(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138751
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】線材の巻線装置及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/095 20060101AFI20241002BHJP
H01F 41/064 20160101ALI20241002BHJP
【FI】
H02K15/095
H01F41/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049416
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】田口 広之
(72)【発明者】
【氏名】河口 典正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 輝
【テーマコード(参考)】
5E002
5H615
【Fターム(参考)】
5E002AB02
5E002AB07
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP13
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615SS10
5H615SS11
(57)【要約】
【課題】ステータの磁極に線材を高精度であってかつ高速に巻回する。
【解決手段】巻線装置は、磁極13bが揺動するようにステータコア13を動作させるステータコア動作機構19と、磁極13bの軸に直交する方向にノズル11を移動させるノズル移動機構30と、を備え、ステータコアの揺動とノズルの移動の組み合わせにより、ノズルの先端を磁極の周囲に周回させて、ノズルから繰り出された線材12を磁極に巻回する。ノズル移動機構極は、ノズルを移動させる第一アクチュエータ32と、それをノズルの移動方向に平行に移動させる第二アクチュエータ33とを備える。第一及び第二アクチュエータがそれぞれリニアモータから成り、ノズルが第一アクチュエータの可動子に取付けられ、第一アクチュエータの固定子が第二アクチュエータの可動子に取付けられ、第二アクチュエータの固定子がステータコア動作機構に隣接して取付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極(13b,63b)が揺動するようにステータコア(13,63)を動作させるステータコア動作機構(19)と、前記磁極(13b,63b)の軸に直交する方向にノズル(11)を移動させるノズル移動機構(30)と、を備え、前記ステータコア(13,63)の揺動と前記ノズル(11)の移動の組み合わせにより、前記ノズル(11)の先端を前記磁極(13b,63b)の周囲に周回させて、前記ノズル(11)から繰り出された線材(12)を前記磁極(13b,63b)に巻回する巻線装置において、
前記ノズル移動機構(30)は、段階的に設けられた複数のアクチュエータ(32,33)を備えることを特徴とする線材の巻線装置。
【請求項2】
段階的に設けられた複数のアクチュエータ(32,33)は、ノズル(11)を移動させる第一アクチュエータ(32)と、前記第一アクチュエータ(32)を前記ノズル(11)の移動方向に平行に移動させる第二アクチュエータ(33)とを備える請求項1記載の線材の巻線装置。
【請求項3】
第一アクチュエータ(32)及び第二アクチュエータ(33)が、固定子(32a,33a)と、前記固定子(32a,33a)に沿って往復移動する可動子(32b,33b)とをそれぞれ備え、
ノズル(11)が前記第一アクチュエータ(32)の可動子(32b)に取付けられ、
前記第一アクチュエータ(32)の固定子(32a)が前記第二アクチュエータ(33)の可動子(33b)に取付けられ、
前記第二アクチュエータ(33)の固定子(33a)がステータコア動作機構(19)に隣接して設けられた請求項2記載の線材の巻線装置。
【請求項4】
ステータコア動作機構は、ステータコア(13)が回転軸(19a)と同軸に前記回転軸(19a)に取付けられるサーボモータ(19)から成る請求項2又は3記載の線材の巻線装置。
【請求項5】
ステータコア(13)の中心軸(O)を回転中心とする磁極(13b,63b)の揺動と磁極間のスロット(13c,63c)におけるノズル(11)の前記ステータコア(13)の中心軸(O)方向への移動との組み合わせにより前記ノズル(11)の先端を前記磁極(13b,63b)の周囲に周回させて、前記ノズル(11)の先端から繰出される線材(12)を前記磁極(13b,63b)に巻回させる線材の巻線方法において、
前記スロット(13c,63c)における前記ノズル(11)の移動が、段階的に設けられた複数のアクチュエータ(32,33)を同時に駆動することにより行われる
ことを特徴とする線材の巻線方法。
【請求項6】
段階的に設けられた複数のアクチュエータ(32,33)を同時に駆動することが、第一アクチュエータ(32)によりノズル(11)を移動させるとともに、第二アクチュエータ(33)により前記第一アクチュエータ(32)を前記ノズル(11)の移動方向と同一方向に更に移動させることである請求項5記載の線材の巻線方法。
【請求項7】
スロット(13c,63c)を移動するノズル(11)が前記スロット(13c,63c)を通過した後に磁極(13b,63b)の揺動が開始され、前記磁極(13b,63b)の揺動が停止した後に前記ノズル(11)の前記スロット(13c,63c)への移動が開始される請求項6記載の線材の巻線方法。
【請求項8】
サーボモータ(19)の回転軸(19a)にステータコア(13)を同軸に取付け、磁極(13b)の揺動が、前記サーボモータ(19)を駆動して、前記磁極(13b)と隣接する磁極(13b)の成す角度(θ)に相当する角度で前記回転軸(19a)とともに前記ステータコア(13)を回転させることにより行われる請求項6又は7記載の線材の巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルの先端から繰出される線材をステータの半径方向に突出して形成された磁極に巻回させる線材の巻線装置及び巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インナーロータ型モータのステータは、環状の部材を複数積層してなるステータコアの内周側に突出する複数の磁極に線材を巻回して形成され、アウターロータ型モータのステータは、そのステータコアの外周側から放射状に突出する複数の磁極に線材を巻回して形成される。
