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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138783
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/92 20060101AFI20241002BHJP
   F01N 3/04 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B01D53/92 331
B01D53/92 ZAB
B01D53/92 215
F01N3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049461
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎並 義晶
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA17
3G091AA18
3G091AB15
3G091BA01
3G091CA15
4D002AA02
4D002AC01
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA01
4D002DA01
4D002DA16
4D002DA31
4D002DA36
4D002EA13
(57)【要約】
【課題】設置場所の高さに制限がある場合でも液滴を捕集できる排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置の一態様は、外部から導入された排ガスAが内部を旋回しながら進行する円筒状の吸収塔20と、設置場所に設けられた構造物と吸収塔20との間に設けられる円筒状の排気筒30と、吸収塔20の内部において排ガスAを処理する液体の液滴BDを噴射する噴霧部40と、を備え、吸収塔20の壁面20Sには、排気筒30が繋がる端部20Aと噴霧部40との間の範囲Faに、排ガスAに同伴する液滴BDを捕集する第1の捕集部50-1が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から導入された排ガスが内部を旋回しながら進行する円筒状の吸収塔と、
設置場所に設けられた構造物と前記吸収塔との間に設けられる円筒状の排気筒と、
前記吸収塔の内部において前記排ガスを処理する液体の液滴を噴射する噴霧部と、
を備え、
前記吸収塔の壁面には、
前記排気筒が繋がる端部と前記噴霧部との間の範囲に、前記排ガスに同伴する前記液滴を捕集する第1の捕集部が設けられる
排ガス処理装置。
【請求項2】
前記第1の捕集部は、
前記排気筒が繋がる端部と前記噴霧部との間の範囲における当該端部の近傍に設けられる
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記吸収塔は、
前記噴霧部が収められる筒状の本体部と、
前記本体部と前記排気筒とを繋ぐ連結部と、
を備え、
前記連結部は、
前記本体部との連結箇所よりも前記排気筒との連結箇所における内径が小さな円錐台状であり、
前記連結部の壁面に前記第1の捕集部が設けられる
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記第1の捕集部によって捕集された液滴を前記吸収塔の内部に戻す第1の配管を備える
請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記排気筒の内部には、
旋回しながら進行する前記排ガスの当該旋回を強めるスワラが設けられ、
前記排気筒の壁面には、
前記スワラよりも前記排ガスの下流側の位置に、前記排ガスに同伴する前記液滴を捕集する第2の捕集部が設けられる
請求項1から4のいずれかに記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記第2の捕集部によって捕集された液滴を前記吸収塔の内部に戻す第2の配管を備える
