(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138714
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 13/08 20060101AFI20241002BHJP
D04H 1/4258 20120101ALI20241002BHJP
【FI】
D21H13/08
D04H1/4258
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049345
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真
(72)【発明者】
【氏名】笠井 誉子
【テーマコード(参考)】
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA21
4L047AB02
4L047BA12
4L047CB10
4L047CC12
4L047EA01
4L055AF09
4L055AF33
4L055AG72
4L055AH36
4L055CA10
4L055CB13
4L055EA25
4L055FA11
4L055FA23
4L055FA30
4L055GA39
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、叩解された溶剤紡糸セルロース繊維を抄造してなる不織布の製造方法において、ピンホールの少ない不織布を得ることができる不織布の製造方法を提供することにある。
【解決手段】叩解された溶剤紡糸セルロースを抄造してなる不織布の製造方法において、叩解された溶剤紡糸セルロースを含み、繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下である抄造用繊維分散液を、抄紙機で抄造することを特徴とする不織布の製造方法であり、粘剤を含み、繊維濃度が0.03質量%以上である抄造用繊維分散液を抄造することがより好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
叩解された溶剤紡糸セルロースを抄造してなる不織布の製造方法において、叩解された溶剤紡糸セルロースを含み、繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下である抄造用繊維分散液を、抄紙機で抄造することを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項2】
粘剤を含み、繊維濃度が0.03質量%以上である抄造用繊維分散液を、抄紙機で抄造する請求項1記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
叩解された溶剤紡糸セルロース繊維を抄造してなる不織布は、細孔径が小さく、かつ有機溶剤への耐性が高いという特徴を有することから、フィルター、電気化学デバイス用セパレータ等として用いられている。電気化学デバイスとしては、リチウムイオン電池、電気二重層コンデンサ等が挙げられる。以下、本発明において、特に明示しない限り、「不織布」は「叩解された溶剤紡糸セルロース繊維を抄造してなる不織布」を指す。
【0003】
不織布にピンホールが存在した場合、フィルターにおいては、ろ過精度が低下し、濾別されるべき物質が取りこぼされるという問題が生じることがある。また、電気化学デバイス用セパレータにおいては、漏れ電流の増大、耐電圧の低下等の問題を生じることがある。そのため、不織布に存在するピンホールは少ないことが好ましい。
【0004】
フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維と非フィブリル化繊維とを含む電気化学素子用セパレータにおいて、繊維長0.2mm以下の非フィブリル化繊維を含有することを特徴とする電気化学素子用セパレータによって、薄くしてもピンホールが発生しにくい電気化学素子用セパレータを提供できることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1の電気化学素子用セパレータでは、繊維長0.2mm以下の非フィブリル化繊維を必須成分としなければならないという設計上の制約が生じる。また、不織布の用途によっては、使用中に繊維長0.2mm以下の非フィブリル化繊維が脱落する問題が発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、叩解された溶剤紡糸セルロース繊維を抄造してなる不織布の製造方法において、ピンホールの少ない不織布を得ることができる不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記手段によって解決することができる。
【0008】
(1)叩解された溶剤紡糸セルロースを抄造してなる不織布の製造方法において、叩解された溶剤紡糸セルロースを含み、繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下である抄造用繊維分散液を、抄紙機で抄造することを特徴とする不織布の製造方法。
【0009】
