(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138703
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】液滴吐出装置、液滴吐出方法および液滴吐出プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20241002BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 207
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049316
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 美喜雄
(72)【発明者】
【氏名】森 政貴
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA17
2C056EB04
2C056EB23
2C056EB38
2C056EC24
2C056EC41
2C056FA10
2C056JA01
2C056JA25
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】液滴不吐出の不具合を防止し得る信頼性を従来よりも向上することが可能な液滴吐出装置、液滴吐出方法および液滴吐出プログラムを提供する。
【解決手段】液滴吐出装置は、被印刷媒体に液滴を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドと、ノズルを覆うキャップと、ノズルがキャップにより覆われるキャッピング状態とノズルおよびキャップが互いに離間するアンキャッピング状態との間の切り替えを行う切替機構と、制御装置と、を備え、制御装置は、吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出させて被印刷媒体に画像を形成する印刷処理と、印刷処理を途中で停止させる所定の印刷停止事象が生じた際に、キャップに対してノズルから液滴を吐出させるフラッシングを行う保湿フラッシング処理と、保湿フラッシング処理の後に、ノズルをキャッピング状態にするキャッピング処理と、を実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体に液滴を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドと、
前記ノズルを覆うキャップと、
前記ノズルが前記キャップにより覆われるキャッピング状態と前記ノズルおよび前記キャップが互いに離間するアンキャッピング状態との間の切り替えを行う切替機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記吐出ヘッドの前記ノズルから液滴を吐出させて被印刷媒体に画像を形成する印刷処理と、
前記印刷処理を途中で停止させる所定の印刷停止事象が生じた際に、前記キャップに対して前記ノズルから液滴を吐出させるフラッシングを行う保湿フラッシング処理と、
前記保湿フラッシング処理の後に、前記ノズルを前記キャッピング状態にするキャッピング処理と、を実行する、液滴吐出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記印刷停止事象が生じ、かつ、前記保湿フラッシング処理を実行する前の前記キャップ上の液体の乾燥度合いが所定条件を満たした場合に前記保湿フラッシング処理を実行する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記ノズルから吐出された液滴を受ける受け部をさらに備え、
前記制御装置は、前記保湿フラッシング処理を実行した後に、前記受け部に対して行う前記フラッシングである第1フラッシング処理を実行する、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記保湿フラッシング処理における液滴吐出量に応じて、前記保湿フラッシング処理の実行後に実行する前記第1フラッシング処理における液滴吐出量を変更する、請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記キャップ上の液体の乾燥度合いに基づき前記保湿フラッシング処理における液滴の吐出量である第1吐出量を算出する第1算出処理と、
前記保湿フラッシング処理の実行まで前記ノズルから液滴が吐出されない経過時間である不吐出時間に基づき前記第1フラッシング処理により吐出する液滴の吐出量である第2吐出量を算出する第2算出処理と、をさらに実行し、
前記保湿フラッシング処理の実行後の前記第1フラッシング処理では、前記吐出ヘッドに、前記第1吐出量と前記第2吐出量との差に応じた第3吐出量の液滴を吐出させる、請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記吐出ヘッドによる印刷中に実施されるフラッシングである印刷中フラッシング処理をさらに実行し、
前記第1フラッシング処理における単位時間当たりの液滴吐出量は、前記印刷中フラッシング処理における単位時間当たりの液滴吐出量よりも多い、請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記印刷処理では前記ノズルから第1液滴および前記第1液滴より容量の大きい第2液滴を吐出して被印刷媒体に画像を形成し、
