(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138673
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】給電装置及びそれを有するワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20241002BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049266
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 昇平
(72)【発明者】
【氏名】山下 隼人
【テーマコード(参考)】
5G371
【Fターム(参考)】
5G371AA01
5G371CA03
(57)【要約】
【課題】本体筒部に対するハーネス導出部の回転範囲を容易に設定変更することができる、給電装置を提供すること。
【解決手段】給電装置1は、本体筒部2と、一端が本体筒部2の他端に回転可能に取り付けられるハーネス導出部3とを備えている。ハーネス導出部3は、その回転軸を中心とする環状軸壁35をその一端に有すると共に、回転軸から環状軸壁35に向けて放射外方に延設された突片37Xを有している。本体筒部2は、その他端に、環状軸壁35を回転可能に保持する軸収納環状壁25を有すると共に、軸収納環状壁25の底部に脱着可能かつ回転不能に取り付けられた回転角度設定部材27を有している。回転角度設定部材27は、ハーネス導出部3の回転範囲の両端でそれぞれ突片37Xと当接する一対のストッパ突部27cを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置であって、
一端にハーネス導入開口が形成された本体筒部と、
一端が前記本体筒部の他端に回転可能に取り付けられると共に他端にハーネス導出開口が形成されたハーネス導出部とを備えており、
前記ハーネス導出部が、その回転軸を中心とする環状軸壁をその前記一端に有すると共に、前記回転軸から前記環状軸壁に向けて放射外方に延設された突片を有しており、
前記本体筒部が、その前記他端に、前記環状軸壁を回転可能に保持する軸収納環状壁を有すると共に、前記軸収納環状壁の底部に脱着可能かつ回転不能に取り付けられた回転角度設定部材を有しており、
前記回転角度設定部材が、前記ハーネス導出部の回転範囲の両端でそれぞれ前記突片と当接する一対のストッパ突部を備えている、給電装置。
【請求項2】
前記ハーネス導出部の回転可能角度が0°であり、
一対の前記ストッパ突部の一方は、前記ハーネス導出部の前記回転軸を中心とする一方の回転方向で前記突片と当接し、他方は前記ハーネス導出部の前記回転軸を中心とする他方の回転方向で前記突片と当接する、請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記軸収納環状壁が、対向して設けられた一対の係止片を有すると共に、
前記回転角度設定部材が、一対の前記係止片とそれぞれ係止する一対の被係止部を有しており、かつ、
前記軸収納環状壁及び前記回転角度設定部材の一方に回転規制のための規制凸部が形成されると共に他方に当該規制凸部が嵌まる規制凹部が形成されている、請求項1又は2に記載の給電装置。
【請求項4】
前記回転角度設定部材に、前記回転軸を含む板状のノブが形成されている、請求項3に記載の給電装置。
【請求項5】
ワイヤハーネスであって、
当該ワイヤハーネスが内部に挿通された外装部材と、
請求項1又は2に記載の給電装置と、を備えており、
