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特開2024-138819レインガーデン評価装置及びレインガーデン評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138819
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】レインガーデン評価装置及びレインガーデン評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20241002BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20241002BHJP
   G01W 1/00 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
G06Q50/26
E03F1/00 Z
G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049518
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高砂 裕之
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅志
(72)【発明者】
【氏名】板川 暢
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴子
(72)【発明者】
【氏名】リン ブーン ケン
(72)【発明者】
【氏名】高山 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】井口 真生子
(72)【発明者】
【氏名】清水 涼太郎
【テーマコード(参考)】
2D063
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2D063AA01
2D063AA09
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】レインガーデンの浸透貯留能力とともに、湛水状態を評価できるレインガーデン評価装置を提供すること。
【解決手段】レインガーデン評価装置1は、レインガーデンへ流入する降雨及び流域の条件、並びにレインガーデンの形状情報及び土層の水分特性パラメータを含む入力パラメータを設定する条件設定部11と、雨水の流入量を、集水モデルを用いて流域毎に時系列でシミュレーションする流入量算出部12と、水分移動モデルを用いて土層への浸透量、及び土層からの流出量を時系列でシミュレーションする浸透貯留量算出部13と、流入量から浸透量及び流出量を除いた表面流出量、並びに形状情報に基づいて、レインガーデンの湛水量及びオーバーフロー量を時系列でシミュレーションする湛水量算出部14と、浸透量、流出量、湛水量、及びオーバーフロー量を評価指標として出力する出力部15とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レインガーデンへ流入する降雨及び流域の条件、並びに前記レインガーデンの形状情報及び前記レインガーデンを構成する土層の水分特性パラメータを含む入力パラメータを設定する条件設定部と、
前記レインガーデンへの雨水の流入量を、前記降雨及び流域の条件に基づく集水モデルを用いて、流域毎に時系列でシミュレーションする流入量算出部と、
前記流入量、及び前記水分特性パラメータに基づく水分移動モデルを用いて、前記レインガーデンを構成する土層への浸透量、及び前記レインガーデンを構成する土層からの流出量を、時系列でシミュレーションする浸透貯留量算出部と、
前記流入量から前記浸透量及び前記流出量を除いた表面流出量、並びに前記形状情報に基づいて、当該レインガーデンの湛水量及びオーバーフロー量を、時系列でシミュレーションする湛水量算出部と、
前記浸透量、前記流出量、前記湛水量、及び前記オーバーフロー量を、前記レインガーデンの評価指標として出力する出力部と、を備えるレインガーデン評価装置。
【請求項2】
前記流入量算出部は、前記集水モデルとして貯留関数法を用い、前記流域における降雨量、面積、一次流出率、飽和降雨量、及び土地利用状況に基づく流域定数の入力を受け付ける請求項1に記載のレインガーデン評価装置。
【請求項3】
前記条件設定部は、前記水分特性パラメータとして、前記レインガーデンを構成する複数の土層それぞれに対するパラメータを設定する請求項1に記載のレインガーデン評価装置。
【請求項4】
前記条件設定部は、前記レインガーデンへの流入水に含まれる所定の成分の濃度、及び前記レインガーデンを構成する土層による当該成分の吸着率を設定し、
