(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138816
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241002BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241002BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049514
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】清澤 努
(57)【要約】
【課題】動作の高速化が実現できる半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、第1の電極と、第2の電極と、第1の領域と、第1の領域よりも第1導電形不純物濃度の高い第2の領域と、第2の領域と第1の電極との間に設けられた第3の領域と、を含む第1導電形の第1の炭化珪素領域と、第2導電形の第2の炭化珪素領域と、第1導電形の第3の炭化珪素領域と、第1の領域と第2の領域の間の第2導電形の第4の炭化珪素領域と、を含む炭化珪素層と、炭化珪素層の中に設けられたゲート電極と、ゲート絶縁層と、を備え、第2の領域は、第1の部分と第2の部分を有し、第2の部分は、第1の部分とゲート絶縁層との間に設けられ、第2の部分の第1導電形不純物濃度は、第1の部分の第1導電形不純物濃度よりも低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた炭化珪素層であって、
第1の領域と、前記第1の領域と前記第1の電極との間に設けられ、前記第1の領域の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の高い第2の領域と、前記第2の領域と前記第1の電極との間に設けられた第3の領域と、を含む第1導電形の第1の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第1の電極との間に設けられた第2導電形の第2の炭化珪素領域と、
前記第2の炭化珪素領域と前記第1の電極との間に設けられた第1導電形の第3の炭化珪素領域と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられた第2導電形の第4の炭化珪素領域と、
を含む炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の中に設けられ、前記第1の炭化珪素領域、前記第2の炭化珪素領域、前記第3の炭化珪素領域、及び、前記第4の炭化珪素領域と対向するゲート電極と、
前記第1の炭化珪素領域と前記ゲート電極との間、前記第2の炭化珪素領域と前記ゲート電極との間、前記第3の炭化珪素領域と前記ゲート電極との間、及び、前記第4の炭化珪素領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、
を備え、
前記第2の領域は、第1の部分と第2の部分を有し、
前記第2の部分は、前記第1の部分と前記ゲート絶縁層との間、かつ、前記第4の炭化珪素領域と前記第3の領域との間に設けられ、
前記第2の部分の第1導電形不純物濃度は、前記第1の部分の第1導電形不純物濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項2】
前記第3の領域の第1導電形不純物濃度は、前記第2の領域の第1導電形不純物濃度より低い、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1導電形はn形、前記第2導電形はp形であり、前記第2の部分に含まれるアルミニウムの濃度は、前記第1の部分に含まれるアルミニウムの濃度より高い、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の部分に含まれるアルミニウムの濃度は、前記第4の炭化珪素領域から前記第3の領域に向かって低くなる、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
第1導電形の第1の炭化珪素層の上に、エピタキシャル成長法を用いて、前記第1の炭化珪素層の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の高い第1導電形の第2の炭化珪素層を形成し、
前記第1の炭化珪素層に第2導電形不純物を、前記第2の炭化珪素層の表面が第2導電形とならない条件でイオン注入し、前記第1の炭化珪素層の中に第2導電形の第1の領域を形成し、
前記第2の炭化珪素層の上に、エピタキシャル成長法を用いて第1導電形の第3の炭化珪素層を形成し、
前記第3の炭化珪素層に第2導電形不純物をイオン注入し、前記第3の炭化珪素層の中に、第2導電形の第2の領域を形成し、
前記第2の領域に第1導電形不純物をイオン注入し、前記第2の領域の中に、第1導電形の第3の領域を形成し、
前記第3の領域、前記第2の領域を貫通し、前記第1の領域に達するトレンチを形成し、
