(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138687
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】抜け止め装置
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
E02D17/20 101
E02D17/20 102
E02D17/20 103
E02D17/20 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049288
(22)【出願日】2023-03-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催日 令和4年11月16日 集会名 令和4年度森林・林業交流研究発表会 開催場所 近畿中国森林管理局(桜ノ宮合同庁舎)4階大会議室ならびにWEBライブ配信 大阪府大阪市北区天満橋1丁目8―75 ウエブサイトの掲載日 令和5年2月12日 令和4年度森林・林業交流研究発表会(2日目)・発表順15番(発表課題:都市近郊林の小渓流における土砂等の流下抑制対策について) 掲載アドレス https://www.youtube.com/watch?v=MwOShPY5eXs
(71)【出願人】
【識別番号】507395441
【氏名又は名称】株式会社パルパルス
(74)【代理人】
【識別番号】100194249
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】石森 良房
(72)【発明者】
【氏名】岡部 宏秋
(72)【発明者】
【氏名】石森 絵里香
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DB02
2D044DB33
2D044DB38
(57)【要約】
【課題】杭等の支持棒に対する抜け止め位置を任意の位置に設定することができ、工具を用いた組付け作業を不要とし、杭等の取り付け部材の防錆性が高い抜け止め装置の提供。
【解決手段】抜け止め装置1は、地面GLに後端側が打ち込まれるネジフシ棒鋼製の支持棒10に、先端側から順に、線材を螺旋状に複数巻きに巻回した調整部材40を遊嵌し、ワイヤーロープ150の先端部に取り付けられたシンブル151を遊嵌し、線材を螺旋状に1巻きに巻回するとともに両巻き端にアーム部32A、32Bを有するワッシャー30を遊嵌し、最後に線材を螺旋状に複数巻きに巻回し、支持棒10のネジフシ17に対して径方向及び軸方向に遊びを有する螺着体20を螺着し、螺着体20とワッシャー30とを互いに螺合させることにより螺着体20を支持棒10に固定する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ピッチで棒鋼本体にネジフシが突出形成され、被取り付け部に後端側が取り付けられるネジフシ棒鋼製の支持棒と、
線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された螺着体本体部が前記支持棒のネジフシに径方向および軸方向に遊びを有して螺合し、前記支持棒の先端側に螺着される螺着体と、
線材を螺旋状に1巻きに巻回した内径部が形成されたワッシャー本体部が前記支持棒に挿入され、前記ワッシャー本体部の巻き始端部と巻き終端部の双方またはいずれか一方に径方向外方に延びまたは拡がるアーム部を形成し、前記螺着体と前記支持棒に通す被拘束物との間に配置されるワッシャーと、
を有し、
前記螺着体と前記ワッシャーとが互いに螺合して固定される抜け止め装置。
【請求項2】
所定ピッチで棒鋼本体にネジフシが突出形成され、被取り付け部に後端側が取り付けられるネジフシ棒鋼製の支持棒と、
線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された螺着体本体部が前記支持棒のネジフシに径方向および軸方向に遊びを有して螺合し、前記支持棒の先端側に螺着される螺着体と、
線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された調整部材本体部が前記支持棒に遊嵌されて前記支持棒の後端側に配置される調整部材と、
を有し、
前記調整部材が前記被拘束物内で前記被拘束物に連結され、前記螺着体が前記非拘束物内に配置されると共に前記被拘束物と係合する抜け止め装置。
【請求項3】
所定ピッチで棒鋼本体にネジフシが突出形成され、被取り付け部に後端側が取り付けられるネジフシ棒鋼製の支持棒と、
線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された螺着体本体部が前記支持棒のネジフシに径方向および軸方向に遊びを有して螺合し、前記支持棒の先端側に螺着される螺着体と、
線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された調整部材本体部が前記支持棒に遊嵌されて前記支持棒の後端側に配置される調整部材と、
線材を螺旋状に1巻きに巻回した内径部が形成されたワッシャー本体部が前記支持棒に挿入され、前記ワッシャー本体部の巻き始端部と巻き終端部の双方またはいずれか一方に径方向外方に延びまたは拡がるアーム部を形成し、前記螺着体と前記調整部材との間に配置されるワッシャーと、
を有し、
前記調整部材が前記被拘束物内で前記被拘束物に連結され、前記螺着体と前記ワッシャーとが互いに螺合して固定され、前記ワッシャーが前記被拘束物の外側で前記被拘束物に係合する抜け止め装置。
【請求項4】
所定ピッチで棒鋼本体にネジフシが突出形成され、被取り付け部に後端側が取り付けられるネジフシ棒鋼製の支持棒と、
線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された螺着体本体部が前記支持棒のネジフシに径方向および軸方向に遊びを有して螺合し、前記支持棒の先端側に螺着される螺着体と、
線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された調整部材本体部が前記支持棒に遊嵌されて前記支持棒の後端側に配置される調整部材と、
線材を螺旋状に1巻きに巻回した内径部が形成されたワッシャー本体部が前記支持棒に挿入され、前記ワッシャー本体部の巻き始端部と巻き終端部の双方またはいずれか一方に径方向外方に延びまたは拡がるアーム部を形成し、前記螺着体と前記調整部材との間に配置されるワッシャーと、
