(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138685
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】変圧器保護システムおよび変圧器保護方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20241002BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20241002BHJP
H02H 7/04 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01F27/00 J
H01F41/00 D
H02H7/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049285
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】間野 康生
(72)【発明者】
【氏名】西山 英治
【テーマコード(参考)】
5E059
5G043
【Fターム(参考)】
5E059BB15
5G043AA06
5G043BA01
5G043BA08
(57)【要約】
【課題】適正に変圧器を保護可能な変圧器保護システムを提供する。
【解決手段】配電線Lに接続された変圧器101を冷却する絶縁油Rの流量低下を検出する断油リレー2と、絶縁油Rの温度を検出するダイヤル温度計3と、を備え、断油リレー2で絶縁油Rの流量低下が検出されて所定時間が経過し、かつ、ダイヤル温度計3で絶縁油Rの温度が所定の温度以上であることが検出された場合に、変圧器101を配電線Lから切り離す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路に接続された変圧器を冷却する絶縁油の流量低下を検出する流量検出器と、
前記絶縁油の温度を検出する温度検出器と、
を備え、前記流量検出器で前記絶縁油の流量低下が検出されて所定時間が経過し、かつ、前記温度検出器で前記絶縁油の温度が所定の温度以上であることが検出された場合に、前記変圧器を前記電路から切り離す、
ことを特徴とする変圧器保護システム。
【請求項2】
前記所定時間は、前記変圧器の負荷に応じて設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の変圧器保護システム。
【請求項3】
前記流量検出器で前記絶縁油の流量低下が検出されて所定の整定時間が経過した場合、前記絶縁油の温度に関わらず、設備を遠隔監視する遠隔監視装置に前記絶縁油の流量低下が発生した旨を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の変圧器保護システム。
【請求項4】
前記絶縁油の温度が前記所定の温度よりも高温で前記変圧器の過負荷状態を示す過負荷温度以上であることが、前記温度検出器で検出された場合、前記遠隔監視装置に過負荷が発生した旨を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の変圧器保護システム。
【請求項5】
電路に接続された変圧器を冷却する絶縁油の流量低下を検出する流量検出器と、
前記絶縁油の温度を検出する温度検出器と、
を備え、前記流量検出器で前記絶縁油の流量低下が検出されて所定時間が経過し、かつ、前記温度検出器で前記絶縁油の温度が所定の温度以上であることが検出された場合に、前記変圧器を前記電路から切り離す、
ことを特徴とする変圧器保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器を保護するための変圧器保護システムおよび変圧器保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動用変圧器は、その冷却方式として導油風冷式が多く採用され、変圧器を冷却する絶縁油を送油ポンプで冷却器に送って冷却し、さらに、冷却ファンで強制冷却している(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、絶縁油の流量が低下すると、冷却能力が著しく低下して変圧器の巻線や絶縁紙などが過熱し、変圧器が焼損・損傷するおそれがある。