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特開2024-138708端子付き電線、端子付き電線の製造方法、及び端子付き電線の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138708
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】端子付き電線、端子付き電線の製造方法、及び端子付き電線の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20241002BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20241002BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R43/048 Z
H01B7/00 306
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049335
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 悠人
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
5G309
【Fターム(参考)】
5E063CB03
5E063CC05
5E085BB02
5E085CC03
5E085DD14
5E085FF01
5E085JJ06
5G309FA04
5G309FA06
(57)【要約】
【課題】電線において単線化された部分の素線ほつれを抑制することができる端子付き電線、端子付き電線の製造方法、及び端子付き電線の製造装置を提供する。
【解決手段】端子付き電線1は、複数の素線11からなる芯線10と、芯線10の端部を芯線露出部12として露出させた状態で前記芯線10を覆う絶縁被覆20とを有する電線2と、芯線露出部12に圧着される芯線圧着部30を有する圧着端子3とを備える。芯線露出部12は、複数の素線11を固めて単線化された単線化部13を有する。単線化部13は、軸線方向Xの絶縁被覆20側にあって柱状に形成され、芯線圧着部30が圧着される柱状部14と、軸線方向Xの先端側に位置する先端部16とで構成される。先端部16は、単線化部13の先端側に形成された端面17と、単線化部13の軸線方向X周りに沿う周方向に形成された外周面15とが交わる角部19に形成された面取り部18を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線と、
前記芯線露出部に対して圧着される芯線圧着部を有する圧着端子と、を備え、
前記芯線露出部は、
複数の前記素線を固めて単線化された単線化部を有し、
前記単線化部は、
前記軸線方向の前記絶縁被覆側に位置し、前記軸線方向に沿って柱状に形成され、かつ前記芯線圧着部が圧着される柱状部と、
前記柱状部に対して前記軸線方向の先端側に位置する先端部と、で構成され、
前記先端部は、
前記単線化部の前記軸線方向の先端側に形成された端面と、前記単線化部の前記軸線方向周りに沿う周方向に形成された外周面とが交わる角部に形成された面取り部を有する
ことを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線と、
前記芯線露出部に対して圧着される芯線圧着部を有する圧着端子と、を備え、
前記芯線露出部は、
複数の前記素線を固めて単線化され、前記軸線方向と直交する方向の断面形状が矩形に形成された単線化部を有し、
前記単線化部は、
前記軸線方向の前記絶縁被覆側に位置し、前記軸線方向に沿って柱状に形成され、かつ前記芯線圧着部が圧着される柱状部と、
前記柱状部に対して前記軸線方向の先端側に位置する先端部と、で構成され、
前記先端部は、
前記単線化部の前記軸線方向の先端側に形成された端面と、前記単線化部の前記軸線方向周りに沿う周方向に形成された外周面とが交わる2つの角部にそれぞれ形成された面取り部を有する
ことを特徴とする端子付き電線。
【請求項3】
軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線の当該芯線露出部に対して、複数の前記素線を固めて単線化部を形成する加工工程と、
前記単線化部に対して圧着端子の芯線圧着部を圧着させる圧着工程と、を含み、
前記加工工程は、
前記軸線方向の前記絶縁被覆側に位置し、前記軸線方向に沿って柱状に形成され、かつ前記芯線圧着部が圧着される柱状部、及び、前記柱状部に対して前記軸線方向の先端側に位置する先端部を形成し、
前記加工工程後の前記先端部は、前記単線化部の前記軸線方向の先端側に形成された端面と、前記単線化部の前記軸線方向周りに沿う周方向に形成された外周面とが交わる角部に形成された面取り部を有する
