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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138781
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】化合物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241002BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049455
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和博
【テーマコード(参考)】
5F102
5F152
【Fターム(参考)】
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR06
5F102GR09
5F102HC15
5F152LN10
5F152LN20
5F152MM05
5F152NN03
5F152NN05
5F152NN09
5F152NN13
5F152NN30
5F152NP09
5F152NQ09
(57)【要約】
【課題】貫通転位の形成密度を制御することによって性能を向上した化合物半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態は、第1凹凸部を有する第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する半導体基板と、前記第1面上に設けられ、前記第1面に対向して配置された第3面と前記第3面の反対側に位置する第4面とを有し、前記第3面と前記第4面との間にヘテロ接合を有する半導体部と、前記第4面上に設けられた第1電極と、前記第4面上に設けられた第2電極と、前記第4面上で前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた制御電極と、を備える。前記半導体部は、前記第3面と前記第4面との間で、前記第1電極下の領域である第1領域と、前記第3面と前記第4面との間で、前記第2電極下の領域である第2領域と、を含む。前記第1凹凸部は、前記第1領域に対応する位置に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹凸部を有する第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する半導体基板と、
前記第1面上に設けられ、前記第1面に対向して配置された第3面と前記第3面の反対側に位置する第4面とを有し、前記第3面と前記第4面との間にヘテロ接合を有する半導体部と、
前記第4面上に設けられた第1電極と、
前記第4面上に設けられた第2電極と、
を備え、
前記半導体部は、
前記第3面と前記第4面との間で、前記第1電極下の領域である第1領域と、
前記第3面と前記第4面との間で、前記第2電極下の領域である第2領域と、
を含み、
前記第1凹凸部は、前記第1領域に対応する位置に設けられた化合物半導体装置。
【請求項2】
前記第4面上で前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた制御電極をさらに備えた請求項1記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板は、第2凹凸部を有し、
前記第2凹凸部は、前記第2領域に対応する位置に設けられた請求項1記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記半導体部は、前記ヘテロ接合よりも下方に設けられ、前記半導体層内の貫通転位の形成を阻害するマスク層を有し、
前記マスク層は、前記第1領域に対応する位置に第1開口を有し、
前記半導体層は、前記第1開口を介して連続して設けられた請求項1記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板は、第2凹凸部を有し、
前記第2凹凸部は、前記第2領域に対応する位置に設けられ、
前記マスク層は、前記第2領域に対応する位置に第2開口を有し、
前記半導体層は、前記第2開口を介して連続して設けられた請求項4記載の化合物半導体装置。
【請求項6】
前記第2面に設けられた導電層をさらに備えた請求項4記載の化合物半導体装置。
【請求項7】
前記第2電極と前記導電層との間に設けられた貫通電極をさらに備えた請求項6記載の化合物半導体装置。
【請求項8】
第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する半導体基板と、
前記第1面上に設けられ、前記第1面に対向して配置された第3面と前記第3面の反対側に位置する第4面とを有し、前記第3面と前記第4面との間にヘテロ接合を有する半導体部と、
前記第4面上に設けられた第1電極と、
前記第4面上に設けられた第2電極と、
を備え、
前記半導体部は、
前記第3面と前記第4面との間で、前記第1電極下の領域である第1領域と、
前記第3面と前記第4面との間で、前記第2電極下の領域である第2領域と、
を含み、
前記半導体部は、前記ヘテロ接合よりも下方に設けられ、前記半導体層内の貫通転位の形成を阻害するマスク層を有し、
前記マスク層は、前記第1領域に対応する位置に第1開口を有し、