【0003】
従来、このステータコアの各磁極への巻線装置として、本出願人は、ステータの中心軸を回転中心としてそのステータコアを回転可能に支持するステータ支持手段と、3軸方向のそれぞれにノズルを移動させる移動機構を備えた巻線装置を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この巻線装置では、ステータコアの回転と、線材を繰出すノズルのステータの軸方向の移動を組み合わせて、ノズルの線材繰出端である先端を磁極の周囲に周回移動させて、その先端から繰出される線材を磁極に巻回させるようにしており、このステータコアの回転とノズルの軸方向の移動を精密に制御することにより、線材が各磁極に整列巻されたステータが得られるとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の巻線装置において、ノズルを3軸方向にそれぞれ移動させる移動機構は、前後、左右、上下の各移動機構を順次積み上げることにより構成されているので、前後移動機構はノズルと一緒に左右移動機構と上下移動機構を動かさねばならず、また左右移動機構はノズルと一緒に上下移動機構を動かさなければならない。このようにノズルとともに移動する部分が比較的大きいためにそれぞれの重量も比較的大きなものとなり、前後移動機構によるノズルの前後動作、左右移動機構によるノズルの左右動作は高速化することができずに、結果として巻線作業の高速化を阻害していた。
【0007】
また、上記従来の巻線装置における上下移動機構は、ボールネジを用いているので、そのネジ軸をサーボモータを用いて回転させ、それによりノズルが取付けられた可動台を移動させている。このボールネジでは、サーボモータがそのネジ軸を1回転させると、そのネジ軸に形成された螺旋溝の長手方向におけるピッチに相当する量だけノズルが上下に移動することになる。
【0008】
そして、ステータの磁極に巻線をする場合に、通常はノズルをその螺旋溝のピッチの数倍から数十倍移動させなければならないので、このノズルを往復移動させて巻線するためには、サーボモータはそのネジ軸を数回から数十回正転させた後に、再び数回から数十回逆転させなければならなかった。
【0009】
このため、ボールネジを用いた上記従来の巻線装置において、ノズルを比較的速い速度で移動させて巻線を行う場合には、サーボモータによりネジ軸を高速で回転させるとともに、そのネジ軸を急加減速する必要がある。このため、ボールネジを用いて巻線を行わせようとする従来の巻線装置にあっては、そのネジ軸を回転させる駆動源として、いわゆる高トルクであって、かつ高応答のサーボモータが必要とされる。
【0010】
このようなサーボモータはとても高価かつ大型のものであるので、高速で巻線させることを追求すると、その装置の単価が押し上げられ、かつその装置が大型化する不具合を生じさせる。
【0011】
本発明の目的は、このような問題点に着目してなされたもので、ステータの磁極に線材を高精度であってかつ高速に巻回し得る線材の巻線装置及び巻線方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、磁極が揺動するようにステータコアを動作させるステータコア動作機構と、磁極の軸に直交する方向にノズルを移動させるノズル移動機構と、を備え、ステータコアの揺動とノズルの移動の組み合わせにより、ノズルの先端を磁極の周囲に周回させて、ノズルから繰り出された線材を磁極に巻回する巻線装置の改良である。
【0013】
その特徴ある構成は、ノズル移動機構が、段階的に設けられた複数のアクチュエータを備えるところにある。
【0014】
この場合の段階的に設けられた複数のアクチュエータは、ノズルを移動させる第一アクチュエータと、第一アクチュエータをノズルの移動方向に平行に移動させる第二アクチュエータとを備えることが好ましい。
【0015】
そして、第一アクチュエータ及び第二アクチュエータが、固定子と、その固定子に沿って往復移動する可動子とをそれぞれ備える場合、ノズルが第一アクチュエータの可動子に取付けられ、第一アクチュエータの固定子が第二アクチュエータの可動子に取付けられ、第二アクチュエータの固定子がステータコア動作機構に隣接して設けられることが好ましい。
【0016】
また、ステータコア動作機構は、ステータコアが回転軸と同軸にその回転軸に取付けられるサーボモータとすることもできる。
【0017】
別の本発明は、ステータコアの中心軸を回転中心とする磁極の揺動と磁極間のスロットにおけるノズルのステータコアの中心軸方向への移動との組み合わせによりノズルの先端を磁極の周囲に周回させて、ノズルの先端から繰出される線材を磁極に巻回させる線材の巻線方法である。
【0018】
その特徴ある点は、スロットにおけるノズルの移動が、段階的に設けられた複数のアクチュエータを同時に駆動することにより行われるところにある。
【0019】
この場合、段階的に設けられた複数のアクチュエータを同時に駆動することが、第一アクチュエータによりノズルを移動させるとともに、第二アクチュエータにより第一アクチュエータをノズルの移動方向と同一方向に更に移動させることにより行われることであることが好ましい。
【0020】
そして、磁極間のスロットを移動するノズルがスロットを通過した後に磁極の揺動が開始され、磁極の揺動が停止した後にノズルのスロットへの移動が開始されることが好ましい。
【0021】
また、サーボモータの回転軸にステータコアを同軸に取付けた場合、磁極の揺動は、そのサーボモータを駆動して、磁極と隣接する磁極の成す角度に相当する角度で回転軸とともにステータコアを回転させることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の線材の巻線装置では、磁極の揺動と磁極間のスロットにおけるノズルのステータコアの中心軸方向への移動との組み合わせによりノズルの先端を磁極の周囲に周回させる。これにより、ノズルから繰り出された線材をステータの磁極に巻回することができる。そして、磁極と磁極の間のスロットのノズルの直線的な移動を、複数のアクチュエータにより行うことにより、その移動速度を高めることが出来る。
【0023】
特に、複数のアクチュエータが、それぞれ固定子の長手方向に可動子を移動させるものである場合には、固定子に対する可動子の移動を速やかに行わさせることにより、巻線を比較的容易に高速化させることができる。
【0024】