このため、絶縁油の流量を監視し、流量が低下したことを検出すると、変圧器を電路から切り離す保護リレー(断油リレー)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外気温が低く、かつ、変圧器負荷が小さいと、絶縁油が低温となって高粘度になり(流動性が低下し)、絶縁油の流量が低下する場合があるが、このような場合にも断油リレーが作動してしまい、不要な停電をもたらすおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、適正に変圧器を保護可能な変圧器保護システムおよび変圧器保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、電路に接続された変圧器を冷却する絶縁油の流量低下を検出する流量検出器と、前記絶縁油の温度を検出する温度検出器と、を備え、前記流量検出器で前記絶縁油の流量低下が検出されて所定時間が経過し、かつ、前記温度検出器で前記絶縁油の温度が所定の温度以上であることが検出された場合に、前記変圧器を前記電路から切り離す、ことを特徴とする変圧器保護システムである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の変圧器保護システムにおいて、前記所定時間は、前記変圧器の負荷に応じて設定されている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の変圧器保護システムにおいて、前記流量検出器で前記絶縁油の流量低下が検出されて所定の整定時間が経過した場合、前記絶縁油の温度に関わらず、設備を遠隔監視する遠隔監視装置に前記絶縁油の流量低下が発生した旨を表示する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載の変圧器保護システムにおいて、前記絶縁油の温度が前記所定の温度よりも高温で前記変圧器の過負荷状態を示す過負荷温度以上であることが、前記温度検出器で検出された場合、前記遠隔監視装置に過負荷が発生した旨を表示する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、電路に接続された変圧器を冷却する絶縁油の流量低下を検出する流量検出器と、前記絶縁油の温度を検出する温度検出器と、を備え、前記流量検出器で前記絶縁油の流量低下が検出されて所定時間が経過し、かつ、前記温度検出器で前記絶縁油の温度が所定の温度以上であることが検出された場合に、前記変圧器を前記電路から切り離す、ことを特徴とする変圧器保護方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、絶縁油の流量が低下して所定時間が経過し、かつ、絶縁油の温度が所定の温度以上である場合に、変圧器が電路から切り離される。つまり、絶縁油の温度が高く絶縁油の流動性が高い状態で、絶縁油の流量が低下した場合には、変圧器を損傷させるおそれがあるとして、変圧器が電路から切り離される。これに対して、絶縁油の温度が低く(所定の温度未満で)絶縁油の流動性が低いために、絶縁油の流量が低下した場合には、変圧器を損傷させるおそれが低いとして、変圧器が電路から切り離されない。
【0012】
しかも、絶縁油の流量が低下して所定時間が経過した場合、つまり、継続して絶縁油の流量が低下した場合に、変圧器が電路から切り離される。このため、一時的に流量が低下しただけで不要に変圧器を電路から切り離すことが防止されるとともに、流量低下に対する対処時間を確保することが可能となる。このようにして、不要な切り離し・停電をなくして、適正に変圧器を保護することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、絶縁油の流量が低下してから変圧器の切り離しを行うまでの所定時間・タイミングが、変圧器の負荷に応じて設定されているため、負荷に応じた適正なタイミングで変圧器を電路から切り離すことが可能となる。この結果、適正に変圧器を保護することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、絶縁油の流量が低下して所定の整定時間が経過した場合、常に遠隔監視装置に絶縁油の流量が低下した旨が表示されるため、流量低下に対する対処を適正、迅速に行うことが可能となる。また、所定の整定時間継続して絶縁油の流量が低下した場合にのみ遠隔監視装置に表示されるため、一時的な流量低下による表示をなくして、必要なときに必要な表示、対処を行って、適正に変圧器を保護することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、絶縁油の温度が過負荷温度以上である場合、遠隔監視装置に過負荷が発生した旨が表示されるため、過負荷に対する対処を適正、迅速に行って、適正に変圧器を保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態に係る変圧器保護システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1の変圧器保護システムの保護動作に関わる論理回路図である。
