特開 2024-138825 搬送台車装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024138825

(43)【公開日】2024-10-09

(54)【発明の名称】搬送台車装置

(51)【国際特許分類】

   B62B 3/02 20060101AFI20241002BHJP

   B62B 5/00 20060101ALI20241002BHJP

【ＦＩ】

B62B3/02 H

B62B5/00 J

B62B3/02 D

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023049526

(22)【出願日】2023-03-27

(71)【出願人】

【識別番号】300076655

【氏名又は名称】有限会社藤誠

(74)【代理人】

【識別番号】100074251

【弁理士】

【氏名又は名称】原田 寛

(74)【代理人】

【識別番号】100066223

【弁理士】

【氏名又は名称】中村 政美

(72)【発明者】

【氏名】伊藤 清三

【テーマコード（参考）】

3D050

【Ｆターム（参考）】

3D050AA13

3D050BB02

3D050BB27

3D050BB29

3D050BB30

3D050EE08

3D050EE15

3D050KK06

(57)【要約】

【課題】例えば各種機器の搬送移動に際し、搬送面に凹凸、段差等がある場合でもそれらの凹凸等に対応して車輪を上下動でき、搬送物を傾けずに安定的に移動搬送する。
【解決手段】搬送物Ｐを搬送支持する盤状の搬送台車本体１の後部には後輪１２を支承している後輪枠１０を、前部には前輪２３を支承している前輪枠２０をそれぞれ配し、前輪枠２０には搬送台車本体１に対し前輪枠２０自体を上下動させるスライド機構２５を配装する。スライド機構２５は、前輪枠２０の蓋部壁２４と搬送台車本体１とに貫挿したスライドポスト２６を蓋部壁２４の下面、搬送台車本体１の上面それぞれで上下部の支持板２７，２８によって支持すると共に、蓋部壁２４、搬送台車本体１相互間に、スライドポスト２６を囲繞して前輪枠２０、搬送台車本体１を離反傾向に弾発付勢する弾発手段２９を配装して成る。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

搬送物を載置支持して搬送面上を搬送させる搬送台車装置であって、搬送物を搬送支持する盤状の搬送台車本体の後部には後輪を支承している後輪枠を、前部には前輪を支承している前輪枠をそれぞれ配し、前輪枠には搬送台車本体に対し前輪枠自体を上下動させるスライド機構を配装したことを特徴とする搬送台車装置。

【請求項2】

スライド機構は、前輪枠が備えた蓋部壁と搬送台車本体とに貫挿したスライドポストを蓋部壁の下面、搬送台車本体の上面それぞれで上下部の支持板によって支持すると共に、蓋部壁、搬送台車本体相互間に、スライドポストを囲繞して前輪枠、搬送台車本体を離反傾向に弾発付勢する弾発手段を配装して成る請求項１に記載の搬送台車装置。

【請求項3】

スライドポストは、搬送台車本体の上面に配されたベアリング軸受に支持してある請求項２に記載の搬送台車装置。

【請求項4】

搬送台車本体の前部左右部分に設けた挿脱孔に、前輪枠の前面に当接する規制ピンを挿脱自在に挿入してあって、規制ピンを挿脱孔から抜き出したときにはスライドポスを軸として前輪枠を左右に方向転換可能にしてある請求項２または３に記載の搬送台車装置。

【請求項5】

搬送台車本体には、搬送物を載置支持するターンテーブルが設けられていて、このターンテーブルはターンテーブルクッション機構を備えており、ターンテーブルクッション機構は、搬送物が載置されるテーブルを支持しているターンテーブル軸を、走行台車本体に上下動自在にして貫挿すると共に、テーブルと走行台車本体上面との間に緩衝盤を配装して成る請求項１に記載の搬送台車装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、例えば各種工場等における重量的に嵩張る各種機器の据え付け、移動に際し、これらを搬送する場合に搬送面における凹凸、段差等があるとき、それらの凹凸等に対応して車輪を上下動させることで搬送物を傾けることなく、安定的に移動搬送できるようにした搬送台車装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来から、重量的に嵩張る例えば各種機器を移動搬送する際、例えば特許文献１に示される運搬台車、特許文献２に示される運搬車等が提案されている。特許文献１の運搬台車は、走行する台車上に運搬物を支持する荷枠を設け、台車が例えば階段等の傾斜した走行面上で移動するとき、荷枠自体を水平となるように姿勢を傾斜させる油圧シリンダーを備えるとする。特許文献２の運搬車は、走行する車台上に荷物を支持する移動部材を設け、傾斜した走行面上で移動するとき、その傾斜と逆方向に移動部材を傾斜させるように送りねじ機構を備えるとする。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開昭５３－５３８号公報