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【請求項4】
軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線の当該芯線露出部に対して、複数の前記素線を固めて単線化部を形成する加工装置を備え、
前記加工装置は、
前記芯線露出部の前記軸線方向と直交する方向の断面形状が矩形となるように、当該矩形の四辺それぞれに対応して形成され、かつ前記軸線方向と直交し、かつ互いに直交する2方向それぞれに対向して配置された4つの金型を有し、
4つの前記金型は、
前記軸線方向の前記絶縁被覆側に位置し、前記芯線露出部を前記軸線方向に沿って柱状に形成する柱状部形成領域と、
前記柱状部形成領域に対して前記軸線方向の先端側に位置し、先端部を形成する先端部形成領域と、を有し、
前記先端部形成領域は、
前記単線化部の前記軸線方向の先端側に形成された端面と、前記単線化部の前記軸線方向周りに沿う周方向に形成された外周面とが交わる複数の角部のうち、前記周方向に隣り合う2つの角部それぞれに対して面取り部を形成する凸部を有する
端子付き電線の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線、端子付き電線の製造方法、及び端子付き電線の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
端子付き電線は、例えば、複数の素線で構成される導体部が絶縁被覆部で覆われた電線の端末を露出させた当該導体部(芯線露出部)に対して、圧着端子の電線圧着部を圧着するものが知られている。例えば、アルミニウム製の素線を束ねた芯線を有する電線に圧着端子を圧着する場合、当該素線の表層に形成された酸化膜を効率的に破壊して素線同士の導通性能を確保すべく、端子の圧着前に芯線を超音波接合して単線化する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-192465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線の芯線露出部において、複数の素線同士を固めて断面が矩形状の単線化部を形成する場合、単線化部の角部から素線ほつれが生じるおそれがある。この素線ほつれは、単線化時の芯線に対する部分的な圧力不足によって素線同士の圧縮が不十分となることで生じる。
【0005】
本発明は、電線において単線化された部分の素線ほつれを抑制することができる端子付き電線、端子付き電線の製造方法、及び端子付き電線の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、軸線方向に沿って延在し導電性を有する複数の素線からなる芯線と、前記芯線の端部を芯線露出部として露出させた状態で前記芯線を覆う絶縁被覆と、を有する電線と、前記芯線露出部に対して圧着される芯線圧着部を有する圧着端子と、を備え、前記芯線露出部は、複数の前記素線を固めて単線化された単線化部を有し、前記単線化部は、前記軸線方向の前記絶縁被覆側に位置し、前記軸線方向に沿って柱状に形成され、かつ前記芯線圧着部が圧着される柱状部と、前記柱状部に対して前記軸線方向の先端側に位置する先端部と、で構成され、前記先端部は、前記単線化部の前記軸線方向の先端側に形成された端面と、前記単線化部の前記軸線方向周りに沿う周方向に形成された外周面とが交わる角部に形成された面取り部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る端子付き電線、端子付き電線の製造方法、及び端子付き電線の製造装置によれば、電線において単線化された部分の素線ほつれを抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る端子付き電線の主要部を模式的に表した図である。
図2図2は、実施形態に係る端子付き電線を構成する電線を模式的に表した図である。
図3図3は、図2に示す電線の加工装置の主要部を模式的に表した図である。
図4図4は、図3に示す加工装置に加工された状態の芯線を模式的に表した図である。
図5図5は、図3に示す加工装置に加工された芯線柱状部の断面を模式的に表した図である。
図6図6は、図3に示す加工装置に加工された芯線先端部を模式的に表した図である。
図7図7は、実施形態に係る端子付き電線の製造方法を表すフローチャート図である。
図8図8は、圧着前の端子付き電線における芯線圧着部の断面を模式的に表した図である。
図9図9は、圧着後の端子付き電線における芯線圧着部の断面を模式的に表した図である。
図10図10は、実施形態の変形例に係る電線を模式的に表した図である。
図11図11は、従来の端子付き電線を構成する電線を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。すなわち、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0010】