前記半導体層は、前記第1開口を介して連続して設けられた化合物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、化合物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロ界面を有する化合物半導体装置では、化合物半導体の積層構造を成膜する際に、構成元素や格子定数の相違によりヘテロ界面から化合物半導体の表面に到達する貫通転位が発生する。貫通転位が電流経路に存在すると、抵抗値の増大やリーク電流の増大等を生ずることが知られている。
【0003】
貫通転位をゼロにすることは困難なため、貫通転位の形成密度を制御して、化合物半導体装置の性能を向上させたいとの要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-164929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の化合物半導体装置は、貫通転位の形成密度を制御することによって性能を向上した化合物半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、第1凹凸部を有する第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する半導体基板と、前記第1面上に設けられ、前記第1面に対向して配置された第3面と前記第3面の反対側に位置する第4面とを有し、前記第3面と前記第4面との間にヘテロ接合を有する半導体部と、前記第4面上に設けられた第1電極と、前記第4面上に設けられた第2電極と、を備える。前記半導体部は、前記第3面と前記第4面との間で、前記第1電極下の領域である第1領域と、前記第3面と前記第4面との間で、前記第2電極下の領域である第2領域と、を含む。前記第1凹凸部は、前記第1領域に対応する位置に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図2】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の一部を例示する模式的な平面図である。
図3図2のA-A線における模式的な断面図である。
図4図2のB-B線における模式的な断面図である。
図5】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の一部を例示する模式的な平面図である。
図6】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の一部を例示する模式的な平面図である。
図7図6のC-C線における模式的な断面図である。
図8図6のD-D線における模式的な断面図である。
図9】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の特性と比較例の化合物半導体装置の特性とを比較したグラフ図である。
図10】第2の実施形態に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図11】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の特性と比較例の化合物半導体装置の特性とを比較したグラフ図である。
図12】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の特性と第2の実施形態に係る化合物半導体装置の特性とを比較したグラフ図である。
図13】第2の実施形態の変形例に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図14】第2の実施形態の他の変形例に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図15】第2の実施形態の他の変形例に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図16】貫通転位の転位密度に対するパラメータの依存性を測定するための試験用サンプルの模式的な断面図である。
図17図16の試験用サンプルによる測定結果と対比するために作製した試験用サンプルの模式的な断面図である。
図18】貫通転位の転位密度に対するパラメータの依存性を測定するための試験用サンプルの模式的な断面図である。
図19】貫通転位の転位密度を変化させた場合のパラメータの依存性を示すグラフ図である。
図20】貫通転位の転位密度を変化させた場合のパラメータの依存性を示すグラフ図である。
図21】貫通転位の転位密度を変化させた場合のパラメータの依存性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る化合物半導体装置1は、半導体基板10と、半導体部30と、第1電極40aと、第2電極40bと、制御電極50と、を備える。半導体部30は、半導体基板10上に設けられる。第1電極40a、第2電極40bおよび制御電極50は、半導体部30上に設けられる。第2電極40bは、第1電極40aから離れて設けられる。制御電極50は、第1電極40aと第2電極40bとの間に設けられる。
【0010】
半導体基板10は、たとえば、SiCを含む。SiやAl(サファイア)を含んでもよい。半導体部30は、In、Ga、Alよりなる群から少なくとも1つと、N、PおよびAsよりなる群から少なくとも1つ選択された少なくとも2つの元素を含む化合物半導体で形成される。