前記第1フラッシング処理では前記ノズルから前記第2液滴を吐出させる、請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1フラッシング処理において、前記ノズルから前記液滴を吐出させるための吐出駆動信号と前記ノズルから前記液滴を吐出させないための非吐出駆動信号との信号幅をそれぞれ前記吐出ヘッドの1アコースティックレングスとする、請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記第1フラッシング処理のあと前記印刷処理が再開されていない場合で且つ前記キャップを前記キャッピング状態にする前に、前記受け部に対して行う前記フラッシングである第2フラッシング処理を実行する、請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記第2フラッシング処理における液滴の吐出量である第4吐出量は、前記液滴の種類、環境温度および環境湿度に基づいて決定される、請求項9に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記印刷停止事象は、印刷中のジャムの発生、前記被印刷媒体を収容する収容部の脱離、および、印刷中のジャムの発生と前記被印刷媒体を収容する収容部の脱離との両方を含む、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
被印刷媒体に液滴を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドと、前記ノズルを覆うキャップと、前記ノズルが前記キャップにより覆われるキャッピング状態と前記ノズルおよび前記キャップが互いに離間するアンキャッピング状態との間の切り替えを行う切替機構と、を備える液滴吐出装置を用いた液滴吐出方法であって、
前記吐出ヘッドによる印刷処理を途中で停止させる所定の印刷停止事象が生じた際に、前記キャップに対して前記ノズルから液滴を吐出させるフラッシングを行う保湿フラッシング処理と、
前記保湿フラッシング処理の後に、前記ノズルを前記キャッピング状態にするキャッピング処理と、を実行する、液滴吐出方法。
【請求項13】
被印刷媒体に液滴を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドと、前記ノズルを覆うキャップと、前記ノズルが前記キャップにより覆われるキャッピング状態と前記ノズルおよび前記キャップが互いに離間するアンキャッピング状態との間の切り替えを行う切替機構と、を備える液滴吐出装置におけるコンピュータに実行させる液滴吐出プログラムであって、
前記コンピュータを、前記吐出ヘッドによる印刷処理を途中で停止させる所定の印刷停止事象が生じた際に、前記キャップに対して前記ノズルから液滴を吐出させるフラッシングを行う保湿フラッシング処理制御手段、および
前記保湿フラッシング処理の後に、前記ノズルを前記キャッピング状態にするキャッピング処理制御手段、として機能させる、液滴吐出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の印刷装置に用いられる液滴吐出装置、液滴吐出方法および液滴吐出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置において印刷が休止中の場合には、キャップにより吐出ヘッドのノズルを覆うことでノズル内のインクが乾燥することを抑制している。一方で、キャップによりノズルを覆うキャッピング状態が継続すると、キャップ上で固化したインクがノズル内のインクから水分を奪う。その結果、ノズル内のインクが増粘し、インク不吐出の不具合が起こる。
【0003】
そこで、キャップ上のインクの固化を抑制すべく、印刷中であっても、吐出ヘッドをキャップの上方に位置付けさせ、吐出ヘッドからキャップ上のインクに対してインクを吐出させる処理が行われる(特許文献1参照)。これにより、キャップ上のインクが固化することが抑制されるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、吐出ヘッドによる印刷中に印刷装置において起き得る事象によってはキャップ上のインクの固化を防ぐことができない。そのため、インク不吐出の不具合を防止し得る信頼性が低かった。
【0006】
そこで、本発明は、液滴不吐出の不具合を防止し得る信頼性を従来よりも向上することが可能な液滴吐出装置、液滴吐出方法および液滴吐出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液滴吐出装置は、被印刷媒体に液滴を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドと、前記ノズルを覆うキャップと、前記ノズルが前記キャップにより覆われるキャッピング状態と前記ノズルおよび前記キャップが互いに離間するアンキャッピング状態との間の切り替えを行う切替機構と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記吐出ヘッドの前記ノズルから液滴を吐出させて被印刷媒体に画像を形成する印刷処理と、前記印刷処理を途中で停止させる所定の印刷停止事象が生じた際に、前記キャップに対して前記ノズルから液滴を吐出させるフラッシングを行う保湿フラッシング処理と、前記保湿フラッシング処理の後に、前記ノズルを前記キャッピング状態にするキャッピング処理と、を実行するものである。
【0008】
本発明に従えば、例えば印刷中のジャム等の印刷停止事象が生じた場合に、保湿フラッシング処理においてキャップに対してノズルから液滴が吐出される。これによって、キャップ上の液体が固化することを抑制することができる。これにより、キャップ上の固形物がノズル内の液滴から水分を奪うような事態が招来されることがない。したがって、ノズル内の液滴が増粘することに起因した液滴不吐出の不具合を防ぐことができる。以上によって、液滴不吐出の不具合を防止し得る信頼性が従来よりも向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液滴不吐出の不具合を防止し得る信頼性を従来よりも向上することが可能な液滴吐出装置、液滴吐出方法および液滴吐出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る印刷装置の概略的構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の印刷装置に設けられる液滴吐出装置を示す平面図である。
【
図3】
図1の印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4Aはキャップがキャップ位置にある状態を示す図であり、