を有し、
前記螺着体と前記ワッシャーとが互いに螺合して固定され、前記支持棒に通す被拘束物を前記ワッシャーと前記調整部材との間に配置する抜け止め装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の抜け止め装置において、
前記螺着体は前記螺着体本体部の一端側で、前記支持棒に螺着した状態において前記支持棒の先端側に径方向外方に向けて延びるアーム部を設けたことを特徴とする抜け止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の鋼材の外周に螺旋状の節を形成したネジフシ棒鋼、節とリブを形成した異形鉄筋等の鉄筋を杭、支柱とした際、杭や支柱に挿通される部材が杭等から抜け出るのを防ぐ抜け止め技術に関する。
【背景技術】
【0002】
土木、建築、林業、農業等の分野において、平坦地、傾斜地あるいは法面等に支柱等の土木建築資材、獣害対策フェンス、土砂等の流出防止資材等を設置する場合、設置物をアンカー装置により支持して転倒、移動を防止している。アンカー装置としては、例えば地面に打ち込まれる鉄系素材で形成されている杭の上端部に、設置物に取り付けられるワイヤーロープの一端部が括りつけられた構成が提案されている(特許文献1、
図11(a)、(b))。特許文献1の
図11(a)、(b)に開示のアンカー装置は、設置物である菱形金網を側面渦巻形状に複数巻きに巻回し径方向において所定の空間層を形成するスケルトン構造の山腹保全資材(環境保全資材)を斜面地に保持するために使用される。特許文献1の
図11(a)に開示のアンカー装置は、環境保全資材を直接保持する構成であり、特許文献1の
図11(b)に開示のアンカー装置は、環境保全資材に対しワイヤーロープを介して保持するワイヤーロープ保持構成としている。
【0003】
特許文献1に開示の直接保持方式のアンカー装置とワイヤーロープ保持方式のアンカー装置は、地面に打ち込んだ杭の上端部に通し孔を形成している。直接保持方式のアンカー装置において、側面渦巻形状の環境保全資材の高さ方向の全長に渡って菱形金網の網目にねじ込んだアンカーコイル(鉄線等を螺旋状に巻回した剛性を有するコイル形状体)の上端側の端末線材を杭の通し孔に差し込んで固定することで、アンカーコイルが杭からの抜けを止める抜け止め装置を構成している。この抜け止め装置は、環境保全資材が杭とアンカーコイルを介して弾性的に保持しているため、環境保全資材に大きな衝撃力が加わった場合、アンカーコイルが衝撃力を吸収し、杭へ大きな衝撃力が直接加わることを防ぐ衝撃緩衝機能を備えている。
【0004】
また、特許文献1に開示のワイヤーロープ保持方式のアンカー装置において、ワイヤーロープの一端部に形成した輪部を予め抜け止めキャップ内に配置し、輪部を杭に抜け止めキャップと共に通し、さらに抜け止め輪を杭の通し孔に通して杭にワイヤーロープを取り付けることにより、輪部が杭から抜け出るのを止める抜け止め装置を構成している。この抜け止め装置は、ワイヤーロープの輪部を介して抜け止めキャップが抜け止め輪に当接するまで杭の長手方向に対して移動可能としているため、環境保全資材に大きな衝撃力が加わった場合、輪部が移動して衝撃力を吸収し、杭へ大きな衝撃力が直接加わる衝撃緩衝機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の直接保持方式およびワイヤーロープ保持方式のアンカー装置に設けられる抜け止め装置は、杭に設けた通し孔の位置が杭を地面に打ち込む深さにより上下に移動する。例えば杭を打ち込む地中に岩があったり軟弱であったりすると杭を予定の長さに打ち込めず、通し孔の高さが予定よりも高く、また低くなる。このため、通し孔の位置とアンカーコイルの上端位置、ワイヤーロープの輪部の取り付け高さにずれが生じる。
【0007】
また、特許文献1に開示の抜け止め装置は、通し孔にアンカーコイルの上端側の端末線材を通すだけでは外れるおそれがあるため、ペンチ等の工具で通し孔を貫通した端部を捩じ曲げる作業が必要となる。しかし、一般にアンカー装置施工する施工現場は斜面地が殆どであり、作業環境が良いとは言えず、できるだけ工具を用いた作業を避けたいという要望がある。
【0008】
さらに、抜け止めキャップ等を用いる抜け止め装置は、ワイヤーロープの輪部を杭に取り付ける作業が煩雑で、上記のように斜面地が多い作業現場では、抜け止め装置の取り付け作業は簡単に行えることが要望されている。
【0009】
また、杭の上端部に通し孔を後加工で開けると、通し孔に早く錆が生じる。杭において錆の発生はできるだけ避けなければならないが、通し孔に錆が発生すると、錆が拡がって通し孔の周囲の強度低下を招くおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、杭等の支持棒に対する抜け止め位置を任意の位置に設定することができ、工具を用いた組付け作業を不要とし、杭等の取り付け部材の防錆性が高い抜け止め装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題を解決する抜け止め装置の第1発明は、所定ピッチで棒鋼本体にネジフシが突出形成され、被取り付け部に後端側が取り付けられるネジフシ棒鋼製の支持棒と、線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された螺着体本体部が前記支持棒のネジフシに径方向および軸方向に遊びを有して螺合し、前記支持棒の先端側に螺着される螺着体と、線材を螺旋状に1巻きに巻回した内径部が形成されたワッシャー本体部が前記支持棒に挿入され、前記ワッシャー本体部の巻き始端部と巻き終端部の双方またはいずれか一方に径方向外方に延びまたは拡がるアーム部を形成し、前記螺着体と前記支持棒に通す被拘束物との間に配置されるワッシャーと、を有し、前記螺着体と前記ワッシャーとが互いに螺合して固定される構成としている。
本発明の課題を解決する抜け止め装置の第2発明は、所定ピッチで棒鋼本体にネジフシが突出形成され、被取り付け部に後端側が取り付けられるネジフシ棒鋼製の支持棒と、線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された螺着体本体部が前記支持棒のネジフシに径方向および軸方向に遊びを有して螺合し、前記支持棒の先端側に螺着される螺着体と、線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された調整部材本体部が前記支持棒に遊嵌されて前記支持棒の後端側に配置される調整部材と、を有し、前記調整部材が前記被拘束物内で前記被拘束物に連結され、前記螺着体が前記非拘束物内に配置されると共に前記被拘束物と係合する構成としている。
