(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138732
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】吊り金具、および、室内機ユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0047 20190101AFI20241002BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F24F1/0047
F24F13/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049376
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 太志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】茂木 康弘
(57)【要約】
【課題】従来よりも寸法が大きい室内機に対する置き換えを容易にできる吊り金具、および、室内機ユニットを提供する。
【解決手段】本開示における吊り金具は、吊りボルトが挿通され、室内機を固定する吊り金具において、吊りボルトが挿通される挿通孔と、室内機の側面に取り付けられる支持用鉛直面と、を備え、支持用鉛直面は、挿通孔よりも室内機の外側に位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りボルトが挿通され、室内機を固定する吊り金具において、
前記吊りボルトが挿通される挿通孔と、
前記室内機の側面に取り付けられる支持用鉛直面と、を備え、
前記支持用鉛直面は、前記挿通孔よりも前記室内機の外側に位置する、
吊り金具。
【請求項2】
前記挿通孔を有する第1の水平面と、
前記第1の水平面における前記挿通孔よりも前記室内機の外側で下方に折り曲げられる第1の鉛直面と、
前記第1の鉛直面から前記室内機の外側に向けて水平方向に折り曲げられる第2の水平面と、を備え、
前記支持用鉛直面は、前記第2の水平面から下方に折り曲げられて形成され、
前記第2の水平面は天井面に接触する、
ことを特徴とする請求項1に記載の吊り金具。
【請求項3】
前記第2の水平面には、前記支持用鉛直面よりも前記室内機の外側に延び、前記天井面に接触する延伸部が形成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の吊り金具。
【請求項4】
前記第2の水平面は、前記第1の水平面よりも、前記支持用鉛直面と直交する方向における寸法が短い、
ことを特徴とする請求項2に記載の吊り金具。
【請求項5】
前記挿通孔には、前記吊りボルトを位置決めする複数の位置決め部が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の吊り金具。
【請求項6】
室内機と、
第1の吊りボルトが挿通され前記室内機の一方の側面を固定する第1の吊り金具と、
第2の吊りボルトが挿通され前記室内機の他方の側面を固定する第2の吊り金具と、を備える室内機ユニットであって、
前記第1の吊り金具は、前記第1の吊りボルトが挿通される第1の挿通孔よりも前記室内機の外側に、前記一方の側面に固定される第1の支持用鉛直面が形成され、
前記第2の吊り金具は、前記第2の吊りボルトが挿通される第2の挿通孔よりも前記室内機の内側に、前記他方の側面に固定される第2の支持用鉛直面が形成される、
ことを特徴とする室内機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吊り金具、および、室内機ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、吊りボルトを介して取り付けられる天吊型空気調和装置を開示する。