図4Bはキャップがアンキャップ位置にある状態を示す図である。
【
図5】キャップ上のインクの乾燥度合いを説明するための図である。
【
図6】第1フラッシング処理における吐出駆動信号と非吐出駆動信号の各信号幅を示す図である。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは印刷前フラッシング処理におけるフラッシング量の経時的変化を示す図である。
【
図8】液滴吐出装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】液滴吐出装置における
図8に続く処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態に係る液滴吐出装置、液滴吐出方法および液滴吐出プログラムについて図面を参照して説明する。以下に説明する液滴吐出装置、液滴吐出方法および液滴吐出プログラムは一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0012】
図1は一実施形態に係る印刷装置100の概略的構成を示す模式図である。
図2は
図1の印刷装置100に設けられる液滴吐出装置1を示す平面図である。
図3は
図1の印刷装置100の構成を示すブロック図である。
図4Aはキャップ51がキャップ位置Pcにある状態を示す図であり、
図4Bはキャップ51がアンキャップ位置Paにある状態を示す図である。以下では、印刷装置100としてインクジェットプリンタを例に挙げて説明するが、印刷装置100の態様はこれに限られるものではなく、例えばレーザープリンタやサーマル(感熱式)プリンタ等の他のプリンタであってもよい。
【0013】
図1に示すように、印刷装置100は、上部に配置されている読み取り部10と、下部に配置されている印刷機構150と、コントローラユニット6(
図3)とを備える。印刷装置100においては、読み取り部10による読み取りにより生成された画像データを印刷機構150が被印刷媒体Wに印刷する。なお、読み取り部10は必須な構成要素ではなく、設けなくてもよい。
【0014】
読み取り部10は、スキャナ部11および自動原稿搬送装置(ADF(Auto Document Feeder))12を備える。スキャナ部11はフラットベッドスキャナである。スキャナ部11は、原稿台13、原稿カバー14および光学式のイメージセンサ16を有するスキャナ本体15を備える。イメージセンサ16は、原稿台13上の原稿に対して相対的に移動し、当該原稿に形成されている画像を光学的に読み取るものである。また、ADF12は、
図1において一点鎖線で示す搬送経路H2に沿って原稿を搬送する1又は複数の搬送ローラ18を含む搬送系駆動部19を備える。
【0015】
印刷機構150は、収容部に相当する給紙トレイ151、排出トレイ152、プラテン53、吐出ヘッド55を保持しつつ移動可能に構成されたキャリッジ54、および
図1において一点鎖線で示す搬送経路H1に沿って被印刷媒体Wを搬送する搬送系駆動部56を備える。給紙トレイ151から給紙された被印刷媒体Wは、搬送経路H1に沿って搬送系駆動部56により搬送されつつ、画像が印刷され、その後被印刷媒体Wは排出トレイ152に搬送される。
【0016】
プラテン53は板状に形成されており、給紙トレイ151の上方に配置されている。キャリッジ54は、ノズル55aからインクを吐出する吐出ヘッド55を保持した状態でプラテン53の上方に配置されている。また、排出トレイ152はプラテン53よりも前方に配置されている。搬送経路H1は給紙トレイ151から排出トレイ152に至るまでの経路となっている。
【0017】
搬送系駆動部56は、給紙ローラ61、レジストローラ62、搬送ローラ63および排紙ローラ64を含み、被印刷媒体Wを搬送経路H1に沿って搬送する。これらの給紙ローラ61、レジストローラ62、搬送ローラ63および排紙ローラ64は搬送モータ33に連結されており、当該モータから駆動力を得て回転する。なお、搬送系駆動部56は搬送ローラ63のみならず他の搬送ローラを含んでもよい。
【0018】
給紙ローラ61は、給紙トレイ151の近傍に配置され、当該給紙トレイ151に収容されている被印刷媒体Wをピックアップしてレジストローラ62に送り出す。レジストローラ62は、被印刷媒体Wの搬送方向において吐出ヘッド55の上流側に配置され、被印刷媒体Wをプラテン53へ送り出す。また、搬送ローラ63および排紙ローラ64は、被印刷媒体Wの搬送方向において吐出ヘッド55の下流側に配置され、吐出ヘッド55により画像が印刷された被印刷媒体Wを排紙トレイ152へ送り出す。
【0019】
印刷装置100には、搬送経路H1,H2に沿って配されたジャム検出手段が設けられている。具体的には、印刷装置100には、ジャム検出手段として、ADFセンサ17、後端センサ65、レジ前センサ66、レジ後センサ67、および排紙センサ68が設けられている。ADFセンサ17は、読み取り部10に設けられ、原稿の搬送経路H2におけるジャムを検出し、その検出信号をコントローラユニット6に送信する。また、後端センサ65は、印刷機構150に設けられ、被印刷媒体Wの搬送経路H1における給紙ローラ61近傍のジャムを検出し、その検出信号をコントローラユニット6に送信する。レジ前センサ66は、印刷機構150に設けられ、搬送経路H1におけるレジストローラ62の上流側のジャムを検出し、その検出信号をコントローラユニット6に送信する。レジ後センサ67は、印刷機構150に設けられ、搬送経路H1におけるレジストローラ62の下流側のジャムを検出し、その検出信号をコントローラユニット6に送信する。排紙センサ68は、印刷機構150に設けられ、搬送経路H1における排紙ローラ64近傍のジャムを検出し、その検出信号をコントローラユニット6に送信する。
【0020】
続いて、
図2に示すように、液滴吐出装置1は、貯留タンク57、上述の吐出ヘッド55が搭載されたキャリッジ54、および一対のガイドレール69を備える。キャリッジ54は、移動方向Dsに延在する一対のガイドレール69に支持され、当該ガイドレール69に沿って移動方向Dsに往復移動する。これにより、吐出ヘッド55は移動方向Dsに往復移動する。また、吐出ヘッド55はチューブ57aを介して貯留タンク57に接続される。