【0012】
本発明の課題を解決する抜け止め装置の第3発明は、所定ピッチで棒鋼本体にネジフシが突出形成され、被取り付け部に後端側が取り付けられるネジフシ棒鋼製の支持棒と、線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された螺着体本体部が前記支持棒のネジフシに径方向および軸方向に遊びを有して螺合し、前記支持棒の先端側に螺着される螺着体と、線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された調整部材本体部が前記支持棒に遊嵌されて前記支持棒の後端側に配置される調整部材と、線材を螺旋状に1巻きに巻回した内径部が形成されたワッシャー本体部が前記支持棒に挿入され、前記ワッシャー本体部の巻き始端部と巻き終端部の双方またはいずれか一方に径方向外方に延びまたは拡がるアーム部を形成し、前記螺着体と前記調整部材との間に配置されるワッシャーと、を有し、前記調整部材が前記被拘束物内で前記被拘束物に連結され、前記螺着体と前記ワッシャーとが互いに螺合して固定され、前記ワッシャーが前記被拘束物の外側で前記被拘束物に係合する構成としている。
【0013】
本発明の課題を解決する抜け止め装置の第4発明は、所定ピッチで棒鋼本体にネジフシが突出形成され、被取り付け部に後端側が取り付けられるネジフシ棒鋼製の支持棒と、線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された螺着体本体部が前記支持棒のネジフシに径方向および軸方向に遊びを有して螺合し、前記支持棒の先端側に螺着される螺着体と、線材を螺旋状に複数巻きに巻回して内径部が形成された調整部材本体部が前記支持棒に遊嵌されて前記支持棒の後端側に配置される調整部材と、線材を螺旋状に1巻きに巻回した内径部が形成されたワッシャー本体部が前記支持棒に挿入され、前記ワッシャー本体部の巻き始端部と巻き終端部の双方またはいずれか一方に径方向外方に延びまたは拡がるアーム部を形成し、前記螺着体と前記調整部材との間に配置されるワッシャーと、を有し、前記螺着体と前記ワッシャーとが互いに螺合して固定され、前記支持棒に通す被拘束物を前記ワッシャーと前記調整部材との間に配置する構成としている。
【0014】
本発明の課題を解決する抜け止め装置の第5発明は、第1発明から第4発明のいずれかにおいて、前記螺着体は前記螺着体本体部の一端側で、前記支持棒に螺着した状態において前記支持棒の先端側に径方向外方に向けて延びるアーム部を設けた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、被拘束物を地中に埋める場合、被拘束物が埋まる地盤が洗堀等のおそれがなければ、被拘束物が下がるおそれがなく、螺着体の移動がワッシャーにより規制され、被拘束物の抜けが防止される。
第2発明によれば、調整部材を介して支持棒に被拘束物が支持される構成において、螺着体が被拘束物と係合することで支持棒の軸方向に対する被拘束物の移動が規制されて抜けが防止される。また、支持棒に対する螺着体の螺着位置を調整することにより、支持棒に対する抜け止め位置を任意の位置に設定することができる。また、螺着体を手で握って回すだけで支持棒に対して螺進するため、工具を用いた組付け作業を不要とし、さらには、支持棒に孔を開ける必要がないため、支持棒の防錆性が高く、長期にわたって杭等の機能を維持することができる。
【0016】
また、螺着体と被拘束物との係合を解除することで螺着体を支持棒に対して逆方向に回して螺着体を支持棒から取り外し、被拘束物の交換を可能とする。
【0017】
第3発明によれば、調整部材を介して被拘束物が支持棒に支持され、被拘束物がワッシャーに係合することで支持棒の軸方向に対する被拘束物の移動が規制される。そして、螺着体がワッシャーと螺合して螺着体が支持棒に固定され、被拘束物の抜けが防止される。
【0018】
一方、支持棒に対する螺着体の螺着位置を調整することにより、支持棒に対する抜け止め位置を任意の位置に設定することができる。また、螺着体を手で握って回すだけで支持棒に対して螺進するため、工具を用いた組付け作業を不要とし、さらには、支持棒に孔を開ける必要がないため、支持棒の防錆性が高く、長期にわたって杭等の機能を維持することができる。
【0019】
さらに、螺着体とワッシャーとの螺合を解除すると共にワッシャーと被拘束物との係合を解除すことにより、螺着体を支持棒に対して逆方向に回して螺着体を支持棒から取り外し、さらにワッシャーを支持棒から取り外すことにより被拘束物の交換を可能とする。
【0020】
第4発明によれば、ワッシャーが螺着体と螺合して螺着体を支持棒の任意の位置に固定でき、またワッシャーのアーム部が非拘束物と当接して被拘束物の抜けを防止することができる。さらに、螺着体を手で握って回すだけで支持棒に対して螺進するため、工具を用いた組付け作業を不要とし、さらには、支持棒に孔を開ける必要がないため、支持棒の防錆性が高く、長期にわたって杭等の機能を維持することができる。
【0021】
一方、例えば支持棒を杭として使用し、地面に打ち込んだ場合、地表面が洗堀されて地面が下がっても調整部材は被拘束物を保持し、支持棒の軸方向に対する被拘束物の自由移動を阻止し、被拘束物が螺着体へ衝突して支持棒に対する螺着体の緩みを防止できる。
【0022】
第5発明によれば、螺着体を支持棒に対して螺進させる際、螺着体に設けたアーム部を手で握って回すことで楽に螺着体を螺進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による抜け止め装置の第1実施形態を示す正面図である。
【
図2】(a)は
図1に示す抜け止め装置を構成する杭の正面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【
図3】(a)は
図1に示す抜け止め装置を構成する螺着体の正面図、(b)は(a)のB矢視図
【
図4】(a)(b)はそれぞれ
図3に示す螺着体の変形例を示す正面図、(c)(d)は(a)の左側面図で、(c)は弧状アームを示し、(d)は直線状アームを示す。
【
図5】(a)は
