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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138671
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】加締型及び端子圧着装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H01R43/048 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049262
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一馬
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063CB01
5E063CC06
(57)【要約】
【課題】端子付き電線における圧着端子の圧着部にバリを発生しづらくさせるのに有利な加締型を提供する。
【解決手段】加締型10の下型14及び上型16は、それぞれ、圧着形成部112を前後方向に沿わせた状態で接触させる接触面22,32と、接触面22,32の幅方向での一方の端部20b,30bに隣接し、圧着方向の反対方向に凹む凹部23,33と、接触面22,32の幅方向での他方の端部20c,30cに隣接し、圧着方向に突出する凸部24,34と、接触面22,32が設けられている表面20a,30aと、圧着端子110の前部と同一方向を向く前側面20d,30dとが交差する角部を切り欠いた形状の傾斜面25,35とを有する。下型14の凹部23は、上型16の凸部34を係合させ、上型16の凹部33は、下型14の凸部24を係合させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向で互いに近接したときに圧着端子の圧着形成部を電線に圧着させる下型と上型とからなる加締型であって、
前記下型及び前記上型は、それぞれ、前記圧着形成部の軸方向に合わせた前後方向と当該前後方向とは垂直な幅方向とで水平面上の断面が規定される直方体状であり、
前記下型及び前記上型は、それぞれ、
前記圧着形成部を前記前後方向に沿わせた状態で接触させる接触面と、
前記接触面の前記幅方向での一方の端部に隣接し、圧着方向の反対方向に凹む凹部と、
前記接触面の前記幅方向での他方の端部に隣接し、前記圧着方向に突出する凸部と、
前記接触面が設けられている表面と、前記圧着端子の前部と同一方向を向く前側面とが交差する角部を切り欠いた形状の傾斜面と、を有し、
前記下型の前記凹部は、前記上型の前記凸部を係合させ、
前記上型の前記凹部は、前記下型の前記凸部を係合させる、加締型。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記凹部及び前記凸部の各々の一部と交差する、請求項1に記載の加締型。
【請求項3】
圧着端子の圧着形成部を電線に圧着させることで端子付き電線を製造する端子圧着装置であって、
上下方向で互いに近接及び離隔自在に保持され、互いに近接したときに前記圧着形成部を前記電線に圧着させる下型と上型とからなる加締型を備え、
前記加締型は、請求項1に記載の加締型である、端子圧着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加締型及び端子圧着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧着端子の圧着形成部を電線に圧着させることで端子付き電線を製造する端子圧着装置がある。一般に、端子圧着装置では、上下方向で互いに近接及び離隔自在に保持され、互いに近接したときに圧着形成部を塑性変形させることで圧着部を形成する下型と上型とからなる加締型が用いられる。
【0003】