また、磁極が揺動するようにステータコアを動作させるステータコア動作機構は、巻線の対象である磁極とそれに隣接する磁極の成す角度に相当する角度でステータコアを正転及び逆転させることにより巻線を行うので、巻線の対象である磁極とそれに隣接する磁極との成す角度は比較的小さいことから、このステータコア動作機構として一般的なサーボモータを用いても、巻線時における磁極の揺動は速やかに行われことになる。このため、高トルク、高応答の比較的高価なサーボモータは不要になり、巻線装置の単価が押し上げられることもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明実施形態の巻線装置を示す側面図である。
【
図2】そのノズルが上昇した巻線装置を示す
図1に対応する側面図である。
【
図4】そのノズル移動機構の動作を示す
図1のB-B線断面図である。
【
図5】その巻線される磁極が揺動する状態を示す
図1のA-A線断面図である。
【
図6】その磁極に対するノズルの動きを示す図である。
【
図7】その巻線装置により巻線がなされたアウターロータ型のステータコアの断面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態の巻線装置を示す斜視図である。
【
図9】その別の巻線装置により線材を磁極に巻回させる状態を示す
図8のC-C線断面図である。
【
図10】その別のノズル移動機構の動作を示す図である。
【
図11】その別のステータコアの磁極に対するノズルの動きを示す図である。
【
図12】その別の巻線装置により巻線がなされたインナーロータ型のステータコアの断面図である。
【
図13】二つの第一アクチュエータと単一の第二アクチュエータを備える別のノズル移動機構の動作を示す
図4に対応する図である。
【
図14】その別のノズル移動機構を有する別の巻線装置を示す
図3に対応する上面図である。
【
図15】三つの第一アクチュエータと単一の第二アクチュエータを備える別のノズル移動機構を示す
図13に対応する図である。
【
図16】四つのノズルと二つの第一アクチュエータと単一の第二アクチュエータを備える更に別のノズル移動機構を示す
図15に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1ないし
図3に本発明における線材の巻線装置10を示す。各図において、互いに直交するX、Y及びZの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が鉛直方向に延びるものとし、この巻線装置10の構成について説明する。この巻線装置10は、ノズル11から繰り出された線材12をステータコア13の磁極13b(
図7)に巻回するものである。
【0028】
図7に示すように、この実施の形態におけるステータコア13はアウターロータ型のものが用いられるものとし、このアウターロータ型のステータコア13は、円環状の環状部13aと、この環状部13aの外周面からその環状部13aの外側に向けて放射状に突出している複数の磁極13bとを備えるものである。
【0029】
図1ないし
図3に示すように、この巻線装置10は、設置場所に設置される機台14を備える。機台14にはテーブル16をX軸方向である前後方向に移動させる前後方向駆動部17が設けられ、そのテーブル16にはステータコア13を支持する支持具18が設けられる。
【0030】
前後方向駆動部17は、駆動方向であるX軸に沿って機台14に配された前後方向ガイド17aと、その前後方向ガイド17aに平行に配され表面に螺旋状の雄ねじが配される前後方向回転軸17bと、その前後方向回転軸17bにボールねじにより螺合されその前後方向回転軸17bの回転により前後方向ガイド17aに沿って移動可能な前後方向移動部材17d(
図1及び
図2)と、前後方向回転軸17bを回転駆動する前後方向駆動源17cとが配される。
【0031】
この実施の形態における前後方向駆動源は前後方向サーボモータ17cであって、そのサーボモータ17cが駆動することにより移動する前後方向移動部材17dにテーブル16が取付けられる。
【0032】
テーブル16には、回転軸19aがZ軸方向にある揺動用サーボモータ19と、その揺動用サーボモータ19からY軸方向にずれてその揺動用サーボモータ19に隣接する取付板21が設けられる。
【0033】
ステータコア13を支持する支持具18は、ステータコア13を上端縁に水平に載置する鉛直方向に伸びた棒状芯材18aと、その芯材18aの上端縁に載置されたステータコア13を上方から押させる押さえ部材18bとを有する。
【0034】
棒状芯材18aは揺動用サーボモータ19の回転軸19aにその下端が取付けられ、上部はステータコア13の環状部13a(
図7)の外径より僅かに小さな外径に形成される。取付板21の揺動用サーボモータ19に臨む側には直線運動ガイドレール23が鉛直方向に伸びて取付けられ、このガイドレール23に昇降部材22が上下動可能に取付けられる。
【0035】
押さえ部材18bは、中心の鉛直軸を棒状芯材18aの中心軸に一致させかつその鉛直軸を回転中心として回転可能にその昇降部材22に取付けられる。芯材18aの上端縁に載置されたステータコア13を上方から実際に押させる押さえ部材18bの下部にあっては、ステータコア13の環状部13aの外径より僅かに小さな外径に形成され(
図5)、芯材18aと押さえ部材18bによりステータコア13はその環状部13aが挟まれ、その環状部13aからその外側に磁極13bが放射状に突出して各磁極13bの周囲にノズル11が周回可能に構成される。
【0036】
棒状芯材18aは揺動用サーボモータ19の回転軸19aにその下端が取付けられるので、サーボモータ19の回転軸19aが回転すると、棒状芯材18aはその回転軸19aとともに回転し、棒状芯材19aと押さえ部材18bにより挟まれたステータコア13は棒状芯材18aと押さえ部材18bから成る支持具18の中心軸Oを中心として回転することになる(
図5)。
【0037】
そして、ステータコア13は棒状芯材19aの上端縁に載置されてその中心が支持具18の中心軸に一致するように構成され、ステータコア13の周囲における磁極13bは、ステータコア13の回転により揺動可能に構成される。
【0038】
このため、この揺動用サーボモータ19は、磁極13bが揺動するようにステータコア13を動作させるステータコア動作機構として機能するように構成される。そして、その昇降部材22の上方の取付板21にはこの昇降部材22を押さえ部材18bとともに昇降させる昇降用シリンダ24が設けられる。
【0039】
また、この巻線装置10には、磁極13bの軸に直交する方向、この実施の形態では鉛直方向に延びるステータコア13の中心軸に平行にノズル11を移動させるノズル移動機構30が設けられる。
【0040】