(2)粘剤を含み、繊維濃度が0.03質量%以上である抄造用繊維分散液を、抄紙機で抄造する上記(1)記載の不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不織布の製造方法によって、ピンホールの少ない、叩解された溶剤紡糸セルロース繊維を抄造してなる不織布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】傾斜ワイヤー抄紙機の白水循環系の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施例における、抄造用繊維分散液の繊維濃度とピンホール数の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、叩解された溶剤紡糸セルロースを抄造してなる不織布の製造方法において、叩解された溶剤紡糸セルロースを含み、繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下である抄造用繊維分散液を、抄紙機で抄造することを特徴とする。
【0013】
叩解された溶剤紡糸セルロースを含み、繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下である抄造用繊維分散液を、抄紙機で抄造することによって、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.02質量%未満、又は0.06質量%を超える場合と比較して、ピンホールの少ない不織布を製造することができるという優れた効果が得られる。
【0014】
叩解された溶剤紡糸セルロースを含む抄造用繊維分散液を抄紙機で抄造する不織布の製造方法において、抄造用繊維分散液の繊維濃度が低過ぎる場合、抄紙機において、繊維量に対する抄造用繊維分散液から脱水される水の量が多くなる。この場合、脱水される水に随伴して不織布から繊維が脱離し易くなることによって、ピンホールが発生し易くなる。一方、抄造用繊維分散液の繊維濃度が高過ぎる場合、抄造用繊維分散液中における繊維の分散が不均一となることによって、不織布の地合(繊維密度)が不均一になり易く、繊維密度が低い領域においてピンホールが発生し易くなる。本発明では、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.02質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.04質量%以上である。また、抄造用繊維分散液の繊維濃度は0.06質量%以下である。繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下である抄造用繊維分散液を、抄紙機で抄造することによって、繊維濃度が0.02質量%未満又は0.06質量%を超える場合と比較して、ピンホールの少ない不織布が得られる。
【0015】
本発明において、溶剤紡糸セルロースとは、木材パルプ、綿パルプ等のセルロースを、N-メチルモルホリンオキシド等の各種アミンオキシド、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウム=2-メトキシ酢酸、酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム等のイオン液体を主体とする溶媒に溶解した溶液を、細いノズルから水等の貧溶媒中に吐出させることで紡糸した再生セルロース繊維である。溶剤紡糸セルロースは、ビスコース法又は銅アンモニア法によって製造された再生セルロース繊維と比較して、叩解によりフィブリル化し易く、微細な繊維が得られる特徴がある。
【0016】
本発明に用いる叩解された溶剤紡糸セルロースは、溶剤紡糸セルロースを含む水分散液を、叩解装置で処理することによって、分散液の形態で得ることができる。叩解装置としては、ビーター;ディスクリファイナー、コニカルリファイナー等のリファイナー等が挙げられる。叩解装置による処理は、通常、0.1質量%以上6.0質量%以下の溶剤紡糸セルロース繊維を含む水分散液を叩解装置に通すことによって行われる。叩解された溶剤紡糸セルロースに、必要に応じて、叩解された溶剤紡糸セルロース以外の繊維、薬剤等を添加することによって、原料分散液が得られる。この原料分散液を、繊維濃度0.02質量%以上0.06質量%以下になるように希釈することによって、本発明に用いる抄造用繊維分散液が得られる。
【0017】
叩解された溶剤紡糸セルロース以外の繊維としては、具体的には、叩解されていない溶剤紡糸セルロース;木材パルプ、綿パルプなどの植物由来パルプ;ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等の合成繊維等が挙げられる。薬剤としては、抄造用繊維分散液の取り扱い性を向上させるための薬剤が挙げられ、例えば粘剤、消泡剤、繊維分散剤等の薬剤が挙げられる。本発明において、抄造用繊維分散液の繊維濃度とは、叩解された溶剤紡糸セルロース及び叩解された溶剤紡糸セルロース以外の繊維を含む全繊維の絶乾質量が、抄造用繊維分散液の質量に占める質量分率を意味する。
【0018】
本発明において、抄造用繊維分散液とは、抄紙機のワイヤー上に展開される繊維分散液を指す。本発明において、抄造用繊維分散液の繊維濃度は0.02質量%以上0.06質量%以下と低く、抄造用繊維分散液を貯蔵するためには大規模な貯蔵タンクが必要となる問題がある。この問題を避けるため、一旦、不織布を構成する繊維、薬剤等の原料を、抄造用繊維分散液よりも高濃度で混合分散した原料分散液を調成し、抄造直前に希釈して抄造用繊維分散液として用いることが一般的である。また、抄紙機において抄造用繊維分散液から除去された余剰の水を白水と言う。白水は、通常、循環再利用され、原料分散液を白水によって希釈して抄造用繊維分散液を得る。白水は、抄造用繊維分散液に含まれる成分のうち、粘剤、消泡剤等の薬剤を含有している。
