(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138735
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】冷却水配管の配置構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20241002BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241002BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K1/04 Z ZHV
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049382
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179453
【弁理士】
【氏名又は名称】會田 悠介
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】西田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘
(72)【発明者】
【氏名】安田 範史
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC12
3D038AC14
3D235AA01
3D235BB43
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD12
3D235DD17
3D235FF25
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH22
(57)【要約】
【課題】車両の前方からの衝突時に、冷却水配管を衝突荷重から効果的に保護し、破損を防止することができる冷却水配管の配置構造を提供する。
【解決手段】出力軸11aが車両の左右方向を向くように配置されたモータ11と、モータ11の略直上又は略直下に配置されるインバータ12と、モータ11及び/又はインバータ12を冷却するための冷却水が流れる冷却水配管13と、を備える車両における冷却水配管の配置構造1であって、車両の前後方向において、モータ11の最前面の位置とインバータ12の最前面の位置が略揃うように配置され、モータ11とインバータ12の上下方向の隙間の空間Sに冷却水配管13が配置されることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸が車両の左右方向を向くように配置されたモータと、前記モータの略直上又は略直下に配置されるインバータと、前記モータ及び/又は前記インバータを冷却するための冷却水が流れる冷却水配管と、を備える車両における冷却水配管の配置構造であって、
前記車両の前後方向において、前記モータの最前面の位置と前記インバータの最前面の位置が略揃うように配置され、
前記モータと前記インバータの上下方向の隙間の空間に前記冷却水配管が配置される
ことを特徴とする、冷却水配管の配置構造。
【請求項2】
前記モータは、側面視において略円形状を有し、
前記インバータは、側面視において略長方形状を有し、
前記隙間の空間は、前記モータの前記最前面と前記インバータの前記最前面の近傍に形成される
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷却水配管の配置構造。
【請求項3】
前記冷却水配管は、前記モータ及び/又は前記インバータの内部に設けられた冷却水流路と接続するための接続部を有し、
前記接続部は、前記隙間の空間に配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷却水配管の配置構造。
【請求項4】
前記車両は、冷却水を冷却するためのラジエータと、前記ラジエータを冷却するためのラジエータファンと、前記ラジエータファンを駆動するためのファンモータと、を更に備え、
前記ファンモータは、前記車両の前後方向において、前記隙間の空間に配置された前記冷却水配管の前方に配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷却水配管の配置構造。
【請求項5】
前記モータの前記最前面及び前記インバータの前記最前面には、前方に突出する突起形状が設けられていないことを特徴とする、請求項1に記載の冷却水配管の配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される冷却水配管の配置構造に関し、特に車両の衝突時に冷却水配管を効果的に保護することが可能な冷却水配管の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。
【0003】
