(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138717
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】固定部材及び壁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20241002BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20241002BHJP
E04B 1/88 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E04B1/76 400J
E04B1/76 400Z
E04B1/86 R
E04B1/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049349
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】玄 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】吉村 昌子
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DF04
2E001FA03
2E001FA04
2E001FA06
2E001FA07
2E001FA08
2E001GA12
2E001HD01
2E001HD03
2E001HD09
2E001JA21
2E001JA22
2E001JA25
2E001LA02
2E001LA13
(57)【要約】
【課題】機能材が壁面から脱落するのを抑制可能な固定部材を提供する。
【解決手段】断熱性又は吸音性の少なくとも一方を有する第2機能材26を第3石膏ボード27の室内側の面に固定するための固定部材31であって、第3石膏ボード27の表面に刺し込み可能な第1ピン31bと、第2機能材26に刺し込み可能な第2ピン31cと、第1ピン31b及び第2ピン31cの間に配置され、第3石膏ボード27の室内側の面と当接可能な当接部31aと、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性又は吸音性の少なくとも一方を有する機能材を壁面に固定するための固定部材であって、
前記壁面に刺し込み可能な第1ピンと、
前記機能材に刺し込み可能な第2ピンと、
前記第1ピン及び前記第2ピンの間に配置され、前記壁面と当接可能な当接部と、
を具備する、
固定部材。
【請求項2】
前記当接部は、
前記壁面と当接することで、前記第2ピンが下方へ回転するのを規制する、
請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
前記当接部は、
平板状に形成される、
請求項1に記載の固定部材。
【請求項4】
前記第2ピンの長さは、
前記第1ピンよりも長い、
請求項1に記載の固定部材。
【請求項5】
前記第1ピン又は前記第2ピンの少なくとも一方の先端部に取り付けられるカバー部をさらに具備する、
請求項1に記載の固定部材。
【請求項6】
前記カバー部には、
前記第1ピン又は前記第2ピンの少なくとも一方に対して、軸方向に摺動可能な貫通孔が形成される、
請求項5に記載の固定部材。
【請求項7】
前記第2ピンは、
前記当接部が前記壁面と当接した状態において、先端部に向かうにつれて上方へ延出するように形成される、
請求項1に記載の固定部材。
【請求項8】
前記機能材と、
前記壁面が形成される面材と、
前記第1ピンが前記壁面に刺し込まれると共に前記第2ピンが前記機能材に刺し込まれることによって、前記機能材を前記面材に固定する請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の固定部材と、
を具備する、
壁構造。
【請求項9】
前記第2ピンは、
前記機能材を貫通する、
請求項8に記載の壁構造。
【請求項10】
前記当接部は、
止め具により前記壁面に固定される、