[実施形態]
まず、本実施形態の端子付き電線1について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は、電線2に対して、後述する圧着端子3が圧着された状態を示す図であり、当該圧着端子3の一部が省略されている。図2は、圧着端子3が圧着される前に単線化された電線2の芯線露出部12を示す図である。
【0011】
なお、以下の説明において、図7を除く図1図11のX方向、Y方向、及び、Z方向のうち、X方向を「軸線方向X」といい、Y方向を「幅方向Y」といい、Z方向を「上下方向Z」という。軸線方向Xと幅方向Yと上下方向Zとは、相互に直交する。軸線方向Xは、圧着端子3が設けられる電線2の軸線Oに沿う方向、当該電線2が延在する延在方向、圧着端子3と相手端子(不図示)との挿抜方向等に相当する。幅方向Yと上下方向Zとは、軸線方向Xと直交する方向に含まれる。なお、上下方向Zは、一方を「上側Z1」、他方を「下側Z2」という。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0012】
端子付き電線1は、車両に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線2を束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線2を各装置に接続するようにしたものである。
【0013】
端子付き電線1は、図1に示すように、電線2と、当該電線2の端末に圧着され導通接続される圧着端子3とを備える。
【0014】
電線2は、車両に配索され、各装置を電気的に接続するものである。電線2は、図2に示すように、導電性を有する線状の芯線10と、当該芯線10の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆20とを含んで構成される。電線2は、絶縁被覆20によって芯線10を被覆した絶縁電線である。
【0015】
芯線10は、導電性を有する金属製の素線11を複数束ねた芯線である。芯線10は、導電性の金属、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の素線11を複数束ねたものであるが、当該複数の素線11を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆20は、芯線10の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆20は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)、架橋PE(ポリエチレン)等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0016】
電線2は、軸線Oに沿って線状に延在し、延在方向(軸線方向X)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。電線2は、全体として略円形状の断面形状に形成される。電線2は、芯線10の断面形状(軸線方向Xと交差する方向の断面形状)が略円形状となり、絶縁被覆20の断面形状が周方向に沿った略円環形状となっている。電線2は、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆20が剥ぎ取られており、芯線10が絶縁被覆20の端末から露出して芯線露出部12が形成されている。電線2は、絶縁被覆20の端末の近傍、及び、絶縁被覆20の端末から露出している芯線露出部12に圧着端子3が設けられる。
【0017】
芯線露出部12は、図2に示すように、複数の素線11を固めて単線化され、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が矩形に形成された単線化部13を有する。
【0018】
単線化部13は、例えば、後述する電線2の加工装置100により芯線露出部12の軸線方向Xの先端側を機械的に変形させた部分である。単線化部13は、後述する圧着端子3の芯線圧着部30が圧着される。単線化部13は、当該単線化部13の軸線方向Xの先端側に形成された端面17と、単線化部13の軸線方向X周りに沿う周方向に形成された外周面15とを有する。端面17は、軸線方向Xと直交する方向に略平坦に形成され、かつ軸線方向Xから視た形状が六角形に形成されている。外周面15は、単線化部13の上下方向Zに対向する外周面15a,15bと、単線化部13の幅方向Yに対向する外周面15c,15dとで構成される。外周面15aは、上下方向Zから視た形状が外周面15bと同一形状ではなく、六角形に形成されている。外周面15bは、上下方向Zから視た形状が矩形に形成されている。外周面15c,15dは、幅方向Yから視た形状が略同一形状であり、五角形に形成されている。
