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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138684
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049284
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭史
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE14
5E087FF06
5E087FF13
5E087GG15
5E087GG26
5E087GG31
5E087GG32
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM05
5E087RR12
5E087RR25
5E087RR36
(57)【要約】
【課題】組立性を向上させることができるコネクタを提供する。
【解決手段】シール部材60は、電線200を密着状態で挿入する、複数のシール孔65と、ハウジング部材20と対向する一側シール対向面63に開口し、各々のシール孔65の周囲に配置される、複数の第1挿入孔67と、一側シール対向面63に開口し、第1挿入孔67および前記シール孔65を有する部位の外周の四隅部に配置される、複数の第2挿入孔68と、を有している。ハウジング部材20は、シール部材60と対向する他側ハウジング対向面31に突設され、各々の第1挿入孔67に挿入可能に配置される、複数の第1突部32と、他側ハウジング対向面31に突設され、第1突部32よりも大きい突出寸法を有し、各々の第2挿入孔68に挿入可能に配置される、複数の第2突部34と、を有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材と、前記シール部材を保持するハウジング部材と、を備え、
前記シール部材は、
電線を密着状態で挿入する、複数のシール孔と、
前記ハウジング部材と対向する一側シール対向面に開口し、各々の前記シール孔の周囲に配置される、複数の第1挿入孔と、
前記一側シール対向面に開口し、前記第1挿入孔および前記シール孔を有する部位の外周の四隅部に配置される、複数の第2挿入孔と、を有し、
前記ハウジング部材は、
各々の前記シール孔と連通し、内側に前記電線を配置する、複数のキャビティと、
前記シール部材と対向する他側ハウジング対向面に突設され、各々の前記第1挿入孔に挿入可能に配置される、複数の第1突部と、
前記他側ハウジング対向面に突設され、前記第1突部よりも大きい突出寸法を有し、各々の前記第2挿入孔に挿入可能に配置される、複数の第2突部と、
を有している、コネクタ。
【請求項2】
各々の前記第2挿入孔は、前記シール部材の厚み方向に見て、各々の前記第1挿入孔よりも長く形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジング部材との間に前記シール部材を挟んで保持するホルダ部材を備え、
前記ホルダ部材は、
各々の前記シール孔と連通し、内側に前記電線を配置する、複数の貫通孔と、
前記シール部材と対向する一側ホルダ対向面において、各々の前記貫通孔の周囲に突出して配置される、複数の第3突部と、を有し、
前記シール部材は、前記厚み方向に前記第1挿入孔と並んで配置され、前記ホルダ部材と対向する他側シール対向面に開口する、複数の第3挿入孔を有し、
各々の前記第3突部は、各々の前記第3挿入孔に挿入可能であり、
各々の前記第2挿入孔は、前記厚み方向に見て、前記第1挿入孔および前記第3挿入孔の各々よりも長く形成されている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジング部材は、前記シール部材を収容する収容凹部を有し、
前記シール部材は、前記収容凹部の内周面に密着する複数のシールリップを有し、
各々の前記シールリップは、前記シール部材の外周に前記シール部材の厚み方向に並んで配置され、
各々の前記第2挿入孔は、前記厚み方向に見て、複数の前記シールリップと重なる長さ範囲に形成されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
