IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田中 成典の特許一覧 ▶ 今井 龍一の特許一覧 ▶ 中村 健二の特許一覧 ▶ 塚田 義典の特許一覧 ▶ Intelligent Style株式会社の特許一覧

特開2024-138801三次元点群データに基づく三次元モデル生成補助装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138801
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】三次元点群データに基づく三次元モデル生成補助装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G06T17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049492
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】500063228
【氏名又は名称】田中 成典
(71)【出願人】
【識別番号】511121768
【氏名又は名称】今井 龍一
(71)【出願人】
【識別番号】502235692
【氏名又は名称】中村 健二
(71)【出願人】
【識別番号】517309320
【氏名又は名称】塚田 義典
(71)【出願人】
【識別番号】519113745
【氏名又は名称】Intelligent Style株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】田中 成典
(72)【発明者】
【氏名】今井 龍一
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】塚田 義典
(72)【発明者】
【氏名】中原 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】梅▲原▼ 喜政
(72)【発明者】
【氏名】神谷 大介
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄平
(72)【発明者】
【氏名】井上 晴可
(72)【発明者】
【氏名】姜 文渊
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一磨
(72)【発明者】
【氏名】鳴尾 丈司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 明
(72)【発明者】
【氏名】吉見 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】戸口 伸二
(72)【発明者】
【氏名】濱野 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】佐野 龍太
(72)【発明者】
【氏名】平見 勝洋
(72)【発明者】
【氏名】福住 建
(72)【発明者】
【氏名】奥平 敬
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰三
(72)【発明者】
【氏名】馬場 彰文
(72)【発明者】
【氏名】本間 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】相田 尚
(72)【発明者】
【氏名】其田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平野 順俊
(72)【発明者】
【氏名】大月 庄治
(72)【発明者】
【氏名】西村 修
(72)【発明者】
【氏名】安井 嘉文
(72)【発明者】
【氏名】小川 友宏
(72)【発明者】
【氏名】藤井 保史
(72)【発明者】
【氏名】松田 克巳
【テーマコード(参考)】
5B080
【Fターム(参考)】
5B080AA10
5B080BA08
5B080DA01
5B080DA06
5B080FA03
5B080FA08
(57)【要約】
【課題】 パラメトリックモデルを三次元点群データに合致させることが容易となる三次元モデル生成補助装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 三次元点群データとパラメトリックモデルの表示2においては、対象となる三次元点群データと、これに対応するパラメトリックモデルをディスプレイに表示する。操作者は、ディスプレイに表示されたパラメトリックモデルを、三次元点群データに合致するようにマウスなどによる操作を行う。ワイヤーフレームモデルの生成4においては、三次元点群データに基づいてワイヤーフレームモデルを生成する。ガイド表示6においては、生成したワイヤーフレームモデルに基づいて、操作のための補助線などのガイドを表示する。操作者は、このガイド表示を参考にして、パラメトリックモデルのパラメータの調整を行うことができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元点群データをディスプレイに表示し、
当該三次元点群データに対応するパラメトリックモデルをディスプレイに表示し、
操作者の指示を受けて、前記パラメトリックモデルが前記三次元点群データに合致するように、前記パラメトリックモデルのパラメータを変更して三次元モデルを生成する三次元モデル生成補助装置であって、
前記三次元点群データの少なくともエッジまたはコーナーを検出してワイヤーフレームモデルを生成し、
当該ワイヤーフレームモデルに基づいて、前記操作者が前記パラメトリックモデルのパラメータを変更しようとする際に、前記パラメトリックモデルを前記三次元点群データに合致させるためのガイド線を表示することを特徴とする三次元モデル生成装置。
【請求項2】
少なくとも一つのプロセッサと、
当該少なくとも一つのプロセッサによって実行されるように構成された少なくとも一つのプログラムを記録するメモリと、
を備えた三次元モデル生成装置であって、
前記少なくとも一つのプログラムは、
三次元点群データをディスプレイに表示し、
当該三次元点群データに対応するパラメトリックモデルをディスプレイに表示し、
操作者の指示を受けて、前記パラメトリックモデルが前記三次元点群データに合致するように、前記パラメトリックモデルのパラメータを変更して三次元モデルを生成する三次元モデル生成補助装置であって、
前記三次元点群データの少なくともエッジまたはコーナーを検出してワイヤーフレームモデルを生成し、
