24が、第2後退部22bのみに設けられている。
【0056】
このように構成した場合には、上記閉状態のパルプモールド外装体1が水平面上に載置される際に、第1フランジ部14および第2フランジ部24が水平面に干渉することがなくなるため、上述したパルプモールド外装体1の自立性の向上の効果がより顕著に得られることになる。
【0057】
したがって、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1とすることにより、物品を内部に収容可能なパルプモールド外装体において、簡素な構成にて自立性の向上が図られることになる。
【0058】
図7は、本実施の形態に係るパルプモールド外装体の製造方法を示すフロー図であり、図8図10ないし図13は、図7に示す工程の一部を表わした模式断面図である。図9は、抄造成形された第1パルプモールド中間体を示す図であり、図9(A)は、第1サブ領域前駆体の一部が除去される前の状態における平面図、図9(B)は、第1サブ領域前駆体の一部が除去された後の状態における平面図である。次に、これら図7ないし図13を参照して、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1の製造方法について説明する。なお、図8は、図4中に示すVIII-VIII線に対応した位置での第1半割体10およびこれに対応する後述する抄造成形用第1型201等の各装置の断面を表わした図である(図10ないし図13においても、用いられる型は異なるものの、同様の位置の第1半割体10等の断面を表わしている)。また、図9においては、後述する第1メイン領域Xと、第1サブ領域Y(あるいは第1サブ領域前駆体Y’)との境界線を破線にて示している。
【0059】
本実施の形態に係るパルプモールド外装体1は、上述したように、第1半割体10と第2半割体20とがヒンジ部30によって連結された一体品で構成されるものである。そのため、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1の製造方法においては、第1半割体10と第2半割体20とが同時に製造されることになる。
【0060】
より具体的には、以下で説明する各工程においては、第1半割体10に対応する部分に対して行なわれる加工と、第2半割体20に対応する部分に対して行なわれる加工とが、同一の装置によって同時に行なわれることになる。なお、以下においては、説明の便宜上、上記一体品のうちの第1半割体10に対応する部分に着目し、その製造方法について説明することとする。
【0061】
図7に示すように、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1の製造方法は、大きく分けて、第1パルプモールド中間体10Mが抄造成形されかつ乾燥される工程と、抄造成形されかつ乾燥された第1パルプモールド中間体10Mがプレス成形される工程と、プレス成形によって圧縮変形された第1パルプモールド中間体10Mから第1半割体10が切り出される工程とを備えている。第1パルプモールド中間体10Mとは、プレス成形を経ることでそれ自体が圧縮されることが可能に構成された、パルプスラリー203を抄き上げてなる繊維成形体のことであるが、その具体的な構成については後述することとする。
【0062】
第1パルプモールド中間体10Mを抄造成形するに際しては、まず、図7および図8に示すように、抄造成形用第1型201へパルプスラリー203が吸引される(工程S1)。
【0063】
より具体的には、図8に示すように、抄造成形用第1型201と、網202とが準備される。抄造成形用第1型201は、第1半割体10の形状に沿う形状を有するとともに、その一対の主面を貫通する吸引用貫通孔が多数設けられたものである。網202は、抄造成形用第1型201の一対の主面の一方に張られるものである。
【0064】
次に、抄造成形用第1型201に網202が張られた状態において、抄造成形用第1型201と網202とが、パルプスラリー203が充填された材料槽204の中に浸漬される。
【0065】
この状態において、抄造成形用第1型201の網202が張られた側の主面とは反対側の主面が位置する側から、パルプスラリー203の吸引が行なわれる。これにより、網202の表面には、パルプスラリー203が吸い付けられて堆積される。
【0066】
このようにして網202を介して抄造成形用第1型201の主面上に堆積されたパルプスラリー203により、上述した第1パルプモールド中間体10Mが形成される。
【0067】