この天吊型空気調和装置は、吊りボルトが挿通される孔よりも天吊型空気調和装置の中心側において天吊型空気調和装置を支持する吊り金具を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、従来よりも寸法が大きい室内機に対する置き換えを容易にできる吊り金具、および、室内機ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における吊り金具は、吊りボルトが挿通され、室内機を固定する吊り金具において、前記吊りボルトが挿通される挿通孔と、前記室内機の側面に取り付けられる支持用鉛直面と、を備え、前記支持用鉛直面は、前記挿通孔よりも前記室内機の外側に位置する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の吊り金具、および、室内機ユニットによれば、吊りボルトの位置を変更せずに、従来よりも寸法の大きい室内機を取り付けることができる。このため、従来よりも寸法が大きい室内機に対する置き換えを容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】実施の形態1に係る第1の吊り金具の断面を示す模式図
【
図6】(A)各吊りボルトと、旧型室内機にあわせて配置した旧型吊り金具と、の位置関係を示す斜視図、(B)各吊りボルトと、室内機にあわせて配置した第2の吊り金具と、の位置関係を示す斜視図、(C)各吊りボルトと、室内機にあわせて配置した第1の吊り金具および第2の吊り金具と、の位置関係を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に至った当時、室内機の設置のために用いられる吊り金具は、吊りボルトが挿通される挿通孔よりも室内機の中心側において室内機を保持していた。このような従来の吊り金具を使用する場合、寸法が大きい室内機に入れ替える際は、吊りボルトから吊り金具を外し、吊りボルトの位置を変更させた後、再度吊りボルトに吊り金具を取り付ける必要があり、現場作業者の負担が大きいという課題があった。これに対し、発明者らは、この課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
そこで、本開示は、従来よりも寸法が大きい室内機に対する置き換えを容易にできる吊り金具、および、室内機ユニットを提供する。
【0009】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0010】
(実施の形態1)
以下、図面を用いて、実施の形態1を説明する。なお、図中の符号Xは室内機10の右方向を、符号Yは室内機10の前方を、符号Zは室内機10の上方をそれぞれ示す。
【0011】
[1-1.構成]
図1は、室内機ユニット1の斜視図である。室内機ユニット1は、室内の空気調和のために冷風または温風を前方に向けて吹き出す室内機10と、室内機10の右端を支持する第1の吊り金具(吊り金具)30と、室内機10の左端を支持する第2の吊り金具50と、を有している。
【0012】
室内機10は、いわゆる空気調和装置の天井吊り下げ型室内機であり、冷媒配管によって室外機と接続されている。室内機10は、左右方向に長い箱型の筐体11を有している。筐体11内の熱交換器に室外機から送られる冷媒と、筐体11内の送風機によって筐体11内に取り込まれる室内の空気と、を熱交換させる。室内機10は、冷媒と熱交換した空気を筐体11の前部に位置する吹出口13から前方に吹き出させることにより、室内を空気調和する。
【0013】
図2は、第1の吊り金具30の斜視図である。
図3は、第1の吊り金具30の断面を示す模式図であり、前後方向に垂直な断面を示す。第1の吊り金具30は、板金を折り曲げて形成された金具であり、筐体11の右側面(側面、一方の側面)11aを固定する。第1の吊り金具30は、第1の吊りボルト(吊りボルト)B1が挿通される第1の挿通孔(挿通孔)32を有する第1の水平面31と、第1の挿通孔32よりも右側に位置して筐体11の右側面11aを固定する第1の支持用鉛直面(支持用鉛直面)37と、を有している。
【0014】
図2に示すように、第1の水平面31は、水平方向に平行な板状部分であり、2つの第1の挿通孔32が形成されている。第1の挿通孔32は、第1の水平面31を上下に貫通し、左方向に向けて開放した切り欠きであり、前後方向に沿って延びる位置決め部32aが形成されている。位置決め部32aの左右方向の幅は、後述する第1の吊りボルトB1の太さと略一致する。なお、位置決め部32aは、第1の水平面31の右端から、左右方向に距離D1だけ離間して形成されている。
