(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138721
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】炉内足場の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 3/24 20060101AFI20241002BHJP
E04G 5/14 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E04G3/24 301D
E04G5/14 301G
E04G3/24 301Z
E04G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049360
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 颯太
(57)【要約】
【課題】炉内足場の組立作業及び解体作業を効率的に行い得ることのできる炉内足場の構築方法を提供する。
【解決手段】本発明の炉内足場の構築方法は、内部に空間を有する炉内において吊下げ式工法によって組み立てられる方法であって、折り畳まれた状態にある複数の足場ユニット10をボイラ炉1内の炉壁に形成された開口を通じてボイラ炉1内に搬送する搬送工程と、搬送された複数の足場ユニット10を折り畳まれた状態から組立て状態にする組上げ工程と、組上げ工程において組立て状態とされた足場ユニット10の一つを上方に吊上げる吊上工程と、吊上工程によって吊上げられた足場ユニット10の下方に、組上げ工程において組立て状態とされた、足場ユニット10とは異なる他の足場ユニット10を吊下げて連結する連結工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する炉内において吊下げ式工法によって組み立てられる炉内足場の構築方法であって、
少なくとも複数スパンの長さを有しかつ略平板状の足場板と、前記足場板の両端部に設けられ上下方向に延びた一対の幅木と、前記各幅木の外側面に回動自在にそれぞれ支持された複数の支柱と、を有し、それらが折り畳まれた状態にある複数の足場ユニットを前記炉内の炉壁に形成された開口を通じて前記炉内に搬送する搬送工程と、
搬送された前記複数の足場ユニットを折り畳まれた状態から組立て状態にする組上げ工程と、
前記組上げ工程において組立て状態とされた前記足場ユニットの一つを上方に吊上げる吊上工程と、
前記吊上工程によって吊上げられた前記足場ユニットの下方に、前記組上げ工程において組立て状態とされた、前記足場ユニットとは異なる他の足場ユニットを吊下げて連結する連結工程と、
を有することを特徴とする、炉内足場の構築方法。
【請求項2】
前記組上げ工程では、
前記足場ユニット及び前記他の足場ユニットの各支柱を前記幅木の外側面に沿って回動させてそれぞれ立設させ、
前記足場板の上面に載置された手摺を取り出し、それらを前記支柱に掛止する、請求項1に記載の炉内足場の構築方法。
【請求項3】
前記連結工程では、
前記足場ユニットの各支柱の下端と、前記他の足場ユニットの各支柱の上端とをそれぞれ接続することにより、前記足場ユニット及び前記他の足場ユニットを連結する、請求項1に記載の炉内足場の構築方法。
【請求項4】
前記組上げ工程では、
前記吊上工程において上方に吊上げられた前記足場ユニットの下方とは異なる場所で、前記他の足場ユニットが折り畳まれた状態から組立て状態とされ、
その後、組立て状態とされた前記他の足場ユニットを、上方に吊上げられた前記足場ユニットの下方に移動させる、請求項1に記載の炉内足場の構築方法。
【請求項5】
前記吊上工程では、
上方に吊上げられた前記足場ユニットの下端高さが、前記足場ユニットの下方に移動される前記他の足場ユニットの上端高さよりも高くなるようにされ、
前記連結工程では、
前記他の足場ユニットを、前記足場ユニットに向かって上昇させてそれと連結させる、請求項4に記載の炉内足場の構築方法。
【請求項6】
前記連結工程によって連結された前記他の足場ユニットの下方に、前記他の足場ユニットと異なる1または複数の別の足場ユニットを連続的に吊下げて連結し、
前記足場ユニット、前記他の足場ユニット及び前記1または複数の別の足場ユニットが連結されてなる足場ブロックを組み立てる足場ブロック組立工程と、