各々の前記第2突部は、各々の前記第1突部よりも太径である、請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は開示されたコネクタは、ハウジング部材(アウタハウジング)と、ハウジング部材との間にシール部材(ワイヤシール)を挟み込むホルダ部材(インナハウジング)と、を備えている。ハウジング部材は、シール部材と対向する面に、複数のボスピンを突設させている。シール部材は、ハウジング部材と対向する面に開口し、各ボスピンを挿入可能な複数のピン挿入孔を有している。また、シール部材は、電線を密着状態で挿通する複数のシール孔(コンタクト挿入孔)を有している。各ピン挿入孔は、各シール孔の外周の四隅部に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-129149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、シール部材が複数のシール孔を有する場合、電線がシール部材の一のシール孔に挿通されると、一のシール孔が拡径し、一のシール孔と隣接する他のシール孔の位置が変動して、他のシール孔に電線が正しく挿入できないことがあった。これに対し、特許文献1の場合、各ボスピンが各ピン挿入孔に挿入され、シール孔の拡径を規制できることから、各電線を各シール孔に正しく挿入できる構成ではあった。しかし、各ボスピンが各ピン挿入孔に挿入される箇所が多数存在するため、ボスピン自体が対応するピン挿入孔に正しく挿入されないことがあった。仮に、ボスピンがシール部材の対向する面に突き刺さると、シール部材が損傷するため、最悪の場合、新たなシール部材を用意し、シール部材とハウジング部材の組立作業をやり直す必要があった。
【0005】
そこで、本開示は、組立性を向上させることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、シール部材と、前記シール部材を保持するハウジング部材と、を備え、前記シール部材は、電線を密着状態で挿通する、複数のシール孔と、前記ハウジング部材と対向する一側シール対向面に開口し、各々の前記シール孔の周囲に配置される、複数の第1挿入孔と、前記一側シール対向面に開口し、前記第1挿入孔および前記シール孔を有する部位の外周の四隅部に配置される、複数の第2挿入孔と、を有し、前記ハウジング部材は、各々の前記シール孔と連通し、内側に前記電線を配置する、複数のキャビティと、前記シール部材と対向する他側ハウジング対向面に突設され、各々の前記第1挿入孔に挿入可能に配置される、複数の第1突部と、前記他側ハウジング対向面に突設され、前記第1突部よりも大きい突出寸法を有し、各々の前記第2挿入孔に挿入可能に配置される、複数の第2突部と、を有している、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、組立性を向上させることができるコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1において、コネクタの側断面図である。
図2図2は、実施形態1において、ハウジング部材の背面図である。
図3図3は、実施形態1において、シール部材の正面図である。
図4図4は、実施形態1において、シール部材の背面図である。
図5図5は、実施形態1において、ホルダ部材の正面図である。
図6図6は、実施形態1において、コネクタを図1とは異なる位置で切断し、シール部材がハウジング部材とホルダ部材との間に位置決めして保持可能に配置された状態を示す部分拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)シール部材と、前記シール部材を保持するハウジング部材と、を備え、前記シール部材は、電線を密着状態で挿通する、複数のシール孔と、前記ハウジング部材と対向する一側シール対向面に開口し、各々の前記シール孔の周囲に配置される、複数の第1挿入孔と、前記一側シール対向面に開口し、前記第1挿入孔および前記シール孔を有する部位の外周の四隅部に配置される、複数の第2挿入孔と、を有し、前記ハウジング部材は、各々の前記シール孔と連通し、内側に前記電線を配置する、複数のキャビティと、前記シール部材と対向する他側ハウジング対向面に突設され、各々の前記第1挿入孔に挿入可能に配置される、複数の第1突部と、前記他側ハウジング対向面に突設され、前記第1突部よりも大きい突出寸法を有し、各々の前記第2挿入孔に挿入可能に配置される、複数の第2突部と、を有している。