【特許文献2】特開昭５５－６８４６７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

こうした従来の運搬車では、走行面が大きく傾斜している場合に、荷物の運搬姿勢を水平に維持するように荷枠、移動部材等を傾斜調整するようにしているから、その傾斜調整機構は大型化し、調整操作を必要とする。しかしながら、例えば搬送面上で移動搬送する際、搬送面に凹凸あるいは僅かな傾斜がある場合には、これらを回避すべく傾斜調整機構をその都度、調整するとすれば面倒である。そればかりでなく、重量が比較的に嵩張る機器である場合には、傾斜調整機構に対する操作は作業員の負担が増大し、危険な事態が生じることもあった。

【0005】

そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、搬送面上で移動搬送させるとき、搬送面にある凹凸、僅かな傾斜その他によって生じるガタつき等を解消すべく、搬送車輪自体を上下動させることで回避し、しかも搬送物を傾けることなく、安全に搬送移動できるようにした搬送台車装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上述した課題を解決するため、本発明にあっては、搬送物Ｐを載置支持して搬送面上を搬送させる搬送台車装置であって、搬送物Ｐを搬送支持する盤状の搬送台車本体１の後部には後輪１２を支承している後輪枠１０を、前部には前輪２３を支承している前輪枠２０をそれぞれ配し、前輪枠２０には搬送台車本体１に対し前輪枠２０自体を上下動させるスライド機構２５を配装したことを特徴とする。
スライド機構２５は、前輪枠２０が備えた蓋部壁２４と搬送台車本体１とに貫挿したスライドポスト２６を蓋部壁２４の下面、搬送台車本体１の上面それぞれで上下部の支持板２７，２８によって支持すると共に、蓋部壁２４、搬送台車本体１相互間に、スライドポスト２６を囲繞して前輪枠２０、搬送台車本体１を離反傾向に弾発付勢する弾発手段２９を配装して構成することができる。
スライドポスト２６は、搬送台車本体１の上面に配されたベアリング軸受３１に支持して構成することができる。
搬送台車本体１の前部左右部分に設けた挿脱孔３６に、前輪枠２０の前面に当接する規制ピン３５を挿脱自在に挿入してあって、規制ピン３５を挿脱孔３６から抜き出したときにはスライドポスト２６を軸として前輪枠２０を左右に方向転換可能にして構成することができる。
搬送台車本体１には、搬送物Ｐを載置支持するターンテーブル４０が設けられていて、このターンテーブル４０はターンテーブルクッション機構４１を備えており、ターンテーブルクッション機構４１は、搬送物Ｐが載置されるテーブル４２を支持しているターンテーブル軸４３を、走行台車本体１に上下動自在にして貫挿すると共に、テーブル４２と走行台車本体１上面との間に緩衝盤４４を配装して構成することができる。

【0007】

以上のように構成された本発明に係る搬送台車装置にあって、例えば重量的に嵩張る各種の機器類等の搬送物Ｐを搬送するに、この搬送物Ｐをターンテーブル４０上に載置支持し、搬送面上で移動させることで、搬送物Ｐを搬送させる。
搬送台車本体１における前輪枠２０のスライド機構２５は、例えば搬送面上に凹凸等の段差がある場合、その段差を乗り越えるように前輪枠２０自体を上下動させ、搬送台車本体１に載置支持している搬送物Ｐを傾けさせず、段差等による上下動をいわば吸収し、安定した搬送姿勢を維持させる。
また、スライド機構２５の弾発手段２９は、搬送面にある段差等の位置に至ると、弾発手段２９の弾発力で前輪枠２０をその弾発力に抗して上方に持ち来し、乗り越えた後は蓄積された弾発作用によって前輪枠２０を下降させ、搬送面上でスムーズに移動させる。
挿脱孔３６に挿脱自在に挿入した規制ピン３５は、挿入時では前輪枠２０を正面方向に向けた状態を維持して搬送台車装置自体を直進させ、抜き出したときにはベアリング軸受３１に支持させてあるスライドポスト２６を軸として前輪枠２０を左右に方向転換可能にさせ、搬送台車装置自体を任意方向に向けさせる。
ターンテーブル４０に設けられたターンテーブルクッション機構４１は、ターンテーブル４０上で載置支持した搬送物Ｐに対してクッション作用を与え、搬送中の搬送物Ｐを保護させる。

【発明の効果】

【0008】

本発明は以上説明したように構成されているため、例えば各種工場等における重量的に嵩張る各種機器の搬送移動に際し、搬送面に凹凸、段差等がある場合でもそれらの凹凸等に対応して車輪を上下動させ、搬送物を傾けることなく、安定的に移動搬送できる。