前記浸透貯留量算出部は、前記吸着率に基づいて、前記レインガーデンを構成する土層からの前記成分の流出濃度を算出し、
前記出力部は、前記成分の流入濃度及び流出濃度を、前記レインガーデンの評価指標として出力する請求項1に記載のレインガーデン評価装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記入力パラメータのうち、いずれかを変更した組み合わせ毎に算出された前記評価指標に関する複数の時系列データを、比較可能に同期して出力する請求項1に記載のレインガーデン評価装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記浸透量、前記流出量、前記湛水量、及び前記オーバーフロー量を、前記流入量に対する水収支として出力する請求項1に記載のレインガーデン評価装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のレインガーデン評価装置としてコンピュータを機能させるためのレインガーデン評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レインガーデンの設計支援のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
グリーンインフラは、自然環境が有する多様な機能を活用した土地利用等の推進を指す概念である。この中で、内水氾濫といった都市型水害を抑制するために、雨水の浸透及び貯留性能の高い緑地を、レインガーデンとして整備する動きが活発化している。
【0003】
レインガーデンは、まず、任意の降雨に対して浸透貯留機能を果たすことが求められ、その性能を評価することが必要である。例えば、水害や土砂災害等を防止するための手法として、特許文献1では、分散配置された貯水槽の導水量及び排水量を一元管理することによる地域治水システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7040835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、レインガーデンには、浸透貯留機能とともに、建築外構に水景を提供するという意義がある。すなわち、レインガーデンを設計するにあたって、浸透貯留機能及びデザインの両立を図る必要があり、任意の降雨に対して、浸透貯留能力を評価するとともに、どの程度の湛水が生じて水景が形成され得るのかを予測することは重要である。
【0006】
本発明は、レインガーデンの浸透貯留能力とともに、湛水状態を評価できるレインガーデン評価装置及びレインガーデン評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレインガーデン評価装置は、レインガーデンへ流入する降雨及び流域の条件、並びに前記レインガーデンの形状情報及び前記レインガーデンを構成する土層の水分特性パラメータを含む入力パラメータを設定する条件設定部と、前記レインガーデンへの雨水の流入量を、前記降雨及び流域の条件に基づく集水モデルを用いて、流域毎に時系列でシミュレーションする流入量算出部と、前記流入量、及び前記水分特性パラメータに基づく水分移動モデルを用いて、前記レインガーデンを構成する土層への浸透量、及び前記レインガーデンを構成する土層からの流出量を、時系列でシミュレーションする浸透貯留量算出部と、前記流入量から前記浸透量及び前記流出量を除いた表面流出量、並びに前記形状情報に基づいて、当該レインガーデンの湛水量及びオーバーフロー量を、時系列でシミュレーションする湛水量算出部と、前記浸透量、前記流出量、前記湛水量、及び前記オーバーフロー量を、前記レインガーデンの評価指標として出力する出力部と、を備える。
【0008】
前記流入量算出部は、前記集水モデルとして貯留関数法を用い、前記流域における降雨量、面積、一次流出率、飽和降雨量、及び土地利用状況に基づく流域定数の入力を受け付けてもよい。
【0009】
前記条件設定部は、前記水分特性パラメータとして、前記レインガーデンを構成する複数の土層それぞれに対するパラメータを設定してもよい。
【0010】
前記条件設定部は、前記レインガーデンへの流入水に含まれる所定の成分の濃度、及び前記レインガーデンを構成する土層による当該成分の吸着率を設定し、前記浸透貯留量算出部は、前記吸着率に基づいて、前記レインガーデンを構成する土層からの前記成分の流出濃度を算出し、前記出力部は、前記成分の流入濃度及び流出濃度を、前記レインガーデンの評価指標として出力してもよい。
【0011】
前記出力部は、前記入力パラメータのうち、いずれかを変更した組み合わせ毎に算出された前記評価指標に関する複数の時系列データを、比較可能に同期して出力してもよい。
【0012】