【0019】
本実施形態の単線化部13は、芯線露出部12の軸線方向Xの絶縁被覆20側に位置する柱状部14と、柱状部14に対して芯線露出部12の軸線方向Xの先端側に位置する先端部16とで構成される。単線化部13は、便宜上、柱状部14と先端部16とで構成されるが、一体的に形成されるものである。
【0020】
柱状部14は、軸線方向Xに沿って柱状に形成され、かつ芯線圧着部30が圧着される部分である。柱状部14は、先端部16の一部を含めて、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が、単線化により矩形に形成されている。柱状部14の軸線方向Xの長さは、単線化部13に芯線圧着部30が圧着された後の電線2と圧着端子3との導通を確保するために、圧着代として芯線圧着部30の軸線方向Xの長さに対応した長さが設定される。
【0021】
先端部16は、図2に示すように、外周面15のうち、軸線方向Xの先端側の一部と、上述した端面17と、当該端面17と外周面15とが交わる角部19A,19Bに形成された面取り部18A,18Bとを有する。本実施形態の面取り部18A,18Bは、端面17と外周面15とが交わる4つの角部19のうち、上下方向Zの上側Z1にある2つにそれぞれ形成されている。面取り部18A,18Bは、圧着端子3の芯線圧着部30が柱状部14に圧着された圧着状態において、一対のバレル片32,32側に位置する2つの角部19A,19Bにそれぞれ形成される。面取り部18A,18Bは、図示例ではC面で形成されているが、これに限定されず、R面で形成されていてもよい。面取り部18A,18Bは、先端部16から2つの角部19A,19Bを削って形成されたものではなく、後述する加工処理で単線化部13が形成されるときに、同時に形成される。
【0022】
圧着端子3は、電線2が電気的に接続され、導電性を有する相手端子が接続される端子金具である。圧着端子3は、図1に示すように、芯線圧着部30と、電気接続部33と、被覆圧着部34とを備える。芯線圧着部30と電気接続部33と被覆圧着部34とは、全体が一体で導電性を有する金属部材によって構成される。例えば、圧着端子3は、一枚の板金を、芯線圧着部30、電気接続部33、被覆圧着部34等の各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。圧着端子3は、軸線方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部33、芯線圧着部30、被覆圧着部34の順で並んで相互に連結される。
【0023】
芯線圧着部30は、芯線露出部12における単線化部13に圧着されることで、電線2と圧着端子3とを電気的に接続する部分である。芯線圧着部30は、基部31と、一対のバレル片32,32とを有する。基部31は、芯線圧着部30が、単線化部13における柱状部14に圧着された圧着状態において、柱状部14の軸線方向Xに沿って延在する部分である。一対のバレル片32,32は、基部31から周方向の両側にそれぞれ延在し、かつ上記圧着状態で、軸線方向Xと直交する方向に沿って柱状部14を挟んで基部31に対向して位置する部分である。一対のバレル片32,32は、幅方向Yに対向して設けられる。芯線圧着部30は、基部31と一対のバレル片32,32とによって電線2の芯線10に対して加締められ圧着される。
【0024】
電気接続部33は、相手端子と電気的に接続される部分である。なお、図1の電気接続部33は、一部が省略されている。電気接続部33は、雌型の端子形状であるが、雄型の端子形状であってもよい。電気接続部33は、雌型の端子形状である場合、雄型の端子形状の相手端子と電気的に接続される。なお、電気接続部33は、相手端子に限らず、アース部材等の種々の導電性の部材と電気的に接続される構成であってもよい。この場合、電気接続部33は、例えばアース部材等に締結されるいわゆる丸形端子(LA端子)形状であってもよい。
【0025】
被覆圧着部34は、絶縁被覆20の端部に圧着されることで、電線2に対して圧着端子3を固定する部分である。被覆圧着部34は、基部31の一部、及び、一対のバレル片32,32によって構成される。
【0026】
次に、上記のように構成される端子付き電線1を製造する製造装置(端子付き電線の製造装置)及び端子付き電線の製造方法について図3図7を参照しつつ、適宜他図を参照して説明する。
【0027】
本実施形態の端子付き電線1の製造方法は、例えば、端子付き電線の製造装置(不図示)によって自動で行われる。本実施形態の端子付き電線製造装置は、図3図6に示すような電線2の芯線露出部12に対して加工処理を行う加工装置100を備える。なお、図3は、芯線露出部12を加工装置100に投入し、当該芯線露出部12を単線化する前の状態を、電線2の軸線方向Xの先端側から視た図である。図4は、電線2の加工装置100により芯線露出部12を単線化した直後の状態を、電線2の幅方向Yの一方側から視た図である。図5は、図4の矢視B-B線における断面図である。図6は、図4の矢視Cにおける正面図である。
