(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138686
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ガス遮断器開閉試験用圧力カバーおよびガス遮断器開閉試験方法
(51)【国際特許分類】
H02B 13/065 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H02B13/065 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049287
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】黒神 成章
【テーマコード(参考)】
5G017
【Fターム(参考)】
5G017AA06
5G017BB01
5G017BB11
5G017BB14
5G017EE06
5G017FF06
(57)【要約】
【課題】OFケーブルを外した状態でガス遮断器の開閉試験を行えるようにする。
【解決手段】OFケーブルヘッドが取り外された状態で金属圧力容器102の他端部にガス遮断器開閉試験用圧力カバー1を取り付け、ガス遮断器開閉試験用圧力カバー1の封入バルブ3から金属圧力容器102内にガスを封入して、金属圧力容器102内の圧力を所定圧力とし、この状態でガス遮断器101の開閉試験を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部にガス遮断器が接続され、他端部にOFケーブルヘッドが接続され、母線が収容されてSF6ガスが封入される金属圧力容器において、前記OFケーブルヘッドが取り外された状態で前記他端部を着脱自在に塞ぐカバー本体と、
前記カバー本体に設けられ、前記他端部から前記金属圧力容器内にガスを封入するための封入バルブと、
を備えることを特徴とするガス遮断器開閉試験用圧力カバー。
【請求項2】
前記OFケーブルヘッドが取り外された状態で前記金属圧力容器の他端部に、請求項1に記載のガス遮断器開閉試験用圧力カバーを取り付け、
前記ガス遮断器開閉試験用圧力カバーの封入バルブから前記金属圧力容器内にガスを封入して、前記金属圧力容器内の圧力を所定圧力とし、
この状態で前記ガス遮断器の開閉試験を行う、
ことを特徴とするガス遮断器開閉試験方法。
【請求項3】
前記金属圧力容器内に封入するガスとしてドライエアを用いる、
ことを特徴とする請求項2に記載のガス遮断器開閉試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断器の開閉試験時に用いる圧力カバーおよび、この圧力カバーを用いたガス遮断器開閉試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発電所において変圧器のOF(Oil Filled)ケーブルの取り替え期間中に、総合インターロック試験および主変圧器遮断器点検に伴うガス遮断器の開閉試験(空打ち)を行わなければならない場合がある。しかしながら、OFケーブルの取り替え時には、ガス遮断器に隣接する金属圧力容器(ケーブル立上箇所)のSF6ガス(六フッ化硫黄ガス)を抜いて大気圧とするため、ガス遮断器と金属圧力容器との間の絶縁スペーサにかかる差圧が、絶縁スペーサの耐圧以上となってしまう。そして、絶縁スペーサが変形して破損するおそれがあるため、この状態ではガス遮断器の開閉試験を行うことができなかった。
【0003】
一方、OFケーブル(受電ケーブル)を差し込んだ状態で耐圧試験を行える構造としたガス絶縁開閉装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このガス絶縁開閉装置は、試験電圧供給用ケーブルを差し込むスリップオンケーブル引込口と、OFケーブルを差し込む受電ケーブル引込口とを設け、スリップオンケーブル引込口と被試験部位との電路の接続、遮断を行う第一の電路遮断機構と、この第一の電路遮断機構による電路の接続、遮断時に受電ケーブル引込口と主回路との間の電路の遮断、接続を行う第二の電路遮断機構と、を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来、OFケーブルの取り替え中にガス遮断器の開閉試験を行うことができないため、OFケーブルの取り替えが完了して金属圧力容器にSF6ガスを封入した後に開閉試験を行わなければならない。しかしながら、開閉試験が遅くなり所望の定検期間を遵守できない場合があった。すなわち、金属圧力容器のSF6ガスを抜いて大気圧とすると、ガス遮断器の絶縁スペーサが変形、破損するため開閉試験が行えず、OFケーブルの取り替えが完了して金属圧力容器にSF6ガスを封入した後に開閉試験を行うと、所望の定検期間を遵守できない、という問題があった。