上記構成は、ハウジング部材に対するシール部材の組み付け過程で、各第2突部が各第2挿入孔に挿入されることにより、ハウジング部材に対してシール部材の四隅部を位置決めすることができる。そして、シール部材の四隅部を位置決めした状態から、各第1突部が四隅部の内周側に配置される各第1挿入孔に挿入されることにより、第1突部が対応する第1挿入孔に正しく挿入される状態を実現することができる。各第1突部が各第1挿入孔に挿入されると、各シール孔が電線挿通時に大きく拡径するのを規制することができる。したがって、上記構成によれば、シール部材とハウジング部材との組み付け時における組立性を向上させることができる。
【0010】
(2)上記(1)に記載のコネクタにおいて、各々の前記第2挿入孔は、前記シール部材の厚み方向に見て、各々の前記第1挿入孔よりも長く形成されていることが好ましい。
上記構成は、第1突部よりも長い突出寸法を有する第2突部が対応する第2挿入孔に容易に挿入可能となる。
【0011】
(3)上記(2)に記載のコネクタにおいて、前記ハウジング部材との間に前記シール部材を挟んで保持するホルダ部材を備え、前記ホルダ部材は、各々の前記シール孔と連通し、内側に前記電線を配置する、複数の貫通孔と、前記シール部材と対向する一側ホルダ対向面において、各々の前記貫通孔の周囲に突出して配置される、複数の第3突部と、を有し、前記シール部材は、前記厚み方向に前記第1挿入孔と並んで配置され、前記ホルダ部材と対向する他側シール対向面に開口する、複数の第3挿入孔を有し、各々の前記第3突部は、各々の前記第3挿入孔に挿入可能であり、各々の前記第2挿入孔は、前記厚み方向に見て、前記第1挿入孔および前記第3挿入孔の各々よりも長く形成されていることが好ましい。
各第2挿入孔がシール部材の四隅部の外周側に配置されるため、上記構成のように、各第2挿入孔が厚み方向に見て各第1挿入孔および各3挿入孔よりも長くなる形状を容易に実現することができる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記ハウジング部材は、前記シール部材を収容する収容凹部を有し、前記シール部材は、前記収容凹部の内周面に密着する複数のシールリップを有し、各々の前記シールリップは、前記シール部材の外周に前記シール部材の厚み方向に並んで配置され、各々の前記第2挿入孔は、前記厚み方向に見て、複数の前記シールリップと重なる長さ範囲に形成されていることが好ましい。
上記構成は、第2突部が第2挿入孔に挿入されることにより、シール部材の厚み方向に並んだ各シールリップと対応する位置に第2突部を配置させることができる。その結果、上記構成は、収容凹部の内周面と第2突部との間に各シールリップを適度な圧縮力で圧縮させることができ、ハウジング部材に対するシール部材のシール性を向上させることができる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載のコネクタにおいて、各々の前記第2突部は、各々の前記第1突部よりも太径であることが好ましい。
上記構成は、各第2突部が各第2挿入孔に挿入されることにより、ハウジング部材に対してシール部材の四隅部を信頼性良く位置決めすることができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
<実施形態1>
実施形態1に係るコネクタ10は、図1に示すように、ハウジング部材20と、ホルダ部材40と、シール部材60と、端子金具90と、を備えている。また、コネクタ10は、リテーナ21と、フロント部材22と、シールリング100と、を備えている。コネクタ10は、図示しない相手コネクタに嵌合される。なお、以下の説明において、前後方向については、コネクタ10が相手コネクタに嵌合される面側を前側とする。上下方向は、図1の上下方向を基準とする。図1において、矢印Xが前側であり、矢印Yが右側であり、矢印Zが上側である。これらの方向の基準は、コネクタ10が図示しない車両等に搭載された状態における方向の基準と必ずしも一致しない。
【0016】
(ハウジング部材20および端子金具90等)
ハウジング部材20は合成樹脂製であって、本実施形態1の場合、インナハウジングとして構成される。ハウジング部材20は、詳細は図示しないが、角ブロック状をなし、図2に示すように、複数のキャビティ23を有している。各キャビティ23は、ハウジング部材20を前後方向に貫通し、上下左右に多数整列して配置される。ハウジング部材20は、図1に示すように、各キャビティ23の内側に突出するランス24を有している。