【0011】
半導体基板10は、第1面11aと第2面11bとを有する。第2面11bは、第1面11aの反対側に位置する面である。第1面11aには、第1凹凸部12aと第2凹凸部12bとを含む。第1凹凸部12aおよび第2凹凸部12bは、たとえば、ナノインプリント技術により形成される。
【0012】
半導体部30は、第3面31aと第4面31bとを有する。第4面31bは、第3面31aの反対側に位置する面である。第3面31aは、半導体基板10の第1面11aに対向する位置に設けられている。第4面31b上には、第1電極40a、第2電極40bおよび制御電極50が設けられている。なお、以下では、XYZの3次元座標系を用いて説明することがある。X軸およびY軸を含むXY平面は、第4面31b平行であり、Z軸は、XY平面に直交する。第3面31aのうち凹凸部を含まない平坦な面は、第4面31bに平行であり、XY平面に平行である。Z軸の正方向は、第3面31aから第4面31bに向かう方向である。後述する第2の実施形態に係る化合物半導体装置およびその変形例では、XY平面は、第4面231bに平行である。
【0013】
第4面31b上には、絶縁膜62が設けられている。絶縁膜62は、第1電極40aおよび第2電極40bの側面を覆っている。絶縁膜62上には、さらに保護膜64が設けられている。保護膜64は、第1電極40a、制御電極50および第2電極40bの側面を覆っている。絶縁膜62は、各電極を相互の電気的に分離するために設けられている。保護膜64は、パッシベーション膜である。絶縁膜62および保護膜64は、絶縁物で形成され、たとえばシリコン窒化物を含む。
【0014】
半導体部30は、第1領域70aと第2領域70bとを含む。第1領域70aは、第3面31aと第4面31bとの間で、第1電極40a下の領域である。第2領域70bは、第3面31aと第4面31bとの間で、第2電極40b下の領域である。
【0015】
半導体基板10の第1凹凸部12aは、第1領域70a下に配置されている。半導体基板10の第2凹凸部12bは、第2領域70b下に配置されている。
【0016】
図1の具体例では、第1面11aと第3面31aとの間には、バッファ層20が設けられている。バッファ層20は、半導体基板10上に、半導体部30をエピタキシャル成長で成膜する際に半導体基板10と半導体部30との格子定数の相違を吸収し、半導体部30の形成を促進するために設けられる。バッファ層20は、たとえばAlNを含む。
【0017】
半導体部30は、第1半導体層31と、第2半導体層32と、を含む、第1半導体層31および第2半導体層32は、半導体基板10上にこの順で積層されている。第1半導体層32は、たとえば、GaNを含む。第2半導体層32は、たとえば、AlGaNを含む。第1半導体層31および第2半導体層32は、ヘテロ接合を形成し、GaNおよびAlGaNの格子定数の差による歪で、第1半導体層31の第2半導体層32との界面では、2次元電子ガス36が形成される。
【0018】
2次元電子ガス36は、多数キャリアである電子の走行層を形成し、電子は、第1電極40aと第2電極40bとの間を走行する。制御電極50は、第1電極40aと第2電極40bとの間に設けられているので、制御電極50による電界の制御により、電子の走行が制御される。化合物半導体装置1は、HEMT(High Electron Mobility Transistor)である。
【0019】
図1の半導体部30における破線で示すように、第1凹凸部12aに対応する第1領域70aおよび第2凹凸部12bに対応する第2領域70bでは、他の領域の貫通転位Tcの密度よりも、貫通転位Ta、Tbの密度が高い。図2図8に関連して後述するように、貫通転位は、結晶の成長面に形成された凹凸に応じて形成される。そのため、半導体部30において、第1領域70aおよび第2領域70bでは、他の領域よりも貫通転位の形成密度が高い。
【0020】
貫通転位が生じている領域では、多数キャリアは、貫通転位の形成方向に沿って走行するので、貫通転位の形成方向に沿った方向における抵抗値は低下する。そのため、第1電極40aおよび第2電極40bのそれぞれの下方に位置する第1領域70aおよび第2領域70bでは、第1電極40a下および第2電極40b下の抵抗値が低下する。より具体的には、第2半導体層32では、貫通転位Ta、Tbが形成された方向に電子が走行するので、第1電極40a下および第2電極40b下におけるコンタクト抵抗が貫通転位の密度に応じて低下する。
【0021】
第1凹凸部12aおよび第2凹凸部12bの具体例について説明する。以下の具体例では、第1凹凸部12aについて説明するが、第1凹凸部12aおよび第2凹凸部12bは、同一の構成を有しているので、第2凹凸部12bの説明は省略する。
図2は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の一部を例示する模式的な平面図である。
図3は、図2のA-A線における模式的な断面図である。
図4は、図2のB-B線における模式的な断面図である。
図2図4に示すように、第1凹凸部12aは、複数の凸部12a1を有する。複数の凸部12a1は、六方格子状に配列されている。凸部12a1は、円錐形状を有する。凸部12a1の直径は、X1であり、平面視で、隣り合う凸部12a1の中心間の距離であるピッチはX1である。