ノズル11は、磁極13bに巻回される線材12をその先端から繰り出すものであって、この実施の形態におけるノズル11は、可動台34に基端が固定される大径部11aと、その大径部11aの先端から同軸に突出して連続する小径部11bとを有する。
【0041】
そして、
図5に示すように、小径部11bは大径部11aと同軸に設けられ、その小径部11bはステータコア13の磁極13bと磁極13bの間のスロット13cに進入可能な外径に形成される。この大径部11aと小径部11bには線材12が挿通可能な貫通孔がそれらの中心軸に貫通して設けられ、この貫通孔に挿通された線材12が小径部11bの先端から繰り出し可能に構成される。
【0042】
このようなノズル11を鉛直方向に移動させるノズル移動機構30は、ステータコア動作機構である揺動用サーボモータ19に隣接して設けられる。図では、ステータコア13を支持する支持具18からX軸方向に離間する機台14に鉛直に伸びて直接固定された台座31に設けられる場合を示す。そして、本発明の特徴ある構成は、このノズル移動機構30が、ノズル11を移動させる為に段階的に設けられた複数のアクチュエータ32,33を備えるところにある。
【0043】
具体的に、この実施の形態におけるノズル移動機構30は、ノズル11が固定された可動台34を往復移動させる第一アクチュエータ32と、その第一アクチュエータ32を可動台34の移動方向に平行に往復移動させる第二アクチュエータ33とを備えるものを示す。図における第一アクチュエータ32及び第二アクチュエータ33は、それぞれ固定子32a,33aに沿って可動子32b,33bを往復移動させるリニアモータから成るものを示す。
【0044】
そして、機台14に鉛直に伸びて直接固定された台座31のステータコア13に臨む面に、鉛直方向に延びて第二アクチュエータ33の固定子33aがステータコア動作機構となる揺動用サーボモータ19に隣接するように設けられる。
【0045】
一方、ノズル11が設けられた可動台34は第一アクチュエータ32の可動子32bに取付けられ、その第一アクチュエータ32の固定子32aが、長手方向を第二アクチュエータ33の固定子33aに平行になるように、その可動子33bに取付けられる。
【0046】
図1ないし
図3では、可動台34にノズル11が水平に取付けられて、X軸方向に延びるノズル11の先端を支持具18に指示されたステータコア13のスロット13c(
図5)に挿入可能に構成される。
【0047】
また、この可動台34にはそのノズル11のZ軸方向上方からノズル11に向かって繰り出される線材12を転向させてノズル11に通過させる転向プーリ36が設けられる。この転向プーリ36により、図示しない線材供給源から供給される線材12を鉛直方向から水平方向に転向して、中心軸が鉛直方向に延びるように支持されたステータコア13のスロット13cに、水平方向から進入させ得るように構成される。
【0048】
そして、このノズル移動機構30は、
図1に示す様に、第二アクチュエータ33の可動子33bがその固定子33aの下位に位置し、その可動子33bに固定子32aが取付けられた第一アクチュエータ32の可動子32bも、その固定子32aの下位に位置する場合に、その可動子32bに取付けられたノズル11がステータコア13のスロット13cを通過してその下方に至るように構成される。
【0049】
一方、このノズル移動機構30は、
図2に示す様に、第二アクチュエータ33の可動子33bがその固定子33aの上位に位置し、その可動子33bに固定子32aが取付けられた第一アクチュエータ32の可動子32bも、その固定子32aの上位に位置する場合に、その可動子32bに取付けられたノズル11がステータコア13のスロット13cを通過してその上方に至るように構成される。
【0050】
次に、この巻線装置を用いた本発明の巻線方法について説明する。
【0051】
上記巻線装置10を用いた巻線方法にあっては、先ず、ステータコア13を支持具18により支持させる。
【0052】
このステータコア13の支持に際して、
図1に示すように、前後方向駆動部17はその前後方向サーボモータ17cを駆動して前後方向回転軸17bを回転させ、それにより前後方向移動部材17dをテーブル16とともに、実線矢印で示すように台座31から遠ざける。
【0053】
その状態で、取付板21に設けられた昇降用シリンダ24のロッド24aを没入させて昇降部材22を上昇させ、その昇降部材22に取付けられた押さえ部材18bを一点鎖線矢印で示すように上昇させて、その下方に棒状芯材18aとの間に空間を形成する。そして、その空間を介してステータコア13を棒状芯材18aの上縁に水平に載置する。
【0054】
その後、昇降用シリンダ24のロッド24aを突出させて昇降部材22を二点鎖線矢印で示すように下降させ、その昇降部材22とともに下降する押さえ部材18bにより、棒状芯材18aの上縁に載置されたステータコア13を
図1に示すように上方から押さえる。
【0055】
更にその後、前後方向駆動部17はその前後方向サーボモータ17cを駆動して前後方向回転軸17bを逆方向に回転させ、前後方向移動部材17dをテーブル16とともに
図1の破線矢印で示すように台座31に近づける。
【0056】
そして、実際の巻線を始めるに際して、ステータコア13をX軸方向に移動させる前後方向駆動部17、ノズルをZ軸方向に移動させるノズル移動機構30、及び磁極13bが揺動するようにステータコア13を動作させるステータコア動作機構として機能する揺動用サーボモータ19により、ステータコア13に対してノズル11を3次元方向に移動させ、そのノズル11の先端から繰り出された線材12の端部を図示しない絡げピン又は線クランプ装置に絡げて固定しておく。
【0057】
次に、実際の巻線が行われることになるけれども、この実際の巻線にあっては、ノズル移動機構30によりノズル11をZ軸方向に往復移動するとともに、巻線される磁極13bが揺動するように揺動用サーボモータ19によりステータコア13の正回転及び逆回転を交互に行う。
【0058】
即ち、本発明の巻線方法は、
図5に示す様な磁極13bの揺動と、磁極間のスロット13cにおいて、ステータコア13の軸方向へのノズル11の移動の組み合わせにより、
図6に示す様に、ノズル11の先端を磁極13bの周囲に周回させて、そのノズル11の先端から繰出される線材12をその磁極13bに巻回させる方法である。
【0059】
このステータコア13の中心軸O(
図5)を回転中心とする磁極13bの揺動は、
図1及び
図2に示すように、そのノズル11の先端がそのスロット13cから抜け出た状態で行われるものとし、
図5に示す様に、そのノズル11の先端が巻線する磁極13bとそれに隣接する磁極13bとの間のスロット13cに対向した段階でその揺動を終了させる。
【0060】
