(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138720
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】炉内足場の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 3/24 20060101AFI20241002BHJP
E04G 5/14 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E04G3/24 301D
E04G5/14 301G
E04G3/24 301Z
E04G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049359
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 颯太
(57)【要約】
【課題】炉内足場の組立作業及び解体作業を効率的に行い得ることのできる炉内足場の構築方法を提供する。
【解決手段】本発明の炉内足場の構築方法は、折り畳まれた状態にある足場ユニット10、足場ユニット10を支持するためのブラケット32を有するポスト22、及びポスト22を上方に持ち上げるためのリフティング装置21を、ボイラ炉1内の炉壁に形成された開口を通じてボイラ炉1内に搬送する搬送工程と、リフティング装置21をボイラ炉1内の所定位置に配置する配置工程と、ポスト22のブラケット32に、足場ユニット10を載置する載置工程と、足場ユニット10を折り畳まれた状態から組上げ状態に移行する組上げ工程と、ポスト22をリフティング装置21によって所定の高さまで持ち上げるリフティング工程と、を有し、載置工程、組上げ工程及びリフティング工程を繰り返し行うことにより足場ユニット10を複数層にわたって連設する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する炉内において、少なくとも複数スパンの長さを有しかつ略平板状の足場板と、前記足場板の両端部に設けられ上下方向に延びた一対の幅木と、前記各幅木の外側面に回動自在にそれぞれ支持された複数の支柱と、を有する複数の足場ユニットからなる炉内足場の構築方法であって、
折り畳まれた状態にある前記複数の足場ユニット、前記足場ユニットを支持するための支持部を有する複数のポスト、及び前記ポストを上方に持ち上げるための複数のリフティング装置を、それぞれ前記炉内の炉壁に形成された開口を通じて前記炉内に搬送する搬送工程と、
前記複数のリフティング装置を前記炉内の所定位置にそれぞれ配置する配置工程と、
前記リフティング装置近傍に配置された前記ポストの支持部に、前記搬送工程によって搬送されたいずれかの前記足場ユニットを載置する載置工程と、
前記載置工程によって前記支持部に載置された前記足場ユニットを折り畳まれた状態から組上げ状態に移行する組上げ工程と、
前記足場ユニットが載置された前記支持部を有する前記ポストを、前記各リフティング装置によって所定の高さまでそれぞれ持ち上げるリフティング工程と、を有し、
前記載置工程、前記組上げ工程及び前記リフティング工程を繰り返し行うことにより、前記足場ユニットを複数層にわたって連設することを特徴とする、炉内足場の構築方法。
【請求項2】
前記組上げ工程では、
前記各支柱を前記幅木の外側面に沿って回動させてそれぞれ立設させ、
前記足場板の上面に載置された手摺を取り出し、それらを前記支柱に掛止する、請求項1に記載の炉内足場の構築方法。
【請求項3】
前記組上げ工程において組上げられた前記足場ユニットが左右方向に複数ある場合に、これら前記複数の足場ユニット同士を左右方向に連結する連結工程をさらに有する、請求項1に記載の炉内足場の構築方法。
【請求項4】
前記連結工程では、
既に前記他の足場ユニットが上方層で組上げられている場合に、
当該足場ユニットの支柱と、左右方向に連結された前記足場ユニットの支柱とを上下方向に接続する、請求項3に記載の炉内足場の構築方法。
【請求項5】
前記連結工程では、
前記組上げ工程において組上げられた複数の前記足場ユニットを平面視で略ロの字状になるよう連結する、請求項3に記載の炉内足場の構築方法。
【請求項6】
前記リフティング装置は、
前記ポストを掛止するフック部と、
前記フック部を前記ポストに対して近接離間させるリンク部と、
前記フック部を上下方向に移動させる可動機構とを有し、
前記リフティング工程では、