【0017】
端子金具90は導電金属製であって、キャビティ23に後方から挿入される。端子金具90は、図1に示すように、雌端子金具を例示しており、前部に筒状の接続部91を有している。端子金具90は、接続部91をランス24に係止させ、キャビティ23の内側に一次的に抜け止めされる。接続部91の内側に図示しない相手端子金具のタブが配置されて接続部91の内側に形成された図示しない弾性接触片に接触することにより、端子金具90と相手端子金具とが電気的に接続される。また、端子金具90は、接続部91よりも後方に、電線200の端末部(前端部)に電気的および機械的に接続されるバレル部92を有している。
【0018】
ハウジング部材20は、前後中間部で各キャビティ23と連通するリテーナ装着孔25を有している。リテーナ装着孔25は、ハウジング部材20の上面に開口している。リテーナ21は合成樹脂製であって板状をなし、リテーナ装着孔25に上方から挿入され、端子金具90を係止する。端子金具90は、リテーナ21によってキャビティ23の内側に二次的に抜け止めされる。
【0019】
フロント部材22は合成樹脂製であってキャップ状をなし、ハウジング部材20に前方から装着される。端子金具90の接続部91の前部は、フロント部材22の凹所26に位置決め可能に嵌合される。タブは、フロント部材22のタブ挿通孔27を介してキャビティ23に挿入され、端子金具90に接続可能とされる。
【0020】
ハウジング部材20は、後部に、後方に開放された収容凹部28を有している。収容凹部28には、後方からシール部材60が挿入されて収容される。ハウジング部材20の外面には、収容凹部28側に一段大きくなる段部29が形成されている。シールリング100はシリコンゴム等のゴム製であって詳細は図示しないが、四隅が丸い四角環状をなし、ハウジング部材20の外面に装着され、段部29によって後方への抜け出しが規制される。シールリング100は、嵌合状態にあるコネクタ10と相手コネクタとの間に介在してシールをとる部材である。
【0021】
収容凹部28の内面のうち、各キャビティ23が開口する奥側の面は、後述する一側シール対向面63と対向する他側ハウジング対向面31として構成される。他側ハウジング対向面31は、図2に示すように、上下方向および左右方向に沿って配置され、左右寸法(幅寸法)を上下寸法(高さ寸法)よりも大きくしている。
【0022】
各キャビティ23は、他側ハウジング対向面31に、四角形の開口形状で開口している。ハウジング部材20は、他側ハウジング対向面31に、複数の第1突部32を突設させている。各第1突部32は、断面円形のピン状(円柱状)をなし、互いに同一形状、同一サイズで形成されている。各第1突部32の先端(後端)は、図6に示すように、半球状に丸まっている。各第1突部32は、他側ハウジング対向面31において、各キャビティ23の周囲に点在して配置される。具体的には、各第1突部32は、他側ハウジング対向面31の各キャビティ23間において各キャビティ23を上下左右に格子状に仕切る部分の格子点に配置される。本実施形態1の場合、各第1突部32は、他側ハウジング対向面31において、最外周に配置された各キャビティ23を除いて、各キャビティ23の外周の四隅部に配置される。
【0023】
また、ハウジング部材20は、他側ハウジング対向面31において各キャビティ23および各第1突部32が整列するキャビティ部位P1(図2の一点鎖線で囲まれた部位)の外周に、複数の第2突部34を突設させている。各第2突部34は、断面円形のピン状(円柱状)をなし、互いに同一形状、同一サイズで構成されている。各第2突部34の先端(後端)は、図6に示すように、半球状に丸まっている。
【0024】
各第2突部34は、他側ハウジング対向面31からの突出寸法を、各第1突部32のそれよりも大きくしている。言い換えれば、各第2突部34の先端(後端)は、各第1突部32の先端よりも先方(後方)に位置している。また、各第2突部34の径寸法(太さ)は、各第1突部32の径寸法よりも大きくなっている。
【0025】
