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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138635
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】半導体発光素子及び半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20241002BHJP
   H01L 33/10 20100101ALI20241002BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L33/00 Z
H01L33/10
H01L33/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049223
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 文雄
(72)【発明者】
【氏名】川上 康之
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CB18
5F142CD02
5F142CD17
5F142CD18
5F142CD44
5F142CD47
5F142CG05
5F142CG24
5F142CG43
5F142DA02
5F142DA14
5F142DA73
5F142DB16
5F241AA04
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA40
5F241CA92
5F241CB15
5F241CB25
5F241CB36
(57)【要約】
【課題】常に高い出力で光出射させることが可能な半導体発光素子及び半導体発光装置を提供する。
【解決手段】
透光性を有する平板状の基板と、基板の一方の主面に形成され、一方の主面に垂直な方向から見た上面視において矩形でありかつ互いに向かい合う一組の側面が内側に向かって傾斜した発光素子部を有する半導体構造層と、基板の他方の主面上に形成され、各々が周期的に列をなして配された直線状の複数の金属体からなるワイヤグリッドと、を有し、上面視において、複数の金属体の各々は、前記一組の側面と90°以外の角度で交差する方向に伸長している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する平板状の基板と、
前記基板の一方の主面に形成され、前記一方の主面に垂直な方向から見た上面視において矩形でありかつ互いに向かい合う一組の側面が内側に向かって傾斜した発光素子部を有する半導体構造層と、
前記基板の他方の主面上に形成され、各々が周期的に列をなして配された直線状の複数の金属体からなるワイヤグリッドと、を有し、
上面視において、前記複数の金属体の各々は、前記一組の側面と90°以外の角度で交差する方向に伸長している半導体発光素子。
【請求項2】
上面視において、前記複数の金属体の各々と前記一組の側面とがなす角度は、40°以上50°以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記一組の側面の各々は、前記一方の主面に垂直な方向を基準としてそれぞれ45°の角度で傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記発光素子部は、上面形状が前記一組の側面が向かい合う方向又は当該方向と直交する方向を長手方向とする長方形であり、当該長手方向と直交する短手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記発光素子部は、上面形状が正方形であり、マトリクス状に複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記発光素子部は、光を放出する発光層を含み、
前記基板の前記他方の主面と前記ワイヤグリッドとの間に形成され、前記発光層から放出される光を受けて蛍光を発する蛍光体を含む蛍光体層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記発光素子部は、光を放出する発光層を含み、
前記発光素子部の表面には、前記発光層から放出される光に対して反射性を有する反射電極層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記ワイヤグリッド及び前記ワイヤグリッドから露出している前記基板の前記他方の主面を覆う透光性の保護膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の半導体発光素子を含む半導体発光装置であって、
前記半導体発光素子は、前記ワイヤグリッドの長手方向が互いに一致するように複数設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の半導体発光素子を含む半導体発光装置であって、
前記半導体発光素子は、前記ワイヤグリッドの長手方向が互いに異なるように複数設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体発光素子を含む半導体発光装置であって、
複数の半導体発光素子のうち1の半導体発光素子における前記ワイヤグリッドの長手方向を基準として、前記ワイヤグリッドの長手方向の角度間隔が180°÷n(n=2、3、4、5、6)の倍数となるように他の半導体発光素子が設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子を及び半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の光を透過させる偏光子を備える発光素子が開示されている。例えば、特許文献1には、基板と基板の一方の面上に形成された活性層を含む発光部と発光部上に形成されたアルミニウム(Al)ワイヤからなるスリットと基板の一方の面と反対の他方の面上に形成された粗面を有する反射層とを有する発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009―117641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている発光素子において、活性層から放出されてスリットに到達した光のうち、振動方向がスリットの長手方向に対して垂直な偏光成分はスリットを透過し、平行な偏光成分はスリットによって反射される。スリットによって反射された偏光成分は、粗面である反射層で乱反射されることによって振動方向が変化する。このとき、変化した振動方向がスリットの長手方向に対して垂直とである場合には、当該偏光成分はスリットから出射し得る。