請求項5に記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硫黄酸化物等の有害物質を含む排ガスに吸収液を気液接触させ、吸収液に有害物質を吸収させることで排ガスから有害物質を除去する排ガス処理装置が知られている。また、この種の排ガス処理装置においてサイクロン式の装置が知られており、船舶などに設けられている。
特許文献1には、サイクロン式の排ガス処理装置として、排ガスを吸収液に吸収させるための吸収塔、及び、排ガスを外部に排出する既設の煙突などに接続される排気筒を備え、排ガスが吸収塔の内部を旋回しながら螺旋状に排気筒に向かって進む装置が示されている。また、この特許文献1には、排ガスから液滴を捕集する捕集部を排気筒に設けることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2022/0044536号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排ガス処理装置の設置場所によっては、排ガス処理装置の排気筒が接続される煙突等の被接続体までの高さが制限される場合がある。この場合、処理能力に応じた吸収塔の高さを確保したときに、捕集物を設置可能な十分な高さが排気筒に確保されない虞がある。
【0005】
本開示は、設置場所の高さに制限がある場合でも液滴を捕集できる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの態様に係る排ガス処理装置は、外部から導入された排ガスが内部を旋回しながら進行する円筒状の吸収塔と、設置場所に設けられた構造物と前記吸収塔との間に設けられる円筒状の排気筒と、前記吸収塔の内部において前記排ガスを処理する液体の液滴を噴射する噴霧部と、を備え、前記吸収塔の壁面には、前記排気筒が繋がる端部と前記噴霧部との間の範囲に、前記排ガスに同伴する前記液滴を捕集する第1の捕集部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の1つの態様によれば、設置場所の高さに制限がある場合でも液滴を捕集できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態の排ガス処理装置を適用した船舶の構成の一例を模式的に示す図である。
図2】排ガス処理装置の内部の構成の一例を模式的に示す図である。
図3図2のIII-III線における矢視図である。
図4】第1の捕集部の構成の一例を模式的に示す図である。
図5】本開示の第2実施形態に係る排ガス処理装置の内部の構成の一例を模式的に示す図である。
図6】排ガスに同伴する液滴の挙動の説明図である。
図7】本開示の変形例に係る排ガス処理装置の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示に係る好適な形態を説明する。なお、図面において、各部の寸法、及び縮尺が実際と適宜に異なる場合があり、理解を容易にするために模式的に示している部分を含む場合がある。また、以下の説明において、本開示を限定する旨の特段の記載が無い限り、本開示の範囲は以下の説明に記載された形態に限られない。本開示の範囲は当該形態の均等の範囲を含む。
【0010】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態の排ガス処理装置100を適用した船舶1の構成の一例を模式的に示す図である。
図1に示される通り、船舶1は、動力装置11と給液ポンプ13と排ガス処理装置100とを備える。排ガス処理装置100は本開示における「排ガス処理装置」の一例である。なお、以下の説明において、「上方」は鉛直方向の上方を意味し、「下方」は鉛直方向の下方を意味する。
【0011】
動力装置11は、例えばガソリンエンジン及びディーゼルエンジン等の内燃機関、又はボイラとタービンとを含む外燃機関である。動力装置11は、例えば重油又は石炭等の化石燃料を燃焼させることで船舶1の推進力を発生する。動力装置11は、窒素酸化物又は硫黄酸化物等の有害物質を含む排ガスAを排出する。有害物質は粉塵を含んでもよい。
