(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138632
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】AIモデルに関するパーソナライズされた更新情報を提供するための装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241002BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241002BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049216
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ブラカモンテ バネッサ
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC12
5L050CC12
(57)【要約】
【課題】AIモデルが更新された際に、関心のあるユーザにパーソナライズされた報告を通知することができる装置、方法及びプログラムを提供することを提供すること。
【解決手段】AIモデルに対するユーザの関心事項と当該AIモデルに関する情報とを分析し、前記AIモデル情報が更新された際に、当該更新された情報に関連するユーザの関心事項に基づいて、前記AIモデルに関心のあるユーザに対してパーソナライズされた報告を個別に作成し提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AIモデルに対するユーザの関心事項と当該AIモデルに関する情報とを分析し、前記AIモデル情報が更新された際に、当該更新されたAIモデル情報に関連するユーザの関心事項に基づいて、前記AIモデルに関心のあるユーザに対してパーソナライズされた報告を個別に作成し提供する情報提供装置。
【請求項2】
AIモデルに対するユーザの関心事項に基づいて、ユーザの関心事項カテゴリを生成し、前記ユーザの関心事項へ生成した前記関心事項カテゴリを割り当てる第1のモジュールと、
前記AIモデルに関する情報と前記ユーザの関心事項カテゴリとに基づいて、AIモデル情報トピックスを生成し、生成した前記AIモデル情報トピックスに対応する前記関心事項カテゴリを割り当てるとともに、AIモデル情報の更新に応じてユーザへの報告をトリガする第2のモジュールと、
前記ユーザへの報告がトリガされたときに、更新されたAIモデル情報トピックスに対応する関心事項カテゴリと、当該関心事項カテゴリに対応するユーザの関心事項とに基づいて関心のあるユーザを特定し、特定したユーザに対してパーソナライズされた報告を作成する第3のモジュールと、
を備えた請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
AIモデルに対するユーザの関心事項と当該AIモデルに関する情報とを分析し、前記AIモデル情報が更新された際に、当該更新されたAIモデル情報に関連するユーザの関心事項に基づいて、前記AIモデルに関心のあるユーザに対してパーソナライズされた報告を個別に作成し提供する情報提供方法。
【請求項4】
AIモデルに対するユーザの関心事項に基づいて、ユーザの関心事項カテゴリを生成し、前記ユーザの関心事項へ生成した前記関心事項カテゴリを割り当てる段階と、
前記AIモデルに関する情報と前記ユーザの関心事項カテゴリとに基づいて、AIモデル情報トピックスを生成し、生成した前記AIモデル情報トピックスに対応する前記関心事項カテゴリを割り当てるとともに、AIモデル情報の更新に応じてユーザへの報告をトリガする段階と、
前記ユーザへの報告がトリガされたときに、更新されたAIモデル情報トピックスに対応する関心事項カテゴリと、当該関心事項カテゴリに対応するユーザの関心事項とに基づいて関心のあるユーザを特定し、特定したユーザに対してパーソナライズされた報告を作成する段階と、
を含む請求項3に記載の情報提供方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の情報提供装置としてコンピュータを機能させるための情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AIモデルに関する情報(情報処理、コンテンツ等)を分析し、AIモデルに関心事項を有しているユーザに対して、パーソナライズされた更新情報を個別に提供する装置、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のシステム及び方法は、オンラインコンテンツの変化(更新)を検出し、その更新が意味のあるものかどうかを判断するものである。コンテンツの更新が意味を持つかどうかは、コンテンツ自体の性状(例えば、ニュースの見出しのように意味のある部分か、広告のように意味のない部分か、等)や、過去にユーザがコンテンツをクリックしたりズームしたりする等、コンテンツとどのようにインタラクションを行ってきたかによって判断される。また、ユーザは、コンテンツの一部を指定して意味を持たせることができる。