前記外装部材の一部が、前記ハーネス導出部の内部に形成されたハーネス導出室に保持されている、ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置及びそれを有するワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、給電具及びそれを備えたワイヤハーネスを開示している。特許文献1に開示された給電具は、本体筒部とこの本体筒部に回転可能に取り付けられたハーネス導出部とで構成されている。給電具は、車両のスライドドアやバックドアの近傍に取り付けられ、これらのドアの開閉に伴ってワイヤハーネスの導出方向を変化させる。スライドドアやバックドアが開かれると給電具に対してワイヤハーネスの導出先であるドアの位置が変わるので、給電具は、ドアの位置が変わると本体筒部に対してハーネス導出部が回転してワイヤハーネスの導出方向が変わるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給電具のハーネス導出部からは、その回転軸に垂直な方向に突出する突起が設けられている。一方、本体筒部には、ハーネス導出部の回転範囲の両端に対応させて、上述した突起とそれぞれ当接するストッパが設けられている。突起がストッパに当接することで、ハーネス導出部の回転が規制され、ハーネス導出部の回転範囲が規定される。異なる回転範囲の給電装置を作成したい場合は、ストッパの位置を変えた本体筒部を新たに制作する必要がある。
【0005】
給電装置(本体筒部及びハーネス導出部)は、樹脂の射出成形で製造されるのが一般的である。この場合、回転範囲の異なる、即ち、ストッパの位置を変えた本体筒部を新たに制作するには、本体筒部のための新たな成形金型を制作しなければならない。樹脂の射出成形でなくても、本体筒部を制作し直す必要が生じる。給電装置は、車両のスライドドアやバックドアへのワイヤハーネスの配策などに用いられるが、車種が変わるとハーネス導出部の回転範囲を変える必要が生じる。このため、特許文献1に開示された給電装置では、車種ごとに異なる回転範囲に合わせて本体筒部(その成形金型)を制作する必要があり、制作に必要な日程が長くなると共に制作コストもかかるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、本体筒部に対するハーネス導出部の回転範囲を容易に設定変更することができる給電装置と、この給電装置を有するワイヤハーネスとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給電装置は、一端にハーネス導入開口が形成された本体筒部と、一端が前記本体筒部の他端に回転可能に取り付けられると共に他端にハーネス導出開口が形成されたハーネス導出部とを備えており、前記ハーネス導出部が、その回転軸を中心とする環状軸壁をその前記一端に有すると共に、前記回転軸から前記環状軸壁に向けて放射外方に延設された突片を有しており、前記本体筒部が、その前記他端に、前記環状軸壁を回転可能に保持する軸収納環状壁を有すると共に、前記軸収納環状壁の底部に脱着可能かつ回転不能に取り付けられた回転角度設定部材を有しており、前記回転角度設定部材が、前記ハーネス導出部の回転範囲の両端でそれぞれ前記突片と当接する一対のストッパ突部を備えている。
【0008】
本発明に係るワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスが内部に挿通された外装部材と、上述した給電装置と、を備えており、前記外装部材の一部が、前記ハーネス導出部の内部に形成されたハーネス導出室に保持されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る給電装置、又は、当該給電装置を有するワイヤハーネスによれば、本体筒部に対するハーネス導出部の回転範囲を容易に設定変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】上記給電装置のハーネス導出部の取付部の拡大分解斜視図である。
【
図4】上記ハーネス導出部(回転範囲70°)の平面図である。
【
図5】上記ハーネス導出部(回転範囲0°)の平面図である。
【
図6】上記給電装置の角度調整部材の第一例(回転範囲40°)の平面図である。
【
図7】上記角度調整部材の第二例(回転範囲70°)の平面図である。
【