前記トレンチの中にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層の上にゲート電極を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3の炭化珪素層の第1導電形不純物濃度は、前記第2の炭化珪素層の第1導電形不純物濃度よりも低い、請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用の材料として炭化珪素(SiC)がある。炭化珪素はシリコンと比較して、バンドギャップが約3倍、破壊電界強度が約10倍、熱伝導率が約3倍と優れた物性を有する。この特性を活用すれば、例えば、高耐圧、低損失かつ高温動作可能なMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を実現することができる。
【0003】
ゲート電極がトレンチの中に形成されたトレンチゲート型のMOSFETは、低いオン抵抗を実現する。トレンチゲート型にすることで、単位面積あたりのチャネル面積が増加し、オン抵抗が低減される。
【0004】
トレンチゲート型のMOSFETの動作を高速化し、更にトランジスタ特性を向上させることが期待される。トレンチゲート型のMOSFETの高速化を実現するためには、例えば、ゲート・ドレイン間容量を低減することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、動作の高速化が実現できる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた炭化珪素層であって、第1の領域と、前記第1の領域と前記第1の電極との間に設けられ、前記第1の領域の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の高い第2の領域と、前記第2の領域と前記第1の電極との間に設けられた第3の領域と、を含む第1導電形の第1の炭化珪素領域と、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の電極との間に設けられた第2導電形の第2の炭化珪素領域と、前記第2の炭化珪素領域と前記第1の電極との間に設けられた第1導電形の第3の炭化珪素領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられた第2導電形の第4の炭化珪素領域と、を含む炭化珪素層と、前記炭化珪素層の中に設けられ、前記第1の炭化珪素領域、前記第2の炭化珪素領域、前記第3の炭化珪素領域、及び、前記第4の炭化珪素領域と対向するゲート電極と、前記第1の炭化珪素領域と前記ゲート電極との間、前記第2の炭化珪素領域と前記ゲート電極との間、前記第3の炭化珪素領域と前記ゲート電極との間、及び、前記第4の炭化珪素領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、を備え、前記第2の領域は、第1の部分と第2の部分を有し、前記第2の部分は、前記第1の部分と前記ゲート絶縁層との間、かつ、前記第4の炭化珪素領域と前記第3の領域との間に設けられ、前記第2の部分の第1導電形不純物濃度は、前記第1の部分の第1導電形不純物濃度よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図10】実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
【
図11】実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する場合がある。
【0010】
また、以下の説明において、n+、n、n-及び、p+、p、p-の表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちn+はnよりもn形不純物濃度が相対的に高く、n-はnよりもn形不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p+はpよりもp形不純物濃度が相対的に高く、p-はpよりもp形不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n+形、n-形を単にn形、p+形、p-形を単にp形と記載する場合もある。
【0011】
不純物濃度は、例えば、Secondary Ion Mass Spectrometry(SIMS)により測定することが可能である。また、不純物濃度の相対的な高低は、例えば、Scanning Capacitance Microscopy(SCM)で求められるキャリア濃度の高低から判断することも可能である。また、不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SIMSで求めることが可能である。また。不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SCMの画像やScanning Electron Microscope(SEM)の画像から求めることが可能である。
【0012】
また、半導体装置を構成する物質の厚さ、物質間の距離等は、例えば、SIMS、SEM、又はTransmission Electron Microscope(TEM)の画像上で計測することが可能である。
【0013】