この状態における第1パルプモールド中間体10Mは、図9(A)に示すように、第1フランジ部14を除く部分の第1半割体10となる第1メイン領域X、および、第1メイン領域Xの周縁から外側に向けて延在しかつ第1フランジ部14となる部分を含む第1サブ領域前駆体Y’を有している。より具体的には、第1メイン領域Xは、第1留め片11aを含む第1胴部11となる部分、第1底部12となる部分、および、係合片13bを含む第1天部13となる部分を有している。
【0068】
ここで、抄造成形用第1型201は、抄造成形用型の一部分として含まれるものであり、当該抄造成形用型は、さらに、抄造成形用第2型をその一部分として含んでいる。抄造成形用第2型は、第2半割体20となるものである第2パルプモールド中間体を抄造成形するためのものである。
【0069】
このように構成された抄造成形用型を用いることにより、第1パルプモールド中間体10Mが抄造成形される工程S1と、第2パルプモールド中間体が抄造成形される工程とが、同時に行なわれることになる。
【0070】
次に、図7および図10に示すように、抄造成形用第1型201から、第1パルプモールド中間体10Mが取り出される(工程S2)。
【0071】
より具体的には、図10に示すように、まず、第1パルプモールド中間体10Mが形成された抄造成形用第1型201および網202が、材料槽204の外部に引き上げられて水平面上に載置される。
【0072】
次に、第1パルプモールド中間体10Mが、抄造成形用第1型201から離型される。ここで、第1パルプモールド中間体10Mを鉛直方向に沿って(すなわち、図中に示す矢印AR1方向に沿って)離型する場合には、上述したように、第1底板部12aが第1合わせ面14aに直交する方向に延在している(図3(A)参照)ことに起因して、第1メイン領域Xのうちの第1底板部12aとなる部分が、当該部分に対応する部分の抄造成形用第1型201から離型され難い場合がある。
【0073】
その場合には、傾斜形状を有することで離型し易く構成された、第1メイン領域Xのうちの第1天板部13aとなる部分を抄造成形用第1型201から離型しつつ、第1パルプモールド中間体10Mの全体を上記第1底板部12aとなる部分側にわずかにずらしてこれを離型するか、あるいは、第1パルプモールド中間体10Mの全体を、鉛直方向よりもわずかに上記第1底板部12aとなる部分側に向けて傾斜した方向(すなわち、鉛直方向と交差する方向)に向けて離型すればよい。第1パルプモールド中間体10Mは水分を含み変形し易いため、上記のようにすることでこれを容易に抄造成形用第1型201から離型可能になる。
【0074】
なお、第2パルプモールド中間体に対しても、上記工程S2において用いられる装置と同一の装置によって、上記工程S2と同様の処理が同時に行なわれる。
【0075】
次に、図7に示すように、第1サブ領域前駆体Y’の一部が除去される(工程S3)。より具体的には、第1パルプモールド中間体10Mが有する第1サブ領域前駆体Y’のうちの、第1底板部12aとなる部分の周縁に位置する部分(すなわち、図9(A)において一点鎖線で取り囲まれた部分Ya)と、第1天板部13aとなる部分の周縁に位置する部分(すなわち、図9(A)において一点鎖線で取り囲まれた部分Yb)とを除去する。これにより、第1パルプモールド中間体10Mは、図9(B)に示すように、上記部分が除去された第1サブ領域Yを有することとなる。
【0076】
このように構成することにより、第1パルプモールド中間体10Mから製造されることとなるパルプモールド外装体1において、第1底板部12aの周縁には第1フランジ部14が形成されないことになり、結果として第1底部12に第1底部側切り欠き部12cが形成されることとなる。同様に、第1天板部13aの周縁には第1フランジ部14が形成されないことになり、結果として第1天部13に第1天部側切り欠き部13cが形成されることとなる。
【0077】
なお、上述した第1サブ領域前駆体Y’の一部を除去する方法は、特にこれが制限されるものではないが、たとえば、抄造成形用第1型201から第1パルプモールド中間体10Mを離型する前に、第1サブ領域前駆体Y’のうちの除去の対象となる部分を水で洗い落としたり、スクレーパ等で削ぎ落としたりすることで除去可能である。
【0078】
また、上述した第1サブ領域前駆体Y’の一部の除去を行なう代わりに、抄造成形用第1型201へパルプスラリー203が吸引される工程(すなわち、工程S1)において、上記除去の対象となる部分に予めパルプスラリー203が堆積されないようにしてもよい。このような方法としては、たとえば、上記除去の対象となる部分に対応する部分の抄造成形用第1型201に、吸引用貫通孔を設けないこと等が挙げられる。
【0079】
ここで、第2パルプモールド中間体に対しても、上記工程S3において用いられる装置と同一の装置によって、上記工程S3と同様の処理が同時に行なわれる。
【0080】