図2では、貫通転位Taは、白色の丸印で表されており、図3および図4では、破線で表されている。
【0022】
図2図4に示すように、貫通転位Taは、凸部12a1の頂部および谷部に形成される。凸部12a1の頂部とは、凸部12a1のうち、Z軸方向の高さがもっとも高い部分であり、凸部12a1の谷部とは、隣り合う2つの凸部12a1の間のZ軸方向の高さがもっとも低い部分である。貫通転位Taは、半導体基板10の第1面11aから傾斜した面上を成長する半導体部30の結晶格子が不整合となることで、頂部および谷部に形成される。
【0023】
図5は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の一部を例示する模式的な平面図である。
図5には、図2図4の例とは異なる形状の凸部12c1を有する第1凹凸部12cの変形例が示されている。
図5に示すように、凸部12c1を六角錐台とすることによって、凸部12c1を六方格子状に配置することができる。また、凸部12c1を六角錐台とした場合にも、貫通転位Taは、凸部12c1の頂部および谷部に形成される。
【0024】
図6は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の一部を例示する模式的な平面図である。
図7は、図6のC-C線における模式的な断面図である。
図8は、図6のD-D線における模式的な断面図である。
図6図8には、図2図4の例とは異なる形状の凸部12d1を有する第1凹凸部12dの変形例が示されている。第1凹凸部12dでは、凸部12d1の形状は、円錐台である。図示しないが、この例でも、図2図5の例と同様に、貫通転位は、頂部および谷部に形成される。
【0025】
図2図8に示すように、凸部は、X軸方向にX1だけ離れており、Y軸方向にX×31/2だけ離れている。貫通転位Taは、頂部および谷部に形成され、凸部のX軸方向およびY軸方向の離間距離を用いることによって、第1凹凸部の貫通転位密度を設定することができる。つまり、凸部の形状および大きさを適切に設定することによって、貫通転位Taが形成される密度を調整することが可能である。
【0026】
本実施形態に係る化合物半導体装置1の効果について説明する。
本実施形態に係る化合物半導体装置1は、半導体部30においては、第1電極40a下の第1領域70aは、半導体基板10の第1面11aに形成された第1凹凸部12a上に設けられている。第1領域70aは、第1凹凸部12a上に形成されているので、凸部12a1の形状および大きさに応じた密度の貫通転位Taを有する。第1領域70aでは、多数キャリアである電子は、貫通転位Taに沿って走行するので、電子の抵抗が低減される。そのため第1電極40a下のコンタクト抵抗が低減され、化合物半導体装置1の特性が向上する。
【0027】
本実施形態に係る化合物半導体装置1では、第2電極40b下についても第1電極40a下と同様である。すなわち、半導体部30においては、第2電極40b下の第2領域70bは、半導体基板10の第1面11aに形成された第2凹凸部12b上に設けられている。第2領域70bは、第2凹凸部12b上に設けられているので、凸部12a1の形状および大きさに応じた密度の貫通転位Tbを有する。第2領域70bでは、電子は、貫通転位Tbに沿って走行するので、電子の抵抗が低減される。そのため、第2電極40b下のコンタクト抵抗が低減され、化合物半導体装置1の特性が向上する。
【0028】
第1凹凸部12aおよび第2凹凸部12bは、半導体基板10の第1面11a上で選択的に形成することができる。そのため、コンタクト抵抗を低減したい電極の位置に応じて第1凹凸部12aおよび第2凹凸部12bを形成することによって、貫通転位の形成密度を制御し、化合物半導体装置1の性能を向上させることができる。
【0029】
図9は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の特性と比較例の化合物半導体装置の特性とを比較したグラフ図である。
図9において、比較例の半導体装置は、凹凸部を形成していない半導体基板上に形成された半導体部を有している。
図9では、縦軸および横軸ともフルスケールで正規化した目盛りとしている。縦軸はドレイン電流Idsを表し、横軸はドレイン-ソース間電圧Vdsを表している。また、グラフ図のうち、実線は本実施形態に係る化合物半導体装置1の特性例を示しており、破線は比較例の化合物半導体装置の特性例を示している。
【0030】
図9に示すように、飽和領域では、本実施形態に係る化合物半導体装置1は、比較例の化合物半導体装置よりも高い飽和電流を有する。また、線形領域では、本実施形態に係る化合物半導体装置1は、比較例の化合物半導体装置よりも急峻な傾きを有する。
【0031】
このように、本実施形態に係る化合物半導体装置1では、半導体基板10上に第1凹凸部12aおよび第2凹凸部12bを設けることによって、半導体部30に形成される貫通転位Ta、Tbの形成密度を制御し、第1電極40aおよび第2電極40bのコンタクト抵抗をそれぞれ低減することができる。本実施形態に係る化合物半導体装置1では、第1電極40aおよび第2電極40bのコンタクト抵抗をそれぞれ低減することによって、化合物半導体装置1の出力特性を向上させることができる。
【0032】