【0021】
吐出ヘッド55は、カラーインクと総称されるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、およびブラック(K)の各色のインク滴を被印刷媒体Wに吐出する複数のノズル55aを有する。複数のノズル55aは、移動方向Dsに直交する方向であり被印刷媒体Wの搬送方向Dfに沿ってノズル列NRを色ごとに形成している。4色のインク滴が被印刷媒体Wに吐出されることで当該被印刷媒体Wにカラー画像が印刷される。なお、ホワイト(W)のインク滴およびクリア(Cr)のインク滴を吐出する吐出ヘッドを別途キャリッジ54に設けてもよい。
【0022】
貯留タンク57にはインクが貯留されている。貯留タンク57はインクの種類ごとに設けられている。貯留タンク62は、例えば4つ設けられ、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクがそれぞれ貯留される。
【0023】
液滴吐出装置1は、さらにパージ部50および受け部58を備える。受け部58はキャリッジ54の移動領域に重なるように移動方向Dsにおいてガイドレール69の一方側に配置されている。パージ部50は、キャリッジ54の移動領域に重なるように移動方向Dsにおいてガイドレール69の他方側に配置されている。
【0024】
図2乃至
図4に示すように、パージ部50は、ノズル55aが形成されたノズル面55bを覆うキャップ51、当該キャップ51に接続される吸引ポンプ52、および、
図4Aに示すキャップ位置Pcと当該キャップ位置Pcの下方の位置である
図4Bに示すアンキャップ位置Paとの間でキャップ51を昇降する昇降機構53を有する。なお、昇降機構53が切替機構に相当する。
【0025】
キャップ51はキャップ位置Pcにおいてノズル55aを覆う。キャップ位置Pcにおいてノズル面55bがキャップ51に覆われ密閉空間が形成された状態で吸引ポンプ52が駆動されると、上記密閉空間が吸引されてノズル55aからインク滴が吐出されるパージ処理が実行される。一方、キャップ51はアンキャップ位置Paにおいてノズル55aに対して上下方向に離間する。アンキャップ位置Paにおいてノズル面55bがキャップ51に対して離間した状態でノズル55aからインク滴がキャップ51に対して吐出される保湿フラッシング処理が実行される。昇降機構53はノズル55aがキャップ51により覆われるキャッピング状態とノズル55aおよびキャップ51が互いに離間するアンキャッピング状態との間の切り替えを行う。以下では、キャップ51がアンキャップ位置Paに位置するときの吐出ヘッド55の位置を待機位置HPと呼ぶ。なお、待機位置HPはホームポジションとも称呼される。
【0026】
受け部58は、フラッシング処理(パージ部50における保湿フラッシング処理を除く)によって吐出ヘッド55から吐出されたインク滴を受ける。吐出ヘッド55のノズル面55bが受け部58の上方に配置されるときの当該吐出ヘッド55の位置をフラッシング位置FPと呼ぶ。受け部58におけるフラッシング処理は、第1フラッシング処理および第2フラッシング処理を含む。なお、第1フラッシング処理および第2フラッシング処理については後で詳述する。
【0027】
図3に示すように、印刷装置100は、操作キー4、表示部5、コントローラユニット6、上記印刷機構150を構成する要素、および上記読み取り部10を構成する要素を備える。
【0028】
操作キー4はユーザによる操作入力を受け付ける。表示部5は例えばタッチパネルで構成され、所定情報を表示する。表示部5の一部は操作キーとしても機能する。コントローラユニット6は、操作キー4からの入力又は図略の通信インタフェースを介する外部入力に基づき印刷機能を実現すると共に表示部5の表示を制御する。
【0029】
印刷機構150は、モータドライバIC30,31、ヘッドドライバIC32、搬送モータ33、キャリッジモータ34、および、パージドライバIC35を有する。また、読み取り部10は、モータドライバIC36および搬送モータ37を有する。
【0030】
コントローラユニット6は、CPUからなる制御装置20、ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24、およびASIC25を有する。制御装置20は、ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24、およびASIC25に電気的に接続されていると共に、各ドライバIC30~32,35,36および表示部5を制御する。
【0031】
制御装置20は、ROM21に記憶された液滴吐出プログラムを実行することにより、種々の機能を実行する。本実施形態において制御装置20が保湿フラッシング処理制御手段およびキャッピング処理制御手段に相当する。制御装置20は、コントローラユニット19に1つのプロセッサとして実装されていてもよいし、互いに協働する複数のプロセッサとして実装されていてもよい。液滴吐出プログラムは、コンピュータ読取可能な光磁気ディスク等又はUSBフラッシュメモリ等の記録媒体KBから読取装置38で読み出されてROM21に記憶されてもよい。
【0032】
RAM22には、外部から受信した画像データおよび制御装置20の演算結果等が記憶される。EEPROM23には、ユーザが入力した各種の初期設定情報や印刷枚数および読取枚数の各累計値が格納される。HDD24には、外部漏洩が好ましくない機密性の高い情報である特定情報や、搬送経路H1,H2における各ジャムの発生回数、所定の閾値、異常判断を行うための正常データ等が記憶される。
【0033】