当該ワイヤーフレームモデルに基づいて、前記操作者が前記パラメトリックモデルのパラメータを変更しようとする際に、前記パラメトリックモデルを前記三次元点群データに合致させるためのガイド線を表示することを特徴とする三次元モデル生成装置。
【請求項3】
少なくとも一つのプロセッサによって実行されるように構成された少なくとも一つの三次元生成プログラムであって、
三次元点群データをディスプレイに表示し、
当該三次元点群データに対応するパラメトリックモデルをディスプレイに表示し、
操作者の指示を受けて、前記パラメトリックモデルが前記三次元点群データに合致するように、前記パラメトリックモデルのパラメータを変更して三次元モデルを生成する三次元モデル生成補助プログラムであって、
前記三次元点群データの少なくともエッジまたはコーナーを検出してワイヤーフレームモデルを生成し、
当該ワイヤーフレームモデルに基づいて、前記操作者が前記パラメトリックモデルのパラメータを変更しようとする際に、前記パラメトリックモデルを前記三次元点群データに合致させるためのガイド線を表示することを特徴とする三次元モデル生成補助プログラム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
予め用意されている複数の三次元パラメトリックモデルをディスプレイに表示し、
操作者が複数の三次元パラメトリックモデルから三次元点群データに対応する三次元パラメトリックモデルを選択することを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項5】
請求項4の装置またはプログラムにおいて、
ディスプレイに表示される複数の三次元パラメトリックモデルは、前記ワイヤーフレームモデルに類似すると判断された複数の三次元パラメトリックモデルであることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記ワイヤーフレームモデルの生成は、学習済の推定モデルを用いて、前記三次元点群データに基づいて、エッジ部分およびコーナー部分の三次元点群データを推定して抽出し、当該エッジ部分およびコーナー部分の三次元点群データに基づいてワイヤーフレームを生成することを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかの装置またはプログラムにおいて、
前記パラメトリックモデルに合致させる際の三次元点群データは、
前記ワイヤーフレームモデルに基づいて、当該ワイヤーフレームの形状的特徴を決定し、学習済推定モデルを用いて、前記決定した形状的特徴と、前記三次元点群データに基づいて、補完された三次元点群データを推定して生成された補完済三次元点群データを用いることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項8】
請求項7の装置またはプログラムにおいて、
前記ワイヤーフレームの形状的特徴は、三次元パラメトリックモデルを特定するラベルであることを特徴とする装置またはプログラム。
【請求項9】
請求項7の装置またはプログラムにおいて、
前記学習済推定モデルは、前記ワイヤーフレームモデルに基づいて前記三次元点群データを補完した事前補完三次元点群データを受けて、当該事前補完三次元点群データと前記パラメトリックモデルを特定するラベルとに基づいて、補完を行うことを特徴とする装置またはプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三次元点群データに基づいて、三次元モデル生成を補助する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人飛行機(UAV)や地上移動体(例えば自動車)などにレーザ測量装置を搭載し、地表面の形状や地物を計測することが行われている。また、固定したレーザ測量装置によって、地表面の形状や地物を計測することも行われている。計測の結果、三次元点群データが得られる。
【0003】
このようにして三次元点群データを得ることで、地物の外形形状などを把握することができる。しかし、三次元点群データであることから寸法や形状を保持しておらず、管理データとして用いるには適していない。
【0004】
そこで、三次元点群データに基づいて、平面や辺によって構成される三次元モデルを生成することが提案されている。
【0005】
たとえば、図28に示すような橋脚の三次元点群データ50について、以下のようにして三次元モデルを生成することができる。図29に示すように、この三次元点群データ50に対応する三次元パラメトリックモデル54を用意する。このパラメトリックモデル54は、各部位のパラメータP1~P6をそれぞれ変化させることができる抽象的なモデルである。換言すると、三次元点群データ52に対応するパラメトリックモデル54は、パラメータP1~P6を変化させれば、三次元点群データ50に合致させることができるような形状的特徴を有している。
【0006】
三次元点群データ50とパラメトリックモデル54をディスプレイ上に表示する。操作者は、マウスなどを操作して、パラメトリックモデル54をディスプレイ上で変形させ(パラメータP1~P6を変化させ)、三次元点群データ50に合致させる。これにより、図30に示すような三次元モデル56を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-53147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来技術では、三次元パラメトリックモデル(以下パラメトリックモデルということがある)を三次元点群データに合致させる操作が煩雑であり、多くの時間を要していた。この点、従来よりガイドを表示することで作図を補助し、作成を容易にすることが行われている(たとえば、特許文献1など)。
【0009】
しかしながら、三次元点群データにパラメトリックモデルを合致させる際にガイドラインを表示することは行われておらず、また、点群データに基づいてガイドラインを表示することはデータ形式が異なることから容易ではなかった。
【0010】
この発明は、上記の問題点を解決して、パラメトリックモデルを三次元点群データに合致させることが容易となる三次元モデル生成補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の独立して適用可能な特徴を以下に列挙する。
【0012】