一方、ステータコア13の軸方向へのノズル11の移動は、揺動用サーボモータ19による磁極13bの揺動は行わずに、ノズル11の先端が巻線する磁極13bとそれに隣接する磁極13bにより挟まれるスロット13cにある場合に、ノズル移動機構30によりノズル11をZ軸方向に移動させることにより行われる。
【0061】
このようなノズル11の移動と磁極13bの揺動を交互に繰り返すことにより、ノズル11は磁極13bの断面形状に沿って、
図6に示すように、その磁極13bの周囲に周回移動することになり、そのノズル11の先端から繰出される線材12は、その磁極13bに巻回されることになる。
【0062】
そして、
図4に示す様に、本発明におけるノズル11のスロット13cにおける移動は、ノズル11が固定された可動台34を第一アクチュエータ32により移動させるとともに、その移動と同時に、第二アクチュエータ33により、その第一アクチュエータ32を可動台34の移動方向と同一方向に更に移動させることを特徴とする。
【0063】
即ち、
図2及び
図4(a)に示すように、ステータコア13の上方に位置するノズル11を下方に移動させる場合には、
図4(b)に示すように、ノズル11が固定された可動台34を第一アクチュエータ32により下方に移動させるとともに、その移動と同時に、第二アクチュエータ33により、その第一アクチュエータ32を下降させることになり、
図1及び
図4(c)に示すように、そのノズル11がスロット13cを通過して、ステータコア13の下方に至った状態でその移動を停止させることになる。
【0064】
一方、
図1及び
図4(c)に示すように、ステータコア13の下方に位置するノズル11を上方に移動させる場合には、
図4(d)に示すように、ノズル11が固定された可動台34を第一アクチュエータ32により上方に移動させるとともに、その移動と同時に、第二アクチュエータ33により、その第一アクチュエータ32を上昇させることになり、
図2及び
図4(e)に示すように、そのノズル11がスロット13cを通過して、ステータコア13の上方に至った状態でその移動を停止させることになる。
【0065】
すると、ノズル移動機構30によるノズル11のスロット13cにおけるZ軸方向における移動速度Zvは、
図4(b)及び(d)に示す様に、第一アクチュエータ32がノズル11を移動させる移動速度Z1vと、ノズル11と共に第二アクチュエータ33がその第一アクチュエータ32を更に同方向に移動させる移動速度Z2vとの和と成る。
【0066】
従って、単一のアクチュエータによりノズル11を移動させる従来に比較して、本発明の巻線方法では、ノズル11のZ軸方向に向かう移動速度Zvを倍増させることが可能となるのである。
【0067】
一方、巻線される磁極13bの揺動は、ステータコア13を往復回転させることにより行われ、その回転は揺動用サーボモータ19により支持具18の棒状芯材18a(
図1)をその中心軸を回転中心として回転させることにより行われる。
【0068】
この棒状芯材18aは揺動用サーボモータ19の回転軸19aに取付けられているので、
図5に示すように、この回転は巻線の対象である磁極13bとそれに隣接する磁極13bの成す角度θに相当する角度で揺動用サーボモータ19の回転軸19aを正転及び逆転させて、ノズル11が一方のスロット13cに対向する
図5(a)に示す状態から、
図5(b)に示すように揺動させて、ノズル11が隣接する他方のスロット13cに対向する
図5(c)に示す状態で、その揺動を停止させることに成り、その回転角度θが比較的小さなことから、その磁極13bの揺動は速やかに行うことが可能となる。
【0069】
従って、ノズル移動機構30によりノズル11を一往復させるとともに揺動用サーボモータ19の回転軸19aを僅かな角度で正転及び逆転させるだけで、ノズル11を磁極13bの周囲に方形状に1回回転移動させることができることになり、その巻回速度は、サーボモータを数回又は数十回回転させなければノズルを1回回転移動させることができなかった従来に比較して、著しく高速化させることができる。
【0070】
このように、本発明の巻線装置10では、ノズル11を磁極13bの周囲に回転移動させて巻線するために従来用いていたボールネジ式を用いない。このため、従来そのボールネジにおけるネジ軸を回転させるサーボモータが必要とした高速からの急加減速を必要としない。
【0071】
そして、上述したように、本発明におけるノズル移動機構30はリニアモータであり速やかにノズル11をZ軸方向に往復運動させることができ、揺動用サーボモータ19にあっては僅かな角度で正転及び逆転を繰り返すことにより磁極13bを揺動させることができる。このため巻線の高速化のために従来必要とされた高トルク、高応答のサーボモータが不要になる。
【0072】
一方、線材12を磁極13bに整列巻きさせるためには、ノズル11を磁極13bの周囲に回転移動させるとともに、線材12の一巻きごとに線材12の直径分だけ前後方向駆動部17によりステータコア13をX軸方向に移動させることが必要である。そして、ステータコア13をX軸方向に移動させるには、前後方向駆動部17の前後方向サーボモータ17cにより前後方向回転軸17bを回転させることにより行われる。
【0073】
けれども、そのステータコア13の移動量は線材12の一巻きごとに線材12の直径分だけであるので極めて少なく、その前後方向回転軸17bを高速で回転させる必要はない。よって、前後方向回転軸17bを回転させる前後方向サーボモータ17cにあっても、標準品として市販されているサーボモータを使用することができ、巻線装置10の単価を押し上げることなく整列巻きする巻線速度の高速化を図ることができる。
【0074】
なお、このような巻線を全ての磁極13bに対して行い、
図7に示す様に、全ての磁極13bへの巻線が終了した後には、ステータコア13を支持具18から取り外す。この取り外しに際して、前後方向駆動部17はその前後方向サーボモータ17cを駆動して前後方向回転軸17bを回転させ、テーブル16とともに支持具18を
図1の実線矢印で示すように台座31から遠ざける。
【0075】
その状態で、取付板21に設けられた昇降用シリンダ24のロッド24aを没入させ、昇降部材22とともに押さえ部材18bを一点鎖線矢印で示すように上昇させて、その押さえ部材18bによるステータコア13の押さえを解除するとともにそのステータコア13の上方に空間を形成する。そして棒状芯材18aの上端に載置されたステータコア13をその空間を介して棒状芯材18aから取り外し、一連の巻線作業を終了させることになる。
【0076】
図8~