【0005】
特許文献1に開示されている発光素子においては、反射層によって変化させられる偏光成分の振動方向はランダムであるため、変化した振動方向がスリットの長手方向に対して垂直とならない場合があり得る。このような場合、反射光がスリットを透過できずにスリットと反射層との間で反射を繰り返すため、発光素子から出射される光の出力を一定に保つことができないという問題点が挙げられる。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、常に高い出力で光出射させることが可能な半導体発光素子及び半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による半導体発光素子は、透光性を有する平板状の基板と、前記基板の一方の主面に形成され、前記一方の主面に垂直な方向から見た上面視において矩形でありかつ互いに向かい合う一組の側面が内側に向かって傾斜した発光素子部を有する半導体構造層と、前記基板の他方の主面上に形成され、各々が周期的に列をなして配された直線状の複数の金属体からなるワイヤグリッドと、を有し、上面視において、前記複数の金属体の各々は、前記一組の側面と90°以外の角度で交差する方向に伸長している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る発光素子の上面図である。
図2】実施例1に係る発光素子を下面側からみた斜視図である。
図3】実施例1に係る発光素子の断面図である。
図4】実施例1に係る発光素子の断面図である。
図5】実施例1に係る発光素子の断面図である。
図6】実施例1に係る発光素子の断面図である。
図7】実施例1に係る発光素子の断面図である。
図8】ワイヤグリッド高さに対する光の透過率と消光比の関係を示すグラフである。
図9】実施例1に係る発光素子を用いた発光装置の上面図である。
図10】実施例1に係る発光素子を用いた発光装置の断面図である。
図11】実施例2に係る発光素子の上面図である。
図12】実施例2に係る発光素子を下面側からみた斜視図ある。
図13】実施例2に係る発光素子の断面図である。
図14】実施例2に係る発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面において同一の構成要素については同一の符号を付け、重複する構成要素の説明は省略する。
【実施例0010】
図1図7を用いて、実施例1に係る発光素子100の構成について説明する。図1は、実施例1に係る発光素子100の上面図である。図1においては、図の煩雑化を避けるために後述する保護膜31を省略して示している。図2は、実施例1に係る発光素子100を下面側からみた斜視図である。
【0011】
図3は、図1に示した発光素子100の3-3線に沿った断面図である。図4は、図1に示した発光素子100の4-4線に沿った断面図である。図5は、図1に示した発光素子100の5-5線に沿った断面図である。図6は、図1に示した発光素子100の6-6線に沿った断面図である。図7は、図1に示した発光素子100の7-7線に沿った断面図である。
【0012】
なお、図3図6においては、後述するワイヤグリッド15を概略的に示している。また、図7においては、図1の7-7線に沿ったワイヤグリッド15の断面の一部のみを示している。
【0013】
図1においては、図中上下方向が発光素子100の前後方向であり、図中左右方向が発光素子100の幅方向である。また、図3図7の各々においては、図中上下方向が発光素子100の高さ方向である。
【0014】
[実施例1に係る発光素子の概要]
実施例1に係る発光素子100は、素子基板11と素子基板11の一方の主面に形成された発光層を含む半導体構造層13と素子基板11の他方の主面に形成されたワイヤグリッド15とを含んで構成される発光ダイオード(Light Emission Diode:LED)である。
【0015】
[素子基板]
まず、素子基板11について説明する。素子基板11は、上面形状が矩形を有し、絶縁性を有する透明な板状体である。素子基板11は、サファイア(Al)や窒化ガリウム(GaN)等の、半導体構造層13の発光層から放出される光に対して透光性を有する材料からなる。以下、発光素子100を上から見た平面視における素子基板11の幅方向の一対の辺を辺11A、前後方向の一対の辺を辺11Bとして説明する。
【0016】
[半導体構造層]
次に、図2図6を用いて、半導体構造層13の構成と半導体構造層13に形成されている電極及び絶縁層について説明する。半導体構造層13は、各々がGaN等の窒化物系半導体からなるn型半導体層17、発光層18及びp型半導体層19を含んで構成される半導体積層体である。
【0017】
半導体構造層13は、上面形状が辺11Aに沿った方向を長手方向とする長方形を有する四角錘台状の発光素子部LPを有する(図2参照)。言い換えれば、半導体構造層13を上から見た平面視において発光素子部LPは短冊形状を有している。発光素子100において、発光素子部LPは、辺11Bに沿った方向に互いに離間しつつ列をなして3つ設けられている。
【0018】
n型半導体層17は、素子基板11の下面11LSに亘って形成された平板状の第1の部分17Aと第1の部分17Aの周縁から離隔しつつ第1の部分17Aから下方に突出している第2の部分17Bとを含んで構成された電導キャリアが電子である半導体層である。n型半導体層17の第2の部分17Bは、上述した発光素子部LPの各々における土台部分である。
【0019】
発光層18は、n型半導体層17の第2の部分17Bの下面に亘って形成されており、電子とホールの再結合で光を放出する半導体層である。発光層18は、例えば450nmをピーク波長とする青色光を放出する。発光層18は、上述した発光素子部LPの各々における中間部分である。
【0020】
p型半導体層19は、発光層18の下面に亘って形成されている電導キャリアがホールである半導体層である。p型半導体層19は、上述した発光素子部LPの各々における先端部分である。
【0021】