排ガス処理装置100は、動力装置11から排気管12を介して供給される排ガスA中の有害物質を低減するスクラバである。船舶1は、排ガス処理装置100の設置場所に煙突3を備え、排ガス処理装置100は、煙突3を通じて処理後の排ガスAを大気中などの外部空間に排気する。煙突3は、本開示における「設置場所に設けられた構造物」の一例である。
【0012】
給液ポンプ13は、排ガスAに含まれる有害物質を吸収する液体(以下、「吸収液B」という)を排ガス処理装置100に供給する。具体的には、給液ポンプ13は、船舶1の周囲の海水を吸収液Bとして排ガス処理装置100に供給する。例えば海水中のアルカリ成分(HCO )により排ガスAに含まれる有害物質が吸収される。給液ポンプ13から送出された吸収液Bが給液管14を介して排ガス処理装置100に供給される。
【0013】
図2は、排ガス処理装置100の内部の構成の一例を模式的に示す図である。
排ガス処理装置100は、図2に示される通り、内部に噴霧部40が設けられた吸収塔20と、当該吸収塔20と煙突3との間に設けられる排気筒30と、を備える。
吸収塔20は円筒状の構造体である。また排気筒30は、吸収塔20の一方の端部20Aに繋がる円筒状の構造体であり、吸収塔20の中心軸Cに同軸に設けられる。本実施形態の排ガス処理装置100は、吸収塔20、及び排気筒30の中心軸Cが鉛直方向を向く姿勢で船舶1に設置される。この場合、「吸収塔20の一方の端部20A」は、吸収塔20の上端に相当する。
【0014】
以下の説明において、中心軸Cを中心とした任意の直径の仮想円における円周の方向を「周方向」と表記し、仮想円における半径の方向を「径方向」と表記する。
【0015】
吸収塔20は、円筒状の本体部21と、本体部21と排気筒30とを繋ぐ連結部22と、を備える。本体部21の内部に上記噴霧部40が収められる。連結部22は、この本体部21の端部21Aに繋がる部位である。本実施形態において、本体部21の端部21Aは本体部21の上端に相当する。
連結部22は、円錐台状を成しており、本体部21に繋がる端部22Aにおける内径Raよりも、その反対側の端部22Bにおける内径Rbが小さい。したがって、中心軸Cを含む断面の断面視において、連結部22の壁面20Sは、端部22Bが端部22Aよりも中心軸Cの近くに位置する向きに傾斜する。なお、本実施形態において、連結部22の端部22A、及び端部22Bは、それぞれ、連結部22の下端、及び上端に相当する。また、連結部22の端部22Bは、吸収塔20の端部20Aに一致する。
【0016】
排気筒30は、本体部21よりも小径の円筒状の部位である。本実施形態において、排気筒30の内径は、連結部22の端部22Bの内径Rbに略一致する。排気筒30は、連結部22が繋がる端部と反対側の端部30Aに、排ガスAを排気する排気口300が形成されており、この排気口300が形成された端部30Aが煙突3に接続される。なお、本体部21、連結部22、及び排気筒30の2以上が相互に一体的に構成されてもよいし、相互に別体で構成されて連結されてもよい。
【0017】
本体部21は、排気管12が接続される排ガス導入部210を備える。排ガス導入部210は、本体部21の周面に形成された貫通孔212と、貫通孔212から外部に延びる導入管214とを含み、この導入管214に上記排気管12が連結される。また、係る排ガス導入部210は、本体部21の上端である端部21Aよりも、その反対側の下端である端部21Bに近い位置に設けられる。すなわち、動力装置11から排気管12を通じて供給される排ガスAは、本体部21の下端である端部21Bに近い位置から本体部21の内部に導入される。
【0018】
図3は、図2のIII-III線における矢視図である。
