(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138786
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】カレントミラー回路、スイッチ装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
G05F 3/26 20060101AFI20241002BHJP
H03F 3/343 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G05F3/26
H03F3/343 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049466
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 克明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】宅間 徹
【テーマコード(参考)】
5H420
5J500
【Fターム(参考)】
5H420NA16
5H420NA17
5H420NB03
5H420NB12
5H420NB25
5H420NC02
5H420NC17
5H420NC23
5H420NE15
5J500AA03
5J500AA43
5J500AA51
5J500AC65
5J500AF10
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5J500AH10
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5J500AK02
5J500AK03
5J500AK05
5J500AK06
5J500AK10
5J500AK17
5J500AK47
5J500AM05
5J500AM13
5J500AM21
5J500AS07
(57)【要約】
【課題】MOSトランジスタによって構成されるカレントミラー回路において過渡応答時間を短縮する。
【解決手段】カレントミラー回路(CM1)は、入力電流を流す第1MOSトランジスタ(Q1)と、前記第1MOSトランジスタのソースに自身のソースが接続され、前記第1MOSトランジスタのゲートに自身のゲートが接続され、前記入力電流に応じた出力電流を流す第2MOSトランジスタ(Q2)と、前記第1MOSトランジスタのドレインに入力端が接続され、前記第1MOSトランジスタおよび前記第2MOSトランジスタの各ゲートに出力端が接続されるボルテージフォロワ回路(A1)と、前記ボルテージフォロワ回路にバイアス電流を供給する電流源(Q3、Q4)と、を備える。前記電流源は、前記出力電流が増加するときに、前記出力電流が一定であるときよりも前記バイアス電流を大きくする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電流を流すように構成された第1MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタのソースに自身のソースが接続され、前記第1MOSトランジスタのゲートに自身のゲートが接続され、前記入力電流に応じた出力電流を流すように構成された第2MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタのドレインに入力端が接続され、前記第1MOSトランジスタおよび前記第2MOSトランジスタの各ゲートに出力端が接続されるボルテージフォロワ回路と、
前記ボルテージフォロワ回路にバイアス電流を供給するように構成された電流源と、
を備え、
前記電流源は、前記出力電流が増加するときに、前記出力電流が一定であるときよりも前記バイアス電流を大きくするように構成されている、カレントミラー回路。
【請求項2】
前記第1MOSトランジスタのゲート-ドレイン間に設けられるミラー補償回路を備える、請求項1に記載のカレントミラー回路。
【請求項3】
前記電流源は、第1電流源及び第2電流源を含み、
前記第1電流源は、前記出力電流が増加するとき、及び、前記出力電流が一定であるときの両方で動作するように構成され、
前記第2電流源は、前記出力電流が増加するときに動作するように構成されている、請求項1に記載のカレントミラー回路。
【請求項4】
前記ボルテージフォロワ回路は、差動アンプを含み、
前記差動アンプの非反転入力端が前記第1MOSトランジスタのドレインに接続され、
前記差動アンプの反転入力端及び出力端が前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタの各ゲートに接続される、請求項1に記載のカレントミラー回路。
【請求項5】
前記差動アンプの入力差動対が一対のデプレッション型MOSトランジスタである、請求項4に記載のカレントミラー回路。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路によってゲート電圧が制御されるように構成されたパワーMOSトランジスタと、を備える、スイッチ装置。