一般に、駆動用の電動モータと、電力変換装置としてのインバータを搭載する電動車両やハイブリッド車両においては、作動時に発熱するモータやインバータを冷却するために、モータルームの前方にラジエータ等の冷却装置を設置し、モータやインバータと冷却装置を冷却水配管で接続し、冷却装置で冷却された冷却水を冷却水配管を通して循環させる構成が用いられている。
【0004】
こうした電動車両又はハイブリッド車両においては、車両の衝突時に重要な部品やユニットを適切に保護するために様々な対策が取られている。例えば特許文献1では、モータ制御装置等を含む駆動ユニットと、駆動ユニットの前方に配置された冷却装置と、を接続する1対の冷却水配管において、駆動ユニットの前面に接続される配管基部と、配管基部から前方に延びる第1直線部と、第1直線部から下方に屈曲する屈曲部と、屈曲部から下方に延びる第2直線部と、を備え、第2直線部を、前方から見て車幅方向に位置をずらして配置するとともに、下方に向かうに従って間隔が広がるように配置する構成が開示されている。これにより、車両の前方からの衝突時に、1対の冷却水配管が冷却装置等の干渉体と広範囲に当接することで、干渉体が直接的に駆動ユニットに当接することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、車両の衝突時に、車両の駆動源となるモータや、高電圧が掛かるインバータを保護するための技術が開示されている一方で、冷却水配管の保護については十分に考慮されていない。しかしながら、冷却水配管の破損により冷却水が漏出した場合、モータやインバータの冷却が不可能となることでこれらの機器が高温化し、車両が走行不能になる等のリスクがある。したがって、車両の衝突時に冷却水配管を効果的に保護することが求められている。
【0007】
図4は、モータ、インバータ及びギヤボックスを一体化したeAxle(eアクスル)ユニットと冷却水配管の従来例を示す側面図である。図中、Frで示す方向が車両の前方であり、Rrで示す方向が車両の後方である。また、Uで示す方向が車両の上方であり、Dで示す方向が車両の下方である。この従来例では、出力軸が車両の左右方向(幅方向)を向くように配置されたモータ41の左右方向に隣接して(図中の奥行き側に)ギヤボックス42が配置されており、モータ41の上方にインバータ43が配置されている。また、モータ41の前側の上部には、モータ41の内部に設けられた冷却水流路と接続する冷却水配管44(接続部のみを図示)が前方に突出するように設けられている。また、モータ41の上部には、eAxleユニットの移動時の吊り点となる環状の突出部45が設けられている。
【0008】
この従来例では、モータ41、ギヤボックス42、及びインバータ43は、高い剛性を有するケースによって保護されている一方で、冷却水配管を保護するための対策は取られていない。そのため、車両が前方から衝突した際、冷却水配管44がモータ41の前方に配置されたラジエータ等の装置(不図示)や、車両のフロントバルクヘッドやバンパービームなどの構造(いずれも不図示)に挟まれ破損する可能性が高くなるという課題がある。また、eアクスルユニットの前面に突出部45のような突起形状を有しているため、衝突時の荷重が突出部45の付近に集中することで、突出部45の周囲のケースが破損しやすい構造となっている。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、車両の前方からの衝突時に、冷却水配管を衝突荷重から効果的に保護し、破損を防止することができる冷却水配管の配置構造を提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、出力軸11aが車両の左右方向を向くように配置されたモータ11と、モータ11の略直上又は略直下に配置されるインバータ12と、モータ11及び/又はインバータ12を冷却するための冷却水が流れる冷却水配管13と、を備える車両における冷却水配管の配置構造1であって、車両の前後方向において、モータ11の最前面の位置とインバータ12の最前面の位置が略揃うように配置され、モータ11とインバータ12の上下方向の隙間の空間Sに冷却水配管13が配置されることを特徴とする。
【0011】
この冷却水配管の配置構造においては、出力軸が車両の左右方向(幅方向)を向くように配置されたモータの略直上又は略直下にインバータが配置されるため、上下に並んだモータとインバータの間に隙間の空間が生じ、その空間内に冷却水配管が配置される。そして、モータの最前面の位置とインバータの最前面の位置が略揃うように配置されているので、車両の前方からの衝突の際、モータ前方の構造や装置から伝播した衝突荷重は、その大部分が、最前面の位置が略揃えられたモータ及びインバータへと伝わる。