図12に本発明の別の実施の形態を示す。この別の実施の形態において、先の実施の形態における装置と同一符号は同一部品を示し、繰り返しての説明を省略する。
【0077】
図12に示すように、この別の実施の形態におけるステータコア63は、インナーロータ型のものが用いられ、円環状の環状部63aと、この環状部63aの内周面からその環状部63aの中心に向けて突出している複数の磁極63bとを備える。
【0078】
図8に示すように、機台14にはこのようなステータコア63を搭載する支持装置68が備えられる。この支持装置68は、機台14に配された固定台68aと、その固定台68aに水平面内で回転可能に取付けられ上側にステータコア63を搭載固定可能な回転台68bと、この回転台68bを回転させる図示しない揺動用サーボモータを備える。
【0079】
この別の実施の形態における巻線装置60は、上記支持装置68が備えられて設置場所に設置される機台14と、その機台14に設けられ前述したノズル移動機構30を3軸方向に駆動するための駆動手段70を備える。駆動手段70は、3軸方向の駆動部71,72,73を組み合わせてなり、前後方向駆動部71と、左右方向駆動部72と、上下方向駆動部73とを具備するものとされる。これらの駆動部71,72,73は、駆動方向X,Y,Zに沿って略同一の駆動機構とされる。
【0080】
先ず、上下方向駆動部73について説明すると、この上下方向駆動部73は、駆動方向Zに沿って配された上下方向ガイド73aと、該上下方向ガイド73aに平行に配され表面に雄ねじが配される上下方向回転軸73bと、その上下方向回転軸73bにボールねじにより螺合され上下方向ガイド73aに沿って移動可能な上下方向移動部73cと、その上下方向移動部73cに接続される上下方向接続部73dと、上下方向回転軸73bを回転駆動する上下方向駆動源73eとが配される。
【0081】
上下方向回転軸73bは、ユニバーサルジョイント73fにより上下方向駆動源73eに接続される。上下方向移動部73cは、上下方向回転軸73bに配された雄ねじの範囲によって、駆動方向Zの移動範囲が設定される。
【0082】
前後方向駆動部71と左右方向駆動部72とは、上下方向駆動部73と同様の構造として
図8に示す駆動方向X,Yに沿って配される。前後方向駆動部71は、機台14に固定されて前後方向駆動源71eを具備するものとされ、かつ、左右方向駆動部72が、前後方向接続部71dを介して前後方向駆動部71に対して前後方向移動可能に配される。
【0083】
左右方向駆動部72は、左右方向駆動源72eを具備するものとされ、かつ、上下方向駆動部73が、左右方向接続部72dを介して左右方向駆動部72に対して左右方向移動可能に配される。そして、それぞれの駆動源71e,72e,73eとしては、例えば、高精度制御可能なサーボモータが用いられる。そして、上下方向駆動部73の上下方向接続部73dには、巻線を行う磁極63bの軸に直交する方向であるZ軸方向にノズル11を移動させるノズル移動機構30が設けられる。
【0084】
このノズル移動機構30は、先の実施の形態において説明したものと同一構造のものであって、
図8~
図10に示すように、このノズル移動機構30は、ノズル11が固定された可動台34を往復移動させる第一アクチュエータ32と、その第一アクチュエータ32を可動台34の移動方向(Z軸方向)に平行に往復移動させる第二アクチュエータ33とを備える。
【0085】
この第一アクチュエータ32及び第二アクチュエータ33は、それぞれ固定子32a,33aに沿って可動子32b,33bを往復移動させるリニアモータであって、上下方向接続部73dのステータコア63に臨む部位に、鉛直方向に延びて第二アクチュエータ33の固定子33aが設けられ、第二アクチュエータ33の可動子33bに第一アクチュエータ32の固定子32aが取付けられる。
【0086】
ノズル11が設けられた可動台34は、Z軸方向に延びる昇降板74の下端に取付けられ、この昇降板74の上端が第一アクチュエータ32の可動子32bに取付けられる。そして、可動台34のステータコア13のX軸方向に位置する部分にノズル11がX軸方向に伸びて固定され、
図9に示すように、可動台34にはノズル11に貫通した線材12を上下方向接続部73dに向けて転向させるプーリ36が設けられる。
【0087】
そして、このノズル移動機構30は、このノズル移動機構30が取付けられた上下方向接続部73dを所定の位置で停止させた状態で、
図10(a)に示す様に、第二アクチュエータ33の可動子33bが第二固定子33aの上位に位置し、その第二可動子33bに第一固定子32aが取付けられた第一アクチュエータ32の第一可動子32bもその第一固定子32aの上位に位置する場合に、その第一可動子32bに昇降板74を介して取付けられたノズル11がステータコア63のスロット63cを通過する上方に位置するように構成される。
【0088】
一方、このノズル移動機構30は、このノズル移動機構30が取付けられた上下方向接続部73dを所定の位置で停止させた状態で、
図10(c)に示す様に、第二アクチュエータ33の第二可動子33bが第二固定子33aの下位に位置し、その第二可動子33bに第一固定子32aが取付けられた第一アクチュエータ32の第一可動子32bも、その第一固定子32aの下位に位置する場合に、その第一可動子32bに昇降板74を介して取付けられたノズル11がステータコア13のスロット13cを通過する下方に至るように構成される。
【0089】
次に、このような巻線装置を用いた線材の巻線方法について説明する。
【0090】
先ず、線材12をノズル11に貫通させてノズル11の先端から繰出す。そして、巻線を始めるに当たり、駆動手段70はノズル移動機構30とともにノズル11を3次元方向に移動させ、線材12の端部を図示しない絡げピン又は線クランプ装置に絡げて固定する。その後、駆動手段70を駆動して、
図9に示すように、水平位置にあるノズル11をステータコア63における巻線を行おうとする磁極63bとそれに隣接する磁極63bとの間のスロット63cに移動させる。
【0091】
そして、次に実際の巻線が行われることになるけれども、この実際の巻線にあっては、ノズル移動機構30によりノズル11をZ軸方向に往復移動させるとともに、巻線される磁極63bが揺動するように支持装置68の図示しない揺動用サーボモータにより回転台68bをステータコア63とともに正回転及び逆回転させる。
【0092】
即ち、本発明の巻線方法は、磁極63bの揺動と、磁極間のスロット63cにおいて、ステータコア63の軸方向へのノズル11の移動の組み合わせにより、
図11に示す様に、ノズル11の先端を磁極63bの周囲に周回させて、そのノズル11の先端から繰出される線材12をその磁極63bに巻回させる方法である。