前記リンク部によって前記ポスト側に変位された前記フック部が前記ポストを支持した上で、前記可動機構によって前記フック部が上方向に移動されることにより、前記ポストを所定の高さまで持ち上げる、請求項1に記載の炉内足場の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所のボイラ炉の内部に設けられる炉内足場の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば火力発電所のボイラ炉は、内部が中空状とされ、その炉底部が下方に向かうほど先細りとなったホッパー構造とされている。ボイラ炉の上部は高温、高圧の蒸気を発生させるための火炉部とされ、略四角柱状に形成されている(例えば特許文献1参照)。この炉底部及び火炉部では、例えばボイラ炉内部の点検や補修等のメンテナンス時において、内部に炉内足場が組み立てられる。
【0003】
従来の炉内足場では、例えば大組大払し式工法を用いて組み立てられる。
図21は、大組大払し式工法を用いて組み立てられた従来の炉内足場の概略構成を示す斜視図である。炉内足場51は、火炉部52のステージ53上において平面視で略四角枠状に構成されて構築される。なお、同図に示す炉内足場51は、説明の便宜上、高さ方向に3層とされているが、実際は15~20層ほどの炉内足場となる。
【0004】
大組大払し式工法では、
図22に示すように、実際に炉内足場51を設置するステージ53上の位置に例えば一層の基礎足場54が組み立てられる。より具体的には、炉内足場51が設置される位置に複数のジャッキ56が並べられ、次いで、ジャッキ56の上に支柱57、足場板58及び手摺59等が連結されて基礎足場54が組み立てられる。
【0005】
その後、基礎足場54の組み立て位置とは異なる別の位置で、複数層からなる上層の足場60が組み立てられる。より具体的には、
図23に示すように、ジャッキ61及び水平つなぎ材62等からなる仮組み治具64が設置され、仮組み治具64の上に支柱65、足場板66及び手摺67等が連結されて例えば2層構造の足場が組み立てられる。
【0006】
そして、
図24に示すように、仮組み治具64を除く上層の足場60がワイヤーWを用いてクレーン等で吊上げられ、基礎足場54の上部に連結される。炉内足場51は、連結された複数の基礎足場54及び上層の足場60が上下左右にさらに複数連なって構築され、
図21に示したように略四角枠状の炉内足場となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、例えば火力発電所のボイラ炉では、設備停止による機会損失をできる限り少なくするために、ボイラ炉内に構築される炉内足場51の組立作業や解体作業を短時間で実施することが要請されている
【0009】
従来の大組大払し式工法を用いた炉内足場51の構築方法では、上層の足場60がブロック単位でワイヤーW等で吊り上げられるものの、上層の足場60は、支柱65、足場板66及び手摺67等の仮設部材をひとつひとつ連結しながら組み立てられるものである(
図23参照)。また、基礎足場54も、支柱57、足場板58及び手摺59等の仮設部材をひとつひとつ連結しながら組み立てられる(
図22参照)。
【0010】
このように、炉内足場51は仮設部材の部品点数が多いことから、炉内足場51の組立の作業性が悪く、組立作業に長時間を費やすといった問題点があった。また、炉内足場51を解体する解体作業においても、複数種類の仮設部材をひとつひとつ取り外す必要があり、同様に長時間を費やすといった問題点があった。
【0011】
さらに、炉内足場51を組立てる前の複数種類の仮設部材は、炉内のステージ53上といった限られた領域内に運搬し保管維持する必要がある。そのため、それら仮設部材の種類及び数量を管理することが非常に手間でありかつ煩わしいといった問題点もあった。
【0012】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、炉内足場の組立作業及び解体作業を効率的に行い得ることのできる炉内足場の構築方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって提供される炉内足場の構築方法は、内部に空間を有する炉内において、少なくとも複数スパンの長さを有しかつ略平板状の足場板と、前記足場板の両端部に設けられ上下方向に延びた一対の幅木と、前記各幅木の外側面に回動自在にそれぞれ支持された複数の支柱と、を有する複数の足場ユニットからなる炉内足場の構築方法であって、折り畳まれた状態にある前記複数の足場ユニット、前記足場ユニットを支持するための支持部を有する複数のポスト、及び前記ポストを上方に持ち上げるための複数のリフティング装置を、それぞれ前記炉内の炉壁に形成された開口を通じて前記炉内に搬送する搬送工程と、前記複数のリフティング装置を前記炉内の所定位置にそれぞれ配置する配置工程と、前記リフティング装置近傍に配置された前記ポストの支持部に、前記搬送工程によって搬送されたいずれかの前記足場ユニットを載置する載置工程と、前記載置工程によって前記支持部に載置された前記足場ユニットを折り畳まれた状態から組上げ状態に移行する組上げ工程と、前記足場ユニットが載置された前記支持部を有する前記ポストを、前記各リフティング装置によって所定の高さまでそれぞれ持ち上げるリフティング工程と、を有し、前記載置工程、前記組上げ工程及び前記リフティング工程を繰り返し行うことにより、前記足場ユニットを複数層にわたって連設することを特徴としている。