【0009】

すなわち、これは本発明において、搬送物Ｐを搬送支持する盤状の搬送台車本体１の後部には後輪１２を支承している後輪枠１０を、前部には前輪２３を支承している前輪枠２０をそれぞれ配し、前輪枠２０には搬送台車本体１に対し前輪枠２０自体を上下動させるスライド機構２５を配装したからであり、搬送面における凹凸等に応じた前輪枠２０の上下動によって搬送台車を安定した状態で搬送させることができる。

【0010】

また、スライド機構２５は、前輪枠２０の蓋部壁２４と搬送台車本体１とに貫挿したスライドポスト２６の上下面を上下部の支持板２７，２８によって支持し、蓋部壁２４、搬送台車本体１相互間に、スライドポスト２６を囲繞して前輪枠２０、搬送台車本体１を離反傾向に弾発付勢する弾発手段２９を配装してあることで、前輪枠２０は、搬送面における凹凸に応じて弾発手段２９の弾発力に抗しての上移動、弾発力の復元による下移動を自動調整して搬送面で搬送台車本体１をスムーズに搬送移動できる。

【0011】

スライド機構２５のスライドポスト２６は、搬送台車本体１の上面に配したベアリング軸受３１に支持されていて、前輪枠２０の前部左右で当接する規制ピン３５を挿脱孔３６に挿脱自在に挿入してあることで、規制ピン３５を挿入してあるときには前輪枠２０を正面に向けさせて直進させることができる。規制ピン３５を挿脱孔３６から抜き出したときには前輪枠２０を自在に左右に方向転換でき、搬送台車装置自体を任意の方向に向けて進行させることができる。

【0012】

ターンテーブル４０にはターンテーブルクッション機構４１が設けられていることで、搬送面で搬送台車装置によって搬送させるとき、ターンテーブル４０上に載置支持した搬送物Ｐに対しては、搬送中における搬送面に存する凹凸等による衝撃や搬送物Ｐの重量の多寡に応じたクッション作用で搬送物Ｐを保護することができる。

【0013】

尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付した。本発明は、これらの記載、図面中の符号等によって示された構造・形状等に限定されない。

【図面の簡単な説明】

【0014】

【図1】本発明を実施するための一形態を示す斜視図である。

【図2】同じく搬送使用時の断面図である。

【図3】同じく平面図である。

【発明を実施するための形態】

【0015】

以下、図面を参照して本発明を実施するための一形態を説明すると、図において示される符号１は搬送台車本体であり、この搬送台車本体１は、平面から見て後部が広幅で、前部が狭幅となっているほぼ台形状を呈する盤状に形成されていて、後部には後輪枠１０が、前部には前輪枠２０が上下動自在に設けられている。また、搬送台車本体１の上面には、搬送物Ｐを載置支持するターンテーブル４０が配置されている。後輪枠１０の後面、前輪枠２０の前面それぞれには、本発明装置の搬送用治具・機器との連結、操作のための前後部の連結片２，３が設けられている。

【0016】

図示にあっての後輪枠１０は、搬送台車本体１と同一面状にした上部壁、この上部壁の前後に配した前後部壁、左右に配した左右側部壁によって下方開放のボックス枠状に形成されていて、内部の中央部には支持壁が配されている。そして、左右側壁部、支持壁を貫挿した後輪軸１１の左右部分にローラー状の後輪１２が回転自在に支承されている。

【0017】

図示のように、前輪枠２０は、搬送台車本体１の前部下面に、スライド機構２５によって上下方向に沿って弾発的にスライドするように配装されている。前輪枠２０自体は、上部壁、前後部壁、左右側部壁によって下方開放のボックス状に形成されている。そして、前輪枠２０内部の左右部それぞれに左右側部壁に相対させて左右支持壁が設けられることで左右の車輪室２１が形成されていて、この車輪室２１それぞれに貫挿した前輪軸２２にローラー状の前輪２３が回転自在に支承されている。

【0018】

前輪２３が支承された前輪枠２０は、左右の車輪室２１の上部壁相互間を連結するように架装されている蓋部壁２４に設けたスライド機構２５によって、上下方向に沿って搬送台車本体１に対して弾発的に上下動するようにしてある。

【0019】

このスライド機構２５は、蓋部壁２４と搬送台車本体１とに貫挿したスライドポスト２６を蓋部壁２４の下面、搬送台車本体１の上面それぞれで上下部の支持板２７，２８によって支持すると共に、蓋部壁２４、搬送台車本体１相互間に、スライドポスト２６を囲繞して前輪枠２０、搬送台車本体１を離反傾向に弾発付勢する弾発手段２９を配装して成る。