【0006】
一方、特許文献1のガス絶縁開閉装置では、現地での耐圧試験を簡易かつ迅速に行うことは可能であるが、OFケーブルを外した状態でガス遮断器の開閉試験を行うことはできない。
【0007】
そこで本発明は、OFケーブル(OFケーブルヘッド)を外した状態でガス遮断器の開閉試験を行うことを可能にする、ガス遮断器開閉試験用圧力カバーおよびガス遮断器開閉試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、一端部にガス遮断器が接続され、他端部にOFケーブルヘッドが接続され、母線が収容されてSF6ガスが封入される金属圧力容器において、前記OFケーブルヘッドが取り外された状態で前記他端部を着脱自在に塞ぐカバー本体と、前記カバー本体に設けられ、前記他端部から前記金属圧力容器内にガスを封入するための封入バルブと、を備えることを特徴とするガス遮断器開閉試験用圧力カバーである。
【0009】
請求項2の発明は、前記OFケーブルヘッドが取り外された状態で前記金属圧力容器の他端部に、請求項1に記載のガス遮断器開閉試験用圧力カバーを取り付け、前記ガス遮断器開閉試験用圧力カバーの封入バルブから前記金属圧力容器内にガスを封入して、前記金属圧力容器内の圧力を所定圧力とし、この状態で前記ガス遮断器の開閉試験を行う、ことを特徴とするガス遮断器開閉試験方法である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のガス遮断器開閉試験方法において、前記金属圧力容器内に封入するガスとしてドライエアを用いる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、OFケーブルヘッドが取り外された状態で、金属圧力容器の他端部をガス遮断器開閉試験用圧力カバーのカバー本体で塞ぎ、封入バルブから金属圧力容器内にガスを封入する。そして、金属圧力容器内の圧力を所定圧力にして、ガス遮断器と金属圧力容器との間の絶縁スペーサにかかる差圧が、絶縁スペーサの耐圧未満になるようにする。これにより、絶縁スペーサを変形・破損させることなく、OFケーブルを外した状態でガス遮断器の開閉試験(空打ち)を行うことが可能となる。このため、OFケーブルの取り替えが完了して金属圧力容器にSF6ガスを封入した後に開閉試験を行う必要がなくなり、早期に開閉試験を行って所望の定検期間を遵守することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、SF6ガスに代ってドライエアを金属圧力容器内に封入するため、SF6ガスの場合のように環境問題などを考慮して、ガス遮断器開閉試験用圧力カバーの取り外し前に特殊機器を使用してガス回収作業を行う必要がなく、費用および作業時間を削減することが可能となる。また、OFケーブルヘッドを外した状態での開閉試験(空打ち)では、通電状態となることがなく絶縁性を確保する必要がないため、ドライエアを封入しても適正に開閉試験を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態に係るガス遮断器開閉試験用圧力カバーを金属圧力容器に取り付けた状態を示す概念図である。
【
図2】この発明の実施の形態に係るガス遮断器の運転状態を示す概念図である。
【
図3】
図2の状態からOFケーブルヘッドを取り外した状態を示す概念図である。
【
図4】
図1のガス遮断器開閉試験用圧力カバーを示す正面図(a)と側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係るガス遮断器開閉試験用圧力カバー1を金属圧力容器102に取り付けた状態を示す概念図である。このガス遮断器開閉試験用圧力カバー1は、ガス遮断器101の開閉試験(空打ち)時に用いる圧力カバーであり、まず、ガス遮断器101周りの平常時の配設状態について説明する。
【0016】