【0003】
特許文献1のシステム及び方法では、コンテンツを自動的に分析する技術を用いることが想定されている。そして、コンテンツの変化に意味があると判断された場合、何が変化したのか、コンテンツがどの程度変化したのかをユーザに通知する。ユーザは、クライアントデバイス上で通知を受け取る。通知には、ユーザの注意を引くために、コンテンツの一部やビジュアルデザインが含まれていてもよい。
【0004】
非特許文献1は、ソフトウェアのリリースノート(ソフトウェアのバージョンアップ時の変更点を示すメモ)における新旧二つのバージョンの違いをユーザが理解することを助ける半自動化されたアプローチを提案している。このアプローチは、リリースに関する関連情報を収集し、変更点のリストを自動的に作成する。そして、必要とされる情報に応じて(例えば、情報をフィルタリングして情報量を減らす等して)、特定の読者をターゲットにしたリリースノートを生成する。表示されるデータは、例えば、ターゲットグループが、技術者である場合は技術情報に焦点を当て、非技術者である場合は非技術情報に焦点を当てる等、特定の読者の一般的なニーズに基づくデータとすることも可能である。例えば、ユーザストーリーをエピソードごとにグループ化することや、ユーザが生成したバグレポートに関する情報を表示しないように設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sebastian Klepper, Stephan Krusche & Bernd Bruegge, “Semi-Automatic Generation of Audience-Specific Release Notes”, Proceedings of the International Workshop on Continuous Software Evolution and Delivery (CSED), May 2016, pp. 19-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のシステム及び方法では、ユーザとコンテンツとのインタラクション(クリック、ズーム等)により、コンテンツに意味のある変化があるかどうかを判断している。しかし、このシステム及び方法では、ユーザがなぜそのインタラクションを行ったかについては分析されない。また、前記システム及び方法は、ユーザがユーザにとって意味のあるものを指定することを許容し得るが、ユーザはまだ存在しない情報を指定することができないため、コンテンツ内の全く新しい情報を扱うものではない。さらに、コンテンツの変更についてはユーザに通知されるが、その通知に至ったユーザのインタラクションが何であったかは分からない。
【0008】
非特許文献1のアプローチでは、個々のユーザのレベルではなく、グループのレベルを対象として情報を提供する。そのため、グループに含まれる多くのユーザが情報を受け取ることになるが、その情報は必ずしもユーザ個人に関連したものではないかもしれない。また、特許文献1と同様に、ユーザに表示されるデータには、何が変わったかだけが含まれ、なぜユーザに通知されるのかの理由は含まれない。
【0009】
本発明は、AIモデルに関するユーザの関心事項とAIモデル情報とを分析し、AIモデルが更新された際に、当該AIモデルに関心を持つユーザにパーソナライズされた報告を個別に通知することができる装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る情報提供装置は、AIモデルに対するユーザの関心事項と当該AIモデルに関する情報とを分析し、前記AIモデル情報が更新された際に、当該更新されたAIモデル情報に関連するユーザの関心事項に基づいて、前記AIモデルに関心のあるユーザに対してパーソナライズされた報告を個別に作成し提供する。
【0011】
前記情報提供装置は、AIモデルに対するユーザの関心事項に基づいてユーザの関心事項カテゴリを生成し、前記ユーザの関心事項へ生成した前記関心事項カテゴリを割り当てる第1のモジュールと、前記AIモデルに関する情報と前記ユーザの関心事項カテゴリとに基づいてAIモデル情報トピックスを生成し、生成した前記AIモデル情報トピックスに対応する前記関心事項カテゴリを割り当てるとともに、AIモデル情報の更新に応じてユーザへの報告をトリガする第2のモジュールと、前記ユーザへの報告がトリガされたときに、更新されたAIモデル情報トピックスに対応する関心事項カテゴリと、当該関心事項カテゴリに対応するユーザの関心事項とに基づいて関心のあるユーザを特定し、特定したユーザに対してパーソナライズされた報告を作成する第3のモジュールと、を備えてもよい。
【0012】
