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特開2024-138613消火設備の基準角現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置
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  • 特開-消火設備の基準角現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置 図1
  • 特開-消火設備の基準角現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置 図2
  • 特開-消火設備の基準角現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置 図3
  • 特開-消火設備の基準角現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138613
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】消火設備の基準角現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 99/00 20100101AFI20241002BHJP
【FI】
A62C99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049173
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 涼平
(72)【発明者】
【氏名】横田 博之
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189GA01
(57)【要約】
【課題】設置現場における実際の基準角をデータベースに教示して消火装置の選択に必要な計算の精度を向上させる消火設備の基準角現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る消火設備の基準角現場ティーチング方法は、消火設備が設置された現場において、ペアとなる消火装置1の実際の基準角を求めて中央制御盤の記憶手段に教示する方法であって、ペアとなる消火装置1を結ぶ実基準線3を現場の床面5に設定する実基準線設定工程S1と、疑似火源を実基準線3上に配置する疑似火源配置工程S3と、ペアとなる二つの消火装置1のそれぞれに疑似火源を探査させ、疑似火源検知時の旋回角をそれぞれ取得する疑似火源探査工程S5と、疑似火源探査工程S5で取得した旋回角をペアとなる消火装置1それぞれの基準角として中央制御盤の記憶手段に教示する基準角教示工程S7と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火領域に複数設置されて少なくとも水平方向に旋回して火源位置を検知する火源探査装置と回動式放水ノズルと有する消火装置と、
ペアとなる前記消火装置を結んだ直線である基準線と前記消火装置の設置面とがなす角である基準角を記憶した記憶手段を有し、火源を検知した前記火源探査装置から水平方向の旋回角を取得し、該旋回角と前記記憶手段に記憶した前記基準角とに基づいて火源を消火するのに最適な消火装置を選択して放水を実行させる中央制御盤と、
を備えた消火設備が設置された現場において、
現場に設置された前記ペアとなる消火装置の実際の基準角を求めて前記中央制御盤の記憶手段に教示する消火設備の基準角現場ティーチング方法であって、
ペアとなる消火装置を結ぶ実基準線を現場の床面に設定する実基準線設定工程と、
疑似火源を前記実基準線上に配置する疑似火源配置工程と、
前記ペアとなる二つの消火装置のそれぞれに前記疑似火源を探査させ、疑似火源検知時の旋回角をそれぞれ取得する疑似火源探査工程と、
該疑似火源探査工程で取得した旋回角を前記ペアとなる消火装置それぞれの基準角として前記中央制御盤の記憶手段に教示する基準角教示工程と、を備えたことを特徴とする消火設備の基準角現場ティーチング方法。
【請求項2】
前記疑似火源は疑似火源発生装置で発生させるものであって、
該疑似火源発生装置は、
疑似火源としての熱源と、
該熱源を床面から所定の高さに支持する熱源支持部材と、
前記熱源を挟んで対向配置された一対の湾曲形状の反射鏡と、