【0028】
加工装置100は、電線2に対して圧着端子3を圧着する前に、当該電線2の芯線露出部12を構成する複数の素線11を固めて単線化部13を形成するものである。本実施形態の加工装置100は、主に、4つの第1金型110、第2金型111、第3金型112、第4金型113を有し、これらによって単線化部13が形成される。第1金型110~第4金型113は、芯線露出部12の軸線方向Xと直交する方向の断面形状が矩形となるように、当該矩形の四辺それぞれに対応して形成される。第1金型110~第4金型113は、軸線方向Xと直交し、かつ互いに直交する2方向それぞれに対向して配置されている。具体的には、第1金型110と第2金型111は、上下方向Zに対向して配置され、第3金型112と第4金型113は、幅方向Yに対向して配置される。加工装置100は、第1金型110~第4金型113が図3に示すように配置されることで、内側に芯線露出部12を収容するための芯線収容空間114を形成する。
【0029】
第1金型110~第4金型113は、図4に示すように、軸線方向Xの絶縁被覆20側に位置し、芯線露出部12を軸線方向Xに沿って柱状に形成する柱状部形成領域115と、柱状部形成領域115に対して軸線方向Xの先端側に位置し、先端部16を形成する先端部形成領域116とを有する。
【0030】
柱状部形成領域115は、第1金型110~第4金型113により形成される芯線収容空間114に収容された芯線露出部12に対して、単線化部13における柱状部14を形成するものである。具体的には、柱状部形成領域115は、第1金型110及び第2金型111において上下方向Zに対向する各対向面と、第3金型112及び第4金型113において幅方向Yに対向する各対向面とが含まれる。
【0031】
先端部形成領域116は、第1金型110~第4金型113により形成される芯線収容空間114に収容された芯線露出部12に対して、単線化部13における先端部16を形成するものである。第1金型110及び第2金型111において上下方向Zに対向する加工面110a,111aと、第3金型112及び第4金型113において幅方向Yに対向する加工面112b,113b、凸部112a,113aとが含まれる。本実施形態の先端部形成領域116は、単線化部13における端面17と外周面15とが交わる4つの角部19のうち、周方向に隣り合う2つの角部19A,19Bに対して面取り部18A,18Bを形成する凸部112a,113aを有する。
【0032】
凸部112aは、第3金型112に形成され、先端部16の一方の面取り部18Aに対応するものである。凸部112aは、第3金型112の幅方向Yの第4金型側に形成された加工面112bから当該第4金型側に突出して形成されている。凸部112aは、第3金型112の軸線方向Xの先端側かつ上側Z1に位置し、幅方向Y及び軸線方向Xから視た形状が三角形である(図3参照)。
【0033】
凸部113aは、第4金型113に形成され、先端部16の他方の面取り部18Bに対応するものである。凸部113aは、第4金型113の幅方向Yの第3金型側に形成された加工面113bから当該第3金型側に突出して形成されている。凸部113aは、第4金型113の軸線方向Xの先端側かつ上側Z1に位置し、幅方向Y及び軸線方向Xから視た形状が三角形である(図3図4参照)。
【0034】
第1金型110~第4金型113は、芯線露出部12の素線11同士を超音波接合して単線化する超音波接合治具を構成する。ここで、超音波接合とは、超音波接合装置の振動子を構成するホーンとしての第1金型110によって接続対象に対して超音波振動を付加し、当該付加された超音波振動を用いて行われる金属間接合である。この場合、接続対象である芯線露出部12の複数の素線11は、当該芯線露出部12が、受け治具を構成するアンビルとしての第2金型111と第1金型110とによって挟持され、かつ第3金型112と第4金型113とによって挟持される(図4図6参照)。第1金型110は固定されているが、第2金型111は、上下方向Zに移動可能に構成される。第3金型112は、幅方向Yに移動可能に構成され、第4金型は幅方向Yの移動は規制されているが、第2金型111の上下方向Zの移動に伴って上下方向Zに移動可能に構成される。
【0035】
本実施形態の端子付き電線1の製造方法は、例えば、図7に示すように、加工工程(ステップS1)と、圧着工程(ステップS2)とを含むものである。図7は、実施形態に係る端子付き電線の製造方法を表すフローチャート図である。
【0036】