また、本発明に係る情報提供方法は、AIモデルに対するユーザの関心事項と当該AIモデルに関する情報とを分析し、前記AIモデル情報が更新された際に、当該更新されたAIモデル情報に関連するユーザの関心事項に基づいて、前記AIモデルに関心のあるユーザに対してパーソナライズされた報告を個別に作成し提供する。
【0013】
前記情報提供方法は、AIモデルに対するユーザの関心事項に基づいてユーザの関心事項カテゴリを生成し、前記ユーザの関心事項へ生成した前記関心事項カテゴリを割り当てる段階と、前記AIモデルに関する情報と前記ユーザの関心事項カテゴリとに基づいてAIモデル情報トピックスを生成し、生成した前記AIモデル情報トピックスに対応する前記関心事項カテゴリを割り当てるとともに、AIモデル情報の更新に応じてユーザへの報告をトリガする段階と、前記ユーザへの報告がトリガされたときに、更新されたAIモデル情報トピックスに対応する関心事項カテゴリと、当該関心事項カテゴリに対応するユーザの関心事項とに基づいて関心のあるユーザを特定し、特定したユーザに対してパーソナライズされた報告を作成する段階と、を含んでもよい。
【0014】
さらに、本発明に係る情報提供プログラムは、先述の情報提供装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであってよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、AIモデルに関心事項を有しているユーザのそれぞれに対して、AIモデル情報の更新に関するパーソナライズされた報告を個別に提供することが可能となり、しかも、報告の提供を受けたユーザは、自分の関心事項との関連(すなわち、なぜ自分に報告書が送信されたのか)を容易に理解することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の情報提供装置の構成を示す図である。
【
図2】実施形態のユーザの関心事項カテゴリを生成する第1のモジュール(モジュール1)における処理の流れを示す図である。
【
図3】実施形態のAIモデル情報トピックスを生成する第2のモジュール(モジュール2)における初期段階の処理の流れを示す図である。
【
図4】実施形態のAIモデル情報トピックスを生成する第2のモジュール(モジュール2)において、AIモデル情報が更新され、モジュール2が再実行された段階を例示する図である。
【
図5】実施形態のユーザへの報告を提供する第3のモジュール(モジュール3)における処理の流れを示す図である。
【
図6】実施形態のユーザへの報告を提供する第3のモジュール(モジュール3)における処理の流れ(
図5の続き)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について、図を参照しながら説明する。
図1は、実施形態の情報提供装置10の構成を示す図である。
情報提供装置10は、入力データとしてユーザの関心事項とAIモデル情報を受信し、AIモデルに関心事項を有しているユーザに対して個別に、AIモデルの更新に関するパーソナライズされた報告書を出力(送信)する。情報提供装置10は、
図1から看取されるとおり、制御部20、入力部30、出力部40、記憶部50及びレポジトリ61~64を備えた情報処理装置(コンピュータ)である。
【0018】
制御部20は、情報提供装置10の全体を制御する部分であり、記憶部50に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、後述する各モジュールにおける処理を実現する。制御部20は、特に限られるものではないが、CPUであってよい。
【0019】
記憶部50は、ハードウェア群を情報提供装置10として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、特に限られるものではないが、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等であってよい。
【0020】
レポジトリとは、貯蔵庫、格納庫という意味であり、本発明における貯蔵・格納の対象はデータであるので、一種の記憶装置である。なお、
図1では四つのレポジトリ61~64を記載しているが、これは、あくまでも説明の便宜のためであって、四つの物理的なレポジトリが必須の構成というわけではなく、それぞれのレポジトリは仮想的(論理的)な(例えば、記憶部50に含まれる)ものであってもよい。
【0021】
また、情報提供装置10は、データ処理の流れの観点からは、少なくとも三つのソフトウェアモジュール(
図2、
図3及び
図5に示すモジュール1~3)から構成される。各モジュールは、後述するデータの生成、割当て、格納等の処理を行うが、これらの処理のための指令を記述したプログラムをコンピュータの記憶部50に記憶させておき、制御部20のCPUが当該プログラムを読み出して実行する。
以下、三つのモジュール1~3における処理の内容(流れ)について詳しく説明する。
