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  • 特開-ヒンジキャップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138792
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B65D47/08 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049478
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武尚
(72)【発明者】
【氏名】本慶 浩平
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB09
3E084DB13
3E084DC03
3E084FA03
3E084FA09
3E084FC07
3E084GA01
3E084GA06
3E084GB01
3E084GB12
3E084HA03
3E084HB02
3E084HC03
3E084HD03
3E084KB01
3E084LA03
3E084LA18
3E084LB02
(57)【要約】
【課題】上蓋が一度に急激に閉まりきること抑制でき、大きな力を必要とせずに上蓋の開閉操作を行えるヒンジキャップを提供する。
【解決手段】ヒンジ5を介してキャップ本体4と上蓋6が一体をなし、キャップ本体4が本体部7と中栓8と注出筒9を有し、上蓋6は上蓋天面に注出筒9に対向する上蓋インナー61を有し、上蓋インナー61は、上蓋周方向に沿って環状をなし、内周面が注出筒9の水切り外側縁91に液密に当接するインナーシール面62をなし、蓋径方向でヒンジ5に対向する部位のインナー内側に水切り外側縁91の縁上を摺動する制動面64を有し、制動面64は、インナーシール面62から蓋径方向外側に窪み、かつ上蓋天面側からインナー開口側に向けて蓋径方向外側に傾斜する円弧面をなす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着するキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体と一体をなす上蓋を有し、
キャップ本体は、容器の口部を容器の軸心周りに囲む本体部と、容器の口部を覆う中栓と、中栓開口を囲む注出筒を有し、
上蓋は、上蓋天面に注出筒に対向する上蓋インナーを有し、
上蓋インナーは、上蓋周方向に沿って環状をなし、内周面が注出筒の水切り外側縁に液密に当接するインナーシール面をなし、蓋径方向でヒンジに対向する部位のインナー内側に水切り外側縁上を摺動する制動面を有し、
制動面は、インナーシール面から蓋径方向外側に窪み、かつ上蓋天面側からインナー開口側に向けて蓋径方向外側に傾斜する円弧面をなすことを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
上蓋インナーは開口縁内側に上蓋天面側からインナー開口側に向けて蓋径方向外側に広がる開口縁テーパ面を有し、制動面は開口縁テーパ面とインナーシール面にまたがって形成することを特徴とする請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
制動面の上蓋周方向両側縁が開口縁テーパ面との境をなす線状境界部をなし、両線状境界部間が上蓋インナーの開口縁外側から開口縁内側に向かうほどに広がり、両線状境界部に入り込んだ水切り外側縁に両線状境界部間の制動面を押し付けて上蓋を微小開度に保持することを特徴とする請求項2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