ASIC25には、各ドライバIC30~32,35,36が接続されている。制御装置20は、ユーザから例えば印刷ジョブを受け付けると、液滴吐出プログラムに基づいて、印刷指令をASIC25へ出力する。ASIC25は、印刷指令に基づいて各ドライバIC30~32を駆動する。制御装置20は、モータドライバIC30により印刷機構150における搬送モータ33の動作を制御する。制御装置20は、モータドライバIC31によりキャリッジモータ34の動作を制御する。制御装置20は、ヘッドドライバIC32により吐出ヘッド55の動作を制御する。これにより、制御装置20は吐出ヘッド55のノズル55aからインク滴を吐出させて被印刷媒体Wに画像を形成する印刷処理を実行する。また、制御装置20は、パージドライバIC35によりパージ部50における吸引ポンプ52および昇降機構53の各動作を制御する。制御装置20は、モータドライバIC36により読み取り部10における搬送モータ37の動作を制御する。
【0034】
制御装置20は、印刷処理を途中で停止させる所定の印刷停止事象が生じた際に、アンキャップ位置Paにあるキャップ51に対してノズル55aからインク滴を吐出させる保湿フラッシング処理を実行する。保湿フラッシング処理が行われることで、キャップ51上に残留した粘度が高いインクをノズル55aから吐出されたインク滴に再分散(再溶解)させることができ、もってキャップ51上のインクの乾燥度合いを低下させることができる。制御装置20は上記保湿フラッシング処理の実行までにノズル55aからインク滴が吐出されない時間である不吐出時間をカウントする。また、制御装置20は上記保湿フラッシング処理により上記再分散が完了する時間を例えばインク滴の粘度およびフラッシング量等に基づき算出する。この場合、制御装置20は保湿フラッシング処理の完了後からの時間をカウントする。上記の所定の印刷停止事象は、印刷中のジャムの発生、被印刷媒体Wを収容する給紙トレイ151の脱離、および、印刷中のジャムの発生と給紙トレイ151の脱離との両方を含む。印刷中のジャムは、後端センサ65、レジ前センサ66、レジ後センサ67、および排紙センサ68のうち何れかのセンサにより検出され、制御装置20は当該センサによる検出結果に基づき上記ジャムの発生を判別する。また、制御装置20は、給紙トレイ151が印刷装置100内の所定位置から脱離していることに起因して後端センサ65による被印刷媒体Wの検出が不可となる場合に当該給紙トレイ151の脱離が生じていると判別する。
【0035】
保湿フラッシング処理においては、制御装置20はまずキャリッジ54により吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させる。これにより、吐出ヘッド55のノズル面55bはキャップ51の上方に配置される。そして、制御装置20は吐出ヘッド55のノズル55aからインク滴を吐出させる。これにより、キャップ51上にインク滴が供給され、当該キャップ51上のインクの乾燥度合いが下がる。
【0036】
制御装置20は、上述した印刷停止事象が生じ、かつ、保湿フラッシング処理を実行する前のキャップ51上のインクの乾燥度合いが所定条件を満たした場合に保湿フラッシング処理を実行する。この場合、具体的には、制御装置20はキャップ51上のインクの乾燥度合いがROM21又はHDD24に予め記憶された閾値以上である場合に保湿フラッシング処理を実行する。以下、キャップ51上のインクの乾燥度合いについて図面を参照しながら説明する。
【0037】
図5はキャップ51上のインクの乾燥度合いを説明するための図である。キャップ51上のインクの乾燥度合いとして、例えば、キャップ51がアンキャップ位置Paに位置する時間の累積時間を用いることができる。すなわち、上記乾燥度合いはキャップ51がノズル面55bに覆われていない時間の累積時間である。
図5に示すように、キャップ51がノズル面55bに覆われていない場合には、キャップ51上のインクの乾燥度合いは右肩上がりとなる。
図5では、経過時間が0からT1までの期間、および経過時間がT2からT3までの期間が、キャップ51がノズル面55bに覆われていない期間に相当する。
【0038】
他方、キャップ51がノズル面55bに覆われている期間は、乾燥度合いはほぼ横ばいに推移し、
図5では経過時間がT1からT2までの期間である。よって、
図5においては、制御装置20は、キャップ51上のインクの乾燥度合いとして、時間T1+(時間T3-時間T2)による累積時間を算出する。そして、制御装置20は、算出した累積時間が閾値以上である場合に保湿フラッシング処理を実行する。制御装置20は、キャップ51上のインクの乾燥度合いに基づいて保湿フラッシング処理におけるフラッシング量(つまり、吐出すべきインク滴の吐出量であって、当該インク滴の体積と吐出回数との積により算出し得る量。以下同義とする、)を第1吐出量として算出する第1算出処理を実行する。なお、制御装置20は保湿フラッシング処理の終了ごとに上記累積時間をリセットする。また、
図5ではキャップ51がノズル面55bに覆われている期間における乾燥度合いは横ばいに推移しているが、ノズル面55bからインクの一部がキャップ51上に移動することに起因してキャップ51上の乾燥度合いが下がる場合もある。
【0039】
制御装置20は、保湿フラッシング処理の終了後には、ノズル55aをキャッピング状態にするキャッピング処理を実行する。この場合、制御装置20は昇降機構53によりキャップ51をアンキャップ位置Paからキャップ位置Pcに移動させる。これにより、吐出ヘッド55のノズル面55bが当該キャップ51に覆われ、ノズル55aおよびキャップ51の乾燥が抑制される。
【0040】
制御装置20は、保湿フラッシング処理を実行した後に、受け部58に対してノズル55aからインク滴を吐出するフラッシングである第1フラッシング処理を実行する。第1フラッシング処理はノズル回復フラッシング処理と呼ばれることがある。この場合、制御装置20は保湿フラッシング処理におけるインク滴の吐出量に応じて、保湿フラッシング処理の実行後に実行する第1フラッシング処理におけるインク滴の吐出量を変更する。
【0041】