例えば、クローズドバレル型の圧着端子を電線に圧着させるとき、圧着部又はその周囲にバリが発生する場合がある。このようなバリが発生すると、通常、圧着部の外形が大きくなるため、ハウジングに設けられているキャビティに圧着端子が挿入されたときに、キャビティとの意図しない干渉が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1は、圧着形成部と接触する接触面と、圧着形成部の軸方向に合わせた前後方向とは垂直な幅方向での接触面の一方の端部に隣接する凹部と、他方の端部に隣接する凸部とを各々が有する下型及び上型からなる加締型に関する技術を開示している。当該加締型では、下型の接触面に圧着形成部を載置させた状態で下型と上型とが近接すると、下型の凸部は上型の凹部に係合し、上型の凸部は下型の凹部に係合する。そして、下型の接触面と上型の接触面とは、幅方向での両端部にある凸部同士に挟まれた状態で圧着形成部を押圧することで、圧着部を形成する。このとき、各々の凸部は、圧着形成部が幅方向へ延びるように塑性変形することを規制するので、圧着部にバリが発生することを抑止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-42683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている加締型では、圧着形成部を押圧する接触面同士の幅方向の両端部に凸部が設けられていることで、バリの発生をある程度抑止することができるものの、圧着部の前後方向での両端部に多少のバリが発生することもあり得る。
【0007】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、端子付き電線における圧着端子の圧着部にバリを発生しづらくさせるのに有利な加締型及び端子圧着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上下方向で互いに近接したときに圧着端子の圧着形成部を電線に圧着させる下型と上型とからなる加締型であって、下型及び上型は、それぞれ、圧着形成部の軸方向に合わせた前後方向と前後方向とは垂直な幅方向とで水平面上の断面が規定される直方体状であり、下型及び上型は、それぞれ、圧着形成部を前後方向に沿わせた状態で接触させる接触面と、接触面の幅方向での一方の端部に隣接し、圧着方向の反対方向に凹む凹部と、接触面の幅方向での他方の端部に隣接し、圧着方向に突出する凸部と、接触面が設けられている表面と、圧着端子の前部と同一方向を向く前側面とが交差する角部を切り欠いた形状の傾斜面と、を有し、下型の凹部は、上型の凸部を係合させ、上型の凹部は、下型の凸部を係合させる。
【0009】
また、本発明の一態様は、圧着端子の圧着形成部を電線に圧着させることで端子付き電線を製造する端子圧着装置であって、上下方向で互いに近接及び離隔自在に保持され、互いに近接したときに圧着形成部を電線に圧着させる下型と上型とからなる加締型を備え、加締型は、上記の加締型である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子付き電線における圧着端子の圧着部にバリを発生しづらくさせるのに有利な加締型及び端子圧着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る端子圧着装置の斜視図である。
図2】一実施形態に係る加締型の斜視図である。
図3】前側を視認し得る描画角度での下型の斜視図である。
図4】後ろ側を視認し得る描画角度での下型の斜視図である。
図5】近接前の下型及び上型の状態を示す一部断面図である。
図6】圧着時の下型及び上型の状態を示す一部断面図である。
図7】離隔後の下型及び上型の状態を示す一部断面図である。
図8】下型凸部等の前後方向の長さを延長した状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて一実施形態に係る端子圧着装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0013】
図1は、一実施形態に係る端子圧着装置1の斜視図である。以下、説明のために、端子圧着装置1及び当該端子圧着装置1に備わる加締型10に関する各方向を次のように規定する。X方向は、後ろ側から前側に向かう前後方向を示す。Y方向は、水平面上でX方向とは垂直となる幅方向を示す。Z方向は、下側から上側に向かう上下方向を示す。また、X方向に関して「前」又は「後ろ」と表記する場合がある。更に、Z方向に関して「上」又は「下」と表記する場合がある。
【0014】
端子圧着装置1は、電線Wに対して圧着端子110の圧着形成部112を圧着して圧着部113(図6及び図7参照)を形成することにより、端子付き電線100を製造する。
【0015】