(1)(2)(3)この発明に係る三次元モデル生成補助装置は、三次元点群データをディスプレイに表示し、当該三次元点群データに対応するパラメトリックモデルをディスプレイに表示し、操作者の指示を受けて、前記パラメトリックモデルが前記三次元点群データに合致するように、前記パラメトリックモデルのパラメータを変更して三次元モデルを生成する三次元モデル生成補助装置であって、前記三次元点群データの少なくともエッジまたはコーナーを検出してワイヤーフレームモデルを生成し、当該ワイヤーフレームモデルに基づいて、前記操作者が前記パラメトリックモデルのパラメータを変更しようとする際に、前記パラメトリックモデルを前記三次元点群データに合致させるためのガイド線を表示することを特徴している。
【0013】
したがって、ワイヤーフレームモデルに基づいて適切なガイド線を表示することができる。
【0014】
(4)この発明に係る三次元モデル生成補助装置は、予め用意されている複数の三次元パラメトリックモデルをディスプレイに表示し、操作者が複数の三次元パラメトリックモデルから三次元点群データに対応する三次元パラメトリックモデルを選択することを特徴としている。
【0015】
したがって、操作者の確認によって適切なパラメトリックモデルを選択することができる。
【0016】
(5)この発明に係る三次元モデル生成補助装置は、ディスプレイに表示される複数の三次元パラメトリックモデルが、前記ワイヤーフレームモデルに類似すると判断された複数の三次元パラメトリックモデルであることを特徴としている。
【0017】
したがって、類似すると判断された三次元パラメトリックモデルの中から操作者が選択することができる。
【0018】
(6)この発明に係る三次元モデル生成補助装置は、ワイヤーフレームモデルの生成において、学習済の推定モデルを用いて、前記三次元点群データに基づいて、エッジ部分およびコーナー部分の三次元点群データを推定して抽出し、当該エッジ部分およびコーナー部分の三次元点群データに基づいてワイヤーフレームを生成することを特徴としている。
【0019】
したがって、適切なワイヤーフレームモデルを生成することができる。
【0020】
(7)この発明に係る三次元モデル生成補助装置は、パラメトリックモデルに合致させる際の三次元点群データは、前記ワイヤーフレームモデルに基づいて、当該ワイヤーフレームの形状的特徴を決定し、学習済推定モデルを用いて、前記決定した形状的特徴と、前記三次元点群データに基づいて、補完された三次元点群データを推定して生成された補完済三次元点群データを用いることを特徴としている。
【0021】
したがって、欠損のある三次元点群データであっても、ワイヤーフレームモデルを生成することができる。
【0022】
(8)この発明に係る三次元モデル生成補助装置は、ワイヤーフレームの形状的特徴が、三次元パラメトリックモデルを特定するラベルであることを特徴としている。
【0023】
したがって、三次元パラメトリックモデルのラベルにより特定することで補完をより正確にすることができる。
【0024】
(9)この発明に係る三次元モデル生成装置は、学習済推定モデルが、前記ワイヤーフレームモデルに基づいて前記三次元点群データを補完した事前補完三次元点群データを受けて、当該事前補完三次元点群データと前記パラメトリックモデルを特定するラベルとに基づいて、補完を行うことを特徴としている。
【0025】
したがって、より精度良く補完を行うことができる。
【0026】
「装置」とは、1台のコンピュータによって構成されるものだけでなく、ネットワークなどを介して接続された複数のコンピュータによって構成されるものも含む概念である。したがって、本発明の手段(あるいは手段の一部でもよい)が複数のコンピュータに分散されている場合、これら複数のコンピュータが装置に該当する。
【0027】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム、オペレーティングシステムと協働してその機能を発揮するプログラム等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の一実施形態による三次元モデル生成補助装置の全体構成である。
図2】三次元モデル生成補助装置のハードウエア構成である。
図3】三次元モデル生成補助プログラムのフローチャートである。
図4】ワイヤーフレームモデル生成処理のフローチャートである。
図5図5Aは三次元点群データ、図5Bは抽出されたエッジ部分の点群データ、図5Cは抽出されたコーナ部分の点群データ、図5Dは生成されたワイヤーフレームモデルである。
図6】エッジ部分抽出、コーナ部分抽出のための推定モデルを学習するための学習データである。
図7】パラメトリックフレームモデルを示す図である。
図8】三次元点群データ50とパラメトリックモデル54を重ねて表示した画面を示す図である。
図9図9Aはパラメトリックモデル54の辺53を選択した状態を示す図、図9Bはガイド58が表示された状態を示す図、図9Cはガイド58にしたがって辺53を合致させた状態を示す図である。
図10】パラメトリックモデル54を三次元点群データ50に合致させて、三次元モデル56を完成させたときの図である。
図11】他の例によるガイド55、58の表示例である。
図12】他の例による画面表示の例である。
図13】第2の実施形態による三次元モデル生成補助装置の全体構成である。
図14】三次元モデル生成補助プログラムのフローチャートである。
図15】パラメトリックモデル選択のフローチャートである。
図16】パラメトリックモデル選択のフローチャートである。
図17】パラメトリックモデルの例である。
図18】生成されたワイヤーフレームモデルの例である。
図19】ワイヤーフレームモデルの分離を説明するための図である。
図20】パラメトリックモデルのパラメータ例である。
図21】パラメトリックモデルのパラメータ例である。
図22】他の地物の例である。
図23】第3の実施形態による三次元点群データ補完装置の全体構成である。
図24】三次元点群データ補完プログラムのフローチャートである。
図25】生成されたワイヤーフレームに欠損のある場合を示す例である。
図26】三次元点群データを補完するための推定モデルを学習するための学習データである。
図27】三次元点群データの補完と、三次元モデルの生成補助を行う場合のフローチャートである。
図28】三次元点群データの例である。
図29】パラメトリックモデルと三次元点群データの表示例である。
図30】三次元点群データにパラメトリックモデルを合致させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.第1の実施形態
1.1全体的構成