【請求項7】
前記電流源は、前記パワーMOSトランジスタの電圧に基づき、前記バイアス電流の値を切り替えるように構成されている、請求項6に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
請求項6に記載のスイッチ装置を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、カレントミラー回路、スイッチ装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタによって構成されるカレントミラー回路が種々開発されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
カレントミラー回路は、入力電流にミラー比を乗じた値の出力電流を生成して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、出力電流が増加する過渡状態では、出力電流が入力電流にミラー比を乗じた値に達するまでに時間(過渡応答時間)がかかる。過渡応答時間は、MOSトランジスタによって構成されるカレントミラー回路では入力電流の値と出力電流を流すMOSトランジスタのゲート容量とによって決まる。
【0006】
出力電流が増加する過渡状態の例としては、カレントミラー回路が起動して出力電流が零から設定値に増加する場合、ミラー比又は入力電流が切り替えられて出力電流が第1設定値から第2設定値(>第1設定値)に増加する場合等が挙げられる。
【0007】
出力電流の設定値が大きい場合、出力電流を流すMOSトランジスタのゲート容量が大きくなるため、過渡応答時間の短縮化が特に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に開示されているカレントミラー回路は、入力電流を流すように構成された第1MOSトランジスタと、前記第1MOSトランジスタのソースに自身のソースが接続され、前記第1MOSトランジスタのゲートに自身のゲートが接続され、前記入力電流に応じた出力電流を流すように構成された第2MOSトランジスタと、前記第1MOSトランジスタのドレインに入力端が接続され、前記第1MOSトランジスタおよび前記第2MOSトランジスタの各ゲートに出力端が接続されるボルテージフォロワ回路と、前記ボルテージフォロワ回路にバイアス電流を供給するように構成された電流源と、備える。前記電流源は、前記出力電流が増加するときに、前記出力電流が一定であるときよりも前記バイアス電流を大きくするように構成されている。
【0009】
本明細書中に開示されているスイッチ装置は、上記構成のカレントミラー回路と、前記カレントミラー回路によってゲート電圧が制御されるように構成されたパワーMOSトランジスタと、を備える。
【0010】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成のスイッチ装置を備える。
【発明の効果】
【0011】
本明細書中に開示されている発明によれば、MOSトランジスタによって構成されるカレントミラー回路において過渡応答時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1比較例に係るカレントミラー回路の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第2比較例に係るカレントミラー回路の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るスイッチ装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るスイッチ装置の詳細構成を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るスイッチ装置の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るスイッチ装置の他の詳細構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るスイッチ装置の詳細構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るスイッチ装置の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るスイッチ装置の他の詳細構成を示す図である。
【
図11】
図11は、カレントミラー回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOSトランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0014】
本明細書において、一定とは、理想的な状態において変動しないことを意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動する場合も含む。