図1に示す抜け止め装置を構成するワッシャーの正面図、(b)は(a)の上面図、(c)は(a)に示すワッシャーの第1変形例を示す正面図である。
【
図6】(a)は
図5(a)に示すワッシャーの第2変形例を示す正面図、(b)は(a)の上面図である。
【
図7】(a)は
図5(a)に示すワッシャーの第3変形例を示す正面図、(b)は(a)の上面図である。
【
図8】(a)は
図5(a)に示すワッシャーの第4変形例を示す正面図、(b)は(a)の上面図である。
【
図9】(a)は
図5(a)に示すワッシャーの第5変形例を示す正面図、(b)は(a)の上面図である。
【
図10】第1実施形態の抜け止め装置による螺着体とワッシャーとの結合状態を示す図である。
【
図11】(a)は第1実施形態の抜け止め装置による第1抜け止め施工法を示す正面図、(b)は第1実施形態の抜け止め装置(ワッシャーを除く)による第2抜け止め施工法を示す正面図である。
【
図12】第1実施形態の抜け止め装置による第3抜け止め施工法を示す図である。
【
図13】
図12に示す第3抜け止め施工法に使用するワイヤーロープの先端部を示す図である。
【
図14】
図12、
図13に示す第3抜け止め施工法による非拘束体の取り付け状態を示す図である。
【
図15】(a)は本発明による抜け止め装置の第2実施形態を示す正面図、(b)は(a)に示す支持棒の左側面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は第4螺着体の正面図である。
【
図16】(a)は
図15(a)に示す抜け止め装置を構成する異形鉄筋を示し、(b)~(d)は異径鉄筋の他の節構成を示す正面図、(e)は第4螺着体の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0025】
第1実施形態
図1は本発明による抜け止め装置の第1実施形態を示す。
【0026】
抜け止め装置1の構成
第1実施形態の抜け止め装置1は、地面GL等の被取り付け部に後端側が取り付けられる支持棒であるネジフシ棒鋼10と、ネジフシ棒鋼10のネジフシに螺合する第1螺着体20と、ネジフシ棒鋼10に遊嵌またはネジフシに螺合するワッシャー30と、ネジフシ棒鋼10に遊嵌される調整部材40とにより構成される。抜け止め装置1は、例えば
図13に示すネジフシ棒鋼10を地面GLに打ち込んで、環境保全資材100を支持する場合等はアンカー装置として機能する。ネジフシ棒鋼10に対し、後端側から上方の先端側に軸方向L1に沿って調整部材40、ワッシャー30、第1螺着体20が配置される。
【0027】
ネジフシ棒鋼10の構成
ネジフシ棒鋼10は、JIS G3112・2020に規定されており、
図2に示すように、直径D1の棒鋼本体11の外周面にフシ(節)12を第1ピッチP1で螺旋状に例えば右ネジ回りに形成している。棒鋼本体11は、
図2(b)に示す横断面で見て、側面が平坦面に形成された対向する第1対辺13および第2対辺14と、第1対辺13および第2対辺14に連設する同一半径の円弧状の弧面に形成された対向する第3対辺15および第4対辺16とにより形成されている。ネジフシ棒鋼10は、第3対辺15と第4対辺16の表面に螺旋状のフシ12を第1ピッチP1で突出形成したネジフシ17を形成し、ネジフシ17の外径をD2とする。
【0028】
ネジフシ棒鋼10は、棒鋼本体11の対向する第1対辺13と第2対辺14間の厚みをB、隙間をTとする。一例として、呼び名D13のネジフシ棒鋼10において、直径D1は12.0mm、フシ外径D2は14.0mm、隙間Tの和は6.2mm(隙間T=3.1mm)、フシ12の第1ピッチP1は7.0mm、フシ12の高さH1は1.00mmである。
第1螺着体20の構成
第1螺着体20は、円形断面の線材Wを右回り方向に複数回の巻き数で螺旋状に隙間(ピッチ)を有して巻回し、円形の内周部(内径部)20Iを形成した円筒状の第1螺着体本体部21を有し、第1螺着体本体部21の一端側端末である第1端末21aと他端側端末である第2端末21bは巻回状態に維持されている(この端末をノーマル端末と称す)。第1螺着体本体部21の線材Wとしては、軟線、鋼線(ステンレス鋼線、亜鉛メッキ鋼線、亜鉛アルミメッキ鋼線等)が使用される。
【0029】
図3(a)に示すように、第1螺着体本体部21は、巻き数(N)を4とし、
図3(a)において左端から右端に向かって1巻き目(第1巻き目)22a、2巻き目(第2巻き目)22b、3巻き目(第3巻き目)22c、4巻き目(第4巻き目)22dとする。なお、本発明において、巻き数(N)は、本実施形態の4巻きに限定されるものではなく、例えば5巻きであっても良く、1,2,3,4のような自然数でもよく、3巻きと半ピッチ分の巻き数のように、自然数の巻き数でなくても良い。
【0030】
第1螺着体本体部21の第1巻き目22aから第5巻き目22eの間隔(第2ピッチ)は、全て等しい等ピッチに形成しており、ネジフシ17の第1ピッチP1と同じ値あるいは若干大きい値としている。第1螺着体本体部21の両端は、第1端末21aと第2端末21bを第2ピッチP2で巻回することにより端末の第1巻き目22aと第5巻き目22eを開放した形態(以下、開放端と称す)としている。第1巻き目22aの第2ピッチP2の値を第1ピッチP1の値よりも若干小さくすると、棒鋼本体11の節12を第1巻き目22aが挟持し、第1螺着体10をネジフシ棒鋼10に対して巻き付ける力の抵抗となり、巻き付けおよび巻き戻しに力を要する。その結果、第1螺着体10をネジフシ棒鋼10に巻き付ける際、巻き付けを解除すると、その位置に第1螺着体10が停止する。
【0031】
第1螺着体20は、ネジフシ棒鋼10の端から螺入される。第1螺着体本体部21の内径をD3、外径をD4、線材Wの線径をd1とする。内径D3は、ネジフシ棒鋼10の棒鋼本体11の直径D1よりも大きく、フシ外径D2よりも小さい値としている(D1<D3<D2)。第1螺着体本体部21の線材Wの線径d1は、第1ピッチP1よりも小さい値とし、各巻き目において隣接する線材同士が接触する密巻きとならないようにしている。ネジフシ棒鋼10の節12は、横断面が略台形形状に形成されているため、第1螺着体本体部21の内径を大きくすると第1螺着体本体部21の内周面側の線材と節12の間に隙間が生じる。また線材Wの線径d1を小さくすれば線材と節12との間の隙間はより拡がる。本実施形態において、第1螺着体本体部21は、ネジフシ棒鋼10に対して径方向および軸方向に遊びを有するように線径d1を設定している。