まず、加工工程では、加工装置100により、芯線露出部12において複数の素線11を固めて単線化部13を形成する。なお、電線2は、この加工工程の前に、不図示の皮剥き装置により電線2の一端において、絶縁被覆20が剥ぎ取られ、芯線10の外周面が露出され、芯線露出部12が形成されているものとする。具体的に、加工工程では、加工装置100は、図3に示すように、芯線収容空間114に収容された芯線露出部12に対して、第3金型112を第4金型113側に向けて移動させながら加圧し、かつ第2金型111及び第4金型113を下側Z2に向けて移動させながら加圧する。このとき、加工装置100は、第3金型112の凸部112aにより単線化部13の一方の角部19Aを加圧変形させて一方の面取り部18Aを形成すると共に、第4金型113の凸部113aにより単線化部13の他方の角部19Bを加圧変形させて他方の面取り部18Bを形成する。そして、加工装置は、芯線露出部12の断面形状が円形から矩形に加圧変形された状態で、第1金型110及び第2金型111を用いて超音波接合を行う。加工装置100は、芯線露出部12に対して第1金型110により超音波振動が付加される。この結果、電線2は、芯線露出部12を構成する素線11同士が超音波振動によって互いに擦れ合うことで塑性変形が生じ、固相状態で接合され、単線化部13が形成される。
【0037】
次に、圧着工程では、単線化部13に芯線圧着部30を圧着させると共に、絶縁被覆20の端末の近傍に被覆圧着部34を圧着させる。この圧着工程では、電線2が配置された芯線圧着部30及び被覆圧着部34を、上下方向Zに対向する一対の加工治具(不図示)を用いて加工する。一対の加工治具が、芯線圧着部30及び被覆圧着部34を上下方向Zの両側から挟み込むように加圧することで、電線2に対して圧着端子3が圧着される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る端子付き電線1は、電線2と、当該電線2における芯線露出部12に圧着される芯線圧着部30を有する圧着端子3とを備える。芯線露出部12は、複数の素線11を固めて単線化された単線化部13を有する。単線化部13は、軸線方向Xの絶縁被覆20側にあって柱状に形成され、芯線圧着部30が圧着される柱状部14と、軸線方向Xの先端側に位置する先端部16とで構成される。先端部16は、単線化部13の先端側に形成された端面17と、単線化部13の軸線方向X周りに沿う周方向に形成された外周面15とが交わる角部19A,19Bに形成された面取り部18A,18Bを有する。
【0039】
従来の電線2の加工装置及び製造方法では、芯線露出部12を4つの金型で覆うように挟み込んで単線化する場合、芯線10の断面形状が円形であることから、当該芯線露出部12に付与される圧力が均一でない。例えば、図5に示す芯線露出部12の断面において、幅方向Yにおける中央と、その両側とでは、印加される圧力、素線同士の密着度合い等が異なる。すなわち、芯線露出部12の断面における領域Rでは、印加される圧力が相対的に大きく、素線同士の密着度合いが相対的に高いが、各領域Pでは、圧力が相対的に小さく、素線同士の密着度合いが相対的に低くなる。
【0040】
そこで、本実施形態に係る端子付き電線1は、上記構成により、図11に示す従来の単線化部13における芯線ほつれが生じるおそれが高い角部19に対して、外部から加圧して面取り部18A,18Bを形成する。これにより、単線化部13は、先端部16を軸線方向Xから視た場合、金型側に設けられた凸部112a,113aにより先端部16の幅方向Y両側の各領域Pに含まれる素線11の数を減らすことができ(図6)、各領域Pの素線同士の密着度合いを相対的に高めて、先端部16に付与される圧力を略均一化することが可能となる。この結果、本実施形態に係る端子付き電線1は、先端部16に形成された面取り部18A,18Bにより単線化部13における素線ほつれを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る端子付き電線1は、単線化部13が、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が矩形に形成されており、面取り部18A,18Bが、圧着状態で、一対のバレル片32,32側に位置する2つの角部19A,19Bにそれぞれ形成される。これにより、端子付き電線1は、図8に示すように、面取り部40が角部19A,19Bだけでなく軸線方向Xに沿って延在して形成された単線化部と比較して、圧着状態における単線化部13と芯線圧着部30との導通性能を十分に確保することができる。具体的には、面取り部40が形成された柱状部は、当該柱状部の体積が減少することで、圧着時において当該柱状部が芯線圧着部30内側の芯線圧着空間30aを相対的に満たしにくくなる。その結果、面取り部40が形成された柱状部は、圧着時における当該柱状部の外周面と芯線圧着部の内周面との接触によって単線化部表面に形成されていた酸化被膜を十分に破壊できず、柱状部と芯線圧着部との導通が確保しにくくなるおそれがある。