発光素子部LPにおいては、互いに向かい合う二組の側面がそれぞれ内側に角度θで傾斜している。具体的には、発光素子部LPの側面の各々は、素子基板11の下面11LSに垂直な方向に対してθ=45°の角度で傾斜している。すなわち、発光素子部LPを構成するn型半導体層17の第2の部分17B、発光層18及びp型半導体層19の各々は、それぞれの側面が45°で傾斜するように形成されている。
【0022】
p型半導体層19の素子基板11の下面11LSに平行な下面(頂面)には、p側電極21が形成されている。p側電極21は、上面形状が辺11Aに沿った方向を長手方向とする長方形の電極である。p側電極21は、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、白金(Pt)及び金(Au)がこの順で積層されて形成されている。
【0023】
n型半導体層17の第1の部分17Aにおける隣り合う第2の部分17Bの間の領域には、n側電極22が設けられている。n側電極22は、上面形状が辺11Aに沿った方向を長手方向とする長方形の電極である。n側電極22は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、Pt及びAuがこの順で積層されて形成されている。なお、p側電極21及びn側電極22のAuの表面にTi層を設けることもできる。表面Ti層は、後述する第1の絶縁層24の密着性を向上することができる。
【0024】
発光素子部LPにおいては、p側電極21及びn側電極22に電圧が印加されてp側電極21とn側電極22との間に電流が流れることにより、発光層18に電流が流れて上述した青色光が放出される。
【0025】
p側電極21において、Ni、Agからなる金属層は、発光層18から放出される青色光を反射させる反射層として機能する。すなわち、上記金属層は、発光層18から放出されてp側電極21に向かって進行する青色光を素子基板11側へと反射させる。従って、素子基板11には、発光層18から放出されて上記反射層によって反射された青色光と発光層18から放出されてそのまま素子基板11に進行した青色光とが入射される。
【0026】
発光素子100において、p側電極21及びn側電極22の各々の長辺は、発光素子部LPのp型半導体層19の長辺と略等しい長さとしている。この構成により、発光素子部LPの長手方向(辺11Aに沿った方向)及び短手方向(辺11Bに沿った方向)において略均一に電流を流すことができる。
【0027】
なお、上述したn型半導体層17、発光層18及びp型半導体層19には、不純物を添加した半導体層、不純物を添加しない半導体層、層間の歪みを緩和する歪み緩和層、結晶組成を徐変する組成傾斜層、量子効果を有する量子井戸層、キャリアの拡散を抑えるバリア層、p側電極21又はn側電極22との接触抵抗を低減するコンタクト層等を目的に応じて適宜含むことができる。
【0028】
半導体構造層13の下面、すなわちn型半導体層17の第1の部分17Aの下面と第2の部分17B、発光層18及びp型半導体層19の各々の側面とp型半導体層19の頂面とには、絶縁性を有する第1の絶縁層24が連続して形成されている。第1の絶縁層24は、例えば二酸化ケイ素(SiO)からなる。なお、第1の絶縁層24はアルミナ(Al)、酸化チタン(TiO)等の絶縁性を有し且つ透光性の金属酸化膜とすることもできる。
【0029】
第1の絶縁層24には、p側電極21の各々の一部を露出する開口OP1がそれぞれ設けられている(図3図6参照)。開口OP1は、p側電極21の長手方向(辺11Aに沿った方向)に沿って形成されており、上面形状が細長い長方形を有している。開口OP1の長手方向の長さは、p側電極21の約半分の長さである。
【0030】
また、第1の絶縁層24には、n側電極22の各々の一部を露出する開口OP2がそれぞれ設けられている(図3図6参照)。開口OP2は、n側電極22の長手方向(辺11Aに沿った方向)に亘って形成されており、上面形状が細長い長方形を有している。開口OP2の長手方向の長さは、n側電極22の約半分の長さである。
【0031】
開口OP1及び開口OP2は、一対の辺11Bに平行でありかつ一対の辺11Aを二等分する線を境に下側(図1の3-3線側)及び上側(図1の4-4線側)にそれぞれ別れて設けられている。
【0032】
第1の絶縁層24上には、第1の電極パッド26が形成されている。第1の電極パッド26は、上面形状が辺11Bに沿った方向を長手方向とする長方形を有し、上述した第1の絶縁層24の開口OP1の各々から露出しているp側電極21を覆うように形成されている電極パッドである。
【0033】
第1の電極パッド26は、n型半導体層17の第1の部分17A上に配列されている発光素子部LPのうち、辺11Bに沿って並んでいる一端側の発光素子部LPに形成されている第1の絶縁層24から、開口OP1から露出しているp側電極21の各々を覆いつつ、他端側の発光素子部LPに形成されている第1の絶縁層24に至るまで形成されている。
【0034】
すなわち、第1の電極パッド26は、開口OP1から露出しているp側電極21を介して、p型半導体層19と電気的に接続されている。従って、第1の電極パッド26は、外部からの電力の供給を受けてp側電極21を介してp型半導体層19に電圧を印加するアノード電極として機能する。
【0035】
第1の電極パッド26は、第1の絶縁層24及び第1の絶縁層24の開口OP1から露出しているp側電極21の表面に、Ni、Ag(又はAl)、Ti、Pt及びAuがこの順で積層されて形成されている。
【0036】
第1の絶縁層24上には、第1の電極パッド26と離隔して第2の電極パッド27が形成されている。第2の電極パッド27は、上面形状が辺11Bに沿った方向を長手方向とする長方形を有し、上述した第1の絶縁層24の開口OP2の各々から露出しているn側電極22を覆うように形成されている電極パッドである。
【0037】
第2の電極パッド27は、n型半導体層17の第1の部分17A上に配列されている発光素子部LPのうち、辺11Bに沿って並んでいる一端側の発光素子部LPに形成されている第1の絶縁層24から、開口OP2から露出しているn側電極22の各々を覆いつつ、他端側の発光素子部LPに形成されている第1の絶縁層24に至るまで形成されている。
【0038】
すなわち、第2の電極パッド27は、開口OP2から露出しているn側電極22を介して、n型半導体層17と電気的に接続されている。従って、第2の電極パッド27は、外部からの電力の供給を受けてn側電極22を介してn型半導体層17に電圧を印加するカソード電極として機能する。
【0039】