【
図3】
図1の変圧器保護システムの保護動作に関わる回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係る変圧器保護システム1を示す概略構成図である。この変圧器保護システム1は、変圧器101を保護するためのシステムであり、この実施の形態では、変圧器101が移動用変圧器の場合について説明するが、絶縁油Rで冷却される変圧器であれば、どのような変圧器にも適用可能である。
【0019】
まず、移動用変圧器の構成について説明すると、絶縁油Rが配管102を介して送油ポンプ103によって変圧器(変圧器本体)101に送られ、変圧器101を冷却して排出された絶縁油Rが冷却器104に送られる。そして、絶縁油Rが冷却器104で冷却されるとともに、冷却ファン105で強制冷却されて送油ポンプ103側に戻る、という循環動作を繰り返すものである。
【0020】
ここで、この実施の形態の変圧器101は、常時変圧比を調整して送り出し電圧を一定に保つ負荷時タップ切替変圧器(LRT)となっており、遮断器CBを介して配電線(電路)Lに接続されている。
【0021】
このような変圧器101に対して変圧器保護システム1は、主として、断油リレー(流量検出器)2と、ダイヤル温度計(温度検出器)3と、変圧器監視盤4と、遠隔監視制御装置・TC(遠隔監視装置)5と、を備える。
【0022】
断油リレー2は、循環する絶縁油Rの流量を監視し、絶縁油Rの流量低下を検出する検出器・リレーであり、この実施の形態では、変圧器101と冷却器104の間の配管102に配設されている。この断油リレー2は、絶縁油Rの流量が所定流量以下になったことを検出できれば、どのような構成であってもよい。例えば、絶縁油Rの流れによって揺動・開閉するゲート(片持ちゲート)が設けられ、絶縁油Rの流量が所定流量以下になると、ゲートが所定の位置までしか動かなく(開かなく)なり、これをセンサ・スイッチで検出して流量低下を検出する構成であってもよい。
【0023】
また、流量低下を示す所定流量とは、この流量以下になると変圧器101が焼損・損傷するおそれがある流量であり、変圧器101や冷却器104の容量などに応じて設定されるが、変圧器101の負荷に応じて調整・可変するようにしてもよい。そして、断油リレー2で流量低下が検出されて第1の整定時間(所定の整定時間)が経過すると、後述する第3のスイッチSW3がオンされる。
【0024】
ダイヤル温度計3は、絶縁油Rの温度を監視、検出する温度計であり、この実施の形態では、変圧器101の温度を絶縁油Rの温度とみなして変圧器101の温度を計測している。これに対して、絶縁油Rの温度を直接計測したり、外気温を絶縁油Rの温度とみなして外気温を計測したりしてもよい。このダイヤル温度計3は、2つの設定温度で接点・スイッチが動作するように構成されている。具体的には、比較的低温である第1の設定温度(所定の温度)T1以上を検出すると、後述する第1のスイッチSW1をオンし、比較的高温である第2の設定温度(過負荷温度)T2以上を検出すると、後述する第2のスイッチSW2をオンする。
【0025】
ここで、第1の設定温度T1とは、この温度未満になると絶縁油Rが高粘度になって流動性が低下し、断油リレー2で流量低下が検出されるおそれがある温度であり、絶縁油Rの種類・成分などによって設定(例えば、20℃)されている。さらに、この第1の設定温度T1を変圧器101の負荷などに応じて調整・可変にしてもよい。例えば、負荷が比較的大きい場合には、第1の設定温度T1を比較的低く設定して変圧器101の焼損・損傷を防止し、負荷が比較的小さい場合には、第1の設定温度T1を比較的高く設定して変圧器101の不要な切り離しを防止するようにしてもよい。
【0026】