図8】上記角度調整部材の第三例(回転範囲100°)の平面図である。
【
図9】上記角度調整部材の第四例(回転範囲0°:中心線は規制凸部27bを通らない)の平面図である。
【
図10】上記角度調整部材の第五例(回転範囲0°中心線は規制凸部27bを通る)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施形態に係る給電装置について詳細に説明する。なお、下記の説明における「上下左右」については説明のための図中の上下左右であり、給電装置を設置する向きを限定するものではない。
【0012】
図1~
図4を参照しつつ、実施形態に係る給電装置1について説明する。給電装置1は、後述するほぼ全ての部材が樹脂の射出成形によって形成されている。給電装置1は、ワイヤハーネスW(
図1参照)を収納するために内部が空洞で、その一端にハーネス導入開口1Iが形成されていると共に、その他端にハーネス導出開口1Oが形成されている。
【0013】
本実施形態の給電装置1は、車両のスライドドア(図示せず)のために車体に取り付けられており、スライドドアに接続されるワイヤハーネスWの導出方向を変化させる。ワイヤハーネスWは、複数の電線が束ねられて構成されており、スライドドアに設けられたモータやランプへの電力供給線を含んでいる。ワイヤハーネスWは、スライドドアに設けられたスイッチやセンサの信号を車体に取り付けられたコントロールユニットとの間で送受信する信号線をさらに含んでいてもよい。ワイヤハーネスWは、コルゲートチューブなどの外装部材T(
図1参照)を有している。外装部材Tは、給電装置1から導出されたワイヤハーネスWを保護する。
【0014】
給電装置1は、車体に固定される本体筒部2と、本体筒部2に回転可能に取り付けられるハーネス導出部3とを備えている。スライドドアの開閉によって車体とスライドドアとの位置関係が変わるので、ハーネス導出部3は、変化する位置関係に追従して回転することで、ワイヤハーネスWの導出方向を変える。本体筒部2の一端に上述したハーネス導入開口1Iが形成されており、他端にはハーネス延出開口20が形成されている。本体筒部2は、やや湾曲した四角形断面の筒形状を有しており、その内部にはハーネス収納室21が形成されている。
【0015】
本体筒部2は、樋状のハウジング2aとハウジング2aの上部開放部を閉じるカバー2bとで構成されている。ハウジング2aの上部開放部の四隅には係止爪22が設けられており、カバー2bの四隅には係止爪22に対応する係止孔23が形成されている。係止爪22と係止孔23とを係止することで、筒形状の本体筒部2が形成される。このように本体筒部2が二分割可能であるため、両端に既にコネクタが取り付けられているワイヤハーネスWであってもハーネス収納室21に収納させることができる。
【0016】
また、ハウジング2aの底部外側には、本体筒部2を車体に固定するための固定孔24が設けられている。固定孔24には、ボルト締結部の補強として金属カラーが取り付けられている(又はインサート成形されている)。本体筒部2に回転可能に取り付けられるハーネス導出部3は、上述したハーネス延出開口20に取り付けられる。本体筒部2のハーネス延出開口20から延出されるワイヤハーネスWは、そのまま連続的にハーネス導出部3の内部に挿入される。ハーネス導出部3は、給電装置1からワイヤハーネスWを導出させる部分である。
【0017】
ハーネス導出部3の一端に上述したハーネス延出開口20と連通するハーネス挿入開口30が形成されており、他端には上述したハーネス導出開口1Oが形成されている。ハーネス導出部3は筒形状を有しており、その内部にはハーネス導出室31が形成されている。ハーネス導出室31の内面には、導出されるワイヤハーネスWの外装部材Tの端部を保持する複数のリブ34が形成されている。本実施形態の外装部材Tはコルゲートチューブであり、その表面には凹凸が形成されており、リブ34はこの凹部を係止することで外装部材Tの端部を保持する。
【0018】