排ガス導入部210の導入管214は、図3に示すように、長手方向Eaが中心軸Cから外れるように(すなわち、交差しないように)、吸収塔20の本体部21に接合されている。したがって、導入管214から吸収塔20に流入する排ガスAは、吸収塔20の内側の壁面20Sに沿って当該吸収塔20の周方向に進行し、中心軸Cの周りを旋回する旋回流となる。この結果、図2において螺旋状の線Dによって模式的に示される通り、排ガスAは、吸収塔20において、本体部21の下方の排ガス導入部210から中心軸Cの周りを旋回しながら上方の端部20Aに向かって螺旋状に進行する。排ガスAが吸収塔20の内部を旋回しながら螺旋状に進むスクラバは、一般に、サイクロン式のスクラバとも称される。なお、図2において、線Dの太さは、排ガスAに同伴する後述の液滴BDの量に対応しており、線Dが太いほど多くの液滴BDが同伴することを示す。液滴BDは図4に模式的に示されている。
【0019】
噴霧部40は、吸収塔20の内部において吸収液Bの液滴を噴射する部位である。本実施形態の噴霧部40は、幹管41と、複数の枝管42とを備える。
幹管41は、中心軸Cに同軸に設置された円管状の構造体である。複数の枝管42は、それぞれ、幹管41よりも小径の管状部材であり、図2に示すように、幹管41の周面から当該周面に対して垂直に径方向に延在する。複数の枝管42は、それぞれ、吸収液Bを霧状に噴射することにより多数の液滴BDを噴射する複数のノズル43が設けられる。なお、噴霧部40において、幹管41の長さ、幹管41の長さ方向における枝管42の配置数、及び配置間隔、並びに、枝管42、及びノズル43のそれぞれの数は適宜である。
【0020】
噴霧部40には、給液ポンプ13から送出された吸収液Bが給液管14を介して供給される。そして、噴霧部40において、吸収液Bが幹管41から複数の枝管42のそれぞれに供給され、各ノズル43から吸収液Bが霧状に噴射される。
吸収塔20の内部において、排ガスAが噴霧部40を通過する際、吸収液Bの液滴BDと気液接触し、液滴BDが排ガスAに含まれる有害物質が液滴BDに吸収されることにより、有害物質が排ガスAから除去される。噴霧部40を通過した排ガスAは、本体部21から連結部22、及び排気筒30を順に通って煙突3に排出される。
【0021】
また、排ガス処理装置100は、図2に示すように、第1の捕集部50-1と、第1の配管60-1と、を備える。第1の捕集部50-1は、噴霧部40によって吸収塔20の内部に噴射され、排ガスAに同伴する液滴BDを捕集する部位である。第1の配管60-1は、吸収塔20における底部20Cに近い位置と、第1の捕集部50-1とを連通する管体である。第1の捕集部50-1によって捕集された液滴BDは、第1の配管60-1を通じて吸収塔20の内部に戻される。
第1の捕集部50-1が液滴BDを捕集することにより、有害物質を吸収した液滴BDが排気口300から煙突3を通じて外部空間に放出されることが防止される。また、外部空間に放出された液滴BDが地上(本実施形態では船舶1の甲板)に降り注ぐといった事態も防止される。
【0022】
なお、第1の配管60-1には、鉛直方向の下端の位置にバタフライバルブ61が配設されており、また、吸収塔20に繋がる前の箇所に、鉛直方向の上方向に立ち上がる立ち上げ部60Aが設けられる。バタフライバルブ61は、点検時に水抜きのために用いられるバルブである。立ち上げ部60Aは、捕集された液滴BDを第1の配管60-1の中に溜めて封水を形成ための部位である。当該封水により、吸収塔20の排ガスAが第1の配管60-1の中を下から上に流れることが防止される。
【0023】
図1に示すように、船舶1には、噴霧部40から噴射された吸収液Bを貯留する廃液タンク5を備え、この廃液タンク5が鉛直方向において、排ガス処理装置100の吸収塔20の底部20Cよりも低い位置に配置されている。吸収塔20の底部20Cは、ドレインパイプ5Aを通じて廃液タンク5に接続されており、吸収塔20の底部20Cに集合する吸収液Bがドレインパイプ5Aを通って廃液タンク5に導かれ、当該廃液タンク5に貯留される。廃液タンク5に貯留した吸収液Bは適宜の手段を用いて外部(例えば航海中の海)に排水される。
【0024】
ここで、前掲図2に示される通り、本実施形態の排ガス処理装置100において、上述の第1の捕集部50-1が吸収塔20の壁面20Sに設けられる。より具体的には、第1の捕集部50-1は、吸収塔20の壁面20Sのうち、噴霧部40と当該吸収塔20の上端である端部20Aとの間の範囲Faであり、本実施形態では、吸収塔20の端部20Aの近傍に設けられる。
【0025】