【0014】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記組上げ工程では、前記各支柱を前記幅木の外側面に沿って回動させてそれぞれ立設させ、前記足場板の上面に載置された手摺を取り出し、それらを前記支柱に掛止するとよい。
【0015】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記組上げ工程において組上げられた前記足場ユニットが左右方向に複数ある場合に、これら前記複数の足場ユニット同士を左右方向に連結する連結工程をさらに有するとよい。
【0016】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記連結工程では、既に前記他の足場ユニットが上方層で組上げられている場合に、当該足場ユニットの支柱と、左右方向に連結された前記足場ユニットの支柱とを上下方向に接続するとよい。
【0017】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記連結工程では、前記組上げ工程において組上げられた複数の前記足場ユニットを平面視で略ロの字状になるよう連結するとよい。
【0018】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記リフティング装置は、前記ポストを掛止するフック部と、前記フック部を前記ポストに対して近接離間させるリンク部と、前記フック部を上下方向に移動させる可動機構とを有し、前記リフティング工程では、前記リンク部によって前記ポスト側に変位された前記フック部が前記ポストを支持した上で、前記可動機構によって前記フック部が上方向に移動されることにより、前記ポストを所定の高さまで持ち上げるとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、折り畳まれた状態にある複数の足場ユニットを炉内に搬送し、搬送された各足場ユニットを折り畳まれた状態から組立て状態にし、組み立てられた複数の足場ユニットをリフティング装置によって持ち上げながら複数層に連設し、炉内足場を構築する。足場ユニットは、従来の仮設足場の複数スパン相当の長さとされ、部材が一体的に構成されているので、従来のように複数種類の仮設部材を一つ一つ連結して炉内足場を組み立てる必要がなく、炉内足場を構築する際の組立及び解体の作業時間を大幅に短縮することができる。また、足場ユニットは折畳み式とされているため、例えば炉内に搬入する際にもスムーズに搬入でき、保管維持も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る炉内足場の構築方法が適用されて構築される炉内足場の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】足場ユニットの組上げ状態を示す斜視図である。
【
図4】足場ユニットの組立て手順を説明するための図である。
【
図5】足場ユニットの組立て手順を説明するための図である。
【
図6】リフティング装置の外形を示し、(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【
図7】第1ポストの外形を示し、(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【
図8】第2ポストの外形を示し、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【
図9】リフティング装置の作用を説明するための図であり、(a)はフック部がポストを支持したときの状態を示し、(b)はフック部が引き込まれたときの状態を示す。
【
図10】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図11】梁部材、リフティング装置及びポストの位置関係を示す一部切欠平面図である。
【
図12】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図13】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図14】足場ユニットがポストのブラケット及びリフターに支持されたときの状態を示す一部切欠平面図である。
【
図15】足場ユニットの幅木同士の連結状態を示す図である。
【
図16】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図17】足場ユニットの手摺同士の連結状態を示す図である。