【0022】
<モジュール1>
図2は、ユーザの関心事項カテゴリを生成する第1のモジュール(モジュール1)における処理の流れを示す図である。モジュール1は、ユーザの関心事項を分析して関心事項カテゴリを生成(定義)する処理、生成した関心事項カテゴリをカテゴリレポジトリ61に格納(登録)する処理、生成した関心事項カテゴリに対応するユーザの関心事項を割り当てて第1テーブルを生成する処理、及び、生成した第1テーブルを第1レポジトリ62に格納する処理を行う。
【0023】
モジュール1への入力は、AIモデルに関するユーザの関心事項である。ここで、ユーザの関心事項とは、例えば、AIモデルに関連するユーザからの質問、フィードバック、コメント等である。
モジュール1は、初期段階において、入力されたユーザの関心事項を分析し、初期の関心事項カテゴリを生成(定義)する。なお、この分析は、手動、自動又は手動と自動のハイブリッド方式で行うことができる。自動分析は、特に限定されないが、例えば、自然言語処理技術を応用して行うことができる。
【0024】
例えば、
図2に示されているように、画像を生成するAIモデルに対し、ユーザAが、「面白いアプリ。しかし、『架空の人物』スタイルを選択すると、何をどうしても裸の人間が生成されることがある。説明文に『動物』を入力すると、目が3つ、脚が5本、あるいは、尻尾が2本になることがある。」とコメントしたとする。当該コメントをモジュール1に入力すると、ユーザの関心事項として分析され、「何をどうしても裸の人間が生成される」(ユーザAの関心事項1)に関連して「不適切画像」という関心事項カテゴリが生成(定義)され、また、「目が3つ、脚が5本、あるいは、尻尾が2本になる」(ユーザAの関心事項2)に関連して「醜形」という関心事項カテゴリが生成(定義)される。
【0025】
同様に、ユーザBが、「人物について、『非白人』との説明文を入力しても、結局は色白の人物になってしまうことが多い。また、人物の顔が歪んで見えることもある。そして、テキストは読みにくい。」とコメントしたとき、モジュール1は、「『非白人』との説明文を入力しても、結局は色白の人物になってしまう」(ユーザBの関心事項1)に関連して「人種問題」を、「人物の顔が歪んで見える」(ユーザBの関心事項2)に関連して「醜形」を、「テキストは読みにくい」(ユーザBの関心事項3)に関連して「難読文章」を、それぞれ生成(定義)する。
【0026】
モジュール1は、生成(定義)した関心事項カテゴリをカテゴリレポジトリ61に格納(登録)する。
関心事項カテゴリが定義されると、モジュール1は、ユーザAの関心事項1、2及びユーザBの関心事項1~3にそれぞれ対応する関心事項カテゴリを割り当てて、ユーザの関心事項×関心事項カテゴリのテーブル(第1テーブル)を生成し、生成した第1テーブルを第1テーブルレポジトリ62に格納する。なお、
図2の右下には、第1テーブルの例が示されている。
【0027】
また、モジュール1は、新しいユーザ関心事項が蓄積され入力されたときに、新しい関心事項カテゴリを生成したり、既存の関心事項カテゴリを更新するために、再実行するように設定することができる。再実行段階でも、先述した初期段階における処理と同様の処理が行われる。
【0028】
なお、関心事項カテゴリは、AIモデルの利用状況に応じて定義される。
例えば、病気を診断する健康関連のAIモデルの場合、多くのユーザは、当該AIモデルの高齢の患者への対応について疑問を持ち、その結果「高齢の患者」という関心事項カテゴリが生成される可能性がある。
また、画像を生成するAIモデルの場合、多くのユーザは、読み易いテキストで画像を生成できるかどうかを知りたいと思うかもしれず、その結果、「テキストの読み易さ」という関心事項カテゴリが生成されるかもしれない。
【0029】
さらに、一見似ているように見えても、いくつかの違いがあるユーザの関心事項は、一つ又は複数の関心事項カテゴリを生成し得る。例えば、画像を生成するAIモデルの場合、多くのユーザは「読み易いテキストで画像を生成できるかどうか」を知りたいと思うかもしれないが、英語を参照するユーザもいれば、日本語を参照するユーザもいる。その結果、「テキストの読みやすさ」、「英語のテキストの読みやすさ」、「日本語のテキストの読みやすさ」という関心事項カテゴリが生成される可能性がある。
【0030】
<モジュール2>
図3は、AIモデル情報トピックスを生成する第2のモジュール(モジュール2)における初期段階の処理の流れを示す図である。モジュール2は、AIモデル情報からAIモデル情報トピックスを生成する処理、生成したAIモデル情報トピックスをトピックスレポジトリ63に格納(登録)する処理、どのAIモデル情報トピックスがどの関心事項カテゴリを扱うか(どのトピックスがどのカテゴリに対応するか)を割り当てて第2テーブルを生成する処理、及び、生成した第2テーブルを第2テーブルレポジトリ64に格納する処理を行う。
【0031】
