(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138754
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】運転支援装置、及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049420
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】奥田 知之
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 勘一
(72)【発明者】
【氏名】新内 悟
(72)【発明者】
【氏名】田替藤 哲雄
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により、自車両が逆走しているか否かを容易に判定できる運転支援装置、及び運転支援方法を提供する。
【解決手段】運転支援装置10は、車両が走行する車線を含み、走行中に撮影された車両の前方及び後方の少なくとも一方の道路の画像を取得する画像取得部21と、取得した画像における道路の制限速度を示す道路標示に含まれる特定数字を認識する認識部25と、車両に対する道路標示の撮影方向と、画像の道路標示における特定数字の位置とに基づき、車両が道路を逆走しているか否かを判定する逆走判定部26と、逆走と判定された場合に、警告部13を介して、運転者に対して警告する警告制御部22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する車線を含み、走行中に撮影された前記自車両の前方及び後方の少なくとも一方の道路の画像を取得する画像取得部と、
取得した前記画像における前記道路の制限速度を示す道路標示に含まれる特定数字を認識する認識部と、
前記自車両に対する前記道路標示の撮影方向と、前記画像の前記道路標示における前記特定数字の位置とに基づき、前記自車両が前記道路を逆走しているか否かを判定する逆走判定部と、
逆走と判定された場合に、警告部を介して、運転者に対して警告する警告制御部と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記特定数字は0であり、
前記自車両の前方を撮影した前記画像における0の位置が、該画像を前記撮影方向に沿って見た時に、前記道路標示の左端にある場合、または前記自車両の後方を撮影した前記画像における0の位置が、該画像を前記撮影方向に沿って見た時に、前記道路標示の右端にある場合、前記逆走判定部は、前記自車両が前記道路を逆走していると判定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記逆走判定部は、同一または複数の前記画像に示される複数の前記道路標示における各特定数字の位置の組み合わせに基づき、前記自車両が前記道路を逆走している確度を判定し、
前記警告制御部は、前記逆走の確度に応じて警告内容を変更する、請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記自車両が走行する道路に関する道路情報を取得する道路情報取得部を備え、
前記認識部は、前記道路情報に含まれる道路種別または制限速度に関する情報に基づいて、前記画像における前記道路の制限速度を示す道路標示に含まれる文字列を優先的に探して、前記特定数字を認識する、請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項5】
自車両が走行する車線を含み、走行中に撮影された前記自車両の前方及び後方の少なくとも一方の道路の画像を取得するステップと、
取得した前記画像における前記道路の制限速度を示す道路標示に含まれる特定数字を認識するステップと、
前記自車両に対する前記道路標示の撮影方向と、前記画像の前記道路標示における前記特定数字の位置とに基づき、前記自車両が前記道路を逆走しているか否かを判定するステップと、
逆走と判定された場合に、警告部を介して、運転者に対して警告するステップと、
を運転支援装置が実行する運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両は、道路の中央(中央線)から左側部分を通行することが道路交通法に規定されており、右側部分を走行する行為(いわゆる逆走行為)は禁じられている。特許文献1には、地図情報を有し、走行中の車両の地図上の自車位置を取得する自車位置取得手段と、車両の進行方向又は進行方向逆側の道路にある表示情報を撮像する撮像手段と、自車位置取得手段により取得された自車位置が一方通行路内であるときに、撮像手段により撮像された表示情報の向きに基づいて、車両が一方通行路を逆走しているか否かを判定する逆走判定手段を備えた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、自車位置を取得するための地図情報を含む自車位置取得手段に加え、逆走判定をするための参照画像を用意する必要があり、装置構成が煩雑となる点で、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な構成により、自車両が逆走しているか否かを容易に判定できる運転支援装置、及び運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る運転支援装置は、自車両が走行する車線を含み、走行中に撮影された自車両の前方及び後方の少なくとも一方の道路の画像を取得する画像取得部と、取得した画像における道路の制限速度を示す道路標示に含まれる特定数字を認識する認識部と、自車両に対する道路標示の撮影方向と、画像の道路標示における特定数字の位置とに基づき、自車両が道路を逆走しているか否かを判定する逆走判定部と、逆走と判定された場合に、警告部を介して、運転者に対して警告する警告制御部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る運転支援方法は、自車両が走行する車線を含み、走行中に撮影された自車両の前方及び後方の少なくとも一方の道路の画像を取得するステップと、取得した画像における道路の制限速度を示す道路標示に含まれる特定数字を認識するステップと、自車両に対する道路標示の撮影方向と、画像の道路標示における特定数字の位置とに基づき、自車両が道路を逆走しているか否かを判定するステップと、逆走と判定された場合に、警告部を介して、運転者に対して警告するステップと、を運転支援装置が実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成により、自車両が逆走しているか否かを容易に判定できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る運転支援装置が撮影した前方画像を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、第一実施形態に係る運転支援装置の制御部の動作の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第一実施形態に係る運転支援装置が撮影した後方画像を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、第一実施形態に係る運転支援装置が、逆走時に撮影した前方画像を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、第一実施形態に係る運転支援装置が、逆走時に撮影した後方画像を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る運転支援装置が撮影した前方画像を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態に係る運転支援装置の制御部の動作の手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第二実施形態に係る運転支援装置が撮影した前方画像を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、第二実施形態に係る運転支援装置が撮影した前方画像を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る運転支援装置、及び運転支援方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、第一実施形態に係る運転支援装置が撮影した前方画像を説明するための模式図である。
図1に示す運転支援装置10は、自車両(以下、単に車両という)が道路を逆走しているか否かを監視して、逆走している場合には、運転者に対して逆走している旨を警告する運転支援を行うものである。ここで、『逆走』とは、通行方向が規定されている道路を、この通行方向と反対方向に走行することをいう。具体的には、日本国内では、通行方向として、道路の中央(中央線や中央分離帯)より左側部分を通行することが規定されている。このため、『逆走』は、道路の中央より右側部分を通行したり、一方通行の道路を反対方向に通行したりすることをいう。なお、道路における左右の方向は、車両が前進する場合を基準に規定される。本実施形態において、『道路』は、通行方向が規定されているものであれば、一般道路でもよいし、高速道路であってもよいが、例えば、道路の中央が規定されておらず、どちらの方向にも通行が可能なものは含まない。
【0012】
運転支援装置10は、
図1に示すように、前方カメラ11と、後方カメラ12と、警告部13と、記憶部14と、GPS(Global Positioning System)受信部15と、制御部(運転支援制御装置)20とを備える。
【0013】
前方カメラ11は、車両の前方を向いて配置されて、この車両の前方を撮影する。前方カメラ11は、例えば、車両の20~30m前方の範囲を撮影する。前方カメラ11は、少なくとも車両が走行する車線(道路)における前方の路面を撮影するが、この車線の左右に位置する領域も併せて撮影してもよい。この左右に位置する領域は、例えば、車両が走行(前進)する車線の左側または右側に隣接する走行車線や、道路の中央を挟んで右側に位置する対向車線(反対車線)、走行する車線の左側に位置する路肩や歩道などを含む。前方カメラ11は、撮影した画像データを制御部20の画像取得部21に出力する。この画像データは、例えば毎秒30フレームの画像から構成される動画像である。