なお、本明細書中でp形の炭化珪素領域の「p形不純物濃度」とは、当該領域のp形不純物濃度から当該領域のn形不純物濃度を引いた正味(net)のp形不純物濃度を意味する。また、n形の炭化珪素領域の「n形不純物濃度」とは、当該領域のn形不純物濃度から当該領域のp形不純物濃度を引いた正味(net)のn形不純物濃度を意味する。
【0014】
また、明細書中に別段の記述がない限り特定の領域の不純物濃度とは、当該領域の最大不純物濃度を意味するものとする。
【0015】
実施形態の半導体装置は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられた炭化珪素層であって、第1の領域と、第1の領域と第1の電極との間に設けられ、第1の領域の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の高い第2の領域と、第2の領域と第1の電極との間に設けられた第3の領域と、を含む第1導電形の第1の炭化珪素領域と、第1の炭化珪素領域と第1の電極との間に設けられた第2導電形の第2の炭化珪素領域と、第2の炭化珪素領域と第1の電極との間に設けられた第1導電形の第3の炭化珪素領域と、第1の領域と第2の領域との間に設けられた第2導電形の第4の炭化珪素領域と、を含む炭化珪素層と、炭化珪素層の中に設けられ、第1の炭化珪素領域、第2の炭化珪素領域、第3の炭化珪素領域、及び、第4の炭化珪素領域と対向するゲート電極と、第1の炭化珪素領域とゲート電極との間、第2の炭化珪素領域とゲート電極との間、第3の炭化珪素領域とゲート電極との間、及び、第4の炭化珪素領域とゲート電極との間に設けられたゲート絶縁層と、を備える。第2の領域は、第1の部分と第2の部分を有し、第2の部分は、第1の部分とゲート絶縁層との間、かつ、第4の炭化珪素領域と第3の領域との間に設けられ、第2の部分の第1導電形不純物濃度は、第1の部分の第1導電形不純物濃度よりも低い。
【0016】
図1及び
図2は、実施形態の半導体装置の模式図である。
図1は、実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図2は、実施形態の半導体装置の上面図である。
図2は、炭化珪素層の表面である。
図1は、
図2のAA’断面である。
【0017】
実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型のMOSFET100である。MOSFET100は、ゲート電極がトレンチの中に形成されたトレンチゲート型のMOSFETである。
【0018】
以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。MOSFET100は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。
【0019】
MOSFET100は、炭化珪素層10、ソース電極12、ドレイン電極14、ゲート絶縁層16、ゲート電極18、層間絶縁層20を備える。ソース電極12は、第1の電極の一例である。ドレイン電極14は、第2の電極の一例である。
【0020】
炭化珪素層10の少なくとも一部は、ソース電極12とドレイン電極14との間に設けられる。炭化珪素層10は、単結晶のSiCである。炭化珪素層10は、例えば、4H-SiCである。炭化珪素層10の厚さは、例えば、5μm以上150μm以下である。
【0021】
炭化珪素層10は、第1の面(
図1中“F1”)と第2の面(
図1中“F2”)とを備える。以下、第1の面F1を表面、第2の面F2を裏面と称する場合がある。なお、以下、「深さ」とは、第1の面F1を基準とする深さを意味する。
【0022】
以下、第1の方向及び第2の方向は、第1の面F1に平行な方向である。第2の方向は、第1の方向に垂直な方向である。第3の方向は、第1の面F1に垂直な方向である。第3の方向は、第1の方向及び第2の方向に垂直な方向である。
【0023】
第1の面F1は、炭化珪素層10のソース電極12の側の面である。第2の面F2は、炭化珪素層10のドレイン電極14の側の面である。
【0024】
第1の面F1は、例えば、(0001)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。また、第2の面F2は、例えば、(000-1)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。(0001)面はシリコン面と称される。(000-1)面はカーボン面と称される。
【0025】
炭化珪素層10は、n+形のドレイン領域22、n形のドリフト領域24、p形のボディ領域26、n+形のソース領域28、p+形の電界緩和領域30、及び、トレンチ40を含む。
【0026】
ドリフト領域24は、第1の炭化珪素領域の一例である。ボディ領域26は、第2の炭化珪素領域の一例である。ソース領域28は、第3の炭化珪素領域の一例である。電界緩和領域30は、第4の炭化珪素領域の一例である。
【0027】
n+形のドレイン領域22は、炭化珪素層10の裏面側に設けられる。ドレイン領域22は、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。ドレイン領域22のn形不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0028】
n形のドリフト領域24は、ドレイン領域22とソース電極12との間に設けられる。ドリフト領域24は、ドレイン領域22と第1の面F1との間に設けられる。ドリフト領域24は、ドレイン領域22の上に設けられる。ドリフト領域24は、例えば、ドレイン領域22に接する。