モジュール2への入力は、AIモデル情報及び関心事項カテゴリである。ここで、AIモデル情報とは、例えば、AIモデルの性能、学習データ、許容される用途、制限、バイアス等、AIモデルに関する情報である。また、関心事項カテゴリは、モジュール1で定義され、カテゴリレポジトリ4に登録されたものである。
【0032】
モジュール2は、初期段階において、既存のAIモデル情報を分析し、初期のAIモデル情報トピックスを生成(定義)する。ここで、AIモデル情報トピックスは、AIモデルのユースケースとユーザの関心事項カテゴリに応じて定義される。
【0033】
例えば、病気を診断する健康関連のAIモデルの場合、AIモデル情報は「性能」、「用途」といった一般的なトピックスに分類される可能性があるが、高齢者に関連する「性能」を指定したAIモデル情報であれば、「高齢者」という関心事項カテゴリに応じて、「高齢者向けの性能」というより具体的なAIモデル情報トピックスが生成(定義)される可能性がある。
また、画像を生成するAIモデルの場合、AIモデル情報は「性能」、「制限」といった一般的なトピックスに分類される可能性があるが、情報にテキストの生成に関する言及が含まれていれば、「テキスト」のトピックスが作成(定義)される可能性がある。
【0034】
なお、AIモデル情報の分析は、ユーザの関心事項の分析と同様に、手動、自動又は手動と自動のハイブリッド方式で行うことができる。自動分析は、特に限定されないが、例えば、自然言語処理技術を応用して行うことができる。
【0035】
例えば、
図3に示されているように、AIモデル情報の制限に関して、「このモデルは、読み易いテキストを出力することができない。このモデルは、成人向け、暴力的、性的なコンテンツを含むデータセットで学習させたものである。」という情報が入力されたとする。当該情報をモジュール2に入力すると、AIモデルの制限情報として分析され、「読み易いテキストを出力することができない」に関連して、「テキスト出力」というAIモデル情報トピックスが生成(定義)され、また、「成人向け、暴力的、性的なコンテンツを含むデータセットで学習させた」に関連して、「暴力的及び性的なコンテンツ」というAIモデル情報トピックスが生成(定義)される。
【0036】
同様に、AIモデル情報のバイアスに関して、「このモデルは、マイナーな言語を使用するコミュニティや文化への考慮が不足している可能性がある。また、西洋の文化がデフォルトとして設定されており、アウトプットに影響している可能性がある。」という情報が入力されたとき、モジュール2は、「マイナーな言語を使用するコミュニティや文化への考慮が不足している」に関連して「言語が限定されている」というAIモデル情報トピックスを、「西洋の文化がデフォルトとして設定されており」に関連して「西洋がデフォルトである」というAIモデル情報トピックスを、それぞれ生成(定義)する。
【0037】
モジュール2は、生成(定義)したAIモデル情報トピックスをトピックスレポジトリ63に格納(登録)する。ここで、モジュール2は、登録するAIモデル情報トピックスが、AIモデル情報のどの部分に対応するかの情報を含めてトピックスレポジトリ63に格納する。
【0038】
AIモデル情報トピックスをトピックスリポジトリ63に登録すると、
図3に示すトピックスレポジトリが更新されたかの判断が「YES」となり、次の処理へ進む。次の処理では、どのAIモデル情報トピックスがどの関心事項カテゴリを扱うか(どのトピックスがどのカテゴリに対応するか)を割り当てるとともに、ユーザへの報告をトリガする(ただし、初期段階の場合を除く。)。
【0039】
例えば、先述した病気を診断する健康関連のAIモデルの場合、「高齢者向けの性能」というAIモデル情報トピックスは、「高齢者」という対応する関心事項カテゴリに割り当てることができる。なお、あるAIモデル情報トピックスが0個の関心事項カテゴリに対応する場合や、その逆もあり得る。また、AIモデル情報の同じ部分から、一つ又は複数のAIモデル情報トピックスを生成することができる。
【0040】
このように、AIモデル情報トピックスが定義されると、モジュール2は、どのAIモデル情報トピックスがどの関心事項カテゴリに対応するか割り当てて、AIモデル情報トピックス×関心事項カテゴリのテーブル(第2テーブル)を生成し、生成した第2テーブルを第2テーブルレポジトリ64に格納する。なお、
図3の右下には、第2テーブルの例が示されている。
【0041】
また、モジュール2は、AIモデルの新バージョンがリリースされたとき(AIモデル情報が更新されたとき)に、新しいAIモデル情報トピックスを生成したり、既存のAIモデル情報トピックスを更新するために、再実行するように設定することができる。再実行段階でも、先述した初期段階における処理と同様の処理が行われるが、初期段階では、トピックスレポジトリが更新されたかの判断が「YES」となってもユーザへの報告がトリガされないのに対し、再実行段階ではユーザへの報告がトリガされる点が違いである。