請求項8に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材や吸音材を壁面に固定するための固定部材及び壁構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱材や吸音材を壁面に固定するための固定部材及び壁構造の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の固定部材は、ピン部材及び押さえキャップを具備する。ピン部材は、ピン本体部及び頭部を具備する。ピン本体部は、頭部の一側面から突出するように形成される。頭部の他側面(ピン本体部とは反対側の面)は、接着剤によって下地材の表面(取付面)に貼り付けられる。こうして取付面から突出するように配置されたピン本体部には、断熱材が刺し込まれる。またピン本体部の先端部には、押さえキャップが係合される。これによって特許文献1の固定部材は、ピン部材と押さえキャップとの間で断熱材を挟み込み、断熱材を取付面に固定することができる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の固定部材は、接着剤によって取付面に固定されるため、経年劣化によって接着剤が剥がれてしまい、断熱材が取付面から脱落する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、機能材が壁面から脱落するのを抑制可能な固定部材及び壁構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、断熱性又は吸音性の少なくとも一方を有する機能材を壁面に固定するための固定部材であって、前記壁面に刺し込み可能な第1ピンと、前記機能材に刺し込み可能な第2ピンと、前記第1ピン及び前記第2ピンの間に配置され、前記壁面と当接可能な当接部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記当接部は、前記壁面と当接することで、前記第2ピンが下方へ回転するのを規制するものである。
【0010】
請求項3においては、前記当接部は、平板状に形成されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記第2ピンの長さは、前記第1ピンよりも長いものである。
【0012】
請求項5においては、前記第1ピン又は前記第2ピンの少なくとも一方の先端部に取り付けられるカバー部をさらに具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記カバー部には、前記第1ピン又は前記第2ピンの少なくとも一方に対して、軸方向に摺動可能な貫通孔が形成されるものである。
【0014】
請求項7においては、前記第2ピンは、前記当接部が前記壁面と当接した状態において、先端部に向かうにつれて上方へ延出するように形成されるものである。
【0015】
請求項8においては、前記機能材と、前記壁面が形成される面材と、前記第1ピンが前記壁面に刺し込まれると共に前記第2ピンが前記機能材に刺し込まれることによって、前記機能材を前記面材に固定する請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の固定部材と、を具備するものである。
【0016】
請求項9においては、前記第2ピンは、前記機能材を貫通するものである。
【0017】
請求項10においては、前記当接部は、止め具により前記壁面に固定されるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、機能材が壁面から脱落するのを抑制できる。
【0020】
請求項2においては、第2ピンが下方へ回転して機能材が第2ピンから滑り落ちるのを抑制することができる。
【0021】
請求項3においては、平板状の当接部を壁面に向けて押し付けることで、第1ピンを壁面に容易に刺し込むことができる。
【0022】
請求項4においては、第2ピンの長さを比較的長くすることができるため、第2ピンに機能材を深く刺し込んで、機能材が第2ピンから脱落するのを抑制できる。
【0023】
請求項5においては、固定部材を搬送する際等に第1ピン、第2ピンの先端部を保護することができる。
【0024】
請求項6においては、作業性が低下するのを抑制できる。
【0025】
請求項7においては、機能材が第2ピンから脱落するのを抑制できる。
【0026】
請求項8においては、機能材が壁面から脱落するのを抑制することができる。
【0027】
請求項9においては、機能材が第2ピンから脱落するのを抑制できる。
【0028】
請求項10においては、固定部材を壁面に強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る壁構造が適用された防音室を示す概略図。
【
図4】(a)第1ピンを壁面に刺し込む前の状態を示す図。(b)第1ピンを壁面に刺し込んだ後の状態を示す図。(c)第2機能材を第2ピンに刺し込んだ状態を示す図。
【