キャップ本体は、本体周方向に沿って環状をなして本体径方向外側に隆起する上蓋保持部を有し、上蓋は内周面に蓋径方向内側に隆起する嵌合突起部を有し、嵌合突起部が上蓋保持部に本体軸心方向で係り合って上蓋を閉栓状態に保持することを特徴とする請求項1また3に記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップに関し、ヒンジ回りに開閉動する上蓋を保持する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、ヒンジを介して結合されたキャップ本体と上蓋とを有する合成樹脂製の液はね防止ヒンジキャップが開示されている。キャップ本体は、上面に設けた注出筒と、注出筒を囲む係合部と、注出筒の開口部を閉鎖する遮断壁と、遮断壁に設けたプルリングと、キャップ本体の上面に連続する側壁と、側壁の内周面に設けた環状突条とを備えている。上蓋は、内周面に、閉蓋時に係合部に係合する係止部と、閉蓋時に側壁の下部に形成した当接面に当接する下端面とを備えており、上蓋のスカート内面には側壁の上部と当接する係止規制部を設けている。
【0003】
また、特許文献2に開示するチューブ容器用キャップは、吐出用開口を有する固定部と、吐出用開口を封鎖する蓋部と、ヒンジ部の回りで蓋部が回動して蓋部の開閉を行うものである。固定部の筒状の小径部が蓋部の内筒部に進入し、小径部の外側に配置する環状突起と内筒部の内側の係合突起とが互いに相手を乗り越え、環状突起が内筒部の内側に密着して閉状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4334820号
【特許文献2】特開2007-168825
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のヒンジキャップには、内容物によっては、異物が容器内に入らないように、上蓋を微小開度に保持して液だしする場合があり、上蓋を微小開度に保持する構造が求められる。
【0006】
このため、上蓋の閉栓操作において上蓋が閉栓状態となるまでの間に2段階で嵌合する構造がある。この構造は、注出筒に外嵌合する上蓋インナーが注出筒の水きり外側縁に液密に接するインナーシール面を有するもので、上蓋インナーの開口縁内測面に上蓋径方向内側に隆起する突起部を設け、この突起部が注出筒の径方向外側に隆起する水きり外側縁に係り合うことで、上蓋の閉栓操作の途中で上蓋を一旦保持し、上蓋が一度に急激に閉まりきることを抑制し、突起部が水きり外側縁に当たる位置で上蓋を微小開度に保持できる。
【0007】
しかし、上蓋の開閉操作時に突起部が水きり外側縁を乗り越えるので、上蓋の開閉操作に必要な力が大きくなる。突起部が水きり外側縁を乗り越える力が大きくなると、使用者は上蓋の閉栓操作時に突起部が水きり外側縁を乗り越えた位置を最終の閉栓位置と誤認する恐れがあり、上蓋の閉栓操作において上蓋が閉栓状態となるまでの間に2段階で嵌合する感覚を使用者に安定して与えることが難しい問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、上蓋が一度に急激に閉まりきることを抑制でき、上蓋の微小開度を容易に実現でき、かつ大きな力を必要とせずに上蓋の開閉操作を行えるヒンジキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るヒンジキャップは、容器の口部に装着するキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体と一体をなす上蓋を有し、キャップ本体は、容器の口部を容器の軸心周りに囲む本体部と、容器の口部を覆う中栓と、中栓開口を囲む注出筒を有し、上蓋は、上蓋天面に注出筒に対向する上蓋インナーを有し、上蓋インナーは、上蓋周方向に沿って環状をなし、内周面が注出筒の水切り外側縁に液密に当接するインナーシール面をなし、蓋径方向でヒンジに対向する部位のインナー内側に水切り外側縁上を摺動する制動面を有し、制動面は、インナーシール面から蓋径方向外側に窪み、かつ上蓋天面側からインナー開口側に向けて蓋径方向外側に傾斜する円弧面をなすことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るヒンジキャップにおいて、上蓋インナーは開口縁内側に上蓋天面側からインナー開口側に向けて蓋径方向外側に広がる開口縁テーパ面を有し、制動面は開口縁テーパ面とインナーシール面にまたがって形成することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るヒンジキャップにおいて、制動面の上蓋周方向両側縁が開口縁テーパ面との境をなす線状境界部をなし、両線状境界部間が上蓋インナーの開口縁外側から開口縁内側に向かうほどに広がり、両線状境界部間に入り込んだ水切り外側縁に両線状境界部間の制動面を押し付けて上蓋を微小開度に保持することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るヒンジキャップにおいて、キャップ本体は、本体周方向に沿って環状をなして本体径方向外側に隆起する上蓋保持部を有し、上蓋は内周面に蓋径方向内側に隆起する嵌合突起部を有し、嵌合突起部が上蓋保持部に本体軸心方向で係り合って上蓋を閉栓状態に保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、上蓋インナーの制動面が水切り外側縁上を摺動するので、上蓋の閉栓操作時に上蓋が一度に急激に閉まりきることを抑制できる。すなわち、制動面の円弧面は、インナー開口側において蓋径方向外側に傾斜するので、上蓋の閉栓操作初期時に制動面が水切り外側縁に接する状態となる。このため、大きな力を必要とせずに制動面が水切り外側縁上を摺動する上蓋の閉栓操作を開始でき、閉栓操作が進行して水切り外側縁が制動面の上蓋天面側に近づくにつれて制動面から受ける抵抗力が増加し、上蓋が一度に急激に閉まりきることを抑制できる。
【0014】
制動面の円弧面は線状境界部を境として開口縁テーパ面よりも蓋径方向外側に窪むので、上蓋の閉栓操作時に、水切り外側縁が線状境界部を容易に越えて線状境界部の相互間の窪みに入り込むので、水切り外側縁に両線状境界部間の制動面を押し付けることで、大きな力を必要とせずに上蓋を微小開度に保持できる。
【0015】
また、上蓋の開栓操作時には円弧面が蓋径方向外側に広がる方向に水切り外側縁が制動面上を摺動するので、大きな力を必要とせず開栓操作を行える。
【0016】
このため、上蓋の開閉操作時に、水切り外側縁が線状境界部を通過する際に必要な力と、上蓋の嵌合突起部が本体部の上蓋保持部を乗り越えるために必要な力の差が小さくなり、上蓋が閉栓状態に至るまでの間に2段階で嵌合する感覚を使用者に安定して与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るヒンジキャップの開栓状態の断面図
図2】同実施の形態に係るヒンジキャップの開栓状態の平面図
図3】同実施の形態に係るヒンジキャップの閉栓操作初期状態を示す断面図
図4】同実施の形態に係るヒンジキャップの閉栓操作途中状態を示す断面図
図5】同実施の形態に係るヒンジキャップの閉栓状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るヒンジキャップの実施の形態を、図面を参照して説明する。図1図5に示すように、キャップ1は容器2の口部3に装着するキャップ本体4と、ヒンジ5およびバンド51を介してキャップ本体4と一体をなし、ヒンジ廻りに開閉動する上蓋6を有している。キャップ1は全体が樹脂製である。
【0019】
キャップ本体4は、容器2の口部3を容器2の軸心周りに囲む本体部7と、口部3を覆う中栓8と、中栓開口81を囲む注出筒9を有している。
【0020】
ここでは、図1図5に示すように、未開封のキャップ1を示しているので、中栓開口81は開口予定部82によって塞がれている。開口予定部82は弱化部83を介して中栓開口81の開口縁に接続しており、プルリング84を有している。
【0021】
中栓8は、容器2の口部3に挿入する中栓インナーシール部85を有し、中栓インナーシール部85と本体部7の間に口部3を挿入する嵌合溝86を形成している。
【0022】
上蓋6は、内側の上蓋天面に注出筒9に対向する上蓋インナー61を有している。上蓋インナー61は、上蓋6の軸心周りに上蓋周方向に沿って環状をなし、内周面が注出筒9の開口縁をなす水切り外側縁91に液密に当接するインナーシール面62をなす。
【0023】
また、上蓋6は、蓋径方向でヒンジ5に対向する外側部位に鍔部63を有し、鍔部63に対応する内側部位のインナー内側に水切り外側縁91の縁上を摺動する制動面64を有している。制動面64は、インナーシール面62から蓋径方向外側に窪み、かつ上蓋天面側からインナー開口側に向けて蓋径方向外側に傾斜する円弧面をなす。