電線Wは、導電性を有する銅又はアルミニウム等の金属より成形された複数の芯線W1(図5参照)と、複数の芯線W1を覆う絶縁性の合成樹脂により成形された被覆部W2とを有する。電線Wの端末は、被覆部W2が剥かれ、外部に芯線W1の一部が露出する。
【0016】
圧着端子110は、例えば、銅、アルミニウム、又は、これらの合金等の導電性を有する金属により成形され、スズメッキやクロムメッキ等が施されている。圧着端子110は、被覆部W2が剥かれて外部に露出した芯線W1に圧着される。圧着端子110は、接続部111と、圧着形成部112とを有する。
【0017】
接続部111は、圧着端子110のX方向での前側に位置する円筒部である。接続部111は、相手方端子の相手方接続部と接続されることで、圧着端子110と相手方端子とが電気的に接続される。
【0018】
圧着形成部112は、圧着端子110のX方向での後側に位置する円筒部である。圧着形成部112は、圧着形成部112のX方向に延在し、電線Wの複数の芯線W1が挿通される挿通孔112a(図5参照)を有する。また、圧着形成部112には、圧着形成部112の前側に位置し、圧着形成部112の外周面から径方向の外側に突出するフランジ部112bが連設されてもよい。
【0019】
端子圧着装置1は、基台11と、電線保持部12と、フレーム13と、下型14と、移動規制部15と、上型16と、不図示の駆動手段とを有する。ここで、下型14と上型16とは、本実施形態に係る加締型10を構成する。
【0020】
基台11は、例えば、端子圧着装置1を載置する作業台の上に固定される、直方体等のブロック状の構造体である。
【0021】
電線保持部12は、基台11に固定され、電線Wを載置する第1保持部12aと、Z方向で第1保持部12aに対して近接及び離隔自在に構成され、第1保持部12aに載置された電線Wを保持し得る第2保持部12bとを有する。第1保持部12aは、Y方向の中央に位置し、X方向へ延在する溝12cを有し、溝12cに電線Wを配置することにより、電線WがY方向に沿って移動することを規制する。電線保持部12は、まず、Z方向で第1保持部12aに対して第2保持部12bを離隔させた状態で、第1保持部12aに電線Wを載置させる。その後、電線保持部12は、Z方向に沿って第1保持部12aに対して第2保持部12bを近接させ、最終的に、第1保持部12aと第2保持部12bとで電線Wを挟持させる。第1保持部12aと第2保持部12bとにより電線Wが挟持された状態では、X方向、Y方向又はZ方向の各方向に沿った電線Wの移動が規制される。
【0022】
フレーム13は、基台11に固定され、フレーム本体13aと、フレーム本体13aに対して上型16をZ方向に沿って移動自在に支持するフレーム支持部13bとを有する。
【0023】
図2は、X方向での前側を視認し得る描画角度での加締型10の斜視図である。図2では、下型14に圧着端子110の圧着形成部112が載置され、かつ、圧着形成部112が未だ下型14と上型16とで挟み込まれていない状態での加締型10が示されている。
【0024】
図3は、X方向での前側を視認し得る描画角度での下型14の斜視図である。図4は、X方向での後ろ側を視認し得る描画角度での下型14の斜視図である。
【0025】
下型14は、上型16とともに圧着端子110の圧着形成部112を挟み込んで押圧する一対の金型としての加締型10のうち、基台11に支持される方である。なお、下型14は、アンビルと呼称される場合もある。下型14は、下型本体部20と、下方インデント部21と、下方接触面22とを有する。
【0026】
下型本体部20は、例えば、直方体等のブロック体である。下型本体部20は、Z方向での上端に位置する上面としての下型表面20aを有する。
【0027】
下方インデント部21は、下型本体部20において、下型表面20aにおけるY方向での中央に位置し、かつ、X方向に沿って溝切りされたような凹状部である。
【0028】
下方接触面22は、下方インデント部21の上底面21a上に位置し、圧着端子110の圧着形成部112を載置させる。下方接触面22は、電線Wの先端に対して圧着形成部112を圧着することにより、下方接触面22の形状が圧着部113に転写され、圧着部113の下方部分113aが形成される(図6及び図7参照)。下方接触面22は、下型中央部22aと、一対の下型側底部22bとを有する。下型中央部22aは、Y方向で下型本体部20の中央に位置し、圧着方向に突出する。ここで、下型14に関する圧着方向は、Z方向に沿って下方から上方へ向かう方向である。一対の下型側底部22bは、Y方向で下型中央部22aの両側に位置しつつ、下型中央部22aよりもZ方向の下側へ凹む。
【0029】
また、下型14は、下型凹部23と、下型凸部24と、下型傾斜面25とを有する。
【0030】
下型凹部23は、Y方向で下方接触面22の一方の端部である第1下方端部20bに隣接し、下型本体部20の下型表面20aからZ方向の下側へ凹む。下型凹部23は、底部23a(図5参照)と、Y方向で対向する第1内面23b及び第2内面23cと、X方向で対向する第3内面23d及び第4内面23eとを有する。下型凹部23のX方向の長さは、下方接触面22のX方向の長さよりも長い。
【0031】
下型凸部24は、Y方向で下方接触面22の他方の端部である第2下方端部20cに隣接し、下型本体部20の下型表面20aからZ方向の上側に突出する。なお、下型凸部24は、下方接触面22の真横側で直立する壁部とみなされることから、横壁と呼称される場合もある。下型凸部24は、先端部24aと、Y方向で対向する第1外面24b及び第2外面24cと、X方向で対向する第3外面24d及び第4外面24eとを有する。下型凸部24のX方向の長さは、下方接触面22のX方向の長さよりも長い。
【0032】
下型傾斜面25は、下型表面20aと、圧着端子110の前部である接続部111と同一方向を向く前側面としての下型前側面20dとが交差する角部を切り欠いた形状を有する傾斜面である。本実施形態では、下型傾斜面25は、Y方向で連続する、第1傾斜面25aと、第2傾斜面25bと、第3傾斜面25cとを含む。第1傾斜面25aは、下方インデント部21からZ方向の下側へ傾斜する。第2傾斜面25bは、下型凸部24が形成されている側の下型表面20aからZ方向の下側へ傾斜する。第3傾斜面25cは、下型凹部23が形成されている側の下型表面20aからZ方向の下側へ傾斜する。
【0033】
ここで、下型傾斜面25として、下型表面20aと下型前側面20dとが交差する角部が切り欠かれる大きさは、下型本体部20のその他の角部に形成される一般的な面取りよりも大きい。一例として、本実施形態では、第2傾斜面25bは、下型凸部24の一部と交差する。つまり、下型凸部24のX方向での前側の一部は、第2傾斜面25bに入り込む。同様に、第3傾斜面25cは、下型凹部23の一部と交差する。つまり、下型凹部23のX方向での前側の一部は、第3傾斜面25cに入り込む。
【0034】
移動規制部15は、下型14に対してX方向での前側に位置する。移動規制部15は、規制部本体15aと、一対のフランジ受け部15bとを有する。
【0035】
規制部本体15aは、例えば、直方体等のブロック体である。一対のフランジ受け部15bは、Y方向で間隔を空けつつ、各々、規制部本体15aの上面から上方に向かって突出する。一方のフランジ受け部15bと他方のフランジ受け部15bとの間に圧着端子110の接続部111が挿通されることで、圧着端子110のY方向に沿った移動が規制される。また、下型14の下方接触面22に圧着形成部112が載置された状態では、圧着形成部112のフランジ部112bに一対のフランジ受け部15bがX方向で接触することで、圧着端子110のX方向での前側への移動が規制される。
【0036】
上型16は、加締型10のうち、フレーム13に支持される方である。なお、上型16は、クリンパと呼称される場合もある。上型16は、フレーム支持部13bにより支持され、Z方向で下型14と対向する。また、上型16は、フレーム本体13aに対してフレーム支持部13bがZ方向に沿って移動されることで、下型14に対して近接及び離隔する。ここで、上型16に関する圧着方向は、Z方向に沿って上方から下方へ向かう方向である。上型16の形状は、下型14がYZ平面と平行を維持しつつ180°回転したような形状である。つまり、上型16の主要形状は、下型14の形状と同一である。ただし、下型14と上型16とでは、Z方向の長さ等の相違は存在し得る。
【0037】
また、上型16は、上型本体部30と、上方インデント部31と、上方接触面32とを有する。上型本体部30は、先端部が下型本体部20と同一形状であり、Z方向の長さが下型本体部20の長さよりも長い。上方インデント部31は、下方インデント部21と同一形状であり、Z方向で下方インデント部21と対向する。上方接触面32は、下方接触面22と同一形状であり、Z方向で下方接触面22に対向する。上方接触面32は、電線Wの先端に対して圧着形成部112を圧着することにより、上方接触面32の形状が圧着部113に転写され、圧着部113の上方部分113bが形成される(図6及び図7参照)。