図5】(a)第1変形例に係る固定部材を示す側面図。(b)第1変形例に係る固定部材の第1ピンを壁面に刺し込む前の状態を示す図。(c)第1変形例に係る固定部材の第1ピンを壁面に刺し込んだ後の状態を示す図。
【
図6】(a)第2変形例に係る固定部材を示す側面図。(b)第3変形例に係る固定部材を示す側面図。
【
図7】(a)第4変形例に係る固定部材を示す斜視図。(b)同じく、断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向を定義する。
【0031】
以下では、本発明の一実施形態に係る固定部材31を具備する壁構造20について説明する。
【0032】
壁構造20は、建物の壁を構成するためのものである。壁構造20は、建物の内壁及び外壁にそれぞれ適用可能である。本実施形態の壁構造20は、
図1に示す防音室10の壁(建物の内壁)に適用される。以下ではまず、
図1及び
図2を参照し、防音室10について説明する。なお
図2は、
図1に示す部分Pの詳細を示すものである。
【0033】
防音室10は、室内で発生した音が室外に伝搬し難い部屋である。
図1において、防音室10は、非防音室40と隣接するように設置される。防音室10は、天井部11及び壁部12を具備する。
【0034】
天井部11は、防音室10の天井を構成すると共に外部への音漏れを抑制するためのものである。
図2に示すように、本実施形態の天井部11は、上下一対の石膏ボード11aの間に吸音性を有する機能材11bが設けられることで構成される。機能材11bは、例えば、グラスウール、ロックウールといった繊維系断熱材、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォームといった発泡系断熱材によって構成される。
【0035】
図1及び
図2に示す壁部12は、防音室10の水平方向の四方を区画すると共に外部への音漏れを抑制するためのものである。壁構造20は、各壁部12に適用される。以下では、防音室10と非防音室40とを区画する壁部12を例に挙げ、壁構造20の構成を説明する。また以下では、防音室10を基準として、室外側及び室内側を定義する。
【0036】
図2に示す壁構造20は、複数の石膏ボード21・24・27・28・30、遮音シート22、合板23、複数の機能材25・26・29及び複数の固定部材31を具備する。壁構造20では、室内側から室外側に向かう方向に沿って、第1石膏ボード21、遮音シート22、合板23、第2石膏ボード24、第1機能材25、第2機能材26、第3石膏ボード27、第4石膏ボード28、第3機能材29及び第5石膏ボード30が並んで配置される。
【0037】
また第1石膏ボード21、遮音シート22、合板23及び第2石膏ボード24は、互いに隣接するように配置される。遮音シート22は、遮音性を有する材料、例えばアスファルト等によって構成される。
【0038】
第3石膏ボード27及び第4石膏ボード28は、第2石膏ボード24から離れた位置で互いに隣接するように配置される。また第5石膏ボード30は、第4石膏ボード28から離れた位置に配置される。
【0039】
壁構造20では、各石膏ボード21・24・27・28・30によって、壁の内側及び外側に壁面が形成される。このように、本実施形態の各石膏ボード21・24・27・28・30は、壁面を形成する面材となっている。
【0040】
第1機能材25、第2機能材26及び第3機能材29は、防音室10で発生した音を壁の内側で吸収するためのものである。各機能材25・26・29は、吸音性を有する材料によって構成される。例えば、各機能材25・26・29は、グラスウール等の繊維系断熱材やポリスチレンフォーム等の発泡系断熱材等によって構成される。各機能材25・26・29は、下地桟等に固定される。
【0041】
より詳細には、本実施形態では、第2石膏ボード24の室外側及び第4石膏ボード28の室外側に下地残が配置されているため、当該第2石膏ボード24及び第4石膏ボード28と室外側で隣接する第1機能材25及び第3機能材29が下地残に固定される。第1機能材25及び第3機能材29は、例えばステーブルによって下地残に固定される。なお本実施形態では、第3機能材29と第5石膏ボード30との間に機能材が設けられておらず、当該第3機能材29と第5石膏ボード30との間に空気層が形成されている。
【0042】
また
図2に示すように、第3石膏ボード27の室内側には下地桟が設けられていないため、当該第3石膏ボード27と室内側で隣接する第2機能材26は、第3石膏ボード27(面材)に固定される。この場合、本実施形態ではステーブルではなく、機能材を面材(壁面)に固定するための固定部材31によって、第2機能材26が第3石膏ボード27に固定される。以下では