【0014】
後方カメラ12は、車両の後方を向いて配置されて、この車両の後方を撮影する。後方カメラ12は、例えば、車両の10~20m後方の範囲を撮影する。後方カメラ12は、少なくとも車両が走行する車線(道路)における後方の路面を撮影するが、前方カメラ11と同様に、この車線の左右に位置する領域も併せて撮影してもよい。後方カメラ12は、撮影した画像データを制御部20の画像取得部21に出力する。
【0015】
警告部13は、車両が逆走している場合に、運転者に対してその旨を警告する。警告部13は、例えば車室内に取り付けられたスピーカとして構成され、運転者に対して、例えば『この車両は道路を逆走しています。大至急、車両を道路の端によせて安全な場所に停止してください』といったメッセージを音声によって警告することができる。なお、警告部13は、車室内に配置されて上記したメッセージを表示する表示部を更に備える構成としてもよい。
【0016】
記憶部14は、制御部20で使用するプログラム及び各種情報を記憶する記憶装置である。記憶部14は、道路情報を記憶する。道路情報は、いわゆる地図情報であり、例えば、高速道路、国道、県道等のように区分けされた道路種別と、この道路種別または道路ごとに設定された制限速度とを含む。記憶部14は、記憶している道路情報を制御部20の道路情報取得部23に出力する。なお、記憶部14は、例えば、通信可能に接続される外部サーバ等の記憶装置であってもよい。
【0017】
GPS受信部15は、図示しないGPS衛星から電波を受信する。GPS受信部15は、受信した電波の信号を制御部20の位置情報取得部24へ出力する。
【0018】
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置である。制御部20は、不図示のバスにそれぞれ接続された、画像取得部21と、警告制御部22と、道路情報取得部23と、位置情報取得部24と、認識部25と、逆走判定部26とを備える。
【0019】
画像取得部21は、前方カメラ11及び後方カメラ12がそれぞれ撮影した、車両の前方及び後方の画像データを取得する。画像取得部21は、車両が走行する車線を含み、走行中に撮影された車両の前方及び後方の道路の画像データを取得する。この画像データは、撮影した前方カメラ11及び後方カメラ12の識別情報が付加され、車両の前方を撮影した画像(以下、前方画像という)のデータと、車両の後方を撮影した画像(以下、後方画像)のデータとを識別可能となっている。取得した画像データは、認識部25に出力される。
【0020】
具体的には、
図2に示すように、前方カメラ11が撮影した前方画像31(撮影方向を区別しない時には単に画像30という)には、車両1が走行する車線2の路面に、この車線2(道路)の制限速度を示す道路標示35が記されている。本実施形態では、前方画像31には、少なくとも車両1が走行する車線2を含む領域が撮影されている。
【0021】
警告制御部22は、警告部13を介して、運転者に対する警告動作を制御する。本実施形態では、警告制御部22は、車両が逆走していると判定された場合に、この逆走している旨を、運転者に対して警告する音声メッセージを生成する。さらに、警告制御部22は、例えば図示しない車両制御装置に制御信号を出力して緊急にブレーキを作動させてもよい。
【0022】
道路情報取得部23は、記憶部14から道路情報を取得する。具体的には、道路情報取得部23は、車両の現在位置を含む所定領域内の道路情報を取得する。この道路情報は、例えば、高速道路、国道、県道等のように区分けされた道路種別と、この道路種別または道路ごとに設定された制限速度に関する情報を含む。
【0023】
位置情報取得部24は、車両の現在位置を示す現在位置情報を取得する。本実施形態では、位置情報取得部24は、GPS受信部15が取得したGPS信号に基づいて、車両の現在位置情報を取得する。
【0024】
認識部25は、画像取得部21が取得した画像における道路の制限速度を示す道路標示に含まれる特定数字を認識する。ここで、特定数字とは、通常の形状と上下反転した場合の形状とがほぼ同一となる数字をいい、予め設定されており、例えば、0、1、8を含む。本実施形態では、制限速度で使用される数字には、一般的に0が多いため、特定数字として『0』を例示して説明する。認識部25は、前方画像31における車線2(道路)の制限速度を示す道路標示35に含まれる特定数字37(
図2の例では0)と、道路標示35における特定数字37の位置とを認識する。特定数字37とその位置の認識においては、パターンマッチング法、エッジ検出法等の公知技術を用いてもよい。また、認識部25は、道路情報取得部23により取得された道路情報に、道路種別または制限速度が含まれている場合、この道路種別または制限速度に基づき、上記した画像における制限速度の文字列を優先的に探して、特定数字37を認識する。すなわち、道路情報取得部23により取得された道路情報に、制限速度(例えば40km)が含まれている場合、この制限速度に基づき、前方画像31における制限速度(40)の文字列を優先的に探して、道路標示35における特定数字37(
図2の例では0)の位置を認識する。認識部25は、特定数字37を認識した場合に、この特定数字37と、道路標示35における特定数字37の位置(
図2の例では右端)とを逆走判定部26に出力する。
【0025】
逆走判定部26は、車両に対する道路標示の撮影方向と、撮影された画像の道路標示における特定数字の位置とに基づき、車両が道路を逆走しているか否かを判定する。逆走判定部26は、撮影された道路標示の画像を撮影方向に沿って見た場合に、この道路標示における特定数字の位置に基づき、車両が道路を逆走しているか否かを判定する。
図2の例では、前方画像31を撮影方向に沿って見た場合に、この前方画像31中の道路標示35における特定数字37(
図2の例では0)は、道路標示35の右端に位置している。このため、逆走判定部26は、特定数字37が道路標示35の正規な位置にあると判定することにより、車両1は車線2(道路)を逆走していないと判定する。
【0026】
次に、運転支援装置10の動作について説明する。
図3は、第一実施形態に係る運転支援装置の制御部の動作の手順を示すフローチャートである。
図4は、第一実施形態に係る運転支援装置が撮影した後方画像を説明するための模式図である。
図5は、第一実施形態に係る運転支援装置が、逆走時に撮影した前方画像を説明するための模式図である。
図6は、第一実施形態に係る運転支援装置が、逆走時に撮影した後方画像を説明するための模式図である。
【0027】
図3に示すように、制御部20は、撮影された画像を取得する(ステップS11)。具体的には、制御部20は、画像取得部21により、前方カメラ11及び後方カメラ12がそれぞれ撮影した前方画像及び後方画像のデータを取得する。取得した前方画像及び後方画像は、随時、制御部20の認識部25に出力される。
【0028】
次に、制御部20は、車両の現在位置情報に基づき、道路情報を取得する(ステップS12)。具体的には、制御部20は、位置情報取得部24により、車両の現在位置を示す現在位置情報を取得し、道路情報取得部23により、車両の現在位置を含む所定領域内の道路情報を取得する。
【0029】
次に、制御部20は、認識部25により、取得した道路情報に、道路種別または道路ごとに設定された制限速度に関する情報が含まれるか否かを判定する(ステップS13)。この判定において、取得した道路情報に、道路種別または道路ごとに設定された制限速度に関する情報が含まれている場合(ステップS13;Yes)には、制御部20は、認識部25により、走行中の車線に制限速度の文字列を探す(ステップS14)。具体的には、道路情報取得部23により取得された道路情報に、制限速度(例えば40km)が含まれている場合、認識部25は、
図2及び
図5に示すように、この制限速度に基づき、前方画像31における制限速度を示す道路標示35の文字列『40』を優先的に探す。また、道路情報取得部23により取得された道路情報に、制限速度(例えば40km)が含まれている場合、認識部25は、
図4及び
図6に示すように、この制限速度に基づき、後方画像32における制限速度を示す道路標示35の文字列『40』を優先的に探す。制御部20は処理をステップS15に移行する。
【0030】
一方、上記判定において、取得した道路情報に、道路種別または道路ごとに設定された制限速度に関する情報が含まれていない場合(ステップS13;No)には、制御部20は、認識部25により、走行中の車線の制限速度における特定数字37の『0』の位置を認識する(ステップS15)。具体的には、制御部20は、認識部25により、取得した前方画像31または後方画像32における走行中の車線2の制限速度を示す道路標示35中の特定数字37の『0』の位置を認識する。
【0031】
次に、制御部20は、逆走判定部26により、前方画像31で特定数字37の『0』の位置が右端、または後方画像32で特定数字37の『0』の位置が左端のいずれかの条件を満たすか否かを判定する(ステップS16)。具体的には、制御部20は、逆走判定部26により、前方画像31における特定数字37の『0』の位置が、
図2及び
図5に示すように、この前方画像31を撮影方向に沿って見た時に、道路標示35の右端にあるか否か、または、後方画像32における特定数字37の『0』の位置が、
図4及び
図6に示すように、この後方画像32を撮影方向に沿って見た時に、道路標示35の左端にあるか否かを判定する。
【0032】
この判定において、制御部20は、逆走判定部26により、前方画像31で特定数字37の『0』の位置が右端、または後方画像32で特定数字37の『0』の位置が左端のいずれかの条件も満たす場合(ステップS16;Yes)、制御部20は、逆走判定部26により、車両1は車線2を正しく走行していると判定して、処理を終了する。具体的には、前方画像31における特定数字37の『0』の位置が、
図2に示すように、この前方画像31を撮影方向に沿って見た時に、道路標示35の右端にある場合、または、後方画像32における特定数字37の『0』の位置が、
図4に示すように、この後方画像32を撮影方向に沿って見た時に、道路標示35の左端にある場合、制御部20は、逆走判定部26により、車両1は車線2を正しく走行していると判定して、処理を終了する。
【0033】