前記足場ブロック組立工程によって組み立てられた複数の前記足場ブロック同士を左右方向に連結する足場ブロック連結工程をさらに含む、請求項1に記載の炉内足場の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所のボイラ炉の内部に設けられる炉内足場の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば火力発電所のボイラ炉は、内部が中空状とされ、その炉底部が下方に向かうほど先細りとなったホッパー構造とされている。ボイラ炉の上部は高温、高圧の蒸気を発生させるための火炉部とされ、略四角柱状に形成されている(例えば特許文献1参照)。この炉底部及び火炉部では、例えばボイラ炉内部の点検や補修等のメンテナンス時において、内部に炉内足場が組み立てられる。
【0003】
炉内足場は、例えば吊下げ式工法(例えば特許文献2参照)が用いられて組み立てられる。
図12は、吊下げ式工法を用いて組み立てられた従来の炉内足場の概略構成を示す側面図である。炉内足場61は、火炉部62のステージ63上において平面視で略四角枠状に構成されて構築される。なお、同図に示す炉内足場61は、説明の便宜上、高さ方向に8層とされているが、実際は15~20層ほどの炉内足場となる。
【0004】
特許文献2に示すように、吊下げ式工法では、例えば地面に載置された吊枠部材を上方に吊上げて、吊枠部材に複数の高さ調整支柱をそれぞれ取り付ける。そして、それぞれの高さ調整支柱に支柱を取り付けた後、吊桁部材をさらに上方に吊上げて、それぞれの支柱の間に手摺材、足場板等を取り付ける。以降、同様にして吊枠部材を間欠的に上方に吊上げて、下方に所定数の支柱、手摺材、足場板等の仮設部材を連結する。
【0005】
これら連結された支柱、手摺材、足場板等からなる足場ブロックを1単位として、その側方に他の足場ブロックが連結されて、
図12に示すような炉内足場61が構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-52305号公報
【特許文献2】特開2017-206859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、例えば火力発電所のボイラ炉では、設備停止による機会損失をできる限り少なくするために、ボイラ炉内に構築される炉内足場61の組立作業や解体作業を短時間で実施することが要請されている。
【0008】
従来の吊下げ式工法を用いた炉内足場61の構築方法では、支柱、手摺材、足場板等の仮設部材を一つ一つ連結しながら組み立てる。そのため、部品点数が多いことから作業性が悪く、炉内足場61の組立作業に長時間を費やすといった問題点があった。また、炉内足場61を解体する解体作業においても、複数種類の仮設部材を一つ一つ取り外す必要があり、同様に長時間を費やすといった問題点があった。
【0009】
さらに、炉内足場61を組立てる前の複数種類の仮設部材は、炉内のステージ63上といった限られた領域内に運搬し保管維持する必要がある。そのため、それら仮設部材の種類及び数量を管理することが非常に手間でありかつ煩わしいといった問題点もあった。
【0010】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、炉内足場の組立作業及び解体作業を効率的に行い得ることのできる炉内足場の構築方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって提供される炉内足場の構築方法は、内部に空間を有する炉内において吊下げ式工法によって組み立てられる炉内足場の構築方法であって、少なくとも複数スパンの長さを有しかつ略平板状の足場板と、前記足場板の両端部に設けられ上下方向に延びた一対の幅木と、前記各幅木の外側面に回動自在にそれぞれ支持された複数の支柱と、を有し、それらが折り畳まれた状態にある複数の足場ユニットを前記炉内の炉壁に形成された開口を通じて前記炉内に搬送する搬送工程と、搬送された前記複数の足場ユニットを折り畳まれた状態から組立て状態にする組上げ工程と、前記組上げ工程において組立て状態とされた前記足場ユニットの一つを上方に吊上げる吊上工程と、前記吊上工程によって吊上げられた前記足場ユニットの下方に、前記組上げ工程において組立て状態とされた、前記足場ユニットとは異なる他の足場ユニットを吊下げて連結する連結工程と、を有することを特徴としている。
【0012】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記組上げ工程では、前記足場ユニット及び前記他の足場ユニットの各支柱を前記幅木の外側面に沿って回動させてそれぞれ立設させ、前記足場板の上面に載置された手摺を取り出し、それらを前記支柱に掛止するとよい。