図1に、この発明の一実施形態による三次元モデル生成補助装置の全体的構成を示す。三次元点群データとパラメトリックモデルの表示2においては、対象となる三次元点群データと、これに対応するパラメトリックモデルをディスプレイに表示する。操作者は、ディスプレイに表示されたパラメトリックモデルを、三次元点群データに合致するようにマウスなどによる操作を行う。
【0030】
ワイヤーフレームモデルの生成4においては、三次元点群データに基づいてワイヤーフレームモデルを生成する。ガイド表示6においては、生成したワイヤーフレームモデルに基づいて、操作のための補助線などのガイドを表示する。
【0031】
操作者は、このガイド表示を参考にして、パラメトリックモデルのパラメータの調整を行うことができる。
【0032】
以上のように、この実施形態では、三次元点群データのワイヤーフレームモデルを生成してこれに基づいてガイドを表示するようにしている。したがって、パラメトリックモデルを三次元点群データに合致させる際に適したガイドを表示することができる。
【0033】
1.2ハードウエア構成
図2に、三次元モデル生成補助装置のハードウエア構成を示す。CPU10には、メモリ12、ディスプレイ14、通信回路16、SSD18、DVD-ROMドライブ20、キーボード/マウス22が接続されている。通信回路16は、インターネットに接続するための回路である。
【0034】
SSD18には、オペレーティングシステム24、三次元モデル生成補助プログラム26が記録されている。三次元モデル生成プログラム26は、オペレーティングシステム24と協働してその機能を発揮するものである。これらプログラムは、DVD-ROM30に記録されていたものを、DVD-ROMドライブ20を介して、SSD18にインストールしたものである。
【0035】
1.3三次元モデル生成補助処理
図3に、三次元モデル生成補助プログラム26のフローチャートを示す。以下では、橋脚の三次元点群データを対象として、その三次元モデルを生成する処理を説明する。
【0036】
CPU10は、対象となる三次元点群データ50を取得する(ステップS1)。続いて、CPU10は、対象となる三次元点群データ50に基づいて、線によって表現したワイヤーフレームモデル52を生成する(ステップS2)。次に、前記三次元点群データ50に対応するパラメトリックモデル54を取得する(ステップS3)。
【0037】
CPU10は、三次元点群データ50とパラメトリックモデル54を表示する。操作者は、マウスなどによってパラメトリックモデル54を操作し、三次元点群データ50に合致させる。この際、CPU10は、前記ワイヤーフレームモデル52に基づいて、パラメトリックモデル54を三次元点群データ50に合致させるためのガイド58を表示する(ステップS4)。
【0038】
操作者の操作によって、パラメトリックモデル54が操作され(パラメータが調整され)、三次元点群データ50に合致すると、三次元モデル56が形成される(ステップS5)。CPU10は、生成された三次元モデル56を出力する(ステップS6)。
【0039】
以下、ステップS2~S6の処理を詳細に説明する。まず、ステップS2の三次元点群データに基づいてワイヤーフレームモデルを生成する処理について説明する。図4に、ワイヤーフレームモデル生成のフローチャートを示す。
【0040】
CPU10は、三次元点群データによって構成される立体のエッジ部分(辺部分)に該当する点、およびコーナー部分(角部分)に該当する点を推定する(ステップS21)。たとえば、図5Aに示すような三次元点群データに対して、図5Bのようなエッジ部分の点と図5Cのようなコーナー部分の点を推定する。
【0041】
この実施形態では、ステップS21の推定を、学習済の推定モデルを用いて実現している。推定モデルの学習に用いる学習データは、図6Aに示すような三次元点群データ、図6Bに示すような「コーナー」のラベルの付されたコーナー部分の点群データ、図6Cに示すような「エッジ」のラベルの付されたエッジ部分の点群データのセットである。
【0042】
学習データは、実際に計測した三次元点群データについて、コーナー部分、エッジ部分の点群データを手作業にて選択して作成するようにしている。
【0043】
なお、推定モデルとしては、Xuefeng Tan et al による"Coarse-to-fine pipeline for 3D wireframe reconstruction from point cloud"(Computer & Graphics Vol 106, August 2022, Page 288-298)のアルゴリズムを用いることができる、
ステップS21において、コーナ部分、エッジ部分の点群データを抽出すると、CPU10は、各コーナー部分の点群について一つの代表点を選択してコーナー点とする。さらに、エッジ部分の端部に位置する2つのコーナー点を結ぶ直線を形成する。このようにして、図5Dに示すようなワイヤーフレームモデル52を生成する。
【0044】
SSD18には、図7に示すように、三次元点群データ50に対応するパラメトリックモデル54が記録されている。CPU10は、これをSSD18から読み出す。パラメトリックモデル54には、その数値を変化することのできるパラメータP1~P6が、所定の辺に対して設けられている。
【0045】
CPU10は、図8に示すように、三次元点群データ50にパラメトリックモデル54を重ねて、ディスプレイ14に表示する。この際、CPU10は、三次元点群データ50に基づいて生成したワイヤーフレームモデル52を、三次元点群データ50に合致するように表示する。ただし、操作者には視認できないように透明の線にて表示する。
【0046】
操作者は、マウス22を操作して、パラメトリックモデル54を三次元点群データ50に合致するよう変形する。この際、CPU10は、合致させるためのガイド58を表示する(ステップS4)。操作者は、このガイド58を参考にしてパラメトリックモデル54を三次元点群データ50に合致させるための操作を行うことができる。
【0047】
ガイド表示の例を、図9に示す。操作者が、パラメトリックモデル54の辺53を移動するため、マウスカーソル51を辺53にあわせてマウス22をクリックする。これを受けて、CPU10は、図9Aに示すように、辺53が選択されていることが分かるように表示形態を変更する(この例では、破線表示とした上、その端部に丸印を表すようにしている)。
【0048】
操作者は、この辺53をマウス22の操作によって、三次元点群データ50の対応する位置に近づける。この操作により、パラメトリックモデル54は、ZY方向に拡大縮小される。