前記出力部は、前記浸透量、前記流出量、前記湛水量、及び前記オーバーフロー量を、前記流入量に対する水収支として出力してもよい。
【0013】
本発明に係るレインガーデン評価プログラムは、前記レインガーデン評価装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レインガーデンの浸透貯留能力とともに、湛水状態を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態におけるレインガーデン評価装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】実施形態におけるレインガーデンの評価指標を説明する図である。
図3】実施形態における貯留関数法を説明する図である。
図4】実施形態における評価指標の出力例を示す図である。
図5】実施形態における条件毎のシミュレーション結果を比較出力した例を示す図である。
図6】実施形態における評価指標のバランスを可視化して出力した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態のレインガーデン評価装置(システム)は、レインガーデンの設計支援のため、集水モデル及びレインガーデンモデルを用いて対象のレインガーデンの状態をシミュレーション解析し、解析結果として、浸透貯留性能及び水景を定量評価した評価指標を出力する。
【0017】
図1は、本実施形態におけるレインガーデン評価装置1の機能構成を示すブロック図である。
レインガーデン評価装置1は、制御部10及び記憶部20の他、入出力及び通信インタフェース等を備えた情報処理装置(コンピュータ)である。
【0018】
制御部10は、レインガーデン評価装置1の全体を制御する部分であり、記憶部20に記憶されたレインガーデン評価プログラムを含む各種ソフトウェアを適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各機能を実現する。制御部10は、CPUであってよい。
【0019】
記憶部20は、ハードウェア群をレインガーデン評価装置1として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスクドライブ(HDD)等であってよい。
具体的には、記憶部20は、レインガーデン評価プログラム等の各種ソフトウェアの他、レインガーデンを解析するための集水モデル及びレインガーデンモデルを構成する各種パラメータ、並びに解析結果である評価指標等を記憶する。
【0020】
図2は、本実施形態におけるレインガーデンの評価指標を説明する図である。
レインガーデンに対しては、降雨により集水域から水が流入する。この流入量に関する時系列データは、集水モデルにより解析され、レインガーデンモデルの入力となる。
【0021】
流入した水は、レインガーデンの地表から土壌内へ浸透し貯留されるが、その量に応じて、レインガーデンとしての解析対象領域の外(系外)へ流出する。また、多量の降雨により浸透又は湛水しきれず、湛水可能深さを超えた水は、系外へオーバーフローする。
これらの水分移動は、レインガーデンモデルにより解析され、評価指標として、浸透量、流出量、オーバーフロー量及び湛水量に関するデータが出力される。
【0022】
制御部10は、設定されたパラメータに基づく集水モデル及びレインガーデンモデルを構成し、次の各部として動作する。
すなわち、制御部10は、条件設定部11と、流入量算出部12と、浸透貯留量算出部13と、湛水量算出部14と、出力部15とを備える。
【0023】
条件設定部11は、集水モデルの入力パラメータとして、レインガーデンへ流入する降雨及び流域の条件と、レインガーデンモデルの入力パラメータとして、レインガーデンの形状情報、及びレインガーデンを構成する土層の水分特性パラメータを設定する。
このとき、条件設定部11は、水分特性パラメータとして、レインガーデンを構成する複数の土層それぞれに対するパラメータを設定する。
【0024】
降雨条件は、代表的な形状の時系列雨量データがデータベースに予め登録されていてもよい。例えば、10mm,20mm,…,100mm等の日降雨量に関して、中央集中型ハイエトグラフのデータを備え、異なる降雨量それぞれのシミュレーションが自動実行されてもよい。
【0025】
流入量算出部12は、レインガーデンへの雨水の流入量を、設定された降雨及び流域の条件に基づく集水モデルを用いて、流域毎に時系列でシミュレーションする。
ここで、流入量算出部12は、集水モデルとして、例えば貯留関数法を用い、流域における降雨量、面積、一次流出率、飽和降雨量、及び土地利用状況に基づく流域定数の入力を受け付ける。
【0026】
図3は、本実施形態における貯留関数法を説明する図である。