【0032】
第1螺着体本体部21の第2ピッチP2をネジフシ17の第1ピッチP1と等ピッチとしても、線径d1の設定で第1螺着体本体部21はネジフシ棒鋼10に対して径方向および軸方向に遊びを設けることができる。遊びの存在で第1螺着体20は、手で直接第1螺着体本体部21を回してネジフシ棒鋼10のネジフシ17にスムーズに螺合させることができる。
【0033】
ネジフシ棒鋼10を例えば地中に打ち込んで支柱として使用する場合、ネジフシ棒鋼10の上端をハンマー等で叩くと、棒鋼本体11の上端が少し変形する。また長尺のネジフシ棒鋼10を支柱として適当な長さに切断して使用する場合には切り口にバリが残る。このような変形、バリが存在すると、第1螺着体本体部21の螺入に障害となる。しかし、第1螺着体本体部21がネジフシ棒鋼10に対して径方向および軸方向に遊びを有するため、ネジフシ棒鋼10の棒鋼本体11の上端に変形、バリなどあっても、第1螺着体20の螺入が可能となる。
【0034】
また、棒鋼本体11のネジフシ17の第1ピッチP1に対し、第1螺着体本体部21の第2ピッチP2を若干大きくしても、巻き数(N)を4巻程度と少なくすれば、第2ピッチP2と第1ピッチP1の差を第1螺着体本体部21がネジフシ17に対する軸方向の遊びにより吸収することができる。
【0035】
本実施形態において、第1螺着体20の第1螺着体本体部21がネジフシ棒鋼10に対して径方向および軸方向に遊びを持たせている理由としては、第1螺着体20をネジフシ棒鋼10に対して軽い力で螺合できるようにすること、第1螺着体本体部21の製作誤差を吸収可能とすること等を例示できる。
【0036】
第1螺着体20の変形例
第1螺着体20は、第1螺着体本体部21の第1端末20aと第2端末20bは巻回される線材の先端が巻回半径に保持される前述したノーマル端末としているが、これに限定されるものではない。
図4(a)は第1螺着体20の第1変形例の第2螺着体20Aを示し、
図4(b)は第2変形例の第3螺着体20Bを示す。第1変形例の第2螺着体20Aは、6巻きの第2螺着体本体部21Aの第1端末21aと第2端末21bは、ノーマル端末位置からさらに径方向外方に向けて延出し、延出部を第1アーム部23Aと第2アーム部23Bとした構成としている。第2螺着体本体部21Aは第1螺着体本体部21と同構成としている。また、第2変形例の第3螺着体20Bは、6巻きの第3螺着体本体部21Bの第1端末21aをノーマル端末位置からさらに径方向外方に向けて延出し、延出部を第3アーム部23Cとした構成とし、第2端末21bをノーマル端末とした構成としている。第3螺着体本体部21Bは第1螺着体本体部21と同構成としている。
【0037】
第1アーム部23Aと第2アーム部23Bの形状として、
図4(c)に示すように、弧形状とした構成、
図4(d)に示すように直線形状とした構成を例示することができる。また第3アーム部23Cも第1アーム部23Aと同様に弧形状、直線形状とすることができる。
【0038】
第1、第2変形例によれば、第2螺着体本体部21Aと第3螺着体本体部21Bは共にネジフシ棒鋼10に対して径方向および軸方向に遊びが存在することにより、第2螺着体20A、第3螺着体20Cをネジフシ棒鋼10に螺着した状態において、例えば第1アーム部23Aに軸方向の力を加えると、第2螺着体20Aはネジフシ棒鋼10に対して傾斜し、ネジフシ17の節12に第2螺着体本体部20Aの内周面側の線材Wが当接し、強制的に第2螺着体20Aの回転が阻止される。
【0039】
第1ワッシャー30の構成
第1ワッシャー30は、
図5(a)(b)に示すように、鉄等の線材Wを螺旋状に第3ピッチP3で1巻き巻回した環状の第1ワッシャー本体部31を有し、第1ワッシャー本体部31の一端31aと他端31bを径方向外方に向けて延出し、延出部を互いに相反する方向に延びる第4アーム部32A、第5アーム部32Bとした構成としている。また第3ピッチP3は第1ピッチP1と同じ値としている。
図5(b)に示すように、第4アーム部32Aと第5アーム部32Bは、直線形状としている。第1ワッシャー本体部31の内径D5は、ネジフシ棒鋼10の棒鋼本体11の外径D1よりも大径でネジフシ17の外径D2よりも小径とし、ネジフシ17に螺合できるサイズとしている。また、線材Wの線径d2は、第1ピッチP1よりも小さい値とし、棒鋼本体11に螺合する第1ワッシャー本体部31が棒鋼本体11に対して軸方向、径方向および軸回りに自由に移動できるようになっている。特に、第1ワッシャー本体部31の内径D5をネジフシ17の外径D2よりもわずかに小径とすると、棒鋼本体11の節12の先端部と第1ワッシャー本体部31の内周部の先端部とが係合するため、棒鋼本体11の軸方向における軸線に対する傾きが大きくなり、第4アーム部32Aと第5アーム部32Bと棒鋼本体11の軸線に対する振れ範囲が大きくなる。
【0040】
なお、第1ワッシャー本体部31の内径D5をネジフシ17の外径D2よりも大きくして第1ワッシャー30をネジフシ棒鋼10に遊嵌できるようにし、第1ワッシャー30をネジフシ棒鋼10にスムーズに装着できるようにしても良い。この場合、
図5(c)に示すように、第1ワッシャー本体部31の軸心L2に沿った方向における第4アーム部32Aと第5アーム部32Bとの線材間の間隔をゼロとする密着巻きとしても良い。
【0041】
第1ワッシャー30の第4アーム部32Aと第5アーム部32Bの先端間の長さMは、螺着体20の外径および調整部材40の外径よりも大きなサイズとし、さらには抜け防止対称である被拘束物が干渉して抜け止めできるサイズとしている。
【0042】
第1ワッシャー30の変形例
図6~
図9は第1ワッシャー30の第1変形例~第4変形例を示す。
【0043】
図6に示す第1変形例の第2ワッシャー30Aは、第1ワッシャー30の第4アーム部32Aと第5アーム部32Bの先端部を第1ワッシャー本体部31の軸心L2の軸方向に沿って略直角に折り曲げた第1折り曲げ部32a、第2折り曲げ部32bを設けた構成としている。なお、第1折り曲げ部32aと第2折り曲げ部32bは破線で示すように、棒鋼本体11の軸心L1の軸方向に沿った形状としても良い。第1折り曲げ部32aと第2折り曲げ部32bを手で握ることで作業性が向上する。
【0044】
図7に示す第2変形例の第3ワッシャー30Bは、第1ワッシャー30の第4アーム部32Aと第5アーム部32Bの先端部を軸心L2の回りに弧形状に湾曲した第1湾曲部32c、第2湾曲部32dを設けた構成としている。第1湾曲部32c、第2湾曲部32dの先端部は内側に向けて折り曲げている。