【
図18】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図19】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図20】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図21】従来の炉内足場の概略構成を示す斜視図である。
【
図22】従来の炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図23】従来の炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図24】従来の炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る炉内足場の構築方法が適用されて構築される炉内足場の概略構成を示す斜視図である。
図2は、炉内足場の一側面方向から見た図である。本実施形態に係る炉内足場は、例えば火力発電所のボイラ炉の内部に設置される。本炉内足場の構築方法は、後述するように、いわゆるリフティング式工法が用いられる。
【0023】
火力発電所のボイラ炉1は、
図1に示すように、下方に向かうほど先細りとなるホッパー構造とされた炉底部2と、その上方に形成され、全体構造が中空の略四角柱状に形成された火炉部3とによって構成されている。本実施形態に係る炉内足場4は、火炉部3のステージ5上に設置されるものであり、火炉部3内部の点検や補修等のメンテナンス時において用いられる。なお、
図1に示す炉内足場4は、説明の便宜上、高さ方向に3層構造とされているが、これに限るものではない(実際は15~20層ほど設置される)。
【0024】
炉内足場4は、火炉部3の内側壁面に沿って平面視で略ロの字状になるよう構成されており(
図1参照)、後述する足場ユニット10が複数組み合わされて構築される。炉内足場4は、
図2に示すように、一層の一側面当たり例えば2つの足場ユニット10が連結されるとともに、それらが後述するリフティング装置21及びポスト22によって高さ方向にわたって一層ずつ積み上げられて構築される。
【0025】
なお、
図2に示す炉内足場4の側面図において、左右両端にある2本の支柱13は左右方向の側面側における足場の一部を示し、奥行き方向の側面における足場は省略されている。また、炉内足場4の構成は、
図1や
図2に示す構成に限るものではない。
【0026】
ここで、本実施形態の特徴部分である一つの足場ユニット10は、
図3に示すように、作業者が点検作業等を行うための足場板11と、足場板11の長手方向両端部から上下方向に延びた一対の幅木12と、幅木12に回動自在に支持された複数の支柱13と、支柱13に掛止される一対の手摺14とが一体的に連なって構成されている。
【0027】
足場板11は、その全長(一つの足場ユニット10の全長に相当)が、従来の仮設足場の複数スパン以上(例えば3スパン以上)とされている。なお、足場板11は、複数枚の単体の板部材が並設されたものでもよい。
【0028】
一対の幅木12は、足場板11の下面側において正面視で左右方向に延びた複数本のつなぎ材(図略)によって連結されている。一対の幅木12の外側面には、それに沿って複数の支柱13が回動自在に支持されている。各支柱13は、足場ユニット10の組立て状態(
図3参照)においては、略鉛直方向に延びており、下端から離れた所定位置で幅木12にボルト止めされている。各支柱13は、下端部においてほぞ15が形成されており、上端部において他の支柱13のほぞ15が嵌合する凹部が形成されている。
【0029】
手前側の一方の幅木12に沿って長手方向に並ぶ2本の支柱13には、一方の手摺14が掛止されている。また、対向する奥行き側の他方の幅木12に沿って並ぶ2本の支柱13にも、他方の手摺14が掛止されている。
【0030】
各手摺14は、長手方向にかつ上下に平行に延びる2本の棒状部材16と、各棒状部材16を上下に結ぶ複数の連接部材17とからなる。各手摺14は、支柱13に形成された図略のポケット部に図略の係止片を嵌装させることにより支柱13に掛止される。
【0031】
図3に示す足場ユニット10は、組立て状態を示すものであるが、本足場ユニット10は、折畳み式とされている。すなわち、足場ユニット10は、
図4(a)に示すように、折畳み状態では略平板状とされ、複数の支柱13は、一対の幅木12の各外側面に沿って配されている。また、手摺14は、折畳み状態では足場板11の上面に載置されている。足場板11は、この折畳み状態で搬送されたり、一時的な保管のために積層されたりする。
【0032】
足場ユニット10を
図4(a)に示す折畳み状態から
図3に示す組立て状態にするには、
図4(b)に示すように、一方の一対の支柱13同士を幅木12に沿って回動させて立設させる(同図の矢印A参照)。次いで、他方の一対の支柱13同士を幅木12に沿って回動させて立設させる(