したがって、モータとインバータの間の隙間の空間に配置された冷却水配管に対する衝突荷重の入力は大幅に緩和されるので、冷却水配管を効果的に保護し、破損を防止することができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の冷却水配管の配置構造において、モータ11は、側面視において略円形状を有し、インバータ12は、側面視において略長方形状を有し、隙間の空間Sは、モータ11の最前面とインバータ12の最前面の近傍に形成されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、モータは、側面から見た形状が略円形状を有し、インバータは、側面から見た形状が略長方形状を有しているので、モータとインバータのそれぞれの最前面の位置が略揃うように配置した場合、上下方向に並んだモータとインバータの間で、モータの最前面及びインバータの最前面の近傍から車両の後方側に拡がりを有するように隙間の空間が形成される。そして、このような隙間の空間に冷却水配管が配置されるので、冷却水配管を、モータ及びインバータの最前面よりも後方に配置することができ、車両の前方からの衝突の際、発生した衝突荷重は冷却水配管に伝わり難くなる。したがって、衝突の際、冷却水配管に対する衝突荷重の入力が大幅に緩和されるので、冷却水配管を効果的に保護し、破損を防止することができる。また、衝突によりモータやインバータの前方に配置された装置や構造が変形した場合であっても、これらの装置や構造が直接、冷却水配管に接触する可能性を小さくすることができ、冷却水配管をより効果的に保護することができる。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1に記載の冷却水配管の配置構造において、冷却水配管13は、モータ11及び/又はインバータ12の内部に設けられた冷却水流路と接続するための接続部13aを有し、接続部13aは、隙間の空間Sに配置されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、モータ及び/又はインバータの内部に設けられた冷却水流路と接続するための接続部が、モータとインバータの上下方向の隙間の空間に配置されるので、車両の前方からの衝突の際、発生した衝突荷重は接続部に伝わり難くなる。したがって、衝突の際、冷却水配管の接続部に対する衝突荷重の入力が大幅に緩和されるので、冷却水配管を効果的に保護し、破損を防止することができる。
【0016】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1に記載の冷却水配管の配置構造において、車両は、冷却水を冷却するためのラジエータ31と、ラジエータ31を冷却するためのラジエータファンと、ラジエータファンを駆動するためのファンモータ33と、を更に備え、ファンモータ33は、車両の前後方向において、隙間の空間Sに配置された冷却水配管23の前方に配置されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ラジエータファンの駆動用のファンモータが、隙間の空間に配置された冷却水配管の前方に配置される。一般に、ファンモータは金属製で剛性が高く、前方からの衝突の際にも潰れずに残ることが多いため、このような位置関係でファンモータを配置することにより、ファンモータが冷却水配管に対する保護構造として機能する。すなわち、衝突の際、ファンモータは衝突荷重によっても変形せずにその形状を維持する可能性が高いため、ファンモータが受けた衝突荷重は、冷却水配管よりも前方に位置し、よりファンモータとの距離が近いモータやインバータの最前面に伝わりやすくなる。したがって、衝突の際、冷却水配管に対する衝突荷重の入力が更に大幅に緩和されるので、冷却水配管をより効果的に保護し、破損を防止することができる。
【0018】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1に記載の冷却水配管の配置構造において、モータ11の最前面及びインバータ12の最前面には、前方に突出する突起形状が設けられていないことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、モータ及びインバータの最前面には前方に突出する突起形状が設けられていないため、こうした突起形状が設けられている場合と比較して、衝突時の荷重が特定箇所に集中することを回避することができ、荷重の受け面が広くなることで荷重を分散させることができる。これにより、衝突の際のモータやインバータのケースの破損を抑制することができる。また、モータやインバータの破損が抑制されることにより、モータとインバータの隙間の空間に配置された冷却水配管をより効果的に保護し、破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冷却水配管の配置構造を概略的に示す正面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る冷却水配管の配置構造を概略的に示す図であり、(a)はモータ及びインバータとラジエータの位置関係を示す側面図であり、(b)は冷却水配管とファンモータの位置関係を示す正面図である。
【
図4】冷却水配管の配置構造の従来例を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の冷却水配管の配置構造について好ましい実施形態を詳細に説明する。以下に説明する構成は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0022】