なお、第1凹凸部12aおよび第2凹凸部12bは、貫通転位を形成するために設けられ、十分な密度の貫通転位を形成できれば、ナノインプリントによる形成に限らず、他の技術を用いてもよい。たとえば、半導体基板10の第1面11a上に選択的にドライエッチングを施したり、ウェットエッチングを施して凹凸を形成するようにしてもよい。
【0033】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
電極下における貫通転位の密度の制御は、半導体基板10上の凹凸形状によらず、他の手段で行うことができる。
図10に示すように、本実施形態に係る化合物半導体装置201では、半導体基板210と、半導体部230と、を備えており、これらの構成が図1に示した化合物半導体装置1の場合と相違する。その他の点では、化合物半導体装置201は、化合物半導体装置1の場合と同一の構成要素を備えており、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0034】
半導体基板210は、第1面211aと第2面211bとを有する。第2面211bは、第1面211aの反対側に位置する面である。第1面211aには、凹凸部212aが設けられている。凹凸部212aは、たとえば、第1面211aの全面に設けられている。半導体基板210は、図1に示した化合物半導体装置1の半導体基板10と同様に、たとえば、SiC、SiまたはAlのいずれかを含む。
【0035】
半導体部230は、バッファ層220を介して半導体基板210上に設けられている。半導体部230は、第3面231aと第4面231bとを有する。第4面231bは、第3面231aの反対側に位置する面である。第3面231aは、半導体基板210の第1面211aに対向する位置に設けられている。第4面231b上には、第1電極40a、第2電極40bおよび制御電極50が設けられている。
【0036】
半導体部230は、第1半導体層31と、第2半導体層32と、第3半導体層233と、第4半導体層234と、マスク層238と、を有する。第3半導体層233は、半導体基板210上に設けられている。マスク層238は、第3半導体層233と第4半導体層234との間に設けられている。マスク層238は、複数の開口238a、238bを有しており、開口238a、238b内には、第4半導体層234がそれぞれ設けられている。
【0037】
第4半導体層234は、第3半導体層233上に設けられている。第1半導体層31は第4半導体層234上に設けられ、第2半導体層32は第1半導体層31上に設けられている。図1に関連して説明したように、たとえば、第1半導体層31はGaNを含み、第2半導体層32はAlGaNを含む。第1半導体層31と第2半導体層32との間の接合はヘテロ接合であり、第1半導体層31の第2半導体層32との界面には、2次元電子ガス36が形成される。
【0038】
第3半導体層233および第2半導体層234は、たとえば、GaNを含む。マスク層238は、絶縁物の層であり、たとえば、シリコン酸化物を含む。
【0039】
半導体部230は、第1領域270aと第2領域270bとを含む。第1領域270aは、第3面231aと第4面231bとの間で、第1電極40a下の領域である。第2領域70bは、第3面231aと第4面231bとの間で、第2電極40b下の領域である。マスク層238の開口238aは、第1領域270aに対応して設けられている。マスク層238の開口238bは、第2領域270bに対応して設けられている。
【0040】
半導体基板210の第1面211aには、凹凸部212aが設けられており、凹凸部212aは、たとえば、図2等に示した凸部12a1を有している。そのため、第3半導体層233では、凹凸部212aに応じた貫通転位Ta1が形成される。凹凸部212aの凸部が図2等に示したように、第1面211a上にほぼ均一に形成された場合には、貫通転位Ta1は、第3半導体層233の全面にわたってほぼ同一の密度で形成される。
【0041】
第4半導体層234では、マスク層238の開口238a、238bでは、貫通転位Ta2は、第3半導体層233とほぼ等しい密度で、形成される。一方、第4半導体層234では、第1領域270a、270b以外の領域では、マスク層238によって、貫通転位Tcの形成が抑制される。図10に示すように、マスク層238が存在するために、第4半導体層234の結晶成長方向が変更されるため、転位は、第4半導体層234の厚さ方向に交差する方向に形成される。いずれにしても、開口238a、238b以外の領域の貫通密度は、開口238a、238bの貫通密度よりも低い。
【0042】
第1半導体層31および第2半導体層32では、開口238a、238bに対応する領域では、高い密度の貫通転位Ta3、Tb3が形成される。第1半導体層31および第2半導体層32では、第1領域270aおよび第2領域270b以外の領域の貫通転位Tcの密度は、第1領域270aおよび第2領域270bの貫通転位Ta3、Tb3よりも低い。
【0043】
第1領域270aは第1電極40a下に設けられ、第2領域270bは第2電極40b下に設けられている。そのため、第1電極40aおよび第2電極40bのコンタクト抵抗は、高い貫通転位Ta3、Tb3の密度により低下し、化合物半導体装置201の特性は向上する。
【0044】
本実施形態に係る化合物半導体装置201の効果について説明する。