次に、図7に示すように、第1パルプモールド中間体10Mが乾燥される(工程S4)。より具体的には、第1パルプモールド中間体10Mが、乾燥炉内に投入されることによって乾燥される。
【0081】
ここで、第2パルプモールド中間体に対しても、上記工程S4において用いられる装置と同一の装置によって、上記工程S4と同様の処理が同時に行なわれる。
【0082】
次に、図7および図11に示すように、第1パルプモールド中間体10Mが、一対のプレス成形用第1型のうちの一方の型であるプレス成形用第1下型301上に載置される(工程S5)。
【0083】
より具体的には、図11に示すように、第1半割体10の形状に沿う形状を有するとともに、第1合わせ面14aを成形する成形面301aを有するプレス成形用第1下型301上に、第1パルプモールド中間体10Mが載置される。
【0084】
なお、第1半割体10の形状に沿う形状とは、製品としてのパルプモールド外装体1を構成する第1半割体10の形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、第1パルプモールド中間体10Mが後述するプレス成形用第1上型302によってプレスされる工程(後述する工程S6)の前の状態における当該第1パルプモールド中間体10Mの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、第1半割体10の形状に沿う形状とは、工程S6においてプレス成形用第1上型302によってプレスされた後の(すなわち、プレスによって圧縮変形した後の)第1半割体10に沿う形状を意味している。
【0085】
次に、図7および図12に示すように、第1パルプモールド中間体10Mが、一対のプレス成形用第1型のうちの他方の型であるプレス成形用第1上型302によってプレス成形される(工程S6)。
【0086】
より具体的には、図12に示すように、第1パルプモールド中間体10Mがプレス成形用第1下型301上に載置された状態において、第1半割体10の形状に沿う形状を有するプレス成形用第1上型302がプレス成形用第1下型301に向けて移動する(すなわち、図12中に示す矢印AR2方向に向けて移動する)。これにより、第1パルプモールド中間体10Mは、プレス成形用第1下型301とプレス成形用第1上型302とからなる一対のプレス成形用第1型によってプレス成形される。
【0087】
ここで、第1半割体10の形状に沿う形状とは、製品としてのパルプモールド外装体1を構成する第1半割体10の形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、第1パルプモールド中間体10Mがプレス成形用第1上型302によってプレスされる工程(工程S6)の前の状態における当該第1パルプモールド中間体10Mの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、第1半割体10の形状に沿う形状とは、工程S6においてプレス成形用第1上型302によってプレスされた後の(すなわち、プレスによって圧縮変形した後の)第1半割体10に沿う形状を意味している。
【0088】
工程S6におけるプレス成形用第1型によるプレス成形は、プレス温度が概ね70℃以上200℃以下であることが好ましく、さらに好適には、80℃以上170℃以下とされる。プレス時間は、1秒以上5秒以下程度であることが好ましい。第1パルプモールド中間体10Mは、このような条件下でプレスされて圧縮変形されることにより、プレス前の状態に比べて、硬く、薄く、その表面が平滑化したものになる。一例として、第1パルプモールド中間体10Mは、このプレスによって厚みが0.8mm以上1.5mm以下等になるようにプレスされる。
【0089】
なお、第1パルプモールド中間体10Mと、第2半割体20となるものである第2パルプモールド中間体とを連結する、ヒンジ部30となる部分は、当該部分に折り曲げ罫線が形成し易くなるように、たとえば、厚みが周囲より薄い部分が線状に形成されるように当該部分をプレス成形することとしてもよい。
【0090】
このプレスによって圧縮変形された第1パルプモールド中間体10Mは、第1サブ領域Yが、第1フランジ部14となる部分の外側にさらに余剰部分を含んでいる点においてのみ、製品としてのパルプモールド外装体1を構成する第1半割体10と相違することとなる。
【0091】
次に、図7に示すように、プレス成形用第1上型302による第1パルプモールド中間体10Mのプレスが解除される(工程S7)。
【0092】
より具体的には、プレス成形用第1上型302が、プレス前の位置に後退する(すなわち、図12中に示す矢印AR2方向の反対方向に向けて移動する)ことにより、プレス成形用第1上型302による第1パルプモールド中間体10Mのプレスが解除される。