【0015】
第1の支持用鉛直面37は、左右方向に直交する板状部分であり、2つの第1の固定孔38が形成されている。第1の固定孔38は、第1の支持用鉛直面37を左右に貫通する切り欠きであり、前方に向けて開放し、開放した部分において上下の幅が狭く、後方に向けて上下の幅が広く形成されている。
【0016】
第1の水平面31と第1の支持用鉛直面37とは、第1の鉛直面33および第2の水平面35を介してつながっている。第1の鉛直面33は、第1の水平面31の右端から下方に向けて垂直に折り曲げられた板状部分であり、左右方向に直交する。すなわち、第1の鉛直面33は、第1の水平面31における第1の挿通孔32よりも室内機10の外側において下方に折れ曲がって形成される。第2の水平面35は、第1の鉛直面33の下端から右方向、すなわち、室内機10の外側に向けて垂直に折り曲げて形成されており、水平方向に平行である。第1の支持用鉛直面37は、第2の水平面35の右端が下方に向けて垂直に折り曲げられることで形成されている。すなわち、第1の支持用鉛直面37は、第1の挿通孔32よりも室内機10の外側に位置している。
【0017】
第2の水平面35は、第1の支持用鉛直面37よりも右側まで延びる平板状の延伸部36を有している。延伸部36は、第1の吊り金具30を形成する板金の曲げ加工の以前に、板金に対して第2の水平面35に相当する部分から第1の支持用鉛直面37に相当する部分にかけてU字状の切り込みを入れておくことで、曲げ加工時に形成される。また、第2の水平面35の左右方向(支持用鉛直面37に直交する方向)における幅寸法W2は、第1の水平面31の左右方向における幅寸法W1よりも小さい。また、第2の水平面35の左右方向における幅寸法W2は、第1の水平面31の右端から位置決め部32aまでの左右方向の距離D1よりも小さい。
【0018】
図3に示すように、第1の水平面31は、室内の天井Aに形成された開口A2から天井Aの上方に挿入される。また、第1の水平面31に形成された2つの第1の挿通孔32の位置決め部32aには、上下に延びる2つの第1の吊りボルトB1が上下に挿通される。2つの第1の吊りボルトB1は、建造物において天井Aよりも上方に位置する梁C等に固定されており、前後に並べて設けられる。第1の水平面31は、第1の吊りボルトB1に締結された1つのナットNと2つのナットNによるダブルナットとに挟み込まれることにより、第1の吊りボルトB1に対して固定される。このとき、第1の吊りボルトB1は前後に延びる位置決め部32aに挿入されるため、第1の吊り金具30は第1の吊りボルトB1に対して左右方向において位置決めされる。
【0019】
第1の鉛直面33は、天井Aの上方から天井Aの下面(天井面)A1の高さまで下方まで延びる。第2の水平面35は、水平方向において天井Aの下面A1と同じ高さであり、下面A1に対して下方から接触する。第2の水平面35に形成された延伸部36は、同様に下面A1に対して下方から接触しており、第1の吊り金具30と天井Aの下面A1との接触面積を大きくしている。
【0020】
第1の支持用鉛直面37は、筐体11の右側面11aに対して右側から接触している。第1の支持用鉛直面37は、右側面11aに対して締結される締結部材Tが第1の支持用鉛直面37に形成された第1の固定孔38に挿通されることにより、右側面11aと固定される。締結部材Tは、例えば、ねじ、ビス、またはボルト等である。これにより、第1の吊り金具30には、第1の支持用鉛直面37において、室内機10の重量による下向きの荷重が作用する。
【0021】
第1の吊り金具30において、第1の支持用鉛直面37に対して下向きの荷重が作用した場合、第1の鉛直面33と第2の水平面35との間の折り目の部分である角部34において、特に応力が集中し易い。本実施の形態では、第2の水平面35の左右方向における幅寸法W2を第1の水平面31の左右方向における幅寸法W1よりも小さくすることにより、角部34に作用するモーメントを小さくしている。また、幅寸法W2は第1の水平面31の右端から位置決め部32aまでの左右方向の距離D1よりも小さいため、角部34に作用するモーメントをさらに小さくしている。このため、第1の吊り金具30は変形しにくくなり、第1の吊り金具30による支持性が向上する。
【0022】