図5の矢印B参照)。そして、足場板11の上面から手摺14を取り出し、
図3に示したように、幅木12に沿って並ぶ2本の支柱13同士にそれぞれ手摺14を掛止する。このように、本実施形態においては、足場ユニット10を用いて複数スパン以上の足場を容易に組み立てることができる。
【0033】
複数の足場ユニット10は、
図6ないし
図9に示すリフティング装置21及びポスト22によって一層ずつ積層される。リフティング装置21は、
図6に示すように、その本体が上下方向に延び略四角柱状に形成されて台座20の上面に設けられ、内側の空間に上下方向に延びた略円柱状のスクリュージャッキ25が設けられている。スクリュージャッキ25は、その表面が螺刻されており図略のモータによって正方向または逆方向に回転可能とされている。図略のモータは、図略の制御盤からの信号によって回転駆動される。
【0034】
リフティング装置21は、ポスト22(
図7及び
図8参照)を支持しかつそれを上方に持ち上げるための支持機構24を備えている。支持機構24は、リフティング装置21の開放縁部21a(
図6(b)参照)に沿って摺動自在とされた可動部26を有している。可動部26は、裏面側がスクリュージャッキ25に螺合されている。そのため、可動部26(支持機構24)は、スクリュージャッキ25の回転動作にともなって、上下方向に移動可能とされている。
【0035】
可動部26には、その下端近傍に回動自在に支持され、ポスト22を支持するための一対のフック部28が設けられている。各フック部28は所定長さを有し、その上端には、略三角形の谷状に形成された切欠き凹部27がそれぞれ形成されている。これら切欠き凹部27は、ポスト22の後述する突起片31を下方から掛止するためのものである。
【0036】
可動部26には、その上端近傍の2つの長孔29aにそれぞれ遊嵌されたハンドルを有する一対のリンク部29が設けられている。上記ハンドルはリンク部29の一端に形成され、リンク部29の他端はフック部28の中央の回動軸29bを中心にそれぞれ回動自在とされている。一対のリンク部29は、一対のフック部28をポスト22に対して近接離間させるためのものである。
【0037】
作業者がリンク部29のハンドルを操作することにより(例えば長孔29a内を上方または下方に変位させることにより)、後述するように、フック部28をポスト22に対して近接離間させることができる。
【0038】
ポスト22は、リフティング装置21(厳密には支持機構24のフック部28)に支持されかつ持ち上げられることにより、足場ユニット10を上方に移動させるためのものである。ポスト22は、
図7に示すように、所定高さ(例えば約1m)を有する略四角柱状に形成され、4側面のうち隣り合わない2側面に、一対の突起片31が形成されている。各突起片31は略V字状にそれぞれ形成されており、リフティング装置21がポスト22を支持しつつ上方に持ち上げる際、この突起片31がフック部28の切欠き凹部27に掛止される。
【0039】
ポスト22は、
図7に示したように、側面に一対の突起片31のみが形成されたタイプ(以下、「第1ポスト22A」という。)と、
図8に示すように、一対の突起片31及び一対のブラケット32が取付けられたタイプ(以下、「第2ポスト22B」といい、第1ポスト22Aと第2ポスト22Bを総称するときは単に「ポスト22」という)とに分類される。第2ポスト22Bは、その角部から直交方向に延び、所定の長さを有する一対のブラケット32を備えている。これら一対のブラケット32は、その上面に足場ユニット10を載置し支持するためのものである。
【0040】
本実施形態では、足場ユニット10の支柱13の長さ(例えば約2m)が一層分の高さとされ、2つのポスト22を合わせた長さがこれに相当するとされる。そして、第1ポスト22Aと第2ポスト22Bとは、交互に積み重ねられ(最上部を除く)、第2ポスト22Bのブラケット32の上面にのみ、足場ユニット10が載置される。
【0041】
リフティング装置21は、
図9(a)に示すように、ポスト22を持ち上げるときには、支持機構24のフック部28をポスト22側に変位させ支持させる。例えば支持機構24のフック部28が、
図9(b)に示すように、リフティング装置21に対して略平行に延びた状態であるときには、作業者がリンク部29の図略のハンドルを長孔29a内で例えば下方に移動させると、フック部28が回動軸29bを中心にして回動しポスト22側に近接される(
図9(a)の矢印P参照)。この状態で、フック部28の先端の切欠き凹部27が、ポスト22の突起片31を下方から掛止して支持することができる。なお、厳密には、切欠き凹部27が突起片31を掛止する際には、下方から掛止する必要があるので、支持機構24を上方向に微動させることが必要である。
【0042】
そして、スクリュージャッキ25(