【0045】
図8に示す第3変形例の第4ワッシャー30Cは、第1ワッシャー30の第4アーム部32Aと第5アーム部32Bの先端部を軸心L2の回りに半円弧形状に湾曲した第3湾曲部32e、第4湾曲部32fを設けた構成としている。
【0046】
図9に示す第4変形例の第5ワッシャー30Dは、第1ワッシャー30の第4アーム部32Aと第5アーム部32Bの先端部を軸心L2の回りに略平面コ字形状に折り曲げた第3折り曲げ部32g、第4折り曲げ部32hを設けた構成としている。
【0047】
調整部材40の構成
調整部材40は、
図1および
図10に示すように、円形断面の線材Wを右回り方向に複数回の巻き数で螺旋状に隙間(ピッチ)を有して巻回し、円形の内周部を形成した円筒状の調整部材本体部41を有し、調整部材本体部41の一端側端末である第3端末41aと他端側端末である第4端末41bは巻回状態に維持されるノーマル端末としている。調整部材本体部41の線材Wとしては、軟線、鋼線(ステンレス鋼線、亜鉛メッキ鋼線、亜鉛アルミメッキ鋼線等)が使用される。調整部材40は、構造上および線材の材質よりバネ性を備えている。
【0048】
調整部材本体部41は、内径D6が棒鋼本体11のネジフシ17の外径D2よりも大径(D6>D2)とし、外径D7は、ネジフシ棒鋼10に挿通される被拘束物Qが抜け出ないサイズに形成されている。
【0049】
調整部材40は、棒鋼本体11に螺合して使用するものではなく、被拘束物Qを例えば第1ワッシャー30に密着させて軸線L1方向へのガタを抑え、第1螺着体20に衝撃力が加わるのを防止する作用・効果を奏する。また、被拘束物Qと調整部材40を連結させることにより、被拘束物Qに加わる力がバネの作用により緩衝されて第1螺着体20にワッシャー30を介して伝達される。このため、第1螺着体20に大きな衝撃力が加わらず、第1螺着体20がネジフシ棒鋼10からの抜け出るのが防止される。さらに、調整部材40の内径D7は、棒鋼本体11の最大外径であるネジフシ17の第2外径D2よりも大径としている。このため、ネジフシ棒鋼10の取り付け(打ち込み)位置は設計位置に対して調整部材40の内径D7の範囲であれば良く、特に打ち込み位置に岩等がある場合には設計位置からずらしてネジフシ棒鋼10の打ち込みを可能とする。
【0050】
また、調整部材40はネジフシ棒鋼10に螺合するものではないため、調整部材本体部41のピッチは、棒鋼本体11の第1ピッチP1に合わせる必要はなく、適宜な値とすればよい。
【0051】
次に、第1実施形態の抜け止め装置1による第1螺着体20とワッシャー30との結合状態を
図1に基づいて説明する。
【0052】
図1に示す第1螺着体20の第2端末21bの第5巻き目が開放端であるため、第5巻き目の隙間に第2端末21b側から第1ワッシャー30の第4アーム部32Aを宛がい、例えば第1螺着体20を時計回り方向(右回り)に力を入れて手で回すと、第5巻き目の隙間が第4アーム部32Aと螺合しながら押し広げられる。このため、第1螺着体20の第2端末21bが棒鋼本体11の節12に軸心L1方向に強い力で押し付けられ、第1螺着体20の回転が阻止されて第1螺着体20がネジフシ棒鋼10にロックされる。したがって、調整部材40と第1ワッシャー30との間に装着されている被拘束物Qの抜けが防止される。
【0053】
また、
図4(a)に示す第2螺着体20Aを用いた場合には、
図10に示すように、第2螺着体20Aの第2アーム部23Bと、第1ワッシャー30の第4アーム部32Aがクロスする位置まで例えば第2螺着体20Aを右回りに手で回す。その際、第2螺着体20Aの第1アーム部23Aを手で握ると第2螺着体20Aの回転操作が楽に行える。次いで、第2螺着体20Aを強く右回りに手で回すと、
図1に示す場合と同様に、第2螺着体20Aの6巻き目の隙間に第4アーム部32A嵌まり込み、この6巻き目の隙間が第4アーム部32Aと螺合しながら押し広げられ、第2螺着体20Aがネジフシ棒鋼10にロックされる。この場合、第2螺着体20Aの第2アーム部23Bに第4アーム部32Aがガイドされてスムーズに6巻き目の隙間に第4アーム部32Aが嵌まり込む。その際、第4アーム部32Aと第2アーム部23Bの位置関係より、第2螺着体20Aのロックまでの回転量を決める目安となる。
【0054】
続いて、第1実施形態の抜け止め装置による抜け止め施工方法を
図11~
図14に基づいて説明する。
【0055】
図11(a)に示す第1抜け止め施工方法は、網部材を円筒形状に構成した環境保全資材100を地面GLに打ち込んだ杭として機能する支持棒10により直接支持する場合に適用する。そして、抜け止め装置1は、支持棒10から環境保全資材100が抜け出るのを防止する。環境保全資材100は雨水等により傾斜地等で生じる土壌の浸食を阻止するために傾斜地に設置され、雨水と共に流れる土砂,流木等を捕集し、水を通過させて洗堀を防止する。
【0056】
環境保全資材100は、例えば長尺の菱形金網110を網部材として使用する。そして、環境保全資材100は、巻き始端部に中心部材111を配置した状態で所定の層厚112を有して菱形金網110を渦巻状に巻回したスケルトン構成としている。層厚112を層厚保持部材113により保持している。層厚保持部材113は、例えば鉄線を螺旋状に複数巻きに巻回した長尺の螺旋形状に形成されたコイルバネのようなコイル形状体としている。ここで、菱形金網110は波形に形成された複数の列線110aを互いに結合させた構成で、列線の長手方向を幅方向、列線の並び方向を行方向(長さ方向)とする。層厚保持部材113は、菱形金網110を平面状に展開した状態で、菱形金網110の上面に幅方向に沿って間隔を有して複数配置された状態で、菱形金網110と共に一体に巻回される。なお、層厚保持部材113はこのような構成に限定されるものではなく、層厚112を保持できる構成であればよい。また、中心部材111は、層厚保持部材113と同様のコイル形状体としている。
【0057】
環境保全資材100は、中心部から径方向外方に向けて菱形金網110が複数層に設けられ、環境保全資材100の幅方向両端部において、各層の網目に支持棒10が挿通されると共に、支持棒10の上端は環境保全資材100の上端よりも上方に突出する。
【0058】