【0029】
ドリフト領域24は、n-形の第1の領域24a、n形の第2の領域24b、及び、n-形の第3の領域24cを含む。
【0030】
n-形の第1の領域24aは、ドレイン領域22とソース電極12との間に設けられる。第1の領域24aは、ドレイン領域22と第1の面F1との間に設けられる。第1の領域24aは、ドレイン領域22に接する。
【0031】
第1の領域24aは、例えば、ドレイン領域22の上にエピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル成長層である。
【0032】
第1の領域24aは、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。第1の領域24aのn形不純物濃度は、ドレイン領域22のn形不純物濃度よりも低い。第1の領域24aのn形不純物濃度は、例えば、5×1014cm-3以上5×1016cm-3以下である。
【0033】
第1の領域24aの第3の方向の厚さは、例えば、3μm以上150μm以下である。
【0034】
第2の領域24bは、第1の領域24aとソース電極12との間に設けられる。第2の領域24bは、第1の領域24aと第1の面F1との間に設けられる。第2の領域24bは、第1の領域24aに接する。
【0035】
第2の領域24bは、例えば、第1の領域24aの上にエピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル成長層である。
【0036】
第2の領域24bは、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。第2の領域24bのn形不純物濃度は、第1の領域24aのn形不純物濃度よりも高い。第2の領域24bのn形不純物濃度は、例えば、1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0037】
第2の領域24bの第3の方向の厚さは、第1の領域24aの第3の方向の厚さより薄い。第2の領域24bの第3の方向の厚さは、例えば、0.1μm以上0.5μm以下である。
【0038】
第2の領域24bは、第1の部分24bxと第2の部分24byを含む。第2の部分24byは、第2の方向において、第1の部分24bxとゲート絶縁層16との間に設けられる。第2の部分24byは、第2の方向において、第1の部分24bxとトレンチ40との間に設けられる。また、第2の部分24byは、第3の方向において、p+形の電界緩和領域30と第3の領域24cとの間に設けられる。
【0039】
第1の部分24bxは、第3の方向において、第1の領域24aと第3の領域24cとの間に位置する。第1の部分24bxは、例えば、第1の領域24a及び第3の領域24cに接する。
【0040】
第2の部分24byのn形不純物濃度は、第1の部分24bxのn形不純物濃度よりも低い。第2の部分24byのn形不純物濃度は、例えば、第1の部分24bxのn形不純物濃度の2分の1以下である。
【0041】
第2の部分24byのn形不純物濃度は、例えば、電界緩和領域30から第3の領域24cに向かって高くなる。
【0042】
第2の部分24byは、アルミニウムを含む。第1の部分24bxは、アルミニウムを含むか、又は、含まない。第2の部分24byに含まれるアルミニウムの濃度は、例えば、第1の部分24bxに含まれるアルミニウムの濃度より高い。
【0043】
第2の部分24byに含まれるアルミニウムの濃度は、例えば、電界緩和領域30から第3の領域24cに向かって低くなる。
【0044】
第3の領域24cは、第2の領域24bとソース電極12との間に設けられる。第3の領域24cは、第2の領域24bと第1の面F1との間に設けられる。第3の領域24cは、第2の領域24bに接する。
【0045】
第3の領域24cは、例えば、第2の領域24bの上にエピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル成長層である。
【0046】
第3の領域24cは、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。第3の領域24cのn形不純物濃度は、例えば、第2の領域24bのn形不純物濃度よりも低い。第3の領域24cのn形不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0047】
第3の領域24cの第3の方向の厚さは、第1の領域24aの第3の方向の厚さより薄い。第3の領域24cの第3の方向の厚さは、例えば、0.1μm以上0.5μm以下である。
【0048】
p形のボディ領域26は、ドリフト領域24とソース電極12との間に設けられる。ボディ領域26は、ドリフト領域24と第1の面F1との間に設けられる。ボディ領域26は、例えば、
図2に示すように、第1の方向に延びる。ボディ領域26は、MOSFET100のチャネル領域として機能する。
【0049】
ボディ領域26は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。ボディ領域26のp形不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上5×1018cm-3以下である。