【0038】
更に、上型16は、上型凹部33と、上型凸部34と、上型傾斜面35とを有する。上型凹部33は、下型凹部23と同一形状であり、下型14との近接時には、下型凸部24と係合する。上型凸部34は、下型凸部24と同一形状であり、下型14との近接時には、下型凹部23と係合する。なお、上型凸部34は、下型凸部24と同様に、上方接触面32の真横側で直立する壁部とみなされることから、横壁と呼称される場合もある。
【0039】
上型傾斜面35は、下型傾斜面25と同一形状であり、Y方向で連続する、第1傾斜面35aと、第2傾斜面35bと、第3傾斜面35cとを含む。第1傾斜面35aは、上方インデント部31(図8参照)からZ方向の上側へ傾斜する。第2傾斜面35bは、上型凸部34が形成されている側の下面としての上型表面30a(図5参照)からZ方向の上側へ傾斜する。第3傾斜面35cは、上型凹部33が形成されている側の上型表面30aからZ方向の上側へ傾斜する。
【0040】
また、上型傾斜面35の大きさに関しても、下型傾斜面25と同様に設定され得る。上型傾斜面35として、上型表面30aと上型前側面30dとが交差する角部が切り欠かれる大きさは、上型本体部30のその他の角部に形成される一般的な面取りよりも大きい。一例として、本実施形態では、第2傾斜面35bは、上型凸部34の一部と交差する。つまり、上型凸部34のX方向での前側の一部は、第2傾斜面35bに入り込む。同様に、第3傾斜面35cは、上型凹部33の一部と交差する。つまり、上型凹部33のX方向での前側の一部は、第3傾斜面35cに入り込む。
【0041】
また、駆動手段は、フレーム本体13aに対して、フレーム支持部13bをZ方向に沿って移動させることで、Z方向に沿って下型14に対して上型16を近接及び離隔する。
【0042】
次に、加締型10及び端子圧着装置1による圧着時の基本動作について説明する。
【0043】
図5は、図1中のV-V断面に対応し、端子圧着装置1において、下型14の下方接触面22に圧着端子110の圧着形成部112を載置させつつ、圧着形成部112を電線Wに圧着させる前の下型14及び上型16の状態を示す一部断面図である。
【0044】
図6は、図5に示された状態から上型16を下型14に近接させた後、圧着形成部112を押圧して圧着部113を形成している下型14及び上型16の状態を示す一部断面図である。
【0045】
図7は、図6に示された状態から上型16を下型14から離隔させた後、下型14の下方接触面22上に、最終的に形成された圧着部113が存在している状態を示す一部断面図である。
【0046】
まず、作業者は、電線Wにおける複数の芯線W1を圧着形成部112の挿通孔112aに挿通させる。次に、作業者は、図5に示すように、複数の芯線W1を挿通孔112aに挿通させた状態で、圧着形成部112を下型14の下方接触面22に載置するとともに、電線Wを電線保持部12の第1保持部12aに載置する。次に、作業者は、第1保持部12aに対して第2保持部12bを近接させ、第1保持部12a及び第2保持部12bに電線Wを挟持させる。
【0047】
次に、作業者は、駆動手段を駆動させることで、上型16を下型14に向けて移動させる。この動作により、図6に示すように、上型16が下型14に近接し、圧着形成部112が下型14の下方接触面22と上型16の上方接触面32とで押圧(圧縮)される。このとき、圧着形成部112は、Z方向で圧縮されつつY方向に延び、最終的に、下方接触面22及び上方接触面32の各々の形状が圧着端子110に転写されて、圧着部113が形成される。このように、端子圧着装置1は、圧着端子110の挿通孔112aに挿通させた芯線W1と圧着形成部112とを圧着することで、圧着端子110と電線Wとを一体化させた端子付き電線100を製造することができる。
【0048】
その後、作業者は、駆動手段を再駆動させることで、上型16を下型14から離れる方向に移動させる。この動作により、図7に示すように、上型16と下型14とが離隔される。そして、作業者は、第1保持部12a及び下型14に載置されている端子付き電線100を取り出す。
【0049】
次に、加締型10及び端子圧着装置1の効果について説明する。
【0050】