図3を参照し、固定部材31の構成を説明する。
【0043】
固定部材31は、当接部31a、第1ピン31b及び第2ピン31cを具備する。当接部31aは、壁面(第3石膏ボード27の表面)と当接可能な部分である。当接部31aは、平板状(本実施形態では円板状(皿状))に形成される。また当接部31aは、第1ピン31bと第2ピン31cとの間に形成される。
【0044】
第1ピン31bは、壁面に刺し込み可能な部分である。第1ピン31bは、当接部31aの中央部(円板の中心)から、当接部31aに対して垂直な方向に延出するように形成される。第1ピン31bの先端部は、先鋭状に形成される(不図示)。
【0045】
第2ピン31cは、機能材(第2機能材26)に刺し込み可能な部分である。第2ピン31cは、当接部31aを挟んで第1ピン31bとは反対側に形成される。第2ピン31cは、当接部31aの中央部から、当接部31aに対して垂直な方向に延出するように形成される。第2ピン31cの先端部は、先鋭状に形成される(不図示)。
【0046】
第2ピン31cの長さ、具体的には当接部31a側の端部から先端部までの、第2ピン31cの軸方向に沿った距離は、第1ピン31bの長さ及び第2機能材26の厚みよりも長い。また第2ピン31cの外径は、例えば、第1ピン31bの外径と略同一となっている。
【0047】
なお、上述した第1ピン31b及び第2ピン31cの長さ及び外径の大小関係は一例であり、特に限定されるものではない。また上述した第2ピン31cの長さ及び第2機能材26の厚みの大小関係も一例であり、特に限定されるものではない。
【0048】
また、固定部材31の原材料は特に限定されるものではないが、比較的錆び難いものであることが望ましい。これによって、固定部材31が錆びることによって生じる不具合の発生を抑制することができる。
【0049】
また、固定部材31を製造する方法は特に限定されるものではない。例えば固定部材31は、円の中心を貫通する貫通孔が形成された円板状の部材に、軸方向両端部が先鋭状に形成される1本のピンが挿通されて固定されることによって製造されてもよい。この場合、上記円板状の部材によって当接部31aが形成されると共に、当該当接部31aによって第1ピン31b及び第2ピン31cの長さが規定されることとなる。また固定部材31は、円板状に形成される部材の両面に、別々のピンが固定されることで構成されてもよい。
【0050】
以下では
図4を参照し、固定部材31によって第2機能材26を固定する手順を説明する。
【0051】
まず
図4(a)及び
図4(b)に示すように、固定部材31を第3石膏ボード27に固定する。この際、固定部材31の第1ピン31bは、第3石膏ボード27に刺し込まれる。本実施形態では円板状の当接部31aが形成されているため、作業者は、当該当接部31aを指で押し込むことで、第1ピン31bを第3石膏ボード27に容易に刺し込むことができる。これによって作業性を向上させることができる。
【0052】
また
図4(b)に示すように、第1ピン31bは、当接部31aが第3石膏ボード27に当接するまで刺し込まれる。これにより、第1ピン31bの刺し込み幅が作業者によって異なってしまうのを抑制し、第1ピン31bの刺し込み幅の均一化を図ることができる。
【0053】
次に、
図4(c)に示すように、第1ピン31bが刺し込まれた後で、第2機能材26が第2ピン31cに刺し込まれる。この際第2機能材26は、当接部31a及び第3石膏ボード27と当接するまで、第2ピン31cに刺し込まれる。これによって第2ピン31cは、第2機能材26を貫通し、先端部が第2機能材26よりも室内側に突き出た状態となる。こうして第2ピン31cの刺し込みが完了することで、固定部材31は、第2機能材26を第3石膏ボード27に固定することができる。
【0054】
図2に示すように、壁構造20では、上述した手順により、高さ位置が異なる複数(本実施形態では2つ)の固定部材31で第2機能材26を第3石膏ボード27に固定する。こうして複数の固定部材31で第2機能材26を固定することで、第2機能材26の保持力を向上させることができる。
【0055】