図4は、第2の吊り金具50の斜視図である。第2の吊り金具50は、筐体11の左側面(他方の側面)11bを固定する金具であり、従来から室内機の固定に用いられている金具と同様の構成を有する。第1の吊り金具50は、水平面51と、第2の支持用鉛直面53と、を有している。
【0023】
水平面51は、天井Aの下面A1に下方から接触する平板状部分であり、上下に貫通する切り欠きである2つの第2の挿通孔52が形成されている。第2の挿通孔52は左方向に向けて径方しており、前後方向に延びる位置決め部52aを有している。2つの第2の挿通孔52の位置決め部52aには、前後に並んだ2つの第2の吊りボルトB2(
図1参照)が挿通される。第2の吊りボルトB2は、第1の吊りボルトB1と同様、建造物の梁C等に固定されたボルトであり、第1の吊りボルトB1の左側において上下に延びている。水平面51は、天井Aの下面A1と、2つの位置決め部52aに挿通された2つの第2の吊りボルトB2にそれぞれ締結されるナットNと、によって上下に挟まれることで、第2の吊りボルトB2に対して固定される。
【0024】
第2の支持用鉛直面53は、水平面51の右端が下方に垂直に折り曲げされて形成された板状部分である。すなわち、第2の支持用鉛直面53は、第2の挿通孔52よりも室内機10の内側に位置している。第2の支持用鉛直面53は、前後に並んだ2つの第2の固定孔54を有している。第2の固定孔54は、第2の支持用鉛直面53を左右に貫通する切り欠きであり、前方に向けて開放し、開放した部分において上下の幅が狭く、後方に向けて上下の幅が広く形成されている。第2の支持用鉛直面53は、筐体11の左側面11bに対して左側から接触し、左側面11bに締結される締結部材Tが第2の固定孔54に挿通されることにより、左側面11bに対して固定される。
【0025】
[1-2.動作]
以下、旧型室内機90を室内機10に置き換える際の動作を説明する。
図5は、旧型室内機90の斜視図である。旧型室内機90は、室内機10と同様に、箱型の筐体91を有し、筐体91の前部に位置する吹出口93から前方に向けて空気を吹き出す。旧型室内機90の左右方向の幅寸法L2、すなわち、筐体91の右側面91aと左側面91bとの間の左右方向の距離は、室内機10の幅寸法L1(
図1参照)、すなわち、筐体11の右側面11aと左側面11bとの間の左右方向の距離よりも小さい。
【0026】
動作の開始時点においては、
図5に示すように、旧型室内機90が2つの旧型吊り金具70を介して各吊りボルトB1、B2に取り付けられている状態である。旧型吊り金具70は、第2の吊り金具50と同様に、水平面71および支持用鉛直面73を有する。水平面71は、天井Aの下面A1に下方から接触する平板状部分であり、上下に貫通する切り欠きである2つの挿通孔72が形成されている。水平面71のうち、旧型室内機90の左右方向内側の端部が下方に垂直に折り曲げされて形成された板状部分である。すなわち、2つの支持用鉛直面73は、2つの挿通孔72よりも旧型室内機90の内側に位置している。2つの支持用鉛直面73は、旧型室内機90の2つの側面91a、91bに対して左右方向外側からそれぞれ固定される。
【0027】
はじめに、作業者は、旧型室内機90を2つの旧型吊り金具70から取り外す。旧型室内機90は、室内機10と同様に、筐体91の各側面91a、91bに締結された締結部材Tにより、2つの支持用鉛直面73に対して固定されている。このため、作業者は、それぞれの締結部材Tの締結を緩めることにより、旧型室内機90を2つの旧型吊り金具70から取り外す。
【0028】
図6は、各吊りボルトB1、B2と、室内機10および旧型室内機90にあわせて配置した各吊り金具30、50、70との位置関係をそれぞれ示す斜視図である。なお、
図6(A)は、旧型室内機90が取り外された後の2つの旧型吊り金具70および吊りボルトB1、B2と同様の状態である。また、本実施の形態において、左右方向における各吊りボルトB1、B2間の間隔Dは、室内機10の幅寸法L1よりも小さく、旧型室内機90の幅寸法L2よりも大きい。
【0029】