各第2突部34は、図2に示すように、他側ハウジング対向面31の外周側で対応するキャビティ23と隣接して配置される。具体的には、各第2突部34は、他側ハウジング対向面31において、キャビティ部位P1の外周の四隅部に配置される4つのコーナ側突部34Aと、隣接する各コーナ側突部34Aの上下方向および左右方向の各々の中間部に配置される4つの中間側突部34Bと、によって構成される。上下方向で対をなす中間側突部34Bは、他側ハウジング対向面31の左右中央に配置される。左右方向で対をなす中間側突部34Bは、他側ハウジング対向面31の上下中央に配置される。
【0026】
また、ハウジング部材20は、収容凹部28の上壁および下壁から後方に突出する左右一対ずつのロック部35を有している。各ロック部35は、左右方向に沿った板状をなし、ホルダ部材40の後述するロック受け部44に係止可能とされている(図1を参照)。
【0027】
(シール部材60)
シール部材60は、シリコンゴム等のゴム製であって、前後方向に厚みを有するマット状のシール本体61を有している。
【0028】
シール本体61の前面は、図6に示すように、ハウジング部材20の他側ハウジング対向面31に面接触可能に対向する一側シール対向面63として構成される。シール本体61の後面は、後述する一側ホルダ対向面46と面接触状態で対向する他側シール対向面64として構成される。
一側シール対向面63および他側シール対向面64は、図3および図4に示すように、いずれも上下方向および左右方向に沿って配置され、左右寸法(幅寸法)を上下寸法(高さ寸法)よりも大きくしている。また、一側シール対向面63および他側シール対向面64は、いずれも四隅が丸い四角形の外形形状をなし、表裏対称に形成されている。
【0029】
シール本体61は、一側シール対向面63から他側シール対向面64にかけて前後方向(厚み方向)に貫通する複数のシール孔65を有している。各シール孔65は、円形の断面形状を有している。各シール孔65の内周面には、図1に示すように、複数の内周リップ66が前後方向に並んで形成されている。各シール孔65には、端子金具90に接続された電線200が挿入される。各内周リップ66は、電線200の外周面に密着して圧潰状態に配置される。
【0030】
シール本体61は、図3に示すように、複数の第1挿入孔67を有している。各第1挿入孔67は、断面円形状であって、シール本体61を前後方向に一定の径寸法で延び、互いに同一形状、同一サイズで形成されている。各第1挿入孔67の前端は、一側シール対向面63に開口している。各第1挿入孔67の後端は、図6に示すように、シール本体61の前後方向(厚み方向)の中間部、詳細にはシール本体61の前後中央より前寄りの位置で閉塞されている。各第1挿入孔67の後端は、半球凹状に形成されている。一側シール対向面63は、図3に示すように、外周側を除く部分に、各シール孔65(電線200を通す孔の部分)が開口するシール部位P2(図3の一点鎖線で囲まれた部位)を有している。
【0031】
各第1挿入孔67の前端は、一側シール対向面63のシール部位P2に開口している。各第1挿入孔67は、各シール孔65と対応する位置毎に、シール孔65の周囲に点在して配置される。具体的には、各第1挿入孔67は、最外周に配置された各シール孔65を除いて、各シール孔65の外周の四隅部に配置される。
【0032】
シール本体61は、図3に示すように、各第1挿入孔67とは別に、複数の第2挿入孔68を有している。各第2挿入孔68は、断面円形状であって、シール本体61を前後方向に一定の径寸法で延び、互いに同一形状、同一サイズで形成されている。各第2挿入孔68の径寸法は、各第1挿入孔67の径寸法よりも大きい。各第2挿入孔68の前端は、一側シール対向面63の外周側に開口している。各第2挿入孔68の後端は、図6に示すように、シール本体61の後部(厚み方向後部)で閉塞されている。つまり、各第2挿入孔68は、各第1挿入孔67よりも前後方向に長く形成されている。
【0033】
各第2挿入孔68の前端は、図3に示すように、一側シール対向面63において、シール部位P2には開口せず、シール部位P2の外周側に開口している。具体的には、各第2挿入孔68の前端は、一側シール対向面63のシール部位P2の外周側における上下位置および左右位置に、周方向に間隔を置いて開口している。
【0034】