半導体基板210上に第3半導体層233、第4半導体層234およびマスク層238を設け、マスク層238は、第1電極40a下の第1領域270aに対応する位置に開口238aを設けている。第1領域270aでは、開口238aに対応して、半導体基板210上に形成された凹凸部212aに応じて、高密度の貫通転位が形成される。そのため、第1電極40aにおけるコンタクト抵抗が低下する。第2電極40bについても同様に、第2電極40b下の第2領域270bに対応する位置に開口238bを設けているので、第2電極40bのコンタクト抵抗が低減される。これらによって、化合物半導体装置201の特性は向上する。
【0045】
図11は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置の特性と比較例の化合物半導体装置の特性とを比較したグラフ図である。
図11は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の特性と第2の実施形態に係る化合物半導体装置の特性とを比較したグラフ図である。
図11において、比較例の半導体装置は、凹凸部を形成していない半導体基板上に形成された半導体部を有している。グラフ図のうち、実線は本実施形態に係る化合物半導体装置1の特性例を示しており、破線は比較例の化合物半導体装置の特性例を示している。破線のプロットは、図9の破線で示したプロットと同じである。
図12において、実線は、本実施形態に係る化合物半導体装置201の特性例を示している。破線は、図9の実線で示した第1の実施形態に係る化合物半導体装置1の特性例を表すプロットである。
図11および図12では、図9の場合と同様に、縦軸および横軸ともフルスケールで正規化した目盛りとしている。縦軸はドレイン電流Idsを表し、横軸はドレイン-ソース間電圧Vdsを表している。
【0046】
図11に示すように、飽和領域では、本実施形態に係る化合物半導体装置1は、比較例の化合物半導体装置よりも高い飽和電流を有する。また、線形領域では、本実施形態に係る化合物半導体装置1は、比較例の化合物半導体装置よりも急峻な傾きを有する。
【0047】
図12に示すように、飽和領域では、本実施形態に係る化合物半導体装置201は、図1に示した化合物半導体装置1よりも高い飽和電流を有する。これは、マスク層238を形成して、転位の方向をXY平面に平行な方向へ変化させたことによって、マスク層238のより上層における貫通転位の密度を減少させ、2次元電子ガス36での電子移動度を効果的に向上できたためと考えられる。
【0048】
(変形例1)
図13は、第2の実施形態の変形例に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図13に示すように、本変形例に係る化合物半導体装置201aは、導電層260を備える点で、図10に示した化合物半導体装置201と相違する。化合物半導体装置201aは、他の点では、化合物半導体装置201の場合と同様であり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0049】
導電層260は、半導体基板210の第2面211bに対向して設けられる。導電層260は、好ましくは、半導体基板210とオーミック接続される。導電層260は、十分に高い熱伝導率を有する。導電層260は、半導体基板210の電位を安定させるとともに、化合物半導体装置201で発生した熱を効果的に放熱する。
【0050】
半導体部230における抵抗値は、正の温度特性を有するので、導電層260によって半導体部230を効果的に放熱することによって、より低いコンタクト抵抗を実現し、高性能な化合物半導体装置201aを実現することができる。
【0051】
(変形例2)
図14は、第2の実施形態の他の変形例に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図14に示すように、本変形例に係る化合物半導体装置201bは、貫通電極270を備える点で、図13に示した化合物半導体装置201aと相違する。化合物半導体装置201bは、他の点では、化合物半導体装置201aの場合と同様であり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0052】
貫通電極270は、半導体部230を貫通して設けられている。より具体的には、貫通電極270は、半導体部230の第3面231aから第4面231bにわたって設けられている。貫通電極270は、第2電極40b下に設けられ、第2電極40bと導電層260とを電気的に接続する。貫通電極270は、高い熱伝導率を有する金属等の導体で形成されるので、半導体部230で生成された熱を効果的に導電層260へ輸送する。そのため、化合物半導体装置201aは、貫通電極270を備えることによって、放熱性が向上し、抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0053】
これら2つの変形例は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置にも適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0054】
(変形例3)
図15は、第2の実施形態の他の変形例に係る化合物半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図15に示すように、本変形例に係る化合物半導体装置201cは、半導体基板210aを備える点で、図10に示した化合物半導体装置201と相違する。化合物半導体装置201cは、他の点では、化合物半導体装置201の場合と同様であり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0055】