具体的には、制御装置20は、保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が第1フラッシング処理におけるフラッシング量未満であることを条件に、上記第1フラッシング処理を実行する。この場合、制御装置20は第1フラッシング処理を実行する前に、当該第1フラッシング処理におけるフラッシング量を不吐出時間に応じて算出する。これにより、保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が上記算出された第1フラッシング処理におけるフラッシング量未満となる場合に第1フラッシング処理が行われる。
【0042】
より具体的には、制御装置20は、カウント済みの上述の不吐出時間に基づいて第1フラッシング処理により吐出すべきインク滴の吐出量を第2吐出量として算出する第2算出処理をさらに実行する。そして、制御装置20は、保湿フラッシング処理の実行後の第1フラッシング処理では、フラッシング位置FPに位置させた吐出ヘッド55に、上記の通り第1算出処理において算出した第1吐出量と第2算出処理において算出した第2吐出量との差に応じた第3吐出量のインク滴を受け部58に対して吐出させる。
【0043】
ここで、第1フラッシング処理における単位時間当たりのインク滴の吐出量は、制御装置20が吐出ヘッド55による印刷中に実施するフラッシングである印刷中フラッシング処理における単位時間当たりの同吐出量よりも多くてもよい。
【0044】
制御装置20は、印刷処理ではノズル55aから第1インク滴および当該第1インク滴より容量の大きい第2インク滴を吐出させて被印刷媒体Wに画像を形成することができる。例えば、第1インク滴は小玉および中玉のインク滴であり、第2インク滴は大玉のインク滴である。制御装置20は、第1フラッシング処理ではノズル55aから第2インク滴として大玉のインク滴を吐出させてもよい。
【0045】
図6は第1フラッシング処理における吐出駆動信号Saと非吐出駆動信号Shの各信号幅を示す図である。
【0046】
図6に示すように、第1フラッシング処理における吐出ヘッド55に対する駆動信号は複数の吐出駆動信号Saと複数の非吐出駆動信号Shとを含む矩形波である。吐出駆動信号Saは矩形波の山部に相当し、ノズル55aからインク滴を吐出させるための駆動信号である。また、非吐出駆動信号Shは矩形波の谷部に相当し、ノズル55aからインク滴を吐出させないための駆動信号である。吐出駆動信号Saと非吐出駆動信号Shとは経時的に交互に配置される。制御装置20は、第1フラッシング処理において、吐出駆動信号Saと非吐出駆動信号Shとの信号幅をそれぞれ吐出ヘッド55の1アコースティックレングスとしてもよい。なお、1アコースティックレングスは、例えば4.0~5.0μ秒である。
【0047】
続いて、上述の第1フラッシング処理の終了後に上記印刷停止事象が未だ解消していない場合に行われる第2フラッシング処理について説明する。
【0048】
制御装置20は、第1フラッシング処理のあと印刷処理が再開されていない場合、すなわち印刷停止事象が未だ解消されていない場合で且つキャップ51をキャッピング状態にする前に、受け部58に対して行うフラッシング処理である第2フラッシング処理を実行する。この場合、制御装置20は、吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させる前に、フラッシング位置FPにて吐出ヘッド55により第4吐出量のインク滴を受け部58に対して吐出させる。
【0049】
第2フラッシング処理におけるフラッシング量である上記第4吐出量は、使用するインク滴の種類、環境温度および環境湿度に基づいて決定される。インク滴の種類としては、例えば、染料インクや顔料インクという種、およびインク滴の粘度などが挙げられる。
【0050】
次いで、
図7Aおよび
図7Bは印刷前フラッシング処理におけるフラッシング量の経時的変化を示す図である。
【0051】
上述の保湿フラッシング処理により上述の再分散が完了するまでの待ち時間において、以下の印刷前フラッシング処理を実行させてもよい。この場合、制御装置20はアンキャップ位置Paにおいて吐出ヘッド55にインク滴を当該キャップ51に対して吐出させる。このとき、制御装置20は、
図7Aに示すように、吐出ヘッド55による単位時間当たりのフラッシング量が一定値から急峻に増加するようにインク滴を吐出させてもよい。或いは、制御装置20は、
図7Bに示すように、吐出ヘッド55による単位時間当たりのフラッシング量が初期時に最大となり、そして急峻に減少した後に一定値となるようにインク滴を吐出させてもよい。
【0052】
図8は液滴吐出装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
図9は液滴吐出装置1における
図8に続く処理の流れを示すフローチャートである。
【0053】
図8に示すように、最初に制御装置20は吐出ヘッド55による印刷処理を実行する前に、当該吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させて保湿フラッシング処理を実行する(ステップS1)。
【0054】
保湿フラッシング処理が終了した後、制御装置20は吐出ヘッド55により被印刷媒体Wにインク滴を吐出させる印刷処理を実行する(ステップS2)。次に、制御装置20は、印刷停止事象が発生したか否かを判別する(ステップS3)。印刷停止事象が発生していない場合(ステップS3でNo)、制御装置20は印刷処理が終了したか否かを判別する(ステップS4)。印刷処理が終了していない場合(ステップS4でNo)、制御装置20はステップS2に戻り印刷処理を継続する。
【0055】
一方、印刷停止事象が発生した場合(ステップS3でYes)、制御装置20は当該印刷停止事象が発生時を基準として、ノズル55aからインク滴が吐出されない時間である不吐出時間の計測を開始する(ステップS5)。次に、制御装置20は吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させることが可能か否かを判別する(ステップS6)。この場合、制御装置20は後端センサ65、レジ前センサ66、レジ後センサ67、および排紙センサ68のうち何れかのセンサの検出結果に基づきジャムの発生の有無を判別する。これにより、ジャムの発生場所が特定され、特定された当該発生場所に応じて吐出ヘッド55が待機位置HPに移動可能か否かを判別することが可能となる。つまり、ジャムが発生したとしても、当該ジャムの発生場所によっては吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させることができる場合がある。