【0093】
次に、図7および図13に示すように、プレス成形用第1下型301から、第1パルプモールド中間体10Mが取り出される(工程S8)。ここで、プレス成形用第1下型301から取り出される第1パルプモールド中間体10Mは、上述したように、部分Yaが除去された状態のものである。そのため、当該第1パルプモールド中間体10Mにあっては、これを鉛直方向に沿って(すなわち、図中に示す矢印AR3方向に沿って)比較的容易に離型することができる。
【0094】
しかしながら、第1底板部12aが第1合わせ面14aに直交する方向に延在している(図3(A)参照)ことに起因して、第1メイン領域Xのうちの第1底板部12aとなる部分が、当該部分に対応する部分のプレス成形用第1下型301から離型され難い場合も想定される。
【0095】
その場合には、傾斜形状を有することで離型し易く構成された、第1メイン領域Xのうちの第1天板部13aとなる部分をプレス成形用第1下型301から離型しつつ、第1パルプモールド中間体10Mの全体を上記第1底板部12aとなる部分側にわずかにずらしてこれを離型するか、あるいは、第1パルプモールド中間体10Mの全体を、鉛直方向よりもわずかに上記第1底板部12aとなる部分側に向けて傾斜した方向(すなわち、鉛直方向と交差する方向)に向けて離型することにより、第1パルプモールド中間体10Mを容易にプレス成形用第1下型301から離型可能になる。
【0096】
なお、その際、プレス成形用第1下型301の一部に微細孔を設け、当該微細孔から空気を噴射することを行なってもよい。このようにした場合には、噴射された空気が離型を補助することにより、上記離型がさらに容易になる。
【0097】
なお、プレス成形用第1下型301は、第1プレス成形用型の一部分として含まれるものであり、当該第1プレス成形用型は、さらに、プレス成形用第2下型をその一部分として含んでいる。プレス成形用第2下型は、第2半割体20となるものである第2パルプモールド中間体をプレス成形するためのものである。
【0098】
また、プレス成形用第1上型302は、第2プレス成形用型の一部分として含まれるものであり、当該第2プレス成形用型は、さらに、プレス成形用第2上型をその一部分として含んでいる。プレス成形用第2上型は、上記プレス成形用第2下型と共に用いることにより、第2半割体20となるものである第2パルプモールド中間体をプレス成形するためのものである。
【0099】
このように構成された第1プレス成形用型と第2プレス成形用型とを用いることにより、第1パルプモールド中間体10Mがプレス成形用第1下型301に載置されてから、第1パルプモールド中間体10Mがプレス成形用第1下型301から取り出されるまでの一連の工程(すなわち、工程S5~S8)と、第2パルプモールド中間体がプレス成形用第2下型に載置されてから、第2パルプモールド中間体がプレス成形用第2下型から取り出されるまでの一連の工程とが、同一の装置によって同時に行なわれることになる。
【0100】
次に、図7に示すように、第1半割体10が切り出される(工程S9)。より具体的には、第1サブ領域Yのうちの、製品としての第1半割体10が有する第1フランジ部14に対応する部分以外の余剰部分が、カットされることで除去される。これにより、第1パルプモールド中間体10Mから、第1胴部11、第1底部12および第1天部13を含み、周縁に第1フランジ部14が設けられた第1半割体10が切り出されることになる。
【0101】
上記余剰部分をカットする方法は、特にこれが制限されるものではなく、たとえばトムソン加工やダイカット加工等によって行なうことができる。なお、第1底部側切り欠き部12cおよび第1天部側切り欠き部13cは、上述した第1サブ領域前駆体Y’の一部を除去する工程(すなわち、工程S3)においてではなく、この第1半割体10を切り出す工程S9において、第1底部12および第1天部13が所望の形状にカットされることで形成されてもよい。
【0102】
ここで、第2パルプモールド中間体に対しても、上記工程S9において用いられる装置と同一の装置によって、上記工程S9と同様の処理が同時に行なわれる。
【0103】
以上において説明した工程S1~S9を経ることにより、上述した本実施の形態に係るパルプモールド外装体1が製造されることになる。
【0104】
ここで、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1の製造方法によれば、上述したように、第1合わせ面14aに直交する方向に延在する第1底板部12aを含み、第1底部12に対応する部分の第1フランジ部14が第1後退部12bのみに設けられた第1半割体10と、第2合わせ面24aに直交する方向に延在する第2底板部22aを含み、第1底部12に対応する部分の第1フランジ部14が第1後退部12bのみに設けられた第2半割体20とを具備したパルプモールド外装体1が製造可能になる。