加締型10は、上下方向で互いに近接したときに圧着端子110の圧着形成部112を電線Wに圧着させる下型14と上型16とからなる。下型14及び上型16は、それぞれ、圧着形成部112の軸方向に合わせた前後方向と前後方向とは垂直な幅方向とで水平面上の断面が規定される直方体状である。
【0051】
下型14は、圧着形成部112を前後方向に沿わせた状態で接触させる接触面としての下方接触面22を有する。下型14は、下方接触面22の幅方向での一方の端部である第1下方端部20bに隣接し、圧着方向の反対方向に凹む凹部としての下型凹部23を有する。下型14は、下方接触面22の幅方向での他方の端部である第2下方端部20cに隣接し、圧着方向に突出する凸部としての下型凸部24を有する。また、下型14は、下方接触面22が設けられている上面としての下型表面20aと、圧着端子110の前部である接続部111と同一方向を向く前側面としての下型前側面20dとが交差する角部を切り欠いた形状の傾斜面としての下型傾斜面25を有する。
【0052】
上型16は、圧着形成部112を前後方向に沿わせた状態で接触させる接触面としての上方接触面32を有する。上型16は、上方接触面32の幅方向での一方の端部である第1上方端部30bに隣接し、圧着方向の反対方向に凹む凹部としての上型凹部33を有する。上型16は、上方接触面32の幅方向での他方の端部である第2上方端部30cに隣接し、圧着方向に突出する凸部としての上型凸部34を有する。また、上型16は、上方接触面32が設けられている下面としての上型表面30aと、圧着端子110の前部である接続部111と同一方向を向く前側面としての上型前側面30dとが交差する角部を切り欠いた形状の傾斜面としての上型傾斜面35を有する。
【0053】
また、下型14の下型凹部23は、上型16の上型凸部34を係合させる。上型16の上型凹部33は、下型14の下型凸部24を係合させる。
【0054】
ここで、上記例示では、上下方向はZ方向に、前後方向はX方向に、幅方向はY方向にそれぞれ対応する。
【0055】
まず、加締型10によれば、下型14と上型16とが近接したとき、下方接触面22と上方接触面32とは、Y方向において下型凸部24と上型凸部34とに挟まれた状態で圧着形成部112を押圧し、圧着形成部112を塑性変形させて圧着部113を形成する。このとき、下型凸部24及び上型凸部34は、圧着形成部112がY方向へ延びるように塑性変形することを規制するので、圧着部113にバリが発生することを抑止させることができる。
【0056】
ここで、下型凹部23と上型凸部34との係合構造、及び、下型凸部24と上型凹部33との係合構造が加締型10に単に存在するのみでは、バリの発生をある程度抑止できたとしても、圧着部113の軸方向での両端部に多少のバリが発生することもあり得る。ここで、圧着部113の軸方向での両端部とは、圧着部113における、X方向での後端部と、フランジ部112bに近接する前端部とをいう。このようなバリの発生を抑止する構造として、例えば、下型凸部24及び上型凸部34の双方でX方向の長さを前方又は後方の一方又は両方に延長することも考えられる。なお、下型凸部24及び上型凸部34の延長に合わせて、各々の係合先である下型凹部23及び上型凹部33のX方向の長さも併せて延長されることになる。下型凸部24及び上型凸部34のX方向の長さを後方に延長した場合、下型凸部24と上型凸部34とで挟まれる後方領域がより広くなるため、圧着部113における後端部でのバリの発生をより抑止しやすくなる。同様に、下型凸部24及び上型凸部34のX方向の長さを前方に延長した場合、下型凸部24と上型凸部34とで挟まれる前方領域がより広くなるため、圧着部113における前端部でのバリの発生をより抑止しやすくなる。
【0057】
ところが、下型凸部24及び上型凸部34のX方向の長さを上記のように延長すると、下型本体部20及び上型本体部30のX方向の長さも長くなる。そのため、下型凸部24及び上型凸部34のX方向の長さを単に延長するのみでは、下型表面20a及び上型表面30aの一部が、圧着部113が形成される部位以外の圧着形成部112の一部位と干渉するおそれがある。ここで、圧着部113が形成される部位以外の圧着形成部112の一部位は、圧着形成部112における、圧着部113の前端部とフランジ部112bとの間にある部位である。
【0058】
これに対して、加締型10では、下型14は、下型表面20aと下型前側面20dとが交差する角部を切り欠いた形状の下型傾斜面25を更に有する。同様に、上型16は、上型表面30aと上型前側面30dとが交差する角部を切り欠いた形状の上型傾斜面35を更に有する。