【0042】
図4は、AIモデル情報が更新され、モジュール2が再実行された段階を例示する図であり、
図3と対比すると、AIモデル情報、AIモデル情報トピックス及び第2テーブルが、それぞれ更新されていることが看取できる。
【0043】
例えば、初期段階(
図3)のAIモデル情報にあった「このモデルは、読み易いテキストを出力することができない。」という「制限」がなくなり、代わりに「このモデルは、読み易いテキストを出力することができる。」という情報が加わったことが看取できる。また、AIモデル情報に、「顔や人物全般が適切に生成されない場合がある。」という「制限」が新たに加わったことが看取できる。
これに伴い、AIモデル情報トピックスにおいて、「テキスト出力」が「テキスト出力(更新)」に置き換わり、「顔生成(新規)」が加わるとともに、第2テーブルの対応する部分が更新されたことが看取できる。
また、ユーザへの報告がトリガされていることも看取できる。
【0044】
<モジュール3>
図5は、ユーザへの報告を提供する第3のモジュール(モジュール3)における処理の流れを示す図である。モジュール3は、モジュール2においてユーザへの報告がトリガされたことを受けて処理を開始する。
【0045】
まず、第2テーブルレポジトリ64から、第2テーブル(AIモデル情報トピックス×関心事項カテゴリのテーブル)を読み出して参照する処理を行う。実施形態の例では、「テキスト出力」トピックスが更新されたこと、及び、「顔生成」トピックスが登録されたことを判別し、これらトピックスに対応する関心事項カテゴリ、すなわち、「難読文書」と「醜形」を決定することができる。
【0046】
次に、第1テーブルレポジトリ62から、第1テーブル(ユーザの関心事項×関心事項カテゴリのテーブル)を読み出して参照する処理を行う。実施形態の例では、関心事項カテゴリ「難読文書」がユーザBの関心事項3であること、及び、関心事項カテゴリ「醜形」がユーザAの関心事項2であることを判別し、報告を行う対象として、ユーザA及びユーザBを特定する。
すなわち、モジュール3では、更新又は新規登録されたAIモデル情報トピックスに影響を受ける関心事項カテゴリを基に、どのユーザに報告を行うか、またそのユーザの関心事項は何かを特定する。
【0047】
図6は、ユーザへの報告を提供する第3のモジュール(モジュール3)における処理の流れ(
図5の続き)を示す図である。モジュール3は、前の処理で特定したユーザの関心事項と、AIモデル情報のうち、更新又は新規登録されたAIモデル情報トピックスに関連する部分とに基づいて、ユーザ毎にパーソナライズされた報告書を作成する。なお、先述したとおり、モジュール2は、登録するAIモデル情報トピックスが、AIモデル情報のどの部分に対応するかの情報を含めてトピックスレポジトリ63に格納しているので、更新又は新規登録されたAIモデル情報トピックスに関連するAIモデル情報の部分の特定は、トピックスレポジトリ63を参照して行うことができる。
【0048】
最後に、モジュール3は、特定されたユーザに適切なタイミングで報告書を送信する。
図6の右下には、ユーザへ送付する報告書の例が示されている。ユーザAに対しては、「AIモデル情報を更新し、特に[トピックス『顔生成』に対応するセクションのテキスト]を更新しました。今回の更新で、貴方の[関心事項2]に対応しました。」という内容の報告書が作成され、また、ユーザBに対しては、「AIモデル情報を更新し、特に[トピックス『テキスト出力』に対応するセクションのテキスト]を更新しました。今回の更新で、貴方の[関心事項3]に対応しました。」という内容の報告書が作成され、それぞれ送信される。
【0049】
以上の処理により、情報提供装置10は、AIモデルに関心事項を有しているユーザA及びユーザBのそれぞれに対して、AIモデル情報の更新に関するパーソナライズされた報告書を個別に提供することができ、しかも、報告書の送信を受けたユーザA及びユーザBは、自分の関心事項との関連(すなわち、なぜ自分に報告書が送信されたのか)を容易に理解することができるという優れた効果を奏する。
【0050】
なお、本実施形態により、例えば、AIモデルに関心事項を有しているユーザに対して、AIモデル情報の更新に関するパーソナライズされた報告を提供することも可能となることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進すると共に、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 ユーザの関心事項カテゴリを生成するモジュール
2 AIモデル情報トピックスを生成するモジュール
3 ユーザへの報告を提供するモジュール
10 情報提供装置
20 制御部
30 入力部
40 出力部
50 記憶部
61 カテゴリレポジトリ
62 第1テーブルレポジトリ
63 トピックスレポジトリ
64 第2テーブルレポジトリ