【0105】
そのため、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1の製造方法とすることにより、上述したような、簡素な構成にて自立性の向上が図られたパルプモールド外装体が得られることになる。
【0106】
また、本実施の形態に係るパルプモールド外装体1にあっては、上述したように、第1天部13が、第1合わせ面14aから遠ざかるにつれて第1底部12に近づくように傾斜する第1天板部13aを含んでおり、第2天部23が、第2合わせ面24aから遠ざかるにつれて第2底部22に近づくように傾斜する第2天板部23aを含んでいる。
【0107】
このように構成した場合には、パルプモールド外装体1を製造するに際して、抄造成形用第1型201等からの第1パルプモールド中間体10M等の離型をスムーズに行なうことが可能になるため、パルプモールド外装体1の製造を容易化することができる。
【0108】
なお、本実施の形態のように、第1底部側切り欠き部12cと第2底部側切り欠き部22cとによって底部側孔部60が規定された構成を有するパルプモールド外装体1は、特に底襠部を有するスタンディングパウチの外装体として好適に用いることができる。これは、スタンディングパウチが、平パウチ等の他の形状のパウチとは異なり、第1底部側切り欠き部12cおよび第2底部側切り欠き部22cを跨ぐように底襠部を広げた状態でパルプモールド外装体1に収容されるためである。
【0109】
(付記)
上述した実施の形態において開示したパルプモールド外装体の特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0110】
[付記1]
物品が収容可能な収容空間が設けられたパルプモールド外装体であって、
第1胴部、第1底部および第1天部を含み、周縁に第1フランジ部が設けられた第1半割体と、
第2胴部、第2底部および第2天部を含み、周縁に第2フランジ部が設けられた第2半割体とを備え、
上記収容空間は、上記第1フランジ部によって規定される第1合わせ面と上記第2フランジ部によって規定される第2合わせ面とが向き合うように上記第1半割体と上記第2半割体とが組み合わされた状態において、上記第1胴部、上記第1底部、上記第1天部、上記第2胴部、上記第2底部および上記第2天部によって規定され、
上記第1底部は、上記第1合わせ面に直交する方向に延在する第1底板部と、上記第1底板部よりも上記第1天部側に位置する第1後退部とを含み、
上記第1後退部は、上記第1合わせ面に隣接する部分であってかつ上記第1胴部の幅方向の一端および他端に連続する部分に設けられ、
上記第1天部は、上記第1合わせ面から遠ざかるにつれて上記第1底部に近づくように傾斜する第1天板部を含み、
上記第2底部は、上記第2合わせ面に直交する方向に延在する第2底板部と、上記第2底板部よりも上記第2天部側に位置する第2後退部とを含み、
上記第2後退部は、上記第2合わせ面に隣接する部分であってかつ上記第2胴部の幅方向の一端および他端に連続する部分に設けられ、
上記第2天部は、上記第2合わせ面から遠ざかるにつれて上記第2底部に近づくように傾斜する第2天板部を含み、
上記第1底部に対応する部分の上記第1フランジ部が、上記第1後退部のみに設けられているとともに、上記第2底部に対応する部分の上記第2フランジ部が、上記第2後退部のみに設けられている、パルプモールド外装体。
【0111】
[付記2]
上記パルプモールド外装体が、ヒンジ部をさらに備え、
上記第1フランジ部の上記第1胴部の幅方向における一端と、上記第2フランジ部の上記第2胴部の幅方向における一端とが、上記ヒンジ部によって連結されている、付記1に記載のパルプモールド外装体。
【0112】
[付記3]
上記第1天部の上記第1合わせ面側の端部に第1天部側切り欠き部が設けられ、
上記第2天部の上記第2合わせ面側の端部に第2天部側切り欠き部が設けられ、
上記第1天部側切り欠き部および上記第2天部側切り欠き部は、上記第1半割体と上記第2半割体とが組み合わされた状態において物品に設けられたスパウトが挿通される天部側孔部を規定している、付記1または2に記載のパルプモールド外装体。
【0113】
[付記4]
上記第1天部は、スパウトに係合可能な係合片を含み、
上記第1半割体と上記第2半割体とが組み合わされた状態において上記第2天部が上記第1天部よりも上記第2底板部の法線方向における外側に位置することとなるように、上記第2半割体が、上記第2底板部の上記法線方向において上記第1半割体よりも大きく構成されている、付記3に記載のパルプモールド外装体。