【0049】
CPU10は、辺53が対応する位置に近づいたことを検知すると、図9Bに示すように、ガイド58を表示する。CPU10は、透明な状態で三次元点群モデル50と重ねて表示されているワイヤーフレームモデル52の、前記辺53に対応する辺を特定し、この辺を延長してガイド58を表示している。
【0050】
したがって、操作者は、辺53をガイド58に合致させれば良いことを知ることができる。さらに、CPU10は、ガイド58を表示した時点でカーソル51をガイド58上に表示する。この状態で、操作者がマウス22をクリックすると、CPU10は、パラメトリックモデル54の辺53がガイド58に合致するように、パラメトリックモデル54を変形させる。これにより、図9Cに示すとおり、辺53の方向が三次元点群データ50に合致するように、パラメトリックモデル54が変形されることになる。
【0051】
以後、パラメトリックモデル54の各辺について同様の操作を行うことで、図10に示すように、三次元点群データ50に合致するパラメトリックモデル54を得ることができる。この時のパラメータを記録し、三次元モデル56が完成する。
【0052】
1.4変形例(その他)
(1)上記実施形態では、図9Cに示すように辺53の角度と位置が正しくなるようにガイド58に沿って配置するようにしている。しかし、角度と位置だけでなく、長さも自動的に配置するようにしてもよい。この場合、辺53の長さを、ワイヤーフレームモデル52の対応する辺の長さに自動的に合致させるようにしてもよい。この場合、パラメトリックモデル54は、X方向にも変形されることになる。
【0053】
(2)上記実施形態では、対応する辺をガイド58として表示して、合致させるようにしている。しかし、図11に示すように、対応する点をガイド58として表示するようにしてもよい。あるいは、パラメトリックモデル54の面を選択すると、これに対応する三次元点群データの面をガイド58によって表示するようにしてもよい。これらの場合においても、CPU10は、ワイヤーフレームモデル52に基づいて、ガイド58を表示することができる。
【0054】
(3)上記実施形態では、辺53が近づくまではガイド58を表示しないようにしているが(図9B)、図11のように離れていてもガイド58を表示するようにしてもよい。また、移動させる点とガイド58との対応を示す線(図においては矢印55)をガイドとして表示するようにしてもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、斜視図だけを表示するようにしている。しかし、図12に示すように、斜視図、平面図、正面図、平面図をあわせて表示するようにしてもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、三次元点群データのワイヤーフレームモデルを生成し、これに基づいてガイド58を表示するようにしている。しかし、三次元点群データに基づいて面を推定し、これに基づいてガイド58を表示するようにしてもよい。三次元点群データから面を推定する際には、たとえば仮想面を回転・移動させながら最も多くの点群を含む仮想面を面として決定することができる。
【0057】
(6)上記実施形態では、CPUを用いて装置を構成したが、その一部または全部を論理回路によって構成するようにしてもよい。
【0058】
(7)上記実施形態およびその変形例は、その本質に反しない限り、他の実施形態と組み合わせて実施可能である。
【0059】
2.第2の実施形態
2.1全体的構成
上記実施形態では、三次元点群データ52に対応するパラメトリックモデル54が決まっている場合について説明した。この実施形態では、複数のパラメトリックモデル54から三次元点群データ52に対応するものを選択する場合について説明する。
【0060】
図13に、第2の実施形態による三次元モデル生成装置の全体的構成を示す。ワイヤーフレームモデルの生成4においては、三次元点群データに基づいてワイヤーフレームモデルを生成する。三次元パラメトリックモデルの選択3においては、生成されたワイヤーフレームモデルに基づいて、複数のパラメトリックモデルの中から三次元点群データに対応するパラメトリックモデルが選択される。
【0061】
三次元点群データとパラメトリックモデルの表示2においては、対象となる三次元点群データと、これに対応するパラメトリックモデルをディスプレイに表示する。操作者は、ディスプレイに表示されたパラメトリックモデルを、三次元点群データに合致するようにマウスなどによる操作を行う。
【0062】
ガイド表示6においては、生成したワイヤーフレームモデルに基づいて、操作のための補助線などのガイドを表示する。
【0063】
操作者は、このガイド表示を参考にして、パラメトリックモデルのパラメータの調整を行うことができる。
【0064】
以上のように、この実施形態では、三次元点群データのワイヤーフレームモデルを生成してこれに基づいてガイドを表示するようにしている。したがって、パラメトリックモデルを三次元点群データに合致させる際に適したガイドを表示することができる。また、ワイヤーフレームモデルに基づいてパラメトリックモデルを選択するようにしているので、適切かつ迅速にパラメトリックモデルを選ぶことができる。
【0065】
2.2ハードウエア構成
ハードウエア構成は、第1の実施形態における図2と同様である。
【0066】
2.3三次元モデル生成補助処理
図14に、三次元モデル生成補助プログラム26のフローチャートを示す。以下では、橋脚の三次元点群データを対象として、その三次元モデルを生成する処理を説明する。
【0067】
CPU10は、対象となる三次元点群データ50を取得する(ステップS101)。続いて、CPU10は、対象となる三次元点群データ50に基づいて、線によって表現したワイヤーフレームモデル52を生成する(ステップS102)。次に、橋脚について予め記録されている三次元パラメトリックモデルの中から、形成したワイヤーフレームモデル52に合致する三次元パラメトリックモデル54を選択する(ステップS103)。
【0068】
CPU10は、三次元点群データ50とパラメトリックモデル54を表示する。操作者は、マウスなどによってパラメトリックモデル54を操作し、三次元点群データ50に合致させる。この際、CPU10は、前記ワイヤーフレームモデル52に基づいて、パラメトリックモデル54を三次元点群データ50に合致させるためのガイド58を表示する(ステップS104)。
【0069】