該反射鏡を位置調整可能に支持する反射鏡支持部材と、を備えてなり、
前記疑似火源配置工程は、前記熱源を前記実基準線上に配置すると共に、前記反射鏡の反射面を前記消火装置に対向するように前記疑似火源発生装置を配置することを特徴とする請求項1記載の消火設備の基準角現場ティーチング方法。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備の基準角現場ティーチング方法に用いる疑似火源発生装置であって、
疑似火源としての熱源と、
該熱源を床面から所定の高さに支持する熱源支持部材と、
前記熱源を挟んで対向配置された一対の湾曲形状の反射鏡と、
該反射鏡を位置調整可能に支持する反射鏡支持部材と、を備えてなることを特徴とする疑似火源発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火領域に複数設置された消火装置を備える消火設備が設置された現場において、現場に設置された二つの消火装置を結んだ直線と消火装置の設置面とがなす角を消火設備に教示する消火設備の現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消火対象の領域(消火領域)が大空間である場合などに用いられる消火設備では、火源探査装置及び回動式放水ノズルを備える消火装置が壁面に複数設置されている。回動式放水ノズルを備える消火装置は半円形状の放水射程範囲(この放水射程範囲の半径を以降、「防護半径」という)を有しており、各消火装置の放水射程範囲をオーバーラップさせて配置し、消火領域をもれなく防護している。
【0003】
このような消火装置が設置されている消火領域に火災が発生すると、当該消火領域内に設置されている火災感知器(煙感知器など)が火災発生を感知し、各消火装置の火源探査装置が火源位置の探査を開始する。火源探査によって火源の位置を特定できた消火装置は、特定した位置に回動式放水ノズルを指向して放水を行う。
【0004】
このとき、火源位置を特定できたすべての消火装置から放水を行うと、大量の水資源を要する共に、広範囲に消火水による水損が生じるため、従来、消火に最適な消火装置を1台選択して放水を行っている。
上記のように、消火に最適な消火装置を1台選択し、該選択した消火装置から放水を行う消火設備の例が特許文献1、2に開示されている。
【0005】
特許文献1、2の方法では、二つの消火装置を結んだ直線(以下、これを「基準線」と呼ぶ)とそれぞれの消火装置の設置面とがなす角(以下、これを「基準角」と呼ぶ)を、予めデータベースに記憶している。そして、各火源探査装置の探査結果と上記基準角とに基づく計算によって、消火に最適な消火装置を選択している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4016364号公報
【特許文献2】特開2021-62161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現場に設置された消火装置間の実際の基準角は、設置面における建築誤差や設置時の施工誤差によって設計上の基準角からずれる場合があった。
例えば、対向する壁面に二つの消火装置を正対させて設置する場合、対向する壁面が建築設計上、平行であれば、当該二つの消火装置の設計上の基準角はそれぞれ90°となる。しかし、実際の現場では、上記対向する壁面が建築上の誤差によって平行ではない場合があり、消火装置を設置したあとの実際の基準角が90°からずれることがある。また、一方の消火装置の真正面に他方の消火装置が配置されているかについても測定して確かめることができず、施工上の誤差によってさらにずれが大きくなる場合もある。
【0008】
データベースに記憶されている設計上の基準角と設置現場における実際の基準角との間にずれがあると、設計上の基準角を用いて算出した計算結果の信頼性が低下する。したがって、従来では計算結果に誤差が生じることを前提とし、該計算結果に基づいて消火装置を選択しても消火に支障が生じないよう、各消火装置の放水射程範囲を大きくオーバーラップさせて配置するようにしている。