ハーネス導出部3は、樋状の下部ハウジング3aと下部ハウジング3aの上部開放部を閉じる上部ハウジング3bとで構成されている。上部ハウジング3bの両側壁には、それぞれ係止爪32が設けられており、下部ハウジング3aには係止爪32に対応する係止孔33が形成されている。係止爪32と係止孔33とを係止することで、下部ハウジング3a及び上部ハウジング3bとによって筒形状のハーネス導出部3が形成される。このようにハーネス導出部3が二分割可能であるため、両端に既にコネクタが取り付けられているワイヤハーネスWであってもハーネス導出室31に収納させることができる。
【0019】
ハーネス導出部3の一端には、互いに反対方向外方に突出された一対の回転軸柱35及び36が形成されている。以下、下部ハウジング3aに形成された回転軸柱35については、環状軸壁35とも呼ぶ。なお、上部ハウジング3bに形成された回転軸柱36の上部は塞がれている。一対の回転軸柱35及び36に対応させて、本体筒部2の他端には、回転軸柱35及び36を回転可能にそれぞれ収納する一対の軸受筒部25及び26が形成されている。以下、ハウジング2aに形成された軸受筒部25については、軸収納環状壁25とも呼ぶ。なお、カバー2bに形成された軸受筒部26の上部は塞がれている。
【0020】
この構造により、ハーネス導出部3の一端は、本体筒部2の他端においてハウジング2a及びカバー2bに回転可能に挟止される。ハーネス導出部3の回転軸O(
図3参照)は、回転軸柱35及び36並びに軸受筒部25及び26の中心を通る。また、このような構造とすることで、本体筒部2の他端のハーネス延出開口20とハーネス導出部3の一端のハーネス挿入開口30との間に何も介在させずに回転軸Oを設定できる。即ち、ワイヤハーネスWは、本体筒部2内のハーネス収納室21からハーネス導出部3内のハーネス導出室31へと何にも邪魔されずにほぼ直線的に延設され得る。
【0021】
なお、ハーネス導出部3の回転軸O回りの回転を許容できる程度に、ハーネス延出開口20の開口面積は大きい。一方、ハーネス挿入開口30が形成されるハーネス導出部3の一端はハーネス延出開口20よりも本体筒部2の内部に位置するため、ハーネス挿入開口30の開口面積は、ハーネス延出開口20の開口面積よりも小さくなる。
【0022】
ワイヤハーネスWを給電装置1に組み付けるには、まず、ハーネス導出部3の上部ハウジング3b及び下部ハウジング3aで挟み込み、ワイヤハーネスWをハーネス導出部3のハーネス導出室31に挿通させる。このとき、ワイヤハーネスWは、外装部材Tの端部がハーネス導出部3の内部のリブ34に係止されることで、ハーネス導出部3に保持される。このため、ハーネス導出部3のハーネス導出開口1Oから導出されたワイヤハーネスWは、その外装部材Tによって保護される。次に、ハーネス導出部3の回転軸柱(環状軸壁)35が本体筒部2の軸受筒部(軸収納環状壁)25に回転可能に保持されるように、ワイヤハーネスWを本体筒部2のハーネス収納室21に収納する。ワイヤハーネスWの他端は、本体筒部2のハーネス導入開口1Iから延出される。その後、ハーネス導出部3の回転軸柱36が本体筒部2の軸受筒部26に回転可能に保持されるように、本体筒部2のカバー2bがハウジング2aに取り付けられる。
【0023】
なお、ここでは、ワイヤハーネスWの外装部材Tは給電装置1から導出された部分に取り付けられると説明した。しかし、本実施形態のワイヤハーネスWは、給電装置1の内部では迂回されたりせずにほぼ直線状に延設されるので、ワイヤハーネスWは給電装置1に収納される範囲の全てに外装部材Tを有していてもよい。
【0024】
次に、ハーネス導出部3の回転範囲R(
図4参照)を規定する構造について説明する。ハーネス導出部3の回転軸Oを中心とする環状軸壁35の内部には十字状に壁部37が設けられている。四つの壁部37の交差部に回転軸Oが位置している。環状軸壁35は、回転軸Oに平行な環状壁である。十字状に配置された壁部37は、回転軸Oから環状軸壁35の内周面へと間隔に放射状に延設される。言い換えれば、これらの壁部37は、回転軸Oから環状軸壁35に向けて放射外方に延設されている。四つの壁部37の一つの壁部37Xのみは、