図4は、第1の捕集部50-1の構成の一例を模式的に示す図である。
吸収塔20の内部において、排ガスAに同伴する液滴BDには、排ガスAの気流に乗って移動する液滴BDと、液滴BDの衝突によって壁面20Sに形成され、排ガスAの流れによって壁面20Sに沿って移動する液膜BFと、が含まれる。
本実施形態の第1の捕集部50-1は、壁面20Sの近傍を移動する液滴BDと、壁面20Sに沿って移動する液膜BFの両方を捕集する構造を有し、具体的には、導出口500と、捕捉部材502と、導出部材504と、を備える。
導出口500は、吸収塔20の周方向に延びるスリット状に形成された開口である。
捕捉部材502は、液滴BD、及び液膜BFを導出口500に導く部材である。より具体的には、捕捉部材502は、吸収塔20の内側で導出口500を覆う形状を成し、かつ、壁面20Sの近傍を流れる排ガスAに同伴する液滴BD、及び壁面20Sの液膜BFを、その内部に取り込む取込口502Aが設けられた部材である。本実施形態の捕捉部材502は、吸収塔20の中心軸Cを含む断面の断面視において、導出口500の上方の位置から吸収塔20の内側に突出する鍔部502Bと、当該鍔部502Bから導出口500を覆うように壁面20Sと略平行に延びるカバー部502Cと、を含み、カバー部502Cと壁面20Sとの間の隙間によって取込口502Aが形成される。
導出部材504は、吸収塔20の外側で導出口500を覆う形状を成し、かつ、導出口500を通って導出部材504に導かれた液滴BD、及び液膜BFから生じる液体(すなわち吸収液B)を外部に排出する排出口504Aが設けられた部材である。この排出口504Aには、上述の第1の配管60-1が接続される。
【0026】
吸収塔20の内部における液滴BDの挙動について更に説明する。
噴霧部40によって噴射された液滴BDは排ガスAの気流に乗って鉛直方向の上方へ移動することにより、液滴BDが排ガスAに同伴する。上述の通り、排ガスAは中心軸Cの周りを螺旋状に旋回しながら進行するため、液滴BDは遠心力によって吸収塔20の壁面20Sに寄りつつ鉛直方向の上方へ移動する。換言すれば、鉛直方向の上方に向かうほど、吸収塔20の径方向において壁面20Sの近傍に多くの液滴BDが偏在する。このため、吸収塔20において、上端である端部20Aの近傍の位置で、最も多くの液滴BDが壁面20Sの近傍に偏在する。
また、移動中の一部の液滴BDが第1の捕集部50-1に捕集される前に壁面20Sに衝突すると、当該壁面20Sに液滴BDによる液膜BFが形成される。液膜BFは排ガスAの流れに押されて壁面20Sを鉛直方向の上方に移動するため、上端である端部20Aの近傍の位置に多くの液膜BFが集まる。
【0027】
したがって、第1の捕集部50-1が吸収塔20の端部20Aの近傍に配置されることにより、多くの液滴BD、及び液膜BFを効率良く捕集することができ、吸収塔20から排気筒30の側に流れ込む液滴BDの量を削減できる。
【0028】
これに加え、第1の捕集部50-1が設けられる連結部22は、上述の通り、本体部21との連結箇所である端部22Aよりも排気筒30の連結箇所である端部22Bにおける内径が小さな円錐台状を成し、連結部22における流路断面積は鉛直方向の上方ほど縮小する。これにより、ストークス数Stが増大して液滴BDが壁面20Sに寄って当該壁面20Sに衝突し易くなるため、第1の捕集部50-1による液滴BD、及び液膜BFの捕集効率が更に高められる。なお、ストークス数Stについては第2実施形態で詳述する。
【0029】
なお、第1の捕集部50-1において、捕捉部材502が吸収塔20の内側に向けて突出する突出量を大きくし、それに応じて取込口502Aの開口を広くするほど、より多くの液滴BDを捕集できる。しかしながら、突出量が大きくなるほど、吸収塔20の上端である端部20Aにおける圧力損失が増える。したがって、捕捉部材502の突出量は、圧力損失が後述する仕様値を超えない範囲に抑えられる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の排ガス処理装置100では、第1の捕集部50-1が吸収塔20に設けられている。このため、仮に排気筒30の高さHbが第1の捕集部50-1を設けるために必要な高さを下回っていても、第1の捕集部50-1によって吸収液Bを回収できる。したがって、例えば、排ガス処理装置100の設置場所において、設置面Gと煙突3との間のスペースが比較的狭く、排ガス処理装置100の高さが制限される場合でも、排気筒30の高さHbを削減することにより吸収塔20の高さHaを維持しつつ、吸収液Bの回収も確実に行うことができる。