【0015】
<第1比較例>
まず、本開示に係る実施形態について説明する前に、第1比較例及び第2比較例について順に説明する。第1比較例及び第2比較例との比較において、本開示に係る実施形態の有利な効果等が明らかになる。
【0016】
図1は、第1比較例に係るカレントミラー回路の構成(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)を示す図である。
【0017】
図1に示すカレントミラー回路CM11は、Pチャネル型のMOSトランジスタQ11及びQ12を備える。MOSトランジスタQ11及びQ12の各ソースには電源電圧VDDが印加される。MOSトランジスタQ11及びQ12の各ゲートは、MOSトランジスタQ11のドレインに接続される。
【0018】
MOSトランジスタQ11のドレイン電流N×Irefは、カレントミラー回路CM11の入力電流になる。MOSトランジスタQ11のドレイン電流に応じたMOSトランジスタQ12のドレイン電流Ioutは、カレントミラー回路CM11の出力電流になる。
【0019】
MOSトランジスタQ11のドレイン電流N×Irefは、定電流源CS11と、Nチャネル型のMOSトランジスタM11及びM12とによって生成される。定電流源CS11は、一定の基準電流Irefを出力する。MOSトランジスタM11及びM12によって構成されるカレントミラー回路は、基準電流Irefを入力し、基準電流IrefのN倍の電流N×Irefを出力する。
【0020】
図1に示すカレントミラー回路CM11は、入力電流の値が大きいので、過渡応答時間を短縮することができる。しかしながら、
図1に示すカレントミラー回路CM11は、消費電流が大きくなるという問題点、及び、MOSトランジスタQ11のサイズが大きくなるという問題点を有する。
【0021】
<第2比較例>
図2は、第2比較例に係るカレントミラー回路の構成(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)を示す図である。
【0022】
図2に示すカレントミラー回路CM12は、Pチャネル型のMOSトランジスタQ11及びQ12と、電流源CS12と、Pチャネル型のMOSトランジスタM13と、を備える。MOSトランジスタQ11及びQ12の各ソースと電流源CS12の第1端とには電源電圧VDDが印加される。MOSトランジスタQ11及びQ12の各ゲートと電流源CS12の第2端とは、MOSトランジスタM13のソースに接続される。MOSトランジスタM13のゲートは、MOSトランジスタQ11のドレインに接続される。MOSトランジスタM13のドレインは、グラウンド電位に接続される。
【0023】
図2に示すカレントミラー回路CM12は、MOSトランジスタM13によって構成されるソースフォロワ回路を利用することで、過渡応答時間を短縮することができる。また、
図2に示すカレントミラー回路CM12は、MOSトランジスタM13によって構成されるソースフォロワ回路を利用することで、消費電流が大きくなること及びMOSトランジスタQ11のサイズが大きくなることを回避することができる。
【0024】
しかしながら、
図2に示すカレントミラー回路CM12は、Pチャネル型のMOSトランジスタQ11のソース-ゲート間電圧及びPチャネル型のMOSトランジスタM13のソース-ゲート間電圧によって、動作範囲が悪化する(動作可能な電源電圧VDDの最小値が大きくなってしまう)という問題点を有する。
【0025】
<第1実施形態>
(スイッチ装置の構成)
図3は、第1実施形態に係るスイッチ装置の構成を示す図である。
図3に示すスイッチ装置1は、負荷LD1とグラウンド電位との間を導通/遮断するローサイドスイッチIC(Integrated Circuit)である。
【0026】
スイッチ装置1は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、端子T1~T4を備える。
【0027】
端子T1は、負荷LD1の第1端に接続される。負荷LD1の第2端には、直流電圧VCCが印加される。端子T2は、グラウンド電位に接続される。端子T3は、入力信号INを受け取る。
【0028】
端子T4は、直流電源VS1の正極に接続される。直流電源VS1の負極は、グラウンド電位に接続される。直流電源VS1は電圧VDDを出力する。端子T4に印加される電圧VDDは、スイッチ装置1の内部において電源電圧として用いられる。
【0029】
スイッチ装置1は、抵抗Z1及びZ2と、定電流源CS1と、Nチャネル型のMOSトランジスタM1~M5と、カレントミラー回路CM1と、を備える。なお、スイッチ装置1は、バイアス電圧Bias1~Bias3を生成する回路(
図3において不図示)も備える。
【0030】
抵抗Z1及びZ2の各第1端は端子T4に接続される。抵抗Z1の第2端は、カレントミラー回路CM1の電源電圧印加端に接続される。抵抗Z2の第2端は、定電流源CS1の第1端に接続される。
【0031】