図6(b)参照)が回転動作することにより可動部26が上方に移動され、これにより、ポスト22は、フック部28に支持されながら上方に持ち上げられる(
図9(a)の矢印U参照)。
【0043】
また、
図9(b)に示すように、支持機構24をポスト22に当接させずに下方へ移動させるときには、フック部28をポスト22から離間させる。例えばフック部28が、
図9(a)に示すように、ポスト22を支持している状態にあるときには、作業者が図略のハンドルを例えば上方に移動させると、フック部28が回動軸29bを中心にして回動し、ポスト22から離間される(
図9(b)の矢印S参照)。なお、厳密には、切欠き凹部27の突起片31への掛止状態を解除する際には、フック部28の先端と突起片31とが当接するので、支持機構24を下方向に微動させることが必要である。
【0044】
これにより、フック部28は、リフティング装置21に対して略平行に延びた状態になり、スクリュージャッキ25が回転動作されて支持機構24が下方に移動しても(同図の矢印D参照)、ポスト22と当接することはない。そのため、支持機構24は、例えば積み重ねられたポスト22のうち上段のポスト22の近傍から下段のポスト22の近傍に、容易に移動することができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る炉内足場4の構築方法について説明する。
【0046】
本構築方法では、リフティング式工法が採用されて複数の足場ユニット10が積層された炉内足場4が構築される。ここで、前提として、ボイラ炉1の炉底部2においては他の足場が既に組み立てられ、それらの上方であって火炉部3の下部においてステージ5が設けられているものとする。本炉内足場4は、ステージ5上において組み立てられる。
【0047】
まず、複数の足場ユニット10が、折り畳まれた状態(
図4(a)参照)で火炉部3のステージ5上に搬入される。例えばボイラ炉1には、その炉壁にボイラマンホールと呼称される開口(図略)が形成されている。通常、ボイラ炉1の炉壁は、複数の壁管(図略)が直線状に延びた構成とされているが、開口の周囲ではこれらの壁管を湾曲させる必要がある。壁管が湾曲されると、蒸気の流れが妨げられるため、開口は、比較的小さい径(例えば直径600~800mm)で形成されている。
【0048】
本実施形態の足場ユニット10は、この開口を通じてボイラ炉1の内部に搬入される。この場合、足場ユニット10は、折り畳まれた状態で搬入され、この状態では略平板状にかつコンパクトに構成されているため、上記開口を通じてスムーズにボイラ炉1の内部に搬入することができる。また、足場ユニット10は、複数の部材が一体的に構成されているため、例えば従来の炉内足場のように(
図21~24参照)、ばらばらに構成される各仮設部材をそれぞれボイラ炉1の内部に搬入する場合に比べ、短時間でかつ効率的に搬入することができる。
【0049】
また、
図6に示したリフティング装置21及び
図7、
図8に示したポスト22を、複数の足場ユニット10と同様に、上記開口を通じてボイラ炉1の内部に搬入する。ボイラ炉1の内部に搬入された4つのリフティング装置21は、
図10(a)に示すように、火炉部3のステージ5上の隅部にそれぞれ配置される(同図は一側面より見た図であるため、2つのリフティング装置21のみを示す。なお、リフティング装置21は厳密には45度内側を向いた状態を示す図が正しいが、説明の便宜上、リフティング装置21を側面から見た図を記載する。)。
【0050】
より詳細には、ステージ5上の隅部には、4つのリフティング装置21が外側を向いて設置され、各リフティング装置21の外側近傍には、複数の第1ポスト22Aがそれぞれ配置される。そして、各リフティング装置21の支持機構24は、第1ポスト22Aをそれぞれ支持する。すなわち、支持機構24のフック部28上端の切欠き凹部27に、第1ポスト22Aの突起片31が下方から掛止される。
【0051】
ここで、リフティング装置21のフック部28がポスト22を支持する場合、具体的には以下に示す動作を行う。例えば、
図9(b)に示したように、フック部28がポスト22から離間されており、フック部28がポスト22を支持できない位置にある場合には、支持機構24を、フック部28がポスト22の突起片31を支持可能な位置に移動させる。
【0052】
すなわち、図略の配電盤からの信号によって図略のモータを回転駆動させ、リフティング装置21のスクリュージャッキ25を回転動作させ、支持機構24を上下動させる。その後、作業者は図略のハンドルを下方に変位させ、これにより、フック部28が回動軸29bを中心に回動し、ポスト22側に近接される。すなわち、フック部28がポスト22を支持可能な位置に移動させることができる。その後、支持機構24を上方に微動させ、フック部28上端の切欠き凹部27に、ポスト22の突起片31を下方から掛止させる。