【0019】
図1は、傾斜ワイヤー抄紙機の白水循環系の一例を示す概略図である。原料分散液は、原料分散液貯蔵タンク3から原料分散液供給ポンプ5によって供給される。白水循環タンク2から白水循環ポンプ4によって供給された白水と原料分散液とが混合して希釈され、抄造用繊維分散液となる。傾斜ワイヤー抄紙機1に供給された抄造用繊維分散液から不織布が形成される。傾斜ワイヤー抄紙機1のワイヤーを経て抄造用繊維分散液から除去された白水は、白水循環タンク2に戻る。白水循環タンク2内の白水量はオーバーフロー管6の高さによって決まる。白水循環タンク2内でオーバーフロー管6の高さを超えた部分の白水は、オーバーフロー管6から白水循環系外に排出される。必要に応じ、粘剤貯蔵タンク7に貯蔵された粘剤水溶液を粘剤供給ポンプ8により、白水、原料分散液及び抄造用繊維分散液から選択されるいずれかに添加する。
図1では、原料分散液と白水とが混合する箇所で粘剤が添加されている。抄造用繊維分散液の繊維濃度は、「原料分散液の繊維濃度×原料分散液供給ポンプ5の流量/(白水循環ポンプ4の流量+原料分散液供給ポンプ5の流量+粘剤供給ポンプ8の流量)」で表される。
【0020】
単位面積の不織布を製造するに必要な抄造用繊維分散液の量は、抄造用繊維分散液の繊維濃度に反比例する。そのため、本発明のように繊維濃度の低い抄造用繊維分散液を用いる場合、不織布の単位面積当たり、多量の抄造用繊維分散液を用いる必要がある。よって本発明において、抄紙機が、不織布の単位面積あたり多量の抄造用繊維分散液を使用するのに適した、傾斜ワイヤー抄紙機又は円網抄紙機であることが好ましい。一方で、長網抄紙機において、不織布の単位面積あたり多量の抄造用繊維分散液を使用した場合、抄造用繊維分散液がワイヤーの側方に溢れ出てしまうため、本発明には適さない。
【0021】
本発明は、坪量8g/m2以上20g/m2以下の不織布を製造する場合において特に有用である。坪量8g/m2未満の不織布の製造に本発明の技術を用いた場合、ピンホールの数を減らすことはできるものの、尚多数のピンホールが残存する場合がある。坪量が20g/m2を超える不織布を製造する場合は、本発明を用いなくてもピンホールの発生が少なく、本発明を用いる動機に乏しい。
【0022】
本発明において、抄造用繊維分散液は粘剤を含むことが好ましい。抄造用繊維分散液が粘剤を含むことで、不織布の地合いがより均一となり、よりピンホールが発生し難くなるためである。粘剤を含むことによる効果は、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.03質量%以上である場合により顕著に発現し、繊維濃度が0.04質量%以上である場合に更に顕著に発現する。粘剤とは、湿式抄造法において、脱水速度の抑制や繊維の分散状態の安定化を目的に、抄造用繊維分散液に添加される高分子量の水溶性ポリマーである。本発明において、粘剤としては、ポリエチレンオキシド又はその共重合体、ポリアクリルアミド又はその共重合体等が用いられる。粘剤として用いられる水溶性ポリマーの0.5質量%水溶液のブルックフィールド粘度計により測定された粘度が100mPa秒以上1000mPa秒以下であることが好ましい。
【0023】
粘剤として用いられる水溶性ポリマーの0.5質量%水溶液のブルックフィールド粘度計により測定された粘度が100mPa秒未満である場合、ピンホールを発生し難くするために必要な粘剤の添加量が多くなり、不経済である。粘剤として用いられる水溶性ポリマーの0.5質量%水溶液のブルックフィールド粘度計により測定された粘度が1000mPa秒を超える場合は、抄造用繊維分散液にせん断力が加わった場合に粘度低下を起こし易く、粘剤を含むことによる効果を安定して得られない場合がある。粘剤として用いられる水溶性ポリマーの0.5質量%水溶液のブルックフィールド粘度計により測定された粘度にもよるが、本発明において、粘剤の添加量は、抄造用繊維分散液の質量に対して0.01質量ppm以上0.1質量ppm以下が好ましい。粘剤の添加量が少なすぎる場合、地合いを均一化する効果が得られ難い。一方で、粘剤の添加量が多すぎる場合、抄紙機における脱水が遅くなり、生産速度が低下する場合がある。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0025】
溶剤紡糸セルロースの叩解
溶剤紡糸セルロース20kgを水980kg中にパルパーで分散した後、コニカルリファイナーを有する循環系で循環させて叩解し、濃度2.0質量%の叩解された溶剤紡糸セルロースの水分散液を得た。
【0026】
原料分散液の調成
前記の叩解された溶剤紡糸セルロースの水分散液に、繊度0.2dtex、繊維長3mmのポリエステルショートカットファイバー5.0kgを加え、パルパーで分散した後、水を加え、総量を25000kgとすることで繊維濃度0.10質量%の原料分散液を調成した。
【0027】