貯留関数法では、流域をタンクに見立て、タンクに降った雨は、一部がタンクに一時的に貯留され、貯留量に応じた流量がタンクから流出、すなわちレインガーデンに流入する。
【0027】
集水モデルに対しては、流域平均有効降雨量rave(mm/h)の他、レインガーデンに雨水が流入する各流域について、面積A(m)、一次流出率F(%)、飽和降雨量Rsa(mm)、流域定数定数K及びPが入力される。
なお、流域定数K,Pは、流域の土地利用状況に応じたパラメータ(L:流域斜面延長,I:流域斜面の平均勾配,N:等価粗度係数)に基づいて、例えば次のように設定される。
K=7.35・(N・L/I1/20.6
P=0.6
【0028】
ここで、一次流出率は、浸透又は窪地への貯留によって流域に留まる水量を除いた、流出する割合を示す。
また、飽和降雨量は、流域が雨水により飽和状態になるために必要な降水量を示し、飽和降雨量を超える降雨については、一次流出率に関係なく全て流出する。
なお、各入力パラメータは、経験に基づく一般的な値が定められてよいが、実際の測定に基づいて調整されてもよい。
【0029】
これらの入力パラメータに基づいて、流入量算出部12は、次の基礎式に従って、流域内の貯留高s及び流出高qの時間変化を計算し、各流域(例えば、複数の屋根毎)及び全流域の時間あたりの流出量(=流出高×流域面積)、すなわちレインガーデンへの流入量を時系列に出力する。
s=Kq
ave-q=ds/dt
【0030】
浸透貯留量算出部13は、レインガーデンへの流入量、及び水分特性パラメータに基づいて、レインガーデンモデルが採用する水分移動モデルを用いて、レインガーデンを構成する土層への浸透量、及びレインガーデンを構成する土層からの流出量を、時系列でシミュレーションする。
【0031】
例えば、不飽和土の一次元水分移動モデル(van Genuchten-Mualemモデル)に対しては、土層毎に層厚及び面積に加えて、それぞれの土壌の水分特性としてVGMパラメータが入力される。
VGMパラメータは、土壌の圧力、含水率(あるいは表面圧力水頭)、透水性、充填密度の情報から決定される値であり、壌土及びシルト等の一般値の他、建物の外構で一般的に使用される黒赤土、表面湛水可能なベントナイト混合土、レインガーデン下層土として利用される粗砂、透水性及び保水性を備えた植生用植栽土等、様々なパラメータが予め用意される。
【0032】
湛水量算出部14は、レインガーデンへの流入量から浸透量及び流出量を除いた表面流出量、並びにレインガーデンの形状情報に基づいて、レインガーデンの湛水量及びオーバーフロー量を、時系列でシミュレーションする。
【0033】
ここで、レインガーデンの形状情報とは、湛水可能量を導出可能な情報であり、表面流出量のうち、湛水可能量を超えた分がオーバーフロー量となる。
すなわち、時刻tの湛水量Vfill(t)は、流出量Qin及び浸透量Qosmを用いて、
fill(t)=Vfill(t-1)+(Qin-Qosm)×ΔT
と表せる。このとき、オーバーフロー量Qoutは、湛水量が湛水可能量Vmaxを超えた(Vfill(t)>Vmax)場合には、
fill(t)=Vmax
out=(Qin-Qosm)×ΔT
となり、Vfill(t)≦Vmaxの場合には、
out=0
となる。
【0034】
形状情報は、例えば水深と湛水量との関係を示すグラフデータであってもよい。この場合、シミュレーションされた湛水量から水深を導出することで、さらに水景の評価指標とすることができる。
また、水深によって面積が変化しない形状である場合には、面積及び湛水可能高さを形状情報として受け付けることで、水深(=湛水量/面積)を水景の評価指標とすることができる。
【0035】
出力部15は、浸透貯留量算出部13及び湛水量算出部14によりシミュレーションされた浸透量、流出量、湛水量、及びオーバーフロー量を示すデータを、レインガーデンの評価指標として出力する。
【0036】
図4は、本実施形態における評価指標の出力例を示す図である。
この例では、流入量(m/s)、浸透量(m/s)、流出量(m/s)、湛水深(cm)、湛水量(m)、オーバーフロー量(m/s)について、70時間分のデータが時系列のグラフで画面出力されている。
【0037】
表示の態様は一例であり、例えば、グラフの期間(開始時刻及び終了時刻)は、スライダー等により指定可能であってよい。また、表示される評価指標及びグラフの形態、単位等は選択可能であってよい。
なお、この例では、同一時刻の各評価指標を容易に参照できるように、マウス等により指示された時刻に「マウス位置線」が描画されている。さらに、この時刻における各評価指標の値が表示されてもよい。
【0038】
この他、レインガーデンの設計支援のために、シミュレーション結果である評価指標の出力方法は、様々に変更可能である。例えば、条件(入力パラメータ)毎の評価指標の比較、各評価指標のバランス等が可視化して出力されてもよい。