操作者の操作によって、パラメトリックモデル54が操作され(パラメータが調整され)、三次元点群データ50に合致すると、三次元モデル56が形成される(ステップS105)。CPU10は、生成された三次元モデル56を出力する(ステップS106)。
【0070】
以下、ステップS102~S106の処理を詳細に説明する。まず、ステップS102の三次元点群データに基づいてワイヤーフレームモデルを生成する処理は、第1の実施形態におけるステップS2と同じである。
【0071】
CPU10は、ワイヤーフレームモデルを生成すると、図14のステップS103に示すようにパラメトリックモデルの選択を行う。パラメトリックモデル選択処理の詳細を、図15図16に示す。
【0072】
この実施形態においては、図17に示すようなパラメトリックモデルが予め記録されている。橋脚は、梁と柱で構成されており、梁の形状は、8角形、6角形、4角形の3種類であり、柱の形状は、円形、小判形、正方形、長方形の4種類である。したがって、図17には3種類のパラメトリックモデルのみを示しているが、3×4=12種類のパラメトリックモデルが記録されている。
【0073】
各パラメトリックモデルには、パラメトリックモデルを特定するためのラベルが付されている。左から、T字型橋脚(8角形・円形)、T字型橋脚(6角形・長方形)、T字型橋脚(4角形・正方形)・・・というようにラベルが付されている。
【0074】
CPU10は、以下に示す処理によって、これら12種類のパラメトリックモデルから、ワイヤーフレームモデルを用いて、三次元点群データに合致するパラメトリックモデルを選択する。
【0075】
CPU10は、ワイヤーフレームに円形の柱、小判形の柱が含まれているかどうかを判断する(ステップS131)。図18Bに示す正方形や長方形の柱とは異なって、図18Aに示す円形の柱、小判形の柱の場合には、ワイヤーフレームにおいて上のエッジE11と下のエッジE12とを連続するエッジが現れない。したがって、上下に連続するエッジがなければ、円形または小判形の柱であると判断することができる。
【0076】
円形または小判形の柱であると判断すると、CPU10は、円形か小判形かの判断を行う(ステップS132、S133)。この実施形態では、仮想的に生成した真円の半径を徐々に変化させて、エッジE11またはエッジE12との一致度(最小二乗法を用いることができる)を判断し、最も高い一致度を算出する(ステップS132)。最も高い一致度が、所定値を超えているとワイヤーフレームは円形であると判断する。超えていなければ、小判形であると判断する(ステップS133)。ワイヤーフレームが小判形であれば、仮想的に生成した真円とは完全に一致しないため、このように判断することができる。このようにして、柱が円形であるか小判形であるかを決定する。
【0077】
次に、CPU10は、最も高い同一平面(柱の延長方向に垂直な面)上に存在するエッジの数を算出する(ステップS136)。エッジの数に応じて、梁が8角形であるか、6角形であるか、4角形であるかを決定する(ステップS137、S138、S139、S140)。図18Aの場合であれば、エッジE1~E8までの8つのエッジを見いだすことができるので、梁は8角形であると決定することができる(ステップS138)。
【0078】
CPU10は、以上のようにして、柱の形と梁の形を決定すると、その組み合わせに基づいて、パラメトリックモデルを選択する。図18Aの場合であれば、梁=8角形、柱=円形であるから、図17に示すT字型橋脚(8角形・円形)の3Dパラメトリックモデルが選択されることになる。
【0079】
ステップS131において、円形の柱、小判形の柱が含まれていない(すなわち角柱である)と判断すると、CPU10は、図16のステップS141以下を実行する。
【0080】
ステップS141において、CPU10は、柱と梁を分離する(ステップS141)。この分離は、次のようにして行う。図19に示すように、最も下の面LPに対して垂直に上に伸びる線E21~E24を特定する。この線E21~E24の上端において垂直に交わる面BPを見いだす。この面BPにて上下に分離する。上が梁で、下が柱である。
【0081】
以後、ステップS142~S145にて柱の形状を判断し、ステップS146~S151にて梁の形状を判断する。
【0082】
CPU10は、柱について、下面LPにおける各エッジの長さを算出する(ステップS142)。各エッジの長さが実質的に同じであれば(差が所定値以下であれば)、柱形状は正方形であるとする(ステップS144)。そうでなければ、柱形状は長方形であるとする(ステップS145)。
【0083】
CPU10は、梁について、最も高い同一平面上に存在するエッジの数を算出する(ステップS146)。エッジの数に応じて、梁の形状を決定する(ステップS148、S149、S150)。
【0084】
以上のようにして、柱の形状と梁の形状を特定すると、その組合せに基づいて合致するパラメトリックモデルを選択する(ステップS151)。
【0085】
上記のように、この実施形態では、ワイヤーフレームモデルに基づいて3Dパラメトリックモデルを選択するようにしているので、選択処理を迅速に行うことができる。
【0086】
上記のようにして三次元点群データに合致するパラメトリックモデルを選択すると、操作者は、マウス22によってパラメトリックモデルのパラメータを調整し(パラメトリックモデルを変形し)、パラメトリックモデルをワイヤーフレームモデル(もしくは三次元点群データ)に合致させる。
【0087】
図20に、パラメトリックモデルの例を示す。図に示すように、パラメトリックモデルは、そのパラメータP1~P6を変えることにより形状を変化させることができる。CPU10は、操作者の操作に応じて、これらパラメータP1~P6を変化させて、三次元点群データに合致させる(ステップS105)。この際に、第1の実施形態と同じように、CPU10は、ワイヤーフレームモデルに基づいてガイド58を表示する。
【0088】
以上のようにして、パラメータP1~P6を調整して三次元点群データに合致するパラメトリックモデルを得ると、CPU10は、これを三次元モデル56として出力する(ステップS105)。たとえば、他のコンピュータなどに記録する。
【0089】
2.4変形例
(1)上記実施形態では、T橋脚の三次元点群データについて三次元モデルを生成する場合について説明した。しかし、図21に示すように、ラーメン橋脚、二次ラーメン橋脚など他の橋脚にも適用することができる。
【0090】