【0093】
磁極63bの揺動は、ノズル11の先端がスロット63cから抜け出た状態で開始し、そのノズル11の先端が隣接するスロット63cに対向した状態で終了させる。この磁極63bの揺動は、支持装置68における図示しない揺動用サーボモータを駆動させることにより行うことになる。
【0094】
一方、ステータコア63の軸方向へのノズル11の移動は、支持装置68における図示しない揺動用サーボモータによる磁極63bの揺動は行わずに、ノズル11の先端が巻線する磁極63bとそれに隣接する磁極63bにより挟まれるスロット63cに対向する場合に、ノズル移動機構30によりノズル11をZ軸方向に移動させることにより行われる。
【0095】
このようなノズル11のスロット63cにおける移動と、磁極63bの揺動を交互に行うことにより、
図11に示す様に、ノズル11を磁極63bの断面形状に沿ってその磁極63bの周囲に回転移動させることが可能となる。
【0096】
そして、本発明のノズル移動機構30によるノズル11の移動は、このノズル移動機構30が取付けられた上下方向接続部73dを所定の位置に停止させた状態で、
図10に示すように、ノズル11が固定された可動台34を昇降板74と共に第一アクチュエータ32により往復移動させるとともに、その移動と同時に、第二アクチュエータ33により、その第一アクチュエータ32を可動台34及び昇降板74の移動方向と同一方向に更に移動させることにより行う。
【0097】
即ち、
図10(a)に示すように、ステータコア63の上方に位置するノズル11を下方に移動させる場合には、
図10(b)に示すように、ノズル11が固定された可動台34を昇降台74とともに第一アクチュエータ32により下方に移動させる。その移動と同時に、第二アクチュエータ33により、その第一アクチュエータ32を下降させることになり、
図10(c)に示すように、そのノズル11がスロット63cを通過して、ステータコア63の下方に至った状態でその移動を停止させることになる。
【0098】
一方、
図10(c)に示すように、ステータコア63の下方に位置するノズル11を上方に移動させる場合には、
図10(d)に示すように、ノズル11が固定された可動台34を昇降板74とともに第一アクチュエータ32により上方に移動させる。その移動と同時に、第二アクチュエータ33により、その第一アクチュエータ32を上昇させることになり、
図10(e)に示すように、そのノズル11がスロット63cを通過して、ステータコア63の上方に至った状態でその移動を停止させることになる。
【0099】
すると、ノズル移動機構30によるノズル11のスロット63cにおけるZ軸方向に向かう移動速度Zvは、
図10(b)及び(d)に示す様に、第一アクチュエータ32がノズル11を移動させる移動速度Z1vと、第二アクチュエータ33がその第一アクチュエータ32を更に同方向に移動させる移動速度Z2vの和と成る。従って、単一のアクチュエータによりノズル11を移動させる従来に比較して、本発明の巻線方法では、ノズル11のZ軸方向に向かう移動速度Zvを倍増させることが可能となるのである。
【0100】
一方、巻線される磁極63bの揺動は、ステータコア63を往復回転させることにより行われ、その回転は支持装置68における図示しない揺動用サーボモータにより行われる。このステータコア63の往復回転は、巻線の対象である磁極63bとそれに隣接する磁極63bの成す角度に相当する角度で図示しない揺動用サーボモータを正転及び逆転させることにより行われる。
【0101】
従って、ノズル11を一往復させるとともに図示しない揺動用サーボモータを僅かな角度で正転及び逆転させるだけで、ノズル11を磁極63bの周囲に1回回転移動させることができる。この結果、ネジ軸を複数回回転させなければノズルを磁極の周囲に1回回転移動させることができなかった従来に比較して、巻線速度の高速化を図ることができる。
【0102】
また、この別の実施の形態における巻線装置60では、ノズル移動機構30とともにノズル11を3次元方向に移動させる駆動手段70を備える。けれども、この駆動手段70は、巻線する磁極63bを変更する場合や、ノズル11の先端から繰り出される線材12の端部を図示しない絡げピン又は線クランプ装置に絡げて固定する場合等のように、ノズル11を大きく移動させる場合に用いられる。
【0103】
このため、この駆動手段70は、ノズル11をノズル移動機構30とともにZ軸に沿って上下動させる上下方向駆動部73を備えるけれども、磁極63bの周囲にノズル11を回転移動させて巻線する際にこの上下方向駆動部73を用いない。よって、この上下方向駆動部73における上下方向駆動源73eとして、高速からの急加減速を行い得る高トルク、高応答のサーボモータを用いることを必要としない。
【0104】
そして、図示しない揺動用サーボモータにあっては僅かな角度で正転及び逆転を繰り返すことにより磁極63bを揺動させることができる。よって、標準品として市販されているサーボモータをこの別の巻線装置60の上下方向駆動源73eや、図示しない揺動用サーボモータとして用いることにより、巻線装置60の単価を押し上げることなく巻線速度の高速化を図ることができるのである。
【0105】
また、線材12を磁極63bに整列巻きさせるためには、ノズル11を磁極63bの周囲に回転移動させるとともに、線材12の一巻きごとに線材12の直径分だけ前後方向駆動部71によりノズル11をノズル移動機構30とともにX軸方向に移動させることが必要である。
【0106】
このノズル11をX軸方向に移動させるには、前後方向駆動部71の前後方向駆動源71eを駆動して前後方向接続部71dをX軸方向に移動させることにより行われる。けれども、その移動量は線材12の一巻きごとに線材12の直径分だけであるので極めて少なく、前後方向駆動源71eを高速で駆動させる必要はない。
【0107】
よって、この前後方向駆動源71eとしてサーボモータを用いる場合にあっても、標準品として市販されているものを使用することができ、巻線装置60の単価を押し上げることなく高速で整列巻きし得る巻線装置60を得ることができるのである。
【0108】
なお、上述した実施の形態では、ノズル移動機構30が単一の第一リニアモータ32の固定子32bを単一の第二リニアモータ33の可動子33bに取付けて、単一のノズル11を単一のステータコア13,63の軸方向に移動させる場合を説明した。
【0109】
けれども、複数のアクチュエータ32,33を備える本発明のノズル移動手段30は、1又は2以上のノズル11をそれぞれ移動させる複数の第一アクチュエータ32を、単一の第二アクチュエータ33により、ステータコア13,63の軸方向に同時に又は別々に移動させる様なものであっても良い。