【0031】
本実施形態の排ガス処理装置100において、第1の捕集部50-1は、排気筒30が繋がる端部20Aと噴霧部40との間の範囲Faにおける当該端部20Aの近傍に設けられる。したがって、より多くの液滴BD、及び液膜BFを第1の捕集部50-1によって回収することができる。
【0032】
本実施形態の排ガス処理装置100において、吸収塔20は、噴霧部40が収められる筒状の本体部21と、この本体部21と排気筒30とを繋ぐ連結部22と、を備え、連結部22は、本体部21との連結箇所である端部22Aよりも排気筒30との連結箇所である端部22Bにおける内径が小さな円錐台状であり、この連結部22の壁面20Sに第1の捕集部50-1が設けられる。
この構成によれば、液滴BDが壁面20Sに寄って当該壁面20Sに衝突し易くなるため、第1の捕集部50-1による液滴BD、及び液膜BFの捕集効率が更に高められる。
【0033】
本実施形態の排ガス処理装置100は、第1の捕集部50-1によって捕集された液滴BD、及び液膜BFから生じる液体を吸収塔20の内部に戻す第1の配管60-1を備える。
この構成によれば、第1の捕集部50-1が第1の配管60-1を通じて吸収塔20の内部に連通する。したがって、第1の捕集部50-1が、例えば、廃液タンク5、及びドレインパイプ5Aなどのように圧力変動が大きな箇所に第1の配管60-1を通じて接続される場合に比べ、液滴BD、及び液膜BFを取込口502Aから安定的に取り込んで捕集することができる。
【0034】
2.第2実施形態
図5は、本開示の第2実施形態に係る排ガス処理装置100の内部の構成の一例を模式的に示す図である。なお、同図において、第1実施形態で説明した同一の要素については同一の符号を付し、また、以下では、その要素の説明を省略する。
【0035】
本実施形態の排ガス処理装置100は、第1実施形態の排ガス処理装置100よりも排ガスAの高い処理能力が要求され、かつ、設置面Gと煙突3との間に十分なスペースが確保された設置場所に設置される比較的大型の装置である。
すなわち、本実施形態の排ガス処理装置100は、第1実施形態の排ガス処理装置100において、排気筒30に、第2の捕集部50-2、及びスワラ70が設けられる点で、第1実施形態の排ガス処理装置100と構成を異にする。
【0036】
第2の捕集部50-2は、スワラ70と、排気口300との間の範囲Fb、換言すれば、スワラ70から排ガスAの下流の範囲Fbにおける壁面30Sに設けられ、排気筒30の壁面30Sの近傍を移動する液滴BD、及び、壁面20Sに形成された液膜BFを捕集する。本実施形態の第2の捕集部50-2の構造は、吸収塔20に設けられた第1の捕集部50-1と略同じである。すなわち、第2の捕集部50-2は、導出口500、捕捉部材502、及び導出部材504を備える。
【0037】
スワラ70は、回転軸が中心軸Cに同軸に設けられた旋回羽根70Aを備え、旋回しながら進行する排ガスAの気流を旋回羽根70Aの回転により強める装置であり、排気筒30の下端である端部30Bの近傍に設置される。したがって、吸収塔20から排気筒30に流入する排ガスAは、当該スワラ70を通過することにより旋回が強められ、排気口300に向けて進行する。このように、排ガスAの旋回が強められることにより、スワラ70が無い場合に比べ、排ガスAが第2の捕集部50-2に至るまでにより多くの液滴BDが遠心力によって壁面30Sに寄って行き壁面30Sに衝突するため、第2の捕集部50-2による液滴BD、及び液膜BFの捕集量を増加させることができる。
【0038】