【0056】
吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させることが可能である場合(ステップS6でYes)、制御装置20はキャリッジ54により吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させる(ステップS7)。一方、吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させることが不可能である場合(ステップS6でNo)、制御装置20はユーザによるエラー処理(ステップS8)の終了後にキャリッジ54により吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させる(ステップS7)。なお、制御装置20はステップS5の不吐出時間の計測を、ステップS7で終了する。
【0057】
次に、制御装置20はキャップ51上のインクの乾燥度合いを取得する(ステップS9)。乾燥度合いの取得方法は上述の通りである。制御装置20は乾燥度合いが閾値以上であるか否かを判別する(ステップS10)。乾燥度合いが閾値以上である場合(ステップS10でYes)、制御装置20は保湿フラッシング処理におけるフラッシング量を算出する(ステップS11)。そして、制御装置20は保湿フラッシング処理を実行する(ステップS12)。
【0058】
ステップS12の処理の終了後、および、乾燥度合いが閾値未満である場合(ステップS10でNo)、制御装置20は第1フラッシング処理におけるフラッシング量を算出する(ステップS13)。次に、制御装置20は保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が第1フラッシング処理におけるフラッシング量以上であるか否かを判別する(ステップS14)。保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が第1フラッシング処理におけるフラッシング量以上である場合(ステップS14でYes)、制御装置20は再分散完了時間を算出する(ステップS16)。一方、保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が第1フラッシング処理におけるフラッシング量未満である場合(ステップS14でNo)、制御装置20は保湿フラッシング処理における不足分を第1フラッシング処理におけるフラッシング量として吐出ヘッド55にインク滴を吐出させる(ステップS15)。その後、制御装置20はステップS16の処理に進む。
【0059】
次に、制御装置20は印刷停止事象が解消したか否かを判別する(ステップS17)。印刷停止事象が解消した場合(ステップS17でYes)、制御装置20は後記のステップS24の処理に進む。一方、印刷停止事象が解消していない場合(ステップS17でNo)、制御装置20は第2フラッシング処理におけるフラッシング量を算出し(ステップS18)、算出したフラッシング量に基づき第2フラッシング処理を実行する(ステップS19)。
【0060】
制御装置20は再分散が完了する時間まで吐出ヘッド55をフラッシング位置FPに待機させる(ステップS20)。さらに、制御装置20は印刷停止事象が解消したか否かを判別する(ステップS21)。印刷停止事象が解消した場合(ステップS21でYes)、制御装置20は後記のステップS24の処理に進む。一方、印刷停止事象が解消していない場合(ステップS21でNo)、制御装置20はキャッピング処理を実行する(ステップS22)。この場合、制御装置20は吐出ヘッド55を待機位置HPに移動させた後、昇降機構53によりキャップ51をキャップ位置Pcに位置させる。
【0061】
次いで、制御装置20は印刷停止事象が解消したか否かを判別する(ステップS23)。印刷停止事象が解消した場合(ステップS23でYes)、制御装置20は印刷を再開するための指示として印刷再開情報を受信する(ステップS24)。一方、印刷停止事象が解消していない場合(ステップS23でNo)、制御装置20は印刷停止事象が解消するまで待機する。
【0062】
制御装置20は吐出ヘッド55のノズル面55bがキャップ位置Pcにあるキャップ51に覆われているか否かを上記ステップS22の処理の実行の有無に基づき判別する(ステップS25)。キャップ51がキャップ位置Pcにある場合(ステップS25でYes)、制御装置20は印刷前のフラッシング処理を実行する(ステップS26)。この場合、制御装置20は昇降機構53によりキャップ51をアンキャップ位置Paに移動させ、吐出ヘッド55のノズル55aからインク滴を吐出させる。
【0063】
印刷前のフラッシング処理の終了後、およびキャップ51がキャップ位置Pcにない場合(ステップS25でNo)、制御装置20は吐出ヘッド55に印刷処理を再開させる(ステップS27)。そして、制御装置20は印刷処理が終了したか否かを判別する(ステップS28)。印刷処理が終了した場合(ステップS28でYes)、制御装置20は処理を終了し、印刷処理が終了していない場合(ステップS28でNo)、制御装置20はステップS27の印刷処理を継続する。
【0064】
以上説明したように、液滴吐出装置1によれば、印刷停止事象が生じた場合に、キャップ51に対してノズル55aからインク滴が吐出される保湿フラッシング処理が実行される。これによって、キャップ51上のインクが固化することを抑制することができる。これにより、キャップ51上の固形物がノズル55a内のインク滴から水分を奪うような事態が招来されることがない。したがって、ノズル55a内のインク滴が増粘することに起因したインク滴不吐出の不具合を防ぐことができる。以上によって、インク滴不吐出の不具合を防止し得る信頼性が従来よりも向上する。
【0065】