定電流源CS1と、MOSトランジスタM1及びM2とは、カレントミラー回路CM1の入力電流を生成する。定電流源CS1は、一定の基準電流Irefを出力する。MOSトランジスタM1及びM2によって構成されるカレントミラー回路は、基準電流Irefを入力し、基準電流Irefと同じ値の電流Irefを出力する。
【0032】
入力信号INがHIGHレベルであるときに、MOSトランジスタM3がオフになり、MOSトランジスタM1及びM2によって構成されるカレントミラー回路と、カレントミラー回路CM1とが動作する。
【0033】
カレントミラー回路CM1の出力電流は、パワーMOSトランジスタであるMOSトランジスタM5のゲート容量を充電する充電電流Igcである。したがって、入力信号INがHIGHレベルであるときに、MOSトランジスタM5はオンになる。
【0034】
なお、MOSトランジスタM5のドレインは端子T1に接続され、MOSトランジスタM5のソースは端子T2に接続される。
【0035】
一方、入力信号INがLOWレベルであるときに、MOSトランジスタM3がオンになり、定電流源CS1から出力される基準電流IrefがMOSトランジスタM1及びM2によって構成されるカレントミラー回路に供給されなくなるため、MOSトランジスタM1及びM2によって構成されるカレントミラー回路と、カレントミラー回路CM1とが動作を停止する。
【0036】
MOSトランジスタM5のゲートに供給されるバイアス電圧Bias3は、入力信号INがHIGHレベルであるときにLOWレベルになり、入力信号INがLOWレベルであるときにHIGHレベルになる。MOSトランジスタM5のドレイン電流は、MOSトランジスタM5のゲート容量を放電する放電電流である。したがって、入力信号INがLOWレベルであるときに、MOSトランジスタM5はオフになる。
【0037】
(カレントミラー回路の構成)
カレントミラー回路CM1は、Pチャネル型のMOSトランジスタQ1及びQ2と、差動アンプA1と、Nチャネル型のMOSトランジスタQ3及びQ4と、キャパシタC1と、抵抗R1と、を備える。
【0038】
MOSトランジスタQ1及びQ2の各ソースと差動アンプA1の正側電源端は、抵抗Z1の第2端に接続される。
【0039】
MOSトランジスタQ1のゲートは、MOSトランジスタQ2のゲートと、差動アンプA1の反転入力端及び出力端と、抵抗R1の第1端と、に接続される。抵抗R1の第2端は、キャパシタC1の第1端に接続される。キャパシタC1の第2端は、MOSトランジスタQ1のドレインと、差動アンプA1の非反転入力端とに接続される。
【0040】
キャパシタC1及び抵抗R1は、MOSトランジスタQ1のゲート-ドレイン間に設けられるミラー補償回路の一例である。ミラー補償回路が設けられることによって、カレントミラー回路CM1の出力電流Igcの波形が安定する。なお、カレントミラー回路CM1は、ミラー補償回路を無くしても動作可能である。つまり、カレントミラー回路CM1からミラー補償回路を取り除いてもよい。
【0041】
差動アンプA1の負側電源端は、MOSトランジスタQ3及びQ4の各ドレインに接続される。MOSトランジスタQ3及びQ4の各ソースは、端子T2に接続される。MOSトランジスタQ3のゲートにバイアス電圧Bias1が供給され、MOSトランジスタQ4のゲートにバイアス電圧Bias2が供給される。
【0042】
MOSトランジスタQ1のドレイン電流は、カレントミラー回路CM1の入力電流となる。MOSトランジスタQ2のドレイン電流は、カレントミラー回路CM1の出力電流Igcとなる。
【0043】
MOSトランジスタQ3及びQ4は、差動アンプA1によって構成されるボルテージフォロワ回路にバイアス電流(差動アンプA1のテール電流)を供給する電流源である。MOSトランジスタQ3及びQ4によって構成される電流源は、カレントミラー回路CM1の出力電流Igcが増加するときに、出力電流Igcが一定であるときよりもバイアス電流を大きくする。具体的には、MOSトランジスタQ3及びQ4によって構成される電流源は、カレントミラー回路CM1の起動時に、カレントミラー回路CM1の起動完了後よりもバイアス電流を大きくする。
【0044】
差動アンプA1によって構成されるボルテージフォロワ回路に供給されるバイアス電流は、MOSトランジスタQ3のドレイン電流であるバイアス電流Ibias1とMOSトランジスタQ4のドレイン電流であるバイアス電流Ibias2との合計である。
【0045】
カレントミラー回路CM1の出力電流Igcが増加するときに、バイアス電圧Bias1及びBais2がHIGHレベルになり、MOSトランジスタQ3及びQ4の両方がオンになって動作する。したがって、カレントミラー回路CM1の出力電流Igcが増加するときに、MOSトランジスタQ3のドレイン電流であるバイアス電流Ibias1とMOSトランジスタQ4のドレイン電流であるバイアス電流Ibias2とはそれぞれ零ではない。
【0046】