抜け止め装置1は、先ず、調整部材40を環境保全資材100の上端から菱形金網110の網目に係合するように、調整部材40の上端が環境保全資材100の上端に達するまで捩じ込む。調整部材40は環境保全資材100の両端部捩じ込む。次いで、各調整部材40の上方から支持棒10を差し込んで貫通し、更に環境保全資材100の網目を通して地面GLに打ち込む。続いて、第1ワッシャー30を支持棒10の上端から支持棒10に通して環境保全資材100の上端まで落とす。さらに、第1螺着体20を支持棒10の上端から手作業で第1ワッシャー30に向けて螺進させる。そして、
図1に示すように、第1螺着体20の下端側巻き線間と第1ワッシャー30の巻き線間を互いに噛み合わせて結合させることにより、第1螺着体20が支持棒10に回転不能に固定される。
図5に示すように、第1ワッシャー30の第4アーム部32Aと第5アーム部32Bの先端間の長さMを菱形金網110の網目のサイズよりも長く設定することで、環境保全資材100の網目がワッシャー30に当接し、環境保全資材100の上方への移動が規制され、支持棒10からの抜けが防止される。
【0059】
また、支持棒10は、環境保全資材100を所定の設置位置に設置後、調整部材40の内径部内を通して地面GLに打ち込む際、調整部材40の内径部内であればいずれの位置に差し込んで打ち込むことができる。
【0060】
調整部材40が環境保全資材100の菱形金網110と係合しているため、環境保全資材100に加わる外力は、調整部材40を介して支持棒10に加わる。調整部材40は支持部材10に対し、調整部材本体部41の巻き線と複数点で接触する。このため、環境保全資材100に加わる外力が分散して支持棒10に加わり、支持棒10の一点に大きな曲げ力が加わることが無く、曲げ変形が減少する。
【0061】
これに対し、調整部材40を設けない場合、菱形金網110の列線110aが支持部材10に直接接触する。菱形金網110を巻回する際、菱形金網110の網目が径方向において規則正しく並んで正対することはないことから、菱形金網110の径方向における各層の網目に対し、支持棒10は網目を構成する列線110aに接し、あるいは網目の中心部等バラバラの位置に挿通される。このような状態で、環境保全資材100に外力が加わると、支持棒10に対して一部の層の列線110aが接触することになる。そうすると、接触する列線110aには大きな力が加わって変形するおそれがある。また、環境保全資材100に加わる外力が支持棒10に集中して加わって変形するおそれがある。
【0062】
図11(b)に示す第2抜け止め施工方法は、
図11(a)に示す第1抜け止め工法との相違は、抜け止め装置1に第1ワッシャー30を含めて他のワッシャーを使用していないこと、第1螺着体20に代えて
図4(b)第3螺着体20Bを使用する。抜け止め対象は、第1抜け止め工法と同様に環境保全資材100とする。第2抜け止め施工方法は、支持棒10の上端を環境保全資材100の上端から上方に突出させない際の方法で、第3螺着体20Bは、第3アーム部23Cを上にして支持棒10の上端から螺進させ、第3アーム部23Cを手で握りながら環境保全資材100の上端から環境保全資材100の中まで捩じ込む。そして、第3アーム部23Cを環境保全資材100の菱形金網110の上端で菱形金網110の網目に係合させる。第3アーム部23Cが菱形金網110の網目に係合することにより、第3螺着体20Bの回転が阻止されると共に、環境保全資材100の上方への移動が阻止される。このため、環境保全資材100が支持棒100から抜け出るのが防止される。
【0063】
図12から
図14に第3抜け止め施工方法を示す。第3抜け止め施工方法は、支持棒10に通したワイヤーロープ150の端部に設けた輪部、例えば
図13に示すシンブル151の抜けを防止する。ワイヤーロープ150は、
図14に示すように、3基の環境保全資材100を直列に密接して配置し、各中心部材111内に挿通され、ワイヤーロープ150の両端部のシンブル151を抜け止め装置1の支持棒10に挿通する。
【0064】
第3抜け止め施工方法は、予め地面GLに打ち込んだ支持棒10の上端から順に調整部材40、シンブル151、第1ワッシャー30、第1螺着体20を通し、シンブル151を第1ワッシャー30に当接させ、調節部材40の上端をシンブル151の下端に当接させる。第1螺着体20の下端部と第1ワッシャー30とを互いに噛み合わせて結合することで第1螺着体20を支持棒10に固定する。支持棒10の上端が地面GLまで支持棒10を打ち込み、調整部材40を地中内に埋めることが望ましい。調整部材40を設けていない場合、地面GLが雨水等によって洗堀され、シンブル151の下側の土壌も洗堀されると、シンブル151が第1ワッシャー30から離れて下方に落ちる。このような状態でワイヤーロープ150に張力が加わると、シンブル151が第1ワッシャー30に衝突する。この衝突で第1螺着体20に緩みが生じて第1螺着体20が支持棒10から外れると、シンブル151が支持棒10から抜け出るおそれがある。ただし、被拘束物であるシンブル151が埋設される地中が洗堀される恐れがない場合には、調節部材40を設けなくても良い。
【0065】
しかし、シンブル151を調整部材40が支えているため、調整部材40の下側の土壌が大きく洗堀されない限りシンブル151は殆ど下方に落ちることはない。
【0066】
第2実施形態
図15、16は本発明による抜け止め装置の第2実施形態を示す。
【0067】
抜け止め装置200の構成
第2実施形態の抜け止め装置200は、
図15(a)に示すように、JIS3112に規定される鉄筋コンクリート用棒鋼(以下、異形鉄筋と称す)の支持棒210と、支持棒210に螺着する第4螺着体220と、調整部材240により構成している。調整部材240は第1実施形態の調整部材40と同じ構成とし、同じ作用効果を果たすため説明を省略する。
【0068】
異径鉄筋210は、直径D8の鉄筋本体211の外周に軸方向に沿って中心軸対称に第1リブ211aと第2リブ211bが形成される。第1リブ211aと第2リブ211bを境にして2つの半円弧部が形成され、一方の半円弧部を第1円弧部212aとし、他方の半円弧部を第2円弧部212bとする。第1円弧部212aと第2円弧部212bには、第1リブ211aと第2リブ212bに直交して周方向に第1節(フシ)213aと第2節(フシ)213bが形成されている。第1フシ213aと第2フシ213bは、第1リブ211aと第2リブ211bと同じ高さH2とし、第1フシ213aと第2フシ213bで形成される最外周の外円の直径(最外周外径)をD9とする。
【0069】