第2の電極パッド27は、第1の絶縁層24及び第1の絶縁層24の開口OP2から露出しているn側電極22の表面に、Ni、Ag(又はAl)、Ti、Pt及びAuがこの順で積層されて形成されている。
【0040】
なお、第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27のAuの表面にTi層を設けることもできる。表面Ti層は、後述する第2の絶縁層29の密着性を向上することができる。なお、開口OP3の表面のTi層は、開口OP3の形成時に除去されて開口OP3の表面層はAuとなる。
【0041】
なお、第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27を構成するAg層は、発光素子部LPの各々の発光層18から放出されて第1の絶縁層24の外側に滲み出ようとする青色光を反射させる反射層として機能する。また、Ag(又はAl)層上のTi及びPt層は、当該Ti層上のAu層の一部がAg(又はAl)層に拡散することを防ぐバリア層としても機能する。
【0042】
第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27の周縁とその周囲の第1の絶縁層24上には、絶縁性を有するSiOからなる第2の絶縁層29が形成されている。第2の絶縁層29は、第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27の周縁を除く領域を露出する一対の開口OP3を有している。
【0043】
第2の絶縁層29は、開口OP3から露出している第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27の上面形状がそれぞれ辺11Bに沿った方向を長手方向とする長方形となるように第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27を覆っている。
【0044】
また、第2の絶縁層29は、第1の電極パッド26と第2の電極パッド27とを絶縁している。従って、発光素子部LPは、第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27を介してのみ外部と導通可能になっている。
【0045】
[ワイヤグリッド]
次に、図1及び図7を用いて、ワイヤグリッド15について説明する。ワイヤグリッド15は、素子基板11の上面11USにおいて各々が周期的に列をなして配されかつ直線状を有する複数の金属体から構成される。
【0046】
ワイヤグリッド15は、発光素子100を上から見た平面視において、金属体の各々が上述した発光素子部LPにおける二組の側面のうちの一組の側面と90°以外の角度θで交差する方向に傾斜しつつ辺11Aから辺11Bまで伸長して構成される。言い換えれば、ワイヤグリッド15は、発光素子部LPの一組の側面と直交及び平行以外の角度を持って形成されている。
【0047】
具体的には、ワイヤグリッド15は、発光素子100を上から見た平面視において、発光素子部LPの一組の側面とθ=45°の角度で交差している。言い換えれば、ワイヤグリッド15は、発光素子部LPにおける一組の側面の互いに向かい合う方向と実質的にθ=45°の角度で交差している。
【0048】
発光層18から放出されてワイヤグリッド15に到達した青色光のうち、振動方向がワイヤグリッド15の長手方向に直交する偏光成分であるTM偏光はワイヤグリッド15を透過し、振動方向がワイヤグリッド15の長手方向に平行な偏光成分であるTE偏光はワイヤグリッド15によって反射される。すなわち、ワイヤグリッド15は、特定の方向のみに振動する光だけを透過し、それ以外の方向に振動する光を反射する偏光子として機能する。
【0049】
発光素子100において、ワイヤグリッド15はAlからなる。また、ワイヤグリッド15を構成する金属体の各々の幅Wは70nmであり、ワイヤグリッド15の素子基板11の上面11USからの高さHは175nmである。また、ワイヤグリッド15の周期Pは140nmである。なお、上述した幅W、高さH及び周期Pは、発光層18から放出される光の波長において後述する透過率及び消光比(図8参照)が高くなるように適宜設定できる。
【0050】
なお、ワイヤグリッド15を構成する金属体としては、上述したAl単体のほか、Alの表面に数nm程度の厚みを有するNi、Ti又はクロム(Cr)を形成したものを用いてもよい。
【0051】
発光素子100において、ワイヤグリッド15の表面及びワイヤグリッド15から露出している素子基板11の上面11USには、透明な薄膜である保護膜31が形成されている(図7参照)。言い換えれば、保護膜31は、ワイヤグリッド15の形状に沿って素子基板11の上面11US全体を覆っている。
【0052】
保護膜31は、ワイヤグリッド15が損傷することを防ぎつつワイヤグリッド15を透過するTM偏光の透過率が低下しない程度の厚みを有する。保護膜31の厚みは、例えば20nmである。保護膜31は、例えばAlやSiOなどの発光層から放出される青色光に対して透光性を有する材料からなる。
【0053】
[発光素子100から出射される偏光の強度向上]
ここで、図3を用いて、発光素子100のワイヤグリッド15を介して出射される偏光の強度の向上について説明する。
【0054】
上述したように発光素子部LPの発光層18の各々に電流が流れた際には、当該発光層18から青色光である光L1(図中実線)が放出される。発光層18から放出されたままの光L1は、振動方向がランダムな状態である無偏光の光である。以下、光L1は素子基板11の上面11USに対して垂直な光であるものとして説明する。
【0055】
光L1が素子基板11の上面11USに到達した際には、振動方向がワイヤグリッド15の長手方向に直交する偏光成分であるTM偏光の光L2(図中破線)のみがワイヤグリッド15を透過していく、すなわち発光素子100から出射される。一方で、振動方向がワイヤグリッド15の長手方向に平行な偏光成分であるTE偏光の光L3(図中一点鎖線)は、ワイヤグリッド15によって反射される。
【0056】
ワイヤグリッド15によって反射された光L3は、半導体構造層13の発光素子部LPに進行した際に、発光素子部LPの一組の側面のうちの一方の側面によって反射され、当該側面と向かい合う他方の側面によってさらに反射される。
【0057】