図6(A)に示すように、各吊りボルトB1、B2に2つの旧型吊り金具70が取り付けられている場合、2つの旧型吊り金具70に取付け可能な室内機の左右方向の幅寸法は、左右方向における2つの支持用鉛直面73の左右方向の間隔と同じ幅寸法L2である。上述のように、旧型室内機90の幅寸法L2は、室内機10の幅寸法L1よりも小さいため、室内機10を2つの旧型吊り金具70に取り付けることができない。このため、作業者は、2つの旧型吊り金具70を各吊りボルトB1、B2から取り外す必要がある。
【0030】
2つの旧型吊り金具70を各吊りボルトB1、B2から取り外す際に、作業者は、2つの旧型吊り金具70の水平面71を天井Aの下面A1との間に上下に挟んでいるナットNを緩める。これにより、2つの旧型吊り金具70は、各吊りボルトB1、B2から取り外される。
【0031】
次に、作業者は、室内機10を固定するために、各吊りボルトB1、B2に対してそれぞれ各吊り金具30、50を取り付ける。
【0032】
ここで、仮に、左右一対の第2の吊り金具50を用いて室内機10を固定しようとした場合、
図6(B)に示すように、2つの第2の支持用鉛直面53同士の左右方向における距離と、室内機10の幅寸法L1(
図1参照)と、が等しい必要がある。しかし、各吊りボルトB1、B2間の間隔Dは、室内機10の幅寸法L1よりも小さく、且つ、第2の支持用鉛直面53は、左右方向において第2の挿通孔52よりも左右方向の内側に位置する。このため、仮に、2つの第2の吊り金具50を用いて室内機10を固定しようとする場合、2つの第2の支持用鉛直面53間の間隔を広げるために、各吊りボルトB1、B2間の間隔Dを広げる必要がある。このためには、天井Aよりも上方における各吊りボルトB1、B2の配置換え作業が必要になる。この作業には、梁C等に新たな締結用の孔等を形成する必要があるため、作業者の手間が大きい。
【0033】
一方、本実施の形態では、
図6(C)に示すように、室内機10を固定するために、第1の吊り金具30および第2の吊り金具50をそれぞれ1つずつ用いる。上述のように、第1の吊り金具30は、左右方向において第1の挿通孔32よりも室内機10の外側に位置する第1の支持用鉛直面37を有している。このため、各吊りボルトB1、B2間の間隔Dを広げずに、間隔Dよりも広い幅寸法L1を有する室内機10を取り付けることが可能となる。
【0034】
作業者は、第1の吊り金具30の取り付けのため、始めに、作業者は第1の水平面31が挿入される開口A2を天井Aに形成する(
図3参照)。次に、作業者は、2つの第1の吊りボルトB1を、第1の水平面31に形成された2つの第1の挿通孔32にそれぞれ挿通させる。このとき、作業者は、2つの第1の吊りボルトB1を、2つの第1の挿通孔32の位置決め部32aに位置させる(
図2参照)。これにより、第1の吊り金具30は、第1の吊りボルトB1に対して、左右方向に位置決めされる。
【0035】
次に、作業者は、第1の吊り金具30を上方に押し上げ、第2の水平面35を天井Aの下面A1に対して接触させる。これにより、第1の吊り金具30は、天井Aの下面A1に対して、上下方向に位置決めされる。また、第2の水平面35は天井Aの下面A1に対して面的に接触するため、第1の吊り金具30と下面A1との角度のずれ等が抑制される。また、本実施の形態では、第2の水平面35には、第1の支持用鉛直面37よりも右側まで延伸する延伸部36が形成されているため、第2の水平面35と下面A1との接触面積が大きくなる。このため、第1の吊り金具30の位置決めが容易になり、角度のずれもさらに抑制されやすい。
【0036】
次に、作業者は、第1の水平面31を2つのナットNによって挟んで固定する。これにより、第1の吊り金具30は、2つの第1の吊りボルトB1に対して固定される。
【0037】
第1の吊り金具30が第1の吊りボルトB1に取り付けられた後、作業者は、第2の吊り金具50を、2つの第2の吊りボルトB2に対して取り付ける。これにより、
図6(C)に示す状態となり、第1の吊り金具30および第2の吊り金具50に対して、室内機10を取り付け可能となる。
【0038】
その後、作業者は、第1の吊り金具30および第2の吊り金具50に対して、室内機10を取り付ける。室内機10の取り付けの際、作業者は、筐体11の各側面11a、11bに2つずつ締結された締結部材Tをあらかじめ緩めておく。作業者は、緩めた締結部材Tを、それぞれ第1の固定孔38および第2の固定孔54に対して、前方から引掛けるようにして挿通させる。その後、作業者は、緩めた締結部材Tをそれぞれ再び締める。これにより、室内機10は、第1の吊り金具30および第2の吊り金具50に対して固定され、置き換え作業が完了する。