一方、上記判定において、制御部20は、逆走判定部26により、前方画像31で特定数字37の『0』の位置が右端、または後方画像32で特定数字37の『0』の位置が左端のいずれかの条件も満たさない場合(ステップS16;No)、制御部20は、逆走判定部26により、車両1は車線2を逆走していると判定して、警告メッセージを出力する(ステップS17)。具体的には、前方画像31における特定数字37の『0』の位置が、
図5に示すように、この前方画像31を撮影方向に沿って見た時に、道路標示35の左端にある場合、または、後方画像32における特定数字37の『0』の位置が、
図6に示すように、この後方画像32を撮影方向に沿って見た時に、道路標示35の右端にある場合、制御部20は、警告制御部22により、運転者に対して、例えば『この車両は道路を逆走しています。大至急、車両を道路の端によせて安全な場所に停止してください』といった警告メッセージを音声によって出力する。そして、制御部20は、処理を終了する。
【0034】
本実施形態では、車両1に対する道路標示35の撮影方向と、前方画像31または後方画像32における制限速度を示す道路標示35に含まれる特定数字37の『0』の位置と、に基づき逆走判定をするため、簡単な構成により、車両1が車線2(道路)を逆走しているか否かを容易に判定できる。
【0035】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る運転支援装置について説明する。第一実施形態では、車両1が実際に走行する車線2において、車両1に対する道路標示35の撮影方向と、前方画像31または後方画像32における制限速度を示す道路標示35に含まれる特定数字37の『0』の位置と、に基づき逆走判定をする構成とした。これに対して、この第二実施形態では、走行する車線2と、この車線2の左右に隣接する車線とを含む画像に示される複数の道路標示35に含まれる各特定数字37の『0』の位置の組み合わせに基づき、車両1が道路を逆走している確度を判定し、この逆走の確度に応じて警告内容を変更する。この第二実施形態では、運転支援装置10の構成は第一実施形態とほぼ同一であるが、前方カメラ11、後方カメラ12、警告制御部22、認識部25、及び逆走判定部26の動作が多少異なる。
【0036】
図7は、第二実施形態に係る運転支援装置が撮影した前方画像を説明するための模式図である。前方カメラ11は、車両の前方を向いて配置されて、この車両の前方を撮影する。前方カメラ11は、例えば、車両の20~30m前方の範囲を撮影する。前方カメラ11は、車両1が走行する車線2(道路)と、この車線2の左右に位置する領域も併せて撮影する。
図7の例では、車両1が走行(前進)する車線2の左側に隣接する走行車線3と、上記車線2の右側に隣接する対向車線4とを含む。前方カメラ11は、前方画像51として、車線2、走行車線3及び対向車線4を同時に撮影することができる。なお、走行車線3は、車線2の左側に位置する路肩や歩道などであってもよいし、対向車線4は、車線2の右側に隣接する走行車線であってもよい。
【0037】
前方カメラ11が撮影した前方画像51(撮影方向を区別しない時には単に画像50という)は、3つに区分けされており、中央領域51Aは、車両1が走行する車線2に対応する。また、左側領域51Bは、車線2の左側に隣接する走行車線3に対応し、右側領域51Cは、車線2の右側に隣接する対向車線4に対応する。
【0038】
後方カメラ12は、前方カメラ11と同様に、上記した3つの車線2、走行車線3及び対向車線4を同時に撮影することができ、後方画像(不図示)もまた3つの領域に区分けされている。
【0039】
認識部25は、画像取得部21が取得した画像50における各車線の制限速度を示す道路標示に含まれる特定数字(
図7の例では『0』)をそれぞれ認識する。すなわち、実際に走行する車線2だけでなく、この車線2の左右に隣接する領域に存在し得る特定数字をそれぞれ認識する。
【0040】
逆走判定部26は、画像50(例えば前方画像51)に示される複数の道路標示35における各特定数字37の『0』の位置の組み合わせに基づき、車両1が道路を逆走している確度を判定する。
図7の例では、前方画像51は、中央領域51A内(車線2)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が右端であり、左側領域51B内(走行車線3)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が右端である。このため、逆走判定部26は、これらの組み合わせに基づき、車両1が道路を逆走している確度を低く(例えば0%)と判定する。なお、逆走判定部26は、少なくとも2組の道路標示35における特定数字37の『0』の位置の組み合わせにより、逆走の確度を判定することができ、例えば、2組とも逆走の場合は、逆走している確度を高く(例えば100%)とし、1組のみが正常または逆走の場合には、逆走している確度を基準(例えば50%)とすることができる。
【0041】