【0013】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記連結工程では、前記足場ユニットの各支柱の下端と、前記他の足場ユニットの各支柱の上端とをそれぞれ接続することにより、前記足場ユニット及び前記他の足場ユニットを連結するとよい。
【0014】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記組上げ工程では、前記吊上工程において上方に吊上げられた前記足場ユニットの下方とは異なる場所で、前記他の足場ユニットが折り畳まれた状態から組立て状態とされ、その後、組立て状態とされた前記他の足場ユニットを、上方に吊上げられた前記足場ユニットの下方に移動させるとよい。
【0015】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記吊上工程では、上方に吊上げられた前記足場ユニットの下端高さが、前記足場ユニットの下方に移動される前記他の足場ユニットの上端高さよりも高くなるようにされ、前記連結工程では、前記他の足場ユニットを、前記足場ユニットに向かって上昇させてそれと連結させるとよい。
【0016】
本発明の炉内足場の構築方法において、前記連結工程によって連結された前記他の足場ユニットの下方に、前記他の足場ユニットと異なる1または複数の別の足場ユニットを連続的に吊下げて連結し、前記足場ユニット、前記他の足場ユニット及び前記1または複数の別の足場ユニットが連結されてなる足場ブロックを組み立てる足場ブロック組立工程と、前記足場ブロック組立工程によって組み立てられた複数の前記足場ブロック同士を左右方向に連結する足場ブロック連結工程をさらに含むとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、折り畳まれた状態にある複数の足場ユニットを炉内に搬送し、搬送された各足場ユニットを折り畳まれた状態から組立て状態にし、組立て状態とされた足場ユニットの一つを上方に吊上げ、吊上げられた足場ユニットの下方に、組立て状態とされた足場ユニットとは異なる他の足場ユニットを吊下げて連結し、炉内足場を構築する。足場ユニットは、従来の仮設足場の複数スパン相当の長さとされ、部材が一体的に構成されているので、従来のように複数種類の仮設部材を一つ一つ連結して炉内足場を組み立てる必要がなく、炉内足場を構築する際の組立及び解体の作業時間を大幅に短縮することができる。また、足場ユニットは折畳み式とされているため、例えば炉内に搬入する際にもスムーズに搬入でき、保管維持も容易に行うことができる。また、炉内のステージ上で組上げ作業を行うことが可能で、高所作業を行う必要がないため、より安全に炉内足場の構築作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る炉内足場の構築方法が適用されて構築される炉内足場の概略構成を示す側面図である。
【
図2】足場ユニットの組立て状態を示す斜視図である。
【
図3】足場ユニットの組立て手順を説明するための図である。
【
図4】足場ユニットの組立て手順を説明するための図である。
【
図5】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図7】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図8】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図9】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図10】炉内足場の組立て手順を説明するための図である。
【
図12】従来の炉内足場の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る炉内足場の構築方法が適用されて構築される炉内足場の概略構成を示す側面図である。本実施形態に係る炉内足場は、例えば火力発電所のボイラ炉の内部に設けられる。本炉内足場の構築方法は、後述するように、吊下げ式工法が用いられる。
【0021】
火力発電所のボイラ炉1は、
図1に示すように、下方に向かうほど先細りとなるホッパー構造とされた炉底部2と、その上方に形成された火炉部3とによって構成されている。火炉部3は、全体構造が中空の略四角柱状に形成されている。本実施形態に係る炉内足場4は、火炉部3の上部の吊元(図略)から吊下げられるものであり、火炉部3内部の点検や補修等のメンテナンス時において用いられる。なお、