【0050】
ボディ領域26の深さは、例えば、0.5μm以上2μm以下である。
【0051】
n
+形のソース領域28は、ボディ領域26とソース電極12との間に設けられる。ソース領域28は、ボディ領域26と第1の面F1との間に設けられる。ソース領域28は、例えば、
図2に示すように、第1の方向に延びる。
【0052】
ソース領域28は、例えば、リン(P)をn形不純物として含む。ソース領域28のn形不純物濃度は、ドリフト領域24のn形不純物濃度よりも高い。ソース領域28のn形不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1021cm-3以下である。
【0053】
ソース領域28の深さは、ボディ領域26の深さよりも浅い。ソース領域28の深さは、例えば、0.1μm以上0.5μm以下である。
【0054】
p+形の電界緩和領域30は、ドリフト領域24の中に設けられる。電界緩和領域30は、第2の方向において、ドリフト領域24の一部と、ドリフト領域24の別の一部との間に挟まれる。
【0055】
電界緩和領域30は、第1の領域24aと第2の領域24bとの間に設けられる。電界緩和領域30は、ドリフト領域24とトレンチ40との間に設けられる。電界緩和領域30は、トレンチ40の底部に設けられる。
【0056】
電界緩和領域30の第2の方向の幅は、例えば、トレンチ40の第2の方向の幅よりも大きい。
【0057】
電界緩和領域30は、MOSFET100のオフ動作時に、トレンチ40の底部のゲート絶縁層16に印加される電界を緩和する機能を有する。
【0058】
電界緩和領域30は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。電界緩和領域30のp形不純物濃度は、例えば、ボディ領域26のp形不純物濃度よりも高い。電界緩和領域30のp形不純物濃度は、例えば、5×1017cm-3以上5×1019cm-3以下である。
【0059】
トレンチ40は、炭化珪素層10の第1の面F1の側に設けられる。トレンチ40は、炭化珪素層10に設けられた凹部である。トレンチ40の深さは、例えば、1μm以上3μm以下である。なお、MOSFET100においては、図示しない複数のトレンチ40が、第2の方向に繰り返し配置される。
【0060】
ゲート電極18は、炭化珪素層10の中に設けられる。ゲート電極18は、トレンチ40の中に設けられる。ゲート電極18は、ドリフト領域24、ボディ領域26、ソース領域28、及び、電界緩和領域30に対向する。
【0061】
ゲート電極18は、
図2に示すように、例えば、第1の方向に延びる。なお、MOSFET100においては、図示しない複数のゲート電極18が、第2の方向に繰り返し配置される。
【0062】
ゲート電極18は、例えば、p形不純物又はn形不純物を含む多結晶質シリコンである。
【0063】
ゲート絶縁層16は、炭化珪素層10の中に設けられる。ゲート絶縁層16は、トレンチ40の中に設けられる。ゲート絶縁層16は、ゲート電極18とドリフト領域24との間、ゲート電極18とボディ領域26との間、ゲート電極18とソース領域28との間、及び、ゲート電極18と電界緩和領域30との間に設けられる。
【0064】
ゲート絶縁層16は、ドリフト領域24に接する。ゲート絶縁層16は、第2の領域24b及び第3の領域24cに接する。ゲート絶縁層16は、ボディ領域26、ソース領域28、及び、電界緩和領域30に接する。
【0065】
ゲート絶縁層16は、例えば、酸化シリコンである。
【0066】
層間絶縁層20は、ゲート電極18とソース電極12との間に設けられる。層間絶縁層20は、ゲート電極18とソース電極12を電気的に分離する。層間絶縁層20は、例えば、酸化シリコンである。
【0067】
ソース電極12は、炭化珪素層10の第1の面F1の側に設けられる。ソース電極12は、ソース領域28に接する。ソース電極12は、ボディ領域26に接する。
【0068】
ドレイン電極14は、炭化珪素層10の第2の面F2の側に設けられる。ドレイン電極14は、ドレイン領域22に接する。
【0069】
次に、実施形態の半導体装置の製造方法の一例について、説明する。実施形態の半導体装置の製造方法の一例は、第1導電形の第1の炭化珪素層の上に、エピタキシャル成長法を用いて、第1の炭化珪素層の第1導電形不純物濃度よりも第1導電形不純物濃度の高い第1導電形の第2の炭化珪素層を形成し、第1の炭化珪素層に第2導電形不純物を、第2の炭化珪素層の表面が第2導電形とならない条件でイオン注入し、第1の炭化珪素層の中に第2導電形の第1の領域を形成し、第2の炭化珪素層の上に、エピタキシャル成長法を用いて第1導電形の第3の炭化珪素層を形成し、第3の炭化珪素層に第2導電形不純物をイオン注入し、第3の炭化珪素層の中に、第2導電形の第2の領域を形成し、第2の領域に第1導電形不純物をイオン注入し、第2の領域の中に、第1導電形の第3の領域を形成し、第3の領域、第2の領域を貫通し、第1の領域に達するトレンチを形成し、トレンチの中にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層の上にゲート電極を形成する。
【0070】
【0071】
最初にn
+形の基板層51の上に、n
-形の第1の炭化珪素層52を形成する(