【0024】
さらに、上蓋インナー61は開口縁内側に開口縁テーパ面65を有しており、開口縁テーパ面65は、上蓋天面側からインナー開口側に向けて蓋径方向外側に広がる形状をなす。
【0025】
このため、制動面64は開口縁テーパ面65とインナーシール面62にまたがって形成した切削部からなる。制動面64は上蓋周方向両側縁が開口縁テーパ面65との境をなす線状境界部67をなし、両線状境界部間が上蓋インナー61の開口縁外側から開口縁内側に向かうほどに広がっている。上蓋6の閉栓操作時には、水切り外側縁91が線状境界部67を容易に越えて線状境界部67の相互間の制動面64の窪み内に入り込み、水切り外側縁91に両線状境界部間の制動面64を押し付けて上蓋6を微小開度に保持する。
【0026】
本体部7は、容器2の口部外周に形成した容器外側凹部21に嵌合するキャップ内側凸部71を有している。
【0027】
上蓋6は、中栓8を抱え込む筒状の中栓保持部66を有し、制動面64の上蓋周方向両側に径方向内側に隆起する一対の嵌合突起部68を有している。
【0028】
キャップ本体4は外周縁に沿って環状の上蓋保持部41を有しており、上蓋保持部41はキャップ本体4の径方向外側の斜め上方に向けて広がる形状をなし、上蓋6の閉栓状態で上蓋保持部41が中栓保持部66に接する。上蓋保持部41は、外周面に円弧状に窪む嵌合面42を有し、嵌合面42において上蓋6の嵌合突起部68に嵌合する。
【0029】
以下に上記構成の作用を説明する。
(ヒンジキャップの閉栓操作初期状態)
図3に示すように、上蓋インナー61の制動面64が水切り外側縁91の縁上を摺動するので、上蓋6の閉栓操作時に上蓋6が一度に急激に閉まりきることを抑制できる。
【0030】
すなわち、制動面64の円弧面は、インナー開口側において蓋径方向外側に傾斜するので、上蓋6の閉栓操作初期時に制動面64が水切り外側縁91に接する状態となる。 このため、大きな力を必要とせずに、制動面64が水切り外側縁91の縁上を摺動する上蓋6の閉栓操作を開始でき、閉栓操作が進行して水切り外側縁91が制動面64の上蓋天面側に近づくにつれて制動面64から受ける抵抗力が増加し、上蓋6が一度に急激に閉まりきることを抑制できる。
(ヒンジキャップの閉栓操作途中状態)
図4に示すように、制動面64の円弧面は線状境界部67を境として開口縁テーパ面65よりも蓋径方向外側に窪むので、上蓋6の閉栓操作時に、水切り外側縁91が線状境界部67を容易に越えて制動面64の窪みに入り込むことができ、線状境界部67の相互間の窪みに入り込んだ水切り外側縁91に両線状境界部間の制動面64を押し付けることで、大きな力を必要とせずに上蓋6を微小開度に保持できる。
【0031】
また、上蓋6の開栓操作時には制動面64の円弧面が蓋径方向外側に広がる方向に水切り外側縁91が制動面64の上を摺動するので、大きな力を必要とせず開栓操作を行える。
【0032】
このため、上蓋6の開閉操作時に、水切り外側縁91が線状境界部67を通過する際に必要な力と、上蓋6の嵌合突起部68が本体部の上蓋保持部41を乗り越えるために必要な力の差が小さくなり、上蓋6が閉栓状態に至るまでの間に2段階で嵌合する感覚を使用者に安定して与えることができる。
(ヒンジキャップの閉栓状態)
図5に示すように、上蓋6を折り畳んだ状態において、中栓保持部66が中栓8を抱え込み、上蓋6の嵌合突起部68がキャップ本体4の上蓋保持部41に嵌合し、上蓋6のインナーシール面62と水切り外側縁91とが液密に当接してシールを形成する。
【符号の説明】
【0033】
1 ヒンジキャップ
2 容器
3 口部
4 キャップ本体
5 ヒンジ
6 上蓋
7 本体部
8 中栓
9 注出筒
21 容器外側凹部
41 上蓋保持部
42 嵌合面
51 バンド
61 上蓋インナー
62 インナーシール面
63 鍔部
64 制動面
65 開口縁テーパ面
66 中栓保持部
67 線状境界部
68 嵌合突起部
71 キャップ内側凸部
81 中栓開口
82 開口予定部
83 弱化部
84 プルリング
85 中栓インナーシール部
86 嵌合溝
91 水切り外側縁
図1
図2
図3
図4
図5