一方、カレントミラー回路CM1の出力電流Igcが一定であるときに、バイアス電圧Bias1がHIGHレベルになりBais2がLOWレベルになり、MOSトランジスタQ3がオンになって動作しMOSトランジスタQ4がオフになって動作しない。したがって、カレントミラー回路CM1の出力電流Igcが一定であるときに、MOSトランジスタQ3のドレイン電流であるバイアス電流Ibias1は零ではないが、MOSトランジスタQ4のドレイン電流であるバイアス電流Ibias2は零になる。
【0047】
図3に示すカレントミラー回路CM1は、差動アンプA1によって構成されるボルテージフォロワ回路を利用することで、過渡応答時間を短縮することができる。また、
図1に示すカレントミラー回路CM1は、差動アンプA1によって構成されるボルテージフォロワ回路に供給するバイアス電流を、出力電流Igcが増加するときにのみ、出力電流Igcが一定であるときよりも増加させるので、消費電流が大きくなること及びMOSトランジスタQ11のサイズが大きくなることを回避することができる。
【0048】
さらに、
図1に示すカレントミラー回路CM1は、差動アンプA1によって構成されるボルテージフォロワ回路を利用するので、動作範囲が悪化する(動作可能な電源電圧VDDの最小値が大きくなってしまう)ことを回避することができる。
【0049】
(差動アンプの構成例)
図4は、
図3に示すスイッチ装置1の詳細構成を示す図である。
図4に示すNチャネル型のMOSトランジスタQ5及びQ6並びにPチャネル型のMOSトランジスタQ7及びQ8は、
図3に示す差動アンプA1に相当する。
【0050】
MOSトランジスタQ5及びQ6は、差動アンプA1の入力差動対である。
【0051】
MOSトランジスタQ5のゲートは、MOSトランジスタQ1のドレイン及びキャパシタC1の第2端に接続される。MOSトランジスタQ6のゲート及びドレインは、MOSトランジスタQ1及びQ2の各ゲートと、抵抗R1の第1端と、MOSトランジスタQ8のドレインに接続される。
【0052】
MOSトランジスタQ5のドレインは、MOSトランジスタQ7のドレインと、MOSトランジスタQ7及びQ8の各ゲートと、に接続される。MOSトランジスタQ7及びQ8の各ソースは抵抗Z1の第2端に接続される。
【0053】
MOSトランジスタQ5及びQ6の各ソースは、MOSトランジスタQ3及びQ4の各ドレインに接続される。
【0054】
(スイッチ装置の具体例)
図5は、第1実施形態に係るスイッチ装置の具体例を示す図である。
図5に示すNチャネル型のMOSトランジスタM6、直流電源VS2、及びコンパレータCOMP1によって構成される回路は、バイアス電圧Bias2を制御する回路の一例である。
【0055】
図5に示すNチャネル型のMOSトランジスタM6、直流電源VS2、及びコンパレータCOMP1によって構成される回路は、MOSトランジスタM5の電圧に基づき、より具体的にはMOSトランジスタM5のドレイン電圧に基づき、バイアス電圧Bias2を生成する。したがって、
図5に示す構成例では、MOSトランジスタM5の電圧に基づき、ボルテージフォロワ回路に供給されるバイアス電流の値が切り替わる。
【0056】
コンパレータCOMP1の反転入力端は、MOSトランジスタM5のドレインに接続される。コンパレータCOMP1の非反転入力端は、直流電源VS2の正極に接続される。直流電源VS2の負極は、端子T2に接続される。直流電源VS2は、基準電圧Vrefを出力する。コンパレータCOMP1の出力端は、MOSトランジスタM6のゲートに接続される。MOSトランジスタM6のドレインは、MOSトランジスタM8のゲートに接続される。MOSトランジスタM6のソースは、端子T2に接続される。
【0057】
入力信号INがLOWレベルからHIGHレベルに切り替わると、カレントミラー回路CM1が起動する。このとき、MOSトランジスタM5はまだオンになっていないため、MOSトランジスタM6のドレイン電圧は電圧VCCになり、コンパレータCOMP1の出力電圧がLOWレベルになるため、バイアス電圧Bias2はHIGHレベルになり、バイアス電流Ibias2は零にならない。
【0058】
その後、MOSトランジスタM5がオンになると、MOSトランジスタM5のドレイン電圧はグラウンド電位になり、コンパレータCOMP1の出力電圧がHIGHレベルになるため、バイアス電圧Bias2はLOWレベルになり、バイアス電流Ibias2は零になる。
【0059】
(差動アンプの他の構成例)
図6は、
図3に示すスイッチ装置1の他の詳細構成を示す図である。
図6に示すNチャネル型のMOSトランジスタQ5及びQ6並びにPチャネル型のMOSトランジスタQ7及びQ8は、
図3に示す差動アンプA1に相当する。
【0060】
図6に示すMOSトランジスタQ5及びQ6は、デプレッション型MOSトランジスタである。MOSトランジスタQ5及びQ6がデプレッション型MOSトランジスタである場合、MOSトランジスタQ5及びQ6がエンハンスメント型MOSトランジスタである場合と比較して、カレントミラー回路CM1の動作範囲を拡げることができる。
【0061】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係るスイッチ装置の詳細構成を示す図である。