図3)。基板層51は、例えば、炭化珪素ウェハである。第1の炭化珪素層52は、例えば、基板層51の上に、エピタキシャル成長法を用いて形成される。第1の炭化珪素層52は、エピタキシャル成長層である。第1の炭化珪素層52は、最終的に、ドリフト領域24の第1の領域24aとなる。
【0072】
次に、第1の炭化珪素層52の上にn形の第2の炭化珪素層53を形成する(
図4)。第2の炭化珪素層53は、第1の炭化珪素層52の上に、エピタキシャル成長法を用いて形成される。第2の炭化珪素層53は、エピタキシャル成長層である。第2の炭化珪素層53のn形不純物濃度は、第1の炭化珪素層52のn形不純物濃度より高い。
【0073】
例えば、第1の炭化珪素層52と第2の炭化珪素層53は、エピタキシャル成長装置の反応炉(reaction chamber)の中で、連続して形成される。
【0074】
第2の炭化珪素層53は、最終的に、ドリフト領域24の第2の領域24bとなる。
【0075】
次に、第2の炭化珪素層53の上に、第1のマスク材54を形成する。第1のマスク材54は、例えば、Chemical Vapor Deposition法(CVD法)による膜の堆積、フォトリソグラフィ法、及び、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いた膜のパターニングにより形成される。第1のマスク材54は例えば、酸化シリコンである。
【0076】
次に、第1のマスク材54をマスクに、第1の炭化珪素層52にアルミニウム(Al)をイオン注入し、第1の炭化珪素層52の中にp
+型の第1のSiC領域55を形成する(
図5)。第1のSiC領域55は、第1の領域の一例である。
【0077】
アルミニウムをイオン注入する際に、第2の炭化珪素層53の表面が、p形とならない条件でイオン注入する。アルミニウムのイオン注入のドーズ量と加速エネルギーを適切に設定することで、第2の炭化珪素層53の表面が、n形からp形へと変わらないようにする。
【0078】
なお、アルミニウムのイオン注入により、第1のSiC領域55の上の第2の炭化珪素層53にもアルミニウムが含まれることになる。第2の炭化珪素層53に含まれるアルミニウムの濃度は、第2の炭化珪素層53の表面に向かって低くなる。
【0079】
第1のSiC領域55は、最終的に、電界緩和領域30となる。
【0080】
次に、第1のマスク材54を除去する(
図6)。第1のマスク材54は、例えば、ウェットエッチング法を用いて除去する。
【0081】
次に、第2の炭化珪素層53の上にn
-形の第3の炭化珪素層56を形成する(
図7)。第3の炭化珪素層56は、第2の炭化珪素層53の上に、エピタキシャル成長法を用いて形成される。第3の炭化珪素層56は、エピタキシャル成長層である。第3の炭化珪素層56のn形不純物濃度は、例えば、第2の炭化珪素層53のn形不純物濃度より低い。
【0082】
第3の炭化珪素層56を形成する前に、水素エッチング処理を行う。水素エッチング処理は、第3の炭化珪素層56を形成するエピタキシャル成長装置の反応炉の中で行う。
【0083】
水素エッチング処理は、水素を含む雰囲気で行われる。水素エッチング処理の温度は、例えば、1500℃以上1650℃以下である。水素エッチング処理は、第2の炭化珪素層53の表面をクリーニングする処理である。水素エッチング処理により、例えば、第2の炭化珪素層53の表面の自然酸化膜が除去される。
【0084】
水素エッチング処理に続いて、第2の炭化珪素層53の上に第3の炭化珪素層56を形成する。第3の炭化珪素層56を形成する際の熱処理温度は、例えば、1500℃以上1650℃以下である。
【0085】
第3の炭化珪素層56は、最終的に、ドリフト領域24の第3の領域24c、ボディ領域26、ソース領域28となる。
【0086】
なお、第1のSiC領域55にイオン注入されたアルミニウムを活性化するための活性化アニールは、第3の炭化珪素層56を形成する前には行わない。第1のSiC領域55にイオン注入されたアルミニウムの活性化は、水素エッチング処理又は第3の炭化珪素層56の形成に伴う熱処理によって代用される。いいかえれば、活性化アニール工程が省略されている。
【0087】
次に、第3の炭化珪素層56にアルミニウム(Al)をイオン注入し、第3の炭化珪素層56の中にp形の第2のSiC領域57を形成する(
図8)。第2のSiC領域57は、第2の領域の一例である。第2のSiC領域57は、最終的に、p形のボディ領域26となる。
【0088】
次に、第2のSiC領域57の上に、第2のマスク材58を形成する。第2のマスク材58は、例えば、CVD法による膜の堆積、フォトリソグラフィ法、及び、RIE法を用いた膜のパターニングにより形成される。第2のマスク材58は例えば、酸化シリコンである。
【0089】
次に、第2のマスク材58をマスクに、第2のSiC領域57にリン(P)をイオン注入し、第2のSiC領域57の中にn
+型の第3のSiC領域59を形成する(
図9)。第3のSiC領域59は第3の領域の一例である。第3のSiC領域59は、最終的にソース領域28となる。
【0090】
次に、第2のマスク材58を除去する。次に、第2のSiC領域57及び第3のSiC領域59の上に、第3のマスク材60を形成する。第3のマスク材60は、例えば、CVD法による膜の堆積、フォトリソグラフィ法、及び、RIE法を用いた膜のパターニングにより形成される。第3のマスク材60は例えば、酸化シリコンである。