具体的には、光L3は、発光素子部LPにおいて互いに向かい合う側面が共にθL=45°の角度で内側に傾斜していることにより、一組の側面のうちの一方の側面によって素子基板11の上面11USに平行な方向に反射され、他方の側面によって再び素子基板11の上面11USに垂直な方向に反射されてワイヤグリッド15に向かう。すなわち、光L3は、θL=45°の角度で傾斜している側面によって2回の対称反射がなされて再び同じ向きに進行する、いわゆる回帰反射がなされる。
【0058】
このとき、回帰反射された光である光L4(図中破線)は、振動方向が90°回転している。すなわち、ワイヤグリッド15によって反射されたときにはTE偏光であった光L3は、交差角度θ(例えば45°)の関係にある2つの発光素子部LPの側面によって回帰反射されることで光L3の振動方向が90°回転されてTM偏光である光L4として再びワイヤグリッド15に進行する。
【0059】
従って、ワイヤグリッド15に到達した光L4は、振動方向がワイヤグリッド15の長手方向に直交しているためにワイヤグリッド15を透過する。よって、発光素子100からは、無偏光の光L1のうちワイヤグリッド15を透過した光L2と発光素子部LPの側面によって回帰反射された光L4とが出射される。
【0060】
従って、本実施例においては、上述した構成によって互いに振動方向が揃ったTM偏光である光L2と光L4とを出射させることができるために、発光素子100の光出力を向上させることができる。よって、本実施例の発光素子100によれば、常に高い出力で光出射させることができる。
【0061】
なお、本実施例においては、発光層18から光L1が素子基板11に垂直な方向に放出された場合について説明したが、光L1が素子基板11に垂直な方向に対して数度の傾きを有している場合においても上述した効果と同様の効果が得られる。すなわち、ワイヤグリッド15を透過した光L2と発光素子部LPの側面によって回帰反射された光L4とにより発光素子100の光出力を向上させることができる。
【0062】
本実施例において、ワイヤグリッド15の発光素子部LPの側面との交差角度θは、
40°以上50°以下であることが好ましく、45°が最も好ましい。すなわち、角度θが45°から±5°程度ずれている場合においても、側面に入射する偏光成分の大部分の振動方向を90°回転させることができるために、光L2と併せて発光素子100の光出力を高く維持することができる。
【0063】
なお、本実施例における発光素子部LPの形成態様はこれに限られず、発光素子部LPの数を増やしてもよく、また減らしてもよい。例えば、n型半導体層17の第1の部分17Aの中央部に発光素子部LPを1つ設ける態様としてもよい。また、例えば発光素子部LPは四角錘台以外の錐台形状を有していてもよい。
【0064】
本実施例においては、素子基板11がサファイア(α―Al)、窒化ガリウム(GaN)または窒化アルミニウム(AlN)からなり、半導体構造層13がGaN系からなるとしたが、当該構成は発光素子100から出射させる光の種類に応じて適宜変えることができる。例えば、紫外系とする場合にはAlGaNや窒化インジウムガリウム(InGaN)系の半導体構造層13を、赤外系とする場合には砒化ガリウム(GaAs)からなる素子基板11及びGaAlAs系の半導体構造層13を適用するとしてもよい。
【0065】
[発光素子の製造方法]
以下に、本実施例における発光素子100の製造方法について説明する。予め、成長用基板としての素子基板上に、n型半導体層、発光層及びp型半導体層の各々が平板状に形成された半導体構造層形成済み素子基板を準備する。
【0066】
まず、素子基板上において発光素子部LPを形成する(ステップS1:発光素子部形成工程)。具体的には、発光素子部LPの傾斜角度に対応する傾斜斜面を有するレジストマスクをp型半導体層上に形成し、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)法又は高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)法にて、p型半導体層のレジストマスクが形成されていない部分をn型半導体層が露出するまでエッチング処理する。その後、残存するレジストマスクを除去して発光素子部LPを形成する。
【0067】
ステップS1において、傾斜斜面を有するレジストマスクは、レジストを全面に塗布した後にプリベイクをレジストの規定値より低温かつ長時間で行い、かつレジストの現像後にポストベイクを行う際に処理温度及び処理時間を調整することで得られる。具体的には、例えば処理温度115℃、処理時間120秒の条件にてポストベイクを行うことにより、端部が45°の角度で傾斜するレジスト層を形成することができる。
【0068】
次に、n型半導体層17の第1の部分17Aにn側電極22を形成する(ステップS2:n側電極形成工程)。具体的には、まず、第1の部分17Aにおける隣り合う発光素子部LPの間にn側電極22の形状に開口したレジストマスクを形成し、電子ビーム(EB)蒸着にてTi、Al、Pt及びAuをそれぞれ所定の厚みでこの順で積層する。その後、リフトオフにてレジストマスクを除去することで、n側電極22以外の金属層が除去されてn側電極22が残存する。これによりn側電極22を形成することができる。
【0069】
次に、p型半導体層19の頂面にp側電極21を形成する(ステップS3:p側電極形成工程)。具体的には、まず、p型半導体層19の頂面にp側電極21の形状に開口したレジストマスクを形成し、EB蒸着にてNi、Ag、Pt及びAuをそれぞれ所定の厚みでこの順で積層する。その後、リフトオフにてレジストマスクを除去することで、p側電極21以外の金属層が除去されてp側電極21が残存する。これによりp側電極21を形成することができる。
【0070】
次に、n型半導体層17の第1の部分17Aと発光素子部LPとを覆う第1の絶縁層24を形成する(ステップS4:第1の絶縁層形成工程)。具体的には、まず、p側電極21及びn側電極22を含む第1の部分17A及び発光素子部LPの表面全体に、スパッタ装置を用いてSiOからなる絶縁層を形成する。
【0071】
その後、形成した絶縁層において上述した開口OP1及び開口OP2に相当する部分を開口したレジストマスクを形成し、緩衝フッ酸(バッファードフッ酸)溶液を用いて上記開口部分のSiOをエッチング除去する。このとき、下層の表面のAuによってエッチングが停止する。その後、エッチング液を除去することにより、開口OP1及び開口OP2を有する第1の絶縁層24を形成することができる。
【0072】