このように、本実施形態の固定部材31は、接着剤等によって面材(第3石膏ボード27)に接着されるのではなく、第1ピン31bが面材に刺し込まれることで当該面材に固定されるものとなっている。当該構成によると、面材に接着された場合にあるような接着剤の劣化が生じないため、固定部材31が第2機能材26ごと第3石膏ボード27から脱落するのを抑制できる。また接着剤の劣化によって固定部材31が傾いて、第2機能材26が第2ピン31cから滑り落ちるのを抑制することができる。このようにして第2機能材26の面材からの脱落を抑制することで、第2機能材26の性能(防音室10の吸音性)が損なわれるのを抑制することができる。
【0056】
また仮に接着剤で固定部材31を第3石膏ボード27に固定する場合、接着剤が乾くまで待つ必要がある。これに対し、本実施形態では第1ピン31bを第3石膏ボード27に刺し込むことで、固定部材31を短時間で固定することができる。
【0057】
また本実施形態では、第2ピン31cは、第2機能材26を貫通するように設けられる(
図4(c)参照)。当該構成によると、第2機能材26の厚み方向一側から他側に亘って第2ピン31cで保持することができるため、第2機能材26の保持力を向上させることができる。これによって、第2機能材26が第2ピン31cから脱落するのを抑制できる。
【0058】
ここで、第2ピン31cは、第2機能材26の自重を受け、下方へ回転しようとする。より詳細には、
図4(c)における紙面奥行き方向(第1ピン31bの軸方向及び上下方向に垂直な方向)を回転軸方向として、第2ピン31cが下方へ移動するように、固定部材31が回転しようとする(
図4(c)に示す矢印参照)。
【0059】
本実施形態では、円板状の当接部31aが第3石膏ボード27に面で接するため、第2ピン31cが下方へ回転しようとするのを当接部31aで受けることができる。これによって第2ピン31cの下方への回転を抑制する(固定部材31の回転を拘束する)ことができるため、第2機能材26が第2ピン31cから滑り落ちるのを抑制することができる。また石膏ボードのようなピンの保持力が比較的弱い部材に第1ピン31bを刺し込んだとしても、第1ピン31bが石膏ボードから抜けてしまうのを抑制することができる。
【0060】
以上の如く、本実施形態に係る固定部材31は、断熱性又は吸音性の少なくとも一方を有する機能材(第2機能材26)を壁面(第3石膏ボード27の表面)に固定するための固定部材31であって、前記壁面に刺し込み可能な第1ピン31bと、前記機能材に刺し込み可能な第2ピン31cと、前記第1ピン31b及び前記第2ピン31cの間に配置され、前記壁面と当接可能な当接部31aと、を具備するものである。
【0061】
このように構成することにより、第1ピン31bによって固定部材31が壁面から脱落するのを抑制する等して、機能材の脱落を抑制することができる。また、当接部31aが壁面と当接することで、第1ピン31bを必要以上に壁面に刺し込むのを抑制することができる。
【0062】
また、前記当接部31aは、前記壁面と当接することで、前記第2ピン31cが下方へ回転するのを規制するものである。
【0063】
このように構成することにより、第2ピン31cが下方へ回転して機能材が第2ピン31cから滑り落ちるのを抑制することができる。
【0064】
また、前記当接部31aは、平板状に形成されるものである。
【0065】
このように構成することにより、平板状の当接部31aを壁面に向けて押し付けることで、第1ピン31bを壁面に容易に刺し込むことができる。また平板状の当接部31aを壁面に面接触させ、第2ピン31cの下方への回転を規制することができる。
【0066】
また、前記第2ピン31cの長さは、前記第1ピン31bよりも長いものである。
【0067】
このように構成することにより、第2ピン31cに機能材を深く刺し込んで、機能材が第2ピン31cから脱落するのを抑制できる。
【0068】
また、以上の如く、本実施形態に係る壁構造20は、前記機能材(第2機能材26)と、前記壁面が形成される面材(第3石膏ボード27)と、前記第1ピン31bが前記壁面に刺し込まれると共に前記第2ピン31cが前記機能材に刺し込まれることによって、前記機能材を前記面材に固定する固定部材31と、を具備するものである。
【0069】
このように構成することにより、機能材が壁面から脱落するのを抑制できる。
【0070】
また、前記第2ピン31cは、前記機能材を貫通するものである。
【0071】
このように構成することにより、機能材が第2ピン31cから脱落するのを抑制できる。
【0072】