【0020】

弾発手段２９は、図示例のように複数の皿バネを互いに逆向きにして重ね合わせることで形成したり、図示を省略したがコイル状スプリングを介装させたりして成る。いずれにしても、例えば搬送面上に生じている凹凸、傾斜等に対応して前輪枠２０が搬送台車本体に対して上方に向かって上位置となることで、搬送台車本体１が傾くことなくほぼ水平状態を維持させるようにしている。

【0021】

また、前記スライドポスト２６は、その上部は上部支持板２７によって搬送台車本体１の上面側で固定され、その下部は下部支持板２８によって蓋部壁２４の下面に係止されていて、蓋部壁２４（前輪枠２０）とは相対的なスライドを可能にしている。そして、図示例のように、スライドポスト２６の上部支持板２７は、カップ状に形成されていて、搬送台車本体１上面に例えば溶接などで固定されており、この上部支持板２７内には、搬送台車本体１におけるスライドポスト２６の貫挿部分を囲繞しているベアリング軸受３１が内装されている。

【0022】

こうすることで、スライドポスト２６自体はベアリング軸受３１によって支持されていることになって、後述するように、前輪枠２０自体を、スライドポスト２６を軸として左右に方向転換できるようにしている。また、上記したように、前輪枠２０が上方にスライドするとき、蓋部壁２４をスライドポスト２６に沿わせることで前輪枠２０自体を上下方向で円滑にスライド移動させるようにしている。

【0023】

また、搬送台車本体１は、搬送面上で左右に方向転換できるようにしてあり、そのための前輪枠２０の左右方向への転換は、前輪枠２０の転換を規制する規制ピン３５の着脱操作によって選択制御できるようにしている。この規制ピン３５は、搬送台車本体１における正面方向に沿っているときの前輪枠２０の前部壁の前面に当接するよう、搬送台車本体１の前部の左右部分に設けた挿脱孔３６に挿脱自在に挿入してある。こうすることで、規制ピン３５を挿脱孔３６から抜き出すことで前輪枠２０の左右方向に対する転換をフリーに選定でき、規制ピン３５を挿脱孔３６に挿入することで前輪枠２０の方向転換を不能にして前輪枠２０を正面方向に規制設定させる。

【0024】

搬送台車本体１の上部には、搬送物Ｐを載置支持するターンテーブル４０が設けられていて、このターンテーブル４０は、ターンテーブルクッション機構４１によって搬送物Ｐに対して発揮されるクッション作用によって搬送面を搬送させるときの衝撃を緩衝させるようにしている。

【0025】

ターンテーブルクッション機構４１は、搬送物Ｐが載置されるテーブル４２を支持しているターンテーブル軸４３を、走行台車本体１に上下動自在にして貫挿すると共に、テーブル４２と走行台車本体１上面との間に肉厚な皿バネ状の緩衝盤４４を配装して成る。なお、ターンテーブル軸４３の下端には、搬送台車本体１の下面に当接する軸支持板４５が固定されている。

【0026】

このターンテーブルクッション機構４１によって、搬送物Ｐがターンテーブル４０上に載置された状態で搬送面上で搬送されると、搬送面に凹凸その他によって搬送台車装置に衝撃等が加わると、その衝撃等を緩衝させ、搬送物Ｐを衝撃から保護することができる。

【0027】

次に、以上のように構成された実施の形態における使用の一例を説明すると、搬送すべき搬送物Ｐをターンテーブル４０上に載置して搬送台車本体１自体を回転する前輪２３、後輪１２によって搬送移動させればよい。

【0028】

搬送面上に凹凸等があれば、図２に示すように、前輪枠２０ではスライド機構２５によって上下方向に沿ってスライドし、その凹凸等をいわば吸収することで、また、ターンテーブルクッション機構４１によるクッション作用と相俟ち、搬送台車本体１上に載置されている搬送物Ｐは傾くことなく安定した状態の儘で搬送され、搬送作業を円滑に行うことができる。

【符号の説明】

【0029】

Ｐ…搬送物
１…搬送台車本体
２…後部連結片
３…前部連結片
１０…後輪枠
１１…後輪軸
１２…後輪
２０…前輪枠
２１…車輪室
２２…前輪軸
２３…前輪
２４…蓋部壁
２５…スライド機構
２６…スライドポスト
２７…上部支持板
２８…下部支持板
２９…弾発手段
３１…ベアリング軸受
３５…規制ピン
３６…挿脱孔
４０…ターンテーブル
４１…ターンテーブルクッション機構
４２…テーブル
４３…ターンテーブル軸
４４…緩衝盤
４５…軸支持板

【図1】

【図2】

【図3】