【0039】
図5は、本実施形態における条件毎のシミュレーション結果を比較出力した例を示す図である。
出力部15は、入力パラメータ(降雨及び流域の条件、並びに形状情報及び水分特性パラメータ)のうち、いずれかを変更した組み合わせ毎に算出された評価指標に関する複数の時系列データを、比較可能に同期して出力する。
【0040】
例えば、変更対象の条件を選択することで、複数の条件に応じた複数の湛水深の時系列データから複合グラフが作成される。
この例では、3種類の降雨条件によるシミュレーション結果(湛水深の時系列データ)が重ねて表示されている。
また、縦軸と平行な赤線を移動させると、対象箇所の経過時間及び湛水深がポップアップで表示される。
【0041】
図6は、本実施形態における評価指標のバランスを可視化して出力した例を示す図である。
出力部15は、浸透量、流出量、湛水量、及びオーバーフロー量を、流入量に対する水収支として出力する。
【0042】
ある時点(この例では、12時間後)での水収支の関係(流入量=浸透量+流出量+湛水量+オーバーフロー量)をグラフ表示することにより、レインガーデンに流入した雨水の移動先に関する分布、すなわち各所の水量及びバランスが可視化される。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、レインガーデン評価装置1は、水分移動モデルに基づいてレインガーデンへ流入した雨水の移動をシミュレーションし、さらに、レインガーデンの形状情報に基づいて、湛水量及びオーバーフロー量を、時系列に出力する。
これにより、レインガーデン評価装置1は、レインガーデンの機能としての浸透貯留能力とともに、水景デザインとしての湛水状態を評価できる。
【0044】
レインガーデン評価装置1は、集水モデルとして貯留関数法を用い、流域における降雨量、面積、一次流出率、飽和降雨量、及び土地利用状況に基づく流域定数の入力を受け付ける。
これにより、レインガーデン評価装置1は、レインガーデンへの流入量を、パラメータに基づいて適切にシミュレーションでき、この結果、レインガーデンモデルへの入力の信頼度が向上するため、レインガーデンの浸透貯留能力及び湛水状態を適切に評価できる。
【0045】
レインガーデン評価装置1は、水分特性パラメータとして、レインガーデンを構成する複数の土層それぞれに対するパラメータを設定する。
これにより、レインガーデン評価装置1は、複数の異なる土層からなるレインガーデンの設計に対して、水分移動を精度良くシミュレーションできる。
【0046】
レインガーデン評価装置1は、入力パラメータのうち、いずれかを変更した組み合わせ毎に算出された評価指標に関する複数の時系列データを、比較可能に同期して出力する。
これにより、ユーザは、条件に応じた浸透貯留能力及び湛水状態を比較検討し、レインガーデンを適切に設計することができる。
【0047】
レインガーデン評価装置1は、浸透量、流出量、湛水量、及びオーバーフロー量を、流入量に対する水収支として出力する。
これにより、ユーザは、条件に応じた水収支のバランスを確認し、レインガーデンを適切に設計することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0049】
例えば、レインガーデン評価装置1は、レインガーデンを構成する土壌による、流入水の水質浄化効果をシミュレーションし、評価指標としてさらに出力してもよい。
この場合、条件設定部11は、レインガーデンへの流入水に含まれる窒素又はリン等、所定の成分の濃度と、レインガーデンを構成する土層による、この成分の吸着率とを設定する。
また、浸透貯留量算出部13は、設定された吸着率に基づいて、レインガーデンを構成する土層からの成分の流出濃度を算出する。
そして、出力部15は、成分の流入濃度及び流出濃度を、レインガーデンの評価指標として出力する。
【0050】
レインガーデン評価装置1による評価方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、情報処理装置(コンピュータ)にインストールされる。また、これらのプログラムは、CD-ROMのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。さらに、これらのプログラムは、ダウンロードされることなくネットワークを介したWebサービスとしてユーザのコンピュータに提供されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 レインガーデン評価装置
10 制御部
11 条件設定部
12 流入量算出部
13 浸透貯留量算出部
14 湛水量算出部
15 出力部
20 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6