図12に関連して説明したように、転位の形成方向と、多数キャリアの走行方向が一致する場合には、その領域における抵抗値は減少する。転位の形成方向が多数キャリアの走行方向に交差する場合には、その領域における抵抗値は増大する。
【0056】
本変形例では、半導体部230がマスク層238を有することによって、マスク層238が存在する箇所、および、マスク層238の開口238a、238bが存在する箇所で、多数キャリアの走行方向に一致させる。つまり、開口238a、238bが存在する箇所では、半導体部230の厚さ方向に多数キャリアを走行させ、開口238a、238bのない箇所では、半導体部230の厚さに交差する方向に多数キャリアを走行させる。
【0057】
このように、マスク層238の開口238a、238bの箇所を設定することによって、貫通転位の密度を調整することができ、多数キャリアの走行方向に応じて抵抗値を低減させることができる。
【0058】
本変形例では、半導体基板210の第1面211a上に凹凸部212aを形成する必要がないので、製造工程を短縮することが可能になる。
【0059】
このようにして、貫通転位の発生密度を制御することによって性能を向上させた化合物半導体装置を実現することができる。
【0060】
上述の各実施形態および各変形例では、第1電極40aと第2電極40との間に制御電極50が設けられたHEMTの具体例について説明した。これに限らず、ノーマリオン形のHEMTにおいては、制御電極50を設けなくてもよい。制御電極50を設けない場合であっても、電極下における貫通転位の発生密度を制御することによって、電極のコンタクト抵抗を低減できるとの効果を有する。
【0061】
発明者は、凹凸加工による貫通転位の形成によって電極のコンタクト抵抗の低減の効果を確認するために、TLM(Transmission Line Method)による評価を実施した。
図16は、貫通転位の転位密度に対するパラメータの依存性を測定するための試験用サンプルの模式的な断面図である。
図16に示すように、試験用サンプルTE1では、半導体基板10上にバッファ層20を介して、半導体部30が設けられる。半導体基板10および半導体部30は、図1に示した化合物半導体装置1の場合と同様に構成される。すなわち、半導体基板10は、SiCを含む。バッファ層20は、AlNを含む。半導体部30は、第1半導体層31と、第2半導体層32と、を含む、第1半導体層31および第2半導体層32は、この順で、半導体基板10上に積層されている。第1半導体層32は、GaNを含む。第2半導体層32は、AlGaNを含む。第1半導体層31の第2半導体層32との界面では、2次元電子ガス36が形成される。
【0062】
半導体基板10の第1面11a上には、複数の凹凸部TE12a~TE12cが形成されている。複数の凹凸部TE12a~TE12cを構成する凸部は、図2図4に示した円錐形状を有する。凹凸部TE12a~TE12cは、互いの間隔を変えて配置されている。図16では、3つの凹凸部TE12a~TE12cが示されているが、評価に供した試験用サンプルでは、複数の凹凸部は、隣り合う凹凸部の間の間隔が、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μmとなるように配置されている。たとえば、図16では、電極間隔Labは、300μmであり、電極間隔Lbcは、250μmである。なお、複数の電極は、すべて同一形状である。複数の電極は、平面視で矩形であり、矩形のサイズは、50μm×100μmとした。
【0063】
半導体部30の第2半導体層32上には、複数の凹凸部TE12a~TE12cが形成位置に対応する位置に、複数の電極TE40a~TE40cがそれぞれ設けられている。複数の電極TE40a~TE40c下の半導体部30の複数の領域TE70a~70cは、複数の凹凸部TE12a~TE12c上にそれぞれ形成されている。
【0064】
つまり、試験用サンプルTE1は、複数の電極を有しており、隣り合う電極の間隔が50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μmとなるように配置されており、複数の電極下には、複数の凹凸部がそれぞれ配置されている。なお、試験用サンプルTE1では、すべての凹凸部において、凸部の形状およびピッチは、同一である。
【0065】
図17は、図16の試験用サンプルによる測定結果と対比するために作製した試験用サンプルの模式的な断面図である。
図17に示すように、試験用サンプルTE2は、半導体基板10の第1面11a上にバッファ層20を介して半導体部30が設けられている。半導体基板10の第1面11aは、平坦面である点で、図16の試験用サンプルTE1と相違する。つまり、試験用サンプルTE2では、凹凸部が設けられていない。他の点では、試験用サンプルTE2は、試験用サンプルTE1の構成と同じである。すなわち、半導体部30上の複数の電極は、隣り合う電極の間隔が、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μmとなるように配置されている。
【0066】
図16および図17に示した試験用サンプルTE1、TE2を用いてTLM評価を実施した。