そこで、本実施形態に係る端子付き電線1は、単線化部13が、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が矩形に形成され、先端部16の角部19A,19Bにのみ面取り部18A,18Bが形成されることで、柱状部14の体積減少がなく、圧着状態における柱状部14と芯線圧着部30の導通性能を十分に確保することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態に係る端子付き電線1の製造方法は、加工工程が柱状部14及び先端部16を形成し、加工工程後の先端部16が、端面17と、外周面15とが交わる角部19A,19Bに形成された面取り部18A,18Bを有する。端子付き電線1の製造方法は、上記工程により、先端部16に形成された面取り部18A,18Bにより素線ほつれを抑制することができる単線化部13を容易に形成することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る端子付き電線1の製造装置は、加工装置100の第1金型110~第4金型113が、軸線方向Xの絶縁被覆20側に位置し、芯線露出部12を軸線方向Xに沿って柱状に形成する柱状部形成領域115と、柱状部形成領域115に対して軸線方向Xの先端側に位置し、先端部16を形成する先端部形成領域116とを有する。そして、先端部形成領域116は、単線化部13の軸線方向Xの先端側に形成された端面17と、単線化部13の軸線方向X周りに沿う周方向に形成された外周面15とが交わる複数の角部19のうち、周方向に隣り合う2つの角部19A,19Bそれぞれに対して面取り部18A,18Bを形成する凸部112a,113aを有する。
【0044】
端子付き電線1の製造装置は、上記構成により、先端部16に形成された面取り部18A,18Bにより素線ほつれを抑制することができる単線化部13を容易に形成することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、面取り部18A,18Bは、先端部16において、2箇所の角部19A,19Bに形成されているが、これに限定されず、いずれか一方に形成されていてもよい。
【0046】
上記実施形態では、電線2における単線化部13は、軸線方向Xと直交する方向の断面形状が矩形に形成されているが、これに限定されるものではない。図10は、実施形態の変形例に係る電線2Aを模式的に表した図である。
【0047】
変形例に係る電線2Aは、単線化部13Aが、柱状部14Aと先端部16Aを有する。単線化部13Aは、先端部16Aの一部を含む柱状部14Aの軸線方向Xと直交する方向の断面形状が、圧縮による単線化によって円形に形成されている。つまり、柱状部14Aの直径は、単線化により芯線露出部12の直径よりも小さくなっている。先端部16Aは、端面17Aと、外周面15Aとが交わる角部19Cに形成された面取り部50,50とを有する。
【0048】
面取り部50,50は、いずれも軸線方向Xから視た形状が円弧状に形成される。面取り部50,50は、上下方向Zの上側Z1に形成されている。これにより、実施形態の変形例に係る端子付き電線2Aは、上記端子付き電線2と同様の効果を得ることができる。
【0049】
上記実施形態及び変形例では、素線11は、アルミニウム、アルミニウム合金等で構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、銅、銅合金等で構成されていてもよい。芯線10は、複数の素線11の撚線であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態及び変形例では、圧着端子3が圧着される電線2,2Aについて説明したが、軸線方向Xに沿って延在し導電性を有する複数の素線11からなる芯線10と、芯線10の端部を芯線露出部12として露出させた状態で芯線10を覆う絶縁被覆20と、を有する電線同士の接合であってもよい。この場合、接合対象となる複数の電線の各単線化部13は、上述した柱状部14と、先端部16とで構成され、先端部16が面取り部18A,18Bを有するものであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態及び変形例では、芯線露出部12を単線化するときに芯線同士を超音波接合する場合について説明したが、これに限定されず、プレス成形(フォーミング)するものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 端子付き電線
2 電線
3 圧着端子
10 芯線
11 素線
12 芯線露出部
13 単線化部
14 柱状部
15 外周面
16 先端部
17 端面
18 面取り部
19 角部
20 絶縁被覆
30 芯線圧着部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11