【0039】
なお、実際には、上記の置き換え作業の際に、旧型室内機90から外部の冷媒配管やドレン配管を取り外す作業や、室内機10に対して外部の冷媒配管やドレン配管を取り付ける作業が行われる。本実施の形態では、旧型室内機90および室内機10は、ともに筐体11、91の左端部において外部の冷媒配管やドレン配管との接続が行われる。上述したように、筐体11の左側面11bに固定される左側の第2の吊り金具50および旧型室内機90の左側面91bに固定される旧型吊り金具70は、それぞれ挿通孔52、72よりも左右方向の内側に位置する支持用鉛直面53、73を有する。このため、建造物に対する旧型室内機90における外部の各配管との接続位置と、建造物に対する室内機10における外部の各配管との接続位置と、を一致させることができ、室内機10に対する外部の各配管の接続作業が容易になる。
【0040】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、第1の吊り金具30は、第1の吊りボルトB1が挿通される第1の挿通孔32と、室内機10の右側面11aに取り付けられる第1の支持用鉛直面37と、を備え、第1の支持用鉛直面37は、第1の挿通孔32よりも室内機10の外側に位置する。
これにより、第1の吊り金具30を用いることで、第1の吊りボルトB1の位置を変更せずに、従来よりも大きい幅寸法L1を有する室内機10を取り付けることができる。従って、従来よりも大きい幅寸法L1を有する室内機10の置き換えを容易に行うことができる。
【0041】
また、本実施の形態のように、第1の吊り金具30は、第1の挿通孔32を有する第1の水平面31と、第1の水平面31における第1の挿通孔32よりも室内機10の外側で下方に折り曲げられる第1の鉛直面33と、第1の鉛直面33から室内機10の外側に向けて水平方向に折り曲げられる第2の水平面35と、を備え、第1の支持用鉛直面37は、第2の水平面35から下方に折り曲げられて形成され、第2の水平面35は天井Aの下面A1に接触する、構成としてもよい。
これにより、第2の水平面35を天井Aの下面A1に接触させることで、第1の吊り金具30の上下方向の位置決め、および、天井Aに対する第1の吊り金具30の角度のずれの抑制が可能になる。このため、第1の吊り金具30を容易に取り付けることができる。
【0042】
また、本実施の形態のように、第2の水平面35には、第1の支持用鉛直面37よりも室内機10の外側に延び、天井Aの下面A1に接触する延伸部36が形成される、構成としてもよい。
これにより、第2の水平面35および延伸部36を天井Aの下面A1に接触させることで、第1の吊り金具30の上下方向の位置決め、および、天井Aに対する第1の吊り金具30の角度のずれの抑制が可能になる。このため、第1の吊り金具30を容易に取り付けることができる。
【0043】
また、本実施の形態のように、第2の水平面35は、第1の水平面31よりも、第1の支持用鉛直面37と直交する左右方向における寸法が短い。
これにより、第2の水平面35と第1の鉛直面33との間の曲げ部分である角部34に対してかかるモーメントを小さくすることができ、第1の吊り金具30の変形を抑制できる。このため、第1の吊り金具30の支持性が向上する。特に、本実施の形態では、第2の水平面35の幅寸法W2は、第1の水平面31の右端から第1の挿通孔32の位置決め部32aまでの距離D1よりも小さい。このため、第1の吊り金具30の変形をさらに抑制でき、第1の吊り金具30の支持性がさらに向上する。
【0044】
また、本実施の形態のように、室内機ユニット1は、室内機10と、第1の吊りボルトB1が挿通され室内機10の右側面11aを固定する第1の吊り金具30と、第2の吊りボルトB2が挿通され室内機10の左側面11bを固定する第2の吊り金具50と、を備える室内機ユニット1であって、第1の吊り金具30は、第1の吊りボルトB1が挿通される第1の挿通孔32よりも室内機10の外側に、右側面11aに固定される第1の支持用鉛直面37が形成され、第2の吊り金具50は、第2の吊りボルトB2が挿通される第2の挿通孔52よりも室内機10の内側に、左側面11bに固定される第2の支持用鉛直面53が形成される、構成としてもよい。