すなわち、ガス遮断器101の通常の運転状態においては、
図2に示すように、母線106や変流器・変成器107などが収容された金属圧力容器102の一端部に、第1の絶縁スペーサ104を介してガス遮断器101が接続されている。また、金属圧力容器102の他端部には、第2の絶縁スペーサ105を介してOFケーブルヘッド103が接続されている。ここで、第1の絶縁スペーサ104は、流体・気体が通過できないスペーサで、第2の絶縁スペーサ105は、流体・気体が通過可能なスペーサとなっている。
【0017】
このような接続状態において、ガス遮断器101内にガスが封入され、その定格ガス圧力が0.6MPaに設定されている。また、金属圧力容器102内およびOFケーブルヘッド103内にSF6ガスが封入され、その定格ガス圧力が0.4MPaに設定されている。従って、第1の絶縁スペーサ104にかかる差圧が0.2Mpaとなり、この差圧では第1の絶縁スペーサ104が変形しないようになっている。なお、図中符号108は、接地開閉器を示す。
【0018】
一方、OFケーブルの取り替えなどのために、
図3に示すように、OFケーブルヘッド103が取り外された状態では、第2の絶縁スペーサ105を介して金属圧力容器102内に大気が充満し、金属圧力容器102内の圧力が大気圧(約1.15Mpa)となる。従って、第1の絶縁スペーサ104にかかる差圧が0.55Mpaとなり、この差圧では第1の絶縁スペーサ104が変形するおそれがある。換言すると、差圧が0.2Mpa程度では変形しないが、0.2Mpaよりも大きい差圧では変形するおそれがあるように、第1の絶縁スペーサ104の耐圧・強度が設定されている。
【0019】
このように、OFケーブルヘッド103が取り外されて金属圧力容器102内に大気が充満した状態では、第1の絶縁スペーサ104が変形するおそれがあり、この状態でガス遮断器101の開閉試験(空打ち)を行うと、振動や圧力変動によって第1の絶縁スペーサ104が破損・損傷するおそれがある。すなわち、OFケーブルヘッド103が取り外されたままではガス遮断器101の開閉試験を行えないため、ガス遮断器開閉試験用圧力カバー1を用いて開閉試験を行えるようにするものである。
【0020】
このガス遮断器開閉試験用圧力カバー1は、
図4に示すように、主として、カバー本体2と、封入バルブ3と、を備える。
【0021】
カバー本体2は、OFケーブルヘッド103が取り外された状態において、金属圧力容器102の他端部(開口部)を着脱自在に塞ぐ蓋体である。すなわち、金属圧力容器102の他端部(第2の絶縁スペーサ105)の端面と同等な径を有する円盤体で、金属圧力容器102内の圧力に耐えられるように材質、厚みが設定されている。また、外周側には、金属圧力容器102の他端部の端面に形成されたボルト孔(雌ネジ)と同位置に、複数のボルト挿入孔21が形成されている。
【0022】
そして、金属圧力容器102の他端部の端面にカバー本体2を重ね、ボルトを各ボルト挿入孔21に挿入して金属圧力容器102のボルト孔にねじ込むことで、カバー本体2つまりガス遮断器開閉試験用圧力カバー1が金属圧力容器102の他端部に取り付けられる。また、ボルトを外すことで、カバー本体2が金属圧力容器102の他端部から取り外れるものである。ここで、第2の絶縁スペーサ105を取り付けたままカバー本体2を取り付けられるようにしてもよいし、第2の絶縁スペーサ105を取り外した状態でカバー本体2を取り付けられるようにしてもよい。
【0023】
封入バルブ3は、カバー本体2の中央部に設けられ、金属圧力容器102の他端部から金属圧力容器102内にガスを封入するための弁である。この封入バルブ3の構造は、金属圧力容器102内にガスを注入して封止できればどのような構造であってもよいが、例えば、次のような構造となっている。
【0024】
すなわち、カバー本体2に挿入・装着された主管部31の側面に接続管部32が接続され、主管部31の上面側にハンドル33が配設されて、ハンドル33を回すことで主管部31内の弁体が開閉するようになっている。そして、接続管部32にガスタンク(コンプレッサ)のチューブを接続し、ハンドル33を一方に回して弁体を開けた状態で、ガスタンクから接続管部32および主管部31を介して金属圧力容器102内にガスを注入する。次に、金属圧力容器102内のガス圧が所定圧力に達した時点で、ガスタンクからの注入を止め、ハンドル33を他方に回して弁体を閉めることで、金属圧力容器102内に所定圧力のガスが封止されるものである。