また、本実施形態では、制御装置20はキャップ51上のインクの乾燥度合いが予め記憶された閾値以上である場合に保湿フラッシング処理を実行する。これにより、保湿フラッシング処理が必要な場合を規定することができると共に、保湿フラッシング処理が特に必要でない場合にまで保湿フラッシング処理を実行することを回避することができる。
【0066】
また、本実施形態では、制御装置20は、保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が第1フラッシング処理におけるフラッシング量未満である場合に第1フラッシング処理を実行する。これにより、ノズル55aの乾燥を抑制する上で保湿フラッシング処理におけるインク滴の吐出量の不足分を第1フラッシング処理にて吐出させることができる。また、保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が第1フラッシング処理におけるフラッシング量以上である場合には第1フラッシング処理が実行されないため、フラッシングによる廃インクの量を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、制御装置20は、保湿フラッシング処理の実行後の第1フラッシング処理では、吐出ヘッド55に、第1算出処理において算出した第1吐出量と第2算出処理において算出した第2吐出量との差に応じた第3吐出量のインク滴を受け部58に対して吐出させる。この場合、第1フラッシング処理におけるフラッシング量をノズル55aについての不吐出時間に基づき適切な量とすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、第1フラッシング処理における単位時間当たりのインク滴の吐出量は、印刷中フラッシング処理における単位時間当たりの同吐出量よりも多い。この場合、ノズル55aを迅速に乾燥状態から回復させることができる。これにより、印刷の再開を即時に可能とすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、制御装置20は第1フラッシング処理においてノズル55aから第2インク滴として大玉のインク滴を吐出させる。これにより、単位時間当たりのフラッシング量が増加し、ノズル55aを迅速に乾燥状態から回復させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、制御装置20は、第1フラッシング処理において吐出駆動信号Saと非吐出駆動信号Shとの信号幅をそれぞれ吐出ヘッド55の1アコースティックレングスとする。これにより、単位時間当たりのフラッシング量が増加し、ノズル55aを迅速に乾燥状態から回復させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、制御装置20は、第1フラッシング処理のあと印刷処理が再開されていない場合、すなわち印刷停止事象が未だ解消されていない場合で且つキャップ51をキャッピング状態にする前に、受け部58に対して第2フラッシング処理を実行する。この場合、キャップ51によりノズル55aをキャッピング状態にするまでの期間において当該ノズル55aが乾燥することを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、第2フラッシング処理におけるフラッシング量である第4吐出量は、使用するインク滴の種類、環境温度および環境湿度に基づいて決定される。この場合、第2フラッシング処理におけるフラッシング量を最適化することができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、所定の印刷停止事象は、印刷中のジャムの発生、被印刷媒体Wを収容する給紙トレイ151の脱離、および、印刷中のジャムの発生と給紙トレイ151の脱離との両方を含む。このように印刷停止事象を規定することで、保湿フラッシング処理を実行する必要がある場合を明確化することができる。
【0074】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0075】
上記実施形態では、保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が第1フラッシング処理におけるフラッシング量未満である場合に第1フラッシング処理を実行することとしたが、これに限られない。保湿フラッシング処理におけるフラッシング量が第1フラッシング処理におけるフラッシング量以上である場合にも第1フラッシング処理を実行してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、第1フラッシング処理において吐出される第2インク滴を大玉のインク滴としたが、これに限定されるものではない。第2インク滴は、第1インク滴よりも容量が大きければよく、当該1インク滴を例えば小玉とし、第2インク滴を中玉としてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、キャップ51上のインクの乾燥度合いとして、キャップ51がアンキャップ位置Paに位置する時間の累積時間を用いることにしたが、これに限られない。上記乾燥度合いとして、例えばキャップ51上のインクの単位面積当たりの蒸発量等を採用してもよい。
【0078】
また、キャップ51上のインクの乾燥度合いを取得するのに例えば環境温度や湿度等の他の因子を含めてもよい。
【0079】
さらに、上記実施形態では、所定の印刷停止事象を、印刷中のジャムの発生、被印刷媒体Wを収容する給紙トレイ151の脱離、および、印刷中のジャムの発生と給紙トレイ151の脱離との両方を含むものとしたが、当該印刷停止事象が前記の事象以外のものを含むことを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0080】
1 液滴吐出装置
20 制御装置
51 キャップ
53 昇降機構
55 吐出ヘッド
55a ノズル
55b ノズル面
58 受け部
151 給紙トレイ
Sa 吐出駆動信号
Sh 非吐出駆動信号
W 被印刷媒体