【0053】
次いで、複数の第1ポスト22Aの上端には、
図10(b)に示すように、梁部材33がリフター34に支持されながら移動され配置される。梁部材33は、
図11に示すように、平面視で略枠状に形成されており、内側隅部に複数の配置用部材35がそれぞれ形成されている。梁部材33は、配置用部材35の部分が4つの第1ポスト22Aの上端に対してそれぞれ載置されることにより配される。
【0054】
梁部材33の下面側には、複数の吊り支柱36が所定の間隔を隔てて設けられている(
図10(b)参照)。これら吊り支柱36は、最上層に設けられる足場ユニット10の支柱13と接続するためのものである。なお、梁部材33は、実際には複数の部材からなり、第1ポスト22Aの上端に載置されながらそれらの部材が組み合わされて構築される。
【0055】
次に、
図12(a)に示すように、支持機構24が上方に移動され、第1ポスト22Aが所定高さH1まで持ち上げられる(同図矢印U参照)。ここで、所定高さH1は、第1ポスト22Aの下方に他の第1ポスト22Aが配置可能な高さとされる。その後、同図(b)に示すように、第1ポスト22Aの下方に他の第1ポスト22Aが配置される(同図矢印C参照)。
【0056】
次いで、作業者が図略のハンドルを用いてフック部28を第1ポスト22Aから離間させ、その状態で支持機構24をリフティング装置21に沿って下降させる。そして、同図(c)に示すように、フック部28によって他の第1ポスト22Aを支持させる。
【0057】
次に、同図(d)に示すように、スクリュージャッキ25の回転動作により支持機構24を上方に移動させ(同図の矢印U参照)、梁部材33及び連なった2つの第1ポスト22Aを支持機構24によって所定高さH2まで持ち上げる。ここで、所定高さH2は、積み重ねられた2つの第1ポスト22Aの下方に、ブラケット32を有する第2ポスト22Bが配置可能な高さとされる。
【0058】
その後、
図13(a)に示すように、積み重ねられた第1ポスト22Aの下方に第2ポスト22Bを配置する(同図矢印C参照)。そして、同図(b)に示すように、複数のリフター34を用いて、ボイラ炉1の内部に搬入された足場ユニット10を、折畳み状態のまま第2ポスト22Bのブラケット32の上面に載置させる。
【0059】
この場合、
図14に示すように、2つの足場ユニット10を直線状に並べて配置させ、一方の足場ユニット10の一端側を、第2ポスト22Bのブラケット32で支持させる。このとき、一方の足場ユニット10は片持ち状態となるので、他端側をリフター34によって支持させる。また、他方の足場ユニット10の一端側は、別の第2ポスト22Bのブラケット32で支持され、他端側は別のリフター34によって支持される。
【0060】
なお、一つの第2ポスト22Bには直交方向に広がるように一対のブラケット32が備えられているので、
図14に示したように、一つの第2ポスト22Bは、一方のブラケット32で一つの足場ユニット10を支持し、他方のブラケット32で当該足場ユニット10と直交方向に配置される別の足場ユニット10を支持することになる。
【0061】
ここで、直線状に配置された2つの足場ユニット10は、
図15に示すように、幅木12同士を略板状の連結部材37及びボルト38によって連結させる。
【0062】
次に、足場ユニット10を、
図16に示すように、折畳み状態から組立て状態に組上げる。すなわち、
図4(b)及び
図5に示したように、一対の支柱13を幅木12の外側面に沿ってそれぞれ回動させ、幅木12に沿う状態から幅木12の直交方向に延びる状態にそれぞれ変位させる。なお、支柱13は、立設状態ではその下端が空中に浮いた状態とされる。
【0063】
次いで、一対の手摺14をそれぞれ足場板11の上面から取り出し、支柱13に掛止させる。これにより、各手摺14は、支柱13にそれぞれ支持され、一つの足場ユニット10が組上げられる。この場合、
図17に示すように、手摺14同士を、蝶ネジ39によって固定される摺動部材40によって連結させる。なお、同図は、手摺14の2本の棒状部材16のうちの下側を示し、棒状部材16の上側は、蝶ネジ39が下側から取付けられる。
【0064】
そして、図示していないが、各コーナー部においても幅木12同士及び手摺14同士をそれぞれ専用の部材によって連結させる。このようにして、複数の足場ユニット10が左右方向に連結されることにより、一層目の炉内足場4が構築される。
【0065】
次に、支持機構24を若干下方に移動させ、第1ポスト22Aの下端と第2ポスト22Bの上端と(
図16のE部分参照)を当接させるとともに、梁部材33の吊り支柱36の下端と、立設された足場ユニット10の支柱13の上端と(同図のF部分参照)を接続する。
【0066】
その後、フック部28を一旦第1ポスト22Aから離間させ、