【0114】
[付記5]
上記第1底部の上記第1合わせ面側の端部に第1底部側切り欠き部が設けられ、
上記第2底部の上記第2合わせ面側の端部に第2底部側切り欠き部が設けられ、
上記第1底部側切り欠き部および上記第2底部側切り欠き部は、上記第1半割体と上記第2半割体とが組み合わされた状態において底部側孔部を規定する、付記1から4のいずれかに記載のパルプモールド外装体。
【0115】
(その他の形態等)
上述した実施の形態においては、パルプモールド外装体の表面に加飾が施されていない場合を例示して説明を行なったが、パルプモールド外装体の表面に、デザインが印刷された紙製あるいはプラスチック製のラベルを貼り付けたり、エンボス加工を施したり、あるいはこれらの両方を行なったりすることにより、パルプモールド外装体の加飾性を高める工夫が施されてもよい。さらには、パルプモールド外装体の表面に単数または複数の孔部を設けることにより、外部からパウチ等の収容物品を視認可能に構成してもよい。
【0116】
また、上述した実施の形態においては、パルプモールド外装体に収容される物品がパウチである場合を例示して説明を行なったが、当該物品はパウチに限定されるものではなく、たとえばPETボトル等のブロー成型ボトルや、ガラス瓶等であってもよい。また、パルプモールド外装体の外形は、これに収容される物品の外形に合わせて適宜変更されてよい。
【0117】
さらに、上述した実施の形態においては、パルプモールド中間体を抄造成形する方法として、吸引による方法を例示して説明を行なったが、たとえば網型で漉き上げることによって行なってもよい。
【0118】
また、上述した実施の形態においては、パルプモールド外装体として、第1半割体と第2半割体とがヒンジ部によって連結されたものを例示して説明を行なったが、パルプモールド外装体は、第1半割体と第2半割体とが別体として成形され、これらの各々が有する係合部によって係合されることで組み合わせられるものであってもよい。
【0119】
さらに、上述した実施の形態においては、第1底部が一対の第1後退部を含んでいる場合を例示して説明を行なったが、第1後退部は、必ずしも対をなしたものである必要はなく、たとえば、第1底部に上記一対の第1連結部を接続するように他の後退部がさらに設けられることにより、第1底部が全体として1つの第1後退部を含んでいてもよい。この点は、第2後退部においても同様である。
【0120】
また、上述した実施の形態においては、第1パルプモールド中間体の全体が、単体のプレス成形用第1上型によってプレスされる場合を例示して説明を行なったが、プレス成形用第1上型は、上述した構成に限定されず、たとえば、分割された2つの型を含むものであってもよい。このように構成した場合には、第1パルプモールド中間体の第1底部側と第1天部側とを、互いに異なる型を用いて別々にプレス可能になるため、第1底板部と第1天板部とをより高い精度にて圧縮成形することが可能になる。この点は、第2パルプモールド中間体をプレス成形するためのプレス成形用第2上型についても同様である。
【0121】
さらに、上述した本発明の実施の形態において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0122】
また、上述した本発明の実施の形態において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0123】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0124】
1 パルプモールド外装体、2 収容空間、10 第1半割体、10M 第1パルプモールド中間体、11 第1胴部、11a 第1留め片、12 第1底部、12a 第1底板部、12b 第1後退部、12c 第1底部側切り欠き部、13 第1天部、13a 第1天板部、13b 係合片、13b1 基部、13b2 先端部、13c 第1天部側切り欠き部、14 第1フランジ部、14a 第1合わせ面、20 第2半割体、21 第2胴部、21a 第2留め片、21a1 スリット孔、22 第2底部、22a 第2底板部、22b 第2後退部、22c 第2底部側切り欠き部、23 第2天部、23a 第2天板部、23c 第2天部側切り欠き部、24 第2フランジ部、24a 第2合わせ面、30 ヒンジ部、50 天部側孔部、60 底部側孔部、100 パウチ、101 パウチ本体、102 スパウト、201 抄造成形用第1型、202 網、203 パルプスラリー、204 材料槽、301 プレス成形用第1下型、301a 成形面、302 プレス成形用第1上型。
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