【0091】
次に、第3のマスク材60をマスクに、第3のSiC領域59、第2のSiC領域57を貫通し、第1のSiC領域55に達するトレンチ40を形成する(
図10)。トレンチ40は、例えば、RIE法を用いて形成する。
【0092】
次に、第3のマスク材60を除去する。次に、公知のプロセス技術を用いて、トレンチ40の中にゲート絶縁層16を形成し、ゲート絶縁層16の上にゲート電極18を形成する(
図11)。
【0093】
その後、公知のプロセス技術を用いて、ソース電極12及びドレイン電極14を形成する。
【0094】
以上の製造方法により、
図1及び
図2に示すMOSFET100が形成される。
【0095】
次に、実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果について説明する。
【0096】
ゲート電極がトレンチの中に形成されたトレンチゲート型のMOSFETは、低いオン抵抗を実現する。トレンチゲート型にすることで、単位面積あたりのチャネル面積が増加し、オン抵抗が低減される。
【0097】
実施形態のMOSFET100は、トレンチゲート型のMOSFETである。そして、p形のボディ領域26とp+形の電界緩和領域30との間、及び、p形のボディ領域26とドリフト領域24の第1の領域24aとの間に、第1の領域24aのn形不純物濃度より、n形不純物濃度の高い第2の領域24bを有する。
【0098】
MOSFET100において、n形不純物濃度の高い第2の領域24bが電流拡散層(current spresding layer)として機能することで、更にオン抵抗が低減される。すなわち、MOSFET100がオン動作する際に、ソース領域28から、トレンチ40の側面近傍のボディ領域26に形成されたチャネル領域を通って、キャリアがドリフト領域24へと流れる。ドリフト領域24へと流れたキャリアは、低抵抗の第2の領域24bに沿って横方向(
図1の第2の方向)に拡散される。したがって、キャリアの流れる経路がドリフト領域24の中で広がり、MOSFET100のオン抵抗が低減する。
【0099】
一方、ゲート電極18に対向するドリフト領域24のn形不純物濃度が高くなりすぎると、ゲート・ドレイン間容量が大きくなり、MOSFET100の動作速度が低下するおそれがある。
【0100】
実施形態のMOSFET100は、電流拡散層として機能する第2の領域24bが、第1の部分24bxと、第1の部分24bxよりもゲート電極18に近い第2の部分24byを含む。第2の部分24byのn形不純物濃度は、第1の部分24bxのn形不純物濃度よりも低い。ゲート電極18に対向するドリフト領域24のn形不純物濃度が部分的に低くなることで、MOSFET100のゲート・ドレイン間容量が小さくなる。よって、MOSFET100の動作速度の低下が抑制され、MOSFET100の高速化が実現できる。
【0101】
ゲート・ドレイン間容量を低減する観点から、第2の部分24byのn形不純物濃度は、第1の部分24bxのn形不純物濃度の2分の1以下であることが好ましく、5分の1以下であることがより好ましく、10分の1以下であることが更に好ましい。
【0102】
例えば、表面に高濃度でアルミニウムが存在するp形の炭化珪素層の上に、エピタキシャル成長法により炭化珪素層の形成を行うと、エピタキシャル成長装置の反応炉がアルミニウムで汚染される。アルミニウムによる汚染は、特に、炭化珪素層の形成に先行して行われる水素エッチング処理の際に、p形の炭化珪素層の表面がエッチングされることで生じる。
【0103】
エピタキシャル成長装置の反応炉がアルミニウムで汚染されると、特に低濃度のn形の炭化珪素層を形成するような場合に、p形不純物のアルミニウムが混入することで、n形不純物濃度の制御が困難になる。
【0104】
また、高ドーズのアルミニウムのイオン注入で形成されたp形領域が表面に存在する炭化珪素層の上に、エピタキシャル成長法により炭化珪素層の形成を行うと、炭化珪素層の結晶性が劣化する。これは、p形領域にイオン注入による欠陥が高密度で存在するためであると考えられる。
【0105】
炭化珪素層の結晶性が劣化すると、例えば、ジャンクションリークの増加などの、特性劣化がMOSFETに生じるおそれがある。
【0106】
実施形態の半導体装置の製造方法では、p+形の電界緩和領域30を形成するために、第1の炭化珪素層52の中にp+型の第1のSiC領域55を形成する。第1のSiC領域55を形成するためのアルミニウムのイオン注入を行う前に、第1の炭化珪素層52よりもn形不純物濃度の高い第2の炭化珪素層53で、第1の炭化珪素層52の表面を覆う。そして、第2の炭化珪素層53の表面が、p形とならない条件でイオン注入する。その後、第2の炭化珪素層53の上に、エピタキシャル成長法により、第3の炭化珪素層56を形成する。
【0107】
実施形態の半導体装置の製造方法では、第2の炭化珪素層53の表面は、n形であり、エピタキシャル成長装置の反応炉がアルミニウムで汚染されることを抑制する。したがって、当該エピタキシャル成長装置による炭化珪素層のn形不純物濃度の制御が容易になる。
【0108】