なお、以下の説明において、前後、左右、上下は、車両の操縦者から見た方向に従い記載し、図面においては、車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をDとして示している。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る冷却水配管の配置構造1を概略的に示す。本実施形態の冷却水配管の配置構造1は、不図示の電動車両に駆動源として搭載されるモータ11と、不図示のバッテリからの電力を変換してモータ11に印加することによりモータ11の駆動を制御するインバータ12と、モータ11から発生する動力を変速するためのギヤボックス14と、をパッケージ化したeAxle(eアクスル)において、作動時に発熱するモータ11又はインバータ12を冷却するための冷却水の循環路を構成する冷却水配管13を保護するための配置構造である。
【0024】
主にモータ11、インバータ12、ギヤボックス14からなるeアクスルは、車両の車室の前方に不図示のダッシュパネルにより区画形成されたフロントルーム内に搭載される。フロントルームは、フロントバルクヘッドや車体フレームによって囲まれた空間であり、eアクスルの他、不図示のラジエータ等を格納する。
【0025】
モータ11は、例えば三相交流モータであり、バッテリから供給される電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、不図示の車輪を回転駆動するための動力を提供する。
図2は、
図1のA-A線に沿う断面図である。同図に示すように、モータ11は、その出力軸11aが車両の左右方向を向くように配置される。また、モータ11には、冷却水が流れるための冷却水流路(不図示)が内部に設けられている。
【0026】
インバータ12は、例えば三相インバータであり、バッテリから供給される直流電流を任意周波数の交流電流に変換してモータ11に印加することにより、モータ11の回転数やトルクを制御する。
図1及び
図2に示すように、インバータ12は、モータの略直上に配置される。
【0027】
ギヤボックス14は、モータ11の出力軸に設けられたドライブギヤと噛合する変速機であり、モータ11から取り出したトルクや回転数を、走行条件に応じて増減させて車輪に伝達する。
図1に示すように、ギヤボックス14は、モータ11の左右方向に隣接して配置される。
【0028】
冷却水配管13は、内部を冷却水(冷媒)が循環する管状の流路であり、いわゆるパイプ、チューブ、ホース等を含み、材質は樹脂、ゴム、又は金属のいずれであってもよい。また、冷却水配管13の他の装置との接続部は、より剛性が高い素材で構成されることが好ましく、例えば金属、硬質樹脂、繊維強化プラスチック等で構成され得る。本実施形態では、冷却水配管13は、接続部13aを介してモータ11の内部に設けられた冷却水流路と接続している。なお、各図において、冷却水配管13は接続部13aのみを示し、他の配管部分は図示省略している。
【0029】
冷却水配管13は、不図示のラジエータと接続している。冷却水配管13を流れる冷却水は、ラジエータのラジエータコアを通過する際に、走行風又はラジエータファン(不図示)により生じた気流により冷却され、冷却された冷却水は、接続部13aを介してモータ11内の冷却水流路へと流れ、その際にモータ11で生じた熱を奪うことでモータ11を冷却する。モータとの熱交換により高温化した冷却水は、再度、冷却水配管13を通って循環し、ラジエータを通過する際に冷却される。
【0030】
以下、本実施形態におけるモータ11及びインバータ12と冷却水配管13の位置関係を詳細に説明する。
図2に示すように、上下方向に並んだモータ11とインバータ12の間には、デッドスペースとなり得るような隙間の空間Sが形成されている。本実施形態の冷却水配管13の接続部13aは、この隙間の空間S内に配置されている。
【0031】
モータ11とインバータ12のそれぞれの最前面の位置は、破線L1の付近でほぼ揃うように配置されている。そのため、車両が前方から衝突した際、衝突点からeアクスルの前方に配置された装置や構造に伝播した衝突荷重は、前後方向の位置がほぼ揃ったモータ11の最前面及びインバータ12の最前面によって受け止められることとなり、冷却水配管13及び接続部13aへの衝突荷重の入力を大幅に緩和することができる。
【0032】
特に、本実施形態において、モータ11は、側面視において略円形状を有し、インバータ12は、側面視において略長方形状を有しているので、隙間の空間Sは、上下方向に並んだモータ11とインバータ12の間で、モータ11の最前面及びインバータ12の最前面の近傍から車両の後方側に拡がりを有する。したがって、冷却水配管13及び接続部13aを、モータ11及びインバータ12の最前面よりも後方に配置することができるので、前方から伝わる衝突荷重が冷却水配管13及び接続部13aに伝播することをより効果的に抑制することができる。また、衝突によりeアクスル前方の装置や構造が変形した場合であっても、これらの装置や構造が直接、冷却水配管13及び接続部13aに接触する可能性を小さくすることができ、冷却水配管13をより効果的に保護することができる。