【0110】
例えば、
図13及び
図14に示すように、第二アクチュエータである第二リニアモータ33の可動子33bに、その移動方向に直交する渡り板81を設け、その渡り板81の両側に第一アクチュエータ32の固定子32aをそれぞれ取付け、その第一アクチュエータ32の可動子32bに、ノズル11を有する可動台34をそれぞれ取付けるようにしても良い。これにより、ノズル移動機構30は、二つのノズル11を移動させるようなものとなる。
【0111】
図14には、
図13に示すノズル移動機構30を有する巻線装置80を示す。この
図14に示す巻線装置80は、X軸に沿ってノズル移動機構30を移動させる前後方向駆動部87を介してそのノズル移動機構30を機台14に取付けたものを示す。この前後方向駆動部87は、駆動方向であるX軸に沿って機台14に配された前後方向ガイド87aと、その前後方向ガイド87aに平行に配され表面に螺旋状の雄ねじが配される前後方向回転軸87bと、前後方向回転軸87bを回転駆動する前後方向駆動源87cとが配されるものとする。
【0112】
図13に示すノズル移動機構30は二つのノズル11を移動させるものであるので、このノズル移動機構30を有する
図14に示す巻線装置80は、そのノズル移動機構30が移動させる二つのノズル11に対向させて、ステータコアを支持する支持具及びそれを回転させてステータコアの磁極を揺動させるステータコア動作機構となる揺動用サーボモータ19が設けられたテーブル16が機台14に二つ設けられるものとする。
【0113】
このような巻線装置80であって、ノズル11の図示しないステータコアのスロットにおける移動と、そのステータコアにおける磁極の揺動を交互に行うことにより、ノズル11を磁極の断面形状に沿ってその磁極の周囲に回転移動させることが可能となる。そして、このような巻線装置80であれば、単一のノズル移動機構30しか備えていないにもかかわらず、ノズル11の数に等しい二つのステータコア13を同時に巻線することが可能となる。
【0114】
そして、ノズル移動機構30によるノズル11の移動は、
図13(a)に示すように、ステータコア63の上方に位置するノズル11を下方に移動させる場合には、
図13(b)に実線矢印で示すように、ノズル11が固定された可動台34を渡り板81の両側における第一アクチュエータ32により下方にそれぞれ移動させ、その移動と同時に、第二アクチュエータ33により、渡り板81とともに両側の第一アクチュエータ32をそれぞれ下降させることになる。そして、
図13(c)に示すように、それらのノズル11が下方に至った状態でその移動を停止させることになる。
【0115】
一方、
図13(c)に示すように、下方に位置するノズル11を上方に移動させる場合には、
図13(b)に破線矢印で示すように、ノズル11が固定された可動台34を渡り板81の両側における第一アクチュエータ32により上方にそれぞれ移動させ、その移動と同時に、第二アクチュエータ33により、渡り板81とともに両側の第一アクチュエータ32をそれぞれ上昇させることになる。そして、
図13(a)に示すように、そのノズル11が上方に至った状態でその移動を停止させることになる。
【0116】
従って、ノズル移動機構30による2つのノズル11を移動させようとしても、そのノズル11の移動速度Zvは、
図13(b)に示す様に、第一アクチュエータ32がノズル11を移動させる移動速度と、第二アクチュエータ33がその第一アクチュエータ32を更に同方向に移動させる移動速度の和と成り、従来よりノズル11の移動速度Zvを倍増させることが可能となり、その巻線速度を従来よりも向上させることが可能となるのである。
【0117】
このように、ノズル移動機構30が、ノズル11を移動させる複数の第一アクチュエータ32と、それらを移動させる単一の第二アクチュエータ33とを備えた場合、その第一アクチュエータ32の数以上のノズル11を素早く移動させることが可能になり、その数に等しいステータコアの巻線を同時に行うことが可能になる。
【0118】
従って、
図15に示す様に、3個の第一アクチュエータ32を単一の第二アクチュエータ33により移動させるようにすれば、3個のノズル11を素早く移動させることが可能になり、その数に等しい3台のステータコアの巻線を同時に行うことが可能になる。
【0119】
また、
図16に示す様に、2個の第一アクチュエータ32のそれぞれの可動子32bに渡り片82を介してそれぞれ2つのノズル11を設け、これにより、2個の第一アクチュエータ32がそれぞれ2つのノズル11を同時に移動させるようにし、これら2個の第一アクチュエータ32を単一の第二アクチュエータ33により更に移動させるようにすれば、4個のノズル11を素早く移動させることが可能になり、その数に等しい4台のステータコアの巻線を同時に行うことが可能となって、更なるタクトアップが期待できる。
【0120】
また、上述した実施の形態では、ノズル移動機構30を構成する第一及び第二アクチュエータ32,33が、それぞれ固定子32a,33aの長手方向に可動子32b,33bを移動させるリニアモータである場合を説明した。けれども、これらのアクチュエータは、段階的に設けられてノズルを比較的高速に移動し得る限り、ボールネジを回転させて、それに螺合された可動台(可動子)を移動させる従来から用いられているアクチュエータを組み合わせるようにしても良い。
【0121】
更に、上述した別の実施の形態における巻線装置60では、ノズル移動機構30とともにノズル11を3次元方向に移動させる駆動手段70を備え、この駆動手段70における上下方向駆動部73は、ノズル11を大きく移動させる場合に用いられるとして、磁極63bの周囲にノズル11を回転移動させて巻線する際にこの上下方向駆動部73を用いないとした。
【0122】
けれども、この上下方向駆動部73を、磁極63bの周囲にノズル11を回転移動させて巻線する際に用いるようにしても良い。すると、この上下方向駆動部73は、巻線時にノズル11を第一及び第二アクチュエータ32,33とともにZ軸に沿って上下動させるアクチュエータ(上下方向駆動部73)となり、この場合のノズル移動機構30は、これら3つのアクチュエータから成るものとなり、その巻線速度を更に速めることが期待されることになる。
【符号の説明】
【0123】
10,60,80 巻線装置
11 ノズル
12 線材
13,63 ステータコア
13b,63b 磁極
19 揺動用サーボモータ(ステータ動作機構)
19a 回転軸
30 ノズル移動機構
32 第一アクチュエータ(第一リニアモータ)
33 第二アクチュエータ(第二リニアモータ)
32a,33a 固定子
32b,33b 可動子