【0059】
図8は、下型傾斜面25及び上型傾斜面35が設けられている加締型10において、下型凸部24及び上型凸部34のX方向の長さを延長した状態を示す一部断面図である。図8は、下型14の下方接触面22に載置されている圧着形成部112の中心軸を通るXZ平面で切断された図であり、上型16が圧着形成部112に接触する直前の状態として示されている。また、図8では、上方接触面32のX方向の長さL1が表記されている。なお、下方接触面22のX方向の長さについても、長さL1と同一である。
【0060】
まず、図8では、比較のために、X方向に延長されていない場合の長さL3で規定される上型凸部134が二点鎖線で示されている。なお、X方向に延長されていない場合の下型凸部も上型凸部134と同様の形状を有する。この場合、下型凸部及び上型凸部134の長さL3は、下方接触面22及び上方接触面32の長さL1よりも長い。しかしながら、X方向では、例えば、圧着形成部112の後端部は、上型凸部134よりも後方にあるため、このまま圧着形成部112が圧着された場合には、圧着部113の後端部にバリが発生するおそれがある。
【0061】
一方、図8では、X方向に延長された場合の長さL2で規定される上型凸部34が実線と破線との組み合わせで示されている。なお、X方向に延長された場合の下型凸部24も上型凸部34と同様の形状を有する。この場合、X方向では、圧着形成部112の後端部は、上型凸部34よりも大きく後方にあるため、このまま圧着形成部112が圧着されたとしても、圧着部113の後端部にバリが発生しづらい。また、X方向では、上型凸部34は、延長されていない場合の上型凸部134よりも前方に長いため、このまま圧着形成部112が圧着されたとしても、圧着部113の前端部にバリが発生しづらい。更に、下型14には、下型傾斜面25が設けられ、上型16には、上型傾斜面35が設けられている。そのため、このまま圧着形成部112が圧着されたとしても、圧着部113の前端部とフランジ部112bとの間にある部位が下型表面20a及び上型表面30aの一部と干渉しづらい。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、端子付き電線100における圧着端子110の圧着部113にバリを発生しづらくさせるのに有利な加締型10を提供することができる。
【0063】
更に、加締型10では、下型傾斜面25は、下型凹部23及び下型凸部24の各々の一部と交差してもよい。又は、上型傾斜面35は、上型凹部33及び上型凸部34の各々の一部と交差してもよい。
【0064】
この加締型10によれば、下型凸部24及び上型凸部34のX方向の長さをより長く設定しつつ、下型傾斜面25及び上型傾斜面35をより大きく設定することができるので、よりバリを発生しづらくすることができる。
【0065】
また、端子圧着装置1は、圧着端子110の圧着形成部112を電線Wに圧着させることで端子付き電線100を製造する。端子圧着装置1は、上下方向で互いに近接及び離隔自在に保持され、互いに近接したときに圧着形成部112を電線Wに圧着させる下型と上型とからなる加締型を備える。この加締型は、上記の加締型10である。
【0066】
本実施形態によれば、上記説明した加締型10を備えるので、端子付き電線100における圧着端子110の圧着部113にバリを発生しづらくさせるのに有利な端子圧着装置1を提供することができる。
【0067】
なお、上記説明では、端子圧着装置1に採用される加締型10を例示したが、加締型10の構造又は形状は、圧着工具にも採用され得る。
【0068】
以上、各実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 端子圧着装置
10 加締型
14 下型
16 上型
20a 下型表面
20b 第1下方端部
20c 第2下方端部
20d 下型前側面
22 下方接触面
23 下型凹部
24 下型凸部
25 下型傾斜面
30a 上型表面
30b 第1上方端部
30c 第2上方端部
30d 上型前側面
32 上方接触面
33 上型凹部
34 上型凸部
35 上型傾斜面
100 端子付き電線
110 圧着端子
111 接続部
112 圧着形成部
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8