なお、本実施形態に係る第3石膏ボード27は、本発明に係る面材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第3石膏ボード27の表面は、本発明に係る壁面の実施の一形態である。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、固定部材31は、吸音性を有する部材を固定するものとしたが、固定部材31の固定対象(機能材)は、断熱性又は吸音性の少なくとも一方を有するものであればよい。したがって固定部材31は、断熱材を固定するものでもよいし、断熱性及び吸音性をそれぞれ有する断熱吸音材を固定するものでもよい。
【0075】
また固定部材31の第1ピン31bは、石膏ボード(第3石膏ボード27)に刺し込まれるものとしたが、第1ピン31bが刺し込まれる部材は、壁の壁面を形成する部材(面材)であれば、石膏ボードに限定されるものではない。例えば第1ピン31bは、合板、下地材等に刺し込まれるものであってもよい。
【0076】
また当接部31aは円板状に形成されるものとしたが、当接部31aの形状は、特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。ただし当接部31aは、壁面と面で接触可能に形成される(当接面を有する)ことが望ましい。これによって当接部31aは第2ピン31cが下方へ回転するのを規制できる。また当接部31aは、平板状に形成されることがさらに望ましい。これにより、第2ピン31cの回転規制に加えて、第1ピン31bを壁面に容易に刺し込むことができる。
【0077】
また固定部材31は、第2機能材26を厚み方向に挟んで保持するような構成であってもよい。例えば固定部材31は、
図4(c)に示す状態(第2機能材26が第2ピン31cに刺し込まれた状態)において、第2ピン31cの先端部に押さえ部材が取り付けられることで、第2機能材26を厚み方向に挟んで保持することができる。当該押え部材は、第2機能材26を室内側から押さえるためのものであり、例えば当接部31aと略同一形状に形成される。当該押さえ部材によって、第2機能材26の保持力を向上させることができる。なお押え部材の形状は、特に限定されるものではない。
【0078】
以下では、
図5から
図7を参照し、固定部材31の変形例について説明する。
【0079】
図5(a)に示す第1変形例の固定部材131は、カバー部131eを具備する点で
図3に示す固定部材31と相違する。より詳細には、カバー部131eは、第1ピン31b又は第2ピン31cの少なくとも一方の先端部に取り付けられる。なお
図5(a)には、第1ピン31bに取り付けられたカバー部131eが示されている。
【0080】
図5(a)に示すカバー部131eは、第1ピン31bの先端部の外周面を覆うように形成される。カバー部131eは、例えば略半球状に形成される。当該カバー部131eによって、固定部材131の搬送時等に第1ピン31bの先端部を保護することができる。カバー部131eには、第1ピン31bの軸方向に貫通する貫通孔131fが形成される。貫通孔131fは、第1ピン31bの外周面に対して摺動可能に形成される。
【0081】
第1変形例の固定部材131は、カバー部131eが取り付けられたままの状態で、第2機能材26を固定することができる。具体的には、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、第1ピン31bは、カバー部131eが取り付けられた状態で第3石膏ボード27に刺し込まれる。この際貫通孔131fが第1ピン31bを摺動し、カバー部131eは当接部31aに接近する。当該カバー部131eは、第3石膏ボード27と当接部31aとの間に挟まれる。こうして第1変形例の当接部31aは、カバー部131eを介して第3石膏ボード27と当接する。
【0082】
第1ピン31bが第3石膏ボード27に刺し込まれた後で、第2ピン31cに第2機能材26が刺し込まれる(不図示)。当該第3石膏ボード27の自重によって第2ピン31cが下方へ回転しようとすると、第3石膏ボード27に当接部31aが当接し、第2ピン31cの回転が規制される。なお、仮に第2ピン31cにカバー部131eが取り付けられる場合、第2機能材26が刺し込まれるのに伴って貫通孔131fが第2ピン31cを摺動し、カバー部131eが当接部31aに接近することとなる。
【0083】
このように、第1変形例の固定部材131は、貫通孔131fが形成されることにより、カバー部131eが取り付けられたままの状態で、第2機能材26を固定することができる。これによってカバー部131eを外す手間を省略し、作業性の低下を抑制することができる。また作業者の手が第1ピン31bの先端部に直接触れるのを抑制することもできる。
【0084】