警告制御部22は、上記した逆走している確度に応じて警告内容を変更する。警告制御部22は、逆走している確度が高い(例えば100%)場合には、運転者に対して、例えば『この車両は道路を逆走しています。大至急、車両を道路の端によせて安全な場所に停止してください』といった警告メッセージを音声によって出力するとともに、車両制御装置に制御信号を出力して緊急にブレーキを作動させて、車両速度を低下(もしくは車両を停止)する。また、警告制御部22は、逆走している確度が基準(例えば50%)の場合には、運転者に対して、『この車両は道路を逆走している可能性があります。車両の速度を低下させて周囲の車両に注意してください。』といった注意喚起メッセージを音声によって出力する。また、逆走している確度が低い(例えば0%)場合には、何もメッセージを出力しない。
【0042】
次に、第二実施形態に係る運転支援装置10の動作について説明する。
図8は、第二実施形態に係る運転支援装置の制御部の動作の手順を示すフローチャートである。
図9及び
図10は、第二実施形態に係る運転支援装置が撮影した前方画像の一例を示す模式図である。
図8において、ステップS21~ステップS23は、上記したステップS11~ステップS13と同一であるため、説明を省略する。
【0043】
ステップS13の判定において、取得した道路情報に、道路種別または道路ごとに設定された制限速度に関する情報が含まれている場合(ステップS23;Yes)には、制御部20は、認識部25により、走行中の車線及び隣接する車線に制限速度の文字列を探す(ステップS24)。具体的には、道路情報取得部23により取得された道路情報に、制限速度(例えば40km)が含まれている場合、認識部25は、
図7及び
図9~
図10に示すように、この制限速度に基づき、前方画像51の各領域51A~51C内に、制限速度を示す道路標示35の文字列『40』を優先的に探す。制御部20は処理をステップS25に移行する。
【0044】
一方、上記判定において、取得した道路情報に、道路種別または道路ごとに設定された制限速度に関する情報が含まれていない場合(ステップS23;No)には、制御部20は、認識部25により、走行中の車線及び隣接する車線の制限速度における特定数字37の『0』の位置を認識する(ステップS25)。具体的には、制御部20は、認識部25により、取得した前方画像31の各領域51A~51Cにおける各車線の制限速度を示す道路標示35中の特定数字37の『0』の位置を認識する。
【0045】
次に、制御部20は、逆走判定部26により、走行中の車線及び隣接する車線について、撮影方向と制限速度を示す道路標示35中の特定数字37の『0』の位置の組み合わせにより、車両1が道路を逆走している確度を判定する(ステップS26)。具体的には、
図7に示すように、前方画像51では、中央領域51A内(車線2)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が右端であり、左側領域51B内(走行車線3)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が右端である。更には、右側領域51C内(対向車線4)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が左端である。このため、逆走判定部26は、これらの組み合わせに基づき、車両1が道路を逆走している確度を低く(例えば0%)と判定する。また、
図9に示すように、前方画像51では、中央領域51A内(車線2)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が左端であり、左側領域51B内(走行車線3)の道路標示35における特定数字『0』の位置が右端である。更には、右側領域51C内(対向車線4)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が左端である。このため、逆走判定部26は、これらの組み合わせに基づき、車両1が道路を逆走している確度を高く(例えば100%)と判定する。また、
図10に示すように、前方画像51では、中央領域51A内(車線2)の道路標示35及び特定数字37の『0』の位置が不明であり、左側領域51B内(走行車線3)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が右端である。更には、右側領域51C内(対向車線4)の道路標示35における特定数字37の『0』の位置が左端である。このため、逆走判定部26は、これらの組み合わせに基づき、車両1が道路を逆走している確度を基準(例えば50%)と判定する。
【0046】
次に、制御部20は、判定された逆走の確度に応じて警告内容を決定し(ステップS27)、この決定した警告内容を実行する(ステップS28)。具体的には、逆走している確度が低い(例えば0%)場合には、制御部20は、警告制御部22により、何もメッセージを出力しない。また、逆走している確度が高い(例えば100%)場合には、制御部20は、警告制御部22により、運転者に対して、例えば『この車両は道路を逆走しています。大至急、車両を道路の端によせて安全な場所に停止してください』といった警告メッセージを音声によって出力するとともに、図示しない車両制御装置に制御信号を出力して緊急にブレーキを作動させて、車両速度を低下(もしくは車両を停止)する。また、逆走している確度が基準(例えば50%)の場合には、制御部20は、警告制御部22により、運転者に対して、『この車両は道路を逆走している可能性があります。車両の速度を低下させて周囲の車両に注意してください。』といった注意喚起メッセージを音声によって出力する。そして、処理を終了する。