図3に示されるように下方への突出量が他の壁部37よりも大きくされており、環状軸壁35の下縁よりも下方に、即ち、回転軸Oに沿って軸収納環状壁25の内部に向けて突出されている。この下方に突出された壁部37Xが回転範囲Rの規定に寄与しており、以下、特に突片37Xとも呼ぶ。
【0025】
一方、ハーネス導出部3の環状軸壁35を回転可能に収納する軸収納環状壁25の底部には、回転角度設定部材27が取り付けられている。回転角度設定部材27は、環状軸壁35の内部に嵌められる円盤状の部材である。回転角度設定部材27は、軸収納環状壁25に対して着脱可能に構成されているが、軸収納環状壁25に取り付けられると軸収納環状壁25に対して回転しないように構成されている。
【0026】
回転角度設定部材27の着脱可能な取付構造は、軸収納環状壁25の内面に対向して設けられた一対の係止片25aと、回転角度設定部材27の周縁に設けられた一対の被係止部27aとで構成されている。各係止片25aは、回転角度設定部材27の軸収納環状壁25内部への嵌合方向に対向するように回転軸Oの方向に延設されており、その先端には係止爪が形成されている。回転角度設定部材27の各被係止部27aは、回転角度設定部材27の周縁のフランジが一部切り欠かれて形成されており、係止片25aの係止爪に係止される凹部として形成されている。回転角度設定部材27のフランジは、回転角度設定部材27の軸収納環状壁25への嵌め込み時に軸収納環状壁25の下縁と当接して回転角度設定部材27の軸収納環状壁25に対する回転軸Oの方向の位置決めを行う。
【0027】
回転角度設定部材27の回転規制構造は、軸収納環状壁25の内面に形成された規制凹部25bと、回転角度設定部材27の周縁に設けられた規制凸部27bとで構成されている。回転角度設定部材27は、その規制凸部27bが軸収納環状壁25の規制凹部25bに嵌まる正常な回転位置でないと、軸収納環状壁25に取り付けられない。また、正常な回転位置で軸収納環状壁25に嵌められた回転角度設定部材27は、規制凹部25b及び規制凸部27bによってその回転が規制される。また、本実施形態では、係止片25aと被係止部27aとの係止によっても、軸収納環状壁25に嵌められた回転角度設定部材27の回転が規制される。なお、本実施形態では、軸収納環状壁25に規制凹部25bが形成され、かつ、回転角度設定部材27に規制凸部27bが形成された。しかし、これとは逆に、軸収納環状壁25に規制凸部が形成され、かつ、回転角度設定部材27に規制凹部が形成されてもよい。
【0028】
また、回転角度設定部材27の下面には、ノブ27dが形成されている。ノブ27dは、回転軸Oを含む板状に形成されている。さらに、本実施形態では、ノブ27dの一端は、上述した規制凸部27bの位置となるように形成されている。回転角度設定部材27を軸収納環状壁25の内部に嵌め込む際には、軸収納環状壁25に対する回転角度設定部材27の回転位置を合わせて押し込む必要がある。板状のノブ27dは、回転角度設定部材27の回転位置を合わせ易く、かつ、回転角度設定部材27を軸収納環状壁25に押し込み易い形状である。
【0029】
特に、本実施形態では、ノブ27dの一端が規制凸部27bの位置となるようにノブ27dが形成されているため、規制凸部27bを規制凹部25bに合わせ易い。規制凸部27bと規制凹部25bとが位置合わせされれば、一対の係止片25aと一対の被係止部27aとの位置合わせもされる。また、回転角度設定部材27は軸収納環状壁25から外すことも可能に構成されており、ノブ27dをつまんで係止片25aをたわませつつ引っ張れば回転角度設定部材27を容易に外すこともできる。
【0030】
一方、回転角度設定部材27の上面からは、上述した突片37Xと協働してハーネス導出部3の回転範囲Rを規定する一対のストッパ突部27cが突出されている。ハーネス導出部3は、その突片37Xが一対のストッパ突部27cの間に位置するように本体筒部2に組み付けられる。ハーネス導出部3が本体筒部2に組み付けられると、ハーネス導出部3の環状軸壁35の下縁、即ち、突片37X以外の三つの壁部37の下縁は、ストッパ突部27cの上端よりも上方に位置する。これに対して、突片37Xは、ストッパ突部27cの上端よりも下方へと突出する。