図1に示した白水循環系の概略を有する傾斜ワイヤー抄紙機を用いて、前記の原料分散液を希釈して得られた抄造用繊維分散液を抄造し、不織布1-1~1-8を製造した。原料分散液供給ポンプ5の流量は毎分30kgであり、傾斜ワイヤー抄紙機1における抄造幅は0.45mであり、ワイヤー速度は毎分6mであった。白水循環ポンプ4の流量を変化させることで、抄造用繊維分散液の濃度を調整した。
【0028】
粘剤供給ポンプ8を通じて、濃度0.5質量%水溶液の粘度が200mPa秒であるポリアクリルアミドを濃度0.1質量%の水溶液とした粘剤溶液を毎分0.015kg添加した以外は、不織布1-1~1-8と同様にして、不織布2-1~2-8の不織布を製造した。
【0029】
ピンホール数の評価
不織布の一定面積中に含まれる一定以上の光が透過する箇所の数を以下の方法で計測し、ピンホール数とした。フラットベッドスキャナ(セイコーエプソン社製、装置名:GT-X970)の透過モードを用い、解像度800dpiでスキャンして得られたスキャン像のうち、輝度階調が90/255以上の領域数を、画像解析ソフトウェア(米国国立衛生研究所が開発したパブリックドメインソフトウェアであるImageJ)を用いて解析した。当該領域の数を「ピンホール数」とした。
【0030】
「ピンホールの減少率」とは、粘剤を含むことによる効果がどの程度発現したかを示す指標である。抄造用繊維分散液が粘剤を含まない場合のピンホール数Aと、抄造用繊維分散液が粘剤を含む場合のピンホール数Bを、同一の繊維濃度同士で比較して、「(A-B)/A×100」で算出した比率である。「ピンホールの減少率」が大きいことは、粘剤を含むことによる効果が顕著に発現したことを示す。
【0031】
表1に、各不織布における白水循環ポンプ4の流量、粘剤供給ポンプ8の流量、抄造用繊維分散液の繊維濃度、ピンホール数、及び粘剤を含むことによる「ピンホールの減少率」を示した。
また、
図2に、抄造用繊維分散液の繊維濃度とピンホール数の相関を示した。
図2において、「○」は不織布1-1~1-8であり、「△」は不織布2-1~2-8である。
【0032】
【0033】
表1及び
図2から分かる通り、抄造用繊維分散液に粘剤を含まない不織布1-1~1-8、抄造用繊維分散液に粘剤を含む不織布2-1~2-8のいずれにおいても、繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下であることによって、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.02質量%未満の場合、および抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.06質量%を超える場合と比較して、ピンホール数が少ない。
【0034】
抄造用繊維分散液に粘剤を含まない不織布1-1~1-8においては、繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下である不織布1-2~1-7は、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.02質量%未満である不織布1-1及び抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.06質量%を超える不織布1-8と比較して、ピンホール数が少ない。
【0035】
抄造用繊維分散液が粘剤を含む不織布2-1~2-8においては、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下である不織布2-2~2-7は、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.02質量%未満である不織布2-1及び抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.06質量%を超える不織布2-8と比較して、ピンホール数が少ない。
【0036】
抄造用繊維分散液が粘剤を含む不織布2-1~2-8は、抄造用繊維分散液が粘剤を含まない不織布1-1~1-8と比較してピンホール数が少ない。
【0037】
抄造用繊維分散液が粘剤を含み、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.03質量%未満及び0.06質量%を超える不織布2-1~2-3及び不織布2-8においては、繊維濃度が同一であり、粘剤を含まない抄造用繊維分散液を抄造した不織布1-1~1-3及び1-8と比較した場合、ピンホールの減少率が13~18%であった。抄造用繊維分散液が粘剤を含み、抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.03質量%以上、0.06質量%以下である不織布2-4~2-7においては、繊維濃度が同一であり、粘剤を含まない抄造用繊維分散液を抄造した不織布1-4~1-7と比較した場合、ピンホールの減少率が28~90%であった。抄造用繊維分散液の繊維濃度が0.03質量%以上、0.06質量%以下の領域において、抄造用繊維分散液が粘剤を含むことによる効果が顕著に発現した。
本発明の不織布の製造方法により製造された叩解された溶剤紡糸セルロースを抄造してなる不織布は、ピンホールが少ない。本発明の不織布の製造方法により製造された叩解された溶剤紡糸セルロースを抄造してなる不織布は、ろ過精度の高いフィルター、漏れ電流の少ない電気化学素子用セパレータ、耐電圧の高い電気化学素子用セパレータとして利用することができる。