各第2挿入孔68は、前方から一側シール対向面63を見た場合に、シール部位P2の外周側の四隅部に配置される4つのコーナ側挿入孔68Aと、隣接する各コーナ側挿入孔68Aの上下方向および左右方向の各々の中間部に配置される4つの中間側挿入孔68Bと、によって構成される。上下方向で対をなす中間側挿入孔68Bは、一側シール対向面63の左右中央に配置される。左右方向で対をなす中間側挿入孔68Bは、一側シール対向面63の上下中央に配置される。シール部材60は、前方から見て一側シール対向面63の中心を対称の中心とする点対称な形状になっている。
【0035】
また、シール本体61は、図4に示すように、各第1挿入孔67および各第2挿入孔68とは別に、複数の第3挿入孔69を有している。各第3挿入孔69は、断面円形状であって、シール本体61を前後方向に一定の径寸法で延び、互いに同一形状、同一サイズで形成されている。各第3挿入孔69の後端は、他側シール対向面64に開口している。各第3挿入孔69の前端は、図6に示すように、シール本体61の前後方向(厚み方向)の中間部、詳細にはシール本体61の前後中央より後寄りの位置で閉塞されている。各第1挿入孔67の前端は、半球凹状に形成されている。
【0036】
第3挿入孔69と第1挿入孔67とは、同一形状、同一サイズで形成されている。第3挿入孔69と第1挿入孔67とは、シール本体61の前後中央を挟んで前後対称をなし、シール本体61において前後方向の同軸上に並んで配置される。
【0037】
シール部材60は、図6に示すように、シール本体61の外周面から突出する複数のシールリップ62を有している。各シールリップ62は、シール本体61の外周面に前後方向に3つ並んで配置される。各シールリップ62は、図3および図4に示すように、シール本体61の外周面に全周にわたって形成されている。各シールリップ62は、図1および図6に示すように、収容凹部28にシール部材60が収容された状態で、収容凹部28の内周面(他側ハウジング対向面31と直交する面)に密着して圧潰状態に配置される。各第3挿入孔69は、図6に示すように、シール本体61の外周側において、各シールリップ62と近接する位置に配置され、前後方向に関して全てのシールリップ62と重なる(対応する)長さで形成されている。
【0038】
(ホルダ部材40)
ホルダ部材40は合成樹脂製であって、本実施形態1の場合、アウタハウジングとして構成される。ホルダ部材40は、図1に示すように、前後方向に厚みを有する板状のホルダ本体41と、ホルダ本体41の外周を覆う筒状の嵌合筒部42と、ホルダ本体41および嵌合筒部42の各々の後端同士をつなぐ連結部43と、を有している。
【0039】
ホルダ部材40は、ハウジング部材20に後方から取り付けられる。ホルダ部材40は、図5に示すように、連結部43の上端部および下端部を貫通する左右一対ずつのロック受け部44を有している。図1に示すように、各ロック部35が各ロック受け部44に挿入されて係止可能に配置されることにより、ハウジング部材20に対するホルダ部材40の取り付け状態を維持することが可能となっている。
【0040】
嵌合筒部42は、ハウジング部材20に対するホルダ部材40の取り付けによって、ホルダ本体41に加え、ハウジング部材20の外周面を覆うように配置される。嵌合筒部42とハウジング部材20との間には、図示しない相手コネクタのフード部が嵌合状態で挿入される。
【0041】
ホルダ本体41は、このホルダ本体41を前後方向(厚み方向)に貫通する複数の貫通孔45を有している。ホルダ本体41の前面は、図5に示すように、上下方向および左右方向に沿った一側ホルダ対向面46として構成される。ホルダ本体41は、一側ホルダ対向面46に、複数の第3突部47を突設させている。各第3突部47は、断面円形のピン状(円柱状)をなし、互いに同一形状、同一サイズで形成されている。各第3突部47の先端(前端)は、図6に示すように、半球状に丸まっている。各第3突部47は、一側ホルダ対向面46において、各貫通孔45の周囲に点在して配置される。具体的には、各第3突部47は、一側ホルダ対向面46において、各貫通孔45の外周の四隅部に配置される。一側ホルダ対向面46から突出する部分は各第3突部47のみであり、ホルダ部材40はハウジング部材20の各第2突部34に対応する突出部分を有していない。
【0042】
(コネクタ10の作用)