第2の捕集部50-2には、第1の配管60-1に合流する第2の配管60-2が接続されており、第2の捕集部50-2に捕集された液滴BD、及び液膜BFから生じた液体は、第2の配管60-2、及び第1の配管60-1を通じて吸収塔20の内部に戻される。
したがって、第2の捕集部50-2が、例えば、廃液タンク5、及びドレインパイプ5Aなどのように圧力変動が大きな箇所に第2の配管60-2を通じて接続される場合に比べ、液滴BD、及び液膜BFを取込口502Aから安定的に取り込んで捕集することができる。
なお、第2の配管60-2には、第1実施形態で説明したバタフライバルブ61、及び、立ち上げ部60Aが設けられる。
【0039】
ところで、処理能力の要求等により吸収塔20の内径が増えることで装置が大型化した場合、吸収塔20の内径の増加に伴いスワラ70の直径が増えるほど、液滴BDに作用する遠心力が減少するため、排気筒30における第2の捕集部50-2による液滴BD、及び液膜BFの捕集効率が低下する。この点について、図6を参照して説明する。
【0040】
図6は、排ガスAに同伴する液滴BDの挙動の説明図である。
排ガスAとともに中心軸Cの周りを旋回しながら進行する液滴BDの挙動は、次の式(1)に示すストークス数Stによって一般化される。
【0041】
ストークス数St=ρdU/18ηL (1)
ただし、ρは液滴BDの密度(kg/m)であり、dは液滴BDの直径(m)である。Uは排ガスAの流れの速度(m/s)であり、ηは排ガスAの流れの粘性係数(Pa・s)である。Lは代表長さ(m)である。
【0042】
図6に示すように、ストークス数Stが「1」より十分大きい場合、排ガスAの気流の影響は小さく、液滴BDは慣性と重力により移動するため、液滴BDが壁面30Sに衝突し易く、液膜BFが形成され易い。一方、ストークス数Stが「1」より十分小さい場合、液滴BDは排ガスAの気流に追従して移動するため、壁面30Sに寄り難く、また壁面30Sに衝突し難くなり、液膜BFも形成され難い。
【0043】
装置の大型化に伴い、スワラ70の直径が増加することにより代表長さLが大きくなった場合、ストークス数Stは、代表長さLに反比例して小さくなる。
したがって、液滴BDは、壁面30Sに寄り難く、また壁面30Sに衝突し難くなるため、第2の捕集部50-2で捕集される液滴BD、及び液膜BFの量が減少し、捕集効率が低下することになる。
【0044】
また、スワラ70の設置により排気筒30において圧力損失が生じる。排ガス処理装置100が圧力損失を生じると、船舶1の動力装置11の排気に負荷がかかり、動力装置11の効率の悪化、及び故障の原因にもなるため、一般に、排ガス処理装置100に許容される圧力損失には仕様値が設定される。この圧力損失の仕様値を超えることなく、スワラ70を用いて例えば排ガスAの流れの速度Uを強める等してストークス数Stを増加させることには限界がある。
【0045】
これに対し、本実施形態の排ガス処理装置100によれば、吸収塔20も第1の捕集部50-1を備えるため、装置が大型化した場合でも、スワラ70による圧力損失を増加させることなく、吸収塔20から排気筒30のスワラ70に至る液滴BDの量を十分に抑えることができ、排気筒30に流入にした液滴BDを第2の捕集部50-2で十分に捕集できる。
これに加え、スワラ70に流入した液滴BDを当該スワラ70によって加速する際に必要な運動エネルギーも減少するため、スワラ70に対して圧力損失の増加を伴う変更を加えなくとも、スワラ70によって旋回の流れが強められ、ストークス数Stが大きくなる。この結果、第2の捕集部50-2による液滴BDの捕集効率が高められる、という効果も得られる。
【0046】
なお、上述の通り、吸収塔20の連結部22は、鉛直方向の上方ほど流路断面積が縮小するため、式(1)の代表長さLが小さくなり、本体部21よりもストークス数Stが増大する。したがって、連結部22では液滴BDが壁面20Sに寄って当該壁面20Sに衝突し易くなるため、この連結部22の壁面20Sに第1の捕集部50-1を設けることにより、液滴BD、及び液膜BFの捕集効率が高められる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の排ガス処理装置100は、第1実施形態の排ガス処理装置100の構成に加え、排気筒30の内部には、旋回しながら進行する排ガスAの当該旋回を強めるスワラ70が設けられ、排気筒30の壁面30Sには、スワラ70よりも下流の位置に、排ガスAに同伴する液滴BDを捕集する第2の捕集部50-2が設けられる。