図1に示す炉内足場4は、説明の便宜上、高さ方向に8層構造とされているが、これに限るものではない(実際は15~20層ほど設置される)。
【0022】
炉内足場4は、図示していないが、火炉部3の内側壁面に沿って平面視で略四角枠状になるよう構成されており、後述する足場ユニット10が複数組み合わされて構築される。炉内足場4は、その一側面方向から見た
図1に示すように、一層の一側面当たり例えば2つの足場ユニット10が連結されるとともに、それらが高さ方向にわたって連結されている。
【0023】
なお、
図1に示す炉内足場4の側面図において、左右両端にある2本の支柱6は左右方向側の側面側における足場の一部を示し、奥行き方向の側面における足場は省略されている。また、炉内足場4の構成は、
図1に示す構成に限るものではない。
【0024】
一つの足場ユニット10は、
図2に示すように、作業者が点検作業等を行うための足場板11と、足場板11の長手方向両端部から上下方向に延びた一対の幅木12と、幅木12に回動自在に支持された複数の支柱13と、支柱13に掛止される一対の手摺14とが一体的に連なって構成されている。
【0025】
足場板11は、その全長(一つの足場ユニット10の全長に相当)が、従来の仮設足場の複数スパン以上(例えば3スパン以上)とされている。なお、足場板11は、実際には複数枚の単体の板部材が並設されたものでもよい。
【0026】
一対の幅木12は、足場板11の下面側において正面視で左右方向に延びた複数本のつなぎ材(図略)によって連結されている。一対の幅木12の外側面には、それに沿って複数の支柱13が回動自在に支持されている。各支柱13は、足場ユニット10の組立て状態(
図2参照)においては、略鉛直方向に延びており、下端から離れた所定位置で幅木12にボルト止めされている。各支柱13は、その下端部にほぞ15が形成されており、その上端部には他の支柱13のほぞ15や、後述する吊り具30における連結部材32の下端部のほぞ33(
図6参照)が嵌合する凹部が形成されている。支柱13には、主に高さ方向の引張力が加わるため、支柱13を構成する部材として例えば平鋼を採用できる。これにより、例えば鋼管を採用するよりも支柱13の軽量化を図ることができる。
【0027】
手前側の一方の幅木12に沿って長手方向に並ぶ2本の支柱13には、一方の手摺14が掛止されている。また、対向する奥行き側の他方の幅木12に沿って並ぶ2本の支柱13にも、他方の手摺14が掛止されている。
【0028】
各手摺14は、長手方向にかつ上下に平行に延びる2本の棒状部材16と、各棒状部材16を上下に結ぶ複数の連接部材17とからなる。各手摺14は、支柱13に形成された図略のポケット部に図略の係止片を嵌装させることにより支柱13に掛止される。
【0029】
図2に示す足場ユニット10は、組立て状態を示すものであるが、本足場ユニット10は、折畳み式とされている。すなわち、足場ユニット10は、
図3(a)に示すように、折畳み状態では略平板状とされ、複数の支柱13は、一対の幅木12の各外側面に沿って配されている。また、手摺14は、折畳み状態では足場板11の上面に載置されている。足場板11は、この折畳み状態で搬送されたり、一時的な保管のために積層されたりする。
【0030】
足場ユニット10を
図3(a)に示す折畳み状態から
図2に示す組立て状態にするには、
図3(b)に示すように、一方の一対の支柱13同士を幅木12に沿って回動させて立設させる(同図の矢印A参照)。次いで、他方の一対の支柱13同士を幅木12に沿って回動させて立設させる(
図4の矢印B参照)。そして、足場板11の上面から手摺14を取り出し、
図2に示したように、幅木12に沿って並ぶ2本の支柱13同士にそれぞれ手摺14を掛止する。このように、本実施形態においては、足場ユニット10を用いて複数スパン以上の足場を容易に組み立てることができる。
【0031】
次に、本実施形態に係る炉内足場4の構築方法について説明する。
【0032】
本構築方法では、吊下げ式工法が採用されて複数の足場ユニット10による炉内足場4が構築される。ここで、前提として、ボイラ炉1の炉底部2においては他の足場が既に組み立てられ、それらの上方であって火炉部3の下部においてステージ5が設けられているものとする。本炉内足場4の足場ユニット10は、ステージ5上において組み立てられる。
【0033】
まず、複数の足場ユニット10は、折り畳まれた状態(