ハウジング部材20、シール部材60およびホルダ部材40の組み付けに際し、まず、ハウジング部材20の収容凹部28に、後方からシール部材60が挿入される。収容凹部28へのシール部材60の挿入開始時に、ハウジング部材20の各第2突部34がシール部材60の各第2挿入孔68に嵌合状態に挿入される。各第2突部34が各第2挿入孔68に挿入されることにより、ハウジング部材20に対するシール部材60の組み付け姿勢が矯正され得る。また、各第2突部34が各第2挿入孔68に挿入されることにより、ハウジング部材20に対してシール部材60の外周側が位置決めされ得る。つまり、シール部材60の外周側が径方向に変形することを規制可能な構造になる。
【0043】
本実施形態1の場合、各コーナ側突部34Aが各コーナ側挿入孔68Aに挿入されることで、シール部材60の一側シール対向面63の四隅部をハウジング部材20の他側ハウジング対向面31の四隅部に位置決めして支持させることができる。また、各中間側突部34Bが各中間側挿入孔68Bに挿入されることで、シール部材60の一側シール対向面63の上下中間部および左右中間部をハウジング部材20の他側ハウジング対向面31の対応部位に位置決めして支持させることができる。各第2突部34が各第2挿入孔68に挿入された後、ハウジング部材20の各第1突部32がシール部材60の各第1挿入孔67に嵌合状態に挿入される。各第1突部32が各第1挿入孔67に挿入される段階では、上記のとおり、ハウジング部材20に対してシール部材60の外周側が位置決めできているので、各第1突部32が対応する第1挿入孔67に正対して正しく挿入できる状態を実現することができる。
【0044】
その後、一側シール対向面63が他側シール対向面64に面接触状態で接触することで、収容凹部28に対するシール部材60の挿入動作が停止される。すると、シール部材60の全体が収容凹部28に収容され、且つ、各第2突部34の全体が各第2挿入孔68に挿入されるとともに、各第1突部32の全体が各第1挿入孔67に挿入される(図6を参照)。各第2突部34の先端(後端)は各第2挿入孔68の奥端側に至り、各第1突部32の先端(後端)は各第1挿入孔67の奥端側に至ることができる。そして、各シールリップ62が収容凹部28の内周面に密着して配置される。各シールリップ62の内周側には、各第2突部34が対応して配置される。ここで、各第2突部34は、各シールリップ62の全部と前後方向に重なる長さで配置される。このため、各シールリップ62は、収容凹部28と各第2突部34とから反力を受けることになり、収容凹部28と各第2突部34との間に適度に圧縮された状態で介在することができる。
【0045】
続いて、ホルダ部材40がハウジング本体に後方から組み付けられる。ホルダ部材40の組み付け過程において、各ロック部35が各ロック受け部44に挿入され、ハウジング部材20に対するホルダ部材40の組み付け動作はガイドされ得る。そして、ホルダ部材40の各第3突部47がシール部材60の各第3挿入孔69に嵌合状態に挿入される。各第3突部47が各第3挿入孔69に挿入される段階では、各ロック部35と各ロック受け部44とのガイド作用によってハウジング部材20に対するホルダ部材40の組み付け姿勢を矯正できる。このため、各第3突部47が対応する第3挿入孔69に正対して正しく挿入できる状態を実現することができる。
【0046】
その後、端子金具90が貫通孔45からシール孔65を経てキャビティ23に挿入される。キャビティ23の後部には、図1に示すように、端子金具90に接続された電線200の前端部が配置される。シール孔65には、キャビティから引き出された電線200が液密に配置される。貫通孔45には、シール孔65から延びる電線200が配置される。
【0047】
本実施形態1の場合、各第1突部32が各第1挿入孔67に位置決め状態で配置され、各第2突部34が各第2挿入孔68に位置決め状態で配置されているので、シール孔65に電線200が挿入されたときに、シール孔65の外周の位置変動を抑えることができる。このため、各電線200が対応するシール孔65に正しく挿入される状態を実現することができる。
【0048】
以上のとおり、本実施形態1によれば、ハウジング部材20に対するシール部材60の組み付け過程で、各第2突部34が各第2挿入孔68に挿入されることにより、ハウジング部材20に対してシール部材60の四隅部を位置決めすることができる。そして、シール部材60の四隅部を位置決めした状態から、各第1突部32が各第1挿入孔67に挿入されることにより、第1突部32が対応する第1挿入孔67に正しく挿入される状態を実現することができる。各第1突部32が各第1挿入孔67に挿入されると、各シール孔65が電線200の挿通時に大きく拡径することを規制できる。したがって、本実施形態1によれば、シール部材60とハウジング部材20との組み付け時における組立性を向上させることができる。