【0047】
以上、本実施形態に係る運転支援装置10は、車両1が走行する車線2を含み、走行中に撮影された車両1の前方及び後方の少なくとも一方の道路の画像30を取得する画像取得部21と、取得した画像30における道路の制限速度を示す道路標示35に含まれる特定数字を認識する認識部25と、車両1に対する道路標示35の撮影方向と、画像30の道路標示35における特定数字37の位置とに基づき、車両1が道路を逆走しているか否かを判定する逆走判定部26と、逆走と判定された場合に、警告部13を介して、運転者に対して警告する警告制御部22と、を備える。この構成によれば、撮影された画像と撮影方向に関する情報といった簡素な構成により、車両1が車線2(道路)を逆走しているか否かを容易に判定できる。
【0048】
本実施形態に係る運転支援装置10において、特定数字37は『0』であり、車両1の前方を撮影した前方画像31における特定数字37の『0』の位置が、前方画像31を撮影方向に沿って見た時に、道路標示35の左端にある場合、または車両1の後方を撮影した後方画像32における特定数字37の『0』の位置が、後方画像32を撮影方向に沿って見た時に、道路標示35の右端にある場合、逆走判定部26は、車両1が道路を逆走していると判定する。この構成によれば、画像の撮影方向と、この画像中の道路標示35に含まれ、上下を逆さまにしても同じ数字に見える特定数字37の『0』の位置とに基づき、簡素な構成により、車両1が車線2(道路)を逆走しているか否かを容易に判定できる。夜間、悪天候、路面標示の経時劣化等、認識困難な場合においても簡素な判定方法であるため、逆走の判断、報知に有用である。
【0049】
また、本実施形態に係る運転支援装置10において、逆走判定部26は、同一または複数の画像50に示される複数の道路標示35における各特定数字37の『0』の位置の組み合わせに基づき、車両1が道路を逆走している確度を判定し、警告制御部22は、逆走の確度に応じて警告内容を変更するため、車両1が道路を逆走しているか否かを精度良く判定することができる。他の車線の道路標示35を含み特定数字37の組み合わせを逆走の判断に使用することで夜間、悪天候の状況、路面標示の経時劣化等、認識困難な場合においても簡素な判定方法であるため、逆走している可能性の判断、報知に有用である。
【0050】
また、本実施形態に係る運転支援装置10において、車両1が走行する道路に関する道路情報を取得する道路情報取得部23を備え、認識部25は、道路情報に含まれる道路種別または制限速度に関する情報に基づいて、画像30、50における文字列を優先的に探して、特定数字37の『0』を認識する。この構成によれば、画像30、50中に道路標示35以外の数字が画像内に映り込んだとしても、道路標示35及び特定数字37を迅速に探して認識できるため、車両1が道路を逆走しているか否かの判定を迅速に実行することができる。
【0051】
これまで本発明に係る運転支援装置について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。図示した運転支援装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0052】
運転支援装置の制御部の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0053】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【0054】
上記した実施形態において、車両1は走行しているため、同じ車線2の同一の道路標示35に対して、前方画像31と後方画像32とのシリーズ(連続的)な逆走判定を行ってもよい。この構成では、例えば、日射の影響によって、前方画像31または後方画像32の一方から道路標示35(特定数字37)を認識できない場合であっても、他方から道路標示35(特定数字37)を認識することで、逆走判定を行うことができる。
【0055】
また、前方カメラ11及び後方カメラ12で同時に撮影でき、かつ異なる位置に存在する複数の道路標示35を同時に撮影して、それぞれ画像認識に基づき、逆走判定してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、特定数字として、通常の形状と上下反転した場合の形状とがほぼ同一となる数字を認識する構成としたが、特定数字としての『0』を含まない制限速度を示す道路標示35に備えるため、例えば「15」(制限速度15Km)に対応するために、道路標示35に特定数字『0』を含むものが確認できないときは、特定数字を『5』とし、この『5』の上下反転パターンを認識の次候補としてものよい。
【符号の説明】
【0057】
1 車両
2 車線
10 運転支援装置
11 前方カメラ
12 後方カメラ
13 警告部
15 GPS受信部
20 制御部(運転支援制御装置)
21 画像取得部
22 警告制御部
23 道路情報取得部
24 位置情報取得部
25 認識部
26 逆走判定部
30、50 画像
31、51 前方画像
32 後方画像
35 道路標示
37 特定数字
51A 中央領域
51B 左側領域
51C 右側領域