次に、第1の絶縁層24上に第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27を形成する(ステップS5:第1の電極パッド及び第2の電極パッド形成工程)。具体的には、まず、第1の絶縁層24上に第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27の形状に開口したレジストマスクを形成し、EB蒸着にてNi、Ag、Ti、Pt及びAuをそれぞれ所定の厚みでこの順で積層する。その後、リフトオフにてレジストマスクを除去することで、第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27以外の金属層が除去されて第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27が残存する。これにより第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27を形成することができる。
【0073】
次に、第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27の周縁を覆う第2の絶縁層29を形成する(ステップS6:第2の絶縁層形成工程)。具体的には、まず、第1の絶縁層24及び第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27の表面全体に、スパッタ装置を用いてSiOからなる絶縁層を形成する。
【0074】
その後、上述した開口OP3に相当する大きさの開口部分を有するレジストマスクを形成し、緩衝フッ酸(バッファードフッ酸)溶液を用いて上記開口部分のSiOをエッチング除去する。このとき、下層の表面のAuによってエッチングが停止する。その後、エッチング液を除去して第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27を露出させることにより、第2の絶縁層29を形成することができる。ここまでの工程により、図3図6に示す態様の半導体構造層13を製造することができる。
【0075】
次に、素子基板11の上面11USにワイヤグリッド15を形成する(ステップS7:ワイヤグリッド形成工程)。具体的には、まず、素子基板11の下面11LS側、すなわち半導体構造層13形成面側に保護板をワックスで貼り付け、上面11USの全面にEB蒸着にてAl層を170nm~180nmの厚みで形成する。
【0076】
その後、形成したAl層の全面に光硬化レジストを塗布し、当該レジスト面にグリッド形状に加工された型(グリッド型)を押圧する。そして、この上から紫外線を照射してレジストを硬化させた後にグリッド型を剥離することによってグリッド状のレジストマスクが完成する(インプリント法)。その後、RIE法ICP法にて、グリッド以外のAlを除去し、残存するレジストマスクを除去することにより、ワイヤグリッド15を形成することができる。
【0077】
その後、ワイヤグリッド15及びワイヤグリッド15から露出している素子基板11の上面11USに保護膜31を形成する(ステップS8:保護膜形成工程)。具体的には、ワイヤグリッド15及びワイヤグリッド15から露出している素子基板11の上面11USに対して、原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)装置を用いてAl又はSiOを所定の厚みで成膜することにより、保護膜31を形成することができる。
【0078】
ステップS8の後に、ステップS7にて貼り付けた保護板を取り外し、不要なワックスを除去することで、図7に示す保護膜31を有するワイヤグリッド15を形成することができる。なお、発光層18から出射される光が可視光又は赤外光の場合は、保護膜31をエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂などの樹脂材で形成することもできる。
【0079】
最後に、複数の発光素子が形成されたウェハをレーザーダイシング等で個々の発光素子単位に個片化する(ステップS9:個片化工程)。以上、上述したステップS1~S9の工程により、本実施例に示した発光素子100を得ることができる。
【0080】
[検証]
ここで、図8を用いて、上述したワイヤグリッド15の好ましいグリッド高さHについて説明する。図8は、グリッド高さHを変えた際のワイヤグリッド15から出射される光の透過率及び消光比をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【0081】
図8においては、横軸がワイヤグリッド15のグリッド高さH、左縦軸がグリッド無し(透過率1.0)に対する透過率(図中●プロット)、右縦軸が消光比(図中▲プロット)をそれぞれ示している。ここで、消光比とは、ワイヤグリッド15を透過したTE偏光に対するワイヤグリッド15を透過したTM偏光の比である。
【0082】
本シミュレーションにおいては、ガラス基板上にグリッド周期P140nm、グリッド幅W70nmのワイヤグリッド15を形成したものをモデルとして使用し、当該モデルに入射させる光の波長を550nmとした。
【0083】
図8より、ワイヤグリッド15を透過する光の透過率は、グリッド高さHが175nmで最大となり、175nmよりも低く又は高くなると小さくなることがわかる。また、消光比は、グリッド高さHが高くなるほど大きくなることがわかる。従って、グリッド高さHは、透過率が最大となる175nmとするのが好ましい。
【0084】
[実施例の発光素子を用いた発光装置]
以下、図9及び図10を用いて、本実施例における発光素子100の使用例としての発光装置110について説明する。図9は、発光装置110の上面図である。図10は、図9における発光装置110の10-10線に沿った断面図である。
【0085】
[発光装置の概要]
発光装置110は、装置基板33と装置基板33上に配された2つの半導体発光素子である発光素子100A及び発光素子100Bと装置基板33上において発光素子100A及び発光素子100Bを封止する封止部材35とを有する半導体発光装置である。
【0086】
[装置基板]
装置基板33は、上面形状が矩形の絶縁性を有する板状体である。装置基板33は、例えばガラスエポキシ基板(FR-4)や、Al又はAlNからなるセラミック基板である。
【0087】
装置基板33の上面には、発光素子100A及び発光素子100Bに対するアノード配線としての第1配線37及びカソード配線としての第2配線(図示せず)が形成されている。第1配線37及び第2配線は、装置基板33の上面にCu、Ni及びAuがこの順で形成されてなる。
【0088】