コンタクト抵抗の評価では各TLM用の試験用サンプルTE1、TE2のそれぞれについて、各電極間の抵抗を測定し各電極間の距離に対してプロットすることでコンタクト抵抗と電極間のシート抵抗を算出した。
【0067】
コンタクト抵抗に関する評価結果は、以下のとおりである。すなわち、凹凸加工無しの試験用サンプルTE2では、電極下のエリアのコンタクト抵抗は、0.4Ω・cmであった。これに対して、凹凸加工した試験用サンプルTE1では、各電極下の領域のコンタクト抵抗は、0.2Ω・mmであった。つまり、転位密度の増加によってコンタクト抵抗が減少していることが確認できた。
【0068】
一方、シート抵抗に関する評価結果は以下のとおりである。すなわちSiC基板である半導体基板10に凹凸加工無しの試験用サンプルTE2では、隣り合う電極間におけるシート抵抗は、400Ω/□程度であった。これに対して、半導体基板10に凹凸加工した試験用サンプルTE1では、隣り合う電極におけるシート抵抗は、410Ω/□程度となっており、同等の値であることを確認した。
【0069】
以上の評価結果から、SiC基板である半導体基板10の電極下の位置に凹凸加工を施すことによって、シート抵抗を増加させることなくコンタクト抵抗を低減することが可能であることが確認できた。
【0070】
次に、発明者は、コンタクト抵抗、シート抵抗およびゲートリーク電流の貫通転位の転位密度に対する依存性の評価を行った。貫通転位の転位密度を変化させた場合のコンタクト抵抗、シート抵抗、ゲートリーク電流依存性を評価するために、凹凸部の凸部のピッチを変えた評価用サンプルを作製して評価を行った。
【0071】
図18は、貫通転位の転位密度に対するパラメータの依存性を測定するための試験用サンプルの模式的な断面図である。
図18に示すように、評価用サンプルTE3では、第1面11aの全面に凹凸部TE12が形成されたSiC基板である半導体基板10を用意し、凹凸部TE12上に、半導体部30および各電極40a、40bおよび制御電極50を形成した。半導体部30、電極40a、40bおよび制御電極50は、図1に示した化合物半導体装置1の構成と同じである。
【0072】
評価用サンプルTE3では、凹凸部TE12の凸部のピッチを、200nm、300nm、600nm、800nmと変化させたサンプルを作製し、これに加えて、凹凸加工無しのサンプルを作成した。これにより、凹凸加工無しのサンプルを含めて、5種類のサンプルでは、2×1010/cm程度から6×10/cm程度までの貫通転位密度を有するサンプルを作製することができた。
【0073】
図19図21は、貫通転位の転位密度を変化させた場合のパラメータの依存性を示すグラフ図である。
図19は、貫通転位の密度に対するコンタクト抵抗の変化を示すグラフ図である。
図20は、貫通転位の密度に対するシート抵抗の変化を示すグラフ図である。
図21は、貫通転位の密度に対するゲートリーク電流の変化を示すグラフ図である。
図19図21においては、図18に示した評価用サンプルTE3ついてパラメータを測定して、測定結果に統計処理を施してグラフ化している。図19図21は、すべて「箱ひげ図」で表されている。これらの箱ひげ図では、グラフ図の矩形の中央線が中央値を示し、上端が中央値の75%の値を示し、下端が25%の値を示している。矩形上部のひげ上端線が測定における最大値であり、矩形下部のひげ下端線が測定における最小値である。
【0074】
図19に示すように、コンタクト抵抗は、転位密度を大きくするにしたがって、小さくなる。コンタクト抵抗が低下する原理は、上述したとおりである。たとえば、転位密度を10倍にすることによって、コンタクト抵抗は、45%以上低減されている。
【0075】
図20に示すように、シート抵抗は、転位密度を大きくするにしたがって、増大する傾向が認められる。転位密度が10倍でシート抵抗は25%程度増大している。
【0076】
図19および図20の結果より、多数キャリアが走行する方向に沿って、貫通転位の密度を増大させ、多数キャリアの走行する方向に交差する方向の貫通転位の密度を低減させることによって、2つの電極間の抵抗値を低減させることができる。
【0077】
図21に示すように、ゲートリーク電流は、転位密度を大きくするにしたがって、増大する。
【0078】
図19図21の結果より、多数キャリアが走行する方向に沿って、貫通転位の密度を増大させ、多数キャリアの走行する方向に交差する方向の貫通転位の密度を低減させることによって、2つの電極間の抵抗値を低減させることができ、ゲートリーク電流を減少させることができることを確認した。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1、201、201a~201c…化合物半導体装置、10、210、210a…半導体基板、11a、211a…第1面、11b、211b…第2面、12a…第1凹凸部、12b…第2凹凸部、20、220…バッファ層、30、230…半導体部、31…第1半導体部、32…第2半導体部、36…2次元電子ガス、40a…第1電極、40b…第2電極、50…制御電極、70a、270a…第1領域、70b、270b…第2領域、233…第3半導体層、234…第4半導体層、238…マスク層、238a、238b…開口、260…導電層、270…貫通電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21