そのため、消火領域に対して必要な消火装置の数が増え、コストアップの要因となっていた。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、設置現場における実際の基準角をデータベースに教示して消火装置の選択に必要な計算の精度を向上させる消火設備の基準角現場ティーチング方法及び該方法に用いる疑似火源発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る消火設備の基準角現場ティーチング方法は、消火領域に複数設置されて少なくとも水平方向に旋回して火源位置を検知する火源探査装置と回動式放水ノズルと有する消火装置と、
ペアとなる前記消火装置を結んだ直線である基準線と前記消火装置の設置面とがなす角である基準角を記憶した記憶手段を有し、火源を検知した前記火源探査装置から水平方向の旋回角を取得し、該旋回角と前記記憶手段に記憶した前記基準角とに基づいて火源を消火するのに最適な消火装置を選択して放水を実行させる中央制御盤と、
を備えた消火設備が設置された現場において、
現場に設置された前記ペアとなる消火装置の実際の基準角を求めて前記中央制御盤の記憶手段に教示する方法であって、
ペアとなる消火装置を結ぶ実基準線を現場の床面に設定する実基準線設定工程と、
疑似火源を前記実基準線上に配置する疑似火源配置工程と、
前記ペアとなる二つの消火装置のそれぞれに前記疑似火源を探査させ、疑似火源検知時の旋回角をそれぞれ取得する疑似火源探査工程と、
該疑似火源探査工程で取得した旋回角を前記ペアとなる消火装置それぞれの基準角として前記中央制御盤の記憶手段に教示する基準角教示工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記疑似火源は疑似火源発生装置で発生させるものであって、
該疑似火源発生装置は、
疑似火源としての熱源と、
該熱源を床面から所定の高さに支持する熱源支持部材と、
前記熱源を挟んで対向配置された一対の湾曲形状の反射鏡と、
該反射鏡を位置調整可能に支持する反射鏡支持部材と、を備えてなり、
前記疑似火源配置工程は、前記熱源を前記実基準線上に配置すると共に、前記反射鏡の反射面を前記消火装置に対向するように前記疑似火源発生装置を配置することを特徴とするものである。
【0012】
(3)また、本発明に係る疑似火源発生装置は、上記(1)に記載の消火設備の基準角現場ティーチング方法に用いるものであって、
疑似火源としての熱源と、
該熱源を床面から所定の高さに支持する熱源支持部材と、
前記熱源を挟んで対向配置された一対の湾曲形状の反射鏡と、
該反射鏡を位置調整可能に支持する反射鏡支持部材と、を備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設置現場における実際の基準角を測定してデータベースに教示することにより、消火装置の選択に必要な計算の精度が向上するので、消火領域の面積に対して必要な消火装置の数を低減可能となって、設備の構築に必要なコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る消火設備の基準角現場ティーチング方法のフロー図である。
図2図1の実基準線設定工程と疑似火源配置工程を説明する図である。
図3】本発明の実施の形態に係る疑似火源発生装置を説明する図である(その1)。
図4】本発明の実施の形態に係る疑似火源発生装置を説明する図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態にかかる消火設備の基準角現場ティーチング方法は、消火装置と中央制御盤を備えた消火設備が設置された現場において、各消火装置間の実際の基準角を求め、該基準角を消火設備の中央制御盤に教示する方法である。
【0016】
消火装置は、少なくとも水平方向に旋回して火源位置を検知する火源探査装置と回動式放水ノズルを有している。火災が発生すると、中央制御盤の指示を受けて各消火装置の火源探査装置が旋回して火源探査を行い、火源を検知した火源探査装置は検知時の旋回角を中央制御盤に送信する。
【0017】
中央制御盤は、火源探査装置から取得した旋回角に基づいて各消火装置から火源までの距離を計算する。この距離は、二つの消火装置の旋回角、該二つの消火装置間の基準線長さ及び基準角に基づき、三角関数を用いて算出する。基準線とは、上記計算上のペアとなる二つの消火装置を結んだ直線であり、基準角とは、この基準線と消火装置の設置面とがなす角である。各ペアの基準線の長さや基準角は、中央制御盤の記憶手段に予め記憶されている。
【0018】