第1フシ213aと第2フシ213bは同じ第4ピッチP4で軸方向に形成され、第1フシ213aと第2フシ213bの軸方向における差(以下、フシ位置差と称す)をSとすると、例えば
図16(a)に示すフシ位置差Sは第4ピッチP4の略半分(S≒P/2)の第1型式(S=S1)、
図16(d)に示すようにフシ位置差Sが略ゼロ(S≒0)の第2型式(S=S2)に加え、第1型式よりもフシ位置差Sが狭い
図16(b)に示す第3型式(S=S3)、第3型式よりもフシ位置差Sが狭い
図16(c)に示す第4型式(S=S4)が提供されている。第1フシ213aと第2フシ213bは、軸方向両側を傾斜面とし、頂面を平坦面とする台形に形成されている。隣接する第1フシ213aと第2フシ213bが軸方向にフシ位置差Sが存在する場合、隣接する第1フシ213aと第2フシ213bは個々に半円弧の螺旋状ではない。しかし、隣接する第1フシ213aと第2フシ213bが軸方向に第1円弧部212aと第2円弧部212bに段差を有して交互に形成されているため、第4螺着体220との関係において螺合可能な凸部と見ることができる。但し、
図16(d)に示すフシ位置差が略ゼロ(S≒0)の第2型式(S=S2)の場合には螺合が難しい。
【0070】
第4螺着体220は、
図4(b)に示す第3螺着体20Bと同様の構成で、異径鉄筋210のフシピッチである第4ピッチP4と同ピッチの第5ピッチP5で線材を螺旋状に複数巻きに巻回した第4螺着体本体部220Aと、第4螺着体本体部220Aの一端側に設けた第6アーム部221とにより構成している。第4螺着体本体部220Aの内径をD10とすると、鉄筋本体211の外径D8よりも大径で、異径鉄筋210の最外周外径D9よりも小径(D8<D10<D9)とし、径方向および軸方向に遊びを設けている。
図16(a)~(c)において、第1フシ213aと第2フシ213bとの間には第1リブ211aと第2リブ211bが存在するため、第4螺着体220を異径鉄筋210にねじ込むと、第4螺着体本体部220Aの内径部が第1リブ211aまたは第2リブ211bに乗り上げて加締め状態となる。この際、第6アーム部221を手で握ってねじ込み方向の時計回り方向に回すと、第4螺着体本体部220Aの内径D10が拡がる。すなわち、第4螺着体本体部220Aは時計回り方向に螺旋状に形成されているため、加締め状態の箇所を固定点として第6アーム部221との間で回転トルクが加わると、その間で第4螺着体本体部220Aの内径D10が拡がる。そうすると、第4螺着体220は第1フシ213aと第2フシ213bの間を案内されて螺進する。このようなことから、第4螺着体本体部220Aの内径D10は異径鉄筋210の最大外径D9に近い値とすることにより、第4螺着体220を異径鉄筋210に螺進させることができる。
【0071】
また、第6アーム部221を螺進方向への回転を停止すると、第4螺着体本体部220Aは元の内径D8に戻ろうと内径が縮むため、第1リブ211aと第2リブ211bに当接して加締め状態となり、第4螺着体220が異径鉄筋210に固定される。第4螺着体220が異径鉄筋210に固定された状態で第6アーム部221を螺進方向とは逆の反時計回り方向に手で握って回転させようとすると、第4螺着体本体部220Aの内径が縮まるため、加締め状態が更に強固となり、第4螺着体220の抜け方向への回転が阻止され、第1実施形態と同様に抜け防止が図られる。
【0072】
第4螺着体220の変形例
図16(e)に示す第4螺着体220の変形例は、第4螺着体220の1巻き目のピッチを第5ピッチP5よりもわずかに小さい第6ピッチP6(P6<P5)とし、2巻き目以降のピッチを第5ピッチP5とする。この変形例の第4螺着体220によれば、異径鉄筋210の先端から第4螺着体220を螺進させると、1巻き目が異形鉄筋210の先端部に螺合する際、異形鉄筋210のピッチよりも1巻き目のピッチが小さいので、強い力で締め付けると逆回転ができなくなり、より一層強固な抜け防止を図ることができる。
【0073】
したがって、第2実施形態の抜け止め装置200は第1実施形態と同様に環境保全資材100に適用することができる。なお、環境保全資材100は、
図11~
図14に示す構成に限定されるものではなく、また非拘束物Qは環境保全資材100に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
1:抜け止め装置
10:ネジフシ棒鋼 11:棒鋼本体 12:フシ(節) 13:第1対辺
14:第2対辺 15:第3対辺 16:第4対辺 17:ネジフシ
20:第1螺着体 20I:内周部(内径部)
20a:第1端末 20b:第2端末
21:第1螺着体本体部
22a:1巻き目(第1巻き目) 22b:2巻き目(第2巻き目)
22c:3巻き目(第3巻き目) 22d:4巻き目(第4巻き目)
20A:第2螺着体
21A:第2螺着体本体部
21a:第1端末 21b:第2端末
23A:第1アーム部 23B:第2アーム部
20B:第3螺着体
21B:第3螺着体本体部
23C:第3アーム部
30:第1ワッシャー 31:第1ワッシャー本体部
31a:一端 31b:他端
32A:第4アーム部 32B:第5アーム部
30A:第2ワッシャー 32a:第1折り曲げ部 32b:第2折り曲げ部
30B:第3ワッシャー 32c:第1湾曲部 32d:第2湾曲部
30C:第4ワッシャー 32e:第3湾曲部 32f:第4湾曲部
30D:第5ワッシャー 32g:第3折り曲げ部 32h:第4折り曲げ部
40:調整部材 41:調整部材本体部 41a:第3端末 41b:第4端末
100:環境保全資材 110:菱形金網 110a:列線 111:中心部材
112:層厚 113:層厚保持部材
150:ワイヤーロープ 151:シンブル
200:抜け止め装置 210:鉄筋コンクリート用棒鋼(異形鉄筋)
220:第4螺着体 211:鉄筋本体 211a:第1リブ 211b:第2リブ
212a:第1円弧部 212b:第2円弧部
213a:第1フシ 213b:第2フシ 220A:第4螺着体本体部
221:第6アーム部 240:調整部材
GL:地面 D1:直径 D2:外径 D3:内径 D4:外径 D5:内径
D6:内径 D7:外径 D8:直径 D9:直径(最外周外径)
D10:内径
Q:被拘束物 B:厚み T:隙間 P1:第1ピッチ P2:第2ピッチ
P3:第3ピッチ P4:第4ピッチ P5:第5ピッチ P6:第6ピッチ
L1、L2:軸心 M:長さ S(S1、S2、S3、S4):フシ位置差
H1、H2:高さ W:線材 d1、d2:線径