また、図22に示すように、橋脚以外の床版、横桁・縦桁、T桁、箱桁、I桁、壁型1柱式(小判形)、壁型1柱式(矩形)、壁型1柱式(円形)、重力式橋台、逆T型橋台など他の地物にも適用することができる。
【0091】
なお、上記では、三次元点群データから生成したワイヤーフレームモデルに基づいて、パラメトリックモデルを選択する際に、上下に分離して判断するようにしている。しかし、地物が単純な形状(床版、横桁など)である場合には、分離せずに判断することができる。
【0092】
(2)上記実施形態では、実測した三次元点群データに基づいて、エッジ、コーナーの点を手作業にて選択し、学習データを作成するようにしている。
【0093】
しかし、次のようにして学習データを生成してもよい。パラメトリックモデルに基づいて、当該パラメトリックモデルの表面を埋める三次元点群データを自動生成して三次元点群データを生成する。さらに、この三次元点群データのエッジにあたる点群、コーナーにあたる点群を選択する。エッジ、コーナーの点群は、パラメトリックモデルのエッジ・コーナーから所定範囲内にある点群を選択することで自動的に決定できる。このようにして、学習データを得ることができる。
【0094】
さらに、パラメトリックモデルのパラメータを変化させて上記の処理を行うことにより、多数の学習データを自動生成することができる。
【0095】
(3)上記実施形態では、ルールベースに基づいて、ワイヤーフレームモデルに対応する三次元パラメトリックモデルを選択するようにしている。しかし、ワイヤーフレームモデルとこれに対応する三次元パラメトリックモデル(のラベル)とによって学習した推定モデルを用いて、三次元パラメトリックモデル(のラベル)を推定するようにしてもよい。
【0096】
(4)上記実施形態では、三次元点群データのエッジおよびコーナーに位置する点群を抽出し、これに基づいてワイヤーフレームモデルを生成している。しかし、エッジまたはコーナーのいずれか一方のみを抽出し、これに基づいてワイヤーフレームモデルを生成するようにしてもよい。
【0097】
(5)上記実施形態では、CPU10が最も類似度の高いパラメトリックモデルを選択するようにしている。しかし、所定の類似度以上のパラメトリックモデルを類似度の高い順に複数表示し、操作者が選択して決定するようにしてもよい。
【0098】
(6)上記実施形態では、三次元モデル生成装置をスタンドアローンの装置として構築している。しかし、三次元モデル生成装置をインターネット上などネットワーク上のサーバ装置として構築するようにしてもよい。この場合、端末装置からの指令に基づいて、サーバ装置が処理を行うことになる。
【0099】
(7)上記実施形態では、CPUを用いて装置を構成したが、その一部または全部を論理回路によって構成するようにしてもよい。
【0100】
(8)上記実施形態および変形例は、互いに組み合わせて実施することが可能である。
【0101】
3.第3の実施形態
3.1全体的構成
図23に、この発明の一実施形態による三次元点群データ補完装置の全体的構成を示す。ワイヤーフレームモデルの生成152においては、欠損のある三次元点群データに基づいて、そのエッジを検出し、ワイヤーフレームモデルを生成する。 三次元パラメトリックモデルの選択4においては、予め用意されている複数の三次元パラメトリックモデルのうちから、当該ワイヤーフレームモデルに合致する三次元パラメトリックモデルを選択する。ワイヤーフレームモデルは、欠損のある三次元点群データに基づくので、少しいびつな形状となるが、欠損が極端に大きくない限りパラメトリックモデルの選択には支障はない。
【0102】
このようにして選択したパラメトリックモデルを特定するラベルと、欠損のある三次元点群データとに基づいて、補完された三次元点群データを推定する。
【0103】
このように、欠損のある三次元点群データのワイヤーフレームモデルに基づいて選択した三次元パラメトリックモデルのラベルを補完のための推定に用いているので、より精度よく補完を行うことができる。
【0104】
欠損のある三次元点群データを選択して、上記装置に与えて補完を行ってもよいが、欠損のない三次元点群データと欠損のある三次元点群データを区別せずに、上記装置に与えるようにしてもよい。欠損のある三次元点群データは補完され、欠損のない三次元点群データはそのまま(ほとんど補完されず)で出力されるので、選別する必要がない。
【0105】
3.2ハードウエア構成
三次元点群データ補完装置のハードウエア構成は、第1の実施形態において図2に示したものと同様である。ただし、SSD18には、三次元点群データ補完プログラムが記録されている。
【0106】
3.3三次元点群データ補完処理
図24に、三次元点群データ補完プログラム26のフローチャートを示す。以下では、T字橋脚の欠損三次元点群データを対象として、その三次元点群データを補完して完全な三次元点群データを生成する処理を説明する。
【0107】
CPU10は、対象となる欠損三次元点群データ70を取得する(ステップS171)。続いて、CPU10は、対象となる欠損三次元点群データ70に基づいて、線によって表現したワイヤーフレームモデル52を生成する(ステップS172)。
【0108】
次に、橋脚について予め記録されている三次元パラメトリックモデルの中から、形成したワイヤーフレームモデル72に合致する三次元パラメトリックモデルを特定するラベルを選択する(ステップS173)。
【0109】
CPU10は、欠損三次元点群データと、選択した三次元パラメトリックモデルのラベルとに基づいて、補完された三次元点群データを推定する(ステップS174)。
【0110】
以上のようにして、欠損している三次元点群データを補完して欠損のない三次元点群データにすることができる。補完された点群データに基づいて、種々の処理、たとえば、第1実施形態や第2実施形態による三次元モデルの生成などを行うことができる。
【0111】
ステップS172におけるワイヤーフレーム生成の処理は、第1の実施形態と同様である。ただし、欠損した三次元点群データに基づいているので、ワイヤーフレームのエッジ同士が接続していない状態となる。この実施形態では、CPU10は、以下のようにして、ワイヤーフレームを完成するようにしている。
【0112】
図25Aのように、エッジが途切れている場合には、エッジを延長してこれらを接合する。また、図25Bのように、コーナーが欠損しているような場合も、エッジを延長して、コーナーを形成することができる。したがって、図25A図25Bのような場合には、図25Cのようにワイヤーフレームを完成させることができる。
【0113】