これにより、各吊りボルトB1、B2の位置を変更せずに、従来よりも大きい幅寸法L1を有する室内機10を取り付けることができる。従って、従来よりも大きい幅寸法L1を有する室内機10の置き換えを容易に行うことができる。特に、本実施の形態では、置き換え前の旧型室内機90および置き換え後の室内機10は、それぞれ左端部に外部の各配管との接続部分を有している。このため、左側面11bの固定に旧型吊り金具70と同様の構成を有する第2の吊り金具50を用いることで、外部の各配管との接続作業を容易にすることができる。
【0045】
(実施の形態2)
以下、
図7を用いて、実施の形態2を説明する。なお、以下では、実施の形態1と同一の事項についての説明を省略する。
【0046】
図7は、実施の形態2に係る第1の吊り金具130の斜視図である。
図7に示すように、第1の吊り金具130の2つの第1の挿通孔(挿通孔)132は、それぞれ2つの位置決め部132a、132bを有する。2つの位置決め部132a、132bは、第1の水平面31を上下に貫通する第1の挿通孔132において、それぞれ前後方向に延びる形状に形成された部分である。2つの位置決め部132a、132bは、互いに左右方向にずれた位置に形成されている。
【0047】
2つの位置決め部132a、132bには、それぞれ第1の吊りボルトB1が挿通可能である。左側の位置決め部132aに第1の吊りボルトB1が挿通された場合、右側の位置決め部132bに第1の吊りボルトB1が挿通された場合よりも、第1の支持用鉛直面37と第2の支持用鉛直面53との間の距離は大きくなる。すなわち、第1の吊り金具130は、第1の吊りボルトB1が第1の挿通孔132を通る位置を、位置決め部132a、132bの間で切り替えることで、異なる左右方向の幅寸法を有する複数の室内機10を固定することができる。
【0048】
本実施の形態のように、第1の挿通孔132には、第1の吊りボルトB1を位置決めする複数の位置決め部132a、132bが形成される、構成としてもよい。
これにより、第1の吊り金具130によって、異なる幅寸法を有する複数の室内機10を固定することが可能となる。
【0049】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1および2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1および2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0050】
実施の形態1および2では、室内機10の筐体11の右側面11aに固定される第1の吊り金具30、130を説明したが、これは一例である。例えば、第1の吊り金具30、130は、左側面11bに対して固定される構成としてもよい。また、2つの左右対称の第1の吊り金具30、130により、筐体11の側面11a、11bを固定する構成としてもよい。
【0051】
実施の形態1および2では、各側面11a、11bに対して、それぞれ1つずつの第1の吊り金具30、130および、第2の吊り金具50が固定される構成を説明したが、これは一例である。例えば、各側面11a、11bに対して、それぞれ2つ以上の第1の吊り金具30、130および、第2の吊り金具50が固定される構成であってもよい。また、1つの第1の吊り金具30、130および、第2の吊り金具50に固定される各吊りボルトB1、B2の本数は2本ずつに限らず、1本または3本以上であってもよい。
【0052】
実施の形態2では、第1の挿通孔132は、左右方向に並んだ2つの位置決め部132a、132bを有すると説明したが、これは一例である。たとえば、第1の挿通孔132には、3つ以上の位置決め部が形成されていてもよい。
【0053】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0054】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0055】
(付記)
(技術1)吊りボルトが挿通され、室内機を固定する吊り金具において、前記吊りボルトが挿通される挿通孔と、前記室内機の側面に取り付けられる支持用鉛直面と、を備え、前記支持用鉛直面は、前記挿通孔よりも前記室内機の外側に位置する、吊り金具。