図18(a)に示すように、支持機構24を下方に移動させ、フック部28によって第2ポスト22Bを支持させる。そして、同図(b)に示すように、支持機構24を上方に移動させて、第2ポスト22Bとともに梁部材33及び複数の足場ユニット10を所定高さH1まで持ち上げる(同図矢印U参照)。その後、同図(c)に示すように、第2ポスト22Bの下方に第1ポスト22Aを配置する(同図の矢印C参照)。
【0067】
次に、フック部28を一旦第2ポスト22Bから離間させ、支持機構24を下方に移動させ、配置された第1ポスト22Aをフック部28によって支持させる。そして、
図19(a)に示すように、支持機構24を上方に移動させて、第2ポスト22Bとともに、梁部材33及び複数の足場ユニット10を、第1ポスト22Aの下方に別の第2ポスト22Bが配置可能な所定高さH2まで持ち上げる(同図矢印U参照)。
【0068】
次いで、同図(b)に示すように、積み重ねられたポスト22のうち、最下部の第1ポスト22Aの下方に第2ポスト22Bを配置する(同図の矢印C参照)。次いで、同図(c)に示すように、ボイラ炉1の内部に搬入された別の足場ユニット10を、配置された第2ポスト22Bのブラケット32の上面に、リフター34を用いて折畳み状態のまま配置させる。そして、配置された別の足場ユニット10を、
図20(a)に示すように、折畳み状態から組立て状態に組上げ、一対の手摺14をそれぞれ支柱13に掛止させる。
【0069】
次に、支持機構24を若干下方に移動させ、同図(b)に示すように、第1ポスト22Aの下端と第2ポスト22Bの上端とを当接させるとともに、上方の足場ユニット10の支柱13の下端と、立設された下方の足場ユニット10の支柱13の上端とを接続する。
【0070】
その後、図示していないが、各コーナー部においても幅木12同士及び手摺14同士をそれぞれ専用の部材によって連結させる。このようにして、複数の足場ユニット10が左右方向に連結されることにより、本層における炉内足場4が構築される。
【0071】
以後、第1ポスト22A及び第2ポスト22Bを交互に繰り返し積み重ねていき、第2ポスト22Bがブラケット32上に載置されたときには、足場ユニット10を配置し、それを折畳み状態から組上げ状態にし、上方の足場ユニット10と連結する。このようにして、
図1に示したような炉内足場4が上記したリフティング工法が用いられて構築される。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、複数の足場ユニット10が用いられてリフティング式工法によって炉内足場4が構築される。一つの足場ユニット10は、複数スパン(例えば3スパン)相当の長さを有しており、かつ部材が一体的に構成されているので、従来の大組大払し式工法のように例えば複数種類の仮設部材を1スパンごとに一つ一つ連結して炉内足場4を構築する必要がない。
【0073】
また、足場ユニット10は、支柱13を幅木12に沿って回動し固定するだけで一層分の炉内足場4を形成することができる。したがって、炉内足場4を構築する際の作業時間を大幅に短縮することができる。同様に、炉内足場4の解体時間も大幅に短縮することができる。
【0074】
また、足場ユニット10は、折畳み状態にすることができるので、ボイラ炉1内に搬入するときにスムーズに搬入することができる。さらに、足場ユニット10は、折畳み状態では略平板状とされるので、ボイラ炉1内のステージ5上といった限られた領域内に保管維持する際にも、そのまま上に重ねるだけでよいので、省スペースで保管維持することができる。また、足場ユニット10は、部材が一体的に構成されるので、炉内足場4を組立てる前に、従来のように仮設部材の種類及び数量を管理しておく必要はない。
【0075】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態では、炉内足場4は平面視で略ロの字状になるよう構成されたが、これに限定されるものではない。また、上記実施形態では、炉内足場4の一側面は2つの足場ユニット10が並べられて構成されたが、これに限定されるものではなく、1または3以上の足場ユニット10が並べられてもよい。また、上記足場ユニット10、足場板11、幅木12、支柱13及び手摺14等は、上記した実施形態の形状、大きさ、数量及び位置関係等に限るものではない。
【0076】
また、上記実施形態では、本足場ユニット10は、リフティング式工法に適用したが、これに代えて大組大払し式工法に適用されてもよい。あるいは、いわゆる吊下げ式工法に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 ボイラ炉
4 炉内足場
10 足場ユニット
11 足場板
12 幅木
13 支柱
14 手摺
21 リフティング装置
22 ポスト
22A 第1ポスト
22B 第2ポスト
24 支持機構
25 スクリュージャッキ
26 可動部
28 フック部
29 リンク部
31 突起片
32 ブラケット