装置基板33の下面には、第1配線37及び第2配線の各々と対向するように第1電極38及び第2電極(図示せず)がそれぞれ形成されている。第1配線37と第1電極38、第2配線と第2電極は、それぞれ装置基板33を上下方向に貫通する導通配線39を介して電気的に接続されている。
【0089】
[発光素子]
発光素子100Aは、装置基板33の上面において、第1の電極パッド26及び第2の電極パッド27が導電性を有する接合部材41を介して第1配線37及び第2配線にそれぞれ接合されることで配されている。また、発光素子100Bも発光素子100Aと同様の態様で装置基板33の上面に配されている。すなわち、発光素子100A及び発光素子100Bは、第1電極38及び第2電極を介して外部から電気を供給され得る。
【0090】
[封止部材]
封止部材35は、装置基板33の上面から発光素子100A及び発光素子100Bの側面に亘って連続して形成されている光反射性を有する樹脂部材である。すなわち、上面視において、発光素子100A及び発光素子100Bの各々のワイヤグリッド15のみが封止部材35から露出している。封止部材35は、発光素子100A及び発光素子100Bの側面からの光漏れを抑えることで、発光装置110から出射される光の出力を向上させる。
【0091】
封止部材35は、例えばシリコーン樹脂に酸化チタン(TiO)粒子を含有させて形成される。なお、漏れ光や外部迷光の散乱を防止したい場合には、封止部材35は、シリコーン樹脂にカーボンブラックを含有させて光吸収性を有するように形成することもできる。
【0092】
発光装置110においては、図9に示すように、発光素子100Aのワイヤグリッド15の長手方向DAと発光素子100Bのワイヤグリッド15の長手方向DBとが90°異なるように配されている。すなわち、発光素子100Aから出射されるTM偏光と発光素子100Bから出射されるTM偏光とでは、光の振動方向が90°異なっている。
【0093】
発光素子100Aと発光素子100Bをこのように配置することにより、発光装置110を、例えば、受光素子と組み合わせて、対象物に2つのTM偏光を照射させた際の反射光の強度比で表面状態を検知する光センサなどに用いることができる。
【0094】
なお、発光装置110においては、発光素子100Aと発光素子100Bとで互いにワイヤグリッド15の長手方向が異なるとしたが、勿論同じ方向としてもよい。その場合は、同じ振動方向を有するTM偏光の光出力を向上させることができる。また、どちらか一方のみの発光素子のみにワイヤグリッド15を設ける態様としてもよい。
【0095】
上述と同様に、1つの発光素子のワイヤグリッド15の長手方向を基準に2つの発光素子のワイヤグリッド15を一方方向にそれぞれ60°、120°回転させた3個載せの発光装置とすることもできる。また、1つの発光素子100のワイヤグリッド15の長手方向を基準に3つの発光素子のワイヤグリッド15を一方方向にそれぞれ45°、90°、135°回転させた4個載せの発光装置とすることもできる。言い換えると、1の発光素子のワイヤグリッド15の長手方向の軸を基準として、各々のワイヤグリッド15の長手方向の軸の角度間隔が180°÷n(n=2、3、4、5、6)の倍数となるように他の発光素子を配置した発光装置とすることもできる。
【0096】
このように、ワイヤグリッド15を複数の方向に回転して配置した発光装置とすることにより、複数のTM偏光の光を出射可能な多偏光発光装置を構成することができる。例えば、多偏光発光装置の複数のTM偏光を短周期で切換えて出射することで、照射対象物の姿勢や性状などを、偏光板を有さない1つ若しくは複数の受光部を有する検出器で検出することができる。
【0097】
[発光装置の製造方法]
ここで、発光装置110の製造方法について説明する。予め、発光素子100A及び発光素子100Bを電気的に接続するための種々の配線及び電極が形成された装置基板33を準備する。
【0098】
まず、発光素子100A及び発光素子100Bを装置基板33に実装する(ステップSD1:素子実装工程)。具体的には、まず、装置基板33に設けられた第1配線37及び第2配線上に接合部材となるペーストはんだ(Au-20wt%Sn)を塗布する(スクリーン印刷する)。
【0099】
その後、発光素子100A及び発光素子100Bをペーストはんだ上に載置し、リフロー炉で300℃まで加熱して、ペーストはんだを溶融・固化する。その後、洗浄して発光素子100A及び発光素子100Bの実装が完了する。
【0100】
次に、発光素子100A及び発光素子100Bが実装された装置基板33上に封止部材35を形成する(ステップSD2:封止部材形成工程)。具体的には、まず、装置基板33の外縁に沿って樹脂でダム部分を形成する。その後、当該ダム部分の内側に封止部材35となる粒径200nm~300nmのTiO粒子を32wt%含んだシリコーン樹脂を充填する。このとき、発光素子100A及び発光素子100Bのワイヤグリッド15が露出するようにシリコーン樹脂を充填する。
【0101】
その後、180℃、90分の条件でシリコーン樹脂を加熱・硬化させることにより、封止部材35を形成することができる。なお、上述したように封止部材35に光吸収性を持たせる場合には、シリコーン樹脂にカーボンブラックを含有させた黒色樹脂としてもよい。
【0102】
最後に、複数の発光装置が形成された装置基板をダイシング等で個々の発光装置単位に個片化する(ステップSD3:個片化工程)。以上、上述したステップSD1~SD3の工程により、発光素子100A及び発光素子100Bを備える発光装置110を得ることができる。
【0103】
なお、上述した発光素子100A及び発光素子100Bのほかに保護素子などを設ける場合には、例えば上述したステップSD1~SD3に従って第2配線上に保護素子を実装した後に、金属ワイヤを保護素子と第1配線37とに接合して電気的に接続させることにより製造することができる。
【実施例0104】
次に、図11図14を用いて、実施例2に係る発光素子200について説明する。図11は、実施例2に係る発光素子200の上面図である。図11においては、図の煩雑化を避けるために保護膜31を省略して示している。図12は、実施例2に係る発光素子200を下面側からみた斜視図である。
【0105】
図13は、図11に示した発光素子200の13-13線に沿った断面図である。図14は、図11に示した発光素子200の14-14線に沿った断面図である。なお、図13及び図14においては、ワイヤグリッド15を概略的に示している。
【0106】