これにより、吊りボルトの位置を変更せずに、従来よりも寸法の大きい室内機を取り付けることができる。このため、従来よりも寸法が大きい室内機に対する置き換えを容易にできる。
【0056】
(技術2)前記挿通孔を有する第1の水平面と、前記第1の水平面における前記挿通孔よりも前記室内機の外側で下方に折り曲げられる第1の鉛直面と、前記第1の鉛直面から前記室内機の外側に向けて水平方向に折り曲げられる第2の水平面と、を備え、前記支持用鉛直面は、前記第2の水平面から下方に折り曲げられて形成され、前記第2の水平面は天井面に接触する、ことを特徴とする技術1に記載の吊り金具。
これにより、第2の水平面を天井面に接触させることで、吊り金具の上下方向の位置決め、および、天井面に対する吊り金具の角度のずれの抑制が可能になる。このため、吊り金具を容易に取り付けることができる。
【0057】
(技術3)前記第2の水平面には、前記支持用鉛直面よりも前記室内機の外側に延び、前記天井面に接触する延伸部が形成される、ことを特徴とする技術2に記載の吊り金具。
これにより、第2の水平面および延伸部を天井面に接触させることで、吊り金具の上下方向の位置決め、および、天井面に対する吊り金具の角度のずれの抑制が可能になる。このため、吊り金具を容易に取り付けることができる。
【0058】
(技術4)前記第2の水平面は、前記第1の水平面よりも、前記支持用鉛直面と直交する方向における寸法が短い、ことを特徴とする技術2または3に記載の吊り金具。
これにより、第2の水平面と第1の鉛直面との間の曲げ部分に対してかかるモーメントを小さくすることができ、吊り金具の変形を抑制できる。このため、吊り金具の支持性が向上する。
【0059】
(技術5)前記挿通孔には、前記吊りボルトを位置決めする複数の位置決め部が形成される、ことを特徴とする技術1から4のいずれかに記載の吊り金具。
これにより、吊り金具によって、異なる寸法を有する複数の室内機を固定することが可能となる。
【0060】
(技術6)室内機と、第1の吊りボルトが挿通され前記室内機の一方の側面を固定する第1の吊り金具と、第2の吊りボルトが挿通され前記室内機の他方の側面を固定する第2の吊り金具と、を備える室内機ユニットであって、前記第1の吊り金具は、前記第1の吊りボルトが挿通される第1の挿通孔よりも前記室内機の外側に、前記一方の側面に固定される第1の支持用鉛直面が形成され、前記第2の吊り金具は、前記第2の吊りボルトが挿通される第2の挿通孔よりも前記室内機の内側に、前記他方の側面に固定される第2の支持用鉛直面が形成される、ことを特徴とする室内機ユニット。
これにより、第1の吊りボルトおよび第2の吊りボルトの位置を変更せずに、従来よりも大きい寸法を有する室内機を取り付けることができる。従って、従来よりも大きい寸法を有する室内機の置き換えを容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、空気調和装置の室内機に適用可能である。具体的には、天井吊り下げ型の室内機等に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 室内機ユニット
10 室内機
11 筐体
11a 右側面(側面、一方の側面)
11b 左側面(他方の側面)
13 吹出口
30 第1の吊り金具(吊り金具)
31 第1の水平面
32 第1の挿通孔(挿通孔)
32a 位置決め部
33 第1の鉛直面
34 角部
35 第2の水平面
36 延伸部
37 第1の支持用鉛直面(支持用鉛直面)
38 第1の固定孔
50 第2の吊り金具
51 水平面
52 第2の挿通孔
52a 位置決め部
53 第2の支持用鉛直面
54 第2の固定孔
70 旧型吊り金具
71 水平面
72 挿通孔
73 支持用鉛直面
90 旧型室内機
91 筐体
91a 右側面
91b 左側面
93 吹出口
130 第1の吊り金具(吊り金具)
132 第1の挿通孔(挿通孔)
132a 位置決め部
132b 位置決め部
A 天井
A1 下面(天井面)
A2 開口
B1 第1の吊りボルト(吊りボルト)
B2 第2の吊りボルト
C 梁
L1 幅寸法
L2 幅寸法
N ナット
T 締結部材