中央制御盤は、算出した各消火装置から火源までの距離に基づいて、消火に最適な消火装置を一つ選択し、該選択した消火装置から放水を行う。
【0019】
中央制御盤の記憶手段には、設計上の基準角の値が入力されており、本実施の形態の消火設備の基準角現場ティーチング方法は、記憶手段に入力された基準角の値(設計値)を、設置現場で求めた実際の値(測定値)に上書きするものであり、図1に示すように、実基準線設定工程S1と、疑似火源配置工程S3と、疑似火源探査工程S5と、基準角教示工程S7とを備えている。
なお、記憶手段に基準角の値が予め入力されていることは必須ではなく、設置現場において、本実施の形態の消火設備の基準角現場ティーチング方法により入力するものも含む。
【0020】
<実基準線設定工程>
実基準線設定工程S1は、図2に示すように、ペアとなる消火装置1を結ぶ実基準線3を現場の床面5に設定する工程である。実基準線3は、例えば下記のように設定するとよい。
【0021】
まず、消火装置1が設置された壁面7に、消火装置1の火源探査装置の旋回軸から床面5に向かって延びる垂直線9を設定する。そして、ペアとなる二つの消火装置1からそれぞれ延びる垂直線9と床面5との交点同士を直線で結び、この直線を実基準線3とする。
この実基準線3の長さは、中央制御盤の記憶手段に入力されている基準線長さ(消火装置間水平距離)に相当する。また、垂直線9の長さは、中央制御盤の記憶手段に入力されている消火装置1の設置高さに相当する。
【0022】
<疑似火源配置工程>
疑似火源配置工程S3は、疑似火源を上記実基準線3上に配置する工程である。疑似火源は、消火装置1の火源探査装置が検知可能なものであれば特にその態様を限定するものではないが、安全管理上、炎を用いないものが望ましい。
そこで、本実施の形態では、疑似火源を安全に発生させる疑似火源発生装置11を用いる。
【0023】
《疑似火源発生装置》
疑似火源発生装置11は、消火装置1の火源探査装置が検知可能な疑似火源を発生させる装置であって、図3に示すように、疑似火源としての熱源13と、熱源13を支持する熱源支持部材15と、熱源13を挟んで対向配置された一対の反射鏡17と、一対の反射鏡17をそれぞれ位置調整可能に支持する一対の反射鏡支持部材19と、反射鏡17の位置調整に用いるカメラ21から構成されている。
【0024】
熱源13は、例えば円筒状のランプからなり、床面5に水平に配置されて周方向に熱と光を放射する。
【0025】
熱源支持部材15は、複数のキャスター23と複数の調節脚25が取り付けられ、キャスター23及び調節脚25を介して床面5に載置される第1枠体27と、第1枠体27に立設された第2枠体29からなる。第2枠体29の垂直方向に延びる一対の辺部の内側には熱源13の両端部が固定されており、第1枠体27と第2枠体29によって熱源13を床面5から所定の高さに支持している。
熱源支持部材15はキャスター23を介して自由に移動させることができる。また、調節脚25によって熱源支持部材15が所定の位置から移動するのを制限できる。さらに、調節脚25の高さを調節することで、疑似火源発生装置11の水平度を調整することができる。
【0026】
反射鏡17は、設置状態で上下方向中央部が凹となるように緩やかに湾曲した形状の反射面を有する鏡である。反射鏡17は熱源13から放射された光を反射して平行光束31を形成する(図4参照)。反射鏡17によって平行光束31を形成することで消火装置1に到達する光量(赤外線量)が増加し、消火装置1の火源探査装置33が疑似火源を検知しやすくなる。
【0027】
反射鏡支持部材19は、一対の腕部材35と、腕部材35の一端同士を連結する連結部材37と、連結部材37と反射鏡17を下側から支持するリンク機構39からなる。
一対の腕部材35の他端は、熱源13の両端部に回動可能にそれぞれ取り付けられている。また、連結部材37の内側には反射鏡17が固着されている。
連結部材37の中央部にはカメラ取付部材41が設けられており、反射鏡17から突出したカメラ取付部材41の上部にはカメラ21が取り付けられている。カメラ21は、図示しないPC(パーソナルコンピュータ)と有線又は無線で接続されており、PCのモニタに映る映像によって反射鏡17による光の反射方向を確認することができる。
【0028】