図3(a)参照)で火炉部3のステージ5上に搬入される。例えばボイラ炉1には、その炉壁にボイラマンホールと呼称される開口(図略)が形成されている。通常、ボイラ炉1の炉壁は、複数の壁管(図略)が直線状に伸びた構成とされているが、開口の周囲ではこれらの壁管を湾曲させる必要がある。壁管が湾曲されると、上記の流れが妨げられるため、開口は、比較的小さい径(例えば直径600~800mm)で形成されている。
【0034】
本実施形態の足場ユニット10は、この開口を通じてボイラ炉1の内部に搬入される。この場合、足場ユニット10は、折り畳まれた状態で搬入され、この状態では略平板状にかつコンパクトに構成されているため、上記開口を通じてスムーズにボイラ炉1の内部に搬入することができる。また、足場ユニット10は、複数の部材が一体的に構成されているため、例えば従来の炉内足場61のように(
図12参照)、各仮設部材がばらばらに構成され、それぞれの仮設部材をボイラ炉1の内部に搬入する場合に比べ、短時間でかつ効率的に搬入することができる。
【0035】
足場ユニット10がボイラ炉1の内部に搬入されると、足場ユニット10は、折畳み状態から組立て状態に組み上げられる。この場合、
図5(a)に示すように、ステージ5上であって炉内足場4の吊元(図略)の下方に架台20が並べられ、足場ユニット10は、架台20上に折畳み状態のままで配置される。
【0036】
次いで、各足場ユニット10は、一対の支柱13が幅木12の外側面に沿ってそれぞれ回動され(同図(b)の矢印A、B参照)、幅木12に沿う状態から幅木12の直交方向に延びる立設状態に変位される。なお、支柱13は、立設状態ではその下端が空中に浮いた状態とされる。次いで、一対の手摺14をそれぞれ足場板11の上面から取り出し、支柱13に掛止させる。これにより、各手摺14は、支柱13にそれぞれ支持され、一つの足場ユニット10が架台20上において組み上げられる。
【0037】
架台20上で組み上げられた足場ユニット10は、吊り具30に接続される(同図(c)参照)。
図6に示すように、吊り具30は、平面視格子状の枠状部材31と、枠状部材31から下方に延びる4つの連結部材32とからなる。連結部材32は、その下方に連結される足場ユニット10の支柱13に対応する位置に設けられている。吊り具30は、支柱13の上端部の凹部に連結部材32の下端部のほぞ33がそれぞれ嵌め込まれて固定される。枠状部材31は、その上部に4つのワイヤー連結部34が設けられ、例えばクレーン等でワイヤーWによって吊上げられる(
図5(c)参照)。この際、足場ユニット10は、後述する
図8に示すように、その支柱13の下端部の高さが、当該足場ユニット10とは異なる他の足場ユニット10における支柱13の上端部の高さよりも高くなるように吊り具30が吊上げられる。
【0038】
一方、
図7(a)に示すように、ステージ5上であって上方に吊上げられた足場ユニット10の下方とは異なる場所(炉内足場4の吊元の下方とは異なる場所)に、リフター40が配置され、他の足場ユニット10がリフター40上に折畳み状態のままで配置される。リフター40は、ステージ5上で足場ユニット10を搬送可能かつ昇降可能とする装置である。次いで、
図7(b)に示すように、他の足場ユニット10がリフター40上で折畳み状態から組立て状態に組み上げられる。
【0039】
その後、
図8に示すように、他の足場ユニット10は、上方に吊上げられた足場ユニット10の下方にリフター40を用いて移動される。上記のように、上方に吊上げられた足場ユニット10は、他の足場ユニット10と接触しない高さまで吊上げられているため、他の足場ユニット10をスムーズに移動できる。
【0040】
次いで、
図9(a)に示すように、他の足場ユニット10は、上方に吊上げられた足場ユニット10に向かってリフター40を用いて上昇され、他の足場ユニット10の支柱13の上端部の凸部に吊上げられた支柱13の下端部のほぞ15がそれぞれ嵌め込まれて固定される。このようにして、上方に吊上げられた足場ユニット10と、他の足場ユニット10とが連結される。
【0041】
そして、
図9(b)に示すように、連結された足場ユニット10と他の足場ユニット10とは、上方に吊上げられる。この場合、他の足場ユニット10の支柱13の下端部の高さは、その下方に移動される足場ユニット10の支柱13の上端部の高さよりも高くなるようにされる。以降、同様にして足場ユニット10を上方に吊上げて、下方に1または複数の足場ユニット10を連続的に吊下げて連結する。このようにして、複数の足場ユニット10が連結されてなる足場ブロック18が組み立てられる(
図10参照)。
【0042】