また、実施形態の半導体装置の製造方法では、第2の炭化珪素層53の表面はn形であり、高ドーズのアルミニウムのイオン注入で形成されたp形領域が存在しない。したがって、第2の炭化珪素層53の上に形成される、第3の炭化珪素層56の結晶性の劣化が抑制される。したがって、MOSFET100の特性劣化が抑制される。
【0109】
さらに、実施形態の半導体装置の製造方法では、第3の炭化珪素層56を形成する前の、p+型の第1のSiC領域55の活性化アニール工程を省略することが可能である。
【0110】
高ドーズのアルミニウムのイオン注入で形成されたp形領域が表面に存在する炭化珪素層の上に、活性化アニール工程を省略して、エピタキシャル成長法により炭化珪素層の形成を行う場合を考える。この場合、例えば、水素エッチング処理の昇温時に、ウェハが変形し、エピタキシャル成長装置の中で、ウェハのウェハホルダからの飛びが発生するおそれがある。ウェハの変形は、ウェハ表面に露出したp形領域の、イオン注入ダメージに起因すると考えられる。
【0111】
実施形態の半導体装置の製造方法では、第2の炭化珪素層53の表面はn形であり、高ドーズのアルミニウムのイオン注入で形成されたp形領域は表面に露出しない。したがって、水素エッチング処理の昇温時に、ウェハが変形し、ウェハの飛びが発生することが抑制される。したがって、p+型の第1のSiC領域55の活性化アニール工程を省略することが可能である。
【0112】
(変形例)
実施形態の変形例の半導体装置は、第3の領域の第1導電形不純物濃度は、第2の領域の第1導電形不純物濃度より高い点で、実施形態の半導体装置と異なる。また、実施形態の変形例の半導体装置の製造方法は、第3の炭化珪素層の第1導電形不純物濃度は、第2の炭化珪素層の第1導電形不純物濃度よりも高い点で、実施形態の半導体装置の製造方法と異なる。
【0113】
図12は、実施形態の変形例の半導体装置の模式図である。
図12は、実施形態の変形例の半導体装置の一部の模式断面図である。
図12は、実施形態の
図1に対応する図である。
【0114】
実施形態の変形例の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型のMOSFET101である。MOSFET101は、ゲート電極がトレンチの中に形成されたトレンチゲート型のMOSFETである。
【0115】
MOSFET101のドリフト領域24は、n-形の第1の領域24a、n形の第2の領域24b、及び、n+形の第3の領域24cを含む。
【0116】
第3の領域24cは、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。第3の領域24cのn形不純物濃度は、例えば、第2の領域24bのn形不純物濃度よりも高い。第3の領域24cのn形不純物濃度は、例えば、2×1016cm-3以上2×1018cm-3以下である。
【0117】
MOSFET101は、実施形態のMOSFET100の製造方法と同様の製造方法で製造できる。ただし、第3の炭化珪素層56のn形不純物濃度は、第2の炭化珪素層53のn形不純物濃度より高くする。
【0118】
実施形態の変形例のMOSFET101によれば、n形不純物濃度の高い第3の領域24cも電流拡散層として機能する。したがって、更にオン抵抗が低減される。
【0119】
第3の領域24cのn形不純物濃度を、第2の領域24bのn形不純物濃度と等しくすることも可能である。
【0120】
以上、実施形態及び変形例の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、ゲート・ドレイン間容量が小さくなることで、MOSFETの動作の高速化を実現できる。また、実施形態及び変形例の半導体装置の製造方法によれば、エピタキシャル成長装置の反応炉の汚染の抑制、MOSFETの特性劣化の抑制、及び、活性化アニール工程の省略が実現できる。
【0121】
実施形態では、SiCの結晶構造として4H-SiCの場合を例に説明したが、本発明は6H-SiC、3C-SiC等、その他の結晶構造のSiCを用いたデバイスに適用することも可能である。また、炭化珪素層10の表面に(0001)面以外の面を適用することも可能である。
【0122】
実施形態では、第1導電形がn形、第2導電形がp形の場合を例に説明したが、第1導電形をp形、第2導電形をn形とすることも可能である。
【0123】
実施形態では、p形不純物としてアルミニウム(Al)を例示したが、ボロン(B)を用いることも可能である。また、n形不純物として窒素(N)及びリン(P)を例示したが、砒素(As)、アンチモン(Sb)等を適用することも可能である。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0125】
10 炭化珪素層
12 ソース電極(第1の電極)
14 ドレイン電極(第2の電極)
16 ゲート絶縁層
18 ゲート電極、
24 ドリフト領域(第1の炭化珪素領域)
24a 第1の領域
24b 第2の領域
24bx 第1の部分
24by 第2の部分
24c 第3の領域
26 ボディ領域(第2の炭化珪素領域)
28 ソース領域(第3の炭化珪素領域)
30 電界緩和領域(第4の炭化珪素領域)
40 トレンチ
52 第1の炭化珪素層
53 第2の炭化珪素層
55 第1のSiC領域(第1の領域)
56 第3の炭化珪素層
57 第2のSiC領域(第2の領域)
59 第3のSiC領域
100 MOSFET(半導体装置)
F1 第1の面
F2 第2の面