なお、第1変形例のようにカバー部131eが取り付けられる場合には、第1ピン31b及び第2ピン31cは、互いに略同一の外径を有することが望ましい。これによって共通のカバー部131eを第1ピン31b及び第2ピン31cの先端部に取り付けることができるため、カバー部131eの取付作業を効率的に行うことができる。
【0085】
以上の如く、第1変形例の固定部材131は、前記第1ピン31b又は前記第2ピン31cの少なくとも一方の先端部に取り付けられるカバー部131eをさらに具備するものである。
【0086】
このように構成することにより、固定部材131を搬送する際等に第1ピン31b、第2ピン31cの先端部を保護することができる。
【0087】
また、前記カバー部131eには、前記第1ピン31b又は前記第2ピン31cの少なくとも一方に対して、軸方向に摺動可能な貫通孔131fが形成されるものである。
【0088】
このように構成することにより、作業性が低下するのを抑制できる。
【0089】
なおカバー部131eは、第1ピン31b又は第2ピン31cの先端部に取り付けられるものであれば、
図5に示す構成に限定されるものではない。例えば
図5に示す構成では、カバー部131eが取り付けられたままの状態で第1ピン31bを第3石膏ボード27に刺し込み可能であるものとしたが、これは一例であり、カバー部131eが取り外されてから第1ピン31bが第3石膏ボード27に刺し込まれるものであってもよい。このように、カバー部131eを具備する固定部材131は、当該カバー部131eがピンの先端部から取り外された状態で機能材を固定するものであってもよい。当該構成においては、必ずしもカバー部131eに貫通孔131fが形成される必要はない。
【0090】
図6(a)に示す第2変形例の固定部材231は、第2ピン231cの向きが
図3に示す固定部材31と相違する。より詳細には、第2変形例の第2ピン231cは、当接部31aに対して垂直な方向(
図6(a)における紙面左右方向)に傾斜するように形成される。当該第2ピン231cは、当接部31aが第3石膏ボード27の表面(壁面)に当接した状態において、先端部に向かうにつれて上方へ延出するように形成される。これにより、第2機能材26が第2ピン231cの先端側に向けて滑り難くすることができ、第2機能材26が第2ピン231cから脱落するのを抑制できる。
【0091】
図6(b)に示す第3変形例の固定部材331は、当接部31aに挿通孔331dが形成される点で
図3に示す固定部材31と相違する。より詳細には、挿通孔331dは、当接部31aを厚さ方向に貫通するように形成される略円状の孔である。当該挿通孔331dには、当接部31aが第3石膏ボード27の表面(壁面)に当接した状態で、ピン332等の止め具が挿通される。
【0092】
当該ピン332は、挿通孔331dよりも外径が大きい頭部を有する。ピン332は、第1ピン31bの軸方向に対して傾斜するように、挿通孔331dに挿通される。当該ピン332により、当接部31aは第3石膏ボード27に固定される。なお止め具は、挿通孔331dを介して第3石膏ボード27に当接部31aを固定可能なものであれば、
図6(b)に示すようなピン332に限定されるものではない。また、止め具の本数や配置(向き等)は
図6(b)に示す第3変形例に限定されるものではなく、当接部31aの外径等に応じて適宜変更可能である。ただし止め具の本数は、複数であることが望ましい。これによって、当接部31aの保持力を向上させることができる。
【0093】
以上の如く、第3変形例の当接部31aは、止め具により前記壁面に固定されるものである。
【0094】
このように構成することにより、固定部材331を壁面に強固に固定することができる。
【0095】
図7に示す第4変形例の固定部材431は、1本のピンを略Z字状に曲げることで形成される点で
図3に示す固定部材31と相違する。当該固定部材431には、円板状(
図3参照)ではなく、円柱状の当接部431aが形成されることとなる。また当接部431aは、第1ピン31b及び第2ピン31cと略同一の外径を有する。
図7に示す当接部431aは、第1ピン31b及び第2ピン31cの軸方向に対して傾斜する方向(垂直な方向)を向けて配置される。第4変形例の固定部材431によると、固定部材431の構成を簡素化し、固定部材431の製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0096】
20 壁構造
26 第2機能材
27 第3石膏ボード
31 固定部材
31a 当接部
31b 第1ピン
31c 第2ピン