【0025】
ここで、カバー本体2に圧力計を設け、ガス封入時の圧力を確認したり、その後(例えば、開閉試験時)の金属圧力容器102内の圧力を確認したりできるようにしてもよい。
【0026】
次に、このような構成のガス遮断器開閉試験用圧力カバー1を用いたガス遮断器開閉試験方法(試験前準備方法)について説明する。ここで、この実施の形態では、OFケーブルを取り替える際に、ガス遮断器101の開閉試験(空打ち)を行う場合を想定するが、OFケーブルヘッド103が取り外された状態であれば、その他のタイミングで開閉試験を行う場合にも適用可能である。
【0027】
まず、
図1に示すように、OFケーブルヘッド103が取り外された状態で、上記のようにして、金属圧力容器102の他端部(ケーブルヘッドタンク)にガス遮断器開閉試験用圧力カバー1を取り付ける。すなわち、カバー本体2の各ボルト挿入孔21にボルトを挿入して、金属圧力容器102のボルト孔にねじ込んで取り付ける。次に、上記のようにして、ガス遮断器開閉試験用圧力カバー1の封入バルブ3から金属圧力容器102内にガスを封入して、金属圧力容器102内の圧力を所定圧力にする。例えば、封入バルブ3のハンドル33を一方に回して弁体を開け、ガスタンクから金属圧力容器102内にガスを注入し、金属圧力容器102内のガス圧が所定圧力に達した時点で、ガスタンクからの注入を止めハンドル33を他方に回して弁体を閉める。
【0028】
ここで、金属圧力容器102内に封入するガスとしてドライエアを用いる。ドライエアとは、圧縮空気を除湿、乾燥させた空気であり、コンプレッサから供給する。また、金属圧力容器102内の所定圧力とは、第1の絶縁スペーサ104に作用する圧力、つまり、ガス遮断器101内の圧力と金属圧力容器102内の圧力との差圧が、第1の絶縁スペーサ104の耐圧よりも低くなる圧力である。この実施の形態では、運転状態における金属圧力容器102内の定格ガス圧力である0.4MPaに設定されている。ここまでの工程が、試験前準備方法となる。
【0029】
そして、このように、金属圧力容器102内の圧力が所定圧力となり、第1の絶縁スペーサ104が変形しない状態で、ガス遮断器101の開閉試験(空打ち)を行うものである。
【0030】
以上のように、このガス遮断器開閉試験用圧力カバー1およびガス遮断器開閉試験方法によれば、OFケーブルヘッド103つまりOFケーブルが取り外された状態で、金属圧力容器102の他端部をガス遮断器開閉試験用圧力カバー1のカバー本体2で塞ぎ、封入バルブ3から金属圧力容器102内にガスを封入する。そして、金属圧力容器102内の圧力を所定圧力にして、ガス遮断器101と金属圧力容器102との間の第1の絶縁スペーサ104にかかる差圧が、第1の絶縁スペーサ104の耐圧未満になるようにする。これにより、第1の絶縁スペーサ104を変形・破損させることなく、OFケーブルを外した状態でガス遮断器101の開閉試験(空打ち)を行うことが可能となる。このため、OFケーブルの取り替えが完了して金属圧力容器102にSF6ガスを封入した後に開閉試験を行う必要がなくなり、早期に開閉試験を行って所望の定検期間を遵守することが可能となる。
【0031】
また、SF6ガスに代ってドライエアを金属圧力容器102内に封入するため、SF6ガスの場合のように環境問題などを考慮して、ガス遮断器開閉試験用圧力カバー1の取り外し前に特殊機器を使用してガス回収作業を行う必要がなく、費用および作業時間を削減することが可能となる。また、OFケーブルヘッド103を外した状態での開閉試験(空打ち)では、通電状態となることがなく絶縁性を確保する必要がないため、ドライエアを封入しても適正に開閉試験を行うことが可能となる。
【0032】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、ガス遮断器開閉試験用圧力カバー1のカバー本体2が円盤形となっているが、金属圧力容器102の他端部を塞げればどのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ガス遮断器開閉試験用圧力カバー
2 カバー本体
3 封入バルブ
101 ガス遮断器
102 金属圧力容器
103 OFケーブルヘッド
104 第1の絶縁スペーサ
105 第2の絶縁スペーサ
106 母線