【0033】
また、本実施形態においては、モータ11及びインバータ12の最前面の近傍において、
図4に示した従来例に見られたような突出部45や、その他の前方に大きく突出するような形状を有していない。そのため、車両の前方からの衝突の際に、荷重が特定箇所に集中することを回避することができる。また、前方に大きく突出する形状を有さないことにより、衝突荷重の受け面が広くなることで荷重を分散させることができる。これにより、衝突の際のモータ11やインバータ12のケースの破損を抑制することができる。また、モータ11やインバータ12の破損を抑制することにより、隙間の空間Sも保たれやすくなることとなり、冷却水配管13をより効果的に保護することができる。
【0034】
続いて、
図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る冷却水配管の配置構造について説明する。第2実施形態におけるモータ21及びインバータ22、並びに冷却水配管23及び接続部23aの構造及び位置関係は、上述した実施形態におけるモータ11及びインバータ12、並びに冷却水配管13及び接続部13aと同様であるため、説明は省略する。第2実施形態では、モータ21及びインバータ22の前方に配置されるラジエータ31の配置に特徴を有する。以下、具体的に説明する。
【0035】
図3は、第2実施形態に係る冷却水配管の配置構造を概略的に示す。
図3(a)は、モータ21及びインバータ22とラジエータ31の位置関係を示し、
図3(b)は、冷却水配管23とラジエータ31のファンモータ33の位置関係を示す。なお、
図3(b)においては、ファンモータ33の位置の理解を容易とするため、ラジエータ31、ラジエータファン、及びファンケース32の図示を省略している。
【0036】
図3(a)に示すように、この実施形態では、モータ21及びインバータ22の前方に、モータ21及びインバータ22に対向するようにラジエータ31が設けられる。このラジエータ31は、上述したラジエータと同様に、冷却水配管23と接続し、ラジエータコアを通過する冷却水を走行風又はラジエータファン(不図示)により生じる気流によって冷却するものである。
【0037】
ラジエータファンは、ラジエータ31に組付けられたファンケース32の内側に配置され、ラジエータ31とモータ21及びインバータ22の間の空間に配置される。ラジエータファンの中心部には、不図示のバッテリからの電力供給を受けてラジエータファンを駆動するファンモータ33が備えられている。ファンモータ33は高い剛性を有する材料で形成され、好ましくは金属製である。ラジエータ31は、ファンモータ33が、モータ21とインバータ22の隙間の空間に配置された冷却水配管23の接続部23aの前方に配置されるように位置を調整されている。また、ファンモータ33は、車両の衝突の際にファンモータ33が大きく塑性変形するのに十分なクラッシュストロークが確保されない程度に、モータ21及びインバータ22と前後方向において近接するような位置関係で配置される。
【0038】
このようにファンモータ33を配置することにより、車両の前方からの衝突の際、ファンモータ33が冷却水配管23に対する保護構造として機能する。すなわち、金属製で高剛性のファンモータ33は、クラッシュストロークが確保されない程度にモータ21及びインバータ22に近接して設けられているので、衝突の際、ファンモータ33は変形せずにその形状を維持する可能性が高くなる。これにより、ファンモータ33が受けた衝突荷重は、冷却水配管23よりも前方に位置し、よりファンモータ33と近接するモータ21やインバータ22の最前面に伝わりやすくなる。したがって、衝突の際の冷却水配管23に対する衝突荷重の入力がより大きく緩和されるので、冷却水配管23をより効果的に保護し、破損を防止することができる。
【0039】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、モータの内部の冷却水流路と接続する冷却水配管を例示して説明したが、冷却水配管は、インバータやその他の装置を冷却するためのものであってもよい。
【0040】
また、実施形態では、インバータがモータの略直上に配置される例について説明したが、インバータがモータの略直下に配置される構成であってもよい。また、実施形態では、駆動源としてモータのみを用いる電動車両に本発明の冷却水配管の配置構造を適用する構成としたが、駆動源としてモータと内燃機関を併用するハイブリッド車用に本発明の冷却水配管の配置構造を適用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…冷却水配管の配置構造
11,21…モータ
11a…出力軸
12,22…インバータ
13,23…冷却水配管
13a,23a…接続部
31…ラジエータ
33…ファンモータ
S…隙間の空間