発光素子200は、半導体構造層13の構成と半導体構造層13に形成される部材の構成が発光素子100と異なっており、それ以外の点、例えば発光素子部LPの側面の傾斜角度θやワイヤグリッド15の上述した角度θなどは実施例1と同様である。以下の説明においては、実施例1と異なる点について主に説明する。
【0107】
[実施例2に係る発光素子の概要]
実施例2に係る発光素子200は、素子基板11と素子基板11の一方の主面に形成された発光層を含む半導体構造層13と素子基板11の他方の主面に形成された蛍光体層54と蛍光体層54上に形成されたワイヤグリッド15とを含んで構成されるLEDである。
【0108】
[半導体構造層]
発光素子200において、半導体構造層13は、各々の上面形状が正方形を有する四角錘台状の発光素子部LPを有する(図12参照)。発光素子200において、発光素子部LPは、3列それぞれに3つずつマトリクス状に形成されている。
【0109】
発光素子200において、n型半導体層17の第1の部分17Aの周縁領域には、n側電極45が形成されている。n側電極45は、n側電極22と同様に、上面形状が辺11Aに沿った方向を長手方向とする長方形の電極である。n側電極45は、Ti、Al、Pt及びAuがこの順で積層されて形成されている。
【0110】
発光素子200において、第1の絶縁層24には、n側電極45の各々の一部を露出する開口OP4がそれぞれ設けられている(図13参照)。開口OP4は、n側電極45の長手方向(辺11Aに沿った方向)に沿って形成されており、上面形状が細長い長方形を有している。
【0111】
また、発光素子200において、第1の絶縁層24上には、第1の絶縁層24の開口OP1の各々から露出しているp側電極21を覆うように反射電極層47が形成されている。すなわち、反射電極層47は、開口OP1から露出しているp側電極21を介して、p型半導体層19と電気的に接続されている。
【0112】
反射電極層47は、第1の絶縁層24及び第1の絶縁層24の開口OP1から露出しているp側電極21の表面に、Ni、Ag、Ti及びAuがこの順で積層されて形成されている。反射電極層47においては、Ni及びAgからなる金属層が発光層18から放出されて第1の絶縁層24から滲み出る青色光を反射する光反射層として機能する。
【0113】
反射電極層47上には、絶縁性を有するSiOからなる第3の絶縁層48が形成されている。第3の絶縁層48には、第1の絶縁層24の開口OP4上に開口OP4と同じ形状を有する開口OP5が形成されている(図13参照)。すなわち、開口OP4及び開口OP5はn側電極45を露出している。
【0114】
また、第3の絶縁層48には、p側電極21上に形成された反射電極層47を露出する開口OP6が設けられている(図14参照)。開口OP6は、上面形状が辺11Bに沿った方向を長手方向とする長方形となるように形成されている。
【0115】
発光素子200において、第3の絶縁層48上には、互いに離隔するように第1の電極パッド51及び第2の電極パッド52が形成されている。第1の電極パッド51は、上述した開口OP6から露出している反射電極層47に電気的に接続されている。従って、第1の電極パッド51は、発光素子200におけるアノード電極として機能する。
【0116】
また、第2の電極パッド52は、上述した開口OP4及び開口OP5から露出しているn側電極22に電気的に接続されている。従って、第2の電極パッド52は、発光素子200におけるカソード電極として機能する。
【0117】
[蛍光体層]
蛍光体層54は、上面形状が矩形を有し、素子基板11の上面11USに透光性を有する接着層55を介して接合されている平板状の非散乱性かつ透光性の光学部材である。蛍光体層54は、上面視において素子基板11と同一形状を有している。
【0118】
蛍光体層54は、発光層18から放出される青色光によって励起されて黄色蛍光を発する蛍光体粒子を含んでいる。蛍光体層54は、母材としての発光中心(賦活剤)を含まないイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)と、当該母材内にセリウム(Ce)を発光中心として含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)の蛍光体粒子とを含んで構成される。このように、母材と蛍光体粒子の結晶を同じにすることで、光散乱性のない蛍光体層54とできる。なお、蛍光体層54は多結晶体でも単結晶体でもよい。
【0119】
発光素子200においては、蛍光体層54上にワイヤグリッド15が形成されている。従って、ワイヤグリッド15からは、蛍光体層54内で蛍光体粒子を励起せずに蛍光体層54を透過した青色光のうちのTM偏光と蛍光体層54内で生じた黄色蛍光のうちのTM偏光とが透過していく。よって、発光素子200からは青色光と黄色蛍光とが混じり合った白色光が取り出される。
【0120】
発光素子200において、発光素子部LPはマトリクス状に形成されている。従って、その発光素子部LPの各々において、上述したTE偏光(光L3)の振動方向の回転によるTM偏光(光L4)への変換が生じる。すなわち、発光素子部LPの各々において互いに振動方向が揃った光L2と光L4とを出射させることができる。本発明においては、蛍光体層54を非散乱性とすることで、ワイヤグリッド15で反射された光L3が発光素子部LPの側面で反射され光L4へと変換される光路において、光の振動面を乱すことがないので効率のよい変換が可能となる。
【0121】
従って、本実施例においても、ワイヤグリッド15を透過した光L2と発光素子部LPの側面によって回帰反射された光L4とにより発光素子100の光出力を向上させることができる。よって、本実施例の発光素子200によれば、常に高い出力で光出射させることができる。
【符号の説明】
【0122】
100、200、100A、100B 発光素子
110 発光装置
11 素子基板
13 半導体構造層
15 ワイヤグリッド
17 n型半導体層
18 発光層
19 p型半導体層
21 p側電極
22、45 n側電極
24 第1の絶縁層
26、51 第1の電極パッド
27、52 第2の電極パッド
29 第2の絶縁層
31 保護膜
33 装置基板
35 封止部材
37 第1配線
38 第1電極
39 導通配線
41 接合部材
47 反射電極層
48 第3の絶縁層
54 蛍光体層
55 接着層
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