また、第2の設定温度T2とは、第1の設定温度T1よりも高温で、この温度以上であると、変圧器101が過負荷状態(過剰温度状態)であると考えられる温度であり、変圧器101の容量・仕様などによって設定(例えば、70℃)されている。
【0027】
変圧器監視盤4は、断油リレー2やダイヤル温度計3の検出結果に基づいて、遠隔で遮断器CBを開閉制御などする監視制御盤であり、次のような制御などを行う。
【0028】
第1に、断油リレー2で絶縁油Rの流量低下が検出されて所定時間が経過し(所定時間継続して流量低下し)、かつ、ダイヤル温度計3で絶縁油Rの温度が第1の設定温度(所定の温度)T1以上であることが検出された場合に、遮断器CBを遮断して変圧器101を配電線Lから切り離す。すなわち、絶縁油Rの温度が第1の設定温度T1以上であれば絶縁油Rの粘度が低く流動性が高いため、このような状態で絶縁油Rの流量が低下した場合には、絶縁油Rの循環動作(送油ポンプ103等)に問題があり、かつ、低温ではないため、変圧器101が焼損・損傷するおそれがあるとして、変圧器101を配電線Lから切り離す。一方、絶縁油Rの温度が第1の設定温度T1未満の状態で断油リレー2による流量低下が検出されても、絶縁油Rが高粘度になって流動性が低下したためであり、かつ、低温では変圧器101が焼損・損傷するおそれがないため、変圧器101を配電線Lから切り離さない。
【0029】
この制御について、
図2の論理回路図および
図3の回路構成図に基づいて説明すると、ダイヤル温度計3で絶縁油Rの温度が第1の設定温度T1以上であることが検出されると、第1のスイッチSW1がオンする。また、断油リレー2で流量低下が検出されて第1の整定時間(所定の整定時間)が経過すると、第3のスイッチSW3がオンする。そして、
図2のアンド回路41、オア回路42を介してタイマ43の第2の整定時間が経過すると、トリップ信号を遮断器CBに送り変圧器101を配電線Lから切り離す。
【0030】
ここで、第1の整定時間と第2の整定時間を加算した時間が、絶縁油Rの流量低下が検出されてから変圧器101の切り離しを行うまでの所定時間(流量低下の継続時間)となる。そして、この所定時間、具体的には第1の整定時間は、変圧器101の負荷に応じて設定されている。例えば、負荷が比較的大きい場合には、第1の整定時間が比較的短く設定され、早期に変圧器101を切り離して変圧器101の焼損・損傷を防止できるようになっている。一方、負荷が比較的小さい場合には、第1の整定時間が比較的長く設定され、一時的に流量が低下しただけで不要に変圧器101を切り離すのを防止できるようになっている。なお、第2の整定時間は、後述する主電源の遮断や送油ポンプ103の電源遮断、モータの過電流・温度上昇が生じて、変圧器101を配電線Lから切り離す場合の整定時間(待ち時間)でもあるため、これらの事象も含めて共通的に適正な値に設定されている。
【0031】
第2に、断油リレー2で絶縁油Rの流量低下が検出されて第1の整定時間(所定の整定時間)が経過した場合、絶縁油Rの温度に関わらず、遠隔監視制御装置5に絶縁油Rの流量低下が発生した旨を表示する。すなわち、
図2の論理回路図に示すように、断油リレー2で流量低下が検出されて第1の整定時間が経過し、第3のスイッチSW3がオンされた場合、ダイヤル温度計3の第1のスイッチSW1のオン、オフに関わらず、第2の故障表示(重故障表示)を遠隔監視制御装置5に表示させる。ここで、遠隔監視制御装置5とは、変電所などにおいて各設備を遠隔監視、制御する装置であり、遠隔監視制御装置5のポジション・状態に合わせて第2の故障表示を個別に表示してもよいし、重故障や軽故障などにまとめて表示してもよい。
【0032】
第3に、絶縁油Rの温度が第2の設定温度T2以上の場合に、遠隔監視制御装置5に過負荷が発生した旨を表示する。すなわち、
図2の論理回路図に示すように、絶縁油Rの温度が第2の設定温度T2以上であることがダイヤル温度計3で検出されて第2のスイッチSW2がオンされた場合、第1の故障表示(軽故障表示)を遠隔監視制御装置5に表示させる。この際、遠隔監視制御装置5のポジション・状態に合わせて第1の故障表示を個別に表示してもよいし、重故障や軽故障などにまとめて表示してもよい。
【0033】
その他の制御などとして、
図2、