この構成によれば、装置が大型化した場合でも、スワラ70による圧力損失を増加させることなく、吸収塔20から排気筒30のスワラ70に至る液滴BDの量を十分に抑えることができ、排気筒30に流入にした液滴BDを第2の捕集部50-2で十分に捕集できる。
【0048】
また、本実施形態の排ガス処理装置100は、第2の捕集部50-2によって捕集された液滴BD、及び液膜BFから生じる液体を吸収塔20の内部に戻す第2の配管60-2を備える。
この構成によれば、第2の捕集部50-2が、例えば、廃液タンク5、及びドレインパイプ5Aなどのように圧力変動が大きな箇所に第2の配管60-2を通じて接続される場合に比べ、液滴BD、及び液膜BFを取込口502Aから安定的に取り込んで捕集することができる。
【0049】
3.変形例
以上に例示した各実施形態に付加される具体的な変形の形態を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の形態を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0050】
(1)上述した第2実施形態において、吸収塔20が備える第1の捕集部50-1の構造は、排気筒30の第2の捕集部50-2によって十分に捕集できる量まで、当該排気筒30に流入する液滴BDを削減できる構造であれば、第2の捕集部50-2と同じである必要はない。
【0051】
図7は、本変形例に係る排ガス処理装置の一例を模式的に示す図である。
第1の捕集部50-1は、図7に示すように、吸収塔20の内部の壁面20Sに形成された吸収液Bの液膜を吸収することにより捕集し、第1の捕集部50-1における鉛直方向の下端部で比較的重量の大きな液滴BEを形成する構造であってもよい。この構造によれば、第1の捕集部50-1によって形成された液滴BEが自重により壁面20Sを伝って吸収塔20の底部20Cに向けて移動することにより回収される。なお、本構成において第1の配管60-1は不要となる。
【0052】
係る第1の捕集部50-1には、例えば、金属網、エキスパンダメタル、コルゲート加工された金属板、及びメタルハニカムといった薄い板状の部材を用いることができる。第1の捕集部50-1に板状部材が用いられることにより、吸収塔20の内部における第1の捕集部50-1の突出量が抑えられるため、第1の捕集部50-1による圧力損失も抑えられる。
【0053】
(2)第1実施形態及び第2実施形態において、海水が吸収液に用いられる排ガス処理装置100を例示した。しかしながら、排ガス処理装置100が排ガスAの処理に用いる液体は海水に限定されない。具体的には、当該液体には、海水、アミン溶液、アルカリ系水溶液又は酸性水溶液のいずれかが、排ガスAに含まれる処理対象に応じて用いられてもよい。例えば、処理対象が二酸化炭素である場合、アミン溶液が液体に用いられてもよい。また例えば、処理対象が塩化水素である場合、アルカリ系水溶液又は酸性水溶液が液体に用いられてもよい。
【0054】
(3)第1実施形態及び第2実施形態において、排ガス処理装置100が船舶1に設置される場合を例示した。しかしながら、設置場所は船舶1に限定されない。設置場所は例えば工場などでもよく、設置場所に設けられた構造物は例えばダクトなどでもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…船舶、20…吸収塔、20C…底部、20S…壁面、21…本体部、22…連結部、30…排気筒、40…噴霧部、50-1…第1の捕集部、50-2…第2の捕集部、60-1…第1の配管、60-2…第2の配管、70…スワラ、100…排ガス処理装置、A…排ガス、BD…液滴、BF…液膜、Ra、Rb…内径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7