【0049】
また、各第2突部34が各第1突部32よりも大きい突出寸法を有し、各第2挿入孔68が各第1挿入孔67よりも前後方向に長く形成されているので、第2突部34が対応する第2挿入孔68に挿入される状態を信頼性良く実現することができる。特に、各第2突部34が各第1突部32よりも太径であるため、各第2突部34が各第2挿入孔68に挿入されることにより、ハウジング部材20に対してシール部材60の四隅部を含む外周側を信頼性良く位置決めすることができる。
さらに、各第2挿入孔68がシール部材60において各第1挿入孔67および各第3挿入孔69を有する部位から離れた外周側に配置されるため、シール部材60の厚みの半分を超える程度に長く延びる各第2挿入孔68であっても容易に形成することができる。
【0050】
さらに、本実施形態1の場合、各第2挿入孔68は、前後方向に関して各シールリップ62と重なる長さ範囲に形成されている。このため、各第2突部34が各第2挿入孔68に挿入されることにより、各シールリップ62と対応する位置に各第2突部34を配置させることができる。その結果、本実施形態1の構成は、収容凹部28の内周面と各第2突部34との間に各シールリップ62を適度な圧縮力で圧縮させることができ、ハウジング部材20に対するシール部材60のシール性を向上させることができる。
【0051】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、ホルダ部材40はアウタハウジングとして構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、ホルダ部材は嵌合筒部を有さないリアホルダであっても良い。
上記実施形態1の場合、各第1突部32および各第2突部34を有するハウジング部材20がインナハウジングとして構成され、各第3突部47を有するホルダ部材40がアウタハウジングとして構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、上記実施形態1とは逆に、各第1突部および各第2突部を有するハウジング部材がアウタハウジングとして構成され、各第3突部を有するホルダ部材がインナハウジングとして構成されていても良い。また、他の実施形態によれば、各第3突部を有するホルダ部材が省略されても良い。
上記実施形態1の場合、各第2挿入孔68の後端は、シール部材60の内側で閉塞されていた。これに対し、他の実施形態によれば、各第2挿入孔の後端がシール部材の後面(他側シール対向面)に開口し、各第2挿入孔がシール部材を厚み方向に貫通する形状であっても良い。
上記実施形態1の場合、各第2挿入孔68がコーナ側挿入孔68Aと中間側挿入孔68Bとで構成され、各第2突部34がコーナ側突部34Aと中間側突部34Bとで構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、各第2挿入孔がコーナ側挿入孔のみで構成され、各第2突部がコーナ側突部のみで構成されていても良い。また、他の実施形態によれば、各第2挿入孔が隣接する各コーナ側挿入孔間に複数の中間側挿入孔を有して構成され、各第2突部が隣接するコーナ側突部間に複数の中間側突部を有して構成されても良い。
【符号の説明】
【0052】
10…コネクタ
20…ハウジング部材
21…リテーナ
22…フロント部材
23…キャビティ
24…ランス
25…リテーナ装着孔
26…凹所
27…タブ挿通孔
28…収容凹部
29…段部
31…他側ハウジング対向面
32…第1突部
34…第2突部
34A…コーナ側突部
34B…中間側突部
35…ロック部
40…ホルダ部材
41…ホルダ本体
42…嵌合筒部
43…連結部
44…ロック受け部
45…貫通孔
46…一側ホルダ対向面
60…シール部材
61…シール本体
62…シールリップ
63…一側シール対向面
64…他側シール対向面
65…シール孔
66…内周リップ
67…第1挿入孔
68…第2挿入孔
68A…コーナ側挿入孔
68B…中間側挿入孔
69…第3挿入孔
90…端子金具
91…接続部
92…バレル部
100…シールリング
200…電線
P1…キャビティ部位
P2…シール部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6