リンク機構39は、棒状の上リンク43及び下リンク47から構成されており、上リンク43の下端と下リンク47の上端は接続部49によって回動可能に接続されている。また、上リンク43の上端は連結部材37の中央部、下リンク47の下端は第1枠体27にそれぞれ回動可能に接続されている。
【0029】
本実施の形態の疑似火源配置工程S3では、この疑似火源発生装置11の熱源13を、実基準線設定工程S1で設定した実基準線3上に配置する(図2参照)。この際、熱源13の長手方向中央部が実基準線3上に配置されるようにする。
図3の例では、第1枠体27の4つの辺部のうち、熱源13と平行な一対の辺部にそれぞれ3つずつ調節脚25が設けられている。3つのうち真ん中の調節脚25は当該一対の辺部の長手方向中央部に設けられているので、これを疑似火源発生装置11を配置する際の位置決めの目印として使用することもできる。当該調節脚25をそれぞれ実基準線3上に位置するように疑似火源発生装置11を配置することにより、熱源13の中央部が実基準線3上に配置される。
このほか、疑似火源発生装置11の下部に熱源13の長手方向中央を示す目印を別途設けるなどしても良い。
熱源13の長手方向中央部を実基準線3上に配置する理由は、本実施の形態における消火装置1の火源探査装置33が、旋回範囲の中で最も温度が高い高温部の中で、幅方向の中心を火源検知時の旋回角とするからである。
【0030】
また、一対の反射鏡17も実基準線3上に位置するように疑似火源発生装置11の向きを調整する。さらに、カメラ21の映像を見ながら反射鏡17の位置をそれぞれ調整し、反射鏡17の反射面が消火装置1に対向するように微調整する(図4参照)。
【0031】
<疑似火源探査工程>
疑似火源探査工程S5は、二つの消火装置1のそれぞれに疑似火源(ここでは、疑似火源発生装置11の熱源13)を探査させ、疑似火源検知時の旋回角をそれぞれ取得する工程である。
上述したように、実基準線3上に熱源13(疑似火源)を配置しているので、火源探査装置33がこの熱源13を検知したときの旋回角は、消火装置1の設置面と実基準線3とがなす角、即ち設置現場における実際の基準角に相当する。
【0032】
<基準角教示工程>
基準角教示工程S7は、疑似火源探査工程S5で取得した旋回角をペアとなる消火装置1それぞれの基準角として中央制御盤の記憶手段に教示する工程である。
上述したように、二つの消火装置1が疑似火源を検知したときのそれぞれ旋回角は、二つの消火装置それぞれの実際の基準角に相当するものである。中央制御盤の記憶手段には計算上の基準角の値(設計値)が予め入力されているが、これを上記旋回角の値に上書きすることにより、中央制御盤に実際の基準角(測定値)を教示することができる。
【0033】
上記のように、本実施の形態においては、消火設備が設置された現場において実際の基準角を測定し、この測定値を中央制御盤に教示することにより、中央制御盤が基準角を用いて行う計算の精度が向上する。
また、中央制御盤の計算精度が向上することにより、放水射程範囲のオーバーラップ量を従来よりも小さくできるので、消火領域の面積に対して必要な消火装置の数を低減でき、コストダウンに寄与する。
【0034】
なお上記では、二つの消火装置の旋回角と当該二つの消火装置間の基準角とに基づいて各消火装置から火源までの距離を算出する消火設備の例を説明したが、本発明が対象とする消火設備はこれに限られない。例えば、放水機能(回動式放水ノズル)を有さずに火源探査機能(火源探査装置)のみを有する補助センサを更に設け、該補助センサが火源を検知したときの旋回角を上記計算に用いる消火設備にも本発明を用いることができる。
【0035】
補助センサを備えた場合には、消火装置の旋回角と、補助センサの旋回角と、当該消火装置及び補助センサ間の基準角とを用いて、消火装置から火源までの距離を算出することもできる。
したがって本発明における基準線及び基準角は、二つの消火装置間に設定されるものに限らず、消火装置と補助センサ間に設定されるものや、二つの補助センサ間に設定されるものも含む。
【符号の説明】
【0036】
1 消火装置
3 実基準線
5 床面
7 壁面
9 垂直線
11 疑似火源発生装置
13 熱源
15 熱源支持部材
17 反射鏡
19 反射鏡支持部材
21 カメラ
23 キャスター
25 調節脚
27 第1枠体
29 第2枠体
31 平行光束
33 火源探査装置
35 腕部材
37 連結部材
39 リンク機構
41 カメラ取付部材
43 上リンク
47 下リンク
49 接続部
図1
図2
図3
図4