図3に示すように、主電源の遮断が生じて第4のスイッチSW4がオンされたり、送油ポンプ103の電源遮断が生じて第5のスイッチSW5がオンされたりして、タイマ43の第2の整定時間が経過すると、トリップ信号を遮断器CBに送って変圧器101を配電線Lから切り離す。同様に、モータの過電流・温度上昇(サーマル異常)が生じて第6のスイッチSW6がオンされたり、送油ポンプ103の故障が生じて第7のスイッチSW7がオンされたりして、タイマ43の第2の整定時間が経過すると、トリップ信号を遮断器CBに送って変圧器101を配電線Lから切り離す。
【0034】
次に、このような構成の変圧器保護システム1の作用、動作および変圧器保護システム1による変圧器保護方法について説明する。
【0035】
まず、配管102を介して変圧器101と冷却器104とを循環する絶縁油Rの流量を断油リレー2で監視するとともに、ダイヤル温度計3で絶縁油Rの温度を監視する。そして、絶縁油Rの温度が第1の設定温度T1以上である状態で、絶縁油Rの流量が所定流量以下になったことを断油リレー2で検出し、所定時間が経過した場合に、遮断器CBを遮断して変圧器101を配電線Lから切り離す。同時に、絶縁油Rの流量低下が発生した旨を遠隔監視制御装置5に表示する。また、絶縁油Rの温度が第2の設定温度T2以上に達した場合、過負荷が発生した旨を遠隔監視制御装置5に表示するものである。
【0036】
以上のように、このような構成の変圧器保護システム1および変圧器保護方法によれば、絶縁油Rの流量が低下して所定時間が経過し、かつ、絶縁油Rの温度が第1の設定温度T1以上である場合に、変圧器101が配電線Lから切り離される。つまり、絶縁油Rの温度が高く絶縁油Rの流動性が高い状態で、絶縁油Rの流量が低下した場合には、変圧器101を損傷させるおそれがあるとして、変圧器101が配電線Lから切り離される。これに対して、絶縁油Rの温度が低く(第1の設定温度T1未満で)絶縁油Rの流動性が低いために、絶縁油Rの流量が低下した場合には、変圧器101を損傷させるおそれが低いとして、変圧器101が配電線Lから切り離されない。
【0037】
また、絶縁油Rの流量が低下して所定時間が経過した場合、つまり、継続して絶縁油Rの流量が低下した場合に、変圧器101が配電線Lから切り離される。このため、一時的に流量が低下しただけで不要に変圧器101を配電線Lから切り離すことが防止されるとともに、流量低下に対する対処時間を確保することが可能となる。このようにして、不要な切り離し・停電をなくして、適正に変圧器101を保護することが可能となる。
【0038】
しかも、絶縁油Rの流量が低下してから変圧器101の切り離しを行うまでの所定時間・タイミングが、変圧器101の負荷に応じて設定されているため、負荷に応じた適正なタイミングで変圧器101を配電線Lから切り離すことが可能となる。例えば、負荷が大きい場合、所定時間つまり第1の整定時間を短く設定することで、早期に変圧器101を切り離して変圧器101の焼損・損傷を防止することができる。また、負荷が小さい場合、第1の整定時間を長く設定することで、一時的に流量が低下しただけで不要に変圧器101を切り離すのを防止することできる。このように、適正に変圧器101を保護することが可能となる。
【0039】
また、絶縁油Rの流量が低下して第1の整定時間が経過した場合、常に遠隔監視制御装置5に絶縁油Rの流量が低下した旨が表示されるため、流量低下に対する対処を適正、迅速に行うことが可能となる。また、第1の整定時間継続して絶縁油Rの流量が低下した場合にのみ遠隔監視制御装置5に表示されるため、一時的な流量低下による表示をなくして、必要なときに必要な表示、対処を行って、適正に変圧器101を保護することが可能となる。
【0040】
さらに、絶縁油Rの温度が第2の設定温度T2以上に達すると、遠隔監視制御装置5に過負荷が発生した旨が表示されるため、過負荷に対する対処を適正、迅速に行って、適正に変圧器101を保護することが可能となる。
【0041】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、ダイヤル温度計3で絶縁油Rの温度を監視して、絶縁油Rの温度が第1の設定温度T1以上になると自動的に第1のスイッチSW1をオンしているが、絶縁油Rの温度に応じて手動で第1のスイッチSW1をオンしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 変圧器保護システム
2 断油リレー(流量検出器)
3 ダイヤル温度計(温度検出器)
4 変圧器監視盤
5 遠隔監視制御装置(遠隔監視装置)
101 変圧器
102 配管
103 送油ポンプ
104 冷却器
105 冷却ファン
R 絶縁油
CB 遮断器
L 配電線(電路)