【0031】
この結果、ハーネス導出部3は、突片37Xが一対のストッパ突部27cの間で移動可能な範囲で回転可能となる。即ち、
図4に示されるように、一対のストッパ突部27cの形成位置によって、ハーネス導出部3の回転範囲Rが設定される。突片37Xは、回転範囲Rの両端でそれぞれストッパ突部27cと当接する。
図4に示された回転角度設定部材27によって設定されるハーネス導出部3の回転範囲Rは70°である。一対のストッパ突部27cの形成位置を変えれば、言い換えれば、回転角度設定部材27のみを取り替えることで、
図4中右側に示されている70°の回転範囲Rを図中の左側に設定することも可能になる。もちろん、回転範囲Rの大きさを変えるのも、回転角度設定部材27のみを取り替えることで可能である。
【0032】
回転範囲Rは、
図5に示されるように、回転角度設定部材27のみを変更することで0°に設定することもできる。即ち、この場合、ハーネス導出部3の回転可能角度が0°である。一対のストッパ突部27cの一方(例えば、図中上側のストッパ突部27c)は、回転軸Oを中心とする一方の回転方向(
図5中の反時計回り方向)で突片37Xと当接する。一対のストッパ突部27cの他方(図中右側のストッパ突部27c)は回転軸Oを中心とする他方の回転方向(
図5中の時計回り方向)で突片37Xと当接する。言い換えれば、ハーネス導出部3の突片37Xは、一対のストッパ突部27cに挟止された状態である。
【0033】
図6~
図10に、様々な回転範囲Rを設定するための回転角度設定部材27の例を示す。
図6に示される第一例は、回転範囲Rが40°の回転角度設定部材27を示している。
図7に示される第二例は、
図6に示される回転範囲Rを図中右側に30°広げた、回転範囲Rが70°の回転角度設定部材27を示している。この第二例の回転角度設定部材27が、
図1~
図4に示されている回転角度設定部材27である。
図8に示される第三例は、
図7に示される回転範囲を図中左側に30°広げた、回転範囲Rが100°の回転角度設定部材27を示している。
【0034】
図9に示される第四例は、回転範囲Rが0°の回転角度設定部材27を示している。一対のストッパ突部27cの中央線は、図中の規制凸部27bの右側を通っている。
図10に示される第五例も、回転範囲Rが0°の回転角度設定部材27を示しているが、一対のストッパ突部27cの中央線は、図中の規制凸部27bを通っている。このように、回転範囲Rが同じでも、回転角度設定部材27のみを変えるだけでその中央線の位置を変更できる。中央線の位置を変更することで、給電装置1からのワイヤハーネスWの導出方向を変更できる。これは、回転範囲Rが0°でなくても同様である。なお、この第五例の回転角度設定部材27が、
図5に示されている回転角度設定部材27である。
【0035】
上記実施形態によれば、給電装置1が、一端にハーネス導入開口1Iが形成された本体筒部2と、一端が本体筒部2の他端に回転可能に取り付けられると共に他端にハーネス導出開口1Oが形成されたハーネス導出部3とを備えている。ハーネス導出部3は、その一端に、回転軸Oを中心とする環状軸壁35を有すると共に、環状軸壁35の内部に、回転軸Oから放射外方に延設された突片37Xを有している。本体筒部2は、その他端に、環状軸壁35を回転可能に保持する軸収納環状壁25を有すると共に、軸収納環状壁25の底部に脱着可能かつ回転不能に取り付けられた回転角度設定部材27を有している。回転角度設定部材27は、ハーネス導出部3の回転範囲Rの両端でそれぞれ突片37Xと当接する一対のストッパ突部27cを備えている。
【0036】