図10(a)に示すように、組み立てられた足場ブロック18に隣接して、当該足場ブロック18とは異なる他の足場ブロック18が組み立てられる。
図10(b)に示すように、他の足場ブロック18が組み立てられると、左右方向にある隣り合う足場板11同士及び幅木12同士が、スパン調整部材50によって連結されるとともに、左右方向にある隣り合う手摺14同士が、スパン調整手摺60によって連結されて、左右方向にある隣り合う足場ブロック18同士が連結される。
【0043】
図11に示すように、スパン調整部材50は、スパン調整足場板51とスパン調整フレーム54とからなる。ここで、
図11(a)は、スパン調整足場板51の平面図、同図(b)は、スパン調整足場板51の側面図、同図(c)は、スパン調整フレーム54の正面図、同図(d)は、スパン調整フレーム54の側面図である。
【0044】
スパン調整足場板51は、例えば長手方向の一側に設けられる2つの長穴52と、長穴52に対して長手方向の他側に設けられる複数のボルト穴53を有する。スパン調整足場板51は、ボルトを締めるボルト穴53を選択可能であるため、長穴52を用いて一方の足場板11をボルト止めし、いずれかのボルト穴53を用いて他方の足場板11をボルト止めすることにより、左右方向に隣り合う足場板11同士の間隔を調整できる。
【0045】
また、スパン調整フレーム54は、長手方向の一側に設けられる2つのボルト穴55と、ボルト穴55に対して長手方向の他側に設けられる複数のボルト穴56を有する。スパン調整フレーム54は、ボルトを締めるボルト穴56を選択可能であるため、ボルト穴55を用いて一方の幅木12をボルト止めし、いずれかのボルト穴56を用いて他方の幅木12をボルト止めすることにより、左右方向にある隣り合う幅木12同士の間隔を調整できる。
【0046】
そして、左右方向にある隣り合う手摺14同士がスパン調整手摺60によって連結される。このように、左右方向にある隣り合う足場ブロック18同士の間隔を調整することにより、図示していないが、各コーナー部において隣り合う足場板11同士及び幅木12同士の間の隙間が生じないようにすることができる。
【0047】
さらに、図示していないが、各コーナー部においても手摺14同士がそれぞれ専用の部材によって連結される。このようにして、複数の足場ユニット10が左右方向に連結されることにより、
図1に示したような炉内足場4が設けられる。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、複数の足場ユニット10が用いられて吊下げ式工法によって炉内足場4が構築される。一つの足場ユニット10は、複数スパン(例えば3スパン)相当の長さを有しており、かつ部材が一体的に構成されているので、従来の吊下げ式工法のように例えば複数種類の仮設部材を1スパンごとに一つ一つ連結して炉内足場4を構築する必要がない。また、足場ユニット10は、支柱13を幅木12に沿って回動し固定するだけで足場ブロック18の一層分を形成することができる。したがって、炉内足場4を構築する際の作業時間を大幅に短縮することができる。同様に、炉内足場4の解体時間も大幅に短縮することができる。また、ボイラ炉1内のステージ5上で組上げ作業を行うことが可能で、高所作業を行う必要がないため、より安全に炉内足場4の構築作業を行うことができる。
【0049】
また、足場ユニット10は、折畳み状態にすることができるので、ボイラ炉1内に搬入するときにスムーズに搬入することができる。さらに、足場ユニット10は、折畳み状態では略平板状とされるので、ボイラ炉1内のステージ5上といった限られた領域内に保管維持する際にも、そのまま上重ねるだけでよいので、省スペースで保管維持することができる。また、足場ユニット10は、部材が一体的に構成されるので、炉内足場を組立てる前に、従来のように仮設部材の種類及び数量を管理しておく必要はない。
【0050】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記足場ユニット10、足場板11、幅木12、支柱13及び手摺14等は、上記した実施形態の形状、大きさ、数量及び位置関係等に限るものではない。
【0051】
また、上記実施形態では、本足場ユニット10は、吊下げ式工法に適用したが、これに代えていわゆるリフティング式工法に適用されてもよい。あるいは、いわゆる大組大払し式工法に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ボイラ炉
4 炉内足場
5 ステージ
10 足場ユニット
11 足場板
12 幅木
13 支柱
18 足場ブロック