図7に示すスイッチ装置2は、
図3に示すスイッチ装置1と同様に、負荷LD1とグラウンド電位との間を導通/遮断するローサイドスイッチICである。
【0062】
スイッチ装置2は、抵抗Z1及びZ2と、定電流源CS1と、Pチャネル型のMOSトランジスタM1、M2、M4、及びM5と、Nチャネル型のMOSトランジスタM3と、カレントミラー回路CM2と、を備える。なお、スイッチ装置1は、バイアス電圧Bias1~Bias3を生成する回路(
図7において不図示)も備える。
【0063】
カレントミラー回路CM2の出力電流は、MOSトランジスタM5のゲート容量を放電する放電電流Igdである。カレントミラー回路CM2は、カレントミラー回路CM1のPチャネル型とNチャネル型とを入れ替えた構成である。
【0064】
図8は、第2実施形態に係るスイッチ装置の具体例を示す図である。
図8に示すPチャネル型のMOSトランジスタM6、直流電源VS2、及びコンパレータCOMP1によって構成される回路は、バイアス電圧Bias2を制御する回路の一例である。
【0065】
入力信号INがHIGHレベルからLOWレベルに切り替わると、カレントミラー回路CM2が起動する。このとき、MOSトランジスタM5はまだオフになっていないため、MOSトランジスタM6のドレイン電圧はグラウンド電位になり、コンパレータCOMP1の出力電圧がHIGHレベルになるため、バイアス電圧Bias2はLOWレベルになり、バイアス電流Ibias2は零にならない。
【0066】
その後、MOSトランジスタM5がオフになると、MOSトランジスタM5のドレイン電圧は電圧VCCになり、コンパレータCOMP1の出力電圧がLOWレベルになるため、バイアス電圧Bias2はHIGHレベルになり、バイアス電流Ibias2は零になる。
【0067】
図9は、第2実施形態に係るスイッチ装置の他の詳細構成を示す図である。
【0068】
図9に示すMOSトランジスタQ5及びQ6は、デプレッション型MOSトランジスタである。MOSトランジスタQ5及びQ6がデプレッション型MOSトランジスタである場合、MOSトランジスタQ5及びQ6がエンハンスメント型MOSトランジスタである場合と比較して、カレントミラー回路CM2の動作範囲を拡げることができる。
【0069】
<車両への適用>
図10は、車両の一構成例を示す外観図である。車両Xは、バッテリ(本図では不図示)と、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18とを搭載している。
【0070】
車両Xには、エンジン車のほか、電動車(BEV[battery electric vehicle]、HEV[hybrid electric vehicle]、PHEV/PHV(plug-in hybrid electric vehicle/plug-in hybrid vehicle]、又は、FCEV/FCV(fuel cell electric vehicle/fuel cell vehicle]などのxEV)も含まれる。
【0071】
なお、
図10における電子機器X11~X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0072】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)、または、モータに関する制御(トルク制御、及び、電力回生制御など)を行う電子制御ユニットである。
【0073】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]及びDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0074】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0075】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0076】
電子機器X15は、ドアロック及び防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0077】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品またはメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0078】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0079】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0080】
なお、先に説明したスイッチ装置1又は2、及び、負荷LD1は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0081】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0082】