ハーネス導出部3の回転範囲Rは回転角度設定部材27に形成された一対のストッパ突部27cによって設定される。従って、小さな部品である回転角度設定部材27のみを変えることで回転範囲Rの設定を変更することができる。回転範囲Rの設定変更のために、本体筒部2の全体を作り直す必要はなく、本体筒部2に対するハーネス導出部3の回転範囲を容易に設定変更することができる。
【0037】
また、本体筒部2に回転可能に取り付けられるハーネス導出部3の回転可能角度を0°に設定することも可能である。この場合、
図5に示されるように、一対のストッパ突部27cの一方(例えば、図中上側のストッパ突部27c)は、ハーネス導出部3の回転軸Oを中心とする一方の回転方向(
図5中の反時計回り方向)で突片37Xと当接する。一対のストッパ突部27cの他方(図中右側のストッパ突部27c)はハーネス導出部3の回転軸Oを中心とする他方の回転方向(
図5中の時計回り方向)で突片37Xと当接する。このように、小さな部品である回転角度設定部材27のみによって回転範囲Rを0°に設定することもできる。
【0038】
また、上記実施形態によれば、軸収納環状壁25が、対向して設けられた一対の係止片25aを有すると共に、回転角度設定部材27が、一対の前記係止片25aとそれぞれ係止する一対の被係止部27aを有している。このため、回転角度設定部材27の軸収納環状壁25への取り付け、及び、回転角度設定部材27の軸収納環状壁25からの取り外しを簡便に行うことができる。さらに、軸収納環状壁25及び回転角度設定部材27の一方に回転規制のための規制凸部27bが形成されると共に他方に当該規制凸部27bが嵌まる規制凹部25bが形成されている。このため、回転角度設定部材27を正常な回転位置で軸収納環状壁25に取り付けることができ、かつ、取付後は軸収納環状壁25に対する回転角度設定部材27の回転を簡便な構造で確実に規制することができる。
【0039】
さらに、上記実施形態によれば、回転角度設定部材27に、回転軸Oを含む板状のノブ27dが形成されている。回転角度設定部材27の軸収納環状壁25への取付時には、軸収納環状壁25に対する回転角度設定部材27の回転位置を合わせて、即ち、規制凹部25bに規制凸部27bの位置を合わせて押し込む必要がある。つまんで操作できる板状のノブ27dによって、回転角度設定部材27の回転位置を合わせ易く、かつ、回転角度設定部材27を軸収納環状壁25に押し込み易くなる。一方、ノブ27dをつまんで係止片25aをたわませつつ引っ張れば回転角度設定部材27を容易に外すこともできる。
【0040】
また、上記実施形態によれば、ワイヤハーネスWは、当該ワイヤハーネスWが内部に挿通された外装部材Tと、上述した給電装置1と、を備えている。そして、外装部材Tの一部が、ハーネス導出部3の内部に形成されたハーネス導出室31に保持されている。従って、小さな部品である回転角度設定部材27のみを変えることでワイヤハーネスWの導出範囲、即ち、ハーネス導出部3の回転範囲Rの設定を変更することができる。回転範囲Rの設定変更のために、本体筒部2の全体を作り直す必要はなく、ワイヤハーネスWの導出範囲を容易に設定変更することができる。
【0041】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、給電装置は、車体に取り付けられてスライドドアに向けて導出されるワイヤハーネスWに適用された。しかし、給電装置が車体ではなくスライドドアやバックドアに取り付けられて車体に向けて導出されるワイヤハーネスに適用されてもよい。また、給電装置は、車両への搭載に限定されず、建物など、他の用途に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 給電装置
1I ハーネス導入開口
1O ハーネス導出開口
2 本体筒部
25 軸収納環状壁(軸受筒部)
25a 係止片
25b 規制凹部
27 回転角度設定部材
27a 被係止部
27b 規制凸部
27c ストッパ突部
27d ノブ
3 ハーネス導出部
31 ハーネス導出室
35 環状軸壁(回転軸柱)
37X 突片(壁部)
O 回転軸
R 回転範囲
W ワイヤハーネス
T 外装部材