また、図25Dのようにエッジが完全に欠損しているような場合には、エッジを延長してもエッジ同士が交わらないことになる。このように、エッジの延長によってもエッジが交わらない箇所がある場合には、交わらないエッジの端部とエッジの端部との間に新たにエッジAE1を形成する。この新たに生成したエッジを基準として、ワイヤーフレームのエッジによって形成される面が閉じるようにエッジAE2を形成する。このようにして、図25Eのようにワイヤーフレームを完成させることができる。
【0114】
上記のようにしてワイヤーフレームモデルを生成すると、CPU10は、ワイヤーフレームモデルに基づいて三次元パラメトリックモデルを選択する(ステップS173)。この処理は、第2の実施形態と同様である。なお、次のステップS174においては、パラメトリックモデル自体を用いないので、パラメトリックモデルを特定するラベルを選択すれば十分である。
【0115】
続いて、CPU10は、欠損三次元点群データと選択した三次元パラメトリックモデルのラベルとに基づいて、学習済推定モデルを用いて、点群を補完した三次元点群データを推定する(ステップS174)。このようにして、欠損のない補完済三次元点群データ74を生成することができる。
【0116】
この実施形態では、ステップS174の推定を、学習済の推定モデルを用いて実現している。推定モデルの学習に用いる学習データは、図26Aに示すようなラベルの付された欠損のある三次元点群データ、図26Bに示すような欠損を補完した三次元点群データのセットである。
【0117】
学習データは、実際に計測した欠損のある三次元点群データについて、作業者の判断によってパラメトリックモデルのラベルを付し、作業者の手作業によって欠損を補完した三次元点群データを生成して作成するようにしている。
【0118】
3.4変形例
(1)上記実施形態では、ワイヤーフレームモデルによって表される立体図形の特徴としてパラメトリックモデルを用い、パラメトリックモデルのラベルを三次元点群データの補完に用いている。しかし、パラメトリックモデル以外の図形の特徴を表す特徴値によって図形を分類し、当該分類を三次元点群データの補完に用いるようにしてもよい。
【0119】
(2)上記実施形態では、欠損したワイヤーフレームモデルを完成させ、完成したワイヤーフレームモデルに基づいて、合致するパラメトリックモデルを選択するようにしている。しかし、欠損したワイヤーフレームモデルから合致するパラメトリックモデルを選択するようにしてもよい。
【0120】
この場合、たとえば、学習済推定モデルを用いて、欠損ワイヤーフレームに基づいてパラメトリックモデルのラベルを推定するようにしてもよい。この場合には、欠損ワイヤーフレームモデル、これに対応するパラメトリックモデルのラベルを学習データとして、推定モデルを学習させるとよい。
【0121】
(3)上記実施形態では、実測した欠損のある三次元点群データに基づいて、作業者が対応するパラメトリックモデルのラベルを決定し、さらに手作業にて欠損のない三次元点群データを生成し、学習データを作成するようにしている。
【0122】
しかし、次のようにして学習データを自動生成してもよい。パラメトリックモデルに基づいて、当該パラメトリックモデル内を埋める三次元点群データを自動生成して欠損のない三次元点群データを生成する。さらに、この三次元点群データを自動的に欠損させて欠損のある三次元点群データを生成する。これにより、欠損のある三次元点群データ、パラメトリックモデルのラベル、欠損のない三次元点群データを得ることができ、学習データを生成することができる。なお、欠損させる際には、実際の測定時に生じることの多い箇所を欠損させることが好ましい。
【0123】
さらに、パラメトリックモデルのパラメータを変化させて上記の処理を行うことにより、多数の学習データを自動生成することができる。
【0124】
(4)上記実施形態によって得られた欠損のない三次元点群データに基づいて、第1や第2の実施形態により三次元モデルを生成するようにしてもよい。第2の実施形態を適用する場合を、図27に示す。ステップS193においてパラメトリックモデルを選択済であるから、ステップS196においては選択されたパラメトリックモデルを用いればよい。第1の実施形態を適用する場合も同様である。
【0125】
(5)上記実施形態では、T字型橋脚の三次元点群データについて三次元モデルを生成する場合について説明した。しかし、図21に示すように、ラーメン橋脚、二次ラーメン橋脚など他の橋脚にも適用することができる。
【0126】
また、図22に示すように、橋脚以外の床版、横桁・縦桁、T桁、箱桁、I桁、壁型1柱式(小判形)、壁型1柱式(矩形)、壁型1柱式(円形)、重力式橋台、逆T型橋台など他の地物にも適用することができる。
【0127】
なお、上記では、三次元点群データから生成したワイヤーフレームモデルに基づいて、パラメトリックモデルを選択する際に、上下に分離して判断するようにしている。しかし、地物が単純な形状(床版、横桁など)である場合には、分離せずに判断することができる。
【0128】
(6)上記実施形態では、三次元点群データ補完装置をスタンドアローンの装置として構築している。しかし、三次元点群データ補完装置をインターネット上などネットワーク上のサーバ装置として構築するようにしてもよい。この場合、端末装置からの指令に基づいて、サーバ装置が処理を行うことになる。
【0129】
(7)上記実施形態では、欠損のある三次元点群データとパラメトリックモデルのラベルとに基づいて、学習済推定モデルにより三次元点群データを補完するようにしている。
【0130】
しかし、学習済推定モデルに欠損のある三次元点群データをそのまま入力するのではなく、ステップS172において生成したワイヤーフレームに基づいて、ルールベースにて点群データを補完したものを入力するようにしてもよい。たとえば、生成されたワイヤーフレームモデルにおいて面が形成されていることが明らかな部位(エッジによってほぼ完全に囲まれた部位)について、点群データが存在しない箇所があれば、点群データが存在する箇所と同程度の密度にて点群データを補完する。このように事前にワイヤーフレームにて点群を事前に補完した点群データを用いて、上記推定モデルにて点群データの補完を行うので、より精度良く補完を行うことができる。
【0131】
(8)上記実施形態では、CPUを用いて装置を構成したが、その一部または全部を論理回路によって構成するようにしてもよい。
【0132】
(9)上記実施形態および変形例は、互いに組み合わせて実施することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30