例えば、上記実施形態では、ローサイドスイッチICへの適用例を挙げたが、ハイサイドスイッチICにも上記実施形態と同様の回路構成を適用することが可能である。
【0083】
例えば、
図3に示すカレントミラー回路CM1は、
図11に示すカレントミラー回路CM1’に変形することもできる。
図11に示すカレントミラー回路CM1’は、
図3に示すカレントミラー回路CM1にMOSトランジスタQ2’及びスイッチSW1を追加した構成である。
図11に示すカレントミラー回路CM1’では、MOSトランジスタQ2’及びスイッチSW1の直列接続体がMOSトランジスタQ2に対して並列接続され、MOSトランジスタQ2’のゲートがMOSトランジスタQ2のゲートに接続される。
図11に示すカレントミラー回路CM1’は、ミラー比を切り替えることができる。
【0084】
図11に示すカレントミラー回路CM1’は、スイッチSW1をターンオンすることで出力電流を増加させることができる。
図11に示すカレントミラー回路CM1’では、例えばスイッチSW1をターンオンしてからカレントミラー回路CM1’の出力電流がカレントミラー回路CM1’の入力電流に切り替え後のミラー比を掛けた値に達するまでの間、MOSトランジスタQ4が電流を流すようにすればよい。なお、
図11に示すカレントミラー回路CM1’は、ミラー比が切り替えられて出力電流が第1設定値から第2設定値(>第1設定値)に増加する構成であるが、入力電流(基準電流Iref)の設定値が切り替えられて出力電流が第1設定値から第2設定値(>第1設定値)に増加する構成であってもよい。
【0085】
先に説明したカレントミラー回路CM1、CM2、及びCM1’は、スイッチ装置以外の装置に搭載されてもよい。
【0086】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0087】
本開示のカレントミラー回路(CM1、CM2)は、入力電流を流すように構成された第1MOSトランジスタ(Q1)と、前記第1MOSトランジスタのソースに自身のソースが接続され、前記第1MOSトランジスタのゲートに自身のゲートが接続され、前記入力電流に応じた出力電流を流すように構成された第2MOSトランジスタ(Q2)と、前記第1MOSトランジスタのドレインに入力端が接続され、前記第1MOSトランジスタおよび前記第2MOSトランジスタの各ゲートに出力端が接続されるボルテージフォロワ回路(A1、Q5~Q8)と、前記ボルテージフォロワ回路にバイアス電流を供給するように構成された電流源(Q3、Q4)と、を備え、前記電流源は、前記出力電流が増加するときに、前記出力電流が一定であるときよりも前記バイアス電流を大きくするように構成されている構成(第1の構成)である。
【0088】
上記第1の構成のカレントミラー回路において、前記第1MOSトランジスタのゲート-ドレイン間に設けられるミラー補償回路(C1、R1)を備える構成(第2の構成)であってもよい。
【0089】
上記第1又は第2の構成のカレントミラー回路において、前記電流源は、第1電流源及び第2電流源を含み、前記第1電流源は、前記出力電流が増加するとき、及び、前記出力電流が一定であるときの両方で動作するように構成され、前記第2電流源は、前記入力電流が増加するときに動作するように構成されている構成(第3の構成)であってもよい。
【0090】
上記第1~第3いずれかの構成のカレントミラー回路において、前記ボルテージフォロワ回路は、差動アンプ(A1)を含み、前記差動アンプの非反転入力端が前記第1MOSトランジスタのドレインに接続され、前記差動アンプの反転入力端及び出力端が前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタの各ゲートに接続される構成(第4の構成)であってもよい。
【0091】
上記第4の構成のカレントミラー回路において、前記差動アンプの入力差動対が一対のデプレッション型MOSトランジスタ(Q5、Q6)である構成(第5の構成)であってもよい。
【0092】
本開示のスイッチ装置(1、2)は、上記第1~第5いずれかの構成のカレントミラー回路と、前記カレントミラー回路によってゲート電圧が制御されるように構成されたパワーMOSトランジスタ(M5)と、を備える構成(第6の構成)である。
【0093】
上記第6の構成のスイッチ装置において、前記電流源は、前記パワーMOSトランジスタの電圧に基づき、前記バイアス電流の値を切り替えるように構成されている構成(第7の構成)であってもよい。
【0094】
本開示の車両(X)は、上記第6又は第7の構成のスイッチ装置を備える構成(第8の構成)である。
【符号の説明】
【0095】
1、2 スイッチ装置
A1 差動アンプ
C1 キャパシタ
CM1、CM2、CM11、CM12、CM1’ カレントミラー回路
COMP1 コンパレータ
CS1、CS11 定電流源
CS12 電流源
LD1 負荷
M1~M6、M11~M13 MOSトランジスタ
Q1~Q8、Q11、Q12、Q2’ MOSトランジスタ
T1~T4 端子
R1、Z1、Z2 抵